(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343668
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】ジョークラッシャー、破砕プラント及び破砕方法
(51)【国際特許分類】
B02C 1/02 20060101AFI20180604BHJP
B02C 1/04 20060101ALI20180604BHJP
B02C 21/00 20060101ALI20180604BHJP
B02C 21/02 20060101ALN20180604BHJP
【FI】
B02C1/02 B
B02C1/04
B02C21/00 A
!B02C21/02
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-530001(P2016-530001)
(86)(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公表番号】特表2016-540631(P2016-540631A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】FI2013051074
(87)【国際公開番号】WO2015071525
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】510331445
【氏名又は名称】メッツォ ミネラルズ インク
【氏名又は名称原語表記】METSO MINERALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーロ ケイヨ
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−141639(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3052632(JP,U)
【文献】
特開平07−313891(JP,A)
【文献】
特開平05−154405(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00275100(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00−11/08
B02C 15/00−17/24
B02C 19/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ジョーと可動ジョーとを備え、
それら部材の間に破砕チャンバー(3)が形成され、該破砕チャンバー(3)はその上部が開放されており、
前記固定ジョーには第1摩耗部(1)が備え付けられており、前記可動ジョーにはピットマン(4)と第2摩耗部(2)とが備え付けられており、
前記破砕チャンバーは、それぞれ等しい高さ(h)を有する上部区域(5)、中間区域(6)及び下部区域(7)を備え、
前記ピットマンは、偏心シャフト(8)と少なくとも1つのスライド部材(9、9′)とに軸着されている、
ジョークラッシャー(100)であって、
前記偏心シャフト(8)の中心を通る実質的な水平線(11)は、前記破砕チャンバー(3)の中間区域(6)を通ると共に、前記少なくとも1つのスライド部材(9、9′)の位置を通り、
前記少なくとも1つのスライド部材(9、9′)は、前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線(10)に対して実質的に垂直な方向においてスライドするように構成されており、
更に、前記少なくとも1つのスライド部材(9、9′)は、該スライド部材に対向する下部スライド表面(12)と上部スライド表面(13)との間でスライドするように構成されており、かつ前記スライド部材の接続部位において前記ピットマン(4)の直線状移動経路を維持するように構成されている、
ことを特徴とする、ジョークラッシャー(100)。
【請求項2】
前記偏心シャフト(8)の中心を通る実質的な水平線(11)が前記破砕チャンバーの中心線(3′)を実質的に通ることにより前記破砕チャンバーが等しい高さ(H)の2つの部分に分割されることを特徴とする、請求項1に記載のジョークラッシャー。
【請求項3】
前記スライド部材(9、9′)が圧縮力及び張力の両方を垂直方向で受容するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のジョークラッシャー。
【請求項4】
前記スライド部材(9、9′)が、前記ピットマン(4)に対して又は前記ジョークラッシャーの側板に対して移動するように配備されており、
該スライド部材に接続する固定部材(14)が前記側板又は前記ピットマンに対応して接続されている、
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のジョークラッシャー。
【請求項5】
前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線(10)が重力方向にあることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のジョークラッシャー。
【請求項6】
第1スライド部材(9)が前記破砕チャンバー(3)の鉛直方向中央線(10)と前記偏心シャフト(8)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のジョークラッシャー。
【請求項7】
前記ジョークラッシャーが、前記第1スライド部材(9)の方向から見た場合に前記偏心シャフト(8)の後方に配置された第2スライド部材(9′)を更に備えることを特徴とする、請求項6に記載のジョークラッシャー。
【請求項8】
前記ジョークラッシャーが、前記偏心シャフト(8)と前記ピットマン(4)との間に配置された第3スライド部材(19)を備えることを特徴とする、請求項7に記載のジョークラッシャー。
【請求項9】
前記第3スライド部材(19)が偏心シャフト(8)の偏心移動を前記ピットマン(4)の水平移動に移行させるように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載のジョークラッシャー。
【請求項10】
前記ジョークラッシャーが、前記偏心シャフト(8)の偏心部(8′)と前記第1スライド部材又は第2スライド部材(9、9′)の固定部材(14、21)との間で接続されたクランク(20)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のジョークラッシャー。
【請求項11】
偏心スリーブ等の回転可能な偏心要素(22)が前記ピットマン(4)と前記破砕チャンバー(3)に近接するピットマンの前端部に位置する偏心シャフトの偏心部(8′)との間で着軸されており、
前記偏心要素(22)及び前記偏心シャフト(8)の偏心度と回転速度とが、前記ピットマンの直線状の移動が実現するように等しく設定されている、
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のジョークラッシャー。
【請求項12】
前記少なくとも1つのスライド部材(9,9′)は、前記破砕チャンバー(3)の方向から見た場合に前記偏心シャフト(8)の後方に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載のジョークラッシャー。
【請求項13】
前記ジョークラッシャーが、前記少なくとも1つのスライド部材(9,9′)を垂直に支持するように設定された特定の安全圧力限界を有する上部及び下部の液圧シリンダー(26,27)を備えた安全デバイスを備えることを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載のジョークラッシャー。
【請求項14】
前記偏心シャフト(8)と前記第1スライド部材(9)との間の第1距離が、前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線(10)と前記第1スライド部材(9)との間の第2距離よりも実質的に大きくなるように設定されていることを特徴とする、請求項6に記載のジョークラッシャー。
【請求項15】
前記ジョークラッシャーが設定及びジョー角度の調整装置を備え、該調整装置は前記固定ジョーの上端部及び下端部に位置することを特徴とする、請求項1〜14の何れか1項に記載のジョークラッシャー。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載のジョークラッシャー(100)を備えることを特徴とする、破砕プラント(200)。
【請求項17】
ジョークラッシャー(100)又は破砕プラント(200)において鉱物材料を破砕する方法であって、
前記ジョークラッシャー(100)又は破砕プラント(200)は固定ジョーと可動ジョーとを備え、それら部材の間に破砕チャンバーが形成され、該破砕チャンバー(3)はその上部が開放されており、前記固定ジョーには第1摩耗部(1)が備え付けられており、前記可動ジョーにはピットマン(4)と第2摩耗部(2)とが備え付けられており、
前記破砕チャンバーは、それぞれ等しい高さ(h)を有する上部区域(5)、中間区域(6)及び下部区域(7)を備え、
前記ピットマンは、偏心シャフト(8)と少なくとも1つのスライド部材(9、9′)とに軸着されており、
前記偏心シャフト(8)の中心を通る実質的な水平線(11)は、前記破砕チャンバー(3)の中間区域(6)を通ると共に、前記少なくとも1つのスライド部材(9、9′)の位置を通り、
前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線(10)に対して実質的に垂直な方向において前記ジョークラッシャーにおける移動機構の前記少なくとも1つのスライド部材(9、9′)をスライドさせることによって、前記破砕チャンバーにおいて、実質的に直線状の破砕ストロークが、破砕する材料に向くようにすることを含むことを特徴とし、
更に、前記少なくとも1つのスライド部材(9、9′)は、該スライド部材に対向する下部スライド表面(12)と上部スライド表面(13)との間でスライドするように構成されており、かつ前記スライド部材の接続部位において前記ピットマン(4)の直線状移動経路を維持するように構成されていることを特徴とする、
方法。
【請求項18】
前記スライド部材(9、9′)を用いて異なる負荷状態において圧縮力と張力の両方を垂直方向で受容することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ピットマン(4)に対して又は前記ジョークラッシャーの側板に対して前記スライド部材(9、9′)を移動させることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
クランク(20)によって前記スライド部材(9、9′)を前記偏心シャフト(8)の偏心移動と連動させることを特徴とする、請求項17〜19の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物材料の破砕に好適なジョークラッシャー、処理プラント及び破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョークラッシャーの機能は、岩石を圧縮する力を利用するものである。偏心シャフトが、ジョークラッシャー本体に取り付けられており、その偏心シャフトには、固定ジャーに対して偏心移動をする可動ジョー、即ちピットマンが連結されている。ジョークラッシャーのピットマンを動作させるために、主に2つの種類のものが知られており、ピットマンの動作機構において、2つのトグルプレート(いわゆるダブルトグル)又は1つのトグルプレート(いわゆるシングルトグル)が用いられている。
【0003】
ダブルトグル型ジョークラッシャーにおいては、偏心シャフトが2つのトグルプレートの間に連結されており、ピットマンの一方の端部(例えば、ブレーキクラッシャーにおける下端部)を動作させ、該ピットマンの他方の端部クラッシャー本体に枢支されている。いわゆるオーバーヘッド・ピボット型のダブルトグル・クラッシャーにおいては、ピットマン上端部の回転軸が、破砕チャンバーの二等分線上に位置しており、破砕チャンバの上部において、従来のブレーキクラッシャーのストロークよりも大きいストロークが生じ、該ストロークは、固定ジョーに対してより垂直な方向にある。該ストロークは大きい円弧の形態である。
【0004】
シングルトグル型クラッシャーは、ダブルトグル型クラッシャーよりも単純である。シングルトグル型クラッシャーにおいては、ピットマンの一方の端部が、偏心シャフトを介してクラッシャー本体に枢支されており、ピットマンの他方の端部がトグルプレートを介してクラッシャー本体に枢支されている。ピットマンの上端部が偏心シャフトによって枢支されている(オーバヘッド偏心型クラッシャー)場合、可動ジョーの動作形状は、偏心シャフト近傍にあるので、破砕チャンバーの上部において殆んど円形となる。さらに、破砕チャンバーの底部におけるストロークは、細長い楕円形であるが、その運動形状は、破砕チャンバーにおいて上方に行くにつれ円により近い形態となる。
【0005】
シングルトグルクラッシャーにおいては、破砕チャンバの上部及び中央部において強力なストロークが、動作形状の形態により短くなるという問題がある。圧縮動作の大部分は、斜め下方又は上方に向けられる。単一の石を壊すために必要な破砕ストローク量は、ストロークが短いために高くなり、ストロークが短いことが処理能力を制限しており、実質的な破砕の前は、破砕を受ける材料の表面のみの粉砕にしか繋がらない。微細な材料は、経済的に関心を引くものではなく、微細な材料の生成は不要なエネルギー消費を生じさせる。ストロークの方向は、破砕チャンバーの底部において最適ではないが、上方に向かい、破砕を受ける材料は、摩耗表面上を垂直に動く。相対的に長い圧縮距離を要する大量の石は破砕チャンバーの上部で破砕される。既知のクラッシャーの上部におけるストローク長は、石のサイズに対して小さい。クラッシャーの破砕チャンバーの上部においてはストロークが短いことから、大きな石が壊れるまでには多数のストロークが必要とされる。好ましくないストローク方向は、破砕チャンバの二等分線に対して垂直なストロークよりも、ジョーを摩耗する。
【0006】
ダブルトグルクラッシャーにおいて、ストロークの形状及び方向は、シングルトグルクラッシャーにおけるそれらよりも良い。一方、ストロークは、破砕チャンバの下部よりも上部においてより小さく、それゆえに、破砕チャンバの上部は処理能力を制限してしまう部分になりやすい。
【0007】
ジョーが摩耗すると、破砕チャンバーにおけるかみ角が大きくなり、一部のアプリケーションにおいては、クラッシャーの処理能力を下降させ得、実質的小さくし得る。
【0008】
英国特許第275100号には、固定破砕ジョーと偏心部によって駆動させる可動破砕ジョーとを有する砕石機が示されている。この可動ジョーは、側方において水平移動可能なピボット上に掛かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第275100号
【0010】
本発明は、既知のクラッシャー(破砕機)に関連して存在する欠点を克服し又は少なくとも緩和することができる、代替クラッシャーを創作することを目的とする。
【0011】
本発明の第1の例示態様によれば、固定ジョーと可動ジョーとを備え、それら部材の間に破砕チャンバーが形成され、該破砕チャンバーはその上部が開放されており、前記固定ジョーには第1摩耗部が備え付けられており、前記可動ジョーにはピットマンと第2摩耗部とが備え付けられており、前記破砕チャンバーは、それぞれ等しい高さを有する上部区域、中間区域及び下部区域を備え、かつ前記ピットマンは、偏心シャフトと少なくとも1つのスライド部材とに軸着されており、前記少なくとも1つのスライド部材は、前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線に対して実質的に垂直な方向においてスライドするように構成されている、ジョークラッシャーが提供される。
【0012】
前記偏心シャフトの中心を通る実質的な水平線が前記破砕チャンバーの中間区域を通ることが好ましい。
【0013】
前記偏心シャフトの中心を通る実質的な水平線が前記破砕チャンバーの中心線を実質的に通ることにより前記破砕チャンバーが等しい高さの2つの部分に分割されることが好ましい。
【0014】
前記偏心シャフトの中心を通る実質的な水平線が前記少なくとも1つのスライド部材の位置を通ることが好ましい。
【0015】
前記スライド部材が圧縮力及び張力の両方を垂直方向で受容するように構成されていることが好ましい。
【0016】
前記少なくとも1つのスライド部材が、該スライド部材に対向する下部スライド表面と上部スライド表面との間でスライドするように構成されており、かつ前記スライド部材の接続部位において前記ピットマンの直線状の移動経路を維持するように構成されていることが好ましい。
【0017】
前記スライド部材が、前記ピットマンに対して又は前記ジョークラッシャーの側板に対して移動するように配備されており、かつ該スライド部材に接続する固定部材が前記側板又は前記ピットマンに対応して接続されていることが好ましい。
【0018】
前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線が重力方向にあることが好ましい。
【0019】
第1スライド部材が前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線と前記偏心シャフトとの間に配置されていることが好ましい。
【0020】
前記ジョークラッシャーが、前記第1スライド部材の方向から見た場合に前記偏心シャフトの後方に配置された第2スライド部材を更に備えることが好ましい。
【0021】
前記ジョークラッシャーが、前記偏心シャフトと前記ピットマンとの間に配置された第3スライド部材を備えることが好ましい。
【0022】
前記第3スライド部材が偏心シャフトの偏心移動を前記ピットマンの水平移動に移行させるように構成されていることが好ましい。
【0023】
前記ジョークラッシャーが、前記偏心シャフトの偏心部と前記第1スライド部材又は第2スライド部材の固定部材との間で接続されたクランクを備えることが好ましい。
【0024】
偏心スリーブ等の回転可能な偏心要素が前記ピットマンと前記破砕チャンバーに近接するピットマンの前端部に位置する偏心シャフトの偏心部との間で着軸されており、かつ前記偏心要素及び前記偏心シャフトの偏心度と回転速度とが、前記ピットマンの直線状の移動が実現するように等しく設定されていることが好ましい。
【0025】
前記スライド部材は、前記破砕チャンバーの方向から見た場合に前記偏心シャフトの後方に配置されていることが好ましい。
【0026】
前記ジョークラッシャーが、前記少なくとも1つのスライド部材を垂直に支持するように設定された特定の安全圧力限界を有する上部及び下部の液圧シリンダーを備えた安全デバイスを備えることが好ましい。
【0027】
前記偏心シャフトと前記第1スライド部材との間の第1距離が、前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線と前記第1スライド部材との間の第2距離よりも実質的大きくなるように設定されていることが好ましい。
【0028】
前記ジョークラッシャーが設定及びジョー角度の調整装置を備え、該調整装置は前記固定ジョーの上端部及び下端部に位置することが好ましい。
【0029】
本発明の第2の例示態様によれば、本発明の任意の実施形態によるジョークラッシャーを備える破砕プラントが提供される。
【0030】
本発明の第3の例示態様によれば、ジョークラッシャー又は破砕プラントにおいて鉱物材料を破砕する方法であって、前記ジョークラッシャー又は破砕プラントは固定ジョーと可動ジョーとを備え、それら部材の間に破砕チャンバーが形成され、該破砕チャンバーはその上部が開放されており、前記固定ジョーには第1摩耗部が備え付けられており、前記可動ジョーにはピットマンと第2摩耗部とが備え付けられており、前記破砕チャンバーは、それぞれ等しい高さを有する上部区域、中間区域及び下部区域を備え、かつ前記ピットマンは、偏心シャフトと少なくとも1つのスライド部材とに軸着されており、前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線に対して実質的に垂直な方向において前記ジョークラッシャーにおける移動機構の前記少なくとも1つのスライド部材をスライドさせることによって、前記破砕チャンバーにおいて、実質的に直線状の破砕ストロークが、破砕する材料に向くようにする、方法が提供される。
【0031】
前記ジョークラッシャーの移動機構において前記偏心シャフトの中心を通る実質的な水平線が前記破砕チャンバーの中間区域を通ることが好ましい。
【0032】
前記スライド部材を用いて異なる負荷状態において圧縮力と張力の両方を垂直方向で受容することが好ましい。
【0033】
前記少なくとも1つのスライド部材を、該スライド部材に対向する下部スライド表面と上部スライド表面との間でスライドさせ、前記スライド部材の接続領域においてピットマンの直線状移動経路を維持することが好ましい。
【0034】
前記ピットマンに対して又は前記ジョークラッシャーの側板に対して前記スライド部材を移動させることが好ましい。
【0035】
クランクによって前記スライド部材を前記偏心シャフトの偏心移動と連動させることが好ましい。
【0036】
前記ジョークラッシャーの設定とジョー角度とは、前記固定ジョーの固定ジョーの上端部及び下端部に位置する調整装置によって調整されることが好ましい。該調整装置は、前記ジョークラッシャーの本体(前方端部)と前記固定ジョーの摩耗部との間に位置することが好ましい。オーバーロード保護デバイスが前記調整装置に組み込まれていることが好ましい。
【0037】
初期試験によれば、本発明に係るクラッシャーの製造能力は、明らかに、従来のシングルトグルクラッシャーよりも高い。粗積りによれば、摩耗部の摩耗は従来技術の摩耗と比較すると1/4である。重要となるジョー角度は、可動ジョーの良好な移動経路により広くなり得る。
【0038】
鉱物材料の破砕量当たりのジュークラッシャーによって利用される動力は、既知の応用における動力よりも小さいものとなり得る。何故ならば、各ジョーの間で破砕を受ける材料を垂直に移動させる破砕イベントにおいて利用されるエネルギーはより小さいからである。動力の大部分が、各ジョーの相対的な垂直移動を用いて材料を砕く方ではなく、鉱物材料の破砕に利用され得ることから、同じ破砕動力によって得られる破砕容量がより大きくなり得る。
【0039】
上記移動機構により、破砕チャンバーの鉛直方向中央線に対して垂直な方向において最適なストロークが可能になる。同時に、同ストロークは、破砕チャンバー全体の領域において、殆んど又は完全に一定となり、それゆえに、また、破砕チャンバーの上部及び中央部に対して十分なストロークが得られる。破砕チャンバの上部において、該ストロークがダブルトグル型クラッシャーと比較して増大し、大きい塊の破砕可能性が増大する。そして、必要となる作業サクルも少なくなり、破砕チャンバーの上部の生産能力が増大する。破砕チャンバー全体は、実際により均一に稼働することが可能になる。ストロークが破砕チャンバーの二等分線に対して殆ど垂直となることから、各ジョーの摩耗は従来のクラッシャーと比較て小さくなる。固定ジョーの設定を調整することに加えて、上部及び/又は下部において該固定ジョーの位置を調整することによって、所望により追加の部材なしにジョー角度を変化させることができる。同時に、該ジョー角度は、各ジョーの寿命全体の間に一定に保つことができる。ジョー角度は、各岩石材料に対して好適になるよう調整することができる。
【0040】
フライホイールの位置は、先行技術における位置よりも本発明においては実質的に低く、クラッシャー及び破砕プラントの全体の高さを減少させる。クラッシャーがよりコンパクトであることから、「固定ジョーではなく」可動ジョーの方向からもまた送給を可能にする。この状態は、可動ジョーに対する大きい石が、クラッシャーの構造に対してより大きい力を生じ得る当該可動ジョーよりも有利である。。
【0041】
移動形状がより最適なものとなることから、クラッシャーと摩耗部材の摩耗が減じられ、生産能力が増大し、エネルギー消費量が減少する。
【0042】
クラッシャーサイズがよりコンパクトになることから、破砕プラントの設計の柔軟性が以前よりも向上することを可能にする(プラントがよりコンパクトになる。)。
【0043】
本発明の様々な実施形態が例示され、又は本発明の幾つかの態様にのみ関連して例示されている。当業者においては、本発明の特定の態様の任意の実施形態は、本発明の同一の態様、並びに他の態様にのみ、又はさらに他の実施形態との組合せにおいて適用され得ることが理解される。
【0044】
添付の模式図を参照することにより本発明を例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】鉱物材料の破砕に適した破砕プラントの側面図を示す。
【
図2】本発明の第1の好ましい実施形態による移動機構の側面図を示す。
【
図3】本発明の第2の好ましい実施形態による移動機構の側面図を示す。
【
図4】本発明の第3の好ましい実施形態による移動機構の側面図を示す。
【
図5】本発明の第4の好ましい実施形態による移動機構の側面図を示す。
【
図6】
図3のジョークラッシャーに類似する代替クラッシャーを示す。
【
図7】
図4及び5のジョークラッシャーに類似する代替クラッシャーを示す。
【
図8】本発明の第5の好ましい実施形態による移動機構の側面図である。
【
図9】
図8に示す移動機構の好ましい偏心配置の断面を示す。
【
図10】
図2の移動機構が提供された、本発明の第1の好ましい実施形態による安全デバイスの例を示す。
【0046】
以下の説明において、同様の数字は同様の要素を示す。示されている図面は縮尺が完全に釣り合ってはおらず、当該図面は、主に本発明の特定の例示実施形態を示すことを目的とするものであることを理解されたい。
【0047】
図1は、鉱物材料処理装置、即ちジョークラッシャー100を備える破砕プラント200を示す。破砕プラント200は、ジョークラッシャー100に材料を送給するフィーダー103と、当該破砕プラントからさらに破砕した材料を輸送するベルトコンベヤー106とを有する。
【0048】
図1に示すベルトコンベヤー106は、少なくとも1つのローラー108の周囲を通るように構成されたベルト107を備える。破砕プラント200はまた、動力源と制御ユニット105とを備える。該動力源は、例えば、処理ユニット及び液圧回路にエネルギーを供給するディーゼルエンジン又は電動機であってもよい。
【0049】
フィーダー103、クラッシャー100、動力源105及びコンベヤー106は、破砕プラントの本体101に接続されており、本実施形態における該本体は、更に破砕プラント200を移動させるトラックベース102を備える。該破砕プラントはまた、完全に若しくは部分的に車輪を利用したものであってもよく、又は脚部材を利用して移動可能なものであってもよい。あるいは、該破砕プラントは、例えばトラック又はその他外部動力源によって移動可能/牽引可能であってもよい。あるいは、該破砕プラントは、固定プラントであってもよい。
【0050】
鉱物材料は、例えば採鉱された岩石あってもよく、又はアスファルト若しくはコンクリートやレンガ等の建築解体廃棄物等であってもよい。上記に加え、該破砕プラントは固定プラントであってもよい。
【0051】
図2から
図10に示す、ジョークラッシャー100の移動機構の実施形態は、例えば
図1の破砕プラント200において用いられ得る。
【0052】
図1から
図10に示すジョークラッシャー100は、固定ジョーと可動ジョーとを備え、これら部材はその間に上部が開放された破砕チャンバー3を形成する。第1摩耗部1が該固定ジョーに接続されており、第2摩耗部2がピットマン4に固定されている。
図2から
図10において、前記固定ジョーは前記固定ジョーに接続された摩耗部1によって表されており、前記可動ジョーはピットマン4に接続された摩耗部2によって表されている。破砕チャンバー3は、それぞれ等しい高さhを有する上部区域5、中間区域6及び下部区域7を備えている。ジョークラッシャーの移動機構は、ピットマン4が、第1に回転可能な偏心シャフト8に接続し、第2に、破砕チャンバー3の垂直な鉛直方向中央線10に対して実質的に垂直な方向においてスライドするように構成された少なくとも1つのスライド部材9に接続されていることに基づくものである。偏心シャフト8の中心を通る実質的に水平な線11が破砕チャンバ3の中間区域6を通ることが好ましい。
【0053】
偏心シャフト8の中心を通る実質的に水平な線11は、破砕チャンバ3の水平中心線3′を通ることにより、前記破砕チャンバーが等しい高さHで2つの部分に分割されることが好ましい。
【0054】
偏心シャフト8は、一方の側がピットマン4に第1支持点で、かつ他方の側がジョークラッシャーの本体(不図示)に、回転可能に軸着されている。該偏心シャフトの偏心度を用いることにより、ピットマン4とそれによる可動ジョーとのストロークを生み出す。偏心シャフト8の偏心度は、可動ジョーのストローク長の半分に等しいことが好ましい。
【0055】
ピットマン4は、さらに、少なくとも1つのスライド部材9によって少なくとも第2支持点において本体2に支持される。前記少なくとも1つのスライド部材9は、該スライド部材9に対向する下部スライド表面12と上部スライド表面13との間で(クラッシャー本体に対して)スライドするように構成されていることが好ましい。前記上部スライド表面はスライド部材9の上方への移動を規制し、前記下部スライド表面はスライド部材9の下方への移動を規制することにより、該スライド部材の接続部位におけるピットマンの直線状移動経路を維持する。
【0056】
スライド部材9は、異なる負荷状態において圧縮力及び張力の両方を受容するように、つまり、破砕チャンバー3の上部位置又は低部位置における破砕可能材料の位置とそこから結果として生じる力とに応じて、上方と下方との両方に向かう力を受容するように構成されている(
図10も参照。)。
【0057】
スライド部材9は、ピットマン4の摩耗部2の摩耗表面に可能な限り近接して水平に位置していることが好ましく、この場合、
図2の可動ジョーに対して極めて短い垂直移動が獲得され得る。固定ジョーに対するピットマン摩耗表面の垂直移動が減少すると、破砕を受ける材料が各ジョーの間で垂直に摩耗されてはならない場合に、クラッシャーで必要とされる動力を減じる。
【0058】
ピットマン4に対するスライド部材9の接続部が第摩耗部2の摩耗表面に、より好ましくは破砕チャンバー3の垂直鉛直方向中央線10に近づけば近づくほど、偏心シャフト7もまた前記摩耗表面により近づくこととなり、クラッシャーを短くすることができる。前記偏心シャフト、及び必要に応じて該偏心シャフトに接続されたフライホイールを典型的なシングルトグルクラッシャーよりも低くすることが可能である場合、前記クラッシャーを低くすることも可能であり、コンパクトなクラッシャーを作ることができる。
【0059】
破砕チャンバー3の垂直鉛直方向中央線10は、
図2から
図8及び
図10に示すとおり重力方向にあることが好ましい。これによって、例えば前記固定ジョー及び前記可動ジョーにおける向かい合った摩耗部1と2とが垂直線に対して互いに反対の方向において等しい傾斜角度を有する場合、摩耗部1及び2が等しく摩耗するように破砕チャンバー3を構成することができる。一般に、破砕チャンバー3の垂直鉛直方向中央線10は、破砕チャンバー3のにおけるニップアングルを二分する方向、即ち当該破砕チャンバーの二等分線の方向にある。本説明における図は、当該破砕チャンバーの二等分線が重力方向にある場合の好ましい状態で描写されたものである。
【0060】
鉱物材料の破砕において、破砕チャンバーの開口部は、実際には、例えば破砕チャンバーに石を送給するための特定のサイズを有する。破砕チャンバーのジョー角度を調整することによって、破砕を受ける材料を所定位置に保持し、固定ジョーとピットマンとに固定された摩耗部の表面上で上方に動かないように、効率的な破砕を実現する。場合によってはジョー角度が先行技術と比較して大きくされ得る本発明の好ましい実施形態によるクラッシャーを用いて破砕した場合、ピットマン4は、破砕チャンバー3の鉛直方向中央線10に対して実質的に垂直に移動され得る。そして、該クラッシャーは必要に応じて低くすることもできる。
【0061】
ジョークラッシャーの設定及びジョー角度は、各装置(不図示)を調整することによって調整することができ、それら各装置は固定ジョーの上端部及び下端部に位置することが好ましい。これらの調整装置にはオーバロード保護デバイスが組み込まれていることが好ましい。
【0062】
可動ジョーの移動機構により、破砕チャンバー3の鉛直方向中央線10に対して垂直な方向における最適なストロークが可能になる。
図2〜
図8に示す実施形態においては、ストロークはほぼ一定であり、
図3〜9においては、さらに、破砕チャンバー全体の領域において直線である。
【0063】
図2は、第1の好ましい実施形態による移動機構の側面図を示す。シャフト14又は一方の側でスライド部材9に接続する対応の固定部材が、他方の側でピットマン4に、又はクラッシャー本体の側板に接続している。対応して、スライド部材9は、該側板又はピットマンに対して移動する。スライド部材9は、前記側板又はピットマンに開けられた穴15を移動可能であることが好ましい。該穴は、好ましくは、スライド部材9に近接するように構成された、互いに向かい合う2つのスライド表面12及び13を備える。
【0064】
破砕チャンバーにおける可動ジョー2の移動経路16は、
図2においては楕円形状であり、
図2においては偏心シャフト8は、該偏心シャフトが位置するピットマンの後端部を上昇させ及び下降させる。移動経路16の縦軸は、破砕チャンバー3の鉛直方向中央線10に対して垂直である。スライド部材9は、破砕チャンバーの鉛直方向中央線に可能な限り近接させた場合、移動経路16は最も水平となり、固定ジョーと可動ジョーとの相対的な望ましくない垂直移動が最小化される。
【0065】
破砕チャンバー3の中間区域6を通る実質的に水平な線11状の偏心シャフトの位置は、破砕チャンバ3の上部区域5及び下部区域7において可動ジョーの対称移動経路16を作り出す。
【0066】
図2において、偏心シャフト8は時計回りに回転するように最適に構成されており、即ち偏心シャフトの偏心部は、偏心シャフトの下に矢印によって示す破砕チャンバ3の側で上方に移動する。偏心シャフト8の当該回転方向により、前記移動機構と共に、移動経路16の反時計回りの方向を生成し、この方向は該移動経路の上の矢印によって示されている。
【0067】
図3は、第2の好ましい実施形態による移動機構の側面図である。可動ジョーの完全に直線状の移動経路16が、破砕チャンバの垂直鉛直方向中央線10に実質的に垂直な方向においてスライドするように構成された(少なくとも)2つのスライド部材を用いて達成される。
図3のジョークラッシャーは、
図2に示す第1スライド部材9に加えて、ピットマン4の後端に、2つの向かい合ったスライド表面と接触し、
図2に記載の第1スライド部材9と機能が同じ、追加のスライド部材、即ち第2スライド部材9′と、偏心シャフト8とピットマン4との間に配置される追加の第3スライド部材19とを備える。第3スライド部材19は、実質的に垂直にスライドするように配置されていることが好ましい。前記第2スライド部材は、前記第1スライド部材の方向から見た場合、前記偏心シャフトの後方に配置されている。第1スライド部材9及び第2スライド部材9′は、前記可動ジョーの移動経路を直線状に維持し、可動ジョーを、好ましくは水平に移動させる正しい位置に保持する。第1スライド部材9及び第2スライド部材9′は、クラッシャーの側板に対して又はピットマンに対して移動する。当該第1スライド部材及び第2スライド部材は、異なる負荷状態において圧縮力と張力との両方を受容するように、言い換えると結果として生じる破砕力の位置に依存して上方と下方の両方に向かう力を受容するように構成されている。
【0068】
第3スライド部材19は、偏心部の移動を破砕チャンバの垂直鉛直方向中央線10に対して実質的に垂直な方向におけるピットマンの移動に移行させるように構成されている。より詳細には、第3スライド部材19は、偏心シャフトの偏心移動をピットマン4の水平移動に移行させるように構成されており、好ましくは偏心シャフト8の垂直移動成分を排除するように構成されている。第3スライド部材19は、ピットマンの側をスライドし、好ましくは当該ピットマンの開口17の中をスライドする。ピットマン4、好ましくは開口17は、第3スライド部材19に対向し、かつ該第3スライド部材と近接するように構成された第3スライド表面18及び第4スライド表面18′を備える。
【0069】
スライド部材9、9′、19全て(また偏心シャフト8)の好ましい位置は、破砕チャンバ3の鉛直方向中央線10に対して垂直な線11上にあり、かつ垂直方向では当該破砕チャンバの水平中央線3′の高さ方向に存在する。前記第1スライド部材及び第2スライド部材の代替位置が
図6及び
図7に関連して説明されている。
【0070】
実質的な水平な線11がピットマン4の支持点を、好ましくは前記第1スライド部材及び第2スライド部材を、かつ破砕チャンバ3の中間区域6を通る場合、前記第1スライド部材及び第2スライド部材は、上部区域と下部区域とに向かう力を受容し、前記第1スライド部材及び第2スライド部材の下部表面及び上部表面との接触状態からの分離を除外する。
【0071】
図4は、本発明の第3の好ましい実施形態による移動機構の側面図である。可動ジョーの完全な直線形状の移動経路16が、
図3と同様に第1スライド部材9及び第2スライド部材9′を用いて達成される。
図4の可動ジョーの破砕移動は、偏心シャフト8と、偏心シャフトの偏心部と第2スライド部材9′のシャフト21等の固定部材との間で接続されるクランク20を備えたクランク機構とによって生み出される。当該クランク機構は、前記偏心シャフトの偏心移動をピットマンの4の水平移動に移行させ、かつ偏心シャフト8の垂直移動成分を遮断するように構成されている。
【0072】
第1スライド部材9及び第2スライド部材9′は、可動ジョーの移動経路を直線状に維持し、可動ジョーを正しい位置に保持する。第1スライド部材9及び第2スライド部材9′は、クラッシャーの側板に対して又はピットマンに対して移動する。該第1スライド部材及び第2スライド部材は、異なる負荷状態において圧縮力と張力との両方を受容するように、言い換えると結果として生じる破砕力の位置に依存して上方と下方の両方に向かう力を受容するように構成されている。
【0073】
2つのスライド部材9、9′及び偏心シャフト8の好ましい位置は、破砕チャンバ3の鉛直方向中央線10に対して垂直な線11上にあり、かつ垂直方向では当該破砕チャンバの水平中央線3′の高さ方向に存在する。前記第1スライド部材及び第2スライド部材の代替位置が
図6及び
図7に関連して説明されている。
【0074】
図5における移動機構は、
図4における移動機構と基本的には同様のものであるが、クランク20が、第2スライド部材9′の固定部材21の代わりに第1スライド部材9の固定部材14に軸支されている。
図4と同じ移動に関する利点が達成される。当然、前記クランクは、第1スライド部材と第2スライド部材との両方に連結され得る。
【0075】
図6及び7は、
図3〜
図5のジョークラッシャーと同様の代替ジョークラッシャーを示し、ジョークラッシャーは、破砕チャンバの垂直対角性10に対して実質的に垂直な方向においてスライドするように構成された2つのスライド部材を備える。
【0076】
図6の例においては、ジョークラッシャーの第2実施形態の第1スライド部材9及び第2スライド部材9′は、同じ垂直高さに位置しているが、偏心シャフト8とは異なる垂直高さレベルに位置する。
図6においては、スライド部材の異なる高さ一に関し更なる選択肢が破線を用いて示されており、参照番号9"を用いて示されている。前記第1スライド部材及び第2スライド部材は、破砕チャンバの鉛直方向中央線に対して実質的に垂直な方向においてスライドするように構成されている場合、異なる垂直高さレベルに位置していてもよい。
図6に従って説明される高さレベルの例はまた、ジョークラッシャーの第3及び第4の実施形態と共に適用され得る。
【0077】
図7の例においては、ジョークラッシャーの第3実施形態の第1スライド部材9及び第2スライド部材9′は異なる垂直高さに位置している。
図7の例においては、スライド部材の一方が偏心シャフト8と同じ高さレベルに位置する。
図7に従って説明される高さレベルの例はまた、ジョークラッシャーの第2の実施形態と共に適用され得る。
【0078】
図8に示す移動機構の第5の好ましい実施形態は、偏心シャフト8の偏心部の周囲に搭載される偏心スリーブ等の追加の偏心要素22を備え、偏心要素22は破砕チャンバ又は第2摩耗部2に近接するピットマン4の前端部に位置する。第2偏心要素22は、
図8において反対方向を向く矢印で示されるとおり、偏心シャフト8とは反対の回転方向で回転する(
図9における回転デバイス23)ように構成されている。両偏心要素8及び22の偏心度と回転速度は、可動ジョーの完全な直線状かつ水平な移動経路16が達成されるように互いに等しく設定されることが好ましい。
【0079】
組み合わせた2つの偏心部8、22と第2スライド部材9′により、可動ジョーの移動経路を直線状に維持し、該可動ジョーを正しい位置に保持する。第2スライド部材9′は、クラッシャーの側板に対して又はピットマンに対して移動する。組み合わせた2つの偏心部8、22と第2スライド部材9′は、異なる負荷状態において圧縮力と張力との両方を受容するように、言い換えると破砕チャンバ3にける結果として生じる破砕力の位置に依存して上方と下方の両方に向かう力を受容するように構成されている。
【0080】
図9は、
図8に示す移動機構の例示偏心配置の断面を示す。偏心シャフト8は、ジョークラッシャー100の側板24等の本体に軸着されている。第1に、偏心スリーブ22が偏心シャフト8の偏心部8′に、その周りに軸着され、第2に、ピットマン4の穴4′の中に軸着されている。回転デバイス23はピットマン4と例示平衡錘25を有する偏心スリーブ22とに連結されている。
【0081】
図10は、
図2の移動機構に備えられたオーバロード安全デバイス26、27を示す。該安全デバイスは、好ましくは下部及び上部のスライド表面12、13を介してスライド部材9を垂直方向から支持するように設定された特定の安全圧限界を有する下部及び上部の液圧シリンダー26、27を備える。典型的には、破砕力の合力が、破砕チャンバー3の上部区域5(例えば大きい石)又は下部区域7(例えば、金属片又は微細材料の塊)において生じ、スライド部材9(及び/又は第2スライド部材9′)は高い垂直方向の力を受容する。
図9の例においては、材料28は、破砕チャンバーの下部区域7で塊となり、下部液圧シリンダー26が垂直方向の力29によりスライド部材9を支持する。
【0082】
前述の液圧シリンダー26,27の配置は、通常運転の間は、スライド部材9(及び/又は第2スライド部材9′)と、下部表面12との間、また上部表面13との間のクリアランスを適切に維持するように構成されている。
【0083】
安全デバイスの別の例によれば、第1スライド部材9及び第2スライド部材)9′の固定シャフト14、21は、特定のせん断力が生成されるような寸法とされている。
【0084】
本発明によれば、前記摩耗部の効率及び摩耗の観点から、ジョークラッシャー100の可動ジョーの極めて最適な移動経路16を作り出すことが可能となる。実質的に直線状の移動が達成され得、この移動は、前記破砕チャンバーの鉛直方向中央線に対して垂直であり、かつ破砕チャンバー全体にわたって大きさが等しい。必要とされる最終的な約0.2%の圧縮ひずみにより大きい石が破砕されるように十分なストロークが破砕チャンバーの上部において実現される。破砕チャンバの下部区域における大きいストロークは、クラッシャー100及び破砕プラント200の生産能力を増加させる。破砕チャンバーの鉛直方向中央線に対して垂直な直線状のストロークは摩耗部を最小限に摩耗する。
【0085】
上記の移動機構の各選択肢においてはスライド方向が同じ1つ又は2つのスライドを用いる。該スライドは2方向の力を生成することが好ましい。水平に移動するスライドは下方及び上方に向かう力を生成することが好ましい。スライド及び偏心シャフトは、破砕チャンバーの中間区域を通る線上に位置することが好ましい。
【0086】
図1は、非常に単純に利用可能であり、破砕チャンバー3の全体の領域において相対的に良好な移動経路16を伴って容易に実施することができる。破砕チャンバーが極めて高い場合、破砕チャンバーの中間区域6におけるストロークは上部区域5及び下部区域7におけるストロークよりも短いままとなる。偏心シャフト8と第1スライド部材9との間の第1距離は、破砕チャンバーの鉛直方向中央線10と第1スライド部材9との間の第2距離よりも実質的に大きくなるように設定される。前記第1距離が前記第2距離よりも大きいと、前記移動経路はより良好なものとなる。
【0087】
図3〜
図7の選択肢において、可動ジョーの移動経路は良好であるが、例えば、もう1つのシャフト21が必要となる。可動ジョーの移動が直線状であり、ピットマンの揺動移動は存在しないので、ジョーククラッシャーのバランス取りを容易に実施することが好ましい。
【0088】
図8による構成は動作の観点では最適なものである。当該移動は、直線状、つまり破砕チャンバーの鉛直方向中央線に対して垂直であり、ストロークは破砕チャンバー3の全ての区域において等しい。加えて、互いに反対の方向に回転する2つの同心の偏心要素8、22により、クラッシャー100のバランスを十分に取ることが可能になる。800mm幅のジャーと2つのフライホイールを備えるクラッシャーのバランス取りは、各フライホイールに対して約10kg質量を、偏心スリーブ22に対して1つの75kgの平衡錘を載置することによって実施することができる。これにより、さらに可動破砕プラント200に対して固定ジョーを強固に固定することが可能となり、また、好ましくは、可動破砕プラントの耐荷重部として側板を用いることが可能になる。
【0089】
生産能力の増加により、前記移動機構を備えるクラッシャーは、好ましくは第2段階クラッシャーとして動作させることができる。例によれば、破砕プラントの長手方向における破砕プラントの開口の長さは300mmであり、設定は40mmである。24度のニップ角度を用いると、破砕プラント3は約600mmの高さにしかならない。移動可能な集合体において、これにより、ジョーが幅広の場合に有利な点がもたらされる。
【0090】
前記説明は、本発明の幾つかの実施形態の非限定的な例を提供するものである。当業者において本発明が提示される詳細に限定されるものではなく、本発明は他の同等の手段において実施され得ることは明らかである。
【0091】
上記に開示される実施形態のある特徴はその他特徴を用いること無しに有利に用いられ得る。したがって、前述の説明は、本発明の原理の単なる例示として考慮されるものであり、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。