(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343713
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】バッテリースペーサ、電気芯部保護アセンブリ、及び電力バッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 2/34 20060101AFI20180604BHJP
H01M 2/18 20060101ALI20180604BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
H01M2/34 B
H01M2/18 Z
H01M10/04 Z
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-505119(P2017-505119)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公表番号】特表2017-528870(P2017-528870A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】CN2015078109
(87)【国際公開番号】WO2016015502
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】201410371126.X
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201420427972.4
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505327398
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】クゥーリー・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルーシャ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】シーチャオ・フー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンファ・ヂュ
【審査官】
井原 純
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−527063(JP,A)
【文献】
特開2012−227110(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/133775(WO,A1)
【文献】
特開2015−135768(JP,A)
【文献】
特開2011−096660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01M 2/18
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサ本体と;
それぞれが前記スペーサ本体の内面から突出し、前記スペーサ本体の縦方向に延びる、前記スペーサ本体の外面の一部を窪ませて形成された複数の突起と;
前記スペーサ本体の前記外面に形成され、前記突起にそれぞれ対応する、前記スペーサ本体の前記外面の一部を窪ませて形成された複数の溝と;
前記スペーサ本体の前記外面に形成され、前記溝から前記スペーサ本体の縁部へとそれぞれ延びる複数の液体案内スロットと;
を含み、
バッテリースペーサが複数の電気芯部のタブと電力バッテリーのシェルとの間に位置し、前記タブが隣接する前記突起によって支持及び位置決めされるように、前記タブが前記隣接する突起の間に形成された位置決め領域内に受容され、
前記複数の電気芯部は、前記電力バッテリーのシェル内に配置され、その端部に前記タブを有することを特徴とするバッテリースペーサ。
【請求項2】
前記スロットが、前記スペーサ本体の縦方向に延びている請求項1に記載のバッテリースペーサ。
【請求項3】
前記溝内に配置された補強板を更に含む請求項1から2のいずれかに記載のバッテリースペーサ。
【請求項4】
前記補強板が、前記スペーサ本体の横方向に配置され、内側から外側に向かって斜め下方に延びる上面と、下面とを規定する請求項3に記載のバッテリースペーサ。
【請求項5】
前記補強板の前記下面が、内側から外側に向かって斜め上方に延びている請求項4に記載のバッテリースペーサ。
【請求項6】
複数の前記補強板が、各前記溝内に配置されている請求項3から5のいずれかに記載のバッテリースペーサ。
【請求項7】
前記スペーサ本体の上部に配置され、スナップ接続によって絶縁部材と接続されるように構成された接続部材を更に含む請求項1から6のいずれかに記載のバッテリースペーサ。
【請求項8】
前記接続部材が、前記スペーサ本体の横方向に互いに対向する2つのスナップ歯を含み、前記2つのスナップ歯が位置する平面が、前記スペーサ本体の前記外面と直交している請求項7に記載のバッテリースペーサ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のバッテリースペーサと;
スナップ接続によって前記バッテリースペーサの上部に接続される絶縁部材と;
を含むことを特徴とする電気芯部保護アセンブリ。
【請求項10】
前記バッテリースペーサが、その上部に配置された2つのスナップ歯を含む請求項9に記載の電気芯部保護アセンブリ。
【請求項11】
前記2つのスナップ歯が、前記スペーサ本体の横方向に互いに対向しており、前記2つのスナップ歯が位置する平面が、前記スペーサ本体の前記外面と直交している請求項10に記載の電気芯部保護アセンブリ。
【請求項12】
前記絶縁部材が、その端部の上面に形成され互いに対向する2つのスナップ溝を含み、
前記バッテリースペーサが前記スナップ歯と前記スナップ溝との間のスナップ嵌合接続によって前記絶縁部材と接続されるように、前記スナップ歯が前記スナップ溝にそれぞれスナップ嵌めされる請求項10から11のいずれかに記載の電気芯部保護アセンブリ。
【請求項13】
前記スペーサ本体の横方向の前記スナップ溝の側壁面の少なくとも一部が弧状を有するように構成されて前記スペーサ本体の横方向に外側に突出しており、前記スナップ歯が前記スナップ溝の形状と適合する形状を有する請求項12に記載の電気芯部保護アセンブリ。
【請求項14】
シェルと;
複数の電気芯部と;
請求項1から8のいずれかに記載のバッテリースペーサとを含むことを特徴とする電力バッテリー。
【請求項15】
前記複数の電気芯部が、前記シェル内に並んで配置されている請求項14に記載の電力バッテリー。
【請求項16】
前記タブが巻回タブとして構成され、前記位置決め領域が前記巻回タブの形状と適合する形状を有する請求項14から15のいずれかに記載の電力バッテリー。
【請求項17】
シェルと;
複数の電気芯部と;
前記複数の電気芯部を前記シェル内にパッケージングするように構成されたカバーアセンブリと;
請求項9から13のいずれかに記載の電気芯部保護アセンブリとを含み、
前記絶縁部材が前記カバーアセンブリと前記複数の電気芯部との間に位置することを特徴とする電力バッテリー。
【請求項18】
前記複数の電気芯部が、前記シェル内に並んで配置されている請求項17に記載の電力バッテリー。
【請求項19】
前記カバーアセンブリが、第1の電極端子と第2の電極端子とを含み、
前記電力バッテリーが、前記絶縁部材を貫通して前記第1の電極端子を前記タブに接続する第1のコネクタと、前記絶縁部材を貫通して前記第2の電極端子を前記タブに接続する第2のコネクタとを含む請求項17から18のいずれかに記載の電力バッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、中国特許出願第201410371126.X号及び中国特許出願第201420427972.4号(2014年7月31日付で中華人民共和国国家知識産権局(SIPO)に出願)の優先権及び利益を主張し、これらの全文を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示の実施形態は、一般的に、電力バッテリーの技術分野に関し、より詳細には、バッテリースペーサ、バッテリースペーサを有する電気芯部保護アセンブリ、及び電力バッテリーに関する。
【背景技術】
【0003】
石油等の再生不能資源の枯渇、及び環境汚染の深刻化に伴い、新エネルギー自動車に対する人々の注目が高まっている。電力バッテリーは、新エネルギー自動車の心臓部である。自動車は操縦性が大きく、振動及び衝撃を受けることが多いので、電力バッテリーの安全性及び信頼性に対する要求は厳格である。
【0004】
従来技術では、電力バッテリーは一般的に、可撓性部材、電解質、バッテリーカバー、及びシェルの複数の層を重ね合わせて形成した複数の電気芯部を含む。電気芯部は、バッテリーカバー及び/又はシェルによって絶縁されている。
【0005】
今日では、電気芯部は一般的に、電極(アノードとカソードとの両方)シートにその幅方向に被覆領域と非被覆領域とが設けられ、アノードシートとカソードシートとの間にセパレータが配置され、アノードシート及びカソードシートの被覆領域をセパレータに対して巻回して電気芯部とし、また、非被覆領域を巻回して大電流を出力する巻回タブを形成し、巻回タブを電極端子と溶接して電流を出力する上で都合良いように巻回タブの中間部分を積層した、優れた構造を有する。
【0006】
電力バッテリーは、高容量かつ大容量であり、その中の各電気芯部もまた大容量である。一方、各電気芯部は複数の可撓性部材の層によって形成されているので、電気芯部はそのターンオーバー時に破損し易い。複数の電気芯部を含むバッテリーでは、複数の電気芯部の組合せ及び配置が困難である。バッテリーの組立時、特にシェルを電気芯部に対して嵌め込む際に、電気芯部とシェルの壁との間の摩擦が電気芯部に大きな損傷を与える可能性がある。バッテリーの使用時には、自動車の振動及び衝撃によってシェル内で電気芯部の移動が起こり、これによって電気芯部が損傷することがあるので、衝撃によって、集電器の破損、セパレータの収縮、電極板の材料の剥離、及び溶接点の破壊が起こり得る等、バッテリーに隠れた安全上の危険を生じ得る問題を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本開示の目的は、例えば、従来のバッテリースペーサでは電気芯部を安定的に配置することが困難である等の、従来技術に存在する少なくとも1つの問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様の実施形態は、バッテリースペーサを提供する。バッテリースペーサは、スペーサ本体と;それぞれが前記スペーサ本体の内面から突出し、前記スペーサ本体の縦方向に延びる、前記スペーサ本体の外面の一部を窪ませて形成された複数の突起と;前記スペーサ本体の前記外面に形成され、前記突起にそれぞれ対応する、前記スペーサ本体の前記外面の一部を窪ませて形成された複数の溝と;前記スペーサ本体の前記外面に形成され、前記溝から前記スペーサ本体の縁部へとそれぞれ延びる複数の液体案内スロットとを含む。
【0009】
本開示の実施形態のバッテリースペーサは特に、方形構造を有し、バッテリーの同じ端部の1を超えるタブで連結されるリチウムイオン二次バッテリーにおける使用に好適である。本開示の実施形態のバッテリースペーサでは、一方で、電気芯部に連結されるタブは、スペーサ本体の内側表面上の突起によって保護及び位置決めすることができ;一方、タブは、バッテリースペーサによってシェルから絶縁することができるので、タブとシェルとの間の直接接触による短絡の問題が回避され、バッテリーの安全性を大幅に改善することができる。
【0010】
一方、スペーサ本体の外面の一部を窪ませてスペーサ本体の外面の複数の溝を形成することにより、バッテリースペーサを軽量化することができる。従って、実際の製造工程では、バッテリースペーサをバッテリー内に組み立てて液状電解質を注入した後、液状電解質が電池スペーサとシェルとの間の領域に流れ込み、特に溝内で集合することがある。液状電解質の溝内での集合を回避するために、複数の液体案内スロットが設けられ、これがスペーサ本体の外面に形成されて溝からスペーサ本体の縁部へとそれぞれ延びており、集合した液状電解質がスロットに沿って流出できるので、液状電解質の利用が改善する。
【0011】
幾つかの実施形態では、スロットは、スペーサ本体の縦方向に延びている。
【0012】
幾つかの実施形態では、バッテリースペーサは、溝内に配置された補強板を更に含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、補強板は、スペーサ本体の横方向に配置され、内側から外側に向かって斜め下方に延びる上面と、下面とを規定する。
【0014】
幾つかの実施形態では、補強板の下面は、内側から外側に向かって斜め上方に延びている。
【0015】
補強板を溝内に位置させることにより、溝が複数の独立した小キャビティに分割され、液状電解質は極めて容易にキャビティ内に集合する。しかしながら、補強板は、液状電解質が溝及び補強板の表面に沿って溝の底部へと流れる上で有益であるので、液状電解質は、液体案内スロットを通って流出することができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、複数の補強板が各溝内に配置される。
【0017】
幾つかの実施形態では、バッテリースペーサは、スペーサ本体の上部に配置され、スナップ接続によって絶縁部材と接続されるように構成された接続部材を更に含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、接続部材は、スペーサ本体の横方向に互いに対向する2つのスナップ歯を含み、2つのスナップ歯が位置する平面が、スペーサ本体の外面と直交している。
【0019】
上述のようなスナップ歯により、バッテリースペーサを絶縁部材に安定的に固定することができるので、電気芯部の位置安定性を更に改善することができる。
【0020】
本開示の第2の態様の実施形態は、電気芯部保護アセンブリを提供する。アセンブリは、本開示の上記実施形態のバッテリースペーサと;スナップ接続によってバッテリースペーサの上部に接続される絶縁部材とを含む。
【0021】
幾つかの実施形態では、バッテリースペーサは、その上部に配置された2つのスナップ歯を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、2つのスナップ歯は、スペーサ本体の横方向に互いに対向しており、2つのスナップ歯が位置する平面が、スペーサ本体の外面と直交している。
【0023】
幾つかの実施形態では、絶縁部材は、その端部の上面に形成され互いに対向する2つのスナップ溝を含み、バッテリースペーサがスナップ歯とスナップ溝との間のスナップ嵌合接続によって絶縁部材と接続されるように、スナップ歯がスナップ溝にそれぞれスナップ嵌めされる。
【0024】
バッテリースペーサは絶縁部材によってその間で相対的に移動することなく安定的に固定されるので、電気芯部の位置安定性が更に改善する。
【0025】
幾つかの実施形態では、スペーサ本体の横方向のスナップ溝の側壁面の少なくとも一部が弧状を有するように構成されてスペーサ本体の横方向に外側に突出しており、スナップ歯がスナップ溝の形状と適合する形状を有する。
【0026】
従って、絶縁部材とバッテリースペーサとの組立の際に、最初にスナップ歯をスナップ溝の弧状の表面で位置決めすることができ、これによって組立の安定性を確保することができるだけでなく、組立効率を同時に向上させることができる。
【0027】
本開示の第3の態様の実施形態は、電力バッテリーを提供する。電力バッテリーは、シェルと;シェル内に配置され、その端部にタブを有する複数の電気芯部と;本開示の上記実施形態のバッテリースペーサとを含み、バッテリースペーサがタブとシェルとの間に位置し、タブが隣接する突起によって支持及び位置決めされるように、タブが隣接する突起の間に形成された位置決め領域内に受容される。
【0028】
幾つかの実施形態では、複数の電気芯部は、シェル内に並んで配置される。
【0029】
幾つかの実施形態では、タブは巻回タブとして構成され、位置決め領域は巻回タブの形状と適合する形状を有する。
【0030】
本開示の第4の態様の実施形態は、電力バッテリーを提供する。電力バッテリーは、シェルと;シェル内に配置され、その端部にタブを有する複数の電気芯部と;複数の電気芯部をシェル内にパッケージングするように構成されたカバーアセンブリと;本開示の上記実施形態の電気芯部保護アセンブリとを含み、絶縁部材がカバーアセンブリと複数の電気芯部との間に位置し、バッテリースペーサがタブとシェルとの間に位置し、タブが隣接する突起の間に形成された位置決め領域内に受容されて隣接する突起によって支持及び位置決めされる。
【0031】
幾つかの実施形態では、複数の電気芯部は、シェル内に並んで配置される。
【0032】
幾つかの実施形態では、カバーアセンブリは、第1の電極端子と第2の電極端子とを含み、ここで電力バッテリーは、絶縁部材を貫通して第1の電極端子をタブに接続する第1のコネクタと、絶縁部材を貫通して第2の電極端子をタブに接続する第2のコネクタとを更に含む。
【0033】
本開示の実施形態の更なる態様及び利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は以下の説明から明らかとなり、又は本開示の実施形態の実施から習得されるであろう。
【0034】
本開示の前述及び他の態様及び利点は、以下の図面と併せることで、以下の説明から明らかとなり、一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態のバッテリースペーサの正面斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態のバッテリースペーサの背面斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態のバッテリースペーサの断面斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態のバッテリースペーサと電気芯部との間の組立関係を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態の電気芯部保護アセンブリの絶縁部材の部分斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態の電気芯部保護アセンブリの組立関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示の実施形態を詳細に記述する。添付の図面を参照して本明細書に記載する実施形態は、説明及び例示のためのものであり、本開示を一般的に理解するために使用されるものである。実施形態が本開示を限定するものと解釈してはならない。
【0037】
本明細書中において、特段の断り又は限定のない限り、「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「上部」、「底部」、「内」、「外」、及びそれらの派生語等の、位置又は位置関係を示すために使用される用語は、次に記載する、或いは
図1又は
図2に示す記載又は位置関係を指すものと理解されたい。これらの相対的な用語は、説明の便宜のためのものであり、本開示は特定の位置で構成又は動作する必要はない。本開示の説明において、特段の断り又は限定のない限り、「複数の」とは、2以上を意味する。
【0038】
本開示の説明において、特段の断り又は限定のない限り、「固定される」、「取付けられる」、「接続される」等の用語は、恒久的接続、着脱可能な接続、又は一体的な接続等、広く理解することができることに留意されたい。当業者であれば、特定の状況に応じて本開示における特定の意味を理解しよう。
【0039】
また、「第1」及び「第2」等の用語は、本明細書中では説明の目的で使用されるものであり、相対的な重要性又は意義を示唆又は意味することを意図するものではない。
【0040】
本開示の実施形態のバッテリースペーサについて、以下に詳述する。
【0041】
本開示の一実施形態では、バッテリースペーサ1は、スペーサ本体15と、複数の突起11と、複数の溝10と、複数の液体案内スロット12とを含む。各突起11は、スペーサ本体15の内面から突出し、スペーサ本体15の縦方向に延び、スペーサ本体15の外面の一部を窪ませて形成されている。複数の溝10は、スペーサ本体15の外面に形成され、各溝10は突起11にそれぞれ対応してスペーサ本体15の外面の一部を窪ませて形成されている。複数の液体案内スロット12は、スペーサ本体15の外面に形成され、溝10からスペーサ本体15の縁部へとそれぞれ延びている。
【0042】
本開示の一実施形態では、バッテリースペーサ1は、方形構造のバッテリーに使用され、スペーサ本体15の内面から突出した突起11が、バッテリー内の巻回電気芯部2の巻回タブ21を位置決めするために使用される。
【0043】
当業者に知られているように、アノードシートとカソードシートとは、アノードシート又はカソードシートの長さ方向の一辺を互いに揃えて配置され、アノードシート及びカソードシートにおける電極材料のないタブ領域(即ち、非被覆領域)を露出させるようにアノードシート又はカソードシートの幅方向にずらして配置されている。更に、アノードシートにおける電極材料を有する部分(即ち、被覆領域)が、カソードシートにおける電極材料を有する部分(即ち、被覆領域)によって完全に覆われる場合、アノードシートとカソードシートとの間にセパレータを配置し、アノードシート及びカソードシートをセパレータに対して巻回して巻回電気芯部を形成する。次いで、電極材料のないタブ領域の中間部分(即ち、電気芯部の一端の巻回された非被覆アノードシート、及び電気芯部の他端の巻回された非被覆カソードシート)を圧縮し、それぞれアノードタブ及びカソードタブを得る。アノードタブ及びカソードタブは巻回タブであり、電気芯部の両端部の弧状構造は一般的に、タブの縁部の破損を回避し、電気芯部の弧状の縁部に加わる衝撃を低減するために、遷移領域として保たれる。
【0044】
本開示の実施形態では、突起11の間に、タブ21を受容するための少なくとも1つの位置決め領域16が形成される。バッテリースペーサ1を使用すると、各タブ21が位置決め領域16内に支持される。従って、隣接する突起11の間に形成される位置決め領域16がタブ21を受容して位置決めすることが可能である限り、突起11の長さは制限されない。当業者であれば、異なるタブの大きさに応じて、突起11の長さ、及び隣接する突起11間の距離を調節することができる。
【0045】
本開示の実施形態のバッテリースペーサ1は特に、方形構成を有し、バッテリーの同じ端部のタブ21で連結されるバッテリーにおける使用に好適である。タブ21とシェルとの間の接触及び導通を避けるために、タブ21は、本開示の実施形態のバッテリースペーサ1によってシェルから絶縁されている。上述のように、スペーサ本体15の外面には、スペーサ本体15の外面の突起11に対応する部分を窪ませて溝10が形成されており、溝10は有底溝であってもよいことが理解できる。
【0046】
本開示の実施形態では、バッテリースペーサ1の内側と外側とが隔離されている。それ故、バッテリーにバッテリースペーサ1を組み立てた後に液状電解質を注入すると、バッテリースペーサ1の外部の液状電解質がバッテリースペーサ1の内部に自由に流入することは困難であり、液状電解質がバッテリースペーサ1の溝10内に極めて容易に集合する。更に、スペーサ本体15の外面には、液体案内スロット12が形成され、液状電解質を通すために溝10からスペーサ本体15の縁部へと延びており、溝10内に集合した液状電解質が液体案内スロット12に沿って流出可能であるので、バッテリー内の液状電解質の局所的な集合を回避することができる。また、液体案内スロット12の数は限定されることはなく、1以上であってもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、液体案内スロット12は、スペーサ本体15の縦方向に延びていてもよい。
【0048】
本開示の一実施形態では、溝10の強度を向上させるために、バッテリースペーサ1は、溝10内に配置された補強板13を更に含む。補強板13は複数であってもよく、当業者であれば、実際の用途に応じて、補強板13の数及び位置を調節することができる。例えば、良好な強度を備えることを前提に、補強板13の数を適切に減らすことにより、バッテリースペーサ1の軽量化を図ることができる。
【0049】
補強板13は、任意の方向に配置することができるが、好ましくはスペーサ本体15の横方向に配置される。即ち、補強板13が位置する平面は、溝10又は突起11が延びる方向と直交している。
【0050】
本開示の実施形態では、補強板13を溝10内にそれぞれ配置することにより、各溝10が複数の独立した小キャビティに分割されるので、液状電解質が、溝10内、即ち複数の独立した小キャビティ内に集合する確率を大幅に高める。本開示の一実施形態では、各補強板13は、内側から外側に向かって斜め下方に延びる上面を有する。従って、補強板13の上面に落下した液状電解液が、上面に沿って溝10の開口部へと流れ込み、重力の作用で下方に流れることにより、液状電解質の集合が起こる確率をある程度低減することができる。
【0051】
本開示の幾つかの実施形態では、各補強板13は、内側から外側に向けて斜め上方に延びる下面を有する。よって、各補強板13は全体的に断面形状が台形又は三角形であり、各補強板13の厚みは内側から外側に向かって薄くなっている。従って、重力の作用により、第1の補強板13の上面に落下した液状電解液は、斜め下方に延びる上面に沿って第1の補強板13の縁部に向かって外側に流れ、縁部から第1の補強板13の下面に向かって流れ、次いで斜め上方に延びる下面に沿って溝10の内壁に向かって内側に流れ、更に溝10の内壁に沿って第1の補強板13に隣接する第2の補強板13の上面に向かって流れる。このようにして、液状電解質は、溝10の下端まで下方に連続的に流れ、溝10の下端に連通する液体案内スロット12を通って流出するので、液状電解質の溝10内での集合が回避される。
【0052】
本開示の実施形態のバッテリースペーサ1は、それ自体の運動に起因する損傷からタブ21を保護するために、タブ21を位置決めするために使用されるので、バッテリーの性能が改善される。バッテリースペーサ1は通常、絶縁部材3と共に組み立てられ、使用される際にシェル内に配置される。本開示の一実施形態では、バッテリースペーサ1と絶縁部材3との間の相対的な運動に起因する電気芯部2及びタブ21の損傷を回避するために、バッテリースペーサ1は、スペーサ本体15の上部に配置され、スナップ接続によって絶縁部材3と接続するために使用される接続部材を更に含む。
【0053】
上述の接続部材は、絶縁部材3をバッテリースペーサ1に固定するために用いられるものであり、任意の一般的な構造を有するものであってもよい。例えば、1以上のスナップ歯14がバッテリースペーサ1の上部に設けられ、絶縁部材3がスナップ歯14とそれぞれ適合する1以上のスナップ溝31を含むか、又は絶縁部材3に1以上のスナップ歯14が設けられ、バッテリースペーサ1がその上部に設けられた1以上のスナップ溝31を含み、スナップ溝31がスナップ歯14にそれぞれ適合する。
【0054】
本開示の実施形態では、接続部材は、スペーサ本体15の横方向に互いに対向する2つのスナップ歯14を含み、2つのスナップ歯14が位置する平面が、スペーサ本体15の外面と直交している。
【0055】
上述のようなスナップ歯14により、バッテリースペーサ1を絶縁部材3に安定的に固定することができるので、バッテリースペーサ1と絶縁部材3との間の相対的な運動に起因する電気芯部2及びタブ21の損傷が回避され、電気芯部の位置安定性が更に改善される。
【0056】
本開示の実施形態はまた、電気芯部保護アセンブリを提供する。アセンブリは、絶縁部材3と、本開示の上記実施形態のバッテリースペーサ1とを含む。絶縁部材3は、スナップ接続によってバッテリースペーサ1の上部に接続される。
【0057】
上述のように、バッテリースペーサ1と絶縁部材3との間のスナップ接続は、複数の方法及び構造によって達成することができる。本開示の実施形態では、バッテリースペーサ1は、その上部に2つのスナップ歯14を含む。2つのスナップ歯14は、互いに対向してスペーサ本体15の横方向に配置され、2つのスナップ歯14が位置する平面は、スペーサ本体15の外面と直交している。絶縁部材3は2つのスナップ溝31を含み、2つのスナップ溝31は、絶縁部材3の端部の上面に形成され互いに対向している。バッテリースペーサ1がスナップ歯14とスナップ溝31との間のスナップ嵌合接続によって絶縁部材3と接続されるように、スナップ歯14がスナップ溝31にそれぞれスナップ嵌めされる。
【0058】
このようにして、スナップ接続によって互いに接続されたバッテリースペーサ1と絶縁部材3とは、絶縁部材3の縦方向及び横方向、並びにバッテリースペーサ1の下方に延びる縦方向に制限されるので、バッテリースペーサ1と絶縁部材3との間の相対的安定性が大いに確保される。
【0059】
本開示の実施形態では、スペーサ本体15の横方向のスナップ溝31の側壁面の少なくとも一部が弧状を有するように構成されてスペーサ本体15の横方向に外側に突出し、スナップ歯14は、スナップ溝31の形状と適合する形状を有する。上述の構造により、絶縁部材3とバッテリースペーサ1との組立の際に、最初にスナップ歯14をスナップ溝31の弧状の表面で位置決めすることができ、これによって組立の安定性を確保することができるだけでなく、組立効率を同時に向上させることができる。
【0060】
本開示の実施形態はまた、電力バッテリーを提供する。電力バッテリーは、シェルと、複数の電気芯部2と、本開示の上記実施形態のバッテリースペーサ1とを含む。複数の電気芯部2は、シェル内に配置され、その端部にタブ21を有する。バッテリースペーサ1は、タブ21とシェルとの間に位置し、タブ21が隣接する突起11によって支持及び位置決めされるように、タブ21は隣接する突起11の間に形成された位置決め領域16内に受容される。
【0061】
幾つかの実施形態では、電気芯部2は、シェル内に並んで配置される。
【0062】
幾つかの実施形態では、タブ21は、巻回タブとして構成される。好ましくは、隣接する突起11の間に形成された位置決め領域16は、巻回タブの形状と適合する形状を有するので、タブ21を良好に位置決めすることができる。
【0063】
上述の電気芯部保護アセンブリに基づき、本開示の実施形態はまた、電力バッテリーを提供する。電力バッテリーは、シェルと、複数の電気芯部2と、カバーアセンブリと、本開示の上記実施形態の電気芯部保護アセンブリとを含む。複数の電気芯部2は、シェル内に配置され、その端部にタブ21を有する。カバーアセンブリは、複数の電気芯部2をシェル内にパッケージングするように構成されている。絶縁部材3がカバーアセンブリと複数の電気芯部2との間に位置し、バッテリースペーサ1がタブ21とシェルとの間に位置し、タブ21がバッテリースペーサ1の隣接する突起11の間に形成された位置決め領域16内に受容され、隣接する突起11によって支持及び位置決めされる。
【0064】
幾つかの実施形態では、電気芯部2は、シェル内に並んで配置される。
【0065】
幾つかの実施形態では、カバーアセンブリは、任意の一般的な構造を有するものであってもよい。例えば、カバーアセンブリは、第1の電極端子と第2の電極端子とを含み、電力バッテリーは、第1のコネクタと第2のコネクタとを更に含み、ここで、第1のコネクタは、絶縁部材3を貫通して第1の電極端子をタブ21に接続し、第2のコネクタは、絶縁部材3を貫通して第2の電極端子をタブ21に接続する。
【0066】
本開示の好ましい実施形態のバッテリースペーサ1及び電気芯部保護アセンブリについて、
図1〜
図6を参照して以下に説明する。
【0067】
図1〜
図3に示すように、バッテリースペーサ1は、一般的に開放上部と開放内壁と有するフレームである。スペーサ本体15の外面には、スペーサ本体15の外面の一部を窪ませることによって3つの溝10が形成されており、スペーサ本体15の内面には、対応する3つの突起11が形成されている。3つの突起11は、バッテリースペーサ1のスペーサ本体15の縦方向に延びている。突起11の長さは、電気芯部2の巻回タブ21の圧縮部の長さに適合しており、隣接する突起11の間の距離は、電気芯部2の巻回タブ21の圧縮部の厚みに適合している。隣接する突起11の間には位置決め領域16が形成されているので、電気芯部2のタブ21を位置決め領域16に受容させて位置決めすることができる。
【0068】
バッテリースペーサ1のスペーサ本体15の外面には、液体案内スロット12が形成されている。液体案内スロット12は、スペーサ本体15の外面の中央に位置する溝10の下端部からバッテリースペーサ1のスペーサ本体15の下縁部へと下方に延びている。
【0069】
3つの溝10のそれぞれに複数の補強板13が配置されている。複数の補強板13は、バッテリースペーサ1においてスペーサ本体15の横方向に配置されている。
【0070】
図3に示すように、各補強板13は全体的に断面形状が台形又は三角形であり、各補強板13の厚みは内側から外側に向かって薄くなっている。更に、各補強板13は、内側から外側に向かって斜め下方に延びる上面と、内側から外側に向かって斜め上方に延びる下面とを有している。
【0071】
バッテリースペーサ1は、その上部に2つのスナップ歯14を含み、2つのスナップ歯14は、互いに対向してバッテリースペーサ1においてスペーサ本体15の横方向に配置され、2つのスナップ歯14が位置する平面は、スペーサ本体15の外面と直交している。
【0072】
図4に示すように、複数の電気芯部2は、並んで配置されている。各電気芯部2は、巻回電気芯部として構成されており、その端部にタブ21を有する。タブ21は巻回タブとして構成されており、その両端部にそれぞれ弧状の遷移領域22を有する。
【0073】
バッテリースペーサ1と複数の電気芯部2との組立の際に、並べて配置された電気芯部2のタブ21が、バッテリースペーサ1において突起11によって形成される位置決め領域16に挿入され、突起11によって支持及び位置決めされる。
【0074】
図5に示すように、本開示の実施形態の電気芯部保護アセンブリでは、絶縁部材3は、その端部の上面において互いに対向し、バッテリースペーサ1に接続されるように構成された2つのスナップ溝31を含む。スナップ溝31は、絶縁部材3の上面の一部を窪ませて形成されている。
【0075】
スペーサ本体15の横方向のスナップ溝31の側壁面の少なくとも一部が弧状を有するように構成され、スペーサ本体15の横方向に外側に突出している。
【0076】
図6に示すように、バッテリースペーサ1の上部に配置されたスナップ歯14は、スナップ溝31の形状と適合する形状を有する。絶縁部材3がバッテリースペーサ1に固定されるように、スナップ歯14がスナップ溝31にスナップ嵌めされる。
【0077】
本開示の上記実施形態のバッテリースペーサ1によれば、一方では電気芯部2のタブ21を効果的に位置決めしてそれ自体の運動に起因する損傷から電気芯部2を保護することができ、他方ではバッテリースペーサ1内における液状電解質の集合を効果的に防止することができる。それと同時に、バッテリースペーサ1が絶縁部材3によって安定的に固定されているので、バッテリースペーサ1と絶縁部材3との相対的な運動に起因する電気芯部2の損傷を防止することができる。
【0078】
本明細書を通じて、「一実施形態(an embodiment)」、「幾つかの実施形態」、「一実施形態(one embodiment)」、「別の実施例」、「一実施例」、「特定の実施例」、又は「幾つかの実施例」との参照は、その実施形態又は実施例に関して説明する特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて、様々な箇所における、「幾つかの実施形態では」、「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」、「別の実施例では」、「一実施例では」、「特定の実施例では」、又は「幾つかの実施例では」等の表現の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態又は実施例を指すものとは限らない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1以上の実施形態又は実施例において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0079】
説明のための実施形態を示して説明したが、実施形態において、本開示の精神及び原理から逸脱することなく特許請求の範囲及びその均等物の範囲内の全ての変更、代替、及び修正がなされ得ることが、当業者には分かるであろう。