特許第6343735号(P6343735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343735
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】エアクッションシートおよびシート
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/057 20060101AFI20180604BHJP
   A47C 27/08 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   A61G7/057
   A47C27/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-174523(P2016-174523)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-38579(P2018-38579A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597057243
【氏名又は名称】木本 一
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】木本 一
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−080425(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3109659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/057
A47C 27/08−27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通気性を有する2枚のシート状部材を、重ね合わせた状態で相互の周縁が固着して形成された基材シートと、
前記基材シートの前記周縁より内側において、
前記基材シートが重ね合わせた状態で外周を固着して形成され、気体を前記基材シートの外部から導入または排出する流通部と、
前記流通部に連通されるとともに前記基材シートが重ね合わせた状態で外周を固着して形成され、前記流通部を介して気体が充填されることにより厚み方向に膨らむ形状に変形する導入部と、
前記導入部の外周の外側の一部の前記基材シートが切り込まれた切込部とを備えたエアクッションシート。
【請求項2】
前記切込部は、前記導入部の外周の外側から前記流通部の外周の外側の一部にまで及んでいる請求項1に記載のエアクッションシート。
【請求項3】
前記基材シートには、前記導入部、前記流通部および前記切込部が複数箇所形成された請求項1または請求項2に記載のエアクッションシート。
【請求項4】
前記導入部および前記流通部の内には、線状材にて形成される乖離層部が設置された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアクッションシート。
【請求項5】
前記基材シートは、凹凸層を有し、前記凹凸層が内側となるように重ねわせた状態にて形成された請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエアクッションシート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエアクッションシートと、
前記エアクッションシートの全面を覆うように固着され防水性を有するカバーシートとを備えたシート。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエアクッションシートを複数枚厚み方向に積層し、
各前記エアクッションシートの全面を覆うように固着され防水性を有するカバーシートとを備えたシート。
【請求項8】
各前記エアクッションシートの厚み方向に対して同一箇所を膨らませる前記導入部同士は、当該導入部同士のそれぞれの中心が厚み方向に対して同一箇所に形成された請求項7に記載のシート。
【請求項9】
3枚の前記エアクッションシートを厚み方向に積層して構成し、
厚み方向に対して上下関係にある3枚のうち2枚の前記エアクッションシートの前記導入部は、平面からみて円状に形成されるとともに、長手方向に2列にかつ当該列において複数箇所であって、2枚の前記エアクッションシートの相対する側において、厚み方向で重なり合う位置に形成され、
3枚のうち残りの1枚の前記エアクッションシートの前記導入部は、平面からみて長方形状に形成されるとともに、長手方向に間隔を隔てて前記エアクッションシートの使用者の上半身が左右に倒れてずれるのを防止するための箇所の短手方向の両端、使用者の臀部のずれを防止するための箇所、および、使用者のふくらはぎの位置に相当する箇所にそれぞれ形成される請求項7または請求項8に記載のシート。
【請求項10】
前記流通部には、前記カバーシートの外部に形成され気体の導入または排出の制御を行う制御部が接続される請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、持ち運びが容易になるとともに低コストにて製造可能となるエアクッションシートおよびシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエアクッションは、風船と、マットと、クッション材と、カバーとにて構成され、風船を膨張および収縮させることにより利用されているものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエアクッションは、持ち運びのことが考慮されておらず、折りたたむことなどできなく、持ち運びに不便が生じるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、持ち運びが容易になるとともに低コストにて製造可能となるエアクッションシートおよびシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のエアクッションシートは、
非通気性を有する2枚のシート状部材を、重ね合わせた状態で相互の周縁が固着して形成された基材シートと、
前記基材シートの前記周縁より内側において、
前記基材シートが重ね合わせた状態で外周を固着して形成され、気体を前記基材シートの外部から導入または排出する流通部と、
前記流通部に連通されるとともに前記基材シートが重ね合わせた状態で外周を固着して形成され、前記流通部を介して気体が充填されることにより厚み方向に膨らむ形状に変形する導入部と、
前記導入部の外周の外側の一部の前記基材シートが切り込まれた切込部とを備えたものである。
また、この発明のシートは、
前記に示したエアクッションシートと、
前記エアクッションシートの全面を覆うように固着され防水性を有するカバーシートとを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエアクッションシートおよびシートによれば、
持ち運びが容易になるとともに、低コストにて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1のエアクッションシートの構成を示す図である。
図2図1に示したエアクッションシートの製造前における分解斜視図である。
図3図1に示したエアクッションシートに使用される基材シートの構成を示す側面図である。
図4】この発明の実施の形態2のシートの構成を示す分解斜視図である。
図5図4に示したシートの内部のエアクッションシートの構成を示す平面図である。
図6図4に示したシートの内部のエアクッションシートの構成を示す平面図である。
図7図4に示したシートの内部のエアクッションシートの構成を示す平面図である。
図8図4に示したシートの使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1のエアクッションシートの構成を示す図である。図1(A)はエアクッションシートの平面図である。図1(B)は図1(A)に示したB−B線における断面図であり、エアクッションシートが厚み方向Xに膨らんだ状態を模式的に示すものである。図2図1に示したエアクッションシートの製造前における分解斜視図である。図2(A)はエアクッションシートの基材シートの厚み方向Xの上側のシート状部材を示した斜視図である。図2(B)はエアクッションシートの乖離層部を示した斜視図である。図2(C)はエアクッションシートの基材シートの厚み方向Xの下側のシート状部材を示した斜視図である。図3図1に示したエアクッションシートに使用される基材シートの凹凸層の構成の例を示す側面図である。
【0010】
図において、エアクッションシート5は、基材シート50から構成されている。基材シート50は、非通気性を有する2枚のシート状部材52、53を、重ね合わせた状態で相互の周縁60が固着して形成されている。シート状部材52、53は、少なくとも一方の面上に凹凸層6を有する。基材シート50は、シート状部材52、53のその凹凸層6が内側となるように重ね合わせ形成される。シート状部材52、53は、例えば、材質としてレーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルなどの熱融着性を有する部材が考えられる。尚、凹凸層6は少なくとも後述する導入部および流通部に相当する箇所に形成されていれば良い。
【0011】
シート状部材52、53の凹凸層6の構成について説明する。具体的には、図3(A)に示すように、凹凸層6として静電植毛層63にて形成される場合がある。また、図3(B)に示すように、凹凸層6として溝加工層64にて形成される場合がある。また、図3(C)に示すように、凹凸層6としてエンボス加工層65にて形成される場合がある。図1(B)に示すように、シート状部材52、53の厚みW1およびW2は、0.1mm程度である。但し、凹凸層6が静電植毛層63にて形成されている場合は、シート状部材52、53の厚みW1およびW2は、0.3mm程度になることが考えられる。
【0012】
そして、基材シート50の周縁60より内側において、流通部511、導入部51および切込部512が形成されるとともに、乖離層部513が設置される。流通部511は、基材シート50のシート状部材52、53が重ね合わせた状態で外周61を固着して形成される。そして、流通部511は、気体を基材シート50の外部から導入または排出するためものである。流通部511の一端は、基材シート50の周縁60の一部に外部と導通するための開口部514として形成される。
【0013】
導入部51は、流通部511の他端に連通される。導入部51は、基材シート50のシート状部材52、53が重ね合わせた状態で外周62を固着して形成される。導入部51は、流通部511から気体が導入され充填されることにより厚み方向Xに導入部51の重心G50を中心に膨らむ。切込部512は導入部51の外周62の外側の一部の基材シート50が切り込まれて形成される。よって、導入部51の一部は、基材シート50の本体から分離されるとともに、導入部51の残りの一部は、基材シート50の本体と固着した状態にて形成される。また、導入部51および流通部511は、気体が充填される前は、扁平袋状にて形成される。
【0014】
乖離層部513は、線状材にて形成され、導入部51および流通部511の内に設置される。尚、乖離層部513は、図1に示した場合に限られることは無く、線状材にて、例えば網目状に形成することも可能である。線状材としては、例えば、材質として、プラスチックバネにて形成することが考えられる。また、図1(B)に示すように、厚み方向Xの厚みW3は、0.5mm程度にて形成される。よって、エアクッションシート5に気体が導入される前の厚み方向Xの厚みは、1〜2mm程度である。
【0015】
尚、図1(B)は、厚み方向Xにおいて、それぞれの部分の構成が理解しやすくするために記載されたものであり、実際の大きさとは異なるものである。また、切込部512は、導入部51と、基材シート50の本体とが切り離され、分離していることを明確とするための記載である。
【0016】
そして、これら流通部511、導入部51および切込部512は、先に示したように、基材シート8が熱融着性を有するシート状部材52、53にて形成する場合であれば、型抜きと同時に熱融着を行い、周縁60、および外周61、62を同時に熱融着固着して形成することが可能となる。また、型抜きと同時に切り込むことにより、切込部512も同時に形成することができる。尚、当該型抜きを行う前に、例えば図2に示すように、シート状部材52、53との間の必要箇所に、あらかじめ乖離層部513を設置しておく。また、型抜きの際には、シート状部材53の内側の面上に乖離層部513を載置して行うことが考えられる。
【0017】
次に、上記のように構成された実施の形態1のエアクッションシート5の使用方法について説明する。流通部511の開口部514を介して、外部から気体が、流通部511を通り、導入部51に導入される。扁平袋状の導入部51の内に気体が充填されることにより扁平袋状が重心G50を中心に厚み方向Xに膨らむ形状(図1(B))に変形するものである。この際、切込部512が形成されているため、導入部51は基材シート50の本体から切込部512の部分が分離され、膨らむ形状への変形が抑制されることは無い。また、切込部512が形成されていない箇所において、導入部51の外周62の外部は基材シート50に固定されているため、ずれが発生する可能性が低くなる。
【0018】
外部から気体が導入されていない場合には、導入部51は扁平袋状となり、その内部においては、基材シート50のシート状部材52、53の凹凸層6に、空気(気体)が残存する。このため厚み方向Xに膨らむ前の扁平状態において、基材シート50のシート状部材52、53同士が密着することを防止できる。よって、基材シート50同士が密着した場合に発生する、空気の導入時の破裂音を防止するとともにスムーズに空気の導入を行うことができる。これは、図3(A)にて示した、凹凸層6を静電植毛層63で形成する場合であれば、静電植毛層63に空気が残存する可能性が高いため、基材シート50同士の密着をより一層防止することができ、特に有効的である。
【0019】
さらに、エアクッションシート5の導入部51および流通部511内には、線状材にて、乖離層部513が形成されているため、先の凹凸層6に追加してさらに、基材シート50同士が密着することを防止できる。
【0020】
尚、上記実施の形態1においては、凹凸層6および乖離層部513を備える例を示したが、例えば、凹凸層6、または、乖離層部513のいずれか一方であっても、基材シート50同士が密着することを防止できる。よって、これらは使用用途、または、基材シート50の特性、または、コストによって、適宜設定されるものである。
【0021】
上記のように構成された実施の形態1のエアクッションシートによれば、基材シートに、導入部、流通部、および切込部が一体に形成されているため、容易に製造することが可能となり低コストにて製造することができる。また、導入部の外周の外部の一部に切込部が形成されているため、導入部は容易に変形して膨らむことができるとともに、その他の部分が基材シートに固定されていることにより、ずれの発生が抑制される。
【0022】
また、基材シートを凹凸層が内側となるように重ね合わせた状態で相互の周縁が固着して形成するか、または、基材シートの導入部および流通部内に、線状材にて形成される乖離層部を設置しているため、基材シートが密着することが防止され、気体の導入および排出を行う際に雑音をともなうこと無く、簡便に気体の導入および排出を行うことができる。
【0023】
また、凹凸層は、静電植毛層、または、溝加工層、または、エンボス加工層にて形成されているため、製作容易にかつ低コストにて実現することが可能である。
【0024】
さらに、線状材にて形成される乖離層部が配設されているため、製作容易にかつ低コストにて実現することが可能である。
【0025】
尚、上記実施の形態1においてはエアクッションシート5の基材シート50を1対のシート状部材52、53にて形成する例を示したが、これに限られることは無く、1枚のシート状部材を凹凸層が内側となるように折りたたんで基材シートとして構成して、エアクッションシートを形成することも可能である。
【0026】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2のエアクッションシートを用いたシートの構成を示す分解斜視図である。図4(A)はシートの上面側のカバーシートの構成を示す斜視図である。図4(B)は1層目のエアクッションシートの構成を示す斜視図である。図4(C)は2層目のエアクッションシートの構成を示す斜視図である。図4(D)は3層目のエアクッションシートの構成を示す斜視図である。図4(E)はシートの下面側のカバーシートの構成を示す斜視図である。
【0027】
図5図4(B)に示した1層目のエアクッションシートの構成を示す平面図である。図6図4(C)に示した2層目のエアクッションシートの構成を示す平面図である。図7図4(D)に示した3層目のエアクッションシートの構成を示す平面図である。図8図4に示したシートの使用例を示す図である。図8(A)は体の左側を起こすために、シートのエアクッションシートを膨張させた状態を示した例、図8(B)はシートを膨張させる前の状態を示した例、図8(C)は使用者のふくらはぎの部分を上げるために、シートのエアクッションシートを膨張させた状態を示した例である。図8(D)は使用者の臀部を上げるために、シートのエアクッションシートを膨張させた状態を示した例である。
【0028】
本実施の形態2においては、上記実施の形態1にて示したエアクッションシート5と同様に形成されたエアクッションシート2、3、4を用いてシート100を構成する場合について説明する。但し、各エアクッションシート2、3、4には、導入部、流通部、および切込部がそれぞれ複数箇所に形成され、乖離層部がそれぞれ設置されている。尚、基材シートを構成するシート状部材52、53およびシート状部材52、53に形成される凹凸層については、上記実施の形態1と同様であるためその説明は適宜省略する。また、各導入部、流通部、切込部および乖離層部の関係は、上記実施の形態1と同様にであるためその説明は適宜省略する。
【0029】
本願発明のシート100は、従来の場合と同様に、病人など、体の不自由な人、自力で寝返りが困難な人のための介護用体位変換に使用するものである。これは、使用者の床ずれ(褥瘡)を防止、長時間の同姿勢による凝りの解消と同時に胃腸の働きを活発にする等、使用者の苦痛を和らげ、介護者の負担を軽減するためのものである。具体的には、シート100に配置された各エアクッションシートを適宜膨らませることにより、使用者の体を動かして利用するものである。よって、シート100は、このように使用すること、および、持ち運びを考慮に入れて、長手方向Yの長さH0は、170cm程度、短手方向Zの長さTは、70cm程度にて形成することが考えられる。
【0030】
図において、シート100は、防水性を有し、全体を覆うためのカバーシート10、11(図4(A)、(E))と、3枚のエアクッションシート2、3、4(図4(B)、(C)、(D))とから構成されている。
【0031】
カバーシート10、11について説明する。カバーシート10、11は、図4において、エアクッションシート2、3、4の全てを覆う。カバーシート10、11の左端Y1および右端Y2にてエアクッションシート2、3、4の左端Y1および右端Y2を挟み込んで保持する。そして、カバーシート10、11は、防水性を有する、例えば、材質としては、合皮レザーシートにて形成される。カバーシート10、11の厚み方向Xの厚さは、3mm程度が考えられる。
【0032】
よって、シート100の厚み方向Xの厚さは、2枚のカバーシート10、11の厚みと、上記実施の形態1と同様に形成されたエアクッションシート2、3、4の厚みとの合計であり、10mm以下となるように構成されている。そのため、シート100を筒状に丸めた状態、または、3つ折り、4つ折りなどに折りたたんだ状態にて持ち運びことができる。
【0033】
次に、各エアクッションシート2、3、4について、図5、6、7に基づいてそれぞれ説明する。エアクッションシート2は、図5に示すように、基材シート20に長手方向Yの2列にかつ各列において4箇所、合計8箇所に導入部21、22、23、24、25、26、27、28を備える。そして、それぞれの導入部21〜28に対して、他端が連通された流通部211、221、231、241、251、261、271、281がそれぞれ形成される。各流通部211、221、231、241、251、261、271、281は各導入部21〜28を、簡便に膨らませることが可能となるように適宜配置されている。
【0034】
具体的に、各流通部211、221、231、241、251、261、271、281は、各導入部21〜28を、シート100の短手方向Zの中心線Q側から膨らませるように配置する。これは、シート100の短手方向Zの中心線Q側からではなく、長手方向Yの両端のいずれか側から膨らませると、使用者が各導入部21〜28上の膨らむ側と反対側に倒れたりする可能性が生じ、そのことを防止するためである。
【0035】
各導入部21〜28は、膨らむ前の状態は、平面から見た状態が略円形状であって、扁平袋状にて形成されている。また、厚み方向Xに膨らむと各導入部21〜28の各重心G1、G2、G3、G4、G5、G6、G7、G8を中心とする略球体状になる。
【0036】
また、各流通部211、221、231、241、251、261、271、281の一端は、上記実施の形態1と同様に開口部が形成されており、外部から気体を導入または排出するものである。また、当該気体の導入または排出においては、カバーシート10、11の外部に形成され気体の導入または排出の制御を行う制御部(図示せず)が接続されている。
【0037】
また、制御部と、各流通部211、221、231、241、251、261、271、281との間は、例えば、基材シート20より硬質な部材にて形成され、空気が流通していない際にも、管形状が保持できる程度の流通管が使用される。例えば、材質として、ポリエチレンにて形成され、径は3〜5mm程度のものが使用される。また、各流通部211、221、231、241、251、261、271、281と流通管との接続箇所には、停電時などにおいて、エアクッションシート2内の空気を開放する安全弁を設置することが考えられる。尚、流通部の一端の開口部、制御部、流通管などの構成は以下のエアクッションシートにおいても同様であるため、その説明は適宜省略する。
【0038】
導入部21〜28の外周の外側の一部には、基材シート20が切り込まれた切込部212、222、232、242、252、262、272、282がそれぞれ形成される。また、各切込部212、222、232、242、252、262、272、282は、各導入部21〜28の外周の外側に形成された箇所に連続して、各流通部211、221、231、241、251、261、271、281の外周の外側の各導入部21〜28に連通されている側の一部が基材シート20が切り込まれて形成される。
【0039】
また、各導入部21〜28および各流通部211、221、231、241、251、261、271、281の中には、線状材にて形成される乖離層部213、223、233、243、253、263、273、283がそれぞれ設置されている。
【0040】
次に、エアクッションシート3は、図6に示すように、基材シート30に長手方向Yの2列にかつ各列において4箇所、合計8箇所に導入部31、32、33、34、35、36、37、38を備える。そして、それぞれの導入部31〜38に対して、他端が連通された流通部311、321、331、341、351、361、371、381がそれぞれ形成される。各流通部311、321、331、341、351、361、371、381は各導入部31〜38を、簡便に膨らませることが可能となるように適宜配置されている。
【0041】
具体的に、各流通部311、321、331、341、351、361、371、381は、各導入部31〜38を、シート100の短手方向Zの中心線Q側から膨らませるように配置する。これは、シート100の短手方向Zの中心線Q側からではなく、長手方向Yの両端のいずれか側から膨らませると、使用者が各導入部31〜38上の膨らむ側と反対側に倒れたりする可能性が生じ、そのことを防止するためである。
【0042】
各導入部31〜38は、膨らむ前の状態は、平面から見た状態が略円形状であって、扁平袋状にて形成されている。また、厚み方向Xに膨らむと各導入部31〜38の各重心G11、G12、G13、G14、G15、G16、G17、G18を中心とする略球体状になる。
【0043】
導入部31〜38の外周の外側の一部には、基材シート30が切り込まれた切込部312、322、332、342、352、362、372、382がそれぞれ形成される。また、各切込部312、322、332、342、352、362、372、382は、各導入部31〜38の外周の外側に形成された箇所に連続して、各流通部311、321、331、341、351、361、371、381の外周の外側の各導入部31〜38に連通されている側の一部が基材シート30が切り込まれて形成される。
【0044】
また、各導入部31〜38および各流通部311、321、331、341、351、361、371、381の中には、線状材にて形成される乖離層部313、323、333、343、353、363、373、383がそれぞれ設置されている。
【0045】
ここで、エアクッションシート2の各導入部21〜28と、エアクッションシート3の各導入部31〜38の設置位置について説明する。各導入部21〜28および各導入部31〜38は、上記に示した各エアクッションシート2、3の厚み方向Xで重心の位置が重なり合う位置に配置される。厚み方向Xで重心の位置が重なり合う位置に形成された導入部同士、導入部21、31、導入部22、32、導入部23、33、導入部24、34、導入部25、35、導入部26、36、導入部27、37、導入部28、38は、相対する面同士の重心の部分を接着固定している。
【0046】
そして、図5および図6に示すように、エアクッションシート2の各導入部21〜28とエアクッションシート3の各導入部31〜38とは、鏡対称の形状、つまり、長手方向Yの中心線Qに対して左右対称の形状にて形成されている。よって、エアクッションシート2およびエアクッションシート3を作成する場合、1つの型にて製造することが可能となる。
【0047】
具体的には、各導入部21、25および各導入部31、35は、使用者の肩の位置に相当する箇所に形成される。長手方向Yの長さH1は、例えば400mmである。また、各導入部22、24、26、28および各導入部32、34、36、38は、使用者の臀部の周囲に相当する箇所に形成される。長手方向Yの長さH2は、例えば800mm、長さH3は、例えば1000mmである。また、各導入部23、27および各導入部33、37は、使用者のふくらはぎの位置に相当する箇所に形成される。長手方向Yの長さH4は、例えば1400mmである。
【0048】
使用者の臀部の周囲に相当する箇所の、エアクッションシート2の各導入部22、24、26、28およびエアクッションシート3の各導入部32、34、36、38は厚み方向Xに対して、異なる形状にて形成されている。具体的には、エアクッションシート2の導入部28とエアクッションシート3の導入部38との形状が異なるなどの点。これは、使用者の臀部の周囲に形成する場合、使用者の肩の位置に形成する場合と比較すると、短手方向Zに対して同一エアクッションシートの導入部同士を近接して形成する必要がある。具体的には、肩の位置に相当するエアクッションシート2の導入部21と導入部25との関係、臀部の位置に相当するエアクッションシート2の導入部28と導入部24との短手方向Zにおける形成位置関係である。すなわち、導入部28の重心G8と導入部24の重心G4とは短手方向Zにおいて近接する必要がある。
【0049】
ここで、エアクッションシート2の導入部28および導入部24を、気体をなるべく多く導入するように形成するためには、導入部28の形状を導入部24の形状と同様に大きく形成することにより対応可能である。しかしながら、導入部28の形状を、導入部24の形状のように大きく形成すると、導入部28の重心G8が短手方向Zの中心線Qより外側に設定される。よって、図5に示したような所望の重心の位置からずれ、所望の位置において膨張させることができない。
【0050】
そこで、導入部28の形状を、導入部24の形状より小さくして、導入部28の重心G8と導入部24の重心G4との短手方向Zの位置を、中心線Qに対して左右対称の位置に形成することにより、導入部28と導入部24との形成位置を調整している。そして、エアクッションシート2の導入部28と導入部24の形状と逆に、エアクッションシート3の導入部38と導入部34とを形成する。このことにより、厚み方向Xにおいて同一箇所に形成される導入部に対して、気体の導入量を確保するとともに、所望の重心の位置を厚み方向Xにおいて一致させることができ所望の膨張を得ることが可能となる。
【0051】
このように、厚み方向Xで重なり合う位置に複数の導入部を備えているため、同じ厚みを1つの導入部にて形成する場合と比較すると、厚み方向Xの厚みの調整の自由度が増す。さらに、1つのエアクッションシートの必要強度が低減し、低コストにて作成することができる。さらに、1つの導入部に導入する気体の量が少なくてすむため、エアクッションシートへの気体の導入および排出が短時間にかつ容易となる。
【0052】
次に、エアクッションシート4は、図7に示すように、基材シート40の合計4箇所に導入部41、42、43、44を備える。そして、それぞれの導入部41〜44に対して、他端が連通された流通部411、421、431、441がそれぞれ形成される。各流通部411、421、431、441は各導入部41〜44を、簡便に膨らませることが可能となるように適宜配置されている。また、各導入部41〜44は、膨らむ前の状態は、平面から見た状態が略長方形状であって、扁平袋状にて形成されている。また、厚み方向Xに膨らむと各導入部41〜44の各重心G21、G22、G23、G24を通る長手方向Yの軸を中心とする略筒状になる。
【0053】
導入部41〜44の外周の外側の一部には、基材シート40が切り込まれた切込部412、423、432、443がそれぞれ形成される。また、各切込部412、423、432、443は、各導入部41〜44の外周の外側に形成された箇所に連続して、各流通部411、421、431、441の外周の外側の各導入部41〜44に連通されている側の一部が基材シート40が切り込まれて形成される。
【0054】
また、各導入部41〜44および各流通部411、421、431、441の内には、線状材にて形成される乖離層部413、423、433、443がそれぞれ設置されている。
【0055】
ここで、エアクッションシート4の各導入部41〜48の設置位置について説明する。各導入部41、43は、使用者の上半身が左右に倒れてずれることを防止するために形成される。長手方向Yの長さH5は、例えば450mmである。また、導入部42は、使用者の臀部のずれを防止するために形成される。長手方向Yの長さH6は、例えば950mmである。また、導入部44は、使用者のふくらはぎの位置に相当する箇所に形成される。よって、長手方向Yの長さH4は、例えば1350mmである。
【0056】
次に、上記のように構成された実施の形態1のシート100の使用例について図8を用いて説明する。図8(B)に示すように、使用者200の体の下側にシート100を敷く。この際、図からも明らかなように、枕201よりもシート100の厚みは十分に薄いため、膨らませていない状態でも、睡眠(休息)するために差し障りが無い。
【0057】
また、図8(A)に示すように、導入部21、31を膨らませて、使用者200の左上半身を起こす状態とするとともに、導入部43を膨らませることにより、使用者200が右側に倒れてしまうことを防止し、使用者200の安全性を確保することが可能である。
また、図8(C)に示すように、導入部44に空気を導入して膨らませる。すると、使用者200のふくらはぎの部分が上がるように使用することができる。
また、図8(D)に示すように、導入部28、38に空気を導入して膨らませる。すると、使用者200の臀部の部分が上がるように使用することができる。
【0058】
このように、所望のエアクッションシートの導入部を膨らませることにより様々な状態を作り出すことができる。また、この状態をプログラム化して、自動的に行うことも対応可能である。制御部により、エアクッションシートの導入部の膨らみ具合を、簡便に制御することができる。よって、制御部の制御により、エアクッションシートの膨張の時間や高さなどを設定して体位を変化させることにより、褥瘡や凝りなどを予防することができる。
【0059】
尚、上記実施の形態2においては、上下にカバーシート10、11をそれぞれ備える例を示したが、これに限られることは無く、1枚のカバーシートにて全ての構成部品を覆うように構成することも可能である。
また、シートにおけるエアクッションシートの導入部の配置も様々な例が考えられる。
また、シート100を布団またはベットに設置する場合を考慮して、布団またはベットに対するシート100の位置ズレを防止するための止め具として、一般的なベットパッドに設置されているようなゴムバンドをカバーシート10、11の4隅に設定しても良いし、また、カバーシート10、11の4辺に布団またはベットと固定するための紐などを設置しても良い。
【0060】
上記のように構成された実施の形態2のエアクッションシートおよびシートによれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、エアクッションシートの全面を覆うように固着され防水性を有するカバーシートを備えたので、容易にシートを使用することができる。
【0061】
また、切込部は、導入部の外周の外側に形成された箇所に連続して、流通部の外周の外側の導入部に連通されている側の一部の基材シートが切り込まれて形成されているため、流通部から導入部への気体の導入が行いやすくなる。
【0062】
また、エアクッションシートを複数枚厚み方向に積層して形成するため、導入部を所望の箇所に形成しやすい。
また、各エアクッションシートの厚み方向に対して同一箇所を膨らませる導入部同士は、当該導入部同士の重心が厚み方向に対して同一箇所に形成するため、厚み方向に対して同一箇所に存在する導入部同士を容易に膨らませることができる。
【0063】
また、3枚のエアクッションシートを厚み方向に積層して構成し、厚み方向に対して上下関係にある2枚のエアクッションシートの導入部は、円状に形成されるとともに、長手方向に2列にかつ当該列において複数箇所であって、2枚のエアクッションシートの相対する側において、厚み方向で重なり合う位置に形成され、1枚のエアクッションシートの導入部は、筒状に形成されるとともに、エアクッションシートの長手方向の両端、および、両端の間に長手方向に間隔を隔てて複数箇所にそれぞれ形成されるため、使用者に対応したシートを得ることができる。
【0064】
また、流通部には、カバーシートの外部に形成され気体の導入または排出の制御を行う制御部が接続されているため、導入部への気体の導入または排出を容易に制御することができる。
【0065】
尚、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 カバーシート、11 カバーシート、2 エアクッションシート、
3 エアクッションシート、4 エアクッションシート、5 エアクッションシート、
6 凹凸層、20 基材シート、21 導入部、22 導入部、23 導入部、
24 導入部、25 導入部、26 導入部、27 導入部、28 導入部、
211 流通部、221 流通部、231 流通部、241 流通部、251 流通部、261 流通部、271 流通部、281 流通部、212 切込部、222 切込部、232 切込部、242 切込部、252 切込部、262 切込部、272 切込部、282 切込部、213 乖離層部、223 乖離層部、233 乖離層部、
243 乖離層部、253 乖離層部、263 乖離層部、273 乖離層部、
283 乖離層部、30 基材シート、31 導入部、32 導入部、33 導入部、
34 導入部、35 導入部、36 導入部、37 導入部、38 導入部、
311 流通部、321 流通部、331 流通部、341 流通部、351 流通部、361 流通部、371 流通部、381 流通部、312 切込部、322 切込部、332 切込部、342 切込部、352 切込部、362 切込部、372 切込部、382 切込部、313 乖離層部、323 乖離層部、333 乖離層部、
343 乖離層部、353 乖離層部、363 乖離層部、373 乖離層部、
383 乖離層部、40 基材シート、41 導入部、42 導入部、43 導入部、
44 導入部、411 流通部、421 流通部、431 流通部、441 流通部、
412 切込部、422 切込部、432 切込部、442 切込部、
413 乖離層部、423 乖離層部、433 乖離層部、443 乖離層部、
50 基材シート、51 導入部、52 シート状部材、53 シート状部材、
511 流通部、512 切込部、513 乖離層部、60 周縁、61 外周、
62 外周、63 静電植毛層、64 溝加工層、65 エンボス加工層、
100 シート、101 制御部、200 使用者、201 枕、W1 厚み、
W2 厚み、W3 厚み、X 厚み方向、Y 長手方向、Z 短手方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8