(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検知システムは、前記第1期間における前記第2参照電波強度が前記第1閾値未満である場合には、前記空間外から進入した前記検知用信号が前記検知受信器で検知されていると判定する
請求項1〜5のいずれか1項に記載の検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0026】
まず、本実施の形態に係る検知システムの概略構成及び課題について説明する。
図1は、本実施の形態に係る検知システム100の構成を示す図である。
【0027】
この検知システム100は、対象者が予め定められた空間の出入り口106に接近したことを検知するためのシステムである。例えば、検知システム100は、病院、介護施設又は養護施設等である建物105における患者又は入居者が、徘徊により無断で建物105外に出ることを検知するためのシステムである。なお、出入り口106は、出口かつ入口の機能の両方を有してもよいし、いずれか一方の機能のみを有してもよい。
【0028】
また、以下では、建物105の出入り口106を例に説明するが、監視対象の領域は、任意の空間(領域)の出入り口であってもよい。つまり、移動体が出入り口106を通過することで、当該移動体は、予め定められた空間に入る又は当該空間から出ることになる。例えば、監視対象の領域は、施設等の敷地の出入り口(門)等であってもよいし、公園等の出入り口であってもよい。
【0029】
検知システム100は、発信器101と、検知受信器102と、参照受信器103と、管理装置104と、補助受信器109とを含む。
【0030】
発信器101は、監視対象者(例えば患者)に保持(携帯又は装着)される。例えば、発信器101は、監視対象者の腕に装着されるブレスレット型(腕時計型)、監視対象者の首にぶら下げられるネックレス型等である。または、発信器101は、名札型等であってもよい。なお、
図1では説明の簡略化のため、一つの発信器101のみを記載しているが、検知システム100は、複数の監視対象者に保持される複数の発信器101を含んでもよい。
【0031】
この発信器101は、定期的に検知用信号111を無線送信する。また、この無線送信で用いられる無線信号は、例えば、IEEE802.15.4に準拠する無線信号であり、例えば、2.4GHz帯、920MHz帯又は950MHz帯の無線信号である。つまり、当該検知システム100に用いられる無線信号は、比較的無線通信範囲が狭い(例えば200〜300m程度の)無線信号である。なお、Bluetooth(登録商標)などの他の無線信号が用いられてもよい。また、発信器101は、上記のいずれかの種類の無線信号を送信してもよいし、複数種類の無線信号を同時又は時分割で送信してもよい。
【0032】
検知受信器102は、対象者が出入り口106に接近したことを検知するために用いられる。検知受信器102は、建物105の出入り口106の近傍に配置されている。具体的には、検知受信器102は、警報領域107内に配置されている。警報領域107及び警戒領域108は、建物105内の領域であって、対象者の進入の検知対象の対象領域である。警報領域107は、出入り口106を含む、出入り口106の近傍の領域である。警戒領域108は、警報領域107の周辺の領域である。
【0033】
参照受信器103は、対象者が出入り口106に接近したことの検知を補助するために用いられる。具体的には、参照受信器103は、対象者が出入り口106に接近したことの検知を無効化するため、又は、検知精度を向上させるために用いられる。参照受信器103は、出入り口106に対して建物105の内部側に配置されている。具体的には、参照受信器103は、建物105内かつ警報領域107及び警戒領域108外に配置されている。
【0034】
補助受信器109は、建物105内かつ警報領域107及び警戒領域108外に配置されている。この補助受信器109は、対象者の建物105内の概略位置を検知するために用いられる。
【0035】
図2は、各装置間の接続関係を示す図である。なお、
図2では説明の簡略化のためそれぞれ一つの検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109のみを示している。
図2に示すように、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109は、発信器101から送信される検知用信号111を受信する。また、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109は、検知用信号111を受信した場合、通知信号112を管理装置104に送信する。
【0036】
なお、
図1では、出入り口106の両端に配置されている二つの検知受信器102を記載しているが、検知受信器102の数は任意でよく、一つの検知受信器102のみが配置されてもよいし、三つ以上の検知受信器102が配置されていてもよい。同様に、参照受信器103及び補助受信器109の数及び配置方法も任意でよい。また、複数の参照受信器103の全てが、必ずしも建物105内に配置される必要はなく、複数の参照受信器103の一部又は全てが建物105外に配置されてもよい。同様に複数の検知受信器102及び補助受信器109の一部又は全てが建物105外に配置されてもよい。
【0037】
また、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109から管理装置104への通知信号112の送信は任意の方法で行われてよく、有線又は無線のいずれの方法で行われてよい。また、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109から管理装置104へ直接、通知信号112が送信されてもよいし、他の機器を介して送信されてもよい。例えば、他の検知受信器102、他の参照受信器103、又は他の補助受信器109が中継機能を有し、当該他の検知受信器102、他の参照受信器103、又は他の補助受信器109を介して通知信号112が管理装置104へ伝送されてもよい。
【0038】
管理装置104は、例えば、建物105内に設置されているPC(パーソナルコンピュータ)である。この管理装置104は、検知受信器102及び参照受信器103から送信された通知信号112を受信し、通知信号112に含まれる情報を用いて、監視対象者が警報領域107又は警戒領域108に進入したかを検知する。
【0039】
具体的には、管理装置104は、検知受信器102で受信された検知用信号111の受信電波強度である対象電波強度と、参照受信器103で受信された検知用信号111の受信電波強度である参照電波強度とを用いて、監視対象者が警報領域107又は警戒領域108に進入したかを検知する。これにより、検知受信器102のみを用いる場合に比べて、より高精度で監視対象者の警報領域107又は警戒領域108に進入を検知できる。
【0040】
また、管理装置104は、補助受信器109から送信された通知信号112を受信し、通知信号112に含まれる情報を用いて、監視対象者が存在する位置を検知する。具体的には、管理装置104は、補助受信器109の設置位置を把握しており、検知用信号111を受信した補助受信器109の周辺に監視対象者が存在すると判定する。なお、管理装置104は、補助受信器109で受信された検知用信号111の受信電波強度である補助受信強度に応じて、発信器101が当該補助受信器109からどの程度の距離に存在するかを判定してもよい。
【0041】
なお、管理装置104の設置場所は任意でよく、建物105外であってもよい。また、管理装置104は、携帯端末等であってもよい。
【0042】
このようなシステムにおける課題を、
図3を用いて説明する。例えば、
図3に示すように、建物105の構造及び監視対象者(発信器101)の位置によっては、検知用信号111が建物105の外部を経由して検知受信器102で受信される場合が想定される。また、このように建物105の外部から進入する検知用信号111の電波強度は、発信器101の位置のみに依存するのではなく、周辺の状態に依存して変化する場合がある。例えば、窓或いはドアの開閉、又は、バス等の反射体181が出入り口106の近傍に停車する等により、通常では発生しない検知用信号111の回り込みが発生する場合がある。
【0043】
以下では、このような誤検知を抑制する方法について説明する。まず、各装置の構成を説明する。
【0044】
図4は、発信器101のブロック図である。この発信器101は、発信器ID記憶部121と、無線送信部122と、電源部123とを備える。
【0045】
発信器ID記憶部121は、当該発信器101を一意に特定するために情報である発信器ID(発信器識別子)161Aを記憶する。
【0046】
無線送信部122は、検知用信号111を定期的に無線送信する。
【0047】
電源部123は、当該発信器101に電力を供給する電源であり、例えば、電池又はバッテリー等である。つまり、発信器101は、外部からの電源供給を受けることなく、内部からの電源供給(又は内部で生成された電力)のみで動作可能である。
【0048】
図5は、検知用信号111の構成を示す図である。
図5に示すように検知用信号111は、当該検知用信号111の送信元の発信器101である送信元発信器を識別するための発信器ID161Bを含む。
【0049】
発信器ID161Bは、予め設定されており、発信器101の発信器ID記憶部121に記憶されている発信器ID161Aと同じものである。
【0050】
図6は、検知受信器102の構成を示すブロック図である。なお、参照受信器103及び補助受信器109の構成も検知受信器102と同様である。検知受信器102は、無線受信部131と、受信強度測定部132と、通知信号生成部133と、送信部134とを備える。
【0051】
無線受信部131は、発信器101から無線送信された検知用信号111を受信する。受信強度測定部132は、無線受信部131が受信した検知用信号111の受信電波強度を測定する。
【0052】
通知信号生成部133は、検知用信号111が受信された場合に通知信号112を生成する。送信部134は、通知信号112を管理装置104へ送信する。
【0053】
なお、検知受信器102の機能が、当該機能を機能別又は信号処理別に分割した複数の機器により実現されてもよい。
【0054】
図7は、通知信号112の構成を示す図である。
図7に示すように、通知信号112は、発信器ID161Cと、受信器ID162と、受信電波強度情報163とを含む。
【0055】
発信器ID161Cは、検知用信号111の送信元の発信器101を示す。例えば、発信器ID161Cは、検知用信号111に含まれる発信器ID161Bと同一のIDである。
【0056】
受信器ID162は、検知用信号111を受信した検知受信器102、参照受信器103又は補助受信器109であり、当該通知信号112の送信元の検知受信器102、参照受信器103又は補助受信器109を示す。
【0057】
受信電波強度情報163は、検知受信器102、参照受信器103又は補助受信器109で受信された検知用信号111の受信電波強度を示す。
【0058】
なお、通知信号112は、上記以外の情報を含んでもよい。例えば、通知信号112は、検知用信号111が受信された時刻を示す情報を含んでもよい。
【0059】
また、検知受信器102、参照受信器103又は補助受信器109は、検知用信号111を受信している期間のみに通知信号112を送信するのではなく、検知用信号111を受信しなかった場合には、検知用信号111を受信しなかった旨を示す通知信号112を送信してもよい。
【0060】
図8は、管理装置104の構成を示すブロック図である。管理装置104は、受信部141と、制御部142と、入力部143と、表示部144とを備える。
【0061】
受信部141は、検知受信器102、参照受信器103又は補助受信器109から送信された通知信号112を受信する。
【0062】
制御部142は、通知信号112に含まれる受信電波強度情報163を用いて、発信器101が、警報領域107又は警戒領域108に進入したかを判定する。また、制御部142は、通知信号112に含まれる受信電波強度情報163を用いて、発信器101の位置を検知する。
【0063】
入力部143は、ユーザ(管理者)による入力操作を受け付ける。
【0064】
表示部144は、発信器101の位置、警報及び警戒情報等を表示する。
【0065】
なお、管理装置104の機能は、複数の機器により実現されてもよい。例えば、管理装置104の機能の一部が、PCにより実現され、他の一部が、職員が携帯するスマートフォンにより実現されてもよい。
【0066】
また、上記説明では、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109と管理装置104とを個別に記載しているが、検知受信器102、参照受信器103又は補助受信器109と管理装置104とが単一の装置として構成されていてもよい。言い換えると、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109のうち少なくとも一つが管理装置104の少なくとも一部の機能を有してもよい。つまり、管理装置104の機能は、検知システム100に含まれる1又は複数の任意の装置により実現されてよい。
【0067】
以下、管理装置104による発信器101が警報領域107又は警戒領域108に進入したかを判定する処理について説明する。なお、発信器101が複数存在する場合には、発信器101ごとに以下の処理が行われる。
【0068】
図9は、管理装置104による判定処理のフローチャートである。例えば、
図9に示す処理は、所定の周期で最新の通知信号112に基づき繰り返し実行される。
【0069】
また、
図10〜
図12は、各動作例における、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109で受信された検知用信号111の電波強度である対象電波強度、参照電波強度及び補助電波強度の一例を示す図である。
図10は、通常の場合の動作例であり、発信器101が警報領域107に進入した場合の動作例を示す図である。
図11及び
図12は、発信器101が警報領域107に進入していない場合において、検知用信号111の回り込み等により、検知受信器102で検知用信号111が受信された場合の動作例を示す図である。なお、
図10〜
図12では、説明の簡略化のため警報に対する動作のみを記載し、警戒に対する動作は記載していない。
【0070】
なお、検知受信器102が複数存在する場合には、対象電波強度は、複数の検知受信器102の受信電波強度の平均値であってもよいし、最大値又は最小値であってもよい。また、平均値、最大値又は最小値は、異常値を示す受信電波強度を除く受信電波強度に基づき決定されてもよい。ここで異常値とは、予め定められた範囲外の値、又は、他の受信電波強度或いは平均値からの差が予め定められた値以上の値である。また、参照受信器103が複数存在する場合には、そのうちの一つの参照受信器103における参照電波強度が用いられてもよいし、検知受信器102に対する方法と同様の方法で参照電波強度が算出されてもよい。同様に、補助受信器109が複数存在する場合には、そのうちの一つの補助受信器109における補助電波強度が用いられてもよいし、検知受信器102に対する方法と同様の方法で補助電波強度が算出されてもよい。
【0071】
また、各受信電波強度として、時間軸方向の複数の受信電波強度の平均値、最大値、又は最小値が用いられてもよい。さらに、これらは、異常値を示す受信電波強度を除く受信電波強度に基づき決定されてもよい。
【0072】
まず、
図9及び
図10を用いて、発信器101が警報領域107に進入する通常の場合の動作例を説明する。
【0073】
管理装置104は、対象電波強度と参照電波強度とに基づき、対象者(発信器101)が警報領域107に進入したか否か(対象者が警報領域107内に存在するか否か)を判定する。また、管理装置104は、対象電波強度と参照電波強度とに基づき、対象者が警戒領域108に進入したか否か(対象者が警戒領域108内に存在するか否か)を判定する。
【0074】
具体的には、管理装置104は、対象電波強度が閾値th1以上であるかを判定する(S101)。ここで、閾値th1は、発信器101が警戒領域108に進入した際の検知受信器102の想定される最小の受信電波強度に対応する。つまり、ステップS101では、発信器101が警報領域107又は警戒領域108に進入した可能性があるか否かが判定される。
【0075】
対象電波強度が閾値th1未満の場合(S101でNo)、管理装置104は、発信器101が警報領域107及び警戒領域108のいずれにも進入しておらず、対象者が出入り口106に近接していないため異常なしと判定する(S108)。
【0076】
例えば、
図10の例では、対象者が建物105の内側から警報領域107に近接するため、まず、参照電波強度が高くなり、その後対象電波強度が高くなる。そして、時刻t0までの期間においては、対象電波強度が閾値th1より低いため異常なしと判定される。また、時刻t0において、対象電波強度が閾値th1以上になる。
【0077】
対象電波強度が閾値th1以上の場合(S101でYes)、管理装置104は、判定対象の期間又は時刻の直前の第1期間T1における参照電波強度が、予め定められた閾値th2(第1閾値)以上であるかを判定する(S102)。具体的には、管理装置104は、第1期間T1の少なくとも一部の期間において、参照電波強度が閾値th2であるかを判定する。つまり、第1期間T1において、参照受信器103が検知用信号111を受信したかが判定される。
【0078】
ここで、判定対象の期間又は時刻とは、所定の時間間隔行われる繰り返し処理における、現在の処理において判定処理の対象とする、各種データ(対象電波強度及び参照電波強度等)が得られた期間又は時刻である。つまり、処理に用いられる対象電波強度及び参照電波強度等は、ある同一時刻に得られたものであってもよいし、ある期間に含まれる異なる時刻に得られたものであってもよいし、ある期間に含まれる複数の時刻で得られたデータが算出されたもの(例えば、平均値又は補完値等)であってもよい。
【0079】
図10の例では、時刻t0の直前の第1期間T1において参照電波強度が閾値th2以上である(S102でYes)ため、ステップS103に進む。例えば、この第1期間T1の長さは、数十秒程度ある。なお、第1期間T1は、少なくとも判定対象の期間又は時刻より前の期間を含めばよい。例えば、第1期間T1に、判定対象の期間又は時刻の一部又は全てが含まれてもよい。また、第1期間T1は、判定対象の期間又は時刻は、直前の期間でなくてもよく、第1期間T1と判定対象の期間又は時刻との間に判定に用いられない期間が存在してもよい。
【0080】
第1期間T1における参照電波強度が閾値th2以上である場合(S102でYes)、管理装置104は、判定対象の期間又は時刻の直前の第2期間T2における補助電波強度が、予め定められた閾値th3(第4閾値)以上であるかを判定する(S103)。つまり、第2期間T2において、補助受信器109が検知用信号111を受信したかが判定される。
【0081】
図10の例では、時刻t0の直前の第1期間T1において参照電波強度が閾値th2未満である(S103でNo)ため、ステップS104に進む。例えば、この第2期間T2は、第1期間より長く、数十秒から数分程度ある。なお、第2期間T2は、少なくとも判定対象の期間又は時刻より前の期間を含めばよい。例えば、第2期間T2に、判定対象の期間又は時刻の一部又は全てが含まれてもよい。また、第2期間T2は、判定対象の期間又は時刻は、直前の期間でなくてもよく、第2期間T2と判定対象の期間又は時刻との間に判定に用いられない期間が存在してもよい。
【0082】
第2期間T2における補助電波強度が閾値th3未満である場合(S103でNo)、管理装置104は、対象電波強度及び参照電波強度を用いて、発信器101が警報領域107に進入したかを判定する。
【0083】
具体的には、管理装置104は、参照電波強度に予め定められた係数α(第1係数)を乗算することで得られた第1乗算値が、対象電波強度以下であるかを判定する(S104)。言い換えると、管理装置104は、参照電波強度に対する対象電波強度の比が予め定められた値より大きいかを判定する。例えば、係数αが1の場合には、発信器101が参照受信器103よりも検知受信器102に近づいた場合に、上記条件が満たされる。
【0084】
参照電波強度に係数αを乗算した値が、対象電波強度以下である場合(S104でYes)、管理装置104は、発信器101が警報領域107に進入したと判定し、警報を提示する(S106)。例えば、管理装置104の表示部144に、発信器101を所持する対象者が警報領域107に進入した旨が表示される。なお、管理装置104から警報音等が出力されてもよい。また、音声及び振動等により警報が提示されてもよい。
【0085】
さらに、この警報は、管理者及び職員に通知されるだけでなく、対象者に通知されてもよい。例えば、発信器101又は検知受信器102から、警報音又はメッセージが出力されてもよいし、発信器101又は検知受信器102が備える発光部が点滅する等、どのような手法が用いられてもよい。また、建物105に設置されている他の機器、又は、対象者或いは職員が所持する機器等により警報が提示されてもよい。なお、管理装置104以外の機器から警報を提示する場合には、管理装置104から警報を示す信号がこれらの機器に送信され、各機器はこの信号に基づき、警報を提示する。
【0086】
図10の例では、時刻t1において上記条件が満たされることで警報が通知される。
【0087】
一方、第1乗算値が対象電波強度より大きい場合(S104でNo)、管理装置104は、対象電波強度及び参照電波強度を用いて、発信器101が警戒領域108に進入したかを判定する。
【0088】
具体的には、管理装置104は、参照電波強度に予め定められた係数β(第2係数)を乗算することで得られた第2乗算値が、対象電波強度以下であるかを判定する(S105)。言い換えると、管理装置104は、参照電波強度に対する対象電波強度の比が予め定められた値より大きいかを判定する。ここで係数βは係数αより小さい。
【0089】
第2乗算値が対象電波強度以下である場合(S105でYes)、管理装置104は、発信器101が警戒領域108に進入したと判定し、警戒情報を提示する(S107)。例えば、管理装置104の表示部144に、発信器101を所持する対象者が警戒領域108に進入した旨が表示される。なお、警戒情報の提示方法として、上述した警報の提示方法と同様の手法を用いることができる。
【0090】
ただし、警戒は警報よりも緊急度が低いため、提示方法もより簡略化されるのが一般的である。例えば、警報時には、メッセージに加え、警報音が出力され、警戒時にはメッセージのみが提示されてもよい。または、警戒時には、管理装置104のみで提示が行われ、警報時には、管理装置104に加え、発信器101等の他の機器での提示が行われてもよい。このように、検知システム100は、対象者が警戒領域108に進入したと判定した場合、第1警告を発し、対象者が警報領域107に進入したと判定した場合、第1警告より強い第2警告を発する。
【0091】
また、第2乗算値が対象電波強度より大きい場合(S105でNo)、管理装置104は、発信器101が警報領域107及び警戒領域108のいずれにも進入しておらず、対象者が出入り口106に近接していないため異常なしと判定する(S108)。
【0092】
以上のように、本実施の形態に係る検知システム100では、出口付近に配置された検知受信器102の受信電波強度に加え、参照受信器103での受信電波強度を用いて、発信器101が所定の領域に進入したかを判定する。これにより、発信器101の状態によらない高精度の検知を実現できる。
【0093】
次に、
図9、
図11及び
図12を用いて、発信器101が警報領域107に進入していないが、回り込み等により検知受信器102で検知用信号111が受信される場合の動作を説明する。まず、
図11の例を説明する。
【0094】
図11の例では、時刻t2において、対象電波強度及び参照電波強度に基づく発信器101の警報領域107の進入条件(S104)が満たされる。一方で、
図10の例と異なり、発信器101が参照受信器103の近傍を経由して検知受信器102の近傍に達したわけではないので、時刻t2の直前の期間T1において、参照電波強度は閾値th2未満である(S102でNo)。この場合、管理装置104は、建物105外から出入り口106又は他の領域(壁或いは窓等)を介して進入した検知用信号111が検知受信器102で検知されている(誤検知)と判定する。つまり、管理装置104は、発信器101が警報領域107及び警戒領域108のいずれにも進入しておらず、対象者が出入り口106に近接していないため異常なしと判定する(S108)。
【0095】
なお、この場合、建物105内から対象者が警報領域107に到達する場合には、参照受信器103で閾値th2以上となる検知用信号111が受信される必要がある。言い換えると、複数の参照受信器103は、建物105内から対象者が警報領域107に到達する、あらゆる経路をカバーするように配置される必要がある。
【0096】
このように、管理装置104は、判定対象の期間又は時刻より前の期間を含む第1期間T1における参照電波強度が閾値th2未満である場合には、判定対象の期間又は時刻において対象者(発信器101)が対象領域(警報領域107又は警戒領域108)に進入していないと判定する。これにより、建物105外からの検知用信号111の回り込み等に起因する誤動作を抑制できる。
【0097】
一方で、検知用信号111の回り込みが参照受信器103にも影響を与える可能性がある。
図12は、この場合の動作例を示す図である。
【0098】
図12の例では、時刻t3において、対象電波強度及び参照電波強度に基づく発信器101の警報領域107の進入条件(S104)が満たされる。また、回り込み等の影響により、時刻t3付近において参照電波強度が閾値th2以上になっている。よって、上記
図11で示した動作(
図9のステップS102)では、誤検知を除外することができない。
【0099】
一方で、管理装置104は、ステップS103において、判定対象の期間又は時刻より前の期間を含む第2期間T2における補助電波強度が閾値th3以上であるかを判定し、第2期間T2における補助電波強度が閾値th3以上である場合(S103でYes)、建物105外から出入り口106又は他の領域(壁或いは窓等)を介して進入した検知用信号111が検知受信器102で検知されている(誤検知)と判定する。つまり、管理装置104は、発信器101が警報領域107及び警戒領域108のいずれにも進入しておらず、対象者が出入り口106に近接していないため異常なしと判定する(S108)。
【0100】
つまり、管理装置104は、検知受信器102で検知用信号111が検知された場合であっても、補助電波強度に基づき、発信器101が警報領域107外に存在すると判断できる場合には、誤検知と判定する。よって、期間T2の長さは、補助受信器109と警報領域107との距離に応じて決定されてもよい(距離が長いほど期間T2は長くなる)。また、期間T2は、補助受信器109毎に異なる長さが設定されてもよい。また、この補助電波強度の判定は、全ての補助受信器109に対して行う必要はなく、警報領域107との距離が所定値以上の補助受信器109のみに対して行われてもよい。
【0101】
このように、管理装置104は、判定対象の期間又は時刻より前の期間を含む第2期間T2における補助電波強度が閾値th3以上である場合には、判定対象の期間又は時刻において対象者(発信器101)が対象領域(警報領域107又は警戒領域108)に進入していないと判定する。これにより、建物105外からの検知用信号111の回り込み等に起因する誤動作を抑制できる。
【0102】
また、上記説明では、複数の検知受信器102が存在する場合に、複数の検知受信器102における電波強度から一つの対象電波強度が算出される例を述べたが、複数の検知受信器102の各々の電波強度に対して、上記処理が行われてもよい。この場合、少なくとも一つの検知受信器102の電波強度に基づき、対象者が警報領域107又は警戒領域108に進入したと判定された場合に、警報又は警戒情報が提示される。
【0103】
また、複数の検知受信器102又は複数の参照受信器103が存在する場合には、例えば、検知受信器102ごとに参照受信器103が設定され、検知受信器102ごとに設定された参照受信器103ごとに係数α及びβが設定される。
【0104】
また、誤検知の判定(S102)に用いられる参照受信器103と、対象領域(警報領域107及び警戒領域108)への進入判定(S104及びS105)に用いられる参照受信器103とは、同一の受信器であっても異なる受信器であってもよい。例えば、対象領域(警報領域107及び警戒領域108)への進入判定(S104及びS105)に用いられる参照受信器103の一部が、誤検知の判定(S102)に用いられてもよい。または、参照受信器103とは異なる誤検知の判定専用の受信器が用いられてもよい。
【0105】
また、発信器101が複数存在する場合には、発信器101ごとに係数α及びβが設定されてもよいし、発信器101ごとに係数α又はβを補正するための係数が設定されてもよい。例えば、発信器101の携帯方法に応じた係数が設定されてもよい。携帯方法とは、例えば、発信器101がブレスレット型又はネックレス型であり、発信器101が露出する携帯方法と、ポケット又は鞄等の中に収容され発信器101が露出しない携帯方法等である。また、上記と同様の手法により、発信器101ごとに閾値が設定されてもよい。
【0106】
また、上記説明では、参照電波強度に係数α又はβを乗算した乗算値と、受信電波強度とが比較されているが、乗算値の代わりに、参照電波強度に予め定められた1以上の係数を演算した演算値が用いられてもよい。ここで、演算は、乗算及び加算(減算)の少なくとも一方を含む。
【0107】
また、上記説明では、参照電波強度を用いた誤検知の判定(S102)と、補助電波強度を用いた誤検知の判定(S103)と、対象電波強度及び参照電波強度を用いた対象領域(警報領域107及び警戒領域108)への進入判定(S104及びS105)とをこの順に行う例を述べたが、これらの処理順序は任意でよい。例えば、対象領域(警報領域107及び警戒領域108)への進入判定(S104及びS105)で進入あり(S104でYes、又はS105でYes)と判定された場合に、誤検知の判定(S102又はS103)が行われてもよい。
【0108】
また、誤検知の判定(S102及びS103)において誤検知と判定された場合(S102でNo、又はS103でYes)、又は、対象領域への進入判定(S104及びS105)で進入ありと判定され、かつ誤検知と判定された場合に、上記判定処理を行わない無効期間を設け、当該無効期間が経過したのちに判定処理を再開してもよい。
【0109】
また、上記説明では、参照電波強度を用いた誤検知の判定(S102)と、補助電波強度を用いた誤検知の判定(S103)との両方が行われているがいずれか一方のみが行われてもよい。また、補助電波強度を用いた誤検知の判定(S103)が行われない場合には、検知システム100は、補助受信器109を含まなくてもよい。
【0110】
また、誤検知が検知された場合(S102でNo又はS103でYes)、誤検知が発生した旨が通知されてもよい。また、警報又は警戒の通知とともに、誤検知の可能性が高い旨が通知されてもよい。
【0111】
また、上記説明では、対象電波強度と参照電波強度との比に基づき判定が行われたが、
図13に示すように、対象電波強度及び参照電波強度と閾値との比較に基づき判定を行ってもよい。なお、
図13に示す処理は、
図9に示す処理に対して、ステップS104及びS105が、S104A及びS105Aに置き換えられている点が異なる。
【0112】
つまり、第2期間T2における補助電波強度が閾値th3未満である場合(S103でNo)、管理装置104は、対象電波強度が予め定められた第1閾値以上であり、かつ、参照電波強度が予め定められた第2閾値未満であるかを判定する(S104A)。
【0113】
対象電波強度が第1閾値以上であり、かつ、参照電波強度が第2閾値未満である場合(S104AでYes)、管理装置104は、発信器101が警報領域107に進入したと判定し、警報を提示する(S106)。
【0114】
一方、対象電波強度が第1閾値未満である場合、又は、参照電波強度が第2閾値以上である場合(S104AでNo)、管理装置104は、対象電波強度が予め定められた第3閾値以上であり、かつ、参照電波強度が予め定められた第4閾値未満であるかを判定する(S105A)。
【0115】
対象電波強度が第3閾値以上であり、かつ、参照電波強度が第4閾値未満である場合(S105AでYes)、管理装置104は、発信器101が警戒領域108に進入したと判定し、警戒情報を提示する(S107)。
【0116】
また、対象電波強度が第3閾値未満、又は、参照電波強度が第4閾値以上である場合(S105AでNo)、管理装置104は、発信器101が警報領域107及び警戒領域108のいずれにも進入しておらず、対象者が出入り口106に近接していないため異常なしと判定する(S108)。
【0117】
この処理の場合には、発信器101の状態に応じて、検知する対象の領域が変動するものの、参照電波強度を用いない場合に比べ、変動を低減できる。また、この処理では、各受信電波強度と閾値との判定のみが行われ、対象電波強度と参照電波強度との比較は行われない。よって、検知受信器102又は参照受信器103において閾値との比較を行うことができる。これにより、例えば、条件が満たされる場合にのみ通知信号112を管理装置104に送ればよいので通信データ量を削減できるという利点がある。
【0118】
また、一部の参照受信器103が警戒領域108内に設置されてもよい。また、上記説明では、検知受信器102、参照受信器103及び補助受信器109を個別に記載しているが、一つの受信器が、検知用、参照用及び補助用の少なくとも二つを兼ねてもよい。
【0119】
また、上記説明では、各領域への進入のみが検知されているが、これに加え、対象者(発信器101)の移動方向が検知されてもよい。つまり、管理装置104は、対象電波強度及び参照電波強度の時間変化に基づき、対象者の移動方向を推定してもよい。具体的には、
図2に示す例では、対象電波強度が増加し、参照電波強度が減少している場合には、管理装置104は、対象者が出入り口106に向かって移動していると判定する。また、対象電波強度が減少し、参照電波強度が増加している場合には、管理装置104は、対象者が出入り口106から離れる方向に向かって移動していると判定する。
【0120】
なお、検出された移動方向(出入り口106に向かっている等)は、例えば、警報又は警戒情報等とあわせて表示される。また、移動方向に応じて、警報及び警戒の種類が変更されてもよい。例えば、対象者が警戒領域108に存在する場合において、対象者が出入り口106に向かっている場合にはそうでない場合に比べて強い警戒が呼びかけられてもよい。
【0121】
また、管理装置104は、対象者が出入り口106を通過したことを検知してもよい。つまり、管理装置104は、対象電波強度及び参照電波強度の時間変化に基づき、対象者が出入り口106を通過したかを判定する。具体的には、対象電波強度が増加し、かつ参照電波強度が減少した後、対象電波強度が減少し、参照電波強度がさらに減少した場合、管理装置104は、対象者が出入り口106を出たと判定する。また、対象電波強度が増加し、かつ参照電波強度が増加した後、対象電波強度が減少し、参照電波強度がさらに増加した場合、管理装置104は、対象者が出入り口106を入ったと判定する。
【0122】
以上のように、検知システム100は、判定対象の期間又は時刻において検知受信器102で受信した検知用信号111の受信電波強度である対象電波強度と、判定対象の期間又は時刻において、1以上の参照受信器103に含まれる第1参照受信器で受信した検知用信号111の電波強度である第1参照電波強度とに基づき、判定対象の期間又は時刻において移動体が対象領域(警報領域107又は警戒領域108)に進入したか否かを判定する第1判定処理(
図9のS104及びS105)と、判定対象の期間又は時刻より前の期間を含む第1期間T1において、1以上の参照受信器103に含まれ、第1参照受信器と同一又は異なる第2参照受信器で受信した検知用信号111の受信電波強度である第2参照電波強度が、予め定められた第1閾値th2以上であるかを判定する第2判定処理(S102)とを行う。
【0123】
さらに、検知システム100は、第2判定処理において第1期間T1における第2参照電波強度が第1閾値th2未満であると判定された場合(S102でNo)には、第1判定処理(S104及びS105)の結果にかかわらず判定対象の期間又は時刻において移動体が対象領域に進入していないと判定する(S108)。
【0124】
また、検知システム100は、判定対象の期間又は時刻より前の第2期間T2において補助受信器109で受信した検知用信号111の電波強度である補助電波強度が、予め定められた第4閾値th3以上であるか判定する第3判定処理(S103)を行う。検知システム100は、第3判定処理において第2期間T2における補助電波強度が第4閾値th3以上であると判定された場合(S103でYes)には、第1判定処理の結果にかかわらず判定対象の期間又は時刻において移動体が対象領域に進入していないと判定する(S108)。
【0125】
また、さらに誤検知を回避するために、以下の処理を行ってもよい。上述した処理では、使用環境等に応じて誤検知が発生する場合がある。これは、例えば、費用面、又は設置位置等の制約により参照受信器103及び補助受信器109を十分な数設置できない場合などである。具体的には、建物105の一階に出入り口106が設けられており、出入り口106の上の二階に居室等が設けられている場合である。この場合、二階にいる対象者が保持する発信器101からの検知用信号111が、屋外の反射、又は床を貫通することにより、検知受信器102及び参照受信器103に到達する可能性がある。例えば、二階において対象者が、参照受信器103の上方から出入り口106(検知受信器102)の上方へ移動した場合などである。これにより、対象者が出入り口106に接近していないにも関わらず警報が通知されてしまう可能性がある。
【0126】
図14は、検知システム100の変形例である検知システム100Aの構成を示す図である。
図14に示す検知システム100Aは、さらに、通過検知受信器191と、参照受信器192とを含む。通過検知受信器191及び参照受信器192の機能は、例えば、上述した検知受信器102及び参照受信器103と同様である。通過検知受信器191及び参照受信器192は、検知用信号111を受信し、受信結果を示す通知信号112を管理装置104に送信する。
【0127】
通過検知受信器191は、対象者が屋内から出入り口106に向かう際に、必ず通過する経路に配置される。例えば、通過検知受信器191は、建物105内かつ警報領域107及び警戒領域108外に配置される。参照受信器192は、通過検知受信器191の周辺に配置される。
【0128】
図15は、この場合の管理装置104による判定処理のフローチャートである。なお、
図15に示す処理は、
図9に示す処理に対して、ステップS109が追加されている。また、
図16及び
図17は、この場合の動作例を示す図である。なお、以下では、通過検知受信器191で受信された検知用信号111の受信電波強度を通過電波強度と呼ぶ。
【0129】
ステップS109において、管理装置104は、判定対象の期間又は時刻より前の期間を含む第3期間T3において、通過電波強度と参照電波強度とに基づき、対象者(発信器101)が通過検知受信器191の近傍を通過したかを判定する。具体的には、管理装置104は、第3期間T3において通過受信強度が閾値th4以上であり、かつ、通過電波強度及び参照電波強度に基づき、発信器101が通過検知受信器191の近傍に存在すると判定される場合である。ここで、参照電波強度とは、
図14に示す参照受信器192及び103で検知された検知用信号111の受信電波強度である。また、通過電波強度及び参照電波強度に基づく判定方法としては、例えば、ステップS104と同様に、通過電波強度と参照電波強度との比を用いる方法、又は、
図13AのステップS104Aと同様に、通過電波強度及び参照電波強度の各々と閾値とを比較する方法を用いることができる。また、第3期間T3は、第1期間T1より長く、例えば、数十秒から数分程度ある。なお、第3期間T3は、少なくとも判定対象の期間又は時刻より前の期間を含めばよい。例えば、第3期間T3に、判定対象の期間又は時刻の一部又は全てが含まれてもよい。また、第3期間T3は、判定対象の期間又は時刻は、直前の期間でなくてもよく、第3期間T3と判定対象の期間又は時刻との間に判定に用いられない期間が存在してもよい。
【0130】
第3期間T3において、対象者が通過検知受信器191の近傍を通過していない場合(S191でNo)、管理装置104は、判定対象の期間又は時刻において対象者が警報領域107及び警戒領域108に進入していないと判定する(S108)。
【0131】
図16は、通常の場合の動作例であり、発信器101が警報領域107に進入した場合の動作例を示す図である。
図17は、発信器101が警報領域107に進入していない場合において、検知用信号111の回り込み等により、検知受信器102及び参照受信器103で検知用信号111が受信された場合の動作例を示す図である。
【0132】
図16の例では、対象者が建物105の内側から通過検知受信器191の近傍を通過して、警報領域107に近接するため、まず、通過電波強度が高くなり、その後参照電波強度が高くなり、その後対象電波強度が高くなる。つまり、対象電波強度に基づき検知(S104でYes)と判定される時刻t4において、第1期間T1の参照電波強度が閾値th2より高く(S102でYes)、かつ、第3期間において通過が検知されている(S109でYes)ため、警報が通知される(S106)。
【0133】
一方、
図17の例では、例えば、対象者が出入り口106の上方の二階に存在しており、回り込み等により、参照順電波強度及び対象電波強度が検知の条件を満たす(S102でYes、かつ、S104でYes)。ただし、この場合には、通過検知受信器191により通過が検知されていない(S109でNo)ので、誤検知と判定され、警報は通知されない(S108)。
【0134】
このように、上記手法を用いることで、さらに誤検知を抑制できる。
【0135】
なお、ここでは、通過検知受信器191が1個のみ配置される例を述べたが、通過検知受信器191は複数配置されてもよい。また、ここでは、参照受信器103が検知受信器102及び通過検知受信器191の両方の参照用に用いられているが、必ずしも兼用される必要はない。また、ここでは、検知受信器102、参照受信器103及び192、並びに通過検知受信器191を区別して記載しているが、これらのうちの複数の受信器の機能を一つの受信器で兼用してもよい。例えば、
図14に示す参照受信器103を通過検知受信器191として用いてもよい。この場合には、検知受信器102を通過検知受信器191に対する参照受信器192として用いてもよい。また、この場合には、二階での誤検知を防止するために、二階に通過検知受信器191に対する参照受信器を設置してもよい。
【0136】
また、
図15では、参照電波強度を用いた誤検知の判定(S102)と、補助電波強度を用いた誤検知の判定(S103)と、通過電波強度を用いた誤検知の判定(S109)と、対象電波強度及び参照電波強度を用いた対象領域(警報領域107及び警戒領域108)への進入判定(S104及びS105)とをこの順に行う例を述べたが、これらの処理順序は任意でよい。
【0137】
また、
図15では、参照電波強度を用いた誤検知の判定(S102)と、補助電波強度を用いた誤検知の判定(S103)と、通過電波強度を用いた誤検知の判定(S109)とが行われているがいずれか一つ又は二つのみが行われてもよい。
【0138】
以上のように、検知システム100Aは、判定対象の期間又は時刻より前の第3期間T3において、1以上の参照受信器に含まれる通過検知受信器191で受信した検知用信号111の受信電波強度である通過電波強度と、1以上の参照受信器に含まれ、通過検知受信器191と異なる第3参照受信器(参照受信器192)で受信した検知用信号111の受信電波強度である第3参照電波強度とに基づき、移動体が通過検知受信器191の近傍を通過したかを判定する第4判定処理を行う(S109)。検知システム100Aは、第4判定処理において、第3期間T3において、移動体が通過検知受信器191の近傍を通過していないと判定された場合(S109でNo)には、第1判定処理の結果にかかわらず判定対象の期間又は時刻において移動体が前記対象領域に進入していないと判定する(S108)。
【0139】
以上、本発明の実施の形態に係る検知システム100及び100Aについて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0140】
例えば、上記実施の形態では、二つの対象領域(警報領域107及び警戒領域108)への発信器101の進入を検知する例を述べたが、警報領域107への発信器101の進入のみが検知されてもよし、三つ以上の対象領域への発信器101の進入が検知されてもよい。
【0141】
また、上記説明では、対象者(患者等)が建物の出入り口に接近したことを検知する例を述べたが、建物の出口(出入り口)に限らず、対象者が予め定められた空間に進入したことを検知するシステムにも本発明を適用できる。また、対象者は、患者等に限らず、発信器101を保持する移動体であってもよい。例えば、監視対象は、動物又は移動可能な機械等であってもよい。
【0142】
また、通知信号112を無線送信する方法として以下の方法を用いることができる。複数の受信器(1以上の検知受信器102、1以上の参照受信器103及び1以上の補助受信器109を含む)には、送信順序が設定される。送信順が1番目の受信器は、所定の時間周期で通知信号112を無線送信する。送信順が2番目の受信器は、送信順が1番目の受信器が送信した通知信号112を受信したことを検知し、当該通知信号112を受信してから予め定められた時間後に通知信号112を無線送信する。送信順が3番目の受信器は、送信順が2番目の受信器が送信した通知信号112を受信したことを検知し、当該通知信号112を受信してから予め定められた時間後に通知信号112を無線送信する。以降の受信器も同様に、直前の受信器から送信された通知信号112をトリガとして通知信号112を送信する。これにより、電波が衝突することなく全ての無線通信を短時間の間に行うことができる。
【0143】
また、各通知信号112は、0個以上の受信情報(発信器ID161C及び受信電波強度情報163)を含む。各受信器は、前回の通知信号112の送信から次回の送信までの間に受信した検知用信号111の受信情報を保持し、次回の送信において保持している全ての受信情報を含む通知信号112を送信する。管理装置104は、各周期において、受信した複数の通知信号112に含まれる同じ発信器ID161Cを有する受信情報を用いて当該発信器ID161Cに対応する発信器101に対する判定を行う。また、検知用信号111には発信毎に増加する連続番号が含まれもよい。この場合、この連続番号は、通知信号112にも含まれる。管理装置104は、同じ発信器ID161Cを有し、かつ同じ連続番号を有する受信情報を用いて判定を行う。このような手法を用いることで信頼性の高い判定を行える。
【0144】
また、上記説明では、所定の条件が満たされた場合に、警戒又警報が提示されているが、発信器101の状態の変化、又は電波の反射などの影響により、検知受信器102と参照受信器103との受信強度に誤差が生じる可能性がある。これにより、誤検知が発生する可能性がある。このような誤検知を防ぐために以下の処理が行われてもよい。
【0145】
例えば、管理装置104は、複数回(例えば2回)連続で警戒又は警報と判定された場合に、警戒又は警報を提示してもよい。また、管理装置104は、受信電波強度の変化が大きい場合には警戒又は警告を提示しなくてもよい。例えば、受信電波強度が直前の複数回(例えば3回)の受信電波強度の平均値より所定の値以上又は所定倍率以上(例えば2倍以上)大きい場合には、警戒又は警告を提示しなくてもよい。または、管理装置104は、移動平均を用いてもよい。これらにより、ノイズの影響による急激な受信電波強度の変化による誤検知の発生を抑制できる。
【0146】
また、上記実施の形態に係る検知システムに含まれる各装置に含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0147】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0148】
また、上記実施の形態に係る検知システムに含まれる各装置の機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0149】
さらに、本発明は上記プログラムであってもよいし、上記プログラムが記録された非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0150】
また、本発明は検知システムとして実現できるだけでなく、検知システムに含まれる発信器、受信器、参照受信器又は管理装置として実現してもよい。また、本発明は、このような検知システムに含まれる特徴的な手段をステップとする検知方法として実現したり、そのような特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。
【0151】
また、上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【0152】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0153】
また、上記フローチャートで示すステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0154】
以上、一つまたは複数の態様に係る検知システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。