(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343652
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】材料の追加によって所定の厚さをもつひげぜんまいを製作する方法
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20180604BHJP
G04B 17/22 20060101ALI20180604BHJP
G04D 7/10 20060101ALI20180604BHJP
F16F 1/06 20060101ALI20180604BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
G04B17/22 Z
G04D7/10
F16F1/06 A
B81C1/00
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-234771(P2016-234771)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-111132(P2017-111132A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】15201337.1
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593198670
【氏名又は名称】セー エス ウー エム・サントル・スイス・デレクトロニク・エ・ドゥ・ミクロテクニク・エス アー・ルシェルシュ・エ・デヴェロプマン
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・コーラー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−リュック・ビュカイユ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・フンツィカー
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−179067(JP,A)
【文献】
特開2012−053044(JP,A)
【文献】
特表2013−542402(JP,A)
【文献】
特表2013−525743(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/132259(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/00 − 34
G04B 18/00 − 08
G04D 7/00 − 12
F16F 1/02 − 13
B81B 1/00
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さ(C)をもつひげぜんまい(5c)を製作する方法(31)であって、
a)所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)を得るのに必要な寸法(Db、H2、E2)よりも小さい寸法(Da、H1、E1)でひげぜんまい(5a)を形成するステップ(33);
b)所定の慣性を有するてんぷと結合させた前記ひげぜんまい(5a)の振動数(f)を測定することによって、前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)の剛性(C)を決定するステップ(35);
c)ステップb)で決定した前記ひげぜんまい(5a)の剛性(C)の決定に基づき、所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)を得るために必要な材料の不足する厚さを計算するステップ(37);
d)前記所定の剛性(C)に必要な寸法(Db、H2、E2)を有する前記ひげぜんまい(5c)を得るのに必要な前記不足する厚さの材料を補償するために、前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)を修正するステップ(39)
を含む方法(31)。
【請求項2】
前記ステップa)では、前記ステップa)で形成する前記ひげぜんまい(5a)の寸法(Db、H1、E1)は、前記所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)を得るのに必要な寸法(Db、H2、E2)よりも1%から20%の間小さいことを特徴とする、請求項1に記載の製作方法(31)。
【請求項3】
前記ステップa)は、深掘り反応性イオン・エッチングにより達成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製作方法(31)。
【請求項4】
前記ステップa)は、化学エッチングにより達成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製作方法(31)。
【請求項5】
前記ステップa)では、いくつかの前記ひげぜんまい(5a)は、所定の剛性(C)のいくつかのひげぜんまい(5c)又はいくつかの所定の剛性(C)のいくつかのひげぜんまい(5c)を得るのに必要な寸法(Db、H2、E2)よりも小さい寸法(Da、H1、E1)で同じウエハ(23)内に形成することを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項6】
前記ステップa)で形成する前記ひげぜんまい(5a)は、シリコンから作製することを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項7】
前記ステップa)で形成する前記ひげぜんまい(5a)は、ガラスから作製することを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項8】
前記ステップa)で形成する前記ひげぜんまい(5a)は、セラミックから作製することを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項9】
前記ステップa)で形成する前記ひげぜんまい(5a)は、金属から作製することを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項10】
前記ステップa)で形成する前記ひげぜんまい(5a)は、金属合金から作製することを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項11】
前記ステップb)は、
b1)前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)、及び前記ひげぜんまい(5a)に結合させた、所定の慣性を有するてんぷを備える組立体の振動数(f)を測定する段階;
b2)前記測定した振動数(f)から、前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)の剛性(C)を推測する段階
を含むことを特徴とする、請求項1から10のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項12】
前記ステップd)は、
d1)前記所定の剛性(C)に必要な寸法(Db、H2、E2)を有するひげぜんまい(5c)を得るために、前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)の外表面の一部の上に層を堆積させる段階
を含むことを特徴とする、請求項1から11のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項13】
前記ステップd)は、
d2)前記所定の剛性(C)に必要な寸法(Db、H2、E2)を有する前記ひげぜんまい(5c)を得るために、前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)の外表面の一部に対し所定の深さまで構造を修正する段階
を含むことを特徴とする、請求項1から11のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項14】
前記ステップd)は、
d2)前記所定の剛性(C)に必要な寸法(Db、H2、E2)を有する前記ひげぜんまい(5c)を得るために、前記ステップa)で形成した前記ひげぜんまい(5a)の外表面の一部に対し所定の深さまで組成を修正する段階
を含むことを特徴とする、請求項1から11のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項15】
前記ステップd)の後、前記方法は、寸法の質を更に改良するために、少なくとももう一度ステップb)、c)及びd)を実施することを特徴とする、請求項1から14のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項16】
前記ステップd)の後、前記方法は、
e)所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)の少なくとも一部の上に、前記ひげぜんまい(5c)の剛性を修正して熱変動にあまり反応しないひげぜんまい(5、15)を形成する一部分を形成するステップ
も含むことを特徴とする、請求項1から15のうちいずれか一項に記載の製作方法(31)。
【請求項17】
前記ステップe)は、
e1)所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)の外表面の一部の上に層を堆積させる段階
を含むことを特徴とする、請求項16に記載の製作方法(31)。
【請求項18】
前記ステップe)は、
e2)所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)の外表面の一部に対し所定の深さまで構造を修正する段階
を含むことを特徴とする、請求項16に記載の製作方法(31)。
【請求項19】
前記ステップe)は、
e3)所定の剛性(C)をもつ前記ひげぜんまい(5c)の外表面の一部に対し所定の深さまで組成を修正する段階
を含むことを特徴とする、請求項16に記載の製作方法(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の剛性をもつひげぜんまいを製作する方法に関し、より詳細には、補償ひげぜんまいとして使用し、所定の慣性を有するてんぷと協働して所定の振動数を有する共振器を形成するひげぜんまいに関する。
【背景技術】
【0002】
参照により本出願に組み込まれる欧州特許第1422436号では、補償ひげぜんまいの形成の仕方を説明しており、この補償ひげぜんまいは、二酸化シリコンで被覆したシリコン心部を備え、所定の慣性を有するてんぷと協働して共振器全体を熱補償する。
【0003】
そのような補償ひげぜんまいの製作は、多くの利点をもたらすが、欠点も有する。実際、いくつかのひげぜんまいを1つのシリコン・ウエハ内でエッチングするステップは、同じウエハのひげぜんまいの間に著しい形状のばらつきをもたらし、異なる時間でエッチングした2つのウエハのひげぜんまいの間ではより大きなばらつきをもたらす。付随的に、同じエッチング・パターンでエッチングした各ひげぜんまいの剛性は変動しやすく、著しい製作のばらつきをもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1422436号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更なる作業を必要としないほど寸法が十分に正確であるひげぜんまいの製作方法を提案することによって、上記した欠点の全て又は一部を克服することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、所定の剛性をもつひげぜんまいの製作方法に関し、
a)所定の剛性をもつ前記ひげぜんまいを得るのに必要な寸法よりも小さい寸法でひげぜんまいを形成するステップ;
b)所定の慣性を有するてんぷと結合させた前記ひげぜんまいの振動数を測定することによって、ステップa)で形成したひげぜんまいの剛性を決定するステップ;
c)所定の剛性をもつ前記ひげぜんまいを得るために、ステップb)で決定したひげぜんまいの剛性の決定に基づき、材料の不足する厚さを計算するステップ;
d)前記不足する厚さの材料を補償し、前記所定の剛性に必要な寸法のひげぜんまい(5c)を得るために、ステップa)で形成したひげぜんまいを修正するステップ
を含む。
【0007】
したがって、本方法が、ひげぜんまいの非常に高い寸法精度を保証し、付随的に、前記ひげぜんまいのより正確な剛性を保証し得ることは理解されよう。したがって、ステップa)において形状変動を引き起こし得るあらゆる製作パラメータは、それぞれ製作したひげぜんまいのために完全に正すことができる、又は同時に形成した全てのひげぜんまいのために平均して正すことができ、これにより廃棄率を劇的に低減する。
【0008】
本発明の他の有利な変形形態によれば、
−ステップa)では、ステップa)で形成するひげぜんまいの寸法は、前記所定の剛性をもつ前記ひげぜんまいを得るのに必要な寸法よりも1%から20%の間小さく、
−ステップa)は、深掘り反応性イオン・エッチング又は化学エッチングにより達成し、
−ステップa)では、いくつかのひげぜんまいは、所定の剛性をもついくつかのひげぜんまい又はいくつかの所定の剛性をもついくつかのひげぜんまいを得るのに必要な寸法よりも小さい寸法で同じウエハ内に形成し、
−ステップa)で形成するひげぜんまいは、シリコン、ガラス、セラミック、金属又は金属合金から作製し、
−ステップb)は、b1)ステップa)で形成したひげぜんまい、及びひげぜんまいと結合させた、所定の慣性を有するてんぷを備える組立体の振動数を測定する段階、並びにb2)測定した振動数から、ステップa)で形成したひげぜんまいの剛性を推測する段階を含み、
−第1の変形形態によれば、ステップd)は、d1)前記所定の剛性に必要な寸法を有するひげぜんまいを得るために、ステップa)で形成したひげぜんまいの外表面の一部の上に層を堆積させる段階を含み、
−第2の変形形態によれば、ステップd)は、d2)前記所定の剛性に必要な寸法でひげぜんまいを得るために、ステップa)で形成したひげぜんまいの外表面の一部に対し所定の深さまで構造を修正する段階を含み、
−第3の変形形態によれば、ステップd)は、d3)前記所定の剛性に必要な寸法でひげぜんまいを得るために、ステップa)で得たひげぜんまいの外表面の一部に対し所定の深さまで組成を修正する段階を含み、
−ステップd)の後、方法は、寸法の質を更に改良するために、少なくとももう一度ステップb)、c)及びd)を実施し、
−第1の変形形態によれば、ステップe)は、e1)所定の剛性をもつ前記ひげぜんまいの外表面の一部の上に層を堆積させる段階を含み、
−第2の変形形態では、ステップe)は、e2)所定の剛性をもつ前記ひげぜんまいの外表面の一部に対し所定の深さまで構造を修正する段階を含み、
−第3の変形形態によれば、ステップe)は、e3)所定の剛性をもつ前記ひげぜんまいの外表面の一部に対し所定の深さまで組成を修正する段階を含む。
【0009】
他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら非限定的な説明として示す以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による組み立てた共振器の斜視図である。
【
図2】本発明によるひげぜんまいの例示的な形状の図である。
【
図3】本発明による方法の異なるステップにおけるひげぜんまいの断面図である。
【
図4】本発明による方法の異なるステップにおけるひげぜんまいの断面図である。
【
図5】本発明による方法の異なるステップにおけるひげぜんまいの断面図である。
【
図6】本発明による方法のステップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本発明は、てんぷ3−ひげぜんまい5を有する種類の共振器1に関する。てんぷ3及びひげぜんまい5は、好ましくは同じ天真7上に組み付ける。この共振器1において、てんぷ3の慣性モーメントIは、式:
I=mr
2 (1)
に応じ、式中、mはてんぷ3の質量を表し、rは回転半径を表し、慣性モーメントIは、てんぷの膨張係数α
bにより温度にも依存する。
【0012】
更に、一定断面をもつひげぜんまい5の剛性Cは、式:
【0014】
に応じ、式中、Eは、使用する材料のヤング率であり、hは材料の高さであり、eは材料の厚さであり、Lは材料の展開長さである。
【0015】
更に、一定断面をもつひげぜんまい5の剛性Cは、式:
【0017】
に応じ、式中、Eは、使用する材料のヤング率であり、hは高さであり、eは厚さであり、Lは展開長さであり、lは、ひげぜんまいに沿った曲線横軸である。
【0018】
更に、厚さは変動するが一定断面をもつひげぜんまい5の剛性Cは、式:
【0020】
に応じ、式中、Eは、使用する材料のヤング率であり、hは高さであり、eは厚さであり、Lは展開長さであり、lは、ひげぜんまいに沿った曲線横軸である。
【0021】
最後に、ひげぜんまい付きてんぷ共振器1の弾性定数Cは、式:
【0024】
本発明によれば、共振器は、温度に対する振動数の変動が実質的にゼロであることが望ましい。ひげぜんまい付きてんぷ共振器の温度Tに対する振動数変動fは、実質的に以下の式:
【0028】
は、相対的な振動数の変動であり、
−ΔTは温度変動であり、
−
【0030】
は、温度に対する相対的なヤング率の変動、即ち、ひげぜんまいの熱弾性係数(TEC、thermoelastic coefficient)であり、
−α
sは、ppm.℃
-1で表される、ひげぜんまいの膨張係数であり、
−α
bは、ppm.℃
-1で表される、てんぷの膨張係数である。
【0031】
時間又は振動数の基礎を目的とするあらゆる共振器の振動は、維持しなければならないために述べるのだが、スイス・レバー脱進機(図示せず)等の維持システムは、例えば、天真7上に同様に組み付けられるローラ11の推進ピン9と協働するものであり、この維持システムが熱依存の一因となることがある。
【0032】
したがって、ひげぜんまい5とてんぷ3との結合に使用する材料の選択により、共振器1の振動数fが温度変動に対しほぼ反応しないようにすることは、式(1)〜(6)から明らかである。
【0033】
本発明は、より詳細には、共振器1に関し、ひげぜんまい5は、共振器1全体、即ち全ての部品、特にてんぷ3、の温度補償のために使用される。そのようなひげぜんまい5は、一般に補償ひげぜんまいと呼ばれる。これは、本発明が、ひげぜんまいの非常に高い寸法精度を保証し、付随的に、前記ひげぜんまいのより正確な剛性を保証することができる方法に関するためである。
【0034】
本発明によれば、補償ひげぜんまい5、15は、可能性としては熱補償層で被覆した材料から形成し、所定の慣性を有するてんぷ3と協働することを意図する。しかし、計時器の販売前又は販売後の調節パラメータを供給することができる移動可能な慣性ブロックを有するてんぷの使用を妨げるものはない。
【0035】
ひげぜんまい5、15の製作で例えばシリコン、ガラス又はセラミック製の材料を利用すると、既存のエッチング法による正確さ、並びに良好な機械及び化学特性を有する一方で、磁界にほぼ反応しないという利点をもたらす。しかし、ひげぜんまい5、15は、補償ひげぜんまいを形成できるようにするために、被覆又は表面修飾しなければならない。
【0036】
好ましくは、補償ひげぜんまいに使用するシリコンベース材料は、結晶方位とは無関係の単結晶シリコン、結晶方位とは無関係のドープ単結晶シリコン、結晶方位とは無関係の非晶質シリコン、多孔質シリコン、多結晶シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、石英、又は酸化シリコンとすることができる。当然、ガラス、セラミックス、セメント、金属又は金属合金等、他の材料を想定することができる。簡略化する目的で、以下の説明は、シリコンベースの材料に関する。
【0037】
各材料の種類は、上記で説明したように、基材を熱補償する層により表面修飾又は被覆することができる。
【0038】
深掘り反応性イオン・エッチング(DRIE)により、シリコンベース・ウエハ内でひげぜんまいをエッチングするステップは、最も正確であるが、それにもかかわらず、エッチングの間又は2つの連続するエッチングの間に生じる現象が、形状変動を生じさせることがある。
【0039】
当然、レーザー・エッチング、集束イオン・ビーム(FIB)、めっき成長、化学蒸着又は化学エッチングによる成長等、他の製作種類を実施することができるが、これらは、それほど精度が高くないため、本方法がより一層有意義であると思われる。
【0040】
したがって、本発明は、ひげぜんまい5cを製作する方法31に関する。本発明によれば、方法31は、
図7に示すように、少なくとも1つのひげぜんまい5aの形成を目的とする第1のステップ33を含み、ひげぜんまい5aは、例えばシリコン製であり、所定の剛性Cをもつ前記ひげぜんまい5cを得るのに必要な寸法Dbよりも小さい寸法Daにある。
図3からわかるように、ひげぜんまい5aの断面は、高さH
1及び厚さE
1を有する。
【0041】
好ましくは、ひげぜんまい5aの寸法Daは、所定の剛性Cの前記ひげぜんまい5cを得るのに必要なひげぜんまい5cの寸法Dbよりも実質的に1%から20%間小さい。
【0042】
好ましくは、本発明によれば、ステップ33は、
図6に示すように、シリコンベース材料ウエハ23内の深掘り反応性イオン・エッチングにより達成される。対向する面F
1、F
2は、波形になっていることに留意されたい。というのは、ボッシュ深掘り反応性イオン・エッチングは、エッチング及び不活性化の連続ステップにより構成される、波形のエッチングをもたらすためである。
【0043】
当然、方法は、特定のステップ33に限定されない。例として、ステップ33は、例えばシリコンベース材料ウエハ23内の化学エッチングにより得ることもできる。更に、ステップ33は、1つ又は複数のひげぜんまいを形成することを意味し、即ち、ステップ33は、1つの材料ウエハ内で、個別のばらのひげぜんまいを形成する、又は代替的に、複数のひげぜんまいを形成することができる。
【0044】
したがって、ステップ33では、いくつかのひげぜんまい5aを同じウエハ23内に寸法Da、H
1、E
1で形成することができ、寸法Da、H
1、E
1は、所定の剛性Cをもついくつかのひげぜんまい5c、又はいくつかの所定の剛性Cをもついくつかのひげぜんまい5cを得るのに必要な寸法Db、H
2、E
2よりも小さい。
【0045】
ステップ33は、所定の剛性Cをもつひげぜんまい5cを得るのに必要な寸法Db、H
2、E
2よりも小さい寸法Da、H
1、E
1で、単一材料を使用して作製するひげぜんまい5aを形成することに限定するものでもない。したがって、ステップ33は、所定の剛性Cをもつひげぜんまい5cを得るのに必要な寸法Db、H
2、E
2よりも小さい寸法Da、H
1、E
1で、複合材料から作製した、即ちいくつかの個別の材料を備えるひげぜんまい5aを形成することもできる。
【0046】
方法31は、ひげぜんまい5aの剛性の決定を目的とする第2のステップ35を含む。このステップ35は、ウエハ23に取り付けたままのひげぜんまい5a、又はウエハ23から前もって取り外したひげぜんまい5a、又はウエハ23に取り付けたままのひげぜんまいの全て若しくは1つのサンプル、又はウエハ23から前もって取り外したひげぜんまいの1つのサンプル、に対し直接実施することができる。
【0047】
好ましくは、本発明によれば、ひげぜんまい5aをウエハ23から取り外したか否かに関わらず、ステップ35は、ひげぜんまい5a、及びひげぜんまい5aに結合させた所定の慣性Iを有するてんぷを備える組立体の振動数fを測定することを目的とする第1の段階を含み、次に、第2の段階において、関係式(5)を使用して、第1の段階からひげぜんまい5aの剛性Cを推測する。
【0048】
この測定段階は、具体的には、動的なものであり、本出願内に参照により組み込まれる欧州特許第2423764号の教示に従って実施することができる。しかし、代替的に、ひげぜんまい5aの剛性Cを決定するために、欧州特許第2423764号の教示に従って実施する静的な方法を実施することもできる。
【0049】
当然、上記で説明したように、方法は、ウエハ毎に唯一のひげぜんまいをエッチングすることに限定するものではないため、ステップ35は、代表サンプルの平均剛性、又は同じウエハ上で形成した全てのひげぜんまいの平均剛性の決定から構成してもよい。
【0050】
有利には、本発明によれば、ひげぜんまい5aの剛性Cの決定に基づき、方法31は、ステップ37を含み、ステップ37は、関係式(2)を用いて、所定の剛性Cのひげぜんまい5cを得るのに必要な材料の不足する厚さ、即ち、ひげぜんまい5aの表面に対し均一又は非均一に追加及び/又は修正すべき材料の体積を計算することを目的とする。
【0051】
方法は、ステップ39に続き、ステップ39は、ステップa)で形成したひげぜんまい5aを修正し、前記所定の剛性Cに必要な寸法Db、H
2、E
2でひげぜんまい5cを得るのに必要な前記不足する厚さの材料を補償することを目的とする。したがって、式(2)に従って、コイルの剛性を決定するのは乗積h・e
3であることを考えると、形状変動がひげぜんまい5aの厚さ及び/又は高さ及び/又は長さに生じていることは重要ではないことを理解されたい。
【0052】
したがって、均一な厚さを外表面全体に対し追加及び/若しくは修正する、非均一な厚さを外表面全体に対し追加及び/若しくは修正する、均一な厚さを外表面の一部のみに対し追加及び/若しくは修正する、又は非均一な厚さを外表面の一部のみに対し追加及び/若しくは修正することができる。例として、ステップ39は、ひげぜんまい5aの厚さE
1又は高さH
1のみに材料を追加することから構成することができる。
【0053】
第1の変形形態では、ステップ39は、段階d1を含み、段階d1は、前記所定の剛性Cに必要な寸法Db、H
2、E
2でひげぜんまい5cを得るために、ステップ33で形成したひげぜんまい5aの外表面の一部の上に層を堆積させることを目的とする。この段階d1は、例えば、熱酸化、めっき成長、物理気相蒸着(PVD)、化学気相蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)又はあらゆる他の追加方法により得ることができる。
【0054】
この段階d1は、例えば、単結晶シリコンひげぜんまい5a上にポリシリコンの形成を可能にする化学気相蒸着によって達成し、所定の剛性Cに必要な寸法Db、H
2、E
2でひげぜんまい5cを得ることができる。
【0055】
図4からわかるように、ひげぜんまい5cの断面は、高さH
2及び厚さE
2を有する。ひげぜんまい5cは、所定の剛性Cに必要な全体寸法Dbにある単結晶シリコンから作製した中央部22、及び多結晶シリコンから作製した周辺部24から形成されることに留意されたい。
【0056】
第2の変形形態では、ステップ39は、段階d2から構成することができ、段階e2は、所定の剛性Cに必要な寸法Db、H
2、E
2でひげぜんまい5cを得るために、ひげぜんまい5aの外表面の一部に対し所定の深さまで構造を修正することを目的とする。例として、
図4に示すように、非晶質シリコンを使用してひげぜんまい5aを形成する場合、非晶質シリコンを所定の深さまで結晶化し、非晶質シリコン中央部22及び多結晶シリコン周辺部24を形成して所定の剛性Cに必要な寸法Db、H
2、E
2でひげぜんまい5cを得ることができる。
【0057】
第3の変形形態では、ステップ39は、段階d3から構成することができ、段階d3は、所定の剛性Cをもつひげぜんまい5aの外表面の一部に対し所定の深さまで組成を修正することを目的とする。例として、
図4に示すように、単結晶シリコン又は多結晶シリコンを使用してひげぜんまい5aを形成する場合、これらのシリコンは、格子間原子又は置換原子により所定の深さまでドープ又は拡散させ、単結晶シリコン又は多結晶シリコン中央部22、及び異なるシリコン原子によりドープ又は拡散させた周辺部24を形成して所定の剛性Cに必要な寸法Db、H
2、E
2でひげぜんまい5cを得ることができる。この第3の変形形態は、必ずしも体積の増大を伴わないが、少なくとも表面的にヤング率が増大して所定の剛性Cが得られることに理解されたい。
【0058】
これらの3つの変形形態に関して、波形形状が周辺部24及び中央部22の一部分の上に常に再現されることがわかる。したがって、平滑化ステップをステップ39の前に提供し、任意の波形形状のひげぜんまい5aを減ずる又は除去することができる。
【0059】
方法31は、ステップ39で終了することができる。しかし、ステップ39の後、方法31は、少なくとももう一度ステップ35、37及び39を実施し、ひげぜんまいの寸法の質を更に改良することができる。ステップ35、37及び39のこれらの繰返しは、例えば、ウエハ23に取り付けたままのひげぜんまいの全て若しくは1つのサンプルに対しステップ35、37及び39の第1の繰返しを実施し、次に、第2の繰返しにおいて、ウエハ23から前もって取り外した、第1の繰返しを受けているひげぜんまいの全て若しくは1つのサンプルに対し実施すると、特に有利であり得る。
【0060】
方法31は、
図7に示す、任意選択のステップ41、43及び45を含む工程40の全て又は一部に続くことができる。有利には、本発明によれば、方法31は、このようにステップ41に続くことができ、ステップ41は、ひげぜんまい5cの少なくとも一部の上に一部分26を形成し、ひげぜんまい5cの剛性を修正し、熱変動にあまり反応しないひげぜんまい5、15を形成することを目的とする。
【0061】
第1の変形形態では、ステップ41は、段階e1から構成することができ、段階e1は、所定の剛性Cをもつひげぜんまい5cの外表面の一部の上に層を堆積させることを目的とする。
【0062】
部分22/24がシリコンベース材料であるケースでは、段階e1は、ひげぜんまい5cを酸化することから構成することができ、ひげぜんまい5cを二酸化シリコンで被覆してひげぜんまい5cの剛性を修正し、温度補償ひげぜんまい5、15を形成する。この段階e1は、例えば熱酸化によって得ることができる。この熱酸化は、例えば、800から1200℃の間の酸化雰囲気中で、水蒸気又は二酸素ガスを用いて達成し、ひげぜんまい5c上に酸化シリコンを形成することができる。
【0063】
図5に示す補償ひげぜんまい5、15はこのように得られ、補償ひげぜんまい5、15は、有利には、本発明によれば複合シリコン心部22/24及び酸化シリコン被覆部26を備える。したがって、有利には、本発明によれば、補償ひげぜんまい5、15は、特に高さH
3及び厚さE
3に関して非常に高い寸法精度を有し、付随的に、共振器1全体に対し非常に優れた温度補償も有する。
【0064】
シリコンベースひげぜんまいの場合、全体寸法Dbは、欧州特許第1422436号の教示を使用して求め、上記で説明したように、共振器1の構成部品の全てを製作、即ち補償することを目的とする共振器1に適用することができる。
【0065】
第2の変形形態では、ステップ41は、段階e2から構成することができ、段階e2は、所定の剛性Cをもつ前記ひげぜんまい5cの外表面の一部に対し所定の深さまで構造を修正することを目的とする。例として、非晶質シリコンを周辺部24及び可能性としては中央部22に使用する場合、非晶質シリコンは、周辺部24及び可能性としては中央部22において所定の深さまで結晶化することができる。
【0066】
第3の変形形態では、ステップ41は、段階e3から構成することができ、段階e3は、所定の剛性Cをもつ前記ひげぜんまい5cの外表面の一部に対し所定の深さまで組成を修正することを目的とする。例として、単結晶シリコン又は多結晶シリコンを周辺部24及び可能性としては中央部22に使用する場合、これらのシリコンは、周辺部24及び可能性としては中央部22において格子間原子又は置換原子により所定の深さまでドープ又は拡散させることができる。
【0067】
したがって本発明によれば、有利には、更なる複雑さを伴わずに、
図2に示すようなひげぜんまい5c、5、15を製作することが可能であり、ひげぜんまい5c、5、15は、具体的には、
−単一のエッチングにより得られたものよりも正確な断面(複数可)をもつ1つ又は複数のコイル;
−コイルに沿った厚さ及び/又はピッチの変動;
−一体形のひげ玉17;
−グロスマン曲線型の内側コイル19
−一体形のひげぜんまいひげ持ち取付け部14;
−一体形の外部取付け要素;
−コイルの残りの部分よりも厚い、外側コイル12及び/又は内側コイル19の一部分13
を備える。
【0068】
最後に、方法31は、ステップ45を含むこともでき、ステップ45は、ステップ41で得られた補償ひげぜんまい5、15、又はステップ39で得られたひげぜんまい5cを、ステップ43で得た所定の慣性を有するてんぷに組み付け、ひげぜんまい付きてんぷ型共振器1を形成することを目的とし、この共振器1は、温度補償型であっても、温度補償型ではなくてもよく、即ち共振器1の振動数fは、温度変動に敏感に反応するか又はあまり反応しない。
【0069】
当然、本発明は、図示の例に限定するものではなく、当業者に想起される様々な変形形態及び修正形態が可能である。特に、上記で説明したように、てんぷは、設計により既定された慣性を有する場合でさえ、計時器の販売前又は販売後の調節パラメータを供給する移動可能な慣性ブロックを備えることができる。
【0070】
更に、ステップ39と41との間、又はステップ39とステップ45との間に更なるステップを設け、例えば硬化層又は発光層等の機能層又は外観層を堆積させることができる。
【0071】
また、方法31がステップ39の後にステップ35、37及び39のうち1つ又は複数の繰返しを実施する際、ステップ35を意図的に実施しないことを想定することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 共振器
3 てんぷ
5 ひげぜんまい
5c ひげぜんまい
7 天真
9 推進ピン
11 ローラ
15 ひげぜんまい
23 ウエハ