(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2枚のガラス板および該2枚のガラス板の間にある複合中間層を含む薄いガラス積層板であって、前記ガラス板の少なくとも1枚が1.5mm未満の厚さを有し、前記複合中間層が、
50MPa以上のヤング率を有し、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、あるいは、ポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される、2つの比較的硬い高分子層と、20MPa未満のヤング率を有し、ポリビニルブチラール(PVB)、音響用ポリビニルブチラール(A−PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)、あるいは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選択される、比較的軟らかい高分子層、
を含み、
前記比較的軟らかい高分子層が該2つの比較的硬い高分子層の間に位置している、薄いガラス積層板。
前記比較的硬い高分子層が100MPaから1000MPaの範囲にあるヤング率を有し、前記比較的軟らかい高分子層が1MPaから10MPaの範囲にあるヤング率を有する、請求項1または2記載の薄いガラス積層板。
前記比較的硬い高分子層が、前記比較的軟らかい高分子層のヤング率の10倍または100倍であるヤング率を有する、請求項1から3いずれか一項に記載の薄いガラス積層板。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、その実施の形態による高分子または複合中間層構造(または単に中間層)10の部分断面概略図である。この中間層構造10は、中央にある比較的軟らかい中央層16の両側に重ねられた2つの比較的硬い外側層12および14を含むことがある。しかしながら、その実施の形態は、1つの比較的硬い層12および比較的軟らかい層16を有する中間層10を含む。比較的硬い外側層12および14は、イオノマーなどの比較的硬い高分子から形成してよい。例えば、その外側層は、DuPont社からの「SentryGlas」、ポリカーボネート、または比較的硬いポリビニルブチラール(PVB)から形成してもよい。比較的硬いPVBの例は、Solutia社からのSaflex DHである。本記載および付随の特許請求の範囲に使用されるような比較的硬いにより、外側層が、約20MPa以上、約50MPa以上、約100MPa以上、もしくは約50MPaから約1000MPaまたは約100MPaから約1000MPaの範囲内のヤング率を有することを意味する。比較的軟らかい中央層16は、比較的軟らかい高分子材料から形成してもよい。例えば、その中央層は、比較的軟らかいPVB、音響用PVB、エチレン酢酸ビニル(EVA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、もしくは他の適切な高分子または熱可塑性材料から形成してもよい。本記載および付随の特許請求の範囲に使用されるような比較的軟らかいにより、中央層16が、約20MPa以下、約10MPa以下、もしくは約10MPaから約20MPa、または約1MPaから10MPaの範囲内のヤング率を有することを意味する。ここに記載された中間層構造10の各層は、一緒に共押出しして、多層を有する単体中間層板を形成しても、または別々に形成し、次いで、当該技術分野でよく知られ理解されているどの方法によって互いに重ねてもよい。そのいくつかの実施の形態によれば、比較的硬い外側層12および14は、比較的軟らかい中央層16のヤング率の約10倍から約100倍であるヤング率を有することがある。共押出しの場合、複合中間層における外側層12,14および中央層16は、単一板としての共押出しを可能にするために、レオロジー的および化学的に適合している必要がある。
【0021】
図2は、
図1の複合中間層を含む、その実施の形態による合わせガラス構造20の部分断面概略図である。この合わせガラス構造は、中央にある比較的軟らかい中央層16の両側に重ねられた2つの比較的硬い外側層12および14から形成された中間層10の両側に重ねられた2枚の薄いガラス板22および24を含んでいる。本開示および付随の特許請求の範囲においてガラス板に関して使用されるような薄いとは、約1.5mmを超えない、約1.0mmを超えない、約0.7mmを超えない、約0.5mmを超えない、もしくは約0.5mmから約1.5mm、または約0.5mmから約1.0mm、または約0.5mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有するガラス板を意味する。そのいくつかの実施の形態によれば、複合中間層10は、合わせガラス構造20の全厚の大半(>50%)などの、積層板全厚の大部分を占める。例えば、標準的な自動車用合わせガラス構造について、中間層構造は、ガラス積層板の全厚の約20%までを占めることがあるのに対し、本開示の薄いガラス積層板構造については、中間層構造は、ガラス積層板の全厚の約57%以上を占めることがある。
【0022】
その実施の形態によれば、前記ガラス板は、「Corning」「Gorilla」ガラスなどの、イオン交換プロセスを使用して化学強化された薄いガラス板から形成してもよい。米国特許第7666511号、同第4483700号および同第5674790号の各明細書に記載されているように、「Corning」「Gorilla」ガラスは、ガラス板をフュージョンドローし、次いで、そのガラス板を化学強化することによって製造される。以下により詳しく記載するように、「Corning」「Gorilla」ガラスは、圧縮応力下にある比較的深い層の深さ(DOL)を有し、比較的高い曲げ強度、耐引掻性および耐衝撃性を有する表面を示す。ガラス板22と24および中間層10は、積層プロセス中に一緒に結合されてもよい。ここでは、ガラス板22、中間層10およびガラス板24は、あるものが他のものの上に積み重ねられ、一緒にプレスされ、中間層10の外側層12および14がガラス板に接着されるように、例として、130℃の温度または外側層12および14の軟化温度に近いまたはわずかに高い温度まで加熱される。
【0023】
図3は、標準的な0.76mm厚の単体PVB(0.76SPVB)(線B)、標準的な音響用三層PVB(0.33SPVB/0.15APVB/0.33SPVB)(線C)および強化外側層を有する三層PVB(0.33SG+/0.15APVB/0.33SG+)(線A)を使用して製造した0.7mm厚の「Corning」「Gorilla」ガラス合わせガラス構造の有限要素モデル化研究の結果を示している。強化中間層の外側層の物理的性質は、DuPont社からの「SentryGlas」のものに調節した。外側層を強化した利益により、荷重の際の変形が低減したことにより示されるように、より剛性の積層板が得られる。
【0024】
適切なガラス板は、イオン交換プロセスによって化学強化してもよい。そのようなイオン交換プロセスにおいて、ガラス板は、典型的に、所定の期間に亘り溶融塩浴中に浸漬される。ガラス板の表面またはその近くにあるガラス板内のイオンが、例えば、前記塩浴からの、より大きい金属イオンと交換される。1つの実施の形態において、溶融塩浴の温度は約430℃であり、所定の期間は約8時間である。より大きいイオンをガラス中に取り込むと、ガラス板の表面近くの領域に圧縮応力が生じることによって、ガラス板が強化される。その圧縮応力を釣り合わせるために、対応する引張応力がガラス板の中央領域内に誘発される。
【0025】
ガラス積層板を形成するのに適した例示のイオン交換可能なガラスにアルカリアルミノケイ酸塩ガラスまたはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスがあるが、他のガラス組成物も考えられる。ここに用いたように、「イオン交換可能な」は、ガラスが、そのガラスの表面またはその近くに位置する陽イオンを、サイズがそれより大きいか小さい同じ価数の陽イオンと交換できることを意味する。ガラス組成物の一例は、SiO
2、B
2O
3およびNa
2Oを含み、ここで、(SiO
2+B
2O
3)≧66モル%およびNa
2O≧9モル%である。ある実施の形態において、ガラス板は少なくとも6質量%の酸化アルミニウムを含む。さらに別の実施の形態において、ガラス板は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5質量%であるように、1種類以上のアルカリ土類酸化物を含む。適切なガラス組成物は、いくつかの実施の形態において、K
2O、MgO、およびCaOの内の少なくとも1つをさらに含む。特別な実施の形態において、ガラスは、61〜75モル%のSiO
2、7〜15モル%のAl
2O
3、0〜12モル%のB
2O
3、9〜21モル%のNa
2O、0〜4モル%のK
2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaOを含んで差し支えない。
【0026】
ここに記載されたガラス積層板を形成するのに適したさらに別の例のガラス組成物は、60〜70モル%のSiO
2、6〜14モル%のAl
2O
3、0〜15モル%のB
2O
3、0〜15モル%のLi
2O、0〜20モル%のNa
2O、0〜10モル%のK
2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO
2、0〜1モル%のSnO
2、0〜1モル%のCeO
2、50ppm未満のAs
2O
3、および50ppm未満のSb
2O
3を含み、ここで、12モル%≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦20モル%、および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0027】
さらにまた別の例示のガラス組成物は、63.5〜66.5モル%のSiO
2、8〜12モル%のAl
2O
3、0〜3モル%のB
2O
3、0〜5モル%のLi
2O、8〜18モル%のNa
2O、0〜5モル%のK
2O、1〜7モル%のMgO、0〜2.5モル%のCaO、0〜3モル%のZrO
2、0.05〜0.25モル%のSnO
2、0.05〜0.5モル%のCeO
2、50ppm未満のAs
2O
3、および50ppm未満のSb
2O
3を含み、ここで、14モル%≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦18モル%、および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0028】
別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、61〜75モル%のSiO
2、7〜15モル%のAl
2O
3、0〜12モル%のB
2O
3、9〜21モル%のNa
2O、0〜4モル%のK
2O、0〜7モル%のMgO、および0〜3モル%のCaOを含む、から実質的になる、またはからなる。
【0029】
特別な実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、アルミナ、少なくとも1種類のアルカリ金属およびいくつかの実施の形態において、50モル%超のSiO
2、他の実施の形態において、少なくとも58モル%のSiO
2、さらに他の実施の形態において、少なくとも60モル%のSiO
2を含み、ここで、比(Al
2O
3+B
2O
3)/Σ改質剤>1であり、この比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラスは、特別な実施の形態において、58〜72モル%のSiO
2、9〜17モル%のAl
2O
3、2〜12モル%のB
2O
3、8〜16モル%のNa
2O、および0〜4モル%のK
2Oを含み、から実質的になり、またはからなり、比(Al
2O
3+B
2O
3)/Σ改質剤>1である。
【0030】
さらに別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス基板は、60〜70モル%のSiO
2、6〜14モル%のAl
2O
3、0〜15モル%のB
2O
3、0〜15モル%のLi
2O、0〜20モル%のNa
2O、0〜10モル%のK
2O、0〜8モル%のMgO、0〜10モル%のCaO、0〜5モル%のZrO
2、0〜1モル%のSnO
2、0〜1モル%のCeO
2、50ppm未満のAs
2O
3、および50ppm未満のSb
2O
3を含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、12モル%≦Li
2O+Na
2O+K
2O≦20モル%、および0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0031】
さらに別の実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、64〜68モル%のSiO
2、12〜16モル%のNa
2O、8〜12モル%のAl
2O
3、0〜3モル%のB
2O
3、2〜5モル%のK
2O、4〜6モル%のMgO、および0〜5モル%のCaOを含み、から実質的になり、またはからなり、ここで、66モル%≦SiO
2+B
2O
3+CaO≦69モル%、Na
2O+K
2O+B
2O
3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na
2O+B
2O
3)−Al
2O
3≦2モル%、2モル%≦Na
2O−Al
2O
3≦6モル%、および4モル%≦(Na
2O+K
2O)−Al
2O
3≦10モル%である。
【0032】
いくつかの実施の形態において、化学強化されたガラス並びに化学強化されていないガラスに、NaSO
4、NaCl、NaF、NaBr、K
2SO
4、KCl、KF、KBr、およびSnO
2を含む群から選択される少なくとも1種類の清澄剤が0〜2モル%の量でバッチ配合されている。
【0033】
1つの例示の実施の形態において、ガラス中のナトリウムイオンは、溶融浴からのカリウムイオンにより交換することができるが、ルビジウムやセシウムなどの原子半径がより大きい他のアルカリ金属イオンが、そのガラス中のより小さいアルカリ金属イオンを置換しても差し支えない。特別な実施の形態によれば、ガラス中のより小さいアルカリ金属イオンはAg
+イオンにより置換されても差し支えない。同様に、以下に限られないが、硫酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩をイオン交換プロセスに使用してもよい。
【0034】
ガラス網目構造が緩和できる温度より低い温度で、より小さいイオンをより大きいイオンで置換すると、ガラスの表面に亘りイオンの分布が生じ、これが応力プロファイルをもたらす。入り込むイオンの体積がより大きいために、ガラスの表面に圧縮応力(CS)が、ガラスの中央領域に張力(中央張力、またはCT)が生じる。この圧縮応力は、以下の関係式により中央張力に関連付けられる:
【0036】
式中、tはガラス板の全厚であり、DOLは、層の深さとも称される、交換の深さである。
【0037】
様々な実施の形態によれば、1枚以上のイオン交換済みガラス板を含み、特定の層の深さ対圧縮応力のプロファイルを有する薄いガラス積層板は、低質量、高い耐衝撃性、および改善された音減衰を含む、一連の所望の性質を有する。
【0038】
1つの実施の形態において、化学強化ガラス板は、少なくとも300MPa、例えば、少なくとも400、500、または600MPaの表面圧縮応力、少なくとも約20μm(例えば、少なくとも約20、25、30、35、40、45、または50μm)の層の深さ、および/または40MPa超(例えば、40、45、または50MPa超)および100MPa未満(例えば、100、95、90、85、80、75、70、65、60、または55MPa未満)の中央張力を有し得る。
【0039】
例示の実施の形態が
図4に示されており、この図面は、様々なガラス板に関する層の深さ対圧縮応力のプロットを示している。
図4において、比較ソーダ石灰ガラスからのデータは、菱形「SL」により示されており、一方で、化学強化されたアルミノケイ酸塩ガラスからのデータは、三角形「ABS」により示されている。図解された実施の形態に示されるように、化学強化ガラスに関する層の深さ対圧縮応力のデータは、約600MPa超の圧縮応力および約20マイクロメートル超の層の深さにより画成できる。領域200は、約600MPa超の表面圧縮応力、約40マイクロメートル超の層の深さ、および約40MPaと約65MPaの間の引張応力により画成される。先の関係とは独立して、またはその関係と併せて、化学強化ガラスは、対応する表面圧縮応力に関して表された層の深さを有し得る。一例において、表面近くの領域は、第1のガラス板の表面から、少なくとも65−0.06(CS)の層の深さ(マイクロメートル)まで延在し、式中、CSは、表面圧縮応力であり、少なくとも300MPaの値を有する。この直線関係は、
図4の傾斜線により描かれている。満足なCSおよびDOLのレベルは、y軸のDOLおよびx軸のCSのプロット上の線65−0.06(CS)より上に位置している。
【0040】
さらに別の例において、表面近くの領域は、第1のガラス板の表面から、少なくともB−M(CS)の値を有する層の深さ(マイクロメートル)まで延在し、式中、CSは、表面圧縮応力であり、少なくとも300MPaである。先の式において、Bは、約50から180(例えば、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160±5)に及び得、Mは、独立して、約−0.2から−0.02(例えば、−0.18、−0.16、−0.14、−0.12、−0.10、−0.08、−0.06、−0.04±−0.01)に及び得る。
【0041】
化学強化ガラス板の弾性率は、約60GPaから85GPa(例えば、60、65、70、75、80または85GPa)に及び得る。ガラス板および高分子中間層の弾性率は、結果として得られたガラス積層板の機械的性質(例えば、撓みおよび強度)および音響性能(例えば、透過損失)の両方に影響し得る。
【0042】
例示のガラス板形成方法としては、フュージョンドロー法およびスロットドロー法が挙げられ、これらは、ダウンドロー法、並びにフロート法の各例である。フュージョンドロー法では、溶融ガラス原材料を受け入れるための通路を有する板引き槽(drawing tank)を使用する。この通路は、通路の両側に、通路の長手方向に沿った上部に開いた堰を有する。この通路が溶融材料で満たされると、溶融ガラスが堰から溢れ流れる。溶融ガラスは、重力のために、板引き槽の外面を流れ落ちる。これらの外面は、板引き槽の下縁で接合するように、下方かつ内方に延在している。2つの流れるガラス表面がこの縁で合わさって、融合し、1枚の流れる板を形成する。このフュージョンドロー法は、通路を超えて流れる2つのガラスフイルムが互いに融合するので、結果として得られるガラス板のいずれの外面も装置のどの部分とも接触しないという利点を示す。それゆえ、フュージョンドローされたガラス板の表面特性は、そのような接触により影響を受けない。
【0043】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。ここでは、溶融原材料ガラスが板引き槽に提供される。この板引き槽の下部には開放スロットがあり、このスロットの長さに亘りノズルが延在している。溶融ガラスは、このスロット/ノズルを通って流れ、連続板として下方に、焼き鈍し領域へと板引きされる。このスロットドロー法は、2枚の板が互いに融合されるのではなく、1枚の板だけがスロットを通して板引きされるので、フュージョンドロー法よりも薄い板を提供できる。
【0044】
ダウンドロー法は、比較的無垢な表面を有する均一な厚さを持つガラス板が製造される。ガラス表面の強度は、表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小の無垢な表面はより高い初期強度を有する。次いで、この高強度ガラスが化学強化されると、結果として得られた強度は、ラップ仕上げされ研磨された表面の強度よりも高くあり得る。ダウンドローされたガラスは、約2mm未満の厚さまで板引きされることがある。その上、ダウンドローされたガラスは、費用のかかる研削および研磨を行わずに最終用途に使用できる、非常に平らで滑らかな表面を有する。
【0045】
フロートガラス法において、滑らかな表面および均一な厚さにより特徴付けられることもあるガラス板は、溶融金属、典型的にスズの床上に溶融ガラスを浮かせることによって製造される。例示のプロセスにおいて、溶融スズ床の表面に供給される溶融ガラスは、浮遊するリボンを形成する。このガラスリボンがスズ浴に沿って流れるときに、その温度は、固体のガラス板がスズからローラに持ち上げられるようになるまで、徐々に低下する。一旦浴から離れたら、そのガラス板は、さらに冷却し、焼き鈍して、内部応力を減少させることができる。
【0046】
ガラス板を使用して、ガラス積層板を形成することができる。ここに定義されるように、薄いガラス積層板構造は、2枚の化学強化ガラス板およびそれらのガラス板の間に形成された高分子中間層を含んでよい。この高分子中間層は、単体高分子板、多層高分子板、または複合高分子板を含んでも差し支えない。この高分子中間層は、例えば、1枚以上のPVB板および/または1枚以上の「SentryGlas」板であって差し支えない。
【0047】
自動車用板ガラスおよび他の用途のためのガラス積層板は、様々なプロセスを使用して形成できる。例示のプロセスにおいて、1枚以上の化学強化ガラス板を、高分子中間層と共に、プリプレス内で組み立て、プリ積層板へと貼り合わせ、光学的に透明なガラス積層板へと仕上げる。この組立ては、2枚のガラス板を含む例示の実施の形態において、第1のガラス板を配置し、PVB(または「SentryGlas」)板などの高分子中間層を上に載せ、第2のガラス板を配置し、次いで、ガラス板の縁で過剰のPVBを切り落とす各工程を含む。貼合せ工程は、界面から空気のほとんどを追い出し、PVBをガラス板に部分的に結合させる各工程を含み得る。典型的に高温および高圧で行われる仕上げ工程により、各ガラス板の高分子中間層への接合が完了する。
【0048】
PVBまたは「SentryGlas」などの高分子(または熱可塑性物質)は、予め形成した高分子中間層として施してもよい。この高分子層は、特定の実施の形態において、少なくとも約0.125mm(例えば、0.125、0.25、0.375、0.5、0.75、0.76または1mm)の厚さを有し得る。この熱可塑性層は、2枚のガラス板の対向する主面のほとんど、または好ましくは実質的に全てを被覆し得る。この中間層は、貼合せ後にガラス板の縁面も被覆してもよい。熱可塑性層と接触したガラス板は、熱可塑性材料のガラスへの結合を促進するために、例えば、軟化点よりも少なくとも5℃または10℃高いなどの、高分子の軟化点よりも高く加熱してよい。加熱は、加圧下で熱可塑性層と接触したガラス合板に行うことができる。
【0049】
中間層16のための選り抜きの市販の高分子中間層材料が表1に纏められており、この表には、各製品サンプルについてのガラス転移温度および弾性率も与えられている。ガラス転移温度および弾性率のデータは、製造供給元から入手できる技術データシートから、もしくは、それぞれ、ガラス転移温度および弾性率のデータについて、DSC 200 Differential Scanning Calorimeter(日本国、セイコーインスツル株式会社)またはASTM D638方法を使用して、決定した。ISD樹脂に使用したアクリル/シリコーン樹脂材料のさらなる説明が、米国特許第5624763号明細書に開示されており、音響用改良PVB樹脂の説明は、特開平5−138840号公報に開示されており、これらの全内容をここに引用する。
【0051】
前記高分子中間層の弾性率は、約1MPaから75MPa(例えば、約1、2、5、10、15、20、25、50または75MPa)に及び得る。1Hzの負荷速度では、標準的なPVB中間層の弾性率は約15MPaであり得、音響グレードのPVB中間層の弾性率は約2MPaであり得る。
【0052】
接着促進、音響制御、紫外線透過制御、および/または赤外線透過制御を含む、相補的機能性または別個の機能性を提供するために、複数の高分子中間層を薄いガラス積層板に組み込んでもよい。
【0053】
積層プロセス中に、中間層は、典型的に、その中間層を軟化させるのに効果的な温度に加熱され、それにより、前記ガラス板のそれぞれの表面への当該中間層の適合した貼合せが促進される。PVBについて、積層温度は約140℃であり得る。中間層材料内の移動性高分子鎖がガラス表面と結合し、これが接着を促進する。高温もまた、ガラスと高分子との界面からの残留空気および/または水分の拡散を加速させる。
【0054】
随意的な圧力の印加は、中間層材料の流れを促進させ、かつそうでなければ界面に捕捉される水および空気の総蒸気圧により誘発され得る気泡の形成を抑制する。気泡の形成を抑制するために、熱と圧力は、オートクレーブ内で前記アセンブリに同時に印加することができる。
【0055】
薄いガラス積層板は、実質的に同一のガラス板を使用して形成することができ、また代わりの実施の形態において、組成、イオン交換プロファイルおよび/または厚さなどの個々のガラス板の特徴を独立して変更して、非対称ガラス積層板を形成することもできる。
【0056】
音響ノイズの減衰、紫外線および/または赤外線透過の低減、および/または窓開口の美的魅力の向上を含む、有益な効果を提供するために、薄いガラス積層板を使用することができる。開示された薄いガラス積層板を構成する個々のガラス板、並びに形成された積層板は、組成、密度、厚さ、表面計測学を含む1つ以上の特質、並びに機械的性質、光学的性質、および音減衰特性を含む様々な性質によって特徴付けることができる。開示された薄いガラス積層板の様々な態様がここに記載されている。
【0057】
表2を参照すると、より薄いガラス板の仕様に関連する軽量化が分かる。この表は、110cm×50cmの実寸法および1.069g/cm
3の密度を有するPVBの0.76mm厚の板を含む高分子中間層を有する例示の薄いガラス積層板に関する、ガラスの質量、中間層の質量、およびガラス積層板の質量を示している。
【0059】
表2を参照して分かるように、個々のガラス板の厚さを減少させることによって、合わせガラス構造の総質量を劇的に減少させることができる。いくつかの用途において、より低い総質量は、より大きい燃料経済性に直接的につながる。
【0060】
この薄いガラス積層板は、例えば、窓または板ガラスとしての使用に適合させることができ、どのような適切なサイズおよび寸法に構成することもできる。実施の形態において、ガラス積層板の長さと幅は、10cmから1m以上(例えば、0.1、0.2、0.5、1、2、または5m)まで独立して様々である。ガラス積層板は、自由に、0.1m
2超、例えば、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、または25m
2超の面積を有し得る。
【0061】
この薄いガラス積層板は、特定の用途のために、実質的に平らであっても、成形されていても差し支えない。例えば、ガラス積層板は、フロントガラスまたはカバープレートとして使用するための曲げ部品または成形部品として形成することができる。形成ガラス積層板の構造は、単純であっても、複雑であってもよい。特定の実施の形態において、成形ガラス積層板は、ガラス板が、独立した二方向で別個の曲率半径を有する複雑な曲率を有してもよい。それゆえ、そのような成形ガラス板は、ガラスが、所定の寸法に対して平行な軸に沿って曲げられ、かつ同じ寸法に対して垂直な軸に沿っても曲げられている「交差曲率(cross curvature)」を有するものとして特徴付けてもよい。例えば、自動車のサンルーフは、一般に、約0.5m×1.0mであり、短軸に沿った2から2.5mの曲率半径、および主軸に沿った4から5mの曲率半径を有する。
【0062】
特定の実施の形態による成形された薄いガラス積層板は、曲げ係数により定義することができ、ここで、所定の部品の曲げ係数は、所定の軸の長さで割ったその軸に沿った曲率半径と等しい。それゆえ、0.5mおよび1.0mのそれぞれの軸に沿った2mおよび4mの曲率半径を有する例示の自動車サンルーフについて、各軸に沿った曲げ係数は4である。成形された薄いガラス積層板は、2から8(例えば、2、3、4、5、6、7、または8)に及ぶ曲げ係数を有し得る。
【0063】
薄いガラス積層板を曲げるおよび/または成形する方法は、重力曲げ、プレス曲げ、およびその複合方法を含むことができる。自動車のフロントガラスなどの湾曲形状に薄い平らなガラス板を重力曲げする従来の方法において、曲げ設備の剛性であり予成形された周囲支持表面上に、低温の予め切断された1枚または多数枚のガラス板を配置する。曲げ設備は、金属または耐火材料を使用して製造できる。本開示の例示の方法において、連接型曲げ設備を使用してよい。曲げの前に、ガラスは、典型的に、いくつかの接点でのみ支持される。ガラスを、通常は、徐冷窯内の高温への曝露により加熱し、これにより、ガラスが軟化して、重力により、ガラスが周囲支持表面に一致するように垂れ下がるまたは落ち込むことができる。次いで、一般に、実質的に全支持表面がガラスの周囲と接触する。
【0064】
関連技法は、平らなガラス板が、ガラスの軟化点に実質的に相当する温度に加熱されるプレス曲げである。次いで、加熱された板は、相補的な成形表面を有する雄と雌の型部材の間で所望の曲率にプレスまたは成形される。実施の形態において、重力曲げ技法とプレス曲げ技法の組合せを使用しても差し支えない。
【0065】
薄いガラス積層板の全厚は約2mmから4mmに及んで差し支えなく、ここで、個々のガラス板は約0.5から約2mmの厚さ(例えば、0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1、1.4、1.7、または2mm)を有し得る。実施の形態において、化学強化ガラス板は、約1.4mm未満または約1.0mm未満の厚さを有し得る。さらに別の実施の形態において、化学強化ガラス板の厚さは、第2のガラス板の厚さと実質的に等しくて差し支えなく、よって、それぞれの厚さは、5%以下、例えば、5、4、3、2または1%未満しか変動しない。実施の形態によれば、第2の(例えば、内側の)ガラス板は、約2.0mm未満(例えば、1.4mm未満)の厚さを有し得る。理論により縛られることを意図するものではなく、出願人は、実質的に同じ厚さを有する対向するガラス板を備えた薄いガラス積層板が、最大コインシデンス周波数およびコインシデンス下落での音響伝送損失における対応する最大値を提供できる。そのような設計は、例えば、自動車用途において、ガラス積層板にとって有益な音響性能を提供できる。
【0066】
例示のガラス積層板構造が表3に示されており、ここでは、略語GGは化学強化されたアルミノケイ酸塩ガラス板を指し、「ソーダ石灰」という用語は、非化学強化ガラス板を指す。ここに用いたように、略語「SP」、「S−PVB」または単に「PVB」は、標準グレードのPVBに使用してよい。略語「AP」または「A−PVB」は、音響グレートのPVBに使用される。
【0067】
出願人等は、ここに開示された合わせガラス構造が、優れた耐久性、耐衝撃性、靭性、および耐引掻性を有することを示してきた。当業者により認識されるように、ガラス板または積層板の強度および機械的衝撃性能は、表面欠陥と内部欠陥の両方を含むガラス中の欠陥により制限され得る。ガラス積層板に衝撃が与えられたとき、衝撃点が圧縮状態になり、一方で、衝撃点の周りのリングまたは「輪(hoop)」、並びに衝撃を受けた板の反対面は引張状態になる。一般に、破損の起点は、最高の張力の点またはその近くの、通常はガラス表面にある傷である。これは反対側の面にも生じるであろうが、リング内で生じ得る。ガラス中の傷が、衝撃事象中に張力状態になると、傷はおそらく伝搬し、ガラスは一般に壊れる。それゆえ、圧縮応力の大きい大きさおよび深さ(層の深さ)が好ましい。制御された傷を表面3に加え、表面2および4に酸エッチング処理を行うと、そのような積層板に、内部と外部の衝撃事象の際に所望の破壊性能が与えられる。
【0068】
ここに開示された薄いガラス積層板の外面の一方または両方は、化学強化のために、圧縮下にある。傷が伝搬し、破損が生じるために、衝撃からの引張応力は、傷の先端で表面の圧縮応力を超えなければならない。実施の形態において、化学強化ガラス板の高い圧縮応力および大きい層の深さにより、非化学強化ガラス板の場合におけるよりも薄いガラスを使用することができる。
【0069】
その実施の形態において、薄いガラス積層板は、外側に面する化学強化ガラス板が、少なくとも約300MPa、例えば、少なくとも400、450、500、550、600、650、700、750または800MPaの表面圧縮応力、少なくとも約20μm(例えば、少なくとも約20、25、30、35、40、45、または50μm)の層の深さ、および/または約40MPa超(例えば、約40、45、または50MPa超)かつ約100MPa未満(例えば、約100、95、90、85、80、75、70、65、60、または55MPa未満)の中央張力を有し、内側に面するガラス板(例えば、内画の化学強化ガラス板)は、外側の化学強化ガラス板の表面圧縮応力の三分の一から半分、もしくは外側のガラス板の表面圧縮応力と等しい表面圧縮応力を有する化学強化ガラス板などのように、内側と外側のガラス板を備えることができる。
【0070】
その機械的性質に加え、開示の薄いガラス積層板の音響減衰特性も評価した。当業者により認識されるように、音波を減衰させるために、市販の音響用PVB中間層などの中央音響用中間層16を有する積層構造を使用することができる。ここに開示された化学強化された薄いガラス積層板は、多くの板ガラス用途に要求される機械的性質を有するより薄い(より軽い)構造を使用しながら、音響透過を劇的に減少させることができる。
【0071】
本開示には、比較的軟らかい音減衰中央層16と組み合わされた、比較的硬い剛性の外側層12および14からなる複合中間層10を使用して製造した薄いガラス積層板構造20が記載されている。剛性層12および14は、比較的薄いガラスを使用して製造した積層板に改善された荷重/変形特性を提供するのに対し、より軟らかい音減衰中央層16は、低減した音響伝送により改善された音響特性を提供する。
【0072】
音響減衰は、中間層の剪断弾性率および損失率により決まる。中間層が積層板の全厚の大部分である場合、曲げ剛性(荷重変形特性)は主にヤング率により決まる。多層の中間層を使用すると、これらの性質を独立して調節して、剛性および音響減衰が条件を満たす積層板を得ることができる。
【0073】
本記載による積層された薄いガラス構造は、例えば、台所用の器具およびエレベータのかご、並びに車両用途および建築用途の窓のための、装飾および音減衰パネルとして使用してよい。器具の用途において、例えば、ここに記載された透明な薄いガラス積層板は、薄いガラス積層板を通して目に見えるステンレス鋼の美しさを維持しつつ、耐引掻性、洗浄しやすい表面および遮音特性を提供するために、食洗機または他の器具のステンレス鋼製前部に接着してもよい。あるいは、機器および構造上に音を減衰する装飾ガラスパネルを提供するために、木目、石、花崗岩、大理石、絵、図形または任意の他の所望の模様などにより、ガラス積層板を着色または模様付けしてもよい。器具の用途において、そのような装飾パネルは、ステンレス鋼製パネルにとって代わるか、その必要性をなくすであろう。
【0074】
複合中間層を製造するために使用すべき候補である市販の中間層には以下がある:「SentryGlas」Ionomer+PVB;「SentryGlas」Ionomer+音響用PVB(例えば、積水の薄い0.4mm厚の音響用PVB);「SentryGlas」Ionomer+EVA;「SentryGlas」Ionomer+TPU;剛性PVB(例えば、Saflex DG)+標準PVB;剛性PVB+音響用PVB;剛性PVB+EVA;および剛性PVB+TPU。例えば、外側層12と14および中央層16の各々について、全てPVB層を使用することは、それらの層間の化学的適合性のために、都合よいであろう。「SentryGlas」は、EVAまたはPVBなどの他の中間層材料とそれほど化学的に適合しておらず、外側層と中央層との間に結合剤フイルム(例えば、ポリエステルフイルム)を必要とするであろう。
【0075】
本記載には、機械的性質および音響減衰特性が許容される軽量の薄いガラス積層板が開示されている。本記載には、その機械的性質および音響的性質が、高分子中間層の個々の層の性質を比較的単純に調節することによって、独立して設計できる、高分子中間層および積層された薄いガラス構造も開示されている。ここに記載された合わせガラス構造の層は、積層プロセス中に互いに結合された個々の層、フイルムまたは板である。ここに記載された中間層構造10の層は、多層を有する単一の中間層板を形成するために一緒に共押出ししてもよい。
【0076】
他に明白に述べられていない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とするものとして解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程が従うべき順序を実際に列挙していない場合、またはそうでなければ、工程が特定の順序に制限されるべきことが、請求項または記載に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も推測されることは決して意図されていない。
【0077】
本発明の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更が行えることが当業者には明白であろう。本発明の精神および実体を含む開示の実施の形態の改変、組合せ、下位の組合せおよび変更が、当業者に想起されるであろうから、本発明は、付随の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に全てを含むと考えるべきである。