(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から上記の特許文献1に記載のガスケットに限らずに、銅、銅合金、グラファイトなどの高熱伝導率の材料で構成されたガスケットが知られている。高熱伝導率の材料で構成されたガスケットは、ステンレス鋼などで構成されたガスケットに比して、冷却効率の面では優れている一方で、シール特性が劣ったり、高価であったり、メンテナンスが必須であったりと様々な問題があった。
【0005】
そこで、上記の特許文献1に記載のガスケットは、ステンレス鋼のガスケット基板と、燃焼室孔を囲繞する高熱伝導率の金属板とを併用することで、それらの問題を解決しようとした。しかしながら、複数の部材を組み合わせる必要があり、部品点数の増加や製造工程の複雑化という新たな問題があった。また、水穴や油穴などの燃焼室孔に比して比較的開口径が小さいものに対して同様の構造を適用することが難しく、特定の場所の冷却効率しか向上することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、ガスケットの性能を維持しつつ、より簡易な構成で冷却効率を向上することができるガスケット及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明のガスケットは、金属線編物からなるガスケットであって、このガスケットが少なくとも一つの貫通孔を有する環状部と、この環状部の外周縁に接する本体部とからなり、
前記環状部は筒状の前記金属線編物が管軸方向に圧縮された状態で環状をなし、前記本体部は筒状の前記金属線編物が径方向に圧縮された状態で板状をなすと共に所定の位置の編目が広がってなる配置孔を有し、前記配置孔に前記環状部が配置されて、前記環状部を構成する金属線編物及び前記本体部を構成する金属線編物の第一金属線が互いに交絡してその環状部とその本体部とが接合してなると共に、平面視でこのガスケットの少なくとも一部の領域に熱伝導領域を形成し、この熱伝導領域に前記第一金属線と共にこの第一金属線よりも熱伝導率の高い第二金属線が編み込まれていることを特徴とするものである。
【0008】
上記の課題を解決するための本発明のガスケットの製造方法は、筒状の金属線編物と他の筒状の金属線編物とを編み、それらの筒状の金属線編物と他の筒状の金属線編物を編む際に、それらのうちの少なくとも一部の領域で、その領域を構成する第一金属線と共に、その第一金属線よりも熱伝導率の高い第二金属線を編み込んで高熱伝導領域を形成し、前記筒状の金属線編物を筒軸方向に押し潰して環状部を形成し、前記他の筒状の金属線編物
を径方向に押し潰して本体部を形成し、得られた前記本体部の所定の位置に配置穴を形成し、その配置穴に前記環状部を配置し、前記本体部及び前記環状部を押し潰して一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環状部と本体部とを金属線編物で構成し、それぞれの第一金属線を互いに交絡して接合すると共に、第一金属線よりも熱伝導率の高い第二金属線を編み込んだ高熱伝導領域を形成する。それ故、ガスケットとして金属線編物による圧縮応力を利用することでシール性を維持しつつ、高熱伝導領域によりその部位の冷却効率を向上することができる。高熱伝導領域は、第一金属線と共に第二金属線を編み込むだけで形成できるので、部品点数の減少や製造工程の簡略化には有利になると共に、任意の場所に形成するにも有利になる。
【0010】
このように、本発明によれば、熱伝導率の高い金属板を用いる従来のガスケットに比して、ガスケットの性能を維持しつつ、より簡易な構成で冷却効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図中では、xを厚さ方向とし、y、zをx方向に直交すると共に互いに直交する方向とする。なお、
図1〜
図4は、構成が分かり易いように寸法を変化させており、寸法は必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0013】
図1に例示するように、第一実施形態のガスケット30は、シリンダブロック11及びシリンダヘッド12の間に介在し、ボルト10により締結されるシリンダヘッドガスケットである。
【0014】
シリンダブロック11は、シール対象孔として四つのシリンダボア13と、シリンダボア13の外周に形成されたウォータジャケット用の水孔や潤滑油用の油孔などの水油孔14とが形成されている。シリンダボア13の内部には、図示しないピストンが上下方向に往復自在に組付けられている。シリンダブロック11は、一つのシリンダボア13に対して四つのボルト孔15がシリンダボア13の外周に形成されている。
【0015】
シリンダヘッド12は、図示しないインジェクタや吸排気バルブが組付けられており、シリンダブロック11のボルト孔15に対応させたボルト孔16が貫通している。
【0016】
ガスケット30は、第一金属線20が編まれた金属線編物21〜23から構成されていて、金属線編物21からなる第一環状部31、金属線編物22からなる第二環状部32、金属線編物23からなる本体部33を備えている。ガスケット30は、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれを構成する金属線編物21〜23の第一金属
線20が互いに交絡することで接合し、x方向の両端にyz平面に延在する板面34を有して、x方向の板厚D1が0.4mm〜2.0mmの一枚の板状に形成されている。
【0017】
第一金属線20は、直径が0.1mm〜0.3mmの金属の細糸であり、SUS301、SUS304、SUS304Lなどのステンレス鋼線が例示される。この実施形態の第一金属線20は、同一金属且つ同一直径である。
【0018】
金属線編物21〜23は、編目(ループ)24を連続的に綴り合せるように第一金属線20を編んで形成されている。具体的に、金属線編物21〜23は、編まれた第一金属線20の延在方向に直交する方向に編目24が引き出される、緯編(平編、ゴム編、パール編)で編まれている。金属線編物21〜23は、第一金属線20を編んで形成されていればよく、編み方は限定されずに、経編(トリコット編)で編まれてもよい。
【0019】
第一環状部31は、x方向に貫通しているシール対象孔35を有していて、x方向の平面視が円環の部材である。第二環状部32は、x方向に貫通している締結具挿通孔36を有していて、x方向の平面視が円環の部材である。
【0020】
シール対象孔35は、シリンダブロック11のシリンダボア13、水油孔14のそれぞれに対応する貫通孔である。締結具挿通孔36は、シール対象孔35の周囲に配置されていて、ボルト10が挿通する貫通孔である。なお、第一環状部31は、シリンダブロック11のシリンダボア13、水油孔14のそれぞれに対応するように様々な形状を成しており、平面視で円環状に限定されない。
【0021】
ガスケット30は、平面視で第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33を含む全域のうちの少なくとも一部の領域に熱伝導率領域が形成されている。この実施形態で、熱伝導率領域は、第一環状部31であり、平面視で円環状を成し、シリンダボア13、あるいは水油孔14を囲繞している。
【0022】
第一環状部31は、金属線編物21に第一金属線20と共に第二金属線25が編み込まれている。第二金属線25は、第一金属線20よりも熱伝導率が高く、直径が0.1mm〜0.3mmの細糸である。例えば、第一金属線20をステンレス鋼で構成した場合に、第二金属線25は、銅、又は、黄銅、リン青銅、洋白、ベリリウム銅合金などのバネ用銅合金が好ましい。
【0023】
第一環状部31は、充填材37を有することができる。第一環状部31を構成する金属線編物21は、編目24の間の隙間が充填材37により密封されている。充填材37としては、カーボンが例示される。なお、図中では、充填材37を点描で示しているが、実際には編目24が充填材37により密封されているものとする。編目24が閉塞した状態は、流体が編目24を通過しない状態であり、第一環状部31は、シール対象孔35を通過する流体が第一環状部31の周方向外側に漏れないように構成されている。
【0024】
本体部33は、第一環状部31の外周縁に隣接すると共に、第二環状部32の外周縁に隣接していて、第一環状部31及び第二環状部32を内包し、その外周形状がシリンダブロック11又はシリンダヘッド12の外周形状と同形状に形成されている。本体部33は、十二個の第一配置穴38と十個の第二配置穴39とを有している。
【0025】
第一配置穴38は、本体部33の中央部及び外周近くに形成されていて、その内周縁に接するように第一環状部31が配置されている。第二配置穴39は、第一配置穴38の周囲に形成されていて、その内周縁に接するように第二環状部32が配置されている。
【0026】
図2及び
図3に例示するように、ガスケット30の製造方法は、第一金属線20と高熱伝導の第二金属線25とを編んで形成した筒状の金属線編物21から第一環状部31を形成する。また、第一金属線20を編んで形成した筒状の金属線編物22から第二環状部32を形成する。さらに、第一金属線20を編んで形成した他の筒状の金属線編物23から本体部33を形成し、それらを圧縮して板状に形成する方法である。
【0027】
図2(a)〜(c)に例示するように、コース方向が円筒軸方向に、ウェール方向が円筒周方向にそれぞれ向くように第一金属線20を編んで、複数の円筒状の金属線編物21〜23を形成する。図示の例では、一台の編み機により複数の円筒状の金属線編物21〜23を編んでいるので、それらのコース数及びウェール数を同数に限定している。なお、金属線編物21〜23の組成(コース数、ウェール数など)は、編み機のピッチの間隔などを変更することで変更することが可能であり、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれで異ならせてもよい。
【0028】
図2(a)に例示するように、金属線編物21は、金属線編物22、23と異なり、「1」コースごとに間隔を空けて第一金属線20と共に第二金属線25が編み込まれている。なお、金属線編物21は、全てのコースで第二金属線25を編み込んでもよい。また、金属線編物21は、第一金属線20に第二金属線25が絡み合って(交絡して)いればよく、先に第一金属線20を編んでから編目24に第二金属線25を絡ませてもよい。第一金属線20と第二金属線25との編み方が異なっていてもよい。
【0029】
図3(a)に例示するように、金属線編物23から、本体部33を形成する。具体的に、まず、円筒軸方向がx方向に直交するy方向に向いた金属線編物23を、x方向(円筒径方向)に押し潰す。次いで、その金属線編物23の所定の位置の編目24をyz平面に押し広げて第一配置穴38及び第二配置穴39を形成する。ここでいう、所定の位置とは、第一環状部31及び第二環状部32のそれぞれに対応する位置である。シリンダボア13に対応する第一環状部31用の第一配置穴38は、本体部33の短手方向であるz方向の中心に一列に配置されている。水油孔14に対応する第一環状部31用の第一配置穴38は、シリンダボア13に対応する第一環状部31用の第一配置穴38に対してz方向側方に配置されている。第二配置穴39は、第一配置穴38の周囲に配置されている。このようにして、x方向に押し潰したときに、本体部33となる金属線編物23を形成する。
【0030】
この実施形態では、一つの円筒状の金属線編物23から本体部33を形成したが、複数の円筒状の金属線編物23から本体部33を形成してもよい。また、第一配置穴38及び第二配置穴39は、第一環状部31の金属線編物21及び第二環状部32の金属線編物22のそれぞれがその内側に配置できればよく、その大きさや形状は限定されない。第一配置穴38及び第二配置穴39は、本体部33を切り抜いて形成してもよいが、本体部33を切り抜くと解れ易くなるので、編目24を広げて形成することが好ましい。
【0031】
図3(b)に例示するように、第一環状部31の金属線編物21を第一配置穴38の内側に配置し、第二環状部32の金属線編物22を第二配置穴39の内側に、それぞれの円筒軸方向がx方向を向くように配置する。このとき、本体部33の金属線編物23の面と、第一環状部31の金属線編物21及び第二環状部32の金属線編物22の面とは直交している。
【0032】
なお、金属線編物21及び金属線編物22のそれぞれは、本体部33の第一配置穴38及び第二配置穴39に配置する前に、筒軸方向に押し潰して、ある程度形状を形成してから、配置している。また、それらが配置される金属線編物23も同様に径方向に押し潰して、ある程度形状を形成している。
【0033】
このように、金属線編物21〜23を所定の位置に配置して一体化する前に、それぞれ押し潰して仮形状にすることで、柔らかく形状が定まり難い編物をある程度、所定の形状を有する状態として扱うことが可能になる。これにより、製造し易くなり、大量生産には有利になる。
【0034】
次いで、組み合わせた全ての金属線編物21〜23を、図示しないプレス機を用いて、x方向に圧縮して、x方向の両端に板面34を有している一枚の板状に形成して、この製造方法は完了する。
【0035】
なお、プレス機の型によっては、x方向に圧縮すると共に、yz平面に圧縮して第一環状部31のシール対象孔35、第二環状部32の締結具挿通孔36、本体部33の外周形状を形成してもよい。
【0036】
また、充填材37を、第一環状部31をx方向に圧縮する前に、第一環状部31に充填するとよい。例えば、カーボンの粉末を、圧縮前の第一環状部31に充填し、第一環状部31を圧縮すると、編目24を密封するようにカーボンの粉末も圧縮される。
【0037】
第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33を圧縮すると、それぞれの境界で互いの第一金属線20(編目24)が絡み合う(交絡する)ので、それぞれ接合できる。具体的に、第一環状部31の外周縁及び本体部33の第一配置穴38の内周縁とのそれぞれの編目24を絡み合わせて、第一環状部31及び本体部33を接合する。また、第二環状部32の外周縁及び第二配置穴39の内周縁とのそれぞれの編目24を絡め合わせて、第二環状部32及び本体部33を接合する。
【0038】
このように、上記のガスケット30は、金属線編物21〜23で構成された第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれの第一金属線20を交絡して板状にすると共に、第一金属線20よりも熱伝導率の高い第二金属線25を編み込んだ高熱伝導領域として第一環状部31を形成する。それ故、ガスケット30として金属線編物21〜23による圧縮応力を利用することでシール性能を維持しつつ、高熱伝導領域である第一環状部31により冷却効率を向上することができる。高熱伝導領域は、第一金属線20と共に第二金属線25を編み込むだけで形成できるので、部品点数の減少や製造工程の簡略化には有利になると共に、任意の場所に形成するにも有利になる。
【0039】
以上のように、上記のガスケット30は、熱伝導率の高い金属板を用いる従来のガスケットに比して、ガスケット30としてのシール性能やシール対象孔35の周囲の面圧を維持しつつ、より簡易な構成で冷却効率を向上することができる。
【0040】
ガスケット30に高熱伝導領域を形成することで、シリンダブロック11とシリンダヘッド12との間で、熱を効率良く伝導することができる。これにより、冷却効率を向上するには有利になり、シリンダボア13の内部での燃料の燃焼による温度差を抑制することができる。
【0041】
特に、シリンダボア13の周縁の第一環状部31を高熱伝導領域として形成することで、シリンダボア13の周辺の冷却性能を高めることができる。これにより、シリンダボア13の周囲の温度を低くすることで、ノッキングの発生を抑制することができる。また、潤滑油の粘度低下や蒸発の発生も抑制することができ、潤滑油の消費量を低減することができる。さらに、シリンダボア13の周辺の温度差、つまり、排気側の温度と吸気側の温度との不均一さの解消にも有利になり、その温度差によるシリンダボア13の変形を防止することができる。
【0042】
また、水油孔14の周縁の第一環状部31を高熱伝導領域として形成することで、水油孔14により冷却水や循環油との熱交換をより高効率で行うことが可能になり、さらなる冷却性能の向上には有利になる。
【0043】
このように、上記のガスケット30は、積極的に熱伝導を促したい箇所を構成する第一金属線20と共に、第二金属線25を編み込むだけで、容易に高熱伝導領域を形成することができる。
【0044】
また、第一金属線20を編んだ金属線編物21〜23から構成することで、複数の金属板を積層させた従来のガスケットに比して、軽量化できる。これにより、エンジンの軽量化には有利になり、エンジンの燃費を向上できる。
【0045】
また、第二金属線25は機械的特徴として第一金属線20に対して弾性力が異なる。それ故、金属線編物21〜23を同一方向に圧縮しても、金属線編物21の圧縮応力を、金属線編物22、23の圧縮応力と異ならせることができる。これにより、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33の圧縮応力をそれぞれ異ならせるには有利になる。
【0046】
また、金複数の金属板を積層させる従来のガスケットに比して、それぞれの金属板にビードや折り返しを形成する工程を省くことができるので、製造の簡素化には有利になり、生産性を向上することができる。
【0047】
第一環状部31の他に、第二環状部32や本体部33を高熱伝導領域としてもよい。また、本体部33の全域ではなく、一部の領域を高熱伝導領域としてもよい。
【0048】
図4に例示するように、第二実施形態のガスケット30は、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれが、シリンダブロック11及びシリンダヘッド12の間に挟持されてボルト10により締結された状態で、x方向の圧縮応力が異なっている。
【0049】
第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれに生じる圧縮応力は、ボルト10による締め付け圧力(締結力)が、板面34がシリンダブロック11及びシリンダヘッド12の座面に馴染む程度(両方の板面34がシリンダブロック11及びシリンダヘッド12の座面に隙間なく接する程度)以上になったときに生じる。
【0050】
具体的に、この実施形態で、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれは、それぞれを構成する金属線編物21〜23における第一金属線20の体積密度が異なっている。なお、体積密度は、単位面積あたりの質量であり、例えば、金属線編物21における第一金属線20の体積密度は、金属線編物21に使用された第一金属線20の質量を示す。
【0051】
第一金属線20の体積密度は、第一環状部31の第一金属線20の体積密度ρ1、第二環状部32の第一金属線20の体積密度ρ2、及び本体部33の第一金属線20の体積密度ρ3の順に小さくなっていて、体積密度ρ1が最大になっている。つまり、本体部33、第二環状部32、及び第一環状部31の順に第一金属線20が密になっていて、第一環状部31が最密になっている。つまり、ガスケット30の面圧は、本体部33、第二環状部32、及び第一環状部31の順に高くなっていて、第一環状部31が最大面圧になっている。
【0052】
締結されたときのガスケット30における第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のx方向の圧縮応力は、第一金属線20の材質、線径、及び本数により異ならせることができる。また、圧縮応力は、金属線編物21のx方向に圧縮する前の編目24のコ
ース数及びウェール数、編目24の大小、編み方などにより異ならせることができる。加えて、圧縮応力は、金属線編物21の向きや積層枚数などにより異ならせることができる。なお、第一金属線20の材質や金属線編物21〜23の編み方によっては、第一金属線20の体積密度が大きくてもx方向の圧縮応力が小さくなる場合もある。
【0053】
そこで、ガスケット30は、金属線編物21〜23のそれぞれの編目24の大きさ、第一金属線20の線径、編み方、一度に編み込む第一金属線20の本数、第一金属線20を構成する材料を異ならせてもよい。
【0054】
このように、ガスケット30は、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33の圧縮応力をそれぞれ異ならせることが望ましい。それぞれの圧縮応力を異ならせることで、締結されたときの、第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のそれぞれの面圧を自在に調節することができる。これにより、長期に渡って締結されても、複数の金属板を積層させた従来のガスケットに比して、面圧を維持するには有利になり、耐久性を向上することができる。
【0055】
既述したガスケット30は、金属線編物21〜23の易加工性、柔軟性を利用することで、任意の形状に形成することができ、且つ、任意の部位のx方向の圧縮応力を変えることができる。これにより、様々なガスケットに適用することができる。
【0056】
既述したガスケット30は、フランジ用ガスケットに限定されずに、例えば、エキゾーストマニホールド用のガスケットやシリンダヘッドガスケットなど、シール対象孔35を複数有しているガスケットにも適用可能である。なお、シリンダヘッドガスケットにおいては、シリンダボア以外の水穴や油穴に対応した環状部を製造するとよい。
【0057】
既述したガスケット30に対して、第一金属線20の体積密度を、体積密度ρ1、体積密度ρ2、及び体積密度ρ3の順に大きくしてもよい。第一環状部31、第二環状部32、及び本体部33のx方向の反発力は、ガスケットの形状、使用用途に応じて様々に変更可能である。
【解決手段】第一金属線20を編んだ金属線編物21からなるシール対象孔35を有する第一環状部31と、第一環状部31の外周縁に接する本体部33とからなり、第一環状部31を構成する第一金属線20及び本体部33を構成する第一金属線20のそれぞれが交絡してなると共に、第一環状部31を構成する第一金属線20と共に第二金属線25を編み込み、その第一環状部31を高熱伝導領域として形成した。