(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343815
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】光受信機
(51)【国際特許分類】
H04B 10/69 20130101AFI20180611BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
H04B10/69 130
H01L31/10 G
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-248978(P2013-248978)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-106867(P2015-106867A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】平田 光司
(72)【発明者】
【氏名】楠見 真希
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−124375(JP,A)
【文献】
特開2011−029755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送システムにおいて光信号を電気信号に変換し出力する光受信機において、
入力された光信号を電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部で変換された前記電気信号のレベルを調整するレベル調整部と、
前記光電変換部で受光した光信号のレベルを検出し、該光信号のレベルに応じて前記レベル調整部を制御する制御部と、
前記光信号のレベルに対応する前記レベル調整部の制御情報を記憶する記憶部と、を有し、
前記記憶部には、所定レベルの光信号を前記光電変換部に入力した際に前記制御部で検出される光信号のレベルと前記所定レベルとの差分情報が記憶され、
前記制御部は外部からの所定の指令を受信可能とされ、前記制御部が誤差補正の指令を受信すると、前記制御部は、前記光電変換部に入力された光信号のレベルを検出すると共に、該検出した光信号のレベルと、誤差補正の指令受信時において検出すべき当該光信号の本来のレベルとして前記記憶部に記憶されている所定値との差を算出して前記差分情報として前記記憶部に記憶し、
前記制御部は、検出した前記光信号のレベルに前記記憶部に記憶された前記差分情報を適用し、該差分情報を適用した光信号のレベルに応じて前記レベル調整部を制御することを特徴とする光受信機。
【請求項2】
前記記憶部は光信号のレベル毎に対応する制御情報をテーブル状に記憶し、前記制御部は、検出された光信号のレベルに前記差分情報を加算し、該加算した光信号のレベルに対応する制御情報を前記記憶部から参照することを特徴とする請求項1記載の光受信機。
【請求項3】
前記制御部には複数の状態を表示可能な表示部が接続され、前記記憶部は光信号のレベル毎に前記表示部の表示状態の情報をさらに記憶し、前記制御部は、前記差分情報を加算した光信号のレベルに対応する前記表示部の表示状態の情報を前記記憶部から参照すると共に、該情報に基づいて前記表示部の表示状態を制御することを特徴とする請求項2記載の光受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムにおいて光信号を受信し電気信号に変換して出力する光受信機に関し、特に入力された光信号を電気信号に変換する際に、入力レベルの変動に関わらず出力レベルが一定レベルとなるように自動的に調整可能な光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーを用いた光伝送システムにおいては、受信者側に光受信機が配置される。光受信機は、光信号を電気信号に変換する機能を有しており、光信号によって伝送されたRF信号やFM信号を出力する。地震などの災害に関する情報や地域の情報、あるいは行政情報などを伝達する告知放送システムにおいて、かかる光受信機が広く用いられている。
【0003】
光受信機で受信し変換された電気信号であるRF信号は、増幅器によって増幅された後、AGC(自動利得制御:Auto Gain Controller)によってレベル調整される。AGCは、光信号の入力レベルの変動に関わらず、RF信号の出力レベルが一定となるように自動的に調整を行うものである。
【0004】
光受信機には、AGCの制御を行う制御部が設けられ、この制御部は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードから光信号のレベルを得て、この光信号のレベルに応じた制御電圧をAGCに出力する。AGCでは、制御部からの制御電圧に応じたレベルとなるようにRF信号のレベルが調整される。このようにAGCを備えた光受信機としては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−26636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光受信機としては、所定の受光レベル範囲において出力されるRF信号のレベルが一定となるようにAGCの仕様を決定している。しかし、光受信機のフォトダイオードや増幅器には誤差があり、制御部で検出する光信号の入力レベルの値をそのまま用いて制御電圧の出力を行うと、AGCからの出力レベルに誤差を生じることとなる。従来は、基準となる光信号を光受信機に入力し、制御部の直前で検出される光信号のレベルを測定し、光信号のレベルと制御情報とを対応付けたテーブルを修正するなどして、誤差が制御に影響しないように調整していた。このため、光受信機の調整に手間がかかっていた。
【0007】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、AGCの制御に用いる光信号レベルの測定値の補正を、手間をかけることなく簡単に行うことのできる光受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係る光受信機は、光伝送システムにおいて光信号を電気信号に変換し出力する光受信機において、
入力された光信号を電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部で変換された前記電気信号のレベルを調整するレベル調整部と、
前記光電変換部で受光した光信号のレベルを検出し、該光信号のレベルに応じて前記レベル調整部を制御する制御部と、
前記光信号のレベルに対応する前記レベル調整部の制御情報を記憶する記憶部と、を有し、
前記記憶部には、所定レベルの光信号を前記光電変換部に入力した際に前記制御部で検出される光信号のレベルと前記所定レベルとの差分情報が記憶され、
前記制御部は外部からの所定の指令を受信可能とされ、前記制御部が誤差補正の指令を受信すると、前記制御部は、前記光電変換部に入力された光信号のレベルを検出すると共に、該検出した光信号のレベルと、誤差補正の指令受信時において検出すべき当該光信号の本来のレベルとして前記記憶部に記憶されている所定値との差を算出して前記差分情報として前記記憶部に記憶し、
前記制御部は、検出した前記光信号のレベルに前記記憶部に記憶された前記差分情報を適用し、該差分情報を適用した光信号のレベルに応じて前記レベル調整部を制御することを特徴として構成されている。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、光電変換部等による光信号のレベルの誤差を修正したレベル調整部の制御を行うことができ、レベル調整部による信号レベル調整を正確に行うことができる。
また、制御部で測定される光信号レベルの誤差を自動的に取得し、通常の動作時にも適用することができるので、光受信機の調整を簡単にすることができる。
【0012】
さらに、請求項3の発明に係る光受信機は、前記記憶部は光信号のレベル毎に対応する制御情報をテーブル状に記憶し、前記制御部は、検出された光信号のレベルに前記差分情報を加算し、該加算した光信号のレベルに対応する制御情報を前記記憶部から参照することを特徴として構成されている。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、テーブルを変更することなく簡易な処理で光信号のレベルの誤差を修正したレベル調整部の制御を行うことができる。
【0014】
さらにまた、請求項4の発明に係る光受信機は、前記制御部には複数の状態を表示可能な表示部が接続され、前記記憶部は光信号のレベル毎に前記表示部の表示状態の情報をさらに記憶し、前記制御部は、前記差分情報を加算した光信号のレベルに対応する前記表示部の表示状態の情報を前記記憶部から参照すると共に、該情報に基づいて前記表示部の表示状態を制御することを特徴として構成されている。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、光電変換部等による光信号のレベルの誤差を修正した上で光受信機の状態を正確に表示することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光受信機によれば、レベル調整部の制御に用いる光信号レベルの測定値の補正を、手間をかけることなく簡単に行うことができると共に、光信号のレベルの誤差を修正した上でレベル調整部の制御を行い、光受信機の状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態における光受信機の構成図である。
【
図2】光信号の入力レベルと制御部に対する入力電圧及び制御部からの出力電圧の関係を表した表である。
【
図3】登録モードにおける光受信機の動作フローである。
【
図4】通常モードにおける光受信機の動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。
図1には、本実施形態における光受信機の構成図を示している。本実施形態の光受信機は、告知放送のシステムにおいて用いられるものであって、各家庭に設置されるものである。光受信機には光ファイバー網からの光ケーブルが接続され、光受信機は光ケーブルからの光信号を電気信号に変換し、増幅等を行ってRF信号として出力する。
【0019】
図1において、光電変換部10は、光ケーブルからの光信号を電気信号に変換する。光電変換部10で変換された電気信号は、信号ライン1を経てRF出力端子12から出力される。また、信号ライン1には分配器16が設けられ、この分配器16から入力された光信号のレベルを検出する受光レベル検出ライン2が引き出され、後述する電気信号のレベル調整に用いられる。
【0020】
信号ライン1には、光電変換部10で変換された電気信号のレベルを調整するレベル調整部としてのAGC11と、RF出力端子12が配置され、さらに、光電変換部10とAGC11の間には増幅器13が、AGC11とRF出力端子12の間には分配器14及び増幅器15が、それぞれ配置される。
【0021】
受光レベル検出ライン2には、増幅器25及び制御部20が配置されている。制御部20は、光電変換部10で受光した光信号のレベルを検出し、検出した光信号のレベルに応じた制御電圧を、制御電圧出力ライン3を介してAGC11に出力する。制御電圧出力ライン3にも、増幅器26が配置されている。AGC11は、入力された制御電圧に応じて、電気信号のレベルを調整して出力することのできるものであり、可変減衰器などによって構成されている。本実施形態では、制御部20による制御電圧の出力は、PWMによって行われる。AGC11に電気信号を通すことによって、光信号のレベルが変動しても、RF出力端子12から出力される電気信号のレベルを一定にすることができる。
【0022】
分配器14からの出力のうち一方は信号ライン1を構成し、RF出力端子12に接続される。分配器14からの出力のうち他方は、指令入力ライン4を経て制御部20に接続される。指令入力ライン4には、制御部20に対する所定の指令につき電気信号を復調して制御部20に入力する復調部24が設けられている。指令入力ライン4により、光電変換部10に光信号を入力することで、制御部20に対して所定の指令を送信することができる。
【0023】
制御部20には、AGC11の制御のための情報を記憶する記憶部21と、光受信機の状態を表示するための表示部22とが接続されている。表示部22としては、LED等が用いられ、表示部22の点灯・非点灯及び点灯時の色を変化させることで、光受信機の複数の状態を表示することができる。本実施形態では、入力される光信号のレベルが所定範囲より小さい場合、表示部22は非点灯であり、入力される光信号のレベルが所定範囲内の場合、表示部22は緑色に点灯し、入力される光信号のレベルが所定範囲より大きい場合、表示部22は赤色に点灯する。
【0024】
記憶部21には、制御部20に入力される光信号のレベルを示す値と、入力される光信号のレベルに対応するAGC11の制御情報とが、テーブル状に対応付けられて記憶されている。
図2には、光信号の入力レベルと制御部20に対する入力電圧及び制御部20からの出力電圧の関係を表した表を示している。
【0025】
図2において、光入力レベルは、光電変換部10に入力される光信号のレベルである。入力電圧は、光電変換部10で変換された電気信号が、増幅器25を経て制御部20に入力される電圧の設計値である。AD値は、制御部20でAD変換された入力電圧に対応する値である。各AD値に対応して制御情報であるPWM DUTY比が設定されている。PWM DUTY比は、制御部20がAGC11に対して出力する制御電圧のデューティ比であり、出力電圧はAGC11における実効電圧を表している。また、各AD値に対応して制御部20による表示部22の制御情報も表されている。記憶部21には、
図2のうちAD値とPWM DUTY比及び表示部22の制御情報とが、テーブル状に対応付けられて記憶されている。
【0026】
光受信機は、通常モードと登録モードとを切替えることができるように構成されている。まず、登録モードでの光受信機の動作について説明する。
図3には、登録モードにおける光受信機の動作フローを示している。登録モードとして光受信機が起動(S1−1)した場合、光電変換部10に対して基準となる所定の光信号が入力される(S1−2)。ここで入力される基準となる光信号は、強度のレベルが所定値、例えば−2.0dBmであって、光受信機の固有のアドレスなどの基本情報や、制御部20に対する指令の情報を含んでいる。
【0027】
登録モードにおいて入力された光信号に含まれる基本情報は、制御部20で受信され記憶部21に対し書き込みがなされる(S1−3)。また、入力された光信号に重畳された誤差補正の指令を制御部20が受信(S1−4)すると、制御部20は受光レベル検出ライン2を介して検出される光信号の入力レベルを測定する(S1−5)。
【0028】
光信号のレベルが−2.0dBmの場合、
図2によれば制御部20で測定されるAD値は126のはずであるが、光電変換部10や増幅器25の誤差により、実際にはこれと異なる値が検出されることがある。そこで、本来のAD値とS1−5で測定されたAD値との差を、加算すべき差分情報として記憶部21に記憶させる(S1−6)。例えば、S1−5で測定されたAD値が136であった場合、本来の値は126であるから、−10を差分情報として記憶する。
【0029】
次に、通常モードでの光受信機の動作について説明する。
図4には、通常モードにおける光受信機の動作フローを示している。通常モードとして光受信機が起動(S2−1)すると、制御部20は受光レベル検出ライン2を介して検出される光信号の入力レベルを測定する(S2−2)。
【0030】
制御部20は、測定した光信号の入力レベルのAD値に対して、記憶部21に記憶された差分情報を適用する(S2−3)。上記の例では、−10が差分情報として記憶されているから、S2−2で測定したAD値から−10を加算して、補正したAD値を算出する。この後の制御においては、補正したAD値を用いる。
【0031】
制御部20は、記憶部21に記憶されたAD値とPWM DUTY比のテーブルから、補正したAD値に対応するPWM DUTY比を参照し(S2−4)、該参照したデューティ比によるPWM出力を、DA変換の上、制御電圧出力ライン3に対し行う(S2−5)。
【0032】
図2に示すように、光信号の入力レベルが小さい場合、AGC11における実効電圧は小さく、AGC11によるレベル調整は行われない。光信号の入力レベルがある程度以上になると、AGC11における実効電圧が大きくなって、信号ライン1のRF信号が減衰されることで所定レベルに調整がなされる。
【0033】
AGC11の制御電圧の決定に、補正したAD値を用いることにより、光電変換部10や増幅器25による光信号のレベルの誤差を修正したAGC11の制御を行うことができ、AGC11による信号レベル調整を正確に行うことができる。また、補正を行った上で、光信号の入力レベルに対応するAD値と制御情報であるPWM DUTY比とを対応付けたテーブルを参照するようにしたので、テーブルを変更することなく簡易な処理で光信号のレベルの誤差を修正したAGC11の制御を行うことができる。
【0034】
また、制御部20は、補正したAD値に基づいて表示部22の制御を行う(S2−6)。表示部22は、
図2に示すように、AD値が28以下の場合には消灯の状態とされ、十分な光信号を受信していないことを表すことができる。AD値が29以上140以下の場合には緑点灯の状態とされ、正常に光信号を受信していることを表すことができる。AD値が141以上の場合には赤点灯の状態とされ、光信号のレベルが異常であることを表すことができる。
【0035】
このように、表示部22の制御についても補正したAD値を用いることにより、光電変換部10や増幅器25による光信号のレベルの誤差を修正した上で、光受信機の状態を正確に表示することができる。
【0036】
S2−2〜S2−6の各ステップは、光受信機が通常モードで起動している間、繰り返し行われる。
【0037】
以上のように、登録モードにおいて制御部20で光信号のレベルを測定して差分情報を算出し、この差分情報を通常モードにおいて測定した光信号のレベルに加算して制御情報を参照するようにしたことにより、制御部20で測定される光信号レベルの誤差を自動的に取得し、通常の動作時にも適用することができるので、光受信機の調整を簡単にすることができる。
【0038】
本実施形態では、登録モードにおいて受信した光信号に、制御部20での誤差補正の指令の情報を含ませておき、該情報を制御部20が受信することで、光信号のレベルを測定して差分情報を得ているが、誤差補正の指令は他の手段によって制御部に与えるようにしてもよい。
図1に示すように、光受信機にスイッチ等の操作部23を設け、この操作部23を操作することで、制御部20に対して誤差補正の指令を出すようにしてもよい。また、
図1に示すように、指令入力ライン4にコンピュータ30を接続し、このコンピュータ30から制御部20に対して誤差補正の指令を出すようにしてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 信号ライン
2 受光レベル検出ライン
3 制御電圧出力ライン
4 指令入力ライン
10 光電変換部
11 AGC
12 RF出力端子
13 増幅器
14 分配器
15 増幅器
20 制御部
21 記憶部
22 表示部
24 復調部
25 増幅器