(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極のアレイの電極がそれぞれ、前記第1の磁場が最も均一である位置に面した表面を有し、前記表面は実質的に同一平面にある、請求項1に記載のイオントラップ。
前記電極のアレイが、3個以上の電極の列を備え、前記3個以上の電極の列は、前記第1の磁場が最も均一な位置における前記第1の磁場の方向に平行に配置構成される、請求項1又は2に記載のイオントラップ。
前記電極のアレイを構成する個々の電極の並ぶ方向に沿った前記電極の長さが、前記電極のアレイの中間にある電極が最も短く且つ前記電極のアレイの両端にある電極が最も長い、請求項3又は請求項4に記載のイオントラップ。
前記第1の磁気要素のアレイが1列の磁気要素を備え、前記1列の磁気要素は、前記電極の列と同じ方向に延びる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のイオントラップ。
前記電極のアレイが基板の上面に設けられ、前記第1の磁気要素のアレイが前記基板の内部で且つ前記電極のアレイの下に設けられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のイオントラップ。
前記第1の磁気要素のアレイの前記その他の磁気要素が、少なくとも1対の磁気要素を備え、前記第1の磁気要素のアレイの前記少なくとも1対の磁気要素の対は、同じ方向で実質的に等しい電流を有するように配置構成されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載のイオントラップ。
前記第2の磁気要素のアレイの主要な磁気要素が、第2の磁場の第1の成分を発生させるように配置構成され、前記第2の磁気要素のアレイのその他の磁気要素が、前記第1の磁場が実質的に最大の均一性を有する位置において、前記第2の磁場の第1の成分の勾配及び曲率を低減させる前記第2の磁場の補償成分を発生させ、前記外部磁場の第1の成分を補償するように配置構成される、請求項14又は15に記載のイオントラップ。
前記第2の磁気要素のアレイの前記その他の磁気要素が、少なくとも1対の磁気要素を備え、前記第2の磁気要素のアレイの前記少なくとも1対の磁気要素の対は、同じ方向で実質的に等しい電流を有するように配置構成される、請求項16に記載のイオントラップ。
前記第3の磁気要素のアレイが、前記第1の磁場が実質的に最大の均一性を有する位置で第3の磁場を発生させることにより前記外部磁場の第2の成分を補償するように配置構成される、請求項18又は19に記載のイオントラップ。
前記第3の磁気要素のアレイが少なくとも1対の磁気要素を備え、前記第3の磁気要素のアレイの前記少なくとも1対の磁気要素の対が、互いに反対方向でかつ、実質的に等しい電流を有するように配置構成される、請求項20に記載のイオントラップ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び
図2を参照すると、イオントラップ1は、基板4に設けられた磁気要素のアレイ2及び電極アレイ3を含む。イオントラップ1は、従来のペニングトラップの平らな変形例であることが効果的であり、その動作の一般原理の文脈においてはペニングトラップと呼ぶことができるが、その特定の構造に関しては従来の三次元トラップと著しく異なるので、そのように呼ぶことはできない。「同一平面導波路ペニングトラップ」という用語が、イオントラップ1について記述するのに新たに作られた。
【0022】
イオントラップ1は、マイクロ波量子回路の構築ブロックとして適用するのにイオントラップ1が最も一般的に使用される傾向があるので、負に帯電したイオン、特に電子のトラップという意味で記述されることに留意すべきである。しかし当業者なら、トラップは、電極アレイ3の極性を反転させることによって、正に帯電したイオンを捕捉するのに等しく使用できることを理解するであろう。
【0023】
この実施形態では、基板4が、例えば1〜30GHzの範囲のマイクロ波の導波路として使用するのに適した誘電材料である。適切な材料は、サファイヤ又は石英又は低誘電損失のその他の絶縁体である。
【0024】
電極アレイ3は、リング電極6、2個の補償電極7、8、及び2個のエンドキャップ電極9、10が列5に配置構成されたものを含む。リング電極6は、列5の中間にあり、エンドキャップ電極9、10は、列5の両端にある。補償電極7、8は、それぞれが、各エンドキャップ電極9、10とリング電極6との間にある。その他の実施形態では、補償電極9、10が省略され、列5は、リング電極6とエンドキャップ電極9、10とのみを含む。列5の両側には、ガード電極11、12がある。これらのガード電極は、トラップを同一平面導波路の断面として単に見る場合、「接地平面」としても知られている。同一平面導波路は、マイクロ波の適用例で広く使用される平らな伝送ラインである。
【0025】
ワイヤ(図示せず)は、電位を電極6、7、8、9、10、11、12に印加できるように設けられる。この実施形態では、2個の補償電極7、8が互いにワイヤで電気的に連結され、2個のエンドキャップ電極9、10が互いにワイヤで電気的に連結され、2個のガード電極11、12が互いにワイヤで電気的に連結されて、それぞれの電位V
c、V
e、V
gが補償電極7、8、エンドキャップ電極9、10、及びガード電極11、12の対に印加できるようにする。
【0026】
電極6、7、8、9、10、11、12は、金又は銅などの任意の伝導材料で作製することができる。或いはこれらの電極は、低温超伝導体のものであってもよい。伝導材料は、イオントラップ1が質量分析計として使用される場合に十分であること、それに対して超伝導材料は、イオントラップがマイクロ波量子回路(回路QED)の適用例で使用される場合に適切であることが、典型的である。
【0027】
電極アレイ3は、電極6、7、8、9、10、11、12の列5の方向に長さl
zを有し、且つ幅a
0を有する。この全長l
z以内で、リング電極6は列5の方向に長さl
rを有し、補償電極7、8はそれぞれ、列5の方向に長さl
cを有し、エンドキャップ電極9、10はそれぞれ、列5の方向に長さl
eを有する。リング電極6の長さl
rは0.1mm以上であり、補償電極7、8の長さl
cは2mm以下であり、エンドキャップ電極の長さは0.5mm及び10mmを含めたそれらの間であることが典型的である。電極の長さ及び幅は、
図7のような同調比が存在できるように最も都合良く選択される。この図は、捕捉高さの有用な間隔
【数18】
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であって、最適な同調比が存在すること
【数19】
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を示し、
【数20】
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は、補償電極に印加される電圧と、リングに印加される電圧との比である。捕捉ポテンシャル井戸の一次及び二次偏差が形成する最適な同調比
【数21】
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がある場合、理想的な調和(放物線)形状がなくなる。このため、捕捉された粒子は、十分画定された振動周波数で、理想的な調和オシレータとして非常に厳密に振る舞うことを保証する。イオントラップの電極の寸法は、
【数22】
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が特定の所望の有用な捕捉間隔
【数23】
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内に存在するように選択される。この間隔は、使用者が任意に定義することができ、考えられる特定の適用例に応じて変わる。ある特定の有用な間隔が選択された場合、電極の長さ及び幅を得るために解析用数式を与えることは可能ではない。それらの寸法は、数値的に得なければならない。種々の解が存在し得る。質量分析及びマイクロ波量子回路の適用例の場合、最適な解は、六次C
012=C
004=C
006=0まで全ての静電不調和性を同時に相殺するのを可能にするものである。その手順は下記の通りであり、トラップ電極の寸法が、特定の有用な捕捉間隔
【数24】
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に関して見出されたら、補正電極の長さl
cを、最適な解が見出されるまで僅かに変えることができる。このことは、
図12及び
図13の例で記述する。電極の幅及び/又は基板の材料は、イオントラップの入力インピーダンスがマイクロ波量子回路で通常必要とされる50オームになるように、最適化することもできる。
【0028】
電極6、7、8、9、10、11、12は、長さl
r、l
c、l
eを有し、列5がその長さを二分する想像線に関して対称になるように、列5に配置構成される。言い換えれば、列5は、リング電極6の中心線に対して長さ方向に対称的である。
【0029】
電極アレイ3は、電極6、7、8、9、10、11、12が全て隣り合って、同じ方向に向いているという意味で、平面状である。この実施形態では、電極6、7、8、9、10、11、12が基板4の上面に設けられ、それら自体がそれぞれ、同じ平面内に上面を有する。言い換えれば、電極6、7、8、9、10、11、12の上面は同一平面上にある。しかしその他の実施形態では、電極6、7、8、9、10、11、12の上面は異なる高さを有し又は起伏があり、一方、電極アレイ3は、依然として全体が平面のままである。
【0030】
磁気要素アレイ2は、主要な磁気要素14と、4個のシム磁気要素15、16、17、18とが列13に配されたものを含む。主要な磁気要素14は列13の中間にあり、シム磁気要素15、16、17、18は、主要な磁気要素14の両側に対称的に位置決めされる。主要な磁気要素14は、列13の方向に長さl
pを有し、主要な磁気要素14に隣接するシム磁気要素15、16はそれぞれ、列13の方向にl
s1の長さを有し、列13の両端のシム磁気要素17、18はそれぞれ、列13の方向にl
s2の長さを有する。主要な磁気要素14は、主要な磁気要素14に隣接するシム磁気要素15、16のそれぞれから、長さl
g1を有するギャップだけ間隔を空けて配され、主要な磁気要素14に隣接するシム磁気要素15、16は、列13の両端のシム磁気要素17、18から、長さl
g2を有するギャップだけ間隔を空けて配される。l
pで示される主要な磁気要素14の長さは、l
p≧l
r+2l
c(
図1参照)程度であることが典型的であるが、必ずしもそうでなくともよい。そのような値l
pは、捕捉領域の磁場の均質性を改善するのを助ける。主要な磁気要素14の断面はl
p×w
pであり、但し磁気要素14の厚さがw
pであり、w
pの値は0.01mmより大きく2cmより小さい。この選択は、用いられる材料のタイプと、荷電粒子が捕捉される位置での磁場の強度に関する所望の最大値とに左右される。
【0031】
第1のシムペアは、磁気要素15及び16を含む。共に、寸法が同一であり、磁気要素14の両側に対称的に配置される。
図1及び
図2において磁気要素15及び16は、要素14と同じ厚さ、すなわち、w
pを有する。概して、15及び16の厚さは、w
pとは異ならせて選択することができる。異ならせて選択した場合、厚さはw
pよりも大きくすることが最も都合良い。このことは、磁気要素15及び16の電流又は磁化が、電流密度の臨界値及び/又は要素の製作に用いられる超伝導材料の臨界磁場を乗り越えないことを保証するのにも言えることである。超伝導材料ではない材料で製作される場合、同じ議論が適用されるが、臨界電流密度及び/又は臨界磁場などのパラメータの代わりに、電流密度の最大値又は用いられる材料の最大分極が、関連ある物理的制約になる。磁気要素15及び16の長さはl
s1である(
図1参照)。l
s1の値に一般的な制約はない。全磁気アレイ(
図2参照)の全長を可能な限り小さくするために、磁気要素14の長さl
pよりも小さいl
s1を選択することが都合良いと考えられる。この選択は、磁気要素17及び18などのより多くのシムペアを実装する場合に都合良いと考えられる。l
s1≦1cm及びl
s1≧0.01mであることが典型的である。要素14との磁気要素15及び16の間隔は、l
g1で示される。0.001mm≦l
g1≦1cmであることが典型的である。
【0032】
この実施形態では、磁気要素14、15、16、17、18はそれぞれ、列13の長さに直交する電流及び電極アレイ3の平面に平行な電流を流すように連結された超伝導ワイヤである。その他の実施形態では、磁気要素14、15、16、17、18はそれぞれ、高温超伝導磁石である。いずれの場合も、磁気要素14、15、16、17、18は、電極6、7、8、9、10の列5に実質的に平行な方向を有し且つリング電極6の上方の位置で実質的に均質である、磁場を発生させるように配置構成される。
【0033】
簡略化のため、電極アレイ3の外縁を無視し代わりに外縁が無限に延びると想定すると、電極アレイ3によって発生した電場は、下記の通り、すなわち、
φ(x,y,z)=V
r・f
r(x,y,z)+V
c・f
c(x,y,z)+V
e・f
e(x,y,z)+f
gaps(x,y,z|V
r,V
c,V
e) (1)
と表すことができ、式中、V
r、V
c、及びV
eは、それぞれ、リング電極6、補償電極7、8、及びエンドキャップ電極9、10に印加されたDC電圧を表す。関数f
r、f
c、及びf
eは、それぞれ、リング電極6、補償電極7、8、及びエンドキャップ電極9、10の静電場への関与を表す。これらの関数f
r、f
c、及びf
eは、電極6、7、8、9、10の寸法にのみ依存する。関数f
gapsは、電極6、7、8、9、10間のギャップの静電場への関与を表し、ギャップの寸法と、電極6、7、8、9、10に印加されたDC電圧V
r、V
c、及びV
eとの両方に依存する。
【0034】
イオントラップ1の基本的な機能は、方程式(1)を使用して例を演算することにより示すことができる。このため、本発明者らは、l
r=0.9mm、l
c=2.0mm、l
e=5.0mm、η=0.1mm、及び幅S
0=7.0mmを選択し、電極6、7、8、9、10、11、12に印加される電圧は、V
r=−1V、V
c=−1.15V、V
e=−4V、及びV
g=0Vである。これらの電圧は、x=0、y=y
0、z=0でデカルト参照フレーム内で定義される、リング電極6の中心の直上の位置の周りでの、電子又は任意の負に帯電した粒子の捕獲を可能にする。エンドキャップ電極9、10が接地されていないことは注目に値する。列5の電極6、7、8、9、10に印加された電圧間の関係は、リング電極6の表面上方y
0>0の距離に平衡位置があるために、概して、
|V
e|>|V
c|≧|V
r| (2)
と定義することができる。
【0035】
図3を参照すると、リング電極6の上方の距離y
0(この例では約1.19mm)での電位は、電極6、7、8、9、10の列5の長さに沿った方向zで変化し、リング電極6の中心上方で最大値19を有し、リング電極6の両側で最小値20を有する。
図4には、垂直軸yに沿ったφの変化が示されている。
【0036】
捕捉高さy
0は、等式
【数25】
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により決定される。絶縁ギャップが無視できるほど小さく、η→0である場合、f
gaps→0である。この近似によれば、y
0を計算するための方程式は、
【数26】
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である。
【0037】
これは同調比
【数27】
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と、エンドキャップとリングとの比
【数28】
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とを導入する。方程式2は、捕捉高さが電圧比T
c,T
e→y
0=y
0(T
c,T
e)にのみ依存することを示す。この形式的な依存性は、ギャップηが「十分」小さくη<<l
r、l
c、l
e、S
0である、それほど制限的ではない場合にも当てはまる。方程式2は、y
0に関して解析的に解くことができず、数値のみ得ることができる。
【0038】
四次までの項を含む平衡位置(x,y
0,z)付近でのφ(x,y,z)の級数展開は、下記、すなわち、
φ(x,y,z)=φ(0,y
0,0)+C
002z
2+C
200x
2+C
020(y−y
0)
2+C
012z
2(y−y
0)+C
210x
2(y−y0+C030y−y03+C202z2x2+C022z2y−y02+C220x2y−y02+C004z4+C400x4+C040y−y04 (3)
の形式を有する。展開係数は、
【数29】
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により定義される((0,y
0,0)で評価される)。
【数30】
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及び
【数31】
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に沿ったφ(x,y,z)の対称性は、奇数i及び/又は奇数kを有する全てのC
ijkが消去されることを示唆する。C
ijk係数は、トラップの性能をかなりの程度まで定義する。これらの係数(又は均等物)については、三次元円筒状、双曲線、及びトロイダルペニングトラップに関して詳細に調査されてきた。さらに、方程式2のように、電極間のスリットが「十分」小さい場合、C
ijkは、リング電圧C
ijk=V
r・c
ijk(式中、全てのc
ijk=c
ijk(T
c,T
e)は、T
c及びT
eにのみ依存する)に比例して変化する。
【0039】
級数展開3をラプラス方程式にプラグインすると、∇
2φ(x,y,z)=0であり、下記、すなわち、
C
002+C
020+C
002=0;3C
030+C
210+C
012=0 (4)
6C
400+C
220+C
202=0;6C
040+C
220+C
022=0;6C
004+C
202+C
022=0 (5)
の等式を得ることができる。
【0040】
3D双曲線又は円筒状トラップの場合、座標x及びyは区別がつかず⇒C
200=C
020である。このように、方程式4(左)はC
002=−C
020に簡約される。この式から、理想的なペニングトラップの電位は上昇する⇒φ=C
002(z
2−(x
2+(y−y
0)
2)/2)。しかし同一平面導波路ペニングトラップ(短いCPWトラップ)の場合、x及びyは区別することができ、曲率C
200及びC
020は同一ではない、すなわち、C
200≠C
020。したがって四極子ポテンシャルの一般的な形、すなわち二次までの項のみ含むものは、
【数32】
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である。楕円率パラメータは、
【数33】
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により与えられる。概して、ε≠0であり、したがってCPWトラップは楕円形ペニングトラップである。
【0041】
方程式6の理想的な楕円形トラップでの粒子の運動は、解析的に計算されている(M.Kretzschmar2008)。捕捉された粒子の簡約化サイクロトロンω
ρ=2πv
p、マグネトロンω
m=2πv
m、及び軸ω
z=2πv
z周波数は(電荷q及び質量mの場合)、
【数34】
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である。
【0042】
ε=0の場合、標準「円形」(非楕円)ペニングトラップの周波数に関する通常の式に戻る。
図3の例では、楕円率がε=0.41である。方程式7によれば、捕捉された電子の周波数は、ω
p=2π・14GHz、ω
z=2π・28MHz、及びω
m=2π・26kHzである。B=0.5Tの磁場が想定され、回路QEDの適用例に対応するサイクロトロン周波数の安定性により起動する。
【0043】
理想的な楕円形トラップでの半径方向運動は、
(x(t),y(t)−y
0)=(A
pξ
pcos(ω
pt)+A
mξ
mcos(ω
mt),A
pη
psin(ω
pt)+A
mη
msin(ω
mt)) (8)
である。振幅は、
【数35】
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によって与えられる。係数ξ
ρ,m及びη
ρ,mは、概して、理想的な楕円形ペニングトラップ(M Kretzschmar2008)に関して計算されている。
【数36】
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【0044】
記号E
p及びE
mは、それぞれサイクロトロン及びマグネトロンエネルギーを表す。Kretzschmarにより示されるように、低減されたサイクロトロン運動の軌道は、楕円率、すなわち、ξ
p≒η
p≒1によりごく僅かな影響を受ける。これは従来のペニングトラップの円形に非常に近い形を辿る。対照的に、マグネトロン運動は楕円になり、長軸及び短軸(x又はyに沿う)の向きはεの符号に依存する。さらに、その運動は−1<ε<1で安定であり、限界値|ε|→1では運動が非常に遅くなり、ω
m→0である。その場合、マグネトロンの楕円形は、直線に向かう傾向があり、このとき長軸が徐々に広くなり且つ短軸は消失する(ε→+1の場合⇒ξ
m→∞、η
m→0
m、及びその逆も同様であり、ε→−1の場合⇒ξ
m→0、η
m→∞)。値|ε|≧1の場合、マグネトロンは制限のない双曲線運動になり、捕捉は可能ではない。
【0045】
方程式6の純粋な四極子ポテンシャルにより定義された理想的なトラップは、単に、捕捉された粒子の運動の振幅を消失させるのに有効である。実際の実験では、電気的不調和性の奇偶(方程式3)を考慮しなければならない。これらは、周波数ω
p、ω
z、ω
mの、エネルギー依存性のばらつき/偏差を発生させる。
【0046】
φの展開、3≦i+j+k≦4(方程式3参照)における四次までの全ての不調和性の偶奇は、粒子のエネルギーに比例して変化する周波数シフトを生成する。したがって、この不調和性は、行列形式、すなわち、
【数37】
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で表すことができる。
【0047】
方程式3に出現するφ
quadに対する各摂動は、そのような周波数シフト行列をもたらす。全体としてCPW−ペニングトラップは、各C
ijk摂動ハミルトニアンに対応する9個のM
ijk行列を必要とする。全てのM
ijkに関する式は、補遺Bに示されている。全体的な周波数シフト行列は、それら全ての合計、すなわち、
M=M
012+M
210+M
030+M
220+M
202+M
022+M
004+M
400+M
040 (11)
である。
【0048】
段落0034に示される寸法を有し、
図3の電圧を有し、且つ磁場B=0.5Tである、例のトラップで捕獲された単一電子の場合、全体的な周波数シフト行列は、
【数38】
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である。
【0049】
軸方向周波数の正確な測定が必要不可欠であり、ほとんどの場合、その他の粒子の運動周波数(又はスピン状態)の決定は、軸方向周波数の測定に依存する。したがって、要素
【数39】
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が、Mにおける全ての周波数シフトの中で最も関連性があり且つ危険なものである。この例では、203Hz/Kになる。軸方向エネルギーに対するv
zのそのような依存性は−一定ではなく温度と共に変動する−電子の検出又は概して捕捉された荷電粒子の検出を、極低温であってもほぼ不可能にすると考えられる。
【0050】
M
2,2は、
【数40】
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及び
【数41】
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の合計によって得られる。v
m<<v
z<<v
pであることを考慮することにより、本発明者らは、
【数42】
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を得た。
【数43】
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は、C
012の平方に比例するので常に正であり、一方、
【数44】
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は、C
004の符号に応じて正又は負にすることができる。したがって、適切な最適同調比を見出すことによって後者の行列要素が前者
【数45】
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を打ち消すことができるような場合、軸方向のエネルギーによるv
zの線形従属性をなくすことができる。
【0051】
【数46】
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の存在は、普遍的に保証することができず、しかしこれはしばしば生ずるものであることがわかる。例のトラップに関しては、
【数47】
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が、適用される同調比の関数としてプロットされていることが
図5でわかる。1つの値
【数48】
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はM
2,2を消去する。
【0052】
【数49】
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であるので、方程式13における両方の周波数シフトは、リング電極(列5の中心電極)への印加電圧の平方根
【数50】
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に等しく比例して変化する。方程式
【数51】
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は、列5の中心電極に印加されるポテンシャルの実際の値とは独立しており、電圧比T
c及びT
eによってのみ定義される。類似の議論が質量m及び電荷qに当てはまる。したがって
【数52】
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は、V
r及び捕捉された原子種から独立した、十分定義された量である。この値はT
eと共に変化するが、捕捉位置y
0(
図7及び
図8参照)に対する不可避の依存性と単に同等である。
【数53】
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におけるη
mの出現は、
【数54】
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が磁場と共に理論的に変化するがその依存性が無視できることも示唆し、例えば、−2・10
−6T
−1。
【0053】
【数55】
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は、捕捉高さが軸方向エネルギーに僅かに依存することによって引き起こされ、y
0=y
0(E
z)。実際、エネルギーE
z=0に消失させるには、y
0が、暗黙的方程式C
001(y
0)=0の解になる。E
z>0の場合、その方程式は、C
001(y
0’)+<z
2>C
012(y
0’)=0に修正しなければならない。ここで<z
2>は、
【数56】
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の時間平均を表す。このように、実際の高さy
0’=y
0+Δyは軸方向の振幅に依存し、したがってE
zに依存する。Δyは、下記の通り推定することができる(本発明者らは、近似式C
012(y
0’)≒C
012(y
0)と仮定する)。
【数57】
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【0054】
y
0+Δyでは、軸方向ポテンシャルがy
0に対して修正される。特に、E
z=0軸方向曲率、C
002(y
0)は、C
002(y
0’)に変化する。これは引き続き、E
zの関数としてω
zの変動が強いられる。
【数58】
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【0055】
記述されたモデルは、近似せずに方程式1のポテンシャルを使用して、実際のCPW−ペニングトラップにおいて電子の半径方向運動を数値演算することにより、試験することができる。数値計算は、理想的なものに対する半径方向楕円の垂直シフトを示す。1つの例を、トラップのセクションに基づいて、
図6にプロットする。これは、軸方向エネルギーをE
z=4.2K、マグネトロンエネルギーを
【数59】
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と仮定し、サイクロトロンエネルギーを消去することによって演算した。方程式14により予測されるシフトはΔy=−0.355μmになり、数値結果Δy=−0.325μmと良好に一致している。
【0056】
最適な同調比は、捕捉高さの連続的な間隔で見出すことができるが、y
0の関数として滑らかに変化する。この状態を
図7に示し、y
0に対する最適同調比
【数60】
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のプロットが提示されている。有用な間隔が存在し(例えば、0.6mm≦y
0≦1.3mm)、M
2,2は消去することができる。その間隔の上限及び下限を超えて、最適同調比は存在しない。
【0057】
図8に示されるように、T
c及びT
eは独立して調整することができ、1つの特定の捕捉位置を得るのに多数の組合せを見出すことができる。しかし、補償された間隔は、
図8で特徴付けられるように、一義的な関係
【数61】
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によって決定される。T
eは、y
0を変更するのに主要なパラメータであり、一方、T
cは補償するのに基本的に使用されることにも留意すべきである。
【0058】
E
zに対する軸方向周波数の線形依存性を排除した後、非線形シフトは、特にy
0が小さい場合に依然重要である可能性がある。次に最も有意な均等不調和性は、その作用が一次摂動理論により計算することができるものであり、C
006及びC
008である。これらの不調和性は、下記の二次及び三次シフトをそれぞれもたらす。
【数62】
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【0059】
例のトラップに関し、これらの非線形シフトが
図10及び
図11に示されている。次に最も有意な奇数不調和性は、方程式3に含めた後、C
014、C
212、C
032、C
410、C
230、及びC
050である。対応する周波数シフトの計算は、厳密な二次摂動理論により、極めて扱い難くなると考えられる。代わりに本発明者らは、方程式14及び15に提示されるモデルを用いる。それらの方程式の導出後、本発明者らは下記の周波数シフトを得る。
【数63】
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【0060】
方程式17により予測される項C
014に起因したシフトは、方程式16のC
006により生成されたものと類似の大きさを有する。これは同一平面導波路ペニングトラップを設計するときに、考慮しなければならない。C
014及びC
212により生成された、方程式17の両方の周波数シフトは、項C
012が消去される位置で消去されることに留意されたい。この位置は、
【数64】
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によって示される。本発明者らの例のトラップの場合、位置
【数65】
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が
図9に示されている。
【0061】
方程式17は、積ΔE
z・ΔE
p及びΔE
z・ΔE
mに比例して変化するC
212に起因した軸方向周波数シフトを予測する。前者の場合、シフトは
【数66】
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に比例し、したがって通常は取るに足らない。後者の場合、マグネトロンエネルギーΔE
mの変動は非常に小さく、対応する値Δv
zも取るに足らない。このように、C
212を無視することができる。同じ議論がC
032に適用され、この場合、C
212に関する方程式17の場合に非常に類似したシフトをもたらす(ξ
p,mは、η
p,mにより単純に置換されなければならない)。残りの五次係数C
410、C
230、C
050は、サイクロトロン及びマグネトロン周波数v
p及びv
mの偏差のみを発生させ、Δv
pとΔv
mとの積が得られる。したがってこれらも、線形周波数シフト行列からわかるように(方程式12の例参照)、その変動が非常に小さいので無視することができる。最後に、類似の議論を、方程式17及び下記の考察では考えられなかった全ての六次係数に当てはめ、すなわち、C
222、C
204、C
024、C
420、C
402、C
042、C
240、C
600、C
060に当てはめるが、これらは全て無関係なものである。
【0062】
図10は、1つの特定の位置
【数67】
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約0.83mmの存在を明らかにし、そこでは係数C
006が消去される。生ずる疑問は、
【数68】
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及び
【数69】
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を一致させるように、それによって補償電極が最適化されるように、トラップを設計することができるか否かである。答えは肯定的であり、
図12に示される。
図12は、補償電極の長さl
cを変更し且つトラップのその他全ての寸法を一定に保った場合の、
【数70】
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及び
【数71】
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のばらつきを示す。例えば、l
c≒1.84mmの場合⇒
【数72】
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である。この結果も
図13に見られ、2本の曲線の交差点は、補正電極の最適化された長さを示す。この最適化されたトラップでは、
【数73】
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でC
004=C
012=C
006=0である。
【0063】
方程式13、16、及び17で示される依存性
【数74】
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によれば、捕捉された電子の軸方向信号の現実的なシミュレーションを行うことが可能である。多くのペニングトラップ実験で用いられる検出スキームを仮定すれば、信号は、外部検出平行LC回路の共鳴抵抗のショートカット(=軸方向ディップ)として出現する。目標は、実際のトラップに捕捉された電子の実際の検出信号と、理想的なトラップの検出信号とを比較することであり、その目的は、前者の「相対的可視性」を推定することである。したがって技術的詳細は重要ではないが、その詳細は標準的な文献、Gabrielse、Dehmelt、及びその他の著者による論文に見出すことができる。シミュレーションは、
図14及び
図15に示される。曲線は、軸方向エネルギーのボルツマン分布上で軸方向ディップ(
【数75】
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を有する)を平均することによって得られる。軸方向温度T
zの3つの異なる値について解析した。
【0064】
図14は、軸方向温度が上昇するにつれ、ディップの「可視性」が低減することを示す。ランダムな位置、y
0=1.209mm(しかし最適化された同調比を有する)が、このプロット用に選択された。この場合、C
006及びC
014は、ディップの大きな低下をもたらし、一方、C
008は取るに足らないものである(
図10及び
図11参照)。
図15において、
【数76】
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である。次にC
004=C
012=C
006=0であるが、C
008は、軸方向温度の上昇と共に信号の質をさらに低下させる。4.2K(又はそれ以下)での単一電子の検出は、トラップの補償間隔以内で常に可能であるべきと結論付けることができる。しかし高温では、非線形不調和性によって、比較的妥当な値T
zの場合であってもその観察をより著しく困難にする。
【0065】
図16を参照すると、本開示の実施形態による質量分析計23は、4.2K以下の温度にイオントラップを冷却することが可能な極低温真空チャンバ24内に位置付けられた、イオントラップ1を含む。DC電圧源25が設けられて、電圧V
r、V
c、V
eをリング電極6、補償電極7、8、及びエンドキャップ電極9、10に供給する。マイクロ波発生器26及び関数発生器27は、捕捉された粒子をプローブ処理するためにマイクロ波がイオントラップに射出されるよう設けられ、オシロスコープ28及びフーリエ変換解析器は、イオントラップ1から出て行くマイクロ波を解析するために設けられている。多数のイオントラップ1を極低温真空チャンバ24内に設け、質量分析計23で多数の捕捉された粒子を同時に、類似の周囲条件下で解析させることができる。
【0066】
図17及び
図18を参照すると、イオントラップ1は、マイクロ波用のキャビティ29を設けることができる。キャビティは、
図17に示されるようにLC回路に均等であり、外部マイクロ波伝送ラインを介して離れたマイクロ波キャビティ30に連結することにより、マイクロ波量子回路を形成することができる。
【0067】
チップ上の磁気ソースに戻ると、同一平面導波路ペニングトラップにおいて電荷q及び質量mを有する粒子のハミルトニアンは、
【数77】
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により与えられる。
【0068】
方程式18において、
【数78】
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は、捕捉された粒子の正準運動量であり、
【数79】
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は、磁気ベクトルポテンシャルである。静電ポテンシャルφ(x,y,z)は、方程式1によって与えられ、q、mはそれぞれ、捕捉された粒子の電荷及び質量である。磁場は、
【数80】
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として計算される。完全に均質な磁場は、
【数81】
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である。完全に均質な磁場の磁気ベクトルポテンシャルは、
【数82】
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によって与えられる。理想的なハミルトニアンは、
【数83】
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によって与えられる。したがって総ハミルトニアンは、理想的なハミルトニアンに摂動ハミルトニアンを加えた合計であり、すなわち、H=H
0+ΔH。摂動ハミルトニアンは、下記の式、すなわち、
【数84】
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によって与えられる。
【0069】
二次項
【数85】
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の作用は、均質な場合に関する偏差がより小さい場合、方程式19のその他の項よりもさらに小さいので、取るに足らないものとすることができる(例えば、Int.J.Mass Spec.Ion Proc.141、101、1995参照)。この近似によれば、
図1及び
図2に示される磁気ソースを詳細に解析することが可能である。磁気要素14、15、16、17、及び18は全て、
図1に定められるように、x軸に沿って並べなければならない。これら全ての要素の長さは、アレイxの電極の幅よりかなり長い。電極の幅は記号S
0によって定められ、したがって磁気要素の長さは少なくともS
0の5倍又はさらにそれ以上長い。電極の長さに対するこの制約により、捕捉された粒子の位置、すなわち列の中心電極上方の高さy
0で見られる磁気ベクトルポテンシャルは、下記の一般的な形式を有すると仮定することができる。
【数86】
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【0070】
方程式20では、記号μ
0が透磁率を表す。ワイヤに沿って流れる電流密度は、x軸に沿って配向する。磁気要素/ワイヤの全長に沿って均質である、
【数87】
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と仮定すれば、磁気ベクトルポテンシャルはしたがって、
【数88】
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になる。
【0071】
磁気要素が電極の幅S
0の幅に比べて非常に長いという制約により、磁気ベクトルポテンシャルは、
【数89】
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方向にのみ成分を有するベクトルになる。次にクーロンゲージを選択するが、この選択によって
【数90】
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が得られ、したがって
【数91】
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が得られ、磁気ベクトルポテンシャルは、x座標の関数ではない A≠A(x)。したがって磁場の成分は、
【数92】
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である。
【0072】
捕捉位置(0,y
0,0)付近での磁気ベクトルポテンシャル関数(方程式21)の級数展開は、下記の式によって与えられる。
【数93】
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【0073】
磁気アレイの対称性(
図1及び
図2参照)は、A(y,z)=A(y,−z)、∀
zであることを示唆する。したがって、zを有するA(y,z)の全ての奇数導関数は、捕捉位置(0,y
0,0)でゼロになる。A(y,z)の級数展開は、
【数94】
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に簡略化される。
【0074】
定数A(y
0)には動的作用がなく、無視することができる。次に方程式(22)の磁場成分B
y、B
zに関する式を考慮すると、磁気ベクトルポテンシャルの級数展開は下記の通り書くことができる。
【数95】
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【0075】
したがって、この式により、下記の磁気ベクトルポテンシャル項が得られる。
【数96】
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【0076】
マックスウェルの方程式を用いて、磁場成分の導関数における下記の関係が得られる。
【数97】
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【0077】
導関数におけるこれらの関係により、磁気ベクトルポテンシャル項の式を単純化することができる。
【数98】
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したがって磁気ベクトルポテンシャル項は、
【数99】
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である。
【0078】
ベクトルポテンシャル
【数100】
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によって与えられる理想的な場が、
【数101】
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によって支配されるトラップ内の単一粒子の理想的な運動をもたらす。項
【数102】
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は、理想的な磁場に対する偏差を表し、理想的な運動の摂動をもたらす。これらの摂動の主要な作用は、捕捉周波数ω
p、ω
z、及びω
mを変化させることである。偏差
【数103】
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が消去されない場合、固有周波数は、捕捉された粒子のエネルギーに依存するようになる。サイクロトロン、マグネトロン、及び軸方向のエネルギーは、それぞれE
p、E
m、及びE
zによって示される。エネルギーによる周波数のばらつきは、古典的な正準摂動理論を使用して計算することができる(例えば、H.Goldsteinによる著書「Classical Mechanics」参照)。例として、
【数104】
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の作用を以下に計算する。
【0079】
項
【数105】
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は、磁場
【数106】
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の曲率によって生成されるので、磁気ボトルを表す。摂動ハミルトニアンは、
【数107】
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であり、式中、
【数108】
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は
【数109】
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により置換されなければならないことに留意されたい。対応する代数を解くことにより(
【数110】
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を考慮する)、対応する摂動ハミルトニアンの式
【数111】
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が得られる。これにより、周波数シフト行列(方程式10に導入された電気的不調和性に関する周波数シフト行列に均等である)を得るために、一次摂動理論を適用することができる。その場合のように進めると、磁気ボトルにより引き起こされた周波数偏差の行列は、下記の通りである。
【数112】
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【0080】
方程式(32)では、磁気ボトルの不均質性を導入した。
【数113】
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概して、磁気不均質性は、
【数114】
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と定義される。方程式(32)の場合に均等な式を、任意のB
nに関して導くことができる。この式は、さらに意義のあるものではなく、重要なのは、除去されない場合の磁気不均質性が、エネルギーによって、捕捉された荷電粒子の周波数に変動をもたらすことである。これらの変動は、質量分析法、回路QED、又は考えられる適用例のいずれかに関して技術を役立たないものにする可能性がある。次に方程式27〜31によれば、項B
1、B
2、B
3、B
4、…、B
nが、捕捉位置(0、y
0、0)での磁場の全体的な均質性を完全に定める。本質的な概念は、本発明者らの技術が、全ての不均質性B
1、B
2、B
3、B
4、…、B
nを除去する手段を提供することである。この磁場補償は、チップに含まれる磁気要素、すなわちいわゆるシムペアにより実現される。
図1において、磁気要素15、16、及び17、18は、係数B
1及びB
2を消去することが可能である。概して、除去することができる不均質性の量nは、チップ内のシムペアの数nに等しい。
【0081】
チップによる磁気不均質性B
1、B
2、B
3、B
4、…、B
nの補償を、以下に示す。数学的に単純化するために、磁気要素によって生成された磁場は、無限に長く細いワイヤにより生成された磁場に関する式(μ
0は、透磁率である)によって十分に記述されると仮定することになる。
【数115】
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【0082】
方程式33は、主ワイヤ(
図1の要素14)の右側からd/2に配置されたワイヤに有効である。ワイヤの有限な長方形の断面又は有限な長さを考慮する場合、方程式(33)の数式は異なるものになるが、いずれの場合も磁場は、ワイヤに沿って流れる電流I(又は電流密度I)に比例することになる。主ワイヤ(
図1の要素14)の左側からd/2に配置されたワイヤの場合、磁場は(再び無限に長く細いワイヤを仮定すると)
【数116】
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になる。
【0083】
方程式33及び34によれば、チップの対称軸で1つのシムペアにより生成された磁場
【数117】
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が得られる。したがって、合計したシムペアの場は、
【数118】
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である。
【0084】
方程式35によれば、垂直軸(0,y,0)でシムペアにより生成された磁場の導関数は、容易に得ることができる。式は、
【数119】
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である。
【0085】
次に磁気補償(B
1、B
2、B
3、B
4、…、B
nの除去)を、方程式(36)の式により示すことができる。チップは、4つのそのようなシムペアに、主ワイヤを加えたもので製作されると仮定する。各シムペアは、主ワイヤから距離d
i/2に配置され、電流I
iであり且つ対応する磁場は
【数120】
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により示される。補償は、四次までの全不均質性が消失するように、シムペアの電流I
1、I
2、I
3、及びI
4を見出すことを意味する。
【数121】
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【0086】
方程式37における補償は、主ワイヤの不均質性
【数122】
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がシムペアの不均質性によって補償されるように、電流I
iを調節しなければならないことを示す。方程式(36)の導関数に関する式によれば、これは
【数123】
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と示される。
【0087】
方程式(38)は
、行列形式で表すこと
もできる。
【0088】
行列MBの式において、一般的な位置の座標yは、補償がその位置で行われる場合、捕捉された粒子の位置y
0によって置換されなければならない(これは通常の場合に言えることである)。概してMBの行列式は、ゼロとは異なり、したがって行列MBは、反転させることができる。反転行列MB
−1によれば、シムペアに印加される適正な補償電流を容易に見出すことができる。
【数126】
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【0089】
概して、具体的なチップの設計は、方程式(41)から得られる電流の値が、用いられる超伝導材料の臨界電流の値よりも低くなることを保証するために、主ワイヤに対するシムペアの位置(d
i)が選択されるよう、行列MBを最適化することにある。方程式(40)におけるMBの式は、無限に長く無限に細いワイヤを仮定して導いた。ワイヤが無限に細くない場合、MBの式は異なることになるが、補償電流を見出すという問題の線形性はマックスウェルの方程式から得られる電流I(又は電流密度I)を有する磁場の普遍的線形依存性により保証されるので、解(41)の一般性は依然として有効である。シムペアは、主ワイヤ(
図1の14)に対して対称的に(
【数127】
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軸に沿って)分布されなければならない。
図1に示されるシムペア15、16、及び17、18は、主ワイヤ14と同じ平面上に配置されるが、これは必ずしも厳密になされる必要はない。シムペア15、16、17、18は、主ワイヤ上方の平面内に配置されてもよく、異なるシムペアを異なる平面に配置することが可能であってもよい。概してシムペア15、16、17、18は、磁気不均質性を相殺する要因となるが、バルク磁場を生成する要因にはならない。したがって、シムワイヤの断面が主ワイヤの断面よりも小さいことは、ほとんどの場合に都合良い。シムワイヤを主ワイヤと同じ平面に又は異なる平面に配置するかどうかの判断は、チップの製作コストにも左右されることになる。概して、特定のチップの設計は、行列MBによって決定される。シムワイヤの太さ、位置d
i、及びシムワイヤが配置される平面は変えることができるが、良好なチップの設計に絶対必要な条件は、行列MBがy
0で反転可能でなければならず且つ方程式41のシム電流に関する解が「物理的」でなければならないこと、すなわちI
1、…、I
nの値は、用いられる材料により持続可能でなければならないことである。
【0090】
具体的な例に関する一般的な動作原理を示すために、磁気要素の寸法に関して下記の値を仮定する。
l
p=50.00mm w
p=10.00mm(主要な磁気要素)
l
s1=50/15mm w
s1=w
p/3mm d
s1=10.0mm(第1のシムペア)
l
s2=50/15mm w
s2=w
p/3mm d
s2=20.0mm(第2のシムペア)
l
s3=50/15mm w
s3=w
p/3mm d
s3=30.0mm(第3のシムペア)
l
s4=50/10mm w
s4=w
p/3mm d
s4=45.0mm(第4のシムペア)
【0091】
シムペア31、32、33、34を実現する磁気要素は全て、主要な磁気要素14の最上部に配置されると仮定する。これは
図19に示される。捕捉された電子は、電極アレイの表面上方の位置y
0=0.820mmにあると仮定される(
図19には図示せず)。したがって、
図19にプロットされる磁気要素14、31、32、33、34は、
図1に示される磁気要素14、15、16、17、18のアレイ13の代わりになる。主要な磁気要素14に沿った電流密度はJ
0=81.48A/mm
2であると仮定する。主要な磁気要素14は、均等な電流密度を持続させるよう適正に磁化された超伝導材料の固体ブロックであってもよい。或いは主要な磁気要素14は、細い超伝導ワイヤのアレイから作製することができる。後者の場合、例えば、半径0.25/2mmの細いワイヤを仮定することにより、合計すると断面がl
p×w
pの固体ブロックと同じ体積を占有し得る40個の垂直層にわたって分布された、200ターンのアレイを有することが必要と考えられる。細いワイヤのそれぞれの長さに沿って流れる電流は、4.0アンペアと考えられる。どちらの場合も共に、ワイヤ又は固体ブロックは、捕捉されたイオンの位置(0,y
0,0)で方向
【数128】
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に沿った電流成分のみが目に見えるように「十分」長くなければならない。理想的な解決策は、前述のように、無限に長いワイヤを有することと考えられる。2つの実用的な解決策が、この要求を回避する。これについては後のパラグラフで詳細に論じるが、次にこの示されている例の目的で、ワイヤは無限に長いと単に仮定する。例に関する行列MBは、
【数129】
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である。
【0092】
主要な磁気要素により生成された磁場の不均質性は、
【数130】
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によって与えられる(単位 ガウス/mm
n)。
【0093】
方程式41における電流の解は、シム電流の密度、すなわち、
【数131】
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を与える。
【0094】
全ての電流密度は、ニオブチタン又はYBCOの臨界値よりも下である(2T場よりも低い)。例は、電流密度が非常に高くなるのを回避するために、内側のシムペアよりも大きな断面を有する外側のシムペアを有することが都合良いことも示す。これは単にl
sn及び/又はw
snを増大させることによって、容易に実現することができる。それらのパラメータに関する値の判断は、y
0に関して計画された範囲での磁場で考えられる値、並びに可能な製作課題に左右されることになる。このように、異なるシムペアは異なるl
sn、w
snを都合良く有していてもよい。
【0095】
図20は、主要な磁気要素14単独の場合と、主要な磁気要素14に4つのシムペア31、32、33、34を加えた場合との両方に関する、z軸に沿った磁場(
【数132】
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成分)を示す。グラフは、捕捉された粒子の位置y
0で計算される。
【数133】
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に沿った、捕捉された粒子の運動の振幅は、極低温で1mmよりも小さいことに留意すべきである(4.2Kで、1個の電子に関し30μmであることが典型的である)。したがって、合計磁場が均質でなければならない関連ある範囲は、z=0を中心とし(
図20参照)、数mmしか拡がらない。z≒15mmでの磁場の対称ピークは第3のシムペア33に起因するが、それらの位置はz=0からかなり離れており、捕捉された粒子の運動に影響を及ぼす。
【0096】
図21は、主要な磁気要素14単独の場合と、主要な磁気要素14に4つのシムペア31、32、33、34を加えた場合との両方に関する、z軸に沿った磁場(
【数134】
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成分)を示す。グラフは、磁気補償のおかげで、合計磁場の
【数135】
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成分が消失することを示す。残りの磁場は、純粋に軸方向であり、すなわち
【数136】
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成分のみ有する。これはイオントラップが精密に作動できることを意味する。
【数137】
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軸に沿った場の成分は、粒子のエネルギーにより固有周波数ω
p、ω
z、及びω
mの大きなシフトを生成すると考えられる。これは磁気補償により回避される。
図21では、B
y≒0である範囲が数mmに及び、極低温での粒子の運動の実際の振幅よりも、非常に広いことに留意しなければならない。したがって(0,y
0,0)の周りの数mmの関連ある範囲内では,補償磁場が
【数138】
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に沿って配向する。
【0097】
図22は、主要な磁気要素単独の場合と、主要な磁気要素に4つのシムペアを加えた場合との両方に関する、z軸に沿った磁場(
【数139】
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成分)を示す。グラフは、(0,y
0,0)の周りの
図20の領域を拡大したものである。z軸に沿った磁気補償の作用を詳細に示す。
【0098】
図23は、主要な磁気要素14単独の場合と、主要な磁気要素14に4つのシムペア31、32、33、34を加えた場合との両方に関する、y軸に沿った磁場(
【数140】
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成分)を示す。磁気補償の好ましい影響が明らかに目に見える。主要な磁気要素14のみの磁場が、チップの表面まで垂直距離(y)を急速に低下する場合、補償磁場は、捕捉された荷電粒子の位置(0,y
0,0)を中心として平らな平坦域を示す。平らな平坦域は数mmに拡がり、いずれの場合も極低温での粒子の運動の振幅よりも非常に大きい。これは、補償によって、均質な磁場領域が適正に形成されることを示す。これは重要な要因であり、イオントラップと、回路QED、高精度質量分析法、及びその他の適用例に関し、この技術を役に立つものにする。
【0099】
次に、用いられる磁気要素の、有限長さに関する疑問に対処することが必要である。以下に、この課題に対する2つの可能性ある技術的解決策を提供する。磁気要素は、a)超伝導電流密度を伝達する閉ループワイヤ、又はb)一定の且つ均質な磁気双極子モーメント密度を有する超伝導材料の磁化ブロックのいずれかとすることができる。a)の場合、捕捉領域は、位置(0,y
0,0)から磁気要素(
図2の14、15、16、17、18、及び
図19の14、31、32、33、34)が軸
【数141】
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に沿って流れる電流のみ伝達するように、超伝導遮蔽ケースによって封じなければならない。
図24及び
図25は、超伝導遮蔽ボックス35により封じられたチップのスケッチを示す(ボックス35内のイオントラップの電極は図示していない)。例は、磁気要素14、31がどのように、実際に永続的超伝導電流が流れる閉ループワイヤであるのかを示す。超伝導遮蔽により、(0,y
0,0)の周りの捕捉領域だけが、軸
【数142】
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に沿って流れる電流を「見る」。したがって、先のパラグラフで記述された数学的解析の仮説は完全に裏付けられ、仮定された対称性が適用され且つ得られた結果は完全に有効である。超伝導ケース又は任意のその他のタイプの磁気遮蔽が含まれない場合、閉ループワイヤは、
【数143】
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以外の方向に流れる電流成分を有することになり、明らかになった数学的解析は正確ではない。これは、(0,y
0,0)で実現された磁場の均質度が、遮蔽ケースで実現されたものよりも低くなる可能性があることを意味する。提案された技術は依然として作用することができ、先のセクションで列挙された適用例の全てを可能にするが、超高精度は、磁気遮蔽の使用による場合と同じレベルでは可能でなくなる。
【0100】
次にb)の場合は、磁気要素が、一定の且つ均質な磁気双極子モーメント密度を有する超伝導材料の磁化ブロックである場合を言う。この場合、磁気要素の構造はa)の場合よりも単純化され、
【数144】
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以外の方向の電流成分を回避するのに超伝導遮蔽ケースの使用を必要としない。磁気要素14、31のスケッチを、
図26に示す。その図において、M
0は主要な磁気要素の磁気双極子密度であり、M
1は第1のシムペアの磁気双極子密度である。M
0及びM
1は共に、均質な密度でなければならない。このタイプの磁気構造は、YBCOなどの高温超伝導材料で優先的に製作することができるが、コバルト、鉄、及びニッケルなどの任意のその他の強磁性材料で製作することもできる。
【0101】
図26は、磁気要素を磁化するのに必要な要素を示さない。高温超伝導体又は強磁性体を磁化/消磁する、種々の知られている方法がある。例えば、小さい「シーディング」磁場の存在下、超伝導体に適用される熱パルスを使用することによる。磁化方法については、他の場所に記述され、当業者に知られている。同じ議論が、閉ループ低温超伝導体を使用する場合に当てはまる(
図24及び
図25参照)。これらの閉ループワイヤは、その場で、すなわちイオントラップの操作中に励磁/励磁解除されなければならない。この場合も、極低温超伝導スイッチで用いられる、超伝導フラックスポンプ又は室温電力供給など、異なる技術が利用可能である。これらの技術の1つは、必ずイオントラップの部分になり、用いられるオプションは、特定のイオントラップで考えられる特定の適用例に応じて異なってもよい。これら全ての励磁技術は、他の箇所に記述されており、当業者に知られている。
【0102】
地表の磁場は、捕捉領域における磁場全体の正しい補償のために、考慮に入れてもよい。ここで地表の磁場は、位置に応じて0.5ガウス程度である。イオントラップ内に捕捉された荷電粒子の運動の規模に関し(数ミクロン)、地表の磁場
【数145】
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は均質であると考えることができる。しかし概して、空間の全方向に成分を有することになる。
【数146】
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【0103】
図1及び
図2に示されるイオントラップ1と、
図19、
図24、
図25、及び
図26に示される磁気要素では、地表の場のy成分を補償することが可能である:
【数147】
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z軸に沿った成分
【数148】
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は、その方向に沿った全捕捉場に単に加えられることになり、したがってイオントラップの操作に悪影響はない。しかしx軸に沿った成分は、トラップの操作に悪影響を及ぼす。
図1、
図2、
図19、
図24、
図25、及び
図26に示される磁気要素では、
【数149】
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を除去することができない。地表の磁場は、いくつかの外部コイルを有する実験領域内で除去することができる。しかし最適な解決策は、列挙した図に示されるような類似の磁気補償シムペアを用いることであるが、y軸に沿って90度回転させたものである。得られる全磁気構造を
図27にスケッチする(磁気要素上方にイオントラップ1の電極があるが、図示していない)。ここで磁気要素36、37はz軸に平行に配向し、補償電流
【数150】
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の方向も同様である。
図27は、
【数151】
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(又は、その起源が何であろうと、x軸に沿った任意の残りの磁場成分)を補償するための1つのシムペア37のみ示す。より多くのシムペアを、必要とされる補償の程度に応じてmまで付加することができる。シムペア37は、x軸を中心として対称的に配置される。1つの主要な磁気要素36があり、その電流は
【数152】
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であり、電流
【数153】
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の、最大でmのシムペアがある。シムペア37は、
【数154】
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を補償するための主要な磁気要素に対して対称である。補償の原理は、先のセクションで論じたものと同一である。しかしこの場合、シム電流(
【数155】
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により示される)は、
【数156】
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であるように選択しなければならない。方程式(46)において、行列MB
xは、方程式40の行列MBに類似するが、シムペアについては
【数157】
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を補償するために用いられる(
図27参照)。方程式(46)は、地表の磁場に加えてB
xを補償する主要な磁気要素36に起因した磁場(
図27参照)も除去するように、シム電流を選択しなければならないことを示している。その主要な磁気要素36によって生成された場を、ここでは
【数158】
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により示す。次に主電流
【数159】
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は、地表の磁場が捕捉位置(0,y
0,0)で消失するように選択しなければならない。したがって、
【数160】
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により満たされる条件は、
【数161】
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【数162】
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に単純化することができる。
【0104】
【数163】
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を補償するための主要な磁気要素36に沿った電流
【数164】
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を、
図27に示す。
【数165】
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が
【数166】
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軸に沿って流れることが必ず観察される。補償電流
【数167】
[この文献は図面を表示できません]
が
【数168】
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軸に沿って流れることを観察することも重要である。さらに、全ての
【数169】
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が、
図27に示されるようにペアの両成分に関して同じ方向に伝搬する。
【0105】
このセクションの仕上げとして、次に成分
【数170】
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(又は、概してその起源が何であろうと磁場のy成分)の補償について考える必要がある。
【数171】
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の補償は、追加の補償電流
【数172】
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により実現される。この場合、主要な補償電流は
【数173】
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であり、1対のワイヤに沿って且つ
【数174】
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軸に沿って流れる。これを
図28に示す(磁気要素上方のイオントラップ1の電極は図示されておらず、
図27に示されるB
xを補償するための磁気要素も図示されていない)。磁気要素38、39(ワイヤ又は超伝導強磁性体)は、
【数175】
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を補償するために用いられる磁気要素36、37に平行である。各磁気ペア38、39は、
【数176】
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軸を横断して対称的に配置される(すなわち、変換x→−xの下で不変である)。これを
図29にスケッチする。さらに、電流
【数177】
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は、ペアの各成分が反対方向に流れることを観察することが重要である。これは、そのペアにより生成された磁場が、捕捉位置(0,y
0,0)で
【数178】
[この文献は図面を表示できません]
軸に沿って配向するのに必要である。主要な補償電流
【数179】
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は、y軸に沿った磁場の全成分が消失するように選択しなければならない。
【数180】
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シム電流は
【数181】
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であり、それらは、
【数182】
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によって生成された磁場と、垂直(y)軸に沿った地表の磁場との不均質性をなくすのに必要である。これらの電流は、
【数183】
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になるように選択されなければならない。
【0106】
地表の磁場を補償するための磁気要素は、低温又は高温超伝導体で製作することができる。その判断は、特定の適用例に左右される。補償される場は、非常に小さい。
【数190】
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ガウス、したがって高くない電流が必要とされる。これは、磁気要素の断面を非常に小さくすることができ、1mm
2程度又はそれ以下にできることを意味する。製作を容易にするために、全ての要素の断面はむしろ同じであるべきである。しかし結局は、異なるシムペアは異なる断面を有していてもよい。異なる磁気要素間の間隔は、1mm程度又はそれ以下の大きさのものであることが好ましいが、より大きな間隔でも機能すると考えられる。
【0107】
図30は、捕捉静電ポテンシャルを生成するための電極と、捕捉磁場を生成するための磁気要素と、
【数191】
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軸に沿った地表の磁場
【数192】
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及び
【数193】
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軸に沿った地表の磁場
【数194】
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をなくすための磁気要素とを含む、完成したイオンチップを示す。
【0108】
電流の分布は、
図28、
図29に示されるものと異ならせることができる。例えば、電流
【数195】
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を持続させるのに
図29において示されるものが、代わりに
【数196】
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を持続させるのに使用することができ、又はその逆も同様である。構造の製作ではこれらの異なる選択肢のいずれも除外しないので、最適な電流分布は、使用者にとってどのような順序が最も都合良いかに関わらず、所望の電流を所望の磁気要素に印加するだけで使用者が判断することになる。これにはただ1つの例外があり、すなわち、
【数197】
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を補償するための主要な磁気要素であって、その目的でのみ使用することができ、
【数198】
[この文献は図面を表示できません]
を補償するのには使用できないものである(
図27参照)。この磁気要素は、
【数199】
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軸に平行でなければならず、その対称軸は平面x=0に一致すべきである。
【数200】
[この文献は図面を表示できません]
及び
【数201】
[この文献は図面を表示できません]
を補償するための磁気要素の残りも、
【数202】
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軸に沿って配向しなければならず、且つ平面x=0の端から端まで対称的に分布しなければならない。
【0109】
z軸に沿った均質な捕捉磁場を発生させるための上方磁気構造の場合、超伝導電流又は磁気双極子密度は、当業者に知られているようなその他の場所に記述された技法により適用することができる。捕捉位置(0,y
0,0)からわかるように、地表の磁場を補償するための磁気要素は、
【数203】
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に沿って伝搬する電流のみを示し、軸
【数204】
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に沿った成分はない状態を示すことも必要である。これは、
図25にスケッチされるように、超伝導遮蔽ケースの使用により実現される。
【0110】
その他の変形例及び修正例が当業者に明らかにされよう。そのような変形例及び修正例は、既に知られており本明細書に記述される特徴の代わりに又はその特徴に加えて使用することができる、均等な及びその他の特徴を含んでいてもよい。個々の実施形態の文脈において記述される特徴は、単一の例に組み合わせて提供することができる。逆に、単一の実施形態の文脈で記述される特徴は、個々に又は任意の適切な下位組合せで提供することができる。
【0111】
「含む」という用語は、その他の要素又はステップを除外せず、「a」又は「an」という用語は複数形を除外せず、単一の特徴は、特許請求の範囲に列挙されるいくつかの機能を満たすことができ、特許請求の範囲における引用符号は、特許請求の範囲を限定するとして解釈されるものではないことに留意すべきである。図は、必ずしくも縮尺が合っておらず、代わりに本発明の原理を例示するに際して全体的に強調がなされていることにも留意すべきである。