特許第6343675号(P6343675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343675界面活性剤により仲介される分取HPLCによる有機化合物の精製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343675
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】界面活性剤により仲介される分取HPLCによる有機化合物の精製
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20180604BHJP
   B01J 20/286 20060101ALI20180604BHJP
   B01J 20/282 20060101ALI20180604BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20180604BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20180604BHJP
   B01D 15/08 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   G01N30/88 J
   B01J20/286
   B01J20/282
   G01N30/26 A
   G01N30/34 E
   B01D15/08
【請求項の数】22
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-543491(P2016-543491)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公表番号】特表2016-536612(P2016-536612A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】IN2014000607
(87)【国際公開番号】WO2015040635
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】4264/CHE/2013
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516083416
【氏名又は名称】ダブルリ ラマモハン ラオ
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】アンワー モハメド カリド
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06056877(US,A)
【文献】 米国特許第05045190(US,A)
【文献】 国際公開第2011/107447(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/052539(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0036652(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/044798(WO,A1)
【文献】 特表2008−508516(JP,A)
【文献】 UMEMURA Tomonari et al.,Amphoteric surfactant-modified stationary phase for the reversed-phase high-performance liquid chromatographic separation of nucleosides and their bases by elution with water,Analytica Chimica Acta,2000年 8月,vol.419, no.1,P87-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/88
B01D 15/08
B01J 20/282
B01J 20/286
G01N 30/26
G01N 30/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆相カラムの試料注入容量が増大された分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)による、ペプチドを含む有機化合物の精製方法であって、サロゲート固定相/追加固定相をC−18/C−8誘導体化シリカ固定相と併せて使用し、前記サロゲート固定相/追加固定相が、ポリオキシエチレン類、アルキルグリコシド、胆汁酸、及びグルカミドから選択される界面活性剤であり、前記サロゲート固定相/追加固定相は、前記C−18/C−8誘導体化シリカ固定相を被覆および/または結合する、精製方法。
【請求項2】
逆相カラムの前記試料注入容量が、前記サロゲート固定相/追加固定相被覆および/または結合により増大されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレン類がTriton X−100、Tween−80及びBrij−35から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤がTriton X−100である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
アルキルグリコシドが、式:
R−O−(CH−CH
で表される化合物から選択され、
式中、
R=グルコースの場合、
x=8であるn−ノニル−β−D−グルコピラノシド、x=7であるn−オクチル−β−D−グルコピラノシド、x=6であるn−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、またはx=5であるn−ヘキシル−β−D−グルコピラノシドである、あるいは
R=マルトースの場合、
x=11であるドデシル−β−D−マルトシド、x=9であるドデシル−β−D−マルトシド、またはx=9であるデシル−β−D−マルトシドである、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
胆汁酸が、式:
【化1】
で表される化合物から選択され、
式中、
X=H、R=ONaであるデオキシコール酸ナトリウム、
X=H、R=NHCHCHSONaであるタウロデオキシコール酸ナトリウム、
X=H、R=NHCHCHCONaであるグリコデオキシコール酸ナトリウム、
X=OH、R=ONaであるコール酸ナトリウム、
X=OH、R=NHCHCHSONaであるタウロコール酸ナトリウム、または
X=OH、R=NHCHCHCONaであるグリココール酸ナトリウムである、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
グルカミドが、式:
【化2】
で表される化合物から選択され、
式中、
X=8であるMEGA−10、
X=7であるMEGA−9、または
X=6であるMEGA−8、
あるいは、式:
【化3】
で表される化合物から選択され、
式中、
X=HであるデオキシBig CHAP、または
X=OHであるBig CHAPである、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)による、ペプチドを含む有機化合物の多成分試料の精製方法であって:
(a)疎水性固定相を有するカラム内にクロマトグラフィーシステムを構成するステップと、
(b)前記カラム内のクロマトグラフィー固定相を、ポリオキシエチレン類、アルキルグリコシド、胆汁酸、及びグルカミドから選択されるサロゲート固定相/追加固定相用界面活性剤で飽和させるステップと、
(c)有機溶媒と水との混合物を使用して前記カラムを洗浄して、過剰量の未結合界面活性剤を除去するステップと、
(d)前記ステップ(c)の後の前記カラムを出発移動相で平衡化させて、前記サロゲート固定相/追加固定相用界面活性剤で被覆された固定相を含むクロマトグラフィーベッドを得るステップと、
(e)前記サロゲート固定相/追加固定相用界面活性剤で被覆された固定相を含む前記クロマトグラフィーベッドの一端に多成分試料を注入するステップと、
以下(f)から(i):
(f)緩衝液Aが0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む水溶液であり、緩衝液Bが0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ、
(g)緩衝液Aが0.1%リン酸の水溶液であり、緩衝液Bが0.1%リン酸を含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ、
(h)緩衝液Aが1%リン酸の水溶液であり、緩衝液Bが1%リン酸を含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ、及び
(i)緩衝液Aが25mM〜150mMのリン酸トリエチルアンモニウムの水溶液であり、緩衝液Bが25mM〜150mMリン酸トリエチルアンモニウムを含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ
から選ばれるステップと、
(j)前記多成分試料中の所望の成分を回収するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
ステップ(a)の前記疎水性固定相が、C−8又はC−18アルキル鎖誘導体化シリカである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)の前記サロゲート固定相/追加固定相用界面活性剤が、Triton X−100、Tween−80及びBrij−35から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)における、前記未結合界面活性剤を除去するための前記カラムの洗浄が、前記カラムをアセトニトリル水溶液で洗浄することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)における、前記未結合界面活性剤を除去するための前記カラムの洗浄が、0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記平衡化が、前記出発移動相で前記カラムを平衡化させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記平衡化が、0.1%〜1%のリン酸水溶液、0.1%TFAの水溶液、及び25〜150mMリン酸トリエチルアンモニウムの水溶液で前記カラムを平衡化させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項15】
逆相カラムの試料注入容量が増大された分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)による、ペプチドを含む有機化合物の精製方法であって、下記構造を有するPEG系洗浄剤/界面活性剤をサロゲート固定相/追加固定相として、C−18/C−8誘導体化シリカ固定相と併用し、前記サロゲート固定相/追加固定相は、前記C−18/C−8誘導体化シリカ固定相を被覆および/または結合する方法:
【化4】
(式中、
「アルキル/アリール」は、直鎖又は分岐のアルキル、環式炭化水素、芳香族基、アルキル置換芳香族基、アリール置換アルキル基を含む群から独立に選択され、
「n」はエチレン−オキシド残基の数であり、1〜20である。)
【請求項16】
前記式中の「n」はエチレン−オキシド残基の数であり、6〜12である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記式中の「n」はエチレン−オキシド残基の数であり、9〜10である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記試料注入容量の増大が、C−18誘導体化シリカに結合した前記サロゲート固定相/追加固定相が可動状態である場合、または前記C−18/C−8誘導体化シリカ固定相に強くまたは恒久的に結合した場合に生じる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記可動状態が、低級炭素系界面活性剤を用いた観察において、C−18/C−8誘導体化シリカ固定相への結合及びC−18/C−8誘導体化シリカ固定相からの浸出が同時に見られる状態である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サロゲート固定相/追加固定相が、Triton X−100、Brij−35及びTween−80から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
残存シラノール基と水素結合可能であり、かつ十分な濃度の有機修飾剤を有する緩衝液で前記カラムを洗浄して、前記C−18/C−8誘導体化シリカ固定相用担体から前記サロゲート固定相/追加固定相によるコーティングを除去することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記有機修飾剤が、0.25M〜0.5M酢酸アンモニウムを含む50%〜90%アセトニトリル水溶液である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の精製に関する。より詳細には、本発明は、界面活性剤をサロゲート固定相(SSP)/追加固定相(ASP)として使用し、ペプチドを含む有機化合物を精製するための従来の分取RP−HPLCと比較して7〜10倍高い試料注入容量及びアウトプットを有する分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)技術を用いた、ペプチドを含む有機化合物の新規な精製方法に関する。試料注入容量の増大は、追加固定相(ASP)として作用する、C−18/C8鎖上に吸着された界面活性剤によるものである。
【背景技術】
【0002】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)は、学術機関、法医学研究所、精製化学薬品分野及び医薬産業等において、ポリペプチド、タンパク質及びヌクレオチド等の小有機分子、天然産物及び生物学的に活性な分子の分析、特性評価、分離、精製及び/又は単離のために普遍的に使用されている。医薬産業においては、分析RP−HPLCは、原材料、中間体及び医薬品有効成分(API)の分離及び特性評価に使用されている。対照的に、分取クロマトグラフィーは、更なる使用のために十分な量の物質を精製するために使用されている。分析RP−HPLCの主な目標が、分析物の同定及び定量であるのに対し、医薬及び精製化学薬品分野における分取RP−HPLCの主な目的は、ペプチドAPIや、その他多くの結晶化に適さない複雑なAPIなどのAPI、及び精製化学製品の商業生産である。
【0003】
溶出モードでの分取RP−HPLCは、溶出モード操作の容易性により、粗ペプチド混合物、及び他の複雑な小有機分子を精製するために最も広く実施されている、好ましいモードである。溶出分取クロマトグラフィーにおいては、精製されるべき化合物の粗混合物を、好適な溶媒(例えば、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液、緩衝液A)に溶解し、C−18/C−8誘導体化シリカ固定相担体に結合させる。移動相(0.1%TFAを含む50%〜100%アセトニトリル溶液、緩衝液B)の濃度勾配(通常、AからBへの直線濃度勾配)を流したときに、移動相と固定相との間で平衡が確立される。固定相に対する親和性に応じて、様々な試料種は、固定相に対するそれらの相対的な親和性を反映する速度で、カラムに沿って縦走する。弱く結合した種は最初に溶出し、次いでより強い結合物が溶出する。要約すれば、有機緩衝液成分の濃度が徐々に増大することによって、混合物の成分の脱着及び分離がもたらされる。
【0004】
溶出分取RP−HPLCモードは、所望の産物とその最も近い溶出関連物質との間の分離能、保持比、及び分取カラムの理論段数等を含むいくつかの要因によって、1回に精製できる試料の量が制限される。Donald A.Wellingsは、その著書である非特許文献1において、これらの状況の多くを明快に説明している。合成ペプチドの典型的な注入容量は、充填カラム容積の1ml当たり1〜2mg(即ち、総カラム容積に対して0.1%〜0.2%)の範囲内である。
【0005】
以前の分取RP−HPLCの固定相担体は、C−18鎖又はC−8鎖で誘導体化された不定形のシリカ粒子であり、これらは高い背圧という欠点を有していた。高い背圧ゆえに、1回で精製できる量が限られ、カラムが比較的小径であることから、用途は限定されていた。最近の分取RP−HPLCにおける研究では、球状シリカの製造と、安定性及び選択性が改善された固定相担体を提供するための新しい結合化学の開発とに焦点が当てられてきた。C−18、C−8及び他のリガンドで誘導体化された球状シリカの商業生産では、これらの困難を克服しており、分取HPLC装置実用性は大きく拡大した。プロセスHPLC装置類、及び結合シリカ担体の技術的進歩によって、例えば、36−アミノ酸ペプチドであるFuzeon(登録商標)等の複雑なペプチドの商業生産が何百キロもの量で可能となった。しかしこれらの大規模HPLC装置及び関連したカラムハードウェアは非常に高価であり、この方法を使うには制限があった。また、これらの改良のいずれも、所定のカラムの注入容量に対処せず、また精製された産物の量(充填カラムのアウトプット/mL)の有意な増大をもたらしていない。
【0006】
このように前述したこれらの進歩にも関わらず、分取RP−HPLCにより1回で精製できる試料の量を増大させるには、2つの方法しか存在しない:(1)従来の手法は、より大きいカラム(より大量の固定相)を使用すること、及び(2)固定相をより効果的に使用する(しかし、開発に労力を有する)置換クロマトグラフィーの使用である。
【0007】
置換クロマトグラフィーは、試料成分よりも固定相材料に対して高い親和性を有する移動相ディスプレーサ(displacer)溶液を使用する。置換クロマトグラフィーを溶出クロマトグラフィーと区別する重要な操作上の特徴は、ディスプレーサ分子を使用することである。溶出クロマトグラフィーでは、溶離液は通常、混合物中の分離されるべきいずれの成分よりも、固定相に対する親和性が低く、一方、置換クロマトグラフィーでは、ディスプレーサである溶離液は、より高い親和性を有する。この置換はイオン交換モードに最適であり、多数の最近の出願が見出される。特許文献1は、疎水性相互作用及び逆相クロマトグラフィーモードにおけるタンパク質精製のための低分子量ディスプレーサを開示している。
【0008】
本発明は、SSPを使用することによって、より高いアウトプットを達成する。SSP及び置換クロマトグラフィーは、相乗的に作用して、分取クロマトグラフィーのアウトプットを増大させる。
【0009】
本発明者らの特許文献2は、従来の分取RP−HPLC技術と対比して、7〜10倍多い試料(合成粗ペプチドを含む有機化合物の粗混合物)の注入容量を達成した独自の分取RP−HPLC技術について記載している。従来の分取RP−HPLC技術と比べて増大したアウトプットは、追加されたC−18/C−8吸着(結合)第四級アンモニウム塩のサロゲート固定相としての特性によるものである。第四級アンモニウム塩は、ファン・デル・ワールス力(疎水性相互作用)と、固定相の残存シラノール基とのイオン相互作用とによって、固定相のC−18/C−8鎖に結合している。
【0010】
本発明は、ASPとしてのTriton X−100等の中性界面活性剤で被覆されたC−18/C−8誘導体化シリカについて記載する(図3を参照されたい)。本発明は、分取RP−HPLCと、SSP/ASPとしての中性界面活性剤とを使用する、ペプチドのための拡張可能な分離プロセスについて記載する。本発明は、ペプチドのための単純で、費用効率が高く、大規模実施可能な分離プロセスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6239262号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/118797号 A1
【特許文献3】国際公開第2013/052539号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A Practical Handbook of Preparative HPLC,Elsevier(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主な目的は、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)技術を用いた、ペプチドを含む有機化合物の新規な精製方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、従来の分取RP−HPLC技術と比較して、7〜10倍高い試料注入容量、及びアウトプットを有する、ペプチドを含む有機化合物の精製方法を提供することにある。
【0015】
本発明の更なる目的は、サロゲート固定相(SSP)/追加固定相(ASP)として界面活性剤を使用する上記方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、一実施形態において、本発明は、サロゲート固定相/追加固定相をC−18/C−8誘導体化シリカ固定相と併せて使用する、逆相カラムの試料注入容量が増大された、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)によるペプチドを含む有機化合物の精製方法を提供する。C−18/C−8逆相カラムの分取注入容量は、C−18/C−8逆相カラムにサロゲート固定相/追加固定相を被覆/結合することにより増大され、サロゲート固定相/追加固定相は、中性界面活性剤又はPEG化界面活性剤である。
サロゲート固定相/追加固定相となる界面活性剤は、アルキルグリコシド、胆汁酸、グルカミド(glucamide)及びポリ−オキシエチレンから選択されてもよく、ポリ−オキシエチレンは、Triton X−100、Tween−80及びBrij−35から選択され、好ましくはTriton X−100である。
【0017】
アルキルグリコシドは、式:
R−O−(CH−CH
で表される化合物から選択され、上記式において
R=グルコースの場合、
x=8のn−ノニル−β−D−グルコピラノシド、x=7のn−オクチル−β−D−グルコピラノシド、x=6のn−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、またはx=5のn−ヘキシル−β−D−グルコピラノシドであり、
R=マルトースの場合、
x=11のドデシル−β−D−マルトシド、x=9のドデシル−β−D−マルトシド、またはx=9のデシル−β−D−マルトシドである。
【0018】
胆汁酸は、式:
【化1】
で表される化合物から選択され、上記式において
X=H、R=ONaのデオキシコール酸ナトリウム、
X=H、R=NHCHCHSONaのタウロデオキシコール酸ナトリウム、
X=H、R=NHCHCHCONaのグリコデオキシコール酸ナトリウム、
X=OH、R=ONaのコール酸ナトリウム、
X=OH、R=NHCHCHSONaのタウロコール酸ナトリウム、または
X=OH、R=NHCHCHCONaのグリココール酸ナトリウムである。
【0019】
グルカミドは、式:
【化2】
で表される化合物から選択され、上記式において
X=8のMEGA−10、
X=7のMEGA−9、または
X=6のMEGA−8である、
あるいは、式:
【化3】
で表される化合物から選択され、上記式において
X=HのデオキシBig CHAP、または
X=OHのBig CHAPである。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)による、ペプチドを含む有機化合物の多成分試料の精製方法を提供し、該方法は:
(a)疎水性固定相を有するクロマトグラフィーシステムを構成するステップと、
(b)クロマトグラフィー固定相を、アルキルグリコシド、胆汁酸、グルカミド及びポリ−オキシエチレンから選択されるサロゲート固定相/追加固定相用界面活性剤で飽和させるステップと、
(c)有機溶媒と水との混合物を使用してカラムを洗浄して、過剰の未結合界面活性剤を除去するステップと、
(d)カラムを出発移動相で平衡化させるステップと、
(e)界面活性剤で被覆された固定相を含むクロマトグラフィーベッドの一端に多成分試料を適用するステップと、
以下(f)から(i):
(f)緩衝液Aが0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む水溶液であり、緩衝液Bが0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ、
(g)緩衝液Aが0.1%リン酸水溶液であり、緩衝液Bが0.1%リン酸を含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ、
(h)緩衝液Aが1%リン酸水溶液であり、緩衝液Bが1%リン酸を含む50%アセトニトリル水溶液であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ、及び
(i)緩衝液Aが25mM〜150mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH3)であり、緩衝液Bが25mM〜150mMリン酸トリエチルアンモニウムを含む50%アセトニトリル水溶液(pH3)であり、前記緩衝液A及び緩衝液Bの直線濃度勾配を用いて前記多成分試料を溶出するステップ
から選ばれるステップと、
(j)試料の所望の成分を回収するステップと、を含む。
【0021】
ステップ(a)の疎水性固定相は、C−8又はC−18アルキル鎖誘導体化シリカであり、ステップ(b)の界面活性剤は、Triton X−100、Tween−80及びBrij−35から選択される。
【0022】
未結合界面活性剤を除去するステップ(c)のカラムの洗浄は、カラムをアセトニトリル水溶液、より好ましくは0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することを含み、平衡化は、カラムを出発移動相、より好ましくは0.1%〜1%リン酸水溶液、0.1%TFA水溶液、及び25〜150mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液で平衡化させることを含む。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、ASP/SSPとなるPEG系洗浄剤/界面活性剤を、固定相となるC−18/C−8誘導体化シリカ又は他の担体と併せて使用する、逆相カラムの試料注入容量が増大された分取逆相高速液体クロマトグラフィー(分取RP−HPLC)による、ペプチドを含む有機化合物の精製方法を提供し、該PEG系洗浄剤/界面活性剤は、以下の構造を有する:
【0024】
【化4】
式中、
「アルキル/アリール等」は、直鎖又は分岐のアルキル鎖、環式炭化水素、芳香族基、アルキル置換芳香族基、アリール置換アルキル基を含む群からそれぞれ独立に選択され、
「n」はエチレン−オキシド残基の数であり、1〜20、好ましくは6〜12、より好ましくは9〜10である。
【0025】
本発明における試料注入容量の増大は、C−18誘導体化シリカに結合したサロゲート固定相が、(低級炭素系界面活性剤を用いた観察において、固定相への結合及び固定相からの浸出が同時に見られる)可動状態である場合、またはC−18/C−8逆相固定相に強くまたは恒久的に結合した場合に生じ、ここでC−18/C−8逆相固定相はTriton X−100、Brij−35及びTween−80から選択される。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、残存シラノール基と水素結合することが可能であり、かつ十分な濃度の有機修飾剤を有する緩衝液でカラムを洗浄することによる、C−18/C−8誘導体化シリカ担体からサロゲート固定相/追加固定相を除去するための方法も提供し、ここで有機修飾剤は、0.25M〜0.5M酢酸アンモニウムを含む50%〜90%アセトニトリル水溶液である。
【0027】
本発明は、わずかな溶媒の使用、廃棄物処理量の減少、操作の容易性及び設備規模の縮小等の様々な産業上の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】C−18及びPEG系サロゲート固定相に結合したロイプロリド。
図2】Triton X−100で被覆された12gのC−18 Revelerisカラム上に注入された純量800mgのロイプロリドの分取RP−HPLCプロファイル(画分8〜24は、ロイプロリド用の改変EP方法を用いた分析RP−HPLCによって、純度97.9%超とされたロイプロリドを含んでいた)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
表1に、様々なクロマトグラフィー技術(項目1〜4)の注入容量を記載する。項目5及び6は、C−18/C−8担体がサロゲート固定相で被覆された場合の注入容量に関する。
【0030】
【表1】
【0031】
逆相カラムの典型的な注入容量は、充填カラムの容積に対して約0.90%である(表1、項目#1)。粗ペプチド混合物中の成分を分離する際、入手可能な固定相(PLRP−S、ポリスチレンカラム)をより良好に利用できるため、試料注入容量は、置換クロマトグラフィーでより高く、この場合、総カラム容積に対して約2%であった(表1、項目2)。特許文献3には、アンジオテンシン等のペプチドに置換クロマトグラフィー(DC)精製を用いることが記載されている。アンジオテンシンのDCには、Waters Xbridge BEH130(C−18、5マイクロメートル、135オングストローム(Å)、0.46cm(ID)×25cm(L))を使用した。総カラム容積に対する注入容量%は3.69%であり、従来のHPLCに対する相対的な注入容量の約4倍であった。
【0032】
ボックスカー注入(box car injection)技術を用いたエナンチオマーの分離における注入容量は、約6.11%であった。これは、露出されたシリカ表面全体がクロマトグラフィーに利用可能である順相分取HPLCにて観察された試料注入容量と非常に近い。
【0033】
表1の項目5及び6から、本発明に記載したASP/SSP技術が、7.1%〜9.9%の範囲内の注入容量を有することが明らかになった。C−8誘導体化シリカは、立体的解放(C−8鎖対C−18鎖)と、その結果の、より大量の吸着SSPとにより、C−18誘導体化シリカよりも高い試料注入容量を有する。SSP補助分取RP−HPLCで観察されたより高い試料注入容量は、SSP/ASPが三次元格子構造に自己集合した結果、利用可能な表面積が増大するためであると考えられる。
【0034】
C−18/C−8シリカの細孔径は、注入容量と、標的化合物の精製の有効性(成功)とに影響を与えることが知られている。例えば、タンパク質等の巨大分子の分離品質は、300Å又は1000Å等の広い細孔の担体のほうが高い。広い細孔のシリカにおいては、結合に利用可能な固定相が減少するため、1回の流通で精製できる産物の量が低下する。
【0035】
より小さい細孔径の固定相、例えば、80〜120Å(オングストローム)の担体等は、より小さい分子及び小ペプチド(5〜15アミノ酸)に好ましい一方、広い細孔のシリカは、より大きいペプチド(25アミノ酸より大きい)及びタンパク質に対して好ましい担体である。
【0036】
分析物と固定相との間の非特異的相互作用も、試料注入容量、精製効率(分離能)、及びアウトプットに影響する。残存シラノール基とのイオン交換/イオン対相互作用(これは不完全な末端キャッピングの結果である)によって、分析物とC−18/C−8固定相との間の真の逆相相互作用が低下する。また、C−18/C−8鎖の間の立体障害も、炭素負荷の程度に影響する。カラム容積のカラム空隙容積(CV)は、保持されていない溶質の溶出体積を測定することにより、容易に測定される。これは通常、総カラム容積の約40%〜50%である。この空隙容積の一部は、ASP/SSPの被覆に利用される。表1の項目5及び6は、SSP被覆C−18誘導体化シリカと対比して、SSP被覆C−8誘導体化シリカにおいてより高い注入容量が認められることを示す。
【0037】
様々な注入容量の粗ロイプロリドを用いた対照実験
12gの、C−18アルキル鎖で誘導体化されたシリカを収容するRevelerisフラッシュカラムを選択し、約10カラム容積(CV)の0.1%トリフルオロ酢酸水溶液を用いて流速6mL/分で平衡化させた。次に、表2に示すように、カラムに様々な有限量の粗ロイプロリド(HPLCにより純度86.4%に調整、ペプチドアッセイは、Edelhoch法により行った)を注入した。4つのパラメータを試験して、クロマトグラフィー性能を評価した。
【0038】
1.フロースルー:注入時のフロースルー中のロイプロリド量を測定した。これは、注入容量がカラム容量を超過するか否かを確認するために有用であった。
【0039】
2.少なくとも95.0%のロイプロリドを含む画分のプール:数個のプール画分を作製し、Edelhoch法を用いて又は定量的HPLCアッセイにより、ロイプロリドの量を定量した。
【0040】
3.最も純粋なロイプロリド画分(分離能の評価):最も高い純度のロイプロリドを含む画分を決定した。これは、ロイプロリドをその最も近い溶出不純物から分離することの評価に有用であった。
【0041】
4.クロマトグラフィーの実行による全溶離液の物質収支:これは、Edelhoch法を用いて測定した。これは、逆相カラム上に存在する残存シラノール基に対する非特異的イオン結合に起因する、ロイプロリド及び同様の類似体の損失を決定することに有用であった。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の試験によって、以下のことが明らかになった:
1.純度95%超のロイプロリドのアウトプット(%精製収率)は、11.9%〜19.1%の範囲であった。つまり分析物と固定相との間の非逆相タイプの相互作用により、80.9%〜88.1%の粗ロイプロリドは精製できなかった。
【0044】
2.個々のクロマトグラフィーの物質収支は88.4%〜96.5%の範囲内であった。これは、「分析物と固定相との間の非逆相タイプの相互作用」が、純度95%超のロイプロリドのアウトプットに関する乏しい精製性能の大きな原因であることを示唆している。
【0045】
3.個々の画分の純度は、97.8%(100mgの粗ロイプロリドが注入された場合)〜95.2%(800mgの粗ロイプロリドが注入された場合)の範囲であった。純度は、1200mgの粗ロイプロリドが注入された場合、95.5%であった。これは「自己置換」が原因である可能性がある。
【0046】
4.残存シラノール基による、分析物の固定相へのイオン結合を効果的に無力化することができれば、「効率」及び「有効性」の観点から、より高い精製能を発揮することが可能となる。
【0047】
中性PEG系界面活性剤の評価
表3に、ASPとしてのTriton X−100、Tween−80及びBrij−35の性能を示す。Revelerisシリカ誘導体化C−18カラム(固定相は12g、粒径は40マイクロメートル、及び細孔径は60オングストローム)を選択し、水に溶解した12gのTriton X−100又はTween−80又はBrij−35のいずれかで飽和させた。
【0048】
ASP/SSPとして有用な界面活性剤のリスト
【化5】
R=グルコースの場合、
x=8のn−ノニル−β−D−グルコピラノシド、x=7のn−オクチル−β−D−グルコピラノシド、x=6のn−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド、またはx=5のn−ヘキシル−β−D−グルコピラノシド、
R=マルトースの場合、
x=11のドデシル−β−D−マルトシド、x=9のドデシル−β−D−マルトシド、またはx=9のデシル−β−D−マルトシド
【0049】
【化6】
X=H、R=ONaのデオキシコール酸ナトリウム、
X=H、R=NHCHCHSONaのタウロデオキシコール酸ナトリウム、
X=H、R=NHCHCHCONaのグリコデオキシコール酸ナトリウム、
X=OH、R=ONaのコール酸ナトリウム、
X=OH、R=NHCHCHSONaのタウロコール酸ナトリウム、または
X=OH、R=NHCHCHCONaのグリココール酸ナトリウム
【0050】
【化7】
X=8のMEGA−10、
X=7のMEGA−9、または
X=6のMEGA−8
【0051】
【化8】
X=HのデオキシBig CHAP、または
X=OHのBig CHAP
【0052】
【化9】
【0053】
0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。このステップを省略した場合、過剰量の界面活性剤がその臨界ミセル濃度を超える濃度で存在したため、粗APIの溶出が早すぎるタイミングで観察された。
【0054】
次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mgであった)を注入し、カラムを5CV容積の緩衝液A(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む水溶液)で洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析によりロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0055】
緩衝液B(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む50%アセトニトリル水溶液)の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0056】
従来の分取RP−HPLCで観察されたガウスピークとは対照的に、SSP補助分取RP−HPLCでは「M字形のピーク」が見られた。純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。個々の画分の平均最高純度(5回の精製)は、98.84%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、409mgであり(理論量は653.3mgである)、平均%ロイプロリド回収率は、62.6%であった。
【0057】
カラムを0.25M酢酸アンモニウムを含む50%〜80%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、逆相カラムから付着ASP/SSPを除去した。
【0058】
【表3】
【0059】
Tween−80を用いて、同様の実験を(平均2回)行ったところ、以下のデータが得られた:(1)画分の最高平均個別純度は、96.25%であった、(2)純度95%超の精製プールの平均重量は、343.6mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収収率は、42.95%であった。
【0060】
Brij−35を用いて、同様の実験を(平均2回)行ったところ、以下のデータが得られた:(1)画分の最高平均個別純度は、98.15%であった、(2)純度95%超の精製プールの平均重量は、394.4mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収収率は、60.35%であった。
【0061】
上記の結果は、ロイプロリドの精製に関して評価した3つのSSPのうち、Triton X−100が最適であったことを示唆する。
【0062】
次の一連の実験では、分取HPLC収率に対するC−18誘導体化シリカ粒子の細孔径及び直径の変化の影響を試験し、表4にまとめた。2つのRevelerisカラム(カラムパラメータ:12gのC−18、40μm、60オングストローム、及びカラムパラメータ:12gのC−18、20μm、150オングストローム)と、1つのPeerless Basic C−18カラム(自家充填、カラムパラメータ:約12gのC−18、10μm、100オングストローム)を、C−18誘導体化シリカカラムとして使用した。水に溶解した12gのTriton X−100でカラムを飽和させた。0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。
【0063】
カラムを5CV容積の緩衝液A(0.1%リン酸水溶液)で平衡化させた。次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mg)を注入し、カラムを5CV容積の緩衝液Aで洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析により、ロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0064】
緩衝液B(0.1%リン酸水溶液を含む50%アセトニトリル水溶液)の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0065】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。
【0066】
(40μm担体を用いて行った2回の精製における)個々の画分の平均最高純度は、99.3%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、467mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収率は、71.5%であった。
【0067】
【表4】
【0068】
(Reveleris C−18 20μm担体を用いて行った1回の精製における)個々の画分の平均最高純度は、99.3%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、528mgであり(理論量は653.3mgである)、%ロイプロリド回収率は、80.8%であった。
【0069】
結果は、Reveleris C−18 20μm担体と、従来品であるPeerles Basic C−18 10μm担体カラムと同等であった。
【0070】
表5からリン酸トリエチルアンモニウムの濃度が増大すると、精製収率が低下することがわかる。
【0071】
【表5】
【0072】
Reveleris(カラムパラメータ:12gのC−18、40μm、60オングストローム)を、水に溶解した12gのTriton X−100で飽和させた。0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。
【0073】
カラムを5CV容積の緩衝液A(25mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液、pH3)で平衡化させた。次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mgであった)を注入し、カラムを5CV容積の緩衝液Aで洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析によりロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0074】
緩衝液B(25mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液を含む50%アセトニトリル水溶液(pH3))の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0075】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。
【0076】
個々の画分の平均最高純度は、98.6%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、314.5mgであり(理論量は653.3mgであり)、%ロイプロリド回収率は、48.1%であった。
【0077】
続いてより高濃度のリン酸トリエチルアンモニウム、即ちpH3の150mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液を用いた実験を行った。カラムを5CV容積の緩衝液A(150mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液、pH3)で平衡化させた。次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mgであった)を注入し、カラムを5CV容積の緩衝液Aで洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析によりロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0078】
緩衝液B(150mMリン酸トリエチルアンモニウム水溶液を含む50%アセトニトリル水溶液(pH3))の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0079】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。
【0080】
個々の画分の平均最高純度は、98.3%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、280mgであり(理論量は653.3mgであり)、%ロイプロリド回収率は、42.9%であった。
【0081】
リン酸緩衝液(71%〜80%)に比べ、リン酸トリエチルアンモニウム緩衝液では収率(43%〜48%)が低いことから、シラノール基に結合したSSPが部分的に失われたことが明らかになった。
【0082】
上述したように、従来のRP−HPLCハードウェアシステムを分離に使用することができ、用語「クロマトグラフィーシステムを構成する」は、カラム又はカラム、ポンプ及び検出器のシステムを、当技術分野にて周知のように構成することを指す。
【0083】
用語「クロマトグラフィーの固定相を飽和させる」は、溶液中の界面活性剤を特定の濃度で固定相中に流通させることによって、サロゲート固定相を準備することを指す。
【0084】
本発明の好ましい方法を、以下に述べる。
【0085】
界面活性剤をサロゲート固定相として使用する、ペプチドなどの有機分子を精製するための例示的な方法
以下は、例示を目的として記載される単なる例であり、SSP補助分取RP−HPLC技術の範囲及び実用性を限定することを意図するものではないことをここに強調する。これらの試験で使用したC−18カラムは、12gのC−18誘導体化シリカ(粒径が10μm、20μm又は40μmの粒子、細孔径は60Å、100Å又は150Å)を収容していた。C−18誘導体化シリカ逆相カラムを、界面活性剤(Triton X−100、Tween−80若しくはBrij−35等、又は水素結合受容体部位を含む任意の中性界面活性剤)の水溶液で平衡化させた。界面活性剤の重量は、固定相の重量の1%〜100%の範囲内であった。追加(サロゲート)固定相への付着を最大とするために、500mLの水に溶解した12gの界面活性剤を使用した。次いで、カラムを、0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄して、未結合界面活性剤を除去した。
【0086】
次に、カラムを出発移動相(10カラム容積(CVs)、例えば0.1%リン酸水溶液)で平衡化させ、粗産物を注入した。緩衝液B(例えば、0.1%リン酸を含む50%アセトニトリル水溶液)の直線濃度勾配を流した。対象産物(API)が溶出する直前に、そのときの勾配の濃度を保持し、これをAPIの全量がカラムから溶出するまで維持してもよい(図2を参照されたい)。あるいは産物を濃縮した形態で溶出することが望まれる場合には、勾配をそのままかけ続けてもよい。純度95%超のAPI産物を含む画分を一つにまとめる。有機揮発物を減圧下で除去する。水性残留物をC−18カラムに通して(酢酸水溶液及びアセトニトリルを使用して)、カウンターリン酸イオンを所望のカウンターイオン(例えば酢酸イオン)と交換する。
【0087】
本発明は、薬剤及び精製化学薬品産業におけるクロマトグラフィー用途に使用される任意のサイズのカラム又はHPLC設備に適用可能である。
【0088】
本開示のいくつかの態様及び実施形態を、以下の実施例に記載する。これらは例示を目的とし、本開示の範囲をいかなる形においても限定することを意図しない。
実施例:
【実施例1】
【0089】
追加固定相としてのTriton X−100と、水性リン酸緩衝液とを使用した酢酸ロイプロリドの分取RP−HPLC:
C−18逆相カラム(Reveleris C−18、12g、40μm、細孔径60Å)をTriton X−100(12gを500mLの水に溶解)で飽和させた。0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。次に、カラムを5カラム容積(CV)の0.1%リン酸水溶液(緩衝液A)で平衡化させた。緩衝液Aに溶解した粗ロイプロリド(800mg、Edelhoch法による正味重量)をカラム上に注入した。このカラムを5CVの緩衝液Aで洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析によりロイプロリドが存在しないことが確認された。この先行するステップを省略した場合、過剰量の界面活性剤がその臨界ミセル濃度を超える濃度で存在したため、粗APIの溶出が早すぎるタイミングで観察された。次に、勾配溶出プロセスを開始した。緩衝液Bは、0.1%リン酸を含む50%アセトニトリル水溶液であった。60分間に亘る0%〜100%緩衝液Bの直線濃度勾配を溶出に用いた。APIの全量がカラムから溶出するまで勾配を保持した。純度95%超のAPI産物を含む画分を一つにまとめた。分取HPLCプロファイルを図2に示す。この実験を2回行った。
【0090】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。(2回の精製における)個々の画分の平均最高純度は、99.3%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、466.9mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収率は、71.5%であった。
【実施例2】
【0091】
追加固定相としてのTriton X−100と、0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム緩衝液とを使用した酢酸ロイプロリドの分取RP−HPLC:
Revelerisシリカ誘導体化C−18カラム(固定相12g、粒径40マイクロメートルの粒子、及び細孔径60オングストローム)を選択し、水に溶解した12gのTriton X−100で飽和させた。
【0092】
0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。このステップを省略した場合、過剰量の界面活性剤がその臨界ミセル濃度を超える濃度で存在したため、粗APIの溶出が早すぎるタイミングで観察された。
【0093】
次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mgであった)を注入し、カラムを5CVの緩衝液A(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む水溶液)で洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析によりロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0094】
緩衝液B(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む50%アセトニトリル水溶液)の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0095】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。(Triton X−100を用いた5回の精製における)個々の画分の平均最高純度は、98.8%であった。定量的HPLCアッセイにより測定した精製プールの平均重量は、408.9mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収率は、62.6%であった。
【実施例3】
【0096】
追加固定相としてのTween−80と、0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム緩衝液とを使用した酢酸ロイプロリドの分取RP−HPLC:
Revelerisシリカ誘導体化C−18カラム(固定相12g、粒径40マイクロメートルの粒子、及び細孔径60オングストローム)を選択し、水に溶解した12gのTween−80で飽和させた。
【0097】
0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。このステップを省略した場合、過剰量の界面活性剤がその臨界ミセル濃度を超える濃度で存在したため、粗APIの溶出が早すぎるタイミングで観察された。
【0098】
次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mgであった)を注入し、カラムを5CVの緩衝液A(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む水溶液)で洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析により、ロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0099】
緩衝液B(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む50%アセトニトリル水溶液)の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0100】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。
【0101】
実験を2回行い、以下のデータを得た:(1)画分の最高平均個別純度は、96.3%であった、(2)純度95%超の精製プールの平均重量は、343.6mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収収率は、52.6%であった。
【実施例4】
【0102】
追加固定相としてのBrij−35と、0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム緩衝液とを使用した酢酸ロイプロリドの分取RP−HPLC:
Revelerisシリカ誘導体化C−18カラム(固定相12g、粒径40マイクロメートルの粒子、及び細孔径60オングストローム)を選択し、水に溶解した12gのBrij−35で飽和させた。
【0103】
0.1%トリフルオロ酢酸を含む90%アセトニトリル水溶液で洗浄することにより、過剰量の未結合界面活性剤を除去した。このステップを省略した場合、過剰量の界面活性剤が、その臨界ミセル濃度を超える濃度で存在したため、粗APIの溶出が早すぎるタイミングで観察された。
【0104】
次に、粗API(800mgの81.7%ロイプロリド、ロイプロリドの補正重量は653.3mgであった)を注入し、カラムを5CVの緩衝液A(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む水溶液)で洗浄した。「フロースルー」溶離液の分析RP−HPLC分析によりロイプロリドが存在しないことが確認された。
【0105】
緩衝液B(0.1mM臭化セチルトリメチルアンモニウム及び0.1mM重炭酸ナトリウムを含む50%アセトニトリル水溶液)の直線濃度勾配を開始して、カラムから産物を溶出した。
【0106】
純度95%超のロイプロリドを含む画分のプールを、HPLCアッセイによって定量した。これはカラムの性能/処理能力の評価基準としての役割を果たした。プールを構成する個々の画分の%純度を、分析RP−HPLCにより決定した。
【0107】
実験を2回行い、以下のデータを得た:(1)画分の最高平均個別純度は、98.2%であった、(2)純度95%超の精製プールの平均重量は、394.4mgであり(理論量は653.3mgであり)、平均%ロイプロリド回収収率は、60.4%であった。
図1
図2