(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6343784
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】圧縮空気用エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 46/24 20060101AFI20180611BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20180611BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
B01D46/24 A
B01D45/08 Z
B01J20/26 J
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-252938(P2017-252938)
(22)【出願日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【審査官】
向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−025623(JP,A)
【文献】
特開2012−011367(JP,A)
【文献】
特開昭58−109115(JP,A)
【文献】
実開昭59−162919(JP,U)
【文献】
実開昭47−034573(JP,U)
【文献】
実開昭51−151171(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00〜41/04
B01D 45/00〜46/54
B01D 49/00〜51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中空筒形状に形成されているフィルタエレメントと、
該フィルタエレメントの一方の端部に取り付けられている上蓋と、
前記フィルタエレメントの他方の端部を閉塞して取り付けられている下蓋と、
前記上蓋を貫通して形成され圧縮空気が流入する流入孔と、
前記フィルタエレメント、前記上蓋、前記下蓋にて囲まれた内部空間と、
該内部空間の下側に収容されて前記圧縮空気中の油を捕集するための疎水性材料からなる油捕集材と、
前記内部空間の上側であって前記流入孔に隣接した位置に収容され、ステンレス製の線状物を1又は複数本まとめて形成された塊状体とを備え、
該塊状体と前記フィルタエレメントとは前記油捕集材を介在せずに隣接していることを特徴とする圧縮空気用エアフィルタ。
【請求項2】
前記線状物は、扁平なテープ形状であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気用エアフィルタ。
【請求項3】
前記線状物は、らせん状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮空気用エアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気用エアフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気圧回路を流れる圧縮空気には、油や水が含まれている。このように含有されている油や水は不純物として取り扱われているため、分離器等により分離除去されている。分離器のうちの一つとしてエアフィルタが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、油の除去効率を高めるために、フィルタ内に油吸着材を配している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−11367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧縮空気中に含まれる油はミスト状となっているのでその粒径は小さいものである。これをそのまま油吸着材で全てを吸着させることは困難であり、捕集漏れが生じるおそれがある。また、水も同様にミスト状になっているので、フィルタ通過後もドレンとして捕集されずにそのまま圧縮空気中に含まれて流通してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、圧縮空気中に含まれる油を確実に捕集して分離することができ、さらに水も確実にドレンとして捕集することができる圧縮空気用エアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、略中空筒形状に形成されているフィルタエレメントと、該フィルタエレメントの一方の端部に取り付けられている上蓋と、前記フィルタエレメントの他方の端部を閉塞して取り付けられている下蓋と、前記上蓋を貫通して形成され圧縮空気が流入する流入孔と、前記フィルタエレメント、前記上蓋、前記下蓋にて囲まれた内部空間と、該内部空間内に収容されて前記圧縮空気中の油を捕集するための疎水性材料からなる油捕集材と、前記内部空間内の前記流入孔に隣接した位置に収容され、ステンレス製の線状物を1又は複数本まとめて形成された塊状体とを備えたことを特徴とする圧縮空気用エアフィルタを提供する。
【0007】
好ましくは、前記線状物は、扁平なテープ形状である。
【0008】
好ましくは、前記線状物は、らせん状に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部空間の流入孔に隣接した位置に塊状体が収容されているので、エアフィルタを通過する圧縮空気は必ずこの塊状体を通過することになる。塊状体はステンレス製の線状物を1又は複数本まとめて形成されているので、内部に空隙を有し、この空隙を圧縮空気は通過する。このとき、圧縮空気中に含まれる微粒子状の水や油は塊状体に衝突し、接触して付着する。ブラウン運動によって微粒子は拡散し、油と水はそれぞれ凝集を繰り返して小滴となる。これにより、小滴化した油は内部空間内の油捕集材やフィルタエレメントで捕集されやすくなり、油の捕集効率が向上する。さらに、小滴化した水はフィルタエレメントを通過した際に自重で落下しやすくなり、ドレンとして捕集しやすくなって水の捕集効率も向上する。
【0010】
線状物を扁平なテープ状とすることで、圧縮空気が衝突する面積を増大させることができ、圧縮空気中の油や水の凝集効率を向上させることができる。特に扁平なテープ形状の線状物は圧縮空気を面で受け止めることができる
ので、圧縮空気の衝突確率及び付着確率も向上させることができる。
【0011】
さらに線状物をらせん状とすれば、塊状体は線状物が入り組まれて複雑な内部構造とすることができ、圧縮空気が通過する空隙の不規則化を助長させることができる。これにより、圧縮空気の塊状体に対する衝突確率をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る圧縮空気用エアフィルタの概略断面図である。
【
図2】本発明に係る圧縮空気用エアフィルタを用いた圧縮空気圧回路の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本発明に係る圧縮空気用エアフィルタ1は、略中空筒形状に形成されているフィルタエレメント2を備えている。このフィルタエレメント2は水を通過させ、油を捕集する材質、特性にて形成されている。フィルタエレメント2の一方の端部には上蓋3が、他方の端部には下蓋4がそれぞれ取り付けられている。上蓋3には流入孔5が形成されている。この流入孔5は上蓋3を貫通して形成されている。流入孔5を介して圧縮空気は圧縮空気用エアフィルタ1内に形成された内部空間6に流入する(矢印A方向)。すなわち、内部空間6は、フィルタエレメント2、上蓋3、下蓋4にて囲まれている。
【0014】
内部空間6には、油捕集材7と塊状体8とが収容されている。油捕集材7は、圧縮空気中の油を捕集するための疎水性材料からなり、例えばオイルを吸着する材質(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート等)で形成されている。塊状体8はステンレス製であり、細長い線状物が1又は複数本まとめられて形成されている。
【0015】
ここで、塊状体8は内部空間6内にて、流入孔5に隣接した位置に収容されている。すなわち、流入孔5は内部空間6側を塊状体8にて塞がれた構成となっている。したがって、矢印A方向に流入してくる圧縮空気は、必ず最初に塊状体8を通過することになる。このように、内部空間6の流入孔5に隣接した位置に塊状体8が収容されているので、圧縮空気用エアフィルタ1を通過する圧縮空気は必ずこの塊状体8を最初に通過することになる。塊状体8はステンレス製の線状物を1又は複数本まとめて形成されているので、その内部に空隙を有している。内部空間6内に流入した圧縮空気はこの塊状体8に形成された空隙を通過する。このとき、圧縮空気中に含まれる微粒子状の水や油は塊状体8を構成する線状物に衝突し、接触して付着する。同時にブラウン運動によっても微粒子は拡散し、圧縮空気に含まれている油と水はそれぞれ凝集を繰り返して小滴となる。これにより、小滴化した油は内部空間6内の油捕集材7や、その外側のフィルタエレメント2で捕集されやすくなり、油の捕集効率が向上する。
【0016】
なお、一般的に、フィルタエレメント2では3μm以上の油は捕集できる。圧縮空気中の油はそれ以下の粒径であるため、塊状体8によって油の粒径を3μm以上とできる。したがってフィルタエレメント2による濾過の性能保証としても有効である。また、油捕集材7が塊状体8の下部にあることで、多くの凝集した油は自重によりまずは油捕集材7に捕集される。これにより、フィルタエレメント2の目詰まりも防止でき、圧縮空気流通の圧力損失も低減できる。
【0017】
さらに、小滴化した水はフィルタエレメント2を通過した際にフィルタエレメント2に沿って自重で落下しやすくなる。小滴化した水はそのままフィルタエレメント2を伝って落下し、ドレンとして捕集しやすくなる。ドレンはドレントラップ15(
図2参照)等により捕集される。これにより、圧縮空気中に含まれる水の捕集効率も向上する。
【0018】
図2に示すように、圧縮空気用エアフィルタ1は圧縮空気圧回路9ではプレフィルタユニット10、ミストフィルタユニット11、活性炭フィルタユニット12が並べられて配される箇所に好適に利用できる。例えば圧縮空気圧回路9では圧縮空気中の不純物を大まかに除去するための粗取り用のプレフィルタユニット10、油分や水分等のミストを除去するミストフィルタユニット11、匂い除去のための活性炭フィルタユニット12を並べて配している。本発明に係る圧縮空気用エアフィルタ1は、特にプレフィルタユニット10内に配されるフィルタとして好適である。圧縮空気流通の際の圧力損失の原因となっている油や水を先に多く分離除去することで、圧縮空気圧回路9全体としての圧力損失を低減できるからである。
【0019】
なお、プレフィルタユニット10は、ヘッド13とボディ14とからなり、圧縮空気用エアフィルタ1はボディ14内に配される。ヘッド13には図示しない圧縮空気流路が形成されていて、入り口流路16は上蓋3の流入孔5と接続される。このとき、Oリング18により圧縮空気の漏れがないように接続される。入り口流路16からヘッド13を通って流入孔5より圧縮空気用エアフィルタ1内に流入した圧縮空気は、上述したように油と水を分離除去されてボディ14内の圧縮空気用エアフィルタ1の外側を通って上昇し、再びヘッド13を通って出口流路17から流出する。圧縮空気用エアフィルタ1を通過した際に圧縮空気中の水はドレントラップ15にて捕集される。
【0020】
上述した塊状体8を形成する線状物は、扁平なテープ形状であることが好ましい。線状物を扁平なテープ状とすることで、圧縮空気が衝突する面積を増大させることができ、圧縮空気中の油や水の凝集効率を向上させることができる。特に扁平なテープ形状の線状物は圧縮空気を面で受け止めることができるので、圧縮空気の衝突確率及び付着確率も向上させることができる。
【0021】
さらに、線状物をらせん状としてまとめて塊状体8を形成することが好ましい。線状物をらせん状とすれば、塊状体8は線状物が入り組まれて複雑な内部構造とすることができ、圧縮空気が通過する空隙の不規則化を助長させることができる。これにより、圧縮空気の塊状体8に対する衝突確率をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0022】
1:圧縮空気用エアフィルタ、2:フィルタエレメント、3:上蓋、4:下蓋、5:流入孔、6:内部空間、7:油捕集材、8:塊状体、9:圧縮空気圧回路、10:プレフィルタユニット、11:ミストフィルタユニット、12:活性炭フィルタユニット、13:ヘッド、14:ボディ、15:ドレントランプ、16:入り口流路、17:出口流路、18:Oリング
【要約】
【課題】圧縮空気中に含まれる油を確実に捕集して分離することができ、さらに水も確実にドレンとして捕集することができる圧縮空気用エアフィルタを提供する。
【解決手段】圧縮空気用エアフィルタ1は、略中空筒形状に形成されているフィルタエレメント2と、該フィルタエレメントの両端に取り付けられている上蓋3、下蓋4と、上蓋3を貫通して形成され圧縮空気が流入する流入孔5と、フィルタエレメント2、上蓋3、下蓋4にて囲まれた内部空間6と、内部空間6内に収容されて圧縮空気中の油を捕集するための疎水性材料からなる油捕集材7と、内部空間6内の流入孔5に隣接した位置に収容され、ステンレス製の線状物を1又は複数本まとめて形成された塊状体8とを備えている。
【選択図】
図1