【実施例】
【0038】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<感光性樹脂の合成>
(合成例1)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部およびトルエン119.4部を仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm
2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
【0039】
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部およびトルエン252.9部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
【0040】
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部およびトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分70.6%、固形物の酸価87.7mgKOH/gであった。
【0041】
(合成例2)
ガス導入管、撹拌装置、冷却管、温度計、およびアルカリ金属水酸化物水溶液の連続滴下用の滴下ロートを備えた反応容器に水酸基当量80g/当量の1,5−ジヒドロキシナフタレン224部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER828、エポキシ当量189g/当量)1075部を仕込み、窒素雰囲気下にて、撹拌下110℃で溶解させた。その後、トリフェニルホスフィン0.65部を添加し、反応容器内の温度を150℃まで昇温し、温度を150℃で保持しながら、約90分間反応させ、エポキシ当量452g/当量のエポキシ化合物(1−a)を得た。次にフラスコ内の温度を40℃まで冷却し、エピクロルヒドリン1920部、トルエン1690部、テトラメチルアンモニウムブロマイド70部を加え、撹拌下45℃まで昇温し保持する。その後、48%水酸化ナトリウム水溶液364部を60分間かけて連続滴下し、その後、さらに6時間反応させた。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンおよびトルエンの大半を減圧蒸留して回収し、副生塩とトルエンを含む反応生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ水洗した。有機溶媒層と水層を分離後、有機溶媒層よりメチルイソブチルケトンを減圧蒸留して留去し、エポキシ当量277g/当量の多核エポキシ樹脂(1−b)を得た。得られた多核エポキシ樹脂(1−b)は、エポキシ当量から計算すると、エポキシ化合物(1−a)におけるアルコール性水酸基1.98個のうち約1.59個がエポキシ化されている。従って、アルコール性水酸基のエポキシ化率は約80%である。
【0042】
次に、多核エポキシ樹脂(1−b)277部を撹拌装置、冷却管および温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート290部を加え、加熱溶解し、メチルハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1.38部を加え、95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80〜90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物129部を加え、8時間反応させた。反応は、電位差滴定による反応液の酸化、全酸化測定を行ない、得られる付加率にて追跡し、反応率95%以上を終点とする。このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂は、不揮発分62%、固形物の酸価100mgKOH/gであった。
【0043】
<硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の樹脂組成に従って、各成分をそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、硬化性樹脂組成物を調整し、下記の評価方法で評価を行った。表中の値は、特に断りが無い限り、質量部である。尚、実施例1に用いる硬化性樹脂組成物は熱硬化性樹脂組成物であり、実施
例3
および参考例2、5、6に用いる硬化性樹脂組成物は光硬化性熱硬化性樹脂組成物である。
参考例4に用いる硬化性樹脂組成物は、
参考例2の硬化性樹脂組成物と同じであるが、
参考例4はドライフィルムを介して各評価を行っている。比較例1〜6に用いる硬化性樹脂組成物はそれぞれ、実施例1
、参考例2、実施例3、参考例4〜6に用いる硬化性樹脂組成物と同じであるが、ナノ化過熱乾燥蒸気を用いずに熱硬化を行っている点で異なる。
【0044】
【表1】
感光性樹脂1:上記合成例1で得られたカルボキシル基含有感光性樹脂
感光性樹脂2:上記合成例2で得られたカルボキシル基含有感光性樹脂
*1:EPICLON N−695:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製)
*2:ルシリンTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製)
*3:1B2PZ:1−ベンゾイル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業社製)
*4:DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサおよびペンタアクリレート混合物(日本化薬社製)
*5:TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製)
*6:RE306:ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)
*7:エポトートYDCN−704P:ノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製)
*8:B−100:硫酸バリウム(堺化学工業社製)
*9:乾燥方法の「−」は、乾燥工程を設けていないことを表す。
【0045】
(実施例1の評価基板の作製)
上記で得た樹脂組成物をスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されているプリント配線板に全面塗布し、ケセル社製DEONを用いて180℃、5分間、ナノ化過熱乾燥蒸気によって加熱硬化を行ない、評価基板を作製した。
【0046】
(実施
例3
、参考例2、5、6の評価基板の作製)
上記で得た樹脂組成物をスクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルスクリーンを用いて20〜30μmの厚さになるように、パターン形成されているプリント配線板に全面塗布し、塗膜を80℃の熱風乾燥器を用いて30分間乾燥した。次いで、レジストパターンを有するネガフィルムを塗膜に密着させ、紫外線露光装置(オーク製作所社製、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射(露光量200mJ/cm2)し、1%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cm2のスプレー圧で現像して未露光部分を溶解除去した。その後、ケセル社製(DEON)を用いて180℃、5分間、ナノ化過熱乾燥蒸気によって加熱硬化を行ない、評価基板を作製した。
【0047】
(
参考例4の評価基板の作製)
上記で得た樹脂組成物を、メチルエチルケトンにて希釈し、スクリーン印刷法により、PETフィルム上に塗布して、80℃で30分乾燥し、厚さ20μmの樹脂組成物層を形成した。さらにその上にカバーフィルムを貼り合わせて、ドライフィルムを作製した。そして、カバーフィルムを剥がし、パターン形成されているプリント配線板に、フィルムを熱ラミネートし、銅箔基板上に樹脂組成物層を密着させた。上記実施
例3
、参考例2と同じ条件で紫外線照射および現像を行った。その後、ケセル社製(DEON)を用いて180℃、5分間、ナノ化過熱乾燥蒸気によって加熱硬化を行ない、評価基板を作製した。
【0048】
(比較例1〜6の評価基板の作製)
上記実施例1
、参考例2、実施例3、参考例4〜6の評価基板の作製において、熱硬化条件を、熱風乾燥器による150℃、60分間に変更した以外は同じ条件で作製した評価基板をそれぞれ比較例1〜6の評価基板とする。
【0049】
<はんだ耐熱性>
上記で得た評価基板について、JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴への試験基板の10秒浸漬を3回行ない、外観の変化を以下の基準で評価した。
○:外観変化なし。
△:硬化皮膜の変色が認められるもの。
×:硬化皮膜の浮き、剥れ、はんだ潜りあり。
【0050】
<無電解金めっき耐性>
上記で得た評価基板について、後述する工程に従って無電解金めっきを行ない、その試験基板について外観の変化およびセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、レジスト皮膜の剥離状態を以下の基準で評価した。
○:外観変化もなく、レジスト皮膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、レジスト皮膜にわずかに剥れがある。
×:レジスト皮膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験でレジスト皮膜の剥れが大きい。
【0051】
無電解金めっき工程:
1.脱脂:試験基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミッド社製、MetexL−5Bの20Vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:試験基板を、14.3wt%の過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間、浸漬した。
4.水洗:試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:試験基板を、10Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:試験基板を、30℃の触媒液(メルテックス社製、メタルプレートアクチベーター350の10Vol%水溶液)に7分間、浸漬した。
8.水洗:試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:試験基板を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液(メルテックス社製、メルプレートNi−865M、20Vol%水溶液)に20分間、浸漬した。
10.酸浸漬:試験基板を、10Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:試験基板を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:試験基板を、95℃、pH=6の金めっき液(メルテックス社製、オウロレクトロレス UP 15Vol%、シアン化金カリウム3Vol%の水溶液)に10分間、浸漬した。
13.水洗:試験基板を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:試験基板を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗後、水をよくきり、乾燥した。
このような工程を経て無電解金めっきした試験基板を得た。
【0052】
<鉛筆硬度>
上記で得た評価基板の硬化塗膜をJIS K 5600の試験方法に従って試験し、塗膜に傷のつかない最も高い硬度を観測した。
【0053】
<耐溶剤性>
上記で得た評価基板の硬化塗膜をPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に20℃で20分浸漬させた後、すぐにテープピールテストを行い、レジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。
○:膨れ、剥がれなし。
△:ほんの僅かに剥がれあり。
×:塗膜の大きな剥がれあり。
【0054】
<耐酸性>
上記で得た評価基板の硬化塗膜を10vol%H
2SO
4に20℃で20分浸漬させた後、すぐにテープピールテストを行い、レジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。
○:膨れ、剥がれなし。
△:ほんの僅かに剥がれあり。
×:塗膜の大きな剥がれあり。
【0055】
<耐アルカリ性>
上記で得た評価基板の硬化塗膜を10vol%NaOHに20℃で20分浸漬させた後、すぐにテープピールテストを行い、レジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。
○:膨れ、剥がれなし。
△:ほんの僅かに剥がれあり。
×:塗膜の大きな剥がれあり。
【0056】
<銅上の変色>
上記で得た評価基板をさらに150℃で2時間加熱し、銅回路上の変色の程度を以下のように判断した。
○:全く変色していない。
×:若干の変色が認められた。
××:変色が認められた。
【0057】
上記表1に示す評価結果から明らかなように、ナノ化過熱乾燥蒸気を用いて熱硬化を行うことにより、銅上の変色が抑制され、また、耐酸性、無電解金めっき耐性に優れた樹脂絶縁層を形成できることが分かる。