特許第6343755号(P6343755)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343755
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】G−CSFを用いた樹状細胞の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0784 20100101AFI20180611BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20180611BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180611BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20180611BHJP
【FI】
   C12N5/0784
   C12N5/0786
   A61P35/00
   A61K35/15 Z
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-500336(P2015-500336)
(86)(22)【出願日】2014年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2014053676
(87)【国際公開番号】WO2014126250
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-28118(P2013-28118)
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】下平 滋隆
(72)【発明者】
【氏名】樋口 由美子
(72)【発明者】
【氏名】小屋 照継
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 伊藤剛,他,A24拘束性CEA由来ペプチドパルス樹状細胞を用いた進行固形癌患者に対する免疫療法,Biotherapy,2001年 5月30日,Vol. 15, No. 3,p. 185
【文献】 RUTELLA, S., et al.,Granulocyte colony-stimulating factor promotes the generation of regulatory DC through induction of IL-10 and IFN-alpha,European Journal of Immunology,2004年 5月,Vol. 34, No. 5,p. 1291-1302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
A61K 35/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜100μgのG-CSFを投与した被験体からG-CSF投与後24時間以内に回収したMMP-9(matrix metalloproteinase-9)の発現が亢進している単球を、樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインを含む培地で培養することを含む、単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項2】
回収した単球におけるMMP-9(matrix metalloproteinase-9)の発現が、G-CSF投与前の単球に対して5倍以上亢進している、請求項1記載の単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項3】
樹状細胞の細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導活性が向上している、請求項1又は2に記載の単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項4】
樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSF、IL-4、IL-2(インターロイキン2)、IL-3(インターロイキン3)、IL-6(インターロイキン6)、IL-7(インターロイキン7)、IL-12(インターロイキン12)、IL-13(インターロイキン13)、IL-15(インターロイキン15)、TNF(腫瘍壊死因子)-α、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-β、CD40リガンド、c-kitリガンド、IFNα(インターフェロンα)、及びflt3リガンドからなる群から選択される少なくとも1種類のサイトカインである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項5】
樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSFとIL-4又はGM-CSFとIFNαである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項6】
さらに、癌特異的抗原を含む培地で培養することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項7】
癌特異的抗原がWT1ペプチドである、請求項6記載の単球から樹状細胞療法に用い得る樹状細胞を調製する方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の調製方法により調製された樹状細胞療法に用い得る樹状細胞。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の調製方法により調製された樹状細胞療法に用い得るヒト樹状細胞を含む医薬組成物。
【請求項10】
抗癌免疫活性を有し、癌治療に用い得る、請求項9記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単球から樹状細胞を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞(Dendritic cell: DC)は生体内の強力な抗原提示細胞であり、T細胞に抗原を提示することにより免疫応答を誘導することが知られている。また、DCはT細胞のみでなくB細胞、NK細胞、NKT細胞などとも直接作用し、免疫反応における中枢的役割を担う細胞であることが知られている。未成熟DCは抗原刺激を受けることによって、CD40、CD80、CD86などの発現上昇を伴い高いT細胞刺激能を獲得すると共に末梢リンパ組織に移行して、取り込んだ抗原に特異的なT細胞を活性化することによって免疫応答を誘導する。
【0003】
一般に、血液前駆細胞より樹状細胞の分化を誘導できると認められている物質として数種類のサイトカインが知られている。例えば、GM-CSFとIL-4の併用によるDCの分化誘導について多くの報告がある(非特許文献1)。その他に、単独であるいは他のサイトカインと併用することによりDCを分化誘導できる物質についても報告されており(非特許文献2)、例えば、TNF-α、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、IL-12、IL-13、IL-15、HGF(Hepatocyte growth factor)、CD40リガンド、M-CSF、Flt3リガンド、c-kitリガンド、TGF-β等が報告されている。
【0004】
G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子;granulocyte-colony stimulating factor)はサイトカインの1種であり、顆粒球産生の促進や好中球の機能を高める作用があり、癌化学療法に伴う好中球減少症等の治療に用いられている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Akagawa K.S. et al. Blood, Vol.88, No.10 (November 15), 1988: pp.4029-4039
【非特許文献2】O'Neill D. W., et a., Blood, Vol.104, No.8 (October 15), 2004, pp.2235-2246
【非特許文献3】Carulli G., Haematologica, 1997, 82: 606-616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、G-CSFを用いて単球から樹状細胞を調製する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
G-CSFは顆粒球産生の促進や好中球の機能を高める作用があることが知られていたが、樹状細胞の分化誘導との関係は知られていなかった。
【0008】
本発明者らは、G-CSF製剤を投与した癌患者において、血中の単球が増加し、該単球において、接着因子であるMMP-9(matrix metalloproteinase-9)の発現が亢進していることを見出した。MMP-9は血管基底膜の腫瘍構成成分であるtype IV, Vコラーゲンの分解活性を有しており、癌においては、転移過程における血管基底膜分解酵素として癌の浸潤、転移に関与している。MMP-9の有する分解活性は、浸潤、遊走能、慢性的な炎症の組織再生等の様々な単球/マクロファージの機能に必要であると考えられている。MMP-9はヒト末梢血単球において、少量分泌されており、in vitroの実験においては、単球を培養する際にPMA又はM-CSFを加えるとMMP-9の分泌量が増加し、単球の接着性、進展性を促進することが報告されている。
【0009】
本発明者らは、G-CSFを投与した患者単球においてMMP-9の発現が亢進していることに着目した。in vitroの系において培養シャーレへの接着性が向上し、樹状細胞が効率的に分化誘導し得る可能性を考え、G-CSF投与患者から単離した単球をGM-CSF及びIL-4の存在下で培養することにより、DCへの分化誘導効率が上昇し、一方、このときにMMP-9阻害剤を添加することにより、DCへの分化誘導効率が低下することを見出し、G-CSFを単球からの樹状細胞の分化誘導に用いる本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
[1] G-CSFを投与した被験体から回収した単球を、樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインを含む培地で培養することを含む、単球から樹状細胞を調製する方法。
【0012】
[2] 樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSF、IL-4、IL-2(インターロイキン2)、IL-3(インターロイキン3)、IL-6(インターロイキン6)、IL-7(インターロイキン7)、IL-12(インターロイキン12)、IL-13(インターロイキン13)、IL-15(インターロイキン15)、TNF(腫瘍壊死因子)-α、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-β、CD40リガンド、c-kitリガンド、IFNα(インターフェロンα)及びflt3リガンドからなる群から選択される少なくとも1種類のサイトカインである、[1]の単球から樹状細胞を調製する方法。
【0013】
[3] 樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSFとIL-4又はGM-CSFとIFNα(インターフェロンα)である、[1]の単球から樹状細胞を調製する方法。
【0014】
[4] さらに、癌特異的抗原を含む培地で培養することを含む、[1]〜[3]のいずれかの単球から樹状細胞を調製する方法。
【0015】
[5] 癌特異的抗原がWT1ペプチドである、[4]の単球から樹状細胞を調製する方法。
【0016】
[6] [1]〜[5]のいずれかの調製方法により調製された樹状細胞。
【0017】
[7] [1]〜[5]のいずれかの調製方法により調製されたヒト樹状細胞を含む医薬組成物。
【0018】
[8] 抗癌免疫活性を有し、癌治療に用い得る、[7]の医薬組成物。
【0019】
[9] 単球をG-CSFの存在下で培養することを含む、単球から樹状細胞を調製する方法。
【0020】
[10] さらに、樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインの存在下で、単球を培養する、[9]の単球から樹状細胞を調製する方法。
【0021】
[11] 樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSF、IL-4、IL-2(インターロイキン2)、IL-3(インターロイキン3)、IL-6(インターロイキン6)、IL-7(インターロイキン7)、IL-12(インターロイキン12)、IL-13(インターロイキン13)、IL-15(インターロイキン15)、TNF(腫瘍壊死因子)-α、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-β、CD40リガンド、c-kitリガンド、IFNα(インターフェロンα)、及びflt3リガンドからなる群から選択される少なくとも1種類のサイトカインである、[10]の単球から樹状細胞を調製する方法。
【0022】
[12] 樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSFとIL-4又はGM-CSFとIFNα(インターフェロンα)である、[10]の単球から樹状細胞を調製する方法。
【0023】
[13] さらに、癌特異抗原の存在下で培養する、樹状細胞が抗癌免疫活性を有する、[9]〜[12]のいずれかの単球から樹状細胞を調製する方法。
【0024】
[14] G-CSFを含む、単球からの樹状細胞調製剤。
【0025】
[15] さらに、樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインを含む、[4]の単球からの樹状細胞調製剤。
【0026】
[16] 樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSF、IL-4、IL-2(インターロイキン2)、IL-3(インターロイキン3)、IL-6(インターロイキン6)、IL-7(インターロイキン7)、IL-12(インターロイキン12)、IL-13(インターロイキン13)、IL-15(インターロイキン15)、TNF(腫瘍壊死因子)-α、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-β、CD40リガンド、c-kitリガンド、IFNα(インターフェロンα)、及びflt3リガンドからなる群から選択される少なくとも1種類のサイトカインである、[15]の単球からの樹状細胞調製剤。
【0027】
[17] 樹状細胞誘導活性を有する少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSFとIL-4、又はGM-CSFとIFNα(インターフェロンα)である、[15]の樹状細胞調製剤。
【0028】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2013-028118号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0029】
単球をG-CSFと樹状細胞誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養することにより、樹状細胞誘導活性を有するサイトカインのみの存在下で培養するときより効率的に多数の樹状細胞を調製することができる。G-CSFはex vivoの樹状細胞調製において、MMP-9を介した樹状細胞分化誘導の増強作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】G-CSFを投与したヒトから単離した単球におけるMMP-9の高発現を示す図である。
図2】アフェレーシス前の末梢血単球数とアフェレーシス単球数の相関性を示す図である。
図3】アフェレーシス単球から調製されたDC数とアフェレーシス単球数の相関性を示す図である。
図4】調製された凍結保管前のDC数及びその生細胞率、並びにDCのCD11c+CD14-及びHLA-ABC+DR+細胞分画の比率を示す図である。
図5】調製されたDCの表面マーカーの発現を示す図である。
図6】G-CSF投与の単球数に対する影響を示す図である。Aは末梢血単球数を示し、Bはアフェレーシス単球数を示す。
図7】G-CSF投与のDC作製に対する影響を示す図である。AはDC数を示し、BはDC/アフェレーシス単球比率を示す。
図8】アフェレーシス前のG-CSF投与のDC表面マーカーの発現に対する影響を示す図である。A、B及びCは、それぞれCD11c、CD14及びCD80の結果を示す。
図9】アフェレーシス前にG-CSFを投与した場合のアフェレーシス前及び翌日の末梢血単球の数を示す図である。
図10】MMP-9阻害剤添加による単球の培養の抑制試験の結果を示す図である。
図11】ELISpot法の概要を示す図である。
図12】改変型WT1(HLA-A*24:02)ペプチドテトラマー解析による抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の検出法の概要を示す図である。
図13】ELISpot法の結果を示す図である。
図14】HLA-A*24:02WT1(mutant)テトラマー解析による、抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の検出の結果を示す図である。
図15】樹状細胞ワクチン投与前後におけるG-CSF投与有無によるテトラマー(%)の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本発明は、単球から樹状細胞(Dendritic cell: DC)を調製する方法である。
【0033】
従来より、単球をGM-CSF(顆粒白血球-マクロファージ・コロニー刺激因子)やIL-4(インターロイキン4)存在下で培養することにより単球から樹状細胞が分化し誘導されることが知られていたが、本発明においては、樹状細胞の分化誘導に際してG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を用いる。本発明において、G-CSFは、単球に作用し、単球を活性化し、単球のDCへの分化、成熟による誘導を促進する。G-CSFは単独では、樹状細胞を分化誘導させる活性は弱く、GM-CSFやIL-4等のDC誘導活性を有するサイトカインを併用することにより、DC誘導活性を有するサイトカインのみで分化誘導するときよりもより効率的なDCの分化誘導を可能にする。この点、G-CSFは単球からのDCの分化誘導を促進する効果を有するということも、単球からサイトカインによりDCを分化誘導するときに、分化誘導効率を高める補助剤ということもできる。
【0034】
ヒト等の生体から単離した単球を、G-CSFとGM-CSFやIL-4等のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下でin vitroで培養してもよいし、生体にG-CSFを投与し、生体内で単球を増殖、活性化した後に、単球を単離し、該単球をGM-CSFやIL-4等のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下でin vitroで培養してもよい。
【0035】
in vitroでの単球の培養は、周知のヒトリンパ系細胞の培養技術により行なうことができる。培養液としては例えばRPMI1640、DMEM、AIM-V(登録商標)、X-VIVO5(登録商標)等を用いることができ、これらの基本培地に適当な抗生物質や動物血清等を添加して培養すればよい。培養容器も限定されず、培養規模に応じて市販のプレート、ディッシュ、フラスコを適宜選択して用いることができる。
【0036】
単球は末梢血由来単球、骨髄由来単球、脾臓細胞由来単球、臍帯血由来単球が含まれ、この中でも末梢血由来の単球が好ましい。単球は、CD14陽性を特徴とし、生体から単球を採取する場合、CD14の存在を指標にFACS(Fluorescent activated cell sorter)、フローサイトメーター、磁気分離装置等を用いて採取することができる。また、成分採血(アフェレーシス)装置を用いて単離することもできる。さらに、Ficoll(登録商標)等を用いた密度勾配遠心分離により単離することもできる。単球の由来動物種は限定されず、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、サル、ヒト等の哺乳動物を用いることができる。FACS等による特定の細胞集団の単離は公知の方法により行なえばよい。FACS、フローサイトメーターとしては、例えばFACS vantage(ベクトン・ディッキンソン社製)、FACS Calibur(ベクトン・ディッキンソン社製)等を用いることができる。また、磁気分離装置としては、例えばautoMACS(登録商標)(Miltenyi Biotec)、CliniMACS(登録商標)(Miltenyi Biotec)等を用いることができる。
【0037】
G-CSFを投与していない生体から単離した単球を用いる場合、単離した単球をG-CSFとGM-CSFやIL-4等のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養する。
【0038】
DC誘導活性を有する化合物として、GM-CSF、IL-4、IL-2(インターロイキン2)、IL-3(インターロイキン3)、IL-6(インターロイキン6)、IL-7(インターロイキン7)、IL-12(インターロイキン12)、IL-13(インターロイキン13)、IL-15(インターロイキン15)、TNF(腫瘍壊死因子)-α、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-β、CD40リガンド、c-kitリガンド、IFNα(インターフェロンα)、flt3リガンド等のサイトカインが挙げられる。これらのDC誘導活性を有するサイトカインを、DC刺激因子やDC増加剤と呼ぶこともある。DC誘導活性を有するサイトカインとしては上記の少なくとも1種類を用いても複数種類を組合せて用いてもよい。2種類以上を組合せて用いることが好ましく、特にGM-CSFと他のサイトカインを組合せて用いることが好ましい、例えば、GM-CSFとIL-4、GM-CSFとIL-2、GM-CSFとIL-3、GM-CSFとIL-6、GM-CSFとIL-7、GM-CSFとIL-12、GM-CSFとIL-13、GM-CSFとIL-15、GM-CSFとIFNα(インターフェロンα)、GM-CSFとTNF-αを組合せて用いればよい。G-CSFやその他のDC誘導活性を有するサイトカインは、生体から精製したものを用いても、リコンビナントタンパク質として製造したものを用いてもよい。また、G-CSFとして、市販のG-CSF製剤を用いてもよい、市販のG-CSF製剤として、例えば、フィルグラスチム(商品名:グラン)、ナルトグラスチム(商品名:ノイアップ)、レノグラスチム(商品名:ノイトロジン)等が挙げられる。
【0039】
G-CSFを上記のDC誘導活性を有するサイトカインと混合して、G-CSFとDC誘導活性を有するサイトカインの共存下で単球を培養してもよいし、単球をあらかじめ上記のDC誘導活性を有するサイトカイン非存在下かつG-CSFの存在下で培養し、G-CSFにより単球を活性化した後に、上記のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養してもよい。この際、他のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養する場合、G-CSFが含まれていても含まれていなくてもよいが、好ましくはこの工程では、G-CSF非存在下で培養する。培養に用いるG-CSF及びDC誘導活性を有するサイトカインの濃度は、例えば単球を104〜107細胞/mlの濃度で用いる場合、1ng/mL〜1000ng/mL、好ましくは10ng/mL〜100ng/mLである。単球又はDCの表面抗原の発現をFACS等で調べることにより、目的の分化程度の細胞が得られる濃度を適宜決定することができる。必要な培養時間は、限定されないが、例えば単球をG-CSFと他のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で数時間から10日間程度、好ましくは数日間から10日間程度培養すればよい。また、最初にG-CSF存在下で培養し、その後他のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養する場合、G-CSF存在下で、数時間から10日間程度、好ましくは数時間から1日間程度培養し、その後他のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で数時間から10日間程度、好ましくは数日間から10日間程度培養すればよい。単球又はDCの表面抗原の発現をFACS等で調べることにより、目的の分化程度の細胞が得られる培養期間を適宜決定することができる。
【0040】
G-CSFを投与した生体から単離した単球を用いる場合、生体にあらかじめG-CSFを投与する。投与は例えば皮下注射あるいは静注により行えばよい。生体に投与するG-CSFは低用量で足り、例えば、ヒトに投与する場合、10〜200μg、好ましくは50〜100μg、さらに好ましくは70〜80μgを投与すればよい。投与後、数日以内、好ましくは24時間以内、さらに好ましくは16〜18時間後に単球を単離する。生体にG-CSFを投与することにより、単球の数が増加し、かつ機能的に活性化され、単離後にDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養することによりDCに分化、誘導されやすくなる。
【0041】
G-CSFを投与した生体から数日以内に単離した単球を、上記のDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養することにより、DCが分化誘導される。培養日数や培養時のDC活性を有するサイトカインの濃度は上記のとおりである。
【0042】
G-CSFの存在下で培養した単球、及びG-CSFを投与した生体から単離した単球は、G-CSFによる刺激により、接着因子のうちMMP-9(matrix metallpproteinase-9)の発現量が亢進している。例えば、リアルタイムPCRで発現解析した場合のMMP-9の発現量が、G-CSFで刺激していない単球に対して、5倍以上、好ましくは6倍以上、さらに好ましくは7倍以上に亢進する。
【0043】
上記の方法により、単球をG-CSF及びDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で培養し、あるいはG-CSFを投与した生体から単離した単球をDC誘導活性を有するサイトカインの存在下で公知の方法で培養することによりDCが分化し誘導される。このようにして調製されたDCは、形態学的に樹状突起を有するという特徴を有し、さらにFACS等による解析により、表面抗原として、樹状細胞のマーカーであるCD11c、CD40、CD80、CD86、HLA-ABC、HLA-DRが陽性であり、単球のマーカーであるCD14が陰性であるという特徴を有する。
【0044】
単球からのDCの調製効率は、例えば、G-CSFを投与した生体から単離した単球をGM-CSF及びIL-4の存在下で培養した場合、単離単球の10%以上、好ましくは1520〜25%以上がDCに分化誘導される。
【0045】
本発明は、G-CSFを含む単球からのDC分化・誘導剤を包含する。該DC分化・誘導剤をDC調製剤と呼ぶこともできる。また、上記のようにG-CSF自体のDC分化・誘導活性は低く、G-CSFはGM-CSFやIL-4等のDC誘導活性を有するサイトカインを用いたDCの分化・誘導の効率を高め、多数のDCの調製を可能にする。従って、G-CSFのみを含むDC分化・誘導剤をDC分化誘導促進剤やDC分化誘導補助剤と呼ぶことがある。該DC分化・誘導剤は、G-CSFに加えてGM-CSF、IL-4、IL-2(インターロイキン2)、IL-3(インターロイキン3)、IL-6(インターロイキン6)、IL-7(インターロイキン7)、IL-12(インターロイキン12)、IL-13(インターロイキン13)、IL-15(インターロイキン15)、TNF(腫瘍壊死因子)-α、HGF(Hepatocyte growth factor)、TGF(トランスフォーミング増殖因子)-β、CD40リガンド、c-kitリガンド、IFNα、及びflt3リガンドからなる群から選択される少なくとも1種類のDC誘導活性を有するサイトカインを含み得る。DC誘導活性を有するサイトカインとしては、2種類以上を含んでいることが好ましく、特にGM-CSFと他のサイトカインを組合せて含んでいることが好ましい、例えば、GM-CSFとIL-4、GM-CSFとIL-2、GM-CSFとIL-3、GM-CSFとIL-6、GM-CSFとIL-7、GM-CSFとIL-12、GM-CSFとIL-13、GM-CSFとIL-15、GM-CSFとTNF-α、GM-CSFとIFNαを含み得る。
【0046】
上記のDC誘導活性を有するサイトカインの組み合わせにより、DCは貪食能の高い未成熟DCとして誘導されるか、あるいは成熟DCとして誘導される。例えば、GM-CSFのみの存在下、あるいはGM-CSFとIL-4の存在下で単球を培養することにより未成熟DCが作製される。未成熟DCをさらに、公知の方法で成熟DCに誘導することができる。例えば、OK432(商品名:ビシバニール)、プロスタグランジンE-2、TNF-α、LPS等の樹状細胞成熟活性を有する化合物の存在下で培養し、これらの物質による刺激を与えることにより成熟DCを得ることができる。
【0047】
本発明のDCの調製法は成熟DCの調製法も未成熟DCの調製法も含む。樹状細胞が成熟しているか、又は未成熟かは、例えば樹状細胞表面にCD83が発現しているか否かを調べることによりわかり、成熟樹状細胞表面にはCD83が発現している。成熟DCの表現型は、CD14-, HLA-DR+, HLA-, ABC+, CD80+, CD83+, CD86+, CD40+, CCR7+である。本発明は、本発明の方法で調製されたDCも含み、本発明のDCは成熟DCも未成熟DCも含まれる。さらに、本発明は該DCを含む細胞集団も包含する。該細胞集団には、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、90%以上、又は95%以上のDCが含まれる。
【0048】
本発明の方法で調製されたDCは、樹状細胞(DC)療法に用いることができる。樹状細胞療法として、例えば、樹状細胞ワクチン療法として知られる、癌免疫療法が挙げられる。例えば、被験体の単球から本発明の方法によって、樹状細胞を調製し、得られた樹状細胞を被験体に戻すことにより、樹状細胞を癌治療又は予防等に用いることができる。この際、調製した樹状細胞は、癌種非特異的に作用し、癌治療効果を発揮し得る。また、樹状細胞を調製する際に特定の癌に特異的な癌特異抗原を添加して培養することにより、癌種特異的な抗癌免疫活性を有する樹状細胞を得ることが可能である。この際、癌特異的抗原として、白血病や各種癌に特異的なタンパク質であるWT1やMUC1、悪性黒色腫に特異的なタンパク質であるMAGE、乳癌等に特異的なタンパク質であるHER2/neu、大腸癌に特異的なタンパク質であるCEAやその部分ペプチドが挙げられる。WT1の改変型も用いることができ、WT1の改変型としては公知のものを用いることができる。
【0049】
本発明の方法で調製した未熟樹状細胞に癌特異的抗癌を添加し癌特異的抗原と共に培養し、樹状細胞に癌特異的抗原を提示させ樹状細胞ワクチンを調製し、あるいは投与直前に癌特異的抗原を成熟DCにパルスした(添加、結合させた)調製により、該樹状細胞を患者に投与し、癌抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を生体内で誘導することにより癌治療効果を得ることができる。この際、樹状細胞ワクチンを調製する患者は樹状細胞を誘導するためにG−CSFを投与した患者が望ましい。また、患者から得た末梢血中の血液細胞と樹状細胞ワクチンを共培養し、in vitroで癌抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し、該CTLを患者に投与してもよい。
【0050】
また、細菌やウイルスの感染症の治療にも用いることができる。感染症の治療においては、本発明の方法により、G-CSF存在下で単球を培養し、さらにGM-CSFとIFNαの存在下で培養して調製したDCが有用である。調製した樹状細胞を皮内投与、皮下投与、静脈内投与又はリンパ節内投与等により被験体に投与すればよい。投与量、投与時期は被験体の疾患の種類、疾患の重篤度、被験体の状態に応じて適宜決定することができる。
【実施例】
【0051】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0052】
実施例1 G-CSF投与のDC誘導に対する効果
患者:
90例の進行癌患者の108例(乳癌(17)、結腸/直腸癌(19)、肺癌(12)、卵巣癌(11)、膵臓癌(33)、胃癌(16)を含む)のアフェレーシス(成分採血)実施患者を対象として、GM-CSF(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor:顆粒白血球-マクロファージ・コロニー刺激因子)及びinterleukin(IL)-4を用いた単球由来の樹状細胞(DC)作製結果について分析した。108例中、47例は、成分採血の24時間前以内に患者にrhG-CSF(遺伝子組換えヒトG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤を投与し、26例は24〜96時間前に投与した。また、35例はG-CSF非投与群とした。ヒトG-CSF製剤としては、グラン(商品名)又はノイトロジン(商品名)を用い、それぞれ75μg、100μgを皮下注射により投与した。
【0053】
DCの調製:
5200mlの患者末梢血から、成分採血装置(AS TEC204, Fresenius, Germany)を使って、処理量400ml×13サイクルによって、185mlの末梢血単核細胞を回収した。500 ng/mlのGM-CSF(Primmune Inc., Kobe, Japan)及び250 ng/mlのIL-4 (R&D Systems Inc., Minneapolis, MN)添加AIM-V培地(Gibco, Gaithersburg, MD)を用いた接着法による5日間培養で未熟なDCs(immatureDCs; iDCs)を得た。iDCsをOK-432(10μg/ml)とprostaglandin E2(50 ng/ml; Daiichi Fine Chemical Co. LTD., Toyama, Japan)を添加した培地を用いて、24時間培養することにより成熟したDCs(matureDCs: mDCs)を調製した。mDCsはDC療法のための投与日まで液体窒素保管され、治療時に解凍、洗浄後、生理食塩水に再浮遊した。
【0054】
mDCsの表面マーカー解析:
CD14-, HLA-DR+, HLA-, ABC+, CD80+, CD83+, CD86+, CD40+, CCR7+の表現型は、mDCsとして定義される。凍結保管サンプル中のDCの生細胞に対して、以下の抗体パネルを適用しFACSCalibur(BD Biosciences, San Jose, CA)で測定した: FITC標識抗ヒトCD14(クローン61D3,eBiocience,San Diego,CA)、CD40(クローン5C3,eBiocience)、CD80(クローンL307.4,BD Biosciences)、HLA-ABC(クローンW6/32,eBiocience)、CD3(クローンSK7,BD Biosciences)、PE標識抗ヒトCD11c(クローンB-ly6,BD Biosciences)、CD83(クローンHB15e,eBiocience)、CD86(クローンIT2.2,eBiocience)、CD19(クローン4G7,BD Biosciences)、HLA-DR(クローンLN3,eBiocience)。
【0055】
PCRアレイ法による接着因子遺伝子群の同定:
hrG-CSF(75μg filgrastim、グラン(登録商標))によって増幅される接着因子遺伝子群をスクリーニングし同定した。DC療法を行う患者4名を対象とし、hrG-CSFの投与前及び投与後の末梢血を採取した。比重分離法により単球を分離後、CD14 Micro Bead(Miltenyi Biotec)を反応させ、Auto MACS(磁気分離装置)を用いてCD14陽性細胞を分離純化した。純度98%のCD14陽性細胞よりQIAamp RNA Blood Mini Kit (QIAGEN)を用いてRNAを抽出し、RT2 First Strand Kit(QIAGEN)を用いてcDNAを合成した。RT2 SYBR(登録商標) Green/ROXTMqPCR Master Mix(QIAGEN)を用いてPCR反応液を作製し、RT2 ProfilerTM PCR Array(QIAGEN)のウェルに添加した。ABI 7900 real time PCR(Applied Biosystems, Maryland)により95℃:10min(95℃:15sec→60℃:1min)40サイクルの条件でPCRを行い、その後95℃:15sec、 60℃:15sec、 95℃:15secの条件下で解離曲線を得た。
【0056】
データの解析は、SA Biosciences社web上のポータルサイトのデータ解析テンプレートファイルを用いて、リアルタイムPCRより得られたCt(Threshold Cycle)値を入力し解析した。hrG-CSF投与前に比較してhrG-CSF投与後では、Matrix metalloproteinase-9(MMP-9)発現のみが有意に7.62倍に増加していた(図1)。
【0057】
発現解析によって有意に発現が上表していたMMP-9は血管基底膜の主要構成成分であるtype IV、Vコラーゲンの分解活性を有している。がんにおいては、転移過程における血管基底膜分解酵素として癌の浸潤、転移に関与している。MMP-9のもつ分解活性は、浸潤、遊走能、慢性的な炎症の組織再生などの様々な単球/マクロファージの機能に必要と考えられている。
【0058】
MMP-9はヒト末梢血単球においても少量分泌されており、in vitroの実験においては、単球を培養する際にPMA(Phorbol myristate acetate)又はM-CSFを加えると,MMP-9の分泌量が増加し(mRNAレベルでそれぞれ7倍、5倍)、単球の接着性、伸展性を促進することが報告されている。
【0059】
hrG-CSFによるMMP-9の特異的増強作用の分析:
DC調製工程におけるMMP-9の影響を評価するために、単球MMP-9阻害薬の存在下及び未処理を対象(N=6)としてmDCsの製造サンプルの比較検討を行った。成分採血の16〜18時間前に、75μgのrhG-CSFを投与されている患者由来の末梢血単球をフィコール勾配遠心分離を使って分離した。末梢血単核球は6mLのAIM-V媒体で100mmディッシュにつき8×107細胞で種をまかれて、細胞接着のために、5%CO2で37℃で静置した。非接着細胞の除去の後、iDCsを製造するためにIL-4(50ng/mL)とGM-CSF(50ng/mL)添加AIM-V培地で、5日間接着法により培養された。成熟工程のために、さらに24時間OK432(10ug/mL)、IL-4(5ng/mL)、GM-CSF(5ng/mL)とプロスタグランジンE-2(50ng/ml)を含んでいるAIM-V培地で、iDCsは培養され,浮遊細胞を回収した。MMP-9阻害薬I (IC50=5nM) (Calbiochem Corp., San Diego, CA, USA)は、各々の工程において培地に加えられ,mDCs製造産物の生細胞と接種した単球数との比を計算し比較した。
【0060】
統計解析:
IBM SPSS Statistics 21.0, (International Business Machines Corp., New York)を用いて解析した。
【0061】
結果
108例の患者のアフェレーシスを行う日に計数した末梢血単球数とhrG-CSF投与後のアフェレーシス単球数の相関性を図2に示す(R=0.828, p<0.0001, N=108であった。(Spearman’s rank-order correlation))。図に示すようにアフェレーシス単球数と末梢血単球数は相関していた。
【0062】
アフェレーシス単球から調製したDC(Dendritic cell:樹状細胞)とアフェレーシス単球数の相関性を図3に示す(R=0.435, p<0.0001, N=108(Spearman’s rank-order correlation))。図に示すように、調製されたDC数はアフェレーシス単球数に依存していた。平均作製DC数=20.2×107であった。また、作製DC数/アフェレーシス単球数比率=17.0±7.7%(平均±標準偏差)であった。
【0063】
DCの収率を図4に示す。図に示すように、凍結保管前DC数及びその生細胞率は,それぞれ20.2 ± 9.6×107 及び95.6± 4.3%であった。また、DC特異的マーカーであるCD11c+CD14-及びHLA-ABC+DR+細胞分画は,それぞれ97.2 ± 6.7%及び97.4± 4.3%(平均±標準偏差)であった。
【0064】
調製されたDCの表面マーカーの発現を図5に示す。図に示すように、DCは、CD11c、CD40、CD86、HLA-ABC、及びHLA-DRを強く発現しており、FACS分析では、これらのマーカーの陽性DCは90%以上を示していた(平均±標準偏差)。
【0065】
アフェレーシス前のhrG-CSF投与の単球数に対する影響の後方視的分析の結果を図6に示す。図6Aは末梢血単球数を示し、図6Bはアフェレーシス単球数を示す。図に示すように、アフェレーシス前のG-CSF(granulocyte-colony stimulating factor;顆粒球コロニー刺激因子)投与群では、非投与群に比較して、末梢血及びアフェレーシス単球数の有意な増加を認めた。(Unpaired t-test)
【0066】
アフェレーシス前のhrG-CSF投与のDC作製に対する影響の後方視的分析の結果を図7に示す。図7AはDC数を示し、図7BはDC/アフェレーシス単球比率を示す。図に示すように、アフェレーシス前24時間以内の遺伝子組換えヒトG-CSF製剤(hrG-CSF)投与群では、非投与群及び24〜96時間前投与群に比べ、作製DC数及びDC/アフェレーシス単球比率において,有意な増加を認めた。(Unpaired t-test)
【0067】
アフェレーシス前のhrG-CSF投与のDC表面マーカーの発現に対する影響を図8に示す。図8A、図8B及び図8Cは、それぞれCD11c、CD14及びCD80の結果を示す。図に示すように、アフェレーシス前24時間以内hrG-CSF投与群では,非投与群及び24〜96時間前投与群に比べ、作製DCの表面マーカーCD11c及びCD80は有意に増強し、CD14陽性細胞は減少していた。(Unpaired t-test)
【0068】
アフェレーシス前にhrG-CSFを投与した場合のアフェレーシス前及び24時間後の末梢血単球の数を図9に示す。図に示すように、アフェレーシス前16〜18時間前にhrG-CSF(75μg filgrastim)投与されている症例(N=40)では、前及び後の末梢血単球数はそれぞれ410±195 /μL and 586±238 /μLと1.5倍の増加があった。(Paired t-test)
【0069】
低用量(75μg)のhrG-CSFを投与し、in vivoでhrG-CSFにさらされた単球における接着性分子の発現量をリアルタイムPCRに解析したところ、84の接着性分子のうちMMP-9(Matrix metalloproteinase-9)がhrG-CSF投与前に比較して増加した。この結果より、低用量(75μg)のhrG-CSF投与16〜18時間後、単球数の増加だけでなく、MMP-9の発現量の増加を介して培養シャーレへの接着性が増強し、DC作製において相乗的な役割を果たしている可能性が示唆されたので、MMP-9の特異性を検証するために、MMP-9阻害剤添加による培養の抑制試験を行った。結果を図10に示す。図に示すように、培養樹状細胞の作製数の有意な低下を確認した(p=0.028, N=6)。(Wilcoxon signed rank test)
【0070】
以上のことより、ex vivoのDC作製において、hrG-CSFにはMMP-9を介した機能的な増強作用を有することが示唆された。また、上記の結果は、生体より単離した単球からin vitroでGM-CSF及びIL-4等のDC誘導活性を有するサイトカイン存在下で培養しDCを分化誘導する際に、あらかじめ単球をG-CSF存在下で培養するか、あるいはDC誘導活性を有するサイトカインとG-CSFの共存したで培養することにより効率的にDCが分化誘導し得ることを示す。
【0071】
実施例2 G-CSF投与により得られた樹状細胞による抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導
G-CSFをアフェレーシスの前投与無、およびアフェレーシス24時間以前投与群(I))、あるいはアフェレーシスの18〜22時間前に投与した(24時間以内に投与した群(II))。実施例1と同様の方法で、GM-CSFとIL-4でアフェレーシス由来の末梢血単核球を培養して、成熟型DCワクチンを作製した。改変型WT1(HLA-A*24:02)ペプチドに適合する樹状細胞ワクチン療法を群IおよびIIを対象とした。1×E7(10の7乗)DCワクチンを2週毎に1コース7回完遂例に対して、WT1-CTLを検出するためにDCワクチン初回および7回目の改変型WT1(HLA-A*24:02)ペプチドテトラマー解析により比較分析した。培養操作を加えず、採血分離した末梢血単核球を用いて治療前後においてWT1-CTLが増加、かつCD8+細胞に対して0.08%以上を陽性と判定した。
【0072】
群Iでは24例中4例(17%)、一方、群IIでは41例中13例(32%)に陽性であり、群IIにおいて抗原特異的なCTLの検出の増加が確認された。
【0073】
免疫療法における通常の感度・特異度の免疫学的モニタリングと同様に、ELISpot法によりIFN-γの再生を確認すると共に、ELISpot法と相関性のある改変型WT1(A*24:02)-テトラマー解析を実施し、抗原特異的なCTLを選択的に検出した。図11にELISpot法の概要を示す。EliSpot法は、WT1等の抗原を用いて、抗原特異的にINF-γが産生されるかを確認する方法であり、スポット数はIFN-γ産生細胞数を示す。改変型WT1(HLA-A*24:02)ペプチドテトラマー解析による抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の検出法の概要を図12に示す。免疫療法において、抗原特異的T細胞が存在することは、癌細胞を攻撃することのできるCTLが存在することを示す。図12Aはプロトコールの概要を示し、図12Bはテトラマーの模式図を示す。図12に示すように、樹状細胞ワクチン療法を行った患者から、治療前および後の末梢血リンパ球を洗浄し、Fcブロッカーを添加し、ブロッキング処理を行った後、試薬を添加した。試薬としては、PE(Phycoerythrin)標識したWT1(mutant)テトラマー、FITC標識抗CD8抗体、PerCP標識した抗CD4抗体及びAPC標識した抗CD3抗体を用いた。WT1(mutant)テトラマーは、ビオチン化MHC(major histocompatibility complex)4分子を改変型WT1(A*24:02)にストレプトアビジンを介して結合させることにより作製した。試薬添加後、室温で30分間反応後洗浄し、フローサイトメーターにより解析を行い、WT1特異的CTLを検出した。テトラマー法は、試薬の手順に従って公知の方法で実施した。
【0074】
樹状細胞ワクチン療法1コースの前と後とでWT1特異的CTL(WT1-CTL)が増加し、その検出率0.80%をカットオフとして、検出率がそれ以上の場合を有意なWT1-CTLの誘導が生じたと判断した。
【0075】
図13に、ELISpot法の結果を示す。図13に示すように、改変型WT1ペプチド(A*24:02)を標的とした免疫機能検査としてIFNγ産生リンパ球を検出するELISpot法は、CTLの表現型を検出するテトラマー法と相関性があった。ELISpot法 Human IFN-γ ELISpot PLUS kit を用いて実施した。抗IFN-γ抗体が固相化されたウェルを0.5%ヒトアルブミン添加PBSで3回洗浄し、10%FBS含有AIM培地を200μL/well加えて37℃で1時間以上ブロッキングを行った。その後、WT1抗原を10μM含む10%FBS含有AIM培地にDC初回および7回目投与時に採取したPBMCを浮遊させ、1×106 /wellの細胞数を基準に播種し、37℃で16-20時間反応を行った。細胞を除去した後PBSでウェルを5回洗浄し、ビオチン標識抗IFN-γ抗体(1 μg/mL)を100μL/well加え室温で2時間反応させた。洗浄後、HRP標識ストレプトアビジンを加えて室温で1時間反応させた。洗浄後、TMBを100μL/well加え約5分間発色を行った。洗浄・乾燥後、得られたスポット数をELISpot readerを用いて計測した。陰性対照として、患者群IにはHLA-A*2402 HIV env 584-592 (RYLRDQQLL)を、患者群IIにはHLA-A*0201 HIV gag 77-85 (SLYNTVATL) (MBL、日本)を使用した。なお、WT1抗原刺激および陰性対照はそれぞれ二重測定し、WT1抗原刺激時のスポット数の平均から陰性対照のスポット数の平均を差し引いたものをWT1特異的スポット数とした。さらにBrigitteらの報告17)やCarmenらの報告18)を参考にして、(i) WT1刺激時のスポット数が陰性対照のスポット数より1.5倍以上多く、かつ、(ii) WT1特異的スポット数が106個のPBMCあたり15個以上である場合にDCワクチン投与による能動免疫が誘導あるいは増強されたと判断し、陽性とした。
【0076】
図14に、HLA-A*24:02WT1(mutant)テトラマー解析による、抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の検出の結果を示す。図14Aは樹状細胞ワクチン療法を遂行する前のリンパ球中のCTLの割合を示し、図14Bは樹状細胞ワクチン療法1コースを遂行した後のリンパ球中のCTLの割合を示す。改変型WT1(HLA-A*24:02)ペプチドパルスDCワクチンを1コース7回投与した前・後のテトラマー解析の事例。CD8+細胞中のWT1-CTLは前(A)に比して、後(B)では有意な誘導を確認できた。
【0077】
図15に、樹状細胞ワクチン投与前後におけるG-CSF投与有無によるテトラマー(%)の変化を示す。
【0078】
I群では24例中4例(17%)に陽性と判断され、II群では41例13例(32%)に増加が確認され、明らかに割合が増加していた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の方法で調製された樹状細胞(DC)はDC療法に用いることができる。
【0080】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15