特許第6343846号(P6343846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343846
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】検出装置、検出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20180611BHJP
   G01S 13/46 20060101ALI20180611BHJP
   G01S 13/42 20060101ALI20180611BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20180611BHJP
   G01S 5/04 20060101ALN20180611BHJP
【FI】
   G01S7/02 216
   G01S13/46
   G01S13/42
   G01V3/12 A
   !G01S5/04
【請求項の数】7
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-260191(P2013-260191)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-117961(P2015-117961A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹村 暢康
(72)【発明者】
【氏名】満井 勉
(72)【発明者】
【氏名】本間 尚樹
【審査官】 大▲瀬▼ 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0163346(US,A1)
【文献】 特開2005−121541(JP,A)
【文献】 今野惠太他,”多重波環境におけるマイクロ波センサを用いた生体方向推定法”,電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年 9月 3日,p.192
【文献】 本間尚樹他,”マルチアンテナシステムのセンシング応用について”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年11月,第113巻,p.91-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00−19/55
G01V
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が存在する場合における少なくとも1つの送信素子と複数の受信素子との間の信号の伝搬路を表す第1の複素伝達関数と、前記対象物が存在しない場合における少なくとも1つの前記送信素子と複数の前記受信素子との間の信号の伝搬路を表す第2の複素伝達関数と、の差分である、複素差分伝達関数を算出する複素差分伝達関数算出部と、
前記複素差分伝達関数に基づいて、少なくとも前記受信素子からの前記対象物の方向である第1の方向を検出する方向検出部と、
を備え
前記複素差分伝達関数算出部は、複数の前記送信素子及び複数の前記受信素子に対する前記複素差分伝達関数を算出し、
前記方向検出部は、前記複素差分伝達関数に基づいて、前記送信素子からの前記対象物の方向である第2の方向を更に検出し、
前記第1の方向及び前記第2の方向に基づいて、前記受信素子及び前記送信素子に対する前記対象物の位置を検出する位置検出部、を更に備えることを特徴とする、検出装置。
【請求項2】
前記複素差分伝達関数に基づいて、前記送信素子に対する複数の前記受信素子の相関を表す受信相関行列を算出する受信相関行列算出部と、
前記受信相関行列に基づいて、複数の前記受信素子における信号の到来方向を示す評価関数を算出する評価関数算出部と、
を更に備え、
前記方向検出部は、前記評価関数に基づいて前記第1の方向を検出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記複素差分伝達関数に基づいて、前記受信素子に対する複数の前記送信素子の相関を表す送信相関行列を算出する送信相関行列算出部と、
前記送信相関行列に基づいて、複数の前記送信素子における信号の出発方向を示す評価関数を算出する評価関数算出部と、
を更に備え、
前記方向検出部は、前記評価関数に基づいて前記第2の方向を検出する、
ことを特徴とする、請求項に記載の検出装置。
【請求項4】
前記送信素子に対する複数の前記受信素子の相関を表す受信相関行列を算出する受信相関行列算出部と、
前記受信素子に対する複数の前記送信素子の相関を表す送信相関行列を算出する送信相関行列算出部と、
を更に備え、
前記位置検出部は、前記対象物が複数存在する場合に、前記受信相関行列の固有ベクトルと前記受信素子における前記第1の方向に対応するステアリングベクトルとの内積値、前記送信相関行列の固有ベクトルと前記送信素子における前記第2の方向に対応するステアリングベクトルとの内積値、前記受信相関行列の固有値、及び、前記送信相関行列の固有値、に基づいて、前記第1の方向を示す直線と前記第2の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、前記対象物が存在しない虚像の位置が除去された前記対象物の位置を検出する、
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
前記受信相関行列の固有値及び前記送信相関行列の固有値を降順に並び替えた際に、少なくとも降順において互いに1番目に位置する固有値同士である最大固有値同士を含む、互いに同じ順序に位置する固有値同士に対して、
前記受信相関行列の固有値に対応する固有ベクトルとの内積値が最大となる前記受信素子のステアリングベクトルに対応する前記第1の方向と、前記送信相関行列の固有値に対応する固有ベクトルとの内積値が最大となる前記送信素子のステアリングベクトルに対応する前記第2の方向と、に基づいて前記対象物の位置を検出する、
ことを特徴とする、請求項に記載の検出装置。
【請求項6】
対象物が存在する場合における少なくとも1つの送信素子と複数の受信素子との間の信号の伝搬路を表す第1の複素伝達関数と、前記対象物が存在しない場合における少なくとも1つの前記送信素子と複数の前記受信素子との間の信号の伝搬路を表す第2の複素伝達関数と、の差分である、複数の前記送信素子及び複数の前記受信素子に対する複素差分伝達関数を算出するステップと、
前記複素差分伝達関数に基づいて、少なくとも前記受信素子からの前記対象物の方向である第1の方向を検出するステップと、
前記複素差分伝達関数に基づいて、前記送信素子からの前記対象物の方向である第2の方向を更に検出するステップと、
前記第1の方向及び前記第2の方向に基づいて、前記受信素子及び前記送信素子に対する前記対象物の位置を検出するステップと、
を含むことを特徴とする、検出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
対象物が存在する場合における少なくとも1つの送信素子と複数の受信素子との間の信号の伝搬路を表す第1の複素伝達関数と、前記対象物が存在しない場合における少なくとも1つの前記送信素子と複数の前記受信素子との間の信号の伝搬路を表す第2の複素伝達関数と、の差分である、複数の前記送信素子及び複数の前記受信素子に対する複素差分伝達関数を算出する機能と、
前記複素差分伝達関数に基づいて、少なくとも前記受信素子からの前記対象物の方向である第1の方向を検出する機能と、
前記複素差分伝達関数に基づいて、前記送信素子からの前記対象物の方向である第2の方向を更に検出する機能と、
前記第1の方向及び前記第2の方向に基づいて、前記受信素子及び前記送信素子に対する前記対象物の位置を検出する機能と、
を実現させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の領域への対象物(例えば人等)の侵入を検知するセキュリティシステム(security system)やセキュリティ装置として、無線信号を利用した検出装置が提案されている。例えば、非特許文献1には、所定の領域に無線信号を送信し、複数のアンテナ(antenna)からなるアレイアンテナ(array antenna)によって当該信号を受信し、当該信号の伝搬路を表す情報である伝搬チャネル(channel)情報を解析することによって、対象物の方向を検出する方法が開示されている。具体的には、非特許文献1に記載の方法では、一定時間測定されて取得された伝搬チャネル情報を伝搬チャネル行列と呼ばれる行列の形式で表現し、当該伝搬チャネル行列の各要素をフーリエ変換(Fourier transform)する。そして、フーリエ変換された伝搬チャネル行列のうち、例えば対象物である人体が影響を及ぼすことが想定される周波数範囲の情報のみを抽出することにより、当該対象物の方向を検出することができる。
【0003】
ここで、非特許文献1において、アレイアンテナによって受信された信号から対象物の方向を求めるアルゴリズム(algorithm)としては、非特許文献2に開示されているMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法と呼ばれる方法が用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】今野、南湖、本間、西森、竹村、満井、佐藤、恒川、「多重波環境におけるマイクロ波センサを用いた生体方向推定法」、電子情報通信学会ソサイエティ大会、2013年9月、B−1−191
【非特許文献2】R. Schmidt, “Multiple emitter location and Signal parameter estimation,” IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 34, Issue 3, pp. 276−280, March, 1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した非特許文献1の方法によれば、対象物の方向を検出するために上記伝搬チャネル行列を算出する際に、伝搬チャネル情報の測定を一定時間、例えば10秒程度以上行う必要がある。従って、対象物が移動している場合には、測定中における対象物の位置や方向が大きく変化するため、その方向を正確に検出することは困難であった。
【0006】
一方、非特許文献2に記載のMUSIC法のみを用いた場合には、原理的には、より短い時間で対象物の方向を検出することが可能である。しかしながら、MUSIC法においては、屋内環境等、対象物以外からの反射波が複数存在するような雑音の多い環境にあっては、これらの雑音の影響により、対象物の方向を正確に検出することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、対象物の方向をより短い測定時間でより正確に検出することが可能な、新規かつ改良された検出装置、検出方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、対象物が存在する場合における少なくとも1つの送信素子と複数の受信素子との間の信号の伝搬路を表す第1の複素伝達関数と、前記対象物が存在しない場合における少なくとも1つの前記送信素子と複数の前記受信素子との間の信号の伝搬路を表す第2の複素伝達関数と、の差分である、複素差分伝達関数を算出する複素差分伝達関数算出部と、前記複素差分伝達関数に基づいて、少なくとも前記受信素子からの前記対象物の方向である第1の方向を検出する方向検出部と、を備えることを特徴とする、検出装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、対象物が存在する場合における複素伝達関数と、対象物が存在しない場合における複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数に基づいて、受信素子からの対象物の方向が検出される。このように、対象物の有無での伝搬路の差分を表す複素差分伝達関数が用いられることにより、より短い測定時間で対象物の方向を検出することが可能となる。
【0010】
また、前記複素差分伝達関数に基づいて、前記送信素子に対する複数の前記受信素子の相関を表す受信相関行列を算出する受信相関行列算出部と、前記受信相関行列に基づいて、複数の前記受信素子における信号の到来方向を示す評価関数を算出する評価関数算出部と、を更に備え、前記方向検出部は、前記評価関数に基づいて前記第1の方向を検出してもよい。
【0011】
本発明によれば、複素差分伝達関数に基づいて算出される受信相関行列を用いて、受信素子における信号の到来方向を示す評価関数が算出される。従って、当該評価関数は、対象物の有無での伝搬路の差分が反映されたものとなるため、例えば一定期間測定された複素伝達関数を用いなくても、より短い測定時間で受信素子からの対象物の方向を検出することが可能となる。
【0012】
また、前記複素差分伝達関数算出部は、複数の前記送信素子及び複数の前記受信素子に対する前記複素差分伝達関数を算出し、前記方向検出部は、前記複素差分伝達関数に基づいて、前記送信素子からの前記対象物の方向である第2の方向を更に検出し、前記第1の方向及び前記第2の方向に基づいて、前記受信素子及び前記送信素子に対する前記対象物の位置を検出する位置検出部、を更に備えてもよい。
【0013】
本発明によれば、受信素子からの対象物の方向に加えて、送信素子からの対象物の方向も検出される。更に、受信素子からの対象物の方向と送信素子からの対象物の方向とに基づいて、受信素子及び送信素子に対する対象物の位置が検出される。また、当該送信素子からの対象物の方向も、対象物が存在する場合における複素伝達関数と、対象物が存在しない場合における複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数に基づいて検出される。従って、受信素子からの対象物の方向の検出及び送信素子からの対象物の方向の検出が、ともに、より短い測定時間で実行可能であるため、受信素子及び送信素子に対する対象物の位置の検出も、より短い測定時間で行うことが可能となる。
【0014】
また、前記複素差分伝達関数に基づいて、前記受信素子に対する複数の前記送信素子の相関を表す送信相関行列を算出する送信相関行列算出部と、前記送信相関行列に基づいて、複数の前記送信素子における信号の出発方向を示す評価関数を算出する評価関数算出部と、を更に備え、前記方向検出部は、前記評価関数に基づいて前記第2の方向を検出してもよい。
【0015】
本発明によれば、複素差分伝達関数に基づいて算出される送信相関行列を用いて、送信素子における信号の出発方向を示す評価関数が算出される。従って、当該評価関数は、対象物の有無での伝搬路の差分が反映されたものとなるため、例えば一定期間測定された複素伝達関数を用いなくても、より短い測定時間で送信素子からの対象物の方向を検出することが可能となる。
【0016】
また、前記送信素子に対する複数の前記受信素子の相関を表す受信相関行列を算出する受信相関行列算出部と、前記受信素子に対する複数の前記送信素子の相関を表す送信相関行列を算出する送信相関行列算出部と、を更に備え、前記位置検出部は、前記対象物が複数存在する場合に、前記受信相関行列の固有ベクトルと前記受信素子における前記第1の方向に対応するステアリングベクトルとの内積値、前記送信相関行列の固有ベクトルと前記送信素子における前記第2の方向に対応するステアリングベクトルとの内積値、前記受信相関行列の固有値、及び、前記送信相関行列の固有値、に基づいて、前記第1の方向を示す直線と前記第2の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、前記対象物が存在しない虚像の位置が除去された前記対象物の位置を検出してもよい。
【0017】
本発明によれば、受信素子からの対象物の方向を示す直線と、送信素子からの対象物の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、虚像の位置が除去された対象物の位置が検出される。従って、虚像の影響が除去された、より正確な対象物の位置検出を行うことが可能となる。
【0018】
また、前記受信相関行列の固有値及び前記送信相関行列の固有値を降順に並び替えた際に、少なくとも降順において互いに1番目に位置する固有値同士である最大固有値同士を含む、互いに同じ順序に位置する固有値同士に対して、前記受信相関行列の固有値に対応する固有ベクトルとの内積値が最大となる前記受信素子のステアリングベクトルに対応する前記第1の方向と、前記送信相関行列の固有値に対応する固有ベクトルとの内積値が最大となる前記送信素子のステアリングベクトルに対応する前記第2の方向と、に基づいて前記対象物の位置を検出してもよい。
【0019】
本発明によれば、受信相関行列の固有値及び送信相関行列の固有値と、対象物とが対応付けられて、受信素子及び送信素子に対する対象物の位置の検出が行われる。従って、虚像の影響が除去された、より正確な対象物の位置検出を行うことが可能となる。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、対象物が存在する場合における少なくとも1つの送信素子と複数の受信素子との間の信号の伝搬路を表す第1の複素伝達関数と、前記対象物が存在しない場合における少なくとも1つの前記送信素子と複数の前記受信素子との間の信号の伝搬路を表す第2の複素伝達関数と、の差分である、複素差分伝達関数を算出するステップと、前記複素差分伝達関数に基づいて、少なくとも前記受信素子からの前記対象物の方向である第1の方向を検出するステップと、を含むことを特徴とする、検出方法が提供される。
【0021】
本発明によれば、対象物が存在する場合における複素伝達関数と、対象物が存在しない場合における複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数に基づいて、受信素子からの対象物の方向が検出される。このように、対象物の有無での伝搬路の差分を表す複素差分伝達関数が用いられることにより、より短い測定時間で対象物の方向を検出することが可能となる。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、対象物が存在する場合における少なくとも1つの送信素子と複数の受信素子との間の信号の伝搬路を表す第1の複素伝達関数と、前記対象物が存在しない場合における少なくとも1つの前記送信素子と複数の前記受信素子との間の信号の伝搬路を表す第2の複素伝達関数と、の差分である、複素差分伝達関数を算出する機能と、前記複素差分伝達関数に基づいて、少なくとも前記受信素子からの前記対象物の方向である第1の方向を検出する機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【0023】
本発明によれば、対象物が存在する場合における複素伝達関数と、対象物が存在しない場合における複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数に基づいて、受信素子からの対象物の方向が検出される。このように、対象物の有無での伝搬路の差分を表す複素差分伝達関数が用いられることにより、より短い測定時間で対象物の方向を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、対象物の方向をより短い測定時間でより正確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態における対象物の検出処理の概要について説明するための説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る検出装置の一構成例を示す機能ブロック(block)図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る検出方法の処理手順の一例を示すフロー(flow)図である。
図4】本発明の第1の実施形態における対象物の検出処理の結果を示すグラフ(graph)図である。
図5】本発明の第2の実施形態における対象物の検出処理の概要について説明するための説明図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る検出装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る検出方法の処理手順の一例を示すフロー図である。
図8】本発明の第3の実施形態における対象物の検出処理の概要について説明するための説明図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る検出装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
図10】第3の実施形態における評価関数P(θ)の一例を示すグラフ図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る検出方法の処理手順の一例を示すフロー図である。
図12】本発明の第1、第2及び第3の実施形態に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
<1.第1の実施形態>
[1−1.第1の実施形態の概要]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態の概要について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における対象物の検出処理の概要について説明するための説明図である。
【0028】
本発明の第1の実施形態における対象物の検出処理では、まず、送信装置111(以下、Tx111とも呼称する。)の送信アンテナ112から信号が所定の領域に向かって送信される。そして、当該所定の領域に存在する対象物510(例えば人)によって反射された信号が受信装置121(以下、Rx121とも呼称する。)の受信アレイアンテナ122によって受信される。受信した信号に対して、下記[1−2.検出装置の構成]で詳述する処理を施すことにより、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が検出される。
【0029】
ここで、送信装置111及び受信装置121によってやり取りされる信号は、例えばマイクロ波(microwave)等の電波である。ただし、本実施形態はかかる例に限定されず、当該信号としては、他の周波数帯域の電磁波や、空気中を伝搬し得る他の種類の信号が用いられてもよい。
【0030】
送信装置111は、1つの送信アンテナ112を有し、当該送信アンテナ112から所定の領域に向かって信号を送信する。送信装置111は、送信装置111を駆動し所定の特性を有する信号を送信させる駆動回路を含み得る。当該駆動回路は、例えば、信号を発生させる信号源、信号を変調する変調回路及び信号を増幅する増幅器等を有し、所定の特性(例えば、振幅、周波数、位相等)の信号を送信可能に構成される。ここで、送信装置111及びその駆動回路の具体的な構成は、電波等の各種の信号を送信可能に構成される一般的な既存の送信装置の構成と同様であってよいため、その詳細な説明は省略する。また、上記送信アンテナ112は、信号を外部に向かって送信するための構成である送信素子の一例であり、送信装置111が有する送信素子はかかる例に限定されない。送信装置111は、所定の領域に向かって信号を送信できるように構成されればよく、送信素子として送信アンテナ112以外の他の構成を有してもよい。
【0031】
受信装置121は、複数の受信アンテナ123によって構成される受信アレイアンテナ122を有し、当該受信アレイアンテナ122によって信号を受信する。受信装置121は、受信装置121を駆動し所定の特性を有する信号を受信させる駆動回路を含み得る。当該駆動回路は、例えば、信号を復調する復調回路及び信号を増幅する増幅器等を有し、送信装置111が送信する信号の特性に応じて、当該特性を有する信号を受信可能に構成される。ここで、受信装置121及びその駆動回路の具体的な構成は、電波等の各種の信号を受信可能に構成される一般的な既存の受信装置の構成と同様であってよいため、その詳細な説明は省略する。また、上記受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123は、信号を受信するための構成である受信素子の一例であり、受信装置121が有する受信素子はかかる例に限定されない。受信装置121は、送信装置111によって送信された信号を受信できるように構成されればよく、受信素子として受信アンテナ123以外の他の構成を有してもよい。
【0032】
図1に示す例では、底面(床面)を構成する四角形の一辺が長さL、他辺が長さWの略直方体の形状を有する部屋500の中に、送信装置111、受信装置121及び対象物510が配置されている。また、部屋500の側壁のうちの一つには、その一面に複数のガラス窓520(glass window520)が配置される。
【0033】
また、図1に示す例では、送信装置111及び受信装置121は、送信アンテナ112の送信面及び受信アレイアンテナ122の受信面が略同一の平面となるように、対象物510に対して同じ方向に並べて配置されている。ただし、第1の実施形態はかかる例に限定されず、例えば後述する図5図8に示すように、送信装置111及び受信装置121は、送信アンテナ112の送信面と受信アレイアンテナ122の受信面とが対象物510が存在する領域を挟むように配置されてもよい。ここで、図1に示すように、第1の実施形態では、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向は、受信アレイアンテナ122における受信アンテナ123の配列方向に対する法線であって受信アレイアンテナ122の受信面上における基準点Qを通る法線からの角度θとして表現され得る。
【0034】
第1の実施形態における対象物510の検出処理は、図1に示すような屋内環境における対象物510の検出に対して好適に適用され得る。ただし、第1の実施形態はかかる例に限定されず、第1の実施形態における対象物510の検出処理は屋外等他の環境に対して適用されてもよい。また、図1に示す部屋500の環境は、第1の実施形態における対象物510の検出処理が適用され得る環境の一例であり、第1の実施形態はかかる例に限定されない。例えば部屋500の形状、壁の材質、並びに、ガラス窓520の有無、配置位置及び形状等が適宜変更された部屋500に対しても、第1の実施形態における対象物510の検出処理は適用可能である。また、図1に示す例では、対象物510の数が1つの場合を図示しているが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。第1の実施形態における対象物510の検出処理は、複数の対象物510に対しても適用可能である。
【0035】
以上、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における対象物510の検出処理の概要について説明した。以下では、下記[1−2.検出装置の構成]において、第1の実施形態における対象物510の検出処理を実現するための検出装置の一構成例について説明する。また、下記[1−3.検出方法の処理手順]において、第1の実施形態における対象物510の検出処理における処理手順の流れの一例について説明する。更に、下記[1−4.第1の実施形態における実施例]において、第1の実施形態における対象物510の検出処理の実施例を示すとともにその効果について説明する。
【0036】
[1−2.検出装置の構成]
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検出装置の一構成例について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る検出装置の一構成例を示す機能ブロック(block)図である。
【0037】
図2を参照すると、第1の実施形態に係る検出装置10は、送信部110、受信部120、記憶部130及び制御部140を備える。なお、図2に示す検出装置10の各機能は、例えば、後述する図12に示すハードウェア(hardware)構成によって実現され得る。
【0038】
送信部110は、例えば図1に示す送信装置111によって構成され、所定の領域に対して信号を送信する機能を有する。送信部110は、後述する制御部140の送信駆動制御部147によりその駆動が制御され、所定の領域に対して所定の特性を有する信号を送信することができる。
【0039】
受信部120は、例えば図1に示す受信装置121によって構成され、送信部110によって送信された信号を受信する機能を有する。受信部120は、後述する制御部140の受信駆動制御部141によりその駆動が制御され、送信部110によって送信される所定の特性を有する信号を受信することができる。なお、図2では、送信部110から受信部120へ信号が伝搬する様子を模式的に破線の矢印で示している。図面が煩雑になることを避けるため、図2では図示を省略しているが、実際には、例えば対象物510等によって反射された信号が受信部120によって受信され得る。
【0040】
記憶部130は、例えば各種の記憶装置によって構成され、制御部140において処理される各種の情報を記憶する。具体的には、記憶部130は、後述する制御部140の各機能(受信駆動制御部141、送信駆動制御部147、複素伝達関数測定部142、複素差分伝達関数算出部143、受信相関行列算出部144、評価関数算出部145及び方向検出部146)によって処理される各種の情報や、処理された結果についての情報を記憶することができる。例えば、記憶部130は、少なくとも、後述する制御部140の複素伝達関数測定部142によって算出される、第2の複素伝達関数についての情報を記憶する。また、例えば、記憶部130は、受信アレイアンテナ122における基準点Qの位置(絶対座標)についての情報を記憶してもよい。更に、記憶部130は、後述する制御部140の送信駆動制御部147が送信部110を駆動する条件及び受信駆動制御部141が受信部120を駆動する条件についての情報(駆動条件情報)を記憶してもよい。
【0041】
制御部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の各種のプロセッサ(Processor)によって構成され、検出装置10の動作を統合的に制御する。制御部140は、その機能として、受信駆動制御部141、送信駆動制御部147、複素伝達関数測定部142、複素差分伝達関数算出部143、受信相関行列算出部144、評価関数算出部145及び方向検出部146を有する。なお、これらの各機能は、制御部140を構成するプロセッサが所定のプログラム(program)に従って動作することにより実現され得る。
【0042】
送信駆動制御部147は、送信部110の駆動を制御する。例えば、送信駆動制御部147は、所定の駆動条件情報に基づいて送信部110の駆動を制御し、送信アンテナ112から所定の特性の信号を所定の領域に向かって送信させる。また、送信駆動制御部147は、駆動条件情報に基づいて、送信部110が信号を送信する時間や、信号を送信する間隔等を制御してもよい。このように、駆動条件情報には、送信部110が送信する信号の特性や、当該信号を送信する時間、間隔等の情報が含まれてよい。
【0043】
受信駆動制御部141は、受信部120の駆動を制御する。例えば、受信駆動制御部141は、所定の駆動条件情報に基づいて受信部120の駆動を制御し、受信アレイアンテナ122によって、送信部110によって送信される所定の特性を有する信号を受信させる。ここで、受信駆動制御部141は、例えば記憶部130を参照することにより、送信駆動制御部147が送信部110を駆動させた際の駆動条件情報を取得することができる。このように、受信駆動制御部141が、送信駆動制御部147が送信部110を駆動させた際の駆動条件を認識可能であるため、受信駆動制御部141は、送信部110の駆動に応じた駆動条件で、受信部120を駆動させることができる。従って、例えば、受信駆動制御部141は、送信部110が信号を送信する時間や、信号を送信する間隔等に応じて、同様の時間及び間隔で信号を受信するように受信部120を駆動させてもよい。
【0044】
ここで、第1の実施形態では、送信装置111が送信アンテナ112の方向を変更する駆動機構を備えてもよく、受信装置121が受信アレイアンテナ122の方向を変更する駆動機構を備えてもよい。送信駆動制御部147は、送信装置111の当該駆動機構の駆動を制御することにより、送信部110に、送信アンテナ112の方向を適宜変更させながら信号を送信させることができる。また、受信駆動制御部141は、受信装置121の当該駆動機構の駆動を制御することにより、受信部120に、受信アレイアンテナ122の方向を適宜変更させながら信号を受信させることができる。なお、受信アレイアンテナ122の方向の変更は、送信アンテナ112の方向の変更と連動して行われ得る。送信部110が信号を送信可能な領域は、送信装置111の送信アンテナ112の配置位置及び配置方向によって決定され得る。また、受信部120が信号を受信可能な領域は、受信装置121の受信アレイアンテナ122の配置位置及び配置方向によって決定され得る。このように、送信装置111における送信アンテナ112の方向や、受信装置121における受信アレイアンテナ122の方向が動的に変更可能であることにより、検出対象とする領域を動的に変更しながら対象物510の検出処理を行うことが可能となる。
【0045】
なお、送信駆動制御部147及び受信駆動制御部141が送信部110及び受信部120をそれぞれ駆動させるための駆動条件は、例えば、送信装置111における送信アンテナ112の配置位置及び配置方向や、受信装置121における受信アレイアンテナ122の配置位置及び配置方向、対象物510が屋内に存在するか屋外に存在するか等、対象物510の検出処理が行われる環境に基づいて、信号の送受信が精度良く行われるように、予めユーザ(User)によって設定されてよい。例えば、対象物510の検出処理が行われる環境に基づいて、減衰や雑音がより少ない特性を有する信号が送受信されるように、送信部110及び受信部120の駆動条件が適宜設定されてよい。また、設定された駆動条件についての情報は、記憶部130に記憶されていてよい。送信駆動制御部147及び受信駆動制御部141は、記憶部130を参照することにより、所定の駆動条件に基づいて送信部110及び受信部120を駆動させることができる。
【0046】
複素伝達関数測定部142は、送信アンテナ112と受信アレイアンテナ122との間における信号の伝搬路を表す複素伝達関数を測定する。ここで、複素伝達関数は、送信アンテナ112と受信アレイアンテナ122との間で送受信される信号の伝搬路を表す情報である伝搬チャネル情報に対応する関数である。例えば、複素伝達関数測定部142は、受信部120から受信した信号に関する情報を取得することにより、複素伝達関数を測定することができる。また、複素伝達関数測定部142は、記憶部130、送信駆動制御部147及び/又は受信駆動制御部141から、送信部110及び受信部120を駆動させた際の駆動条件情報を取得し、当該駆動条件情報に含まれる送受信された信号の特性についての情報や送信アンテナ112及び受信アレイアンテナ122の配置位置及び配置方向についての情報等に更に基づいて複素伝達関数を測定してもよい。
【0047】
複素伝達関数測定部142によって行われる処理について詳細に説明する。第1の実施形態では、受信部120は、複数の受信アンテナ123によって構成される受信アレイアンテナ122を有する。従って、例えば、m個(m≧2)の受信アンテナ123によって構成される受信アレイアンテナ122を用いて、1つの送信アンテナ112により送信された信号(すなわち、1系統の信号)を受信する場合には、当該送信アンテナ112と受信アレイアンテナ122との間にはm×1個の伝搬路が存在する。複素伝達関数測定部142は、当該伝搬路の数に対応するm×1個の複素伝達関数を測定することができる。
【0048】
ここで、第1の実施形態では、複素伝達関数測定部142は、対象物510が存在する場合における複素伝達関数(以下、第1の複素伝達関数とも呼称する。)及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数(以下、第2の複素伝達関数とも呼称する。)の両方の複素伝達関数を測定する。第2の複素伝達関数は、例えば、実際に対象物510に対する検出処理が行われる環境において、第1の複素伝達関数の測定処理が行われる前に予め測定される。
【0049】
対象物510が存在する場合において、受信アレイアンテナ122のi番目(i=1〜m)の受信アンテナ123で受信される信号の伝搬路を表す複素伝達関数をhとすると、受信アンテナ123の数mに対応するm個の複素伝達関数h〜hmrは、hを第(i)成分とするm行1列の行列として表すことができる。当該行列のことを複素伝達関数行列Hと呼称する。複素伝達関数行列Hは、下記数式(1)で表される。複素伝達関数測定部142は複素伝達関数h〜hmrを測定するものであるが、複素伝達関数行列Hを測定しているとも言える。なお、以下の説明では、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列Hのことを第1の複素伝達関数行列Hとも呼称する。
【0050】
【数1】
……(1)
【0051】
また、同様に、対象物510が存在しない場合において受信アレイアンテナ122のi番目の受信アンテナ123で受信される信号の伝搬路を表す複素伝達関数をhnoiとすると、対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoは下記数式(2)で表現される。複素伝達関数測定部142は複素伝達関数hno1〜hnomrを測定するものであるが、複素伝達関数行列Hnoを測定しているとも言える。なお、以下の説明では、対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoのことを第2の複素伝達関数行列Hnoとも呼称する。
【0052】
【数2】
……(2)
【0053】
このように、複素伝達関数測定部142は、複素伝達関数が行列の形式で表現された、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列H及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoを測定することができる。複素伝達関数測定部142は、第1の複素伝達関数の測定処理が行われる前に予め測定した第2の複素伝達関数についての情報(又は第2の複素伝達関数行列Hnoについての情報)を、例えば記憶部130に格納する。また、複素伝達関数測定部142は、測定した第1の複素伝達関数についての情報(又は第1の複素伝達関数行列Hについての情報)を、複素差分伝達関数算出部143に提供する。
【0054】
複素差分伝達関数算出部143は、第1の複素伝達関数と第2の複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数を算出する。例えば、複素差分伝達関数算出部143は、第1の複素伝達関数から第2の複素伝達関数を差し引くことにより、複素差分伝達関数を算出する。第1の複素伝達関数から第2の複素伝達関数を差し引くことにより、例えば壁等の対象物510以外の構造物による反射成分が複素伝達関数から除去され、対象物510による反射成分のみが抽出され得る。複素差分伝達関数算出部143は、複素伝達関数測定部142から第1の複素伝達関数についての情報を取得し、記憶部130を参照して第2の複素伝達関数についての情報を取得することにより、複素差分伝達関数を算出することができる。
【0055】
上記数式(1)、(2)に示すように、第1の複素伝達関数及び第2の複素伝達関数は行列の形式で表現されるため、複素差分伝達関数も同様に行列の形式で表現され得る。具体的には、複素差分伝達関数を各要素に有する複素差分伝達関数行列H’は、下記数式(3)で表現される。
【0056】
【数3】
……(3)
【0057】
このように、複素差分伝達関数算出部143は、複素差分伝達関数が行列の形式で表現された複素差分伝達関数行列H’を算出することができる。複素差分伝達関数算出部143は、算出した複素差分伝達関数行列H’についての情報を、受信相関行列算出部144に提供する。
【0058】
受信相関行列算出部144は、複素差分伝達関数行列H’に基づいて、送信アンテナ112に対する受信アレイアンテナ122の複数の受信アンテナ123の相関を表す受信相関行列Rを算出する。具体的には、受信相関行列Rは、下記数式(4)で定義される。
【0059】
【数4】
……(4)
【0060】
ここで、H’の右上に示す上付きの「H」は、複素共役転置を表す。受信相関行列算出部144は、算出した受信相関行列Rについての情報を、評価関数算出部145に提供する。なお、受信相関行列算出部144は、受信相関行列Rを算出する際に、所定の周波数帯域において計算された受信相関行列を周波数方向で平均化することにより、受信相関行列Rを求めてもよい。当該平均化の処理により、方向検出の精度をより向上させることができる。
【0061】
評価関数算出部145は、受信相関行列Rに基づいて、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示す評価関数P(θ)を算出する。当該評価関数P(θ)は、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示すものであるため、当該評価関数P(θ)には、対象物510によって反射された信号の到来方向、すなわち受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向についての情報が含まれていると言える。ここで、当該評価関数P(θ)としては、アレイアンテナにおける信号の到来方向を推定する、各種の到来方向推定方法における評価関数が用いられてよい。第1の実施形態では、評価関数算出部145は、公知の各種の到来方向推定方法における評価関数P(θ)を算出することができる。ここでは、一例として、評価関数算出部145がMUSIC法における評価関数P(θ)を算出する場合について説明する。
【0062】
評価関数算出部145によって行われる評価関数P(θ)の算出処理について詳細に説明する。まず、評価関数算出部145は、受信相関行列Rを固有値分解することにより、当該受信相関行列Rの固有ベクトルU(eigen vector U)と、当該固有ベクトルUの複素共役転置ベクトルであるUを算出する。受信相関行列Rの固有値分解は、下記数式(5)で表現される。
【0063】
【数5】
……(5)
【0064】
ここで、固有ベクトルUは、受信相関行列Rの固有ベクトルuによって構成される行列であり、下記数式(6)で表現される。なお、uはi列目の固有ベクトルを示しており、その要素数はm個である。
【0065】
【数6】
……(6)
【0066】
また、Dは対角要素が受信相関行列Rの固有値λr1,・・・,λrmrである対角行列であり、下記数式(7)で表される。なお、以下の説明では、受信相関行列Rの固有値λr1,・・・,λrmrを総称して固有値λとも呼称する。
【0067】
【数7】
……(7)
【0068】
次に、評価関数算出部145は、下記数式(8)で表現される評価関数P(θ)を算出する。
【0069】
【数8】
……(8)
【0070】
ここで、Lは方向検出の対象である対象物510の数である。上記数式(8)から、第1の実施形態においては、受信アレイアンテナ122に設けられる受信アンテナ123の数mは、対象物510の数Lよりも多いことが求められる。換言すれば、受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123の数mが、対象物510の数Lよりも多い場合であれば、第1の実施形態における対象物510の検出処理が適用可能であると言える。
【0071】
また、a(θ)は受信アレイアンテナ122におけるステアリングベクトル(steering vector)であり、下記数式(9)で表される。
【数9】
……(9)
【0072】
ステアリングベクトルa(θ)は、角度θに対する受信アレイアンテナ122を構成する各受信アンテナ123の振幅比及び位相差を表すベクトルであり、対象物510の方向を検出する際の角度θの基準となる位置(図1に示す基準点Q)に対する各受信アンテナ123の位置に基づいて決定される。なお、ステアリングベクトルa(θ)の具体的な設定方法は、一般的なMUSIC法におけるステアリングベクトルの設定方法と同様であってよい。評価関数算出部145は、算出した評価関数P(θ)についての情報を、方向検出部146に提供する。
【0073】
方向検出部146は、評価関数P(θ)に基づいて、少なくとも受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を検出する。上述したように、当該評価関数P(θ)は、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示すものであるため、当該評価関数P(θ)には、対象物510によって反射された信号の到来方向、すなわち受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向についての情報が含まれていると言える。具体的には、上記数式(8)に示す評価関数P(θ)によって表現される特性は、MUSICスペクトル(spectrum)と呼ばれるものであり、評価関数P(θ)におけるピーク(peak)位置に対応する角度θが、受信アレイアンテナ122からの対象物510が存在する方向に対応している。よって、方向検出部146は、評価関数P(θ)におけるピーク位置を抽出することにより、受信アレイアンテナ122に対する対象物510の存在する方向を示す角度θを求めることができ、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を検出することができる。対象物510が複数存在する場合には、評価関数P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θが複数抽出されることとなる。なお、以下の説明では、受信相関行列Rに基づいて検出される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向のことを、第1の方向とも呼称する。
【0074】
なお、図1に示すように、角度θは、受信アレイアンテナ122の受信面上に設定される基準点Qを基準とする角度であるため、方向検出部146によって検出される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向は、厳密には当該基準点Qからの対象物510の方向であるとも言える。ただし、当該基準点Qは、受信アレイアンテナ122の受信面上に設定されればよく、その位置は例えばユーザによって適宜設定され得る。従って、基準点Qが設定される位置によっては、方向検出部146によって検出される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向は、例えば受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123のいずれかからの対象物510の方向でもあり得る。以下の説明においては、評価関数P(θ)に基づいて方向検出部146によって検出される対象物510の方向(すなわち、第1の方向)のことを、便宜的に、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向等と呼称するが、第1の実施形態においては、方向検出部146によって検出される第1の方向は、基準点Qからの対象物510の方向であってもよいし、受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123のいずれかからの対象物510の方向であってもよい。
【0075】
方向検出部146によって検出された第1の方向についての情報は、例えば記憶部130に格納される。また、図1には明示されないが、検出装置10は、例えば表示画面に各種の情報を表示する表示部や、外部の他の機器との間で各種の情報を送受信する通信部等の機能を更に備えてもよい。そして、方向検出部146によって検出された第1の方向についての情報は、例えば当該表示部に表示されてユーザに対して通知されたり、当該通信部を介して外部の他の機器に送信されて当該他の機器の記憶部に保存されたりしてよい。このように、第1の実施形態では、方向検出部146によって検出された第1の方向についての情報が出力される先は任意であってよい。例えば、検出装置10の表示部や外部の他の機器の表示部に、検出結果がリアルタイム(real time)で表示されてもよいし、検出装置10の記憶部130や外部の他の機器の記憶部に所定の期間の検出結果が履歴として保存されてもよい。
【0076】
以上、図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検出装置10の一構成例について説明した。以上説明したように、第1の実施形態では、複素伝達関数測定部142によって、対象物510が存在する場合における複素伝達関数(第1の複素伝達関数)及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数(第2の複素伝達関数)の両方が測定される。また、複素差分伝達関数算出部143によって、第1の複素伝達関数と第2の複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数が算出される。そして、当該複素差分伝達関数に基づいて、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が検出される。このように、第1の実施形態では、対象物510の有無での伝搬路の差分を表す複素差分伝達関数を用いることにより、より短い測定時間で対象物510の方向の検出処理を行うことができる。
【0077】
ここで、例えば上述した非特許文献1に記載の方法では、対象物の方向を検出するために、伝搬チャネル情報(すなわち、複素伝達関数)の測定を一定時間、例えば10秒程度以上行う必要があった。しかしながら、第1の実施形態では、受信アレイアンテナ122によって信号が受信されたら即座に第1の複素伝達関数の測定及び複素差分伝達関数の算出が可能であるため、例えばmsオーダー(order)程度のごく短い時間で対象物510の方向を検出することができる。
【0078】
また、第1の実施形態では、複素伝達関数が行列の形式で表現された複素伝達関数行列が用いられる。複素伝達関数行列は、複数の信号が受信信号に含まれるような、いわゆるマルチパス(multipath)環境に容易に対応することが可能である。従って、第1の実施形態によれば、マルチパス環境においても対象物510の方向をより短い測定時間でより精度良く検出することが可能となる。
【0079】
なお、第1の実施形態では、評価関数算出部145によって行われる演算処理は、一般的にMUSIC法において行われる演算処理と同様であってよい。従って、第1の実施形態における評価関数P(θ)の算出処理は、一般的なMUSIC法での評価関数の算出処理において用いられる相関行列を上記数式(4)に示す受信相関行列Rに置換したものであり得る。
【0080】
また、上記では、信号の到来方向を推定する方法としてMUSIC法を用いる場合について説明したが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。第1の実施形態では、評価関数算出部145は、到来方向を推定する他の方法における評価関数を算出してもよく、方向検出部146は、他の方法における評価関数に基づいて対象物510の方向を検出してもよい。到来方向を推定する他の方法としては、例えば、ビームフォーマ(beamformer)法、Capon法及び線形予測法等を用いることができる。評価関数算出部145は、一般的にこれらの各方法の評価関数の算出処理において用いられる相関行列を、上記数式(4)に示す受信相関行列Rに置換することにより、これらの各方法に対応する評価関数を算出することが可能である。なお、ビームフォーマ法、Capon法及び線形予測法における評価関数の具体的な算出方法としては、これらの各方法において用いられる公知の各種の手法を用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0081】
また、第1の実施形態に係る検出装置10の機能構成は図2に示す例に限定されない。例えば、図2に示す検出装置10が有する機能は、必ずしも単一の装置によって実現されなくてもよく、ネットワーク(network)によって互いに接続された複数の装置の協働によって実現されてもよい。例えば、図2に機能ブロックとして図示される制御部140が有する各機能が、ネットワークによって互いに接続された複数の情報処理装置の制御部によって行われることにより、各機能において行われる各種の演算処理を並列化して行うことができ、検出処理に伴う計算時間の更なる低減が実現され得る。また、例えば、検出装置10の機能のうち、送信部110及び受信部120と、その他の機能とが、別個の装置によって構成されてもよい。例えば、少なくとも送信部110及び受信部120を備える端末が対象物510の検出処理が行われる環境に設置され、当該端末と、例えばクラウド(cloud)上に設置される演算処理に特化したワークステーション(workstation)等の情報処理装置とが有線又は無線のネットワークによって互いに通信可能に接続されることにより、検出装置10の各機能が実現されてもよい。少なくとも送信部110及び受信部120を備える端末のみを対象物510の検出処理が行われる環境に設置することにより、当該端末をより小型化することが可能となる。
【0082】
[1−3.検出方法の処理手順]
次に、図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検出方法の処理手順について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る検出方法の処理手順の一例を示すフロー(flow)図である。なお、図3に示す各処理は、上述した検出装置10の機能構成によって実現されることができ、例えば、検出装置10の制御部140を構成するプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより実現され得る。
【0083】
図3を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る検出方法においては、まず、例えば複素伝達関数測定部142によって、送信アンテナ112と受信アレイアンテナ122との間における信号の伝搬路を表す複素伝達関数が測定される(ステップS101(step S101))。ステップS101に示す処理では、対象物510が存在する場合における複素伝達関数(第1の複素伝達関数)及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数(第2の複素伝達関数)の両方が測定される。例えば、第2の複素伝達関数は、第1の複素伝達関数が測定される前に予め測定される。また、複素伝達関数は、送信アンテナ112と受信アレイアンテナ122との間における信号の伝搬路の数m×1に対応する数だけ存在し得るため、行列の形式で表現され得る。従って、ステップS101における処理では、複素伝達関数が行列の形式で表現された、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列H及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoが測定され得る。
【0084】
次に、例えば複素差分伝達関数算出部143によって、対象物510が存在する場合における複素伝達関数と対象物510が存在しない場合における複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数が算出される(ステップS103)。実際には、複素伝達関数が行列の形式で表現され得るため、複素差分伝達関数算出部143によって、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列Hと対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoとの差分である複素差分伝達関数行列H’が算出され得る。
【0085】
次に、例えば受信相関行列算出部144によって、複素差分伝達関数行列H’に基づいて、送信アンテナ112に対する受信アレイアンテナ122の複数の受信アンテナ123の相関を表す受信相関行列Rが算出される(ステップS105)。受信相関行列Rは、例えば上記数式(4)を用いて算出され得る。
【0086】
次に、例えば評価関数算出部145によって、受信相関行列Rが固有値分解され、受信相関行列Rの固有値λ、受信相関行列Rの固有ベクトルU及びステアリングベクトルa(θ)が算出される(ステップS107)。そして、同じく例えば評価関数算出部145によって、これらの算出結果に基づいて、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示す評価関数P(θ)が算出される(ステップS109)。ステアリングベクトルa(θ)及び評価関数P(θ)は、例えば上記数式(9)及び上記数式(8)をそれぞれ用いて算出され得る。
【0087】
次に、例えば方向検出部146によって、評価関数P(θ)に基づいて、少なくとも受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が検出される(ステップS111)。評価関数P(θ)は、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示すものであるため、当該評価関数P(θ)には、対象物510によって反射された信号の到来方向、すなわち受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向についての情報が含まれていると言える。例えば、評価関数P(θ)においては、そのピーク位置に対応する角度θが、対象物510が存在する方向に対応している。従って、ステップS111に示す処理では、方向検出部146によって、評価関数P(θ)におけるピーク位置が抽出されることにより、受信アレイアンテナ122に対する対象物510が存在する方向を示す角度θが求められ、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が検出され得る。
【0088】
以上、図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検出方法の処理手順について説明した。なお、上記では、ステップS109に示す処理において、評価関数P(θ)として、上記数式(8)に示すMUSIC法における評価関数P(θ)が算出されているが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。第1の実施形態では、ステップS109に示す処理において、評価関数算出部145によって、到来方向を推定する他の方法における評価関数が算出されてもよく、ステップS111に示す処理において、方向検出部146によって、当該他の方法における評価関数に基づいて対象物510の方向が検出されてもよい。信号の到来方向を推定する他の方法としては、例えば、ビームフォーマ法、Capon法及び線形予測法等が用いられてよい。
【0089】
[1−4.第1の実施形態における実施例]
次に、第1の実施形態における実施例について説明する。本発明者らは、本発明の効果について確認するために、上述した第1の実施形態に係る検出装置10を用いて、図3に示す処理手順により、対象物510の方向を検出する実験を行った。
【0090】
当該実験を行った環境について説明する。当該実験は、図1に示す屋内環境において行った。具体的には、底面(床面)の一辺の長さL=7.0(m)、他辺の長さW=6.0(m)の略直方体形状を有する部屋500の一隅に、図1に示すように第1の実施形態に係る検出装置10を配置した。部屋500の周囲の壁はコンクリート(concrete)によって構成されており、側壁のうちの一つには、一面に複数のガラス窓520が配置されている。
【0091】
検出装置10の受信アレイアンテナ122としては、4素子の受信アンテナ123が水平方向に0.5波長間隔で配列されたアレイアンテナを用いた。また、送信アンテナ112は、単素子のアンテナであり、受信アレイアンテナ122の近傍に配置されている。具体的には、図1に示すように、送信アンテナ112及び受信アレイアンテナ122は、その送受信面が略同一平面内に位置するように配置されている。試験周波数は2.4(GHz)帯とし、送信電力は10(dBm)とした。また、対象物510として、1人の人を、受信アレイアンテナ122からの角度θがθ=−40(deg)であり、受信アレイアンテナ122からの距離が2(m)である位置に配置した。ここで、図1に示すように、角度θは、受信アレイアンテナ122における受信アンテナ123の配列方向に対する法線であって受信アレイアンテナ122の受信面上における基準点Qを通る法線からの角度θとして定義されている。
【0092】
以上説明した条件において、本発明の第1の実施形態に係る検出装置10を用いて、図3に示す処理手順により、対象物510の検出処理を行った。図4に、本発明の第1の実施形態における対象物510の検出処理の結果を示す。図4は、本発明の第1の実施形態における対象物510の検出処理の結果を示すグラフ(graph)図である。図4では、横軸に角度θを取り、縦軸に評価関数P(θ)をプロットしている。上述したように、評価関数P(θ)におけるピークの位置に対応する角度θが、受信アレイアンテナ122からの対象物510が存在する方向を示している。また、図4では、説明のため、実際に対象物510が存在する方向に対応する角度であるθ=−40(deg)の位置を破線で図示している。
【0093】
図4において、実線で示す曲線Cは、第1の実施形態における対象物510の検出処理を計201回行ったうち、最良値を示した評価関数P(θ)(すなわち、ピーク位置に対応する角度θが−40(deg)に最も近かった評価関数P(θ))を表している。また、一点鎖線で示す曲線Dは、第1の実施形態における対象物510の検出処理を計201回行ったうち、最悪値を示した評価関数P(θ)(すなわち、ピーク位置に対応する角度θが−40(deg)から最も遠かった評価関数P(θ))を表している。更に、図4では、比較のため、例えば上記特許文献2に記載された一般的なMUSIC法によって求められた評価関数P(θ)を、点線で示す曲線Bとして図示している。
【0094】
図4を参照すると、本発明の第1の実施形態においては、評価関数P(θ)が、対象物510が存在する方向に対応して極大値を取ることが分かる。図4に示すように、第1の実施形態において最良値を示した評価関数P(θ)における当該極大値に対応する角度θは約−38(deg)であり、実際に対象物510が存在する角度である−40(deg)とほぼ等しい値が検出されていると言える。また、第1の実施形態において最悪値を示した評価関数P(θ)における当該極大値に対応する角度θは約−30(deg)であり、実際に対象物510が存在する角度である−40(deg)から約10(deg)のずれが生じた。しかしながら、対象物510が受信アレイアンテナ122から2(m)の位置に存在すること、及び、対象物510として用いた人の体の大きさ(特に検出方向における体の幅)を考慮すれば、当該10(deg)程度のずれ量は、許容できる値であると言える。
【0095】
一方、曲線Cに示すように、一般的なMUSIC法によって求められた評価関数P(θ)においては、その極大値に対応する角度θは約1(deg)であり、実際に対象物510が存在する角度である−40(deg)から大きく異なっている。この結果から、本発明の第1の実施形態によれば、例えば非特許文献2に記載された従来の方法に比べて、対象物510の方向がより正確に検出され得ることが分かる。
【0096】
以上、図4を参照して、第1の実施形態における実施例について説明した。図4に示すように、本発明の第1の実施形態によれば、例えば非特許文献2に記載された従来の方法に比べて、対象物510の方向をより正確に検出することが可能となることが分かる。また、上述したように、第1の実施形態では、対象物510の有無での伝搬路の差分を表す複素差分伝達関数を用いることにより、例えば非特許文献1に記載された従来の方法に比べて、より短い測定時間(例えばmsオーダー(order)程度のごく短い時間)で対象物510の方向の検出処理を行うことができる。このように、第1の実施形態によれば、対象物510の方向をより短い測定時間でより正確に検出することが可能となることが分かった。
【0097】
<2.第2の実施形態>
[2−1.第2の実施形態の概要]
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施形態の概要について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態における対象物の検出処理の概要について説明するための説明図である。
【0098】
図5を参照すると、複数の送信アンテナ213からなる送信アレイアンテナ212を有する送信装置211(以下、Tx211とも呼称する。)と、複数の受信アンテナ123からなる受信アレイアンテナ122を有する受信装置121とが、所定の領域を挟んで対向して配置されている。当該所定の領域内には、対象物510(例えば人)が存在している。なお、図5に示す例では、対象物510が4つ存在する場合について図示しているが、第2の実施形態はかかる例に限定されず、対象物510の数は任意の数であってよい。
【0099】
受信装置121の具体的な構成は、図1を参照して説明した第1の実施形態における受信装置121の構成と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。また、送信装置211は、図1を参照して説明した第1の実施形態における送信装置111に対して送信アンテナ112が送信アレイアンテナ212に置き換えられたものに対応する。送信装置211における当該送信アレイアンテナ212以外の構成(例えば駆動回路等)は、図1に示す送信装置111の構成と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。
【0100】
第2の実施形態では、送信装置211の送信アレイアンテナ212から信号が所定の領域に向かって送信される。そして、当該所定の領域に存在する対象物510によって反射された信号が受信装置121の受信アレイアンテナ122によって受信される。受信した信号に対して、下記[2−2.検出装置の構成]で詳述する処理を施すことにより、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向が検出される。更に、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向と、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向との交点に対応する位置を算出することにより、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置が検出される。
【0101】
第2の実施形態では、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向は、受信アレイアンテナ122における受信アンテナ123の配列方向に対する法線であって受信アレイアンテナ122の受信面上における基準点Qを通る法線からの角度θとして表現され得る。また、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向は、送信アレイアンテナ212における送信アンテナ213の配列方向に対する法線であって送信アレイアンテナ212の送信面上における基準点Qを通る法線からの角度θとして表現され得る。
【0102】
ここで、上述した第1の実施形態では、1つの送信アンテナ112を有する送信装置111と、複数の受信アンテナ123からなる受信アレイアンテナ122を有する受信装置121とを用いて、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が検出されており、送信アンテナ112からの対象物510の方向は検出されていなかった。一方、上述したように、第2の実施形態では、送信装置211が複数の送信アンテナ213からなる送信アレイアンテナ212を有する。そして、複数の送信アンテナ213からなる送信アレイアンテナ212を有する送信装置211と、複数の受信アンテナ123からなる受信アレイアンテナ122を有する受信装置121とを用いることにより、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向に加えて、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向が検出される。更に、検出されたこれらの方向を示す直線の交点に位置を検出することにより、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置が検出される。
【0103】
以上、図5を参照して、本発明の第2の実施形態における対象物510の検出処理の概要について説明した。以下では、下記[2−2.検出装置の構成]において、第2の実施形態における対象物510の検出処理を実現するための検出装置の一構成例について説明する。また、下記[2−3.検出方法の処理手順]において、第2の実施形態における対象物510の検出処理における処理手順の流れの一例について説明する。
【0104】
[2−2.検出装置の構成]
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る検出装置の一構成例について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る検出装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0105】
図6を参照すると、第2の実施形態に係る検出装置20は、送信部210、受信部120、記憶部130及び制御部240を備える。なお、図6に示す検出装置20の各機能は、例えば、後述する図12に示すハードウェア構成によって実現され得る。ここで、第2の実施形態に係る検出装置20は、図2に示す第1の実施形態に係る検出装置10に対して、一部の機能が変更されたものに対応する。従って、以下の検出装置20の構成についての説明では、第1の実施形態との相違点について主に説明することとし、重複する事項については詳細な説明を省略する。
【0106】
送信部210は、例えば図5に示す送信装置211によって構成され、所定の領域に対して信号を送信する機能を有する。送信部210は、後述する制御部240の送信駆動制御部147によりその駆動が制御され、所定の領域に対して所定の特性を有する信号を送信することができる。なお、図6においても、図1と同様に、送信部110から受信部120へ信号が伝搬する様子を破線の矢印で示している。
【0107】
受信部120及び記憶部130の機能は、図2に示す第1の実施形態に係る検出装置10の受信部120及び記憶部130の機能と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。なお、第2の実施形態では、記憶部130は、受信アレイアンテナ122における基準点Qの位置(絶対座標)についての情報とともに、送信アレイアンテナ212における基準点Qの位置(絶対座標)についての情報を記憶してもよい。
【0108】
制御部240は、例えばCPU、DSP等の各種のプロセッサによって構成され、検出装置20の動作を統合的に制御する。制御部240は、その機能として、受信駆動制御部141、送信駆動制御部147、複素伝達関数測定部242、複素差分伝達関数算出部143、受信相関行列算出部144、送信相関行列算出部247、評価関数算出部245、方向検出部246及び位置検出部248を有する。なお、これらの各機能は、制御部240を構成するプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより実現され得る。
【0109】
送信駆動制御部147は、送信部210の駆動を制御する。例えば、送信駆動制御部147は、予めユーザによって設定され得る駆動条件情報に基づいて送信部210の駆動を制御し、送信アレイアンテナ212から所定の特性の信号を所定の領域に向かって送信させる。また、受信駆動制御部141は、受信部120の駆動を制御する。例えば、受信駆動制御部141は、予めユーザによって設定され得る駆動条件情報に基づいて受信部120の駆動を制御し、受信アレイアンテナ122によって、送信部210によって送信される所定の特性を有する信号を受信させる。送信駆動制御部147及び受信駆動制御部141の機能は、送信駆動制御部147によって駆動制御を行う対象が送信部110から送信部210に変更された以外は、図2に示す第1の実施形態に係る検出装置10の送信駆動制御部147及び受信駆動制御部141の機能と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。
【0110】
複素伝達関数測定部242は、送信アレイアンテナ212と受信アレイアンテナ122との間における信号の伝搬路を表す複素伝達関数を測定する。ここで、複素伝達関数は、送信アレイアンテナ212と受信アレイアンテナ122との間で送受信される信号の伝搬路を表す情報である伝搬チャネル情報に対応する関数である。例えば、複素伝達関数測定部242は、受信部120から受信した信号に関する情報を取得することにより、複素伝達関数を測定することができる。また、複素伝達関数測定部242は、記憶部130、送信駆動制御部147及び/又は受信駆動制御部141から、送信部210及び受信部120を駆動させた際の駆動条件情報を取得し、当該駆動条件情報に含まれる送受信された信号の特性についての情報や送信アレイアンテナ212及び受信アレイアンテナ122の配置位置及び配置方向の情報等に更に基づいて複素伝達関数を測定してもよい。
【0111】
ここで、第2の実施形態では、送信部210におけるm本(m≧2)の送信アンテナ213と、受信部120におけるm本(m≧2)の受信アンテナ123との間に、m×mの信号の伝搬路が存在する。従って、複素伝達関数測定部242は、当該伝搬路の数m×mに対応するm×m個の複素伝達関数を測定することができる。これらm×m個の複素伝達関数は、当該複素伝達関数を各要素とするm行m列の複素伝達関数行列Hとして表現され得る。このように、複素伝達関数測定部242は複素伝達関数行列Hを測定しているとも言える。
【0112】
ここで、第1の実施形態では、複素伝達関数行列Hはm行1列の行列として表現されていた。第2の実施形態における複素伝達関数行列Hは、第1の実施形態における複素伝達関数行列Hに対して、その列数が拡張されたものに対応している。複素伝達関数測定部242の機能は、測定する複素伝達関数行列Hの構成が異なるだけであり、他の機能は、図2に示す第1の実施形態に係る検出装置10の複素伝達関数測定部142の機能と同様であってよい。従って、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複素伝達関数測定部242は、対象物510が存在する場合における複素伝達関数(第1の複素伝達関数)及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数(第2の複素伝達関数)の両方の複素伝達関数を測定する。第2の複素伝達関数の測定は、例えば、実際に対象物510に対する検出処理が行われる環境において、第1の複素伝達関数の測定が行われる前に予め測定される。
【0113】
第2の実施形態における、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列H(第1の複素伝達関数行列H)は、下記数式(10)で表される。
【0114】
【数10】
……(10)
【0115】
また、同様に、第2の実施形態における、対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hno(第2の複素伝達関数行列Hno)は、下記数式(11)で表される。
【0116】
【数11】
……(11)
【0117】
このように、第2の実施形態では、複素伝達関数測定部242は、複素伝達関数が行列の形式で表現された、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列H及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoを測定することができる。複素伝達関数測定部242は、第1の複素伝達関数の測定処理が行われる前に予め測定した第2の複素伝達関数についての情報(又は第2の複素伝達関数行列Hnoについての情報)を、例えば記憶部130に格納する。また、複素伝達関数測定部242は、測定した第1の複素伝達関数についての情報(又は第1の複素伝達関数行列Hについての情報)を、複素差分伝達関数算出部143に提供する。
【0118】
複素差分伝達関数算出部143は、第1の複素伝達関数と第2の複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数を算出する。複素差分伝達関数算出部143は、複素伝達関数測定部242から第1の複素伝達関数についての情報を取得し、記憶部130を参照して第2の複素伝達関数についての情報を取得することにより、複素差分伝達関数を算出することができる。ここで、複素差分伝達関数算出部143の機能は、図2に示す第1の実施形態に係る検出装置10の複素差分伝達関数算出部143の機能と同様であってよい。複素差分伝達関数算出部143は、上記数式(3)に従って、第1の複素伝達関数行列Hから第2の複素伝達関数行列Hnoを差し引くことにより、複素差分伝達関数H’を算出することができる。複素差分伝達関数算出部143は、算出した複素差分伝達関数行列H’についての情報を、受信相関行列算出部144及び送信相関行列算出部247に提供する。
【0119】
受信相関行列算出部144は、複素差分伝達関数行列H’に基づいて、送信アンテナ213に対する受信アレイアンテナ122の複数の受信アンテナ123の相関を表す受信相関行列Rを算出する。受信相関行列算出部144の機能は、図2に示す第1の実施形態に係る検出装置10の受信相関行列算出部144の機能と同様であってよい。受信相関行列算出部144は、上記数式(4)に従って、受信相関行列Rを算出することができる。受信相関行列算出部144は、算出した受信相関行列Rについての情報を、評価関数算出部245に提供する。
【0120】
送信相関行列算出部247は、複素差分伝達関数行列H’に基づいて、受信アンテナ123に対する送信アレイアンテナ212の複数の送信アンテナ213の相関を表す送信相関行列Rを算出する。具体的には、送信相関行列Rは、下記数式(12)で定義される。
【0121】
【数12】
……(12)
【0122】
送信相関行列算出部247は、算出した送信相関行列Rについての情報を、評価関数算出部245に提供する。なお、受信相関行列算出部144と同様に、送信相関行列算出部247は、送信相関行列Rを算出する際に、所定の周波数帯域において計算された送信相関行列を周波数方向で平均化することにより、送信相関行列Rを求めてもよい。当該平均化の処理により、方向検出の精度をより向上させることができる。
【0123】
評価関数算出部245は、受信相関行列Rに基づいて、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示す評価関数P(θ)を算出する。また、評価関数算出部245は、送信相関行列Rに基づいて、送信アレイアンテナ212における信号の出発方向を示す評価関数P(θ)を算出する。当該評価関数P(θ)は、送信アレイアンテナ212における信号の出発方向を示すものであるため、当該評価関数P(θ)には、対象物510に向かって送信された信号の出発方向、すなわち送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向についての情報が含まれていると言える。このように、評価関数算出部245は、図2に示す第1の実施形態に係る評価関数算出部145の機能に加えて、送信アレイアンテナ212における信号の出発方向を示す評価関数P(θ)を算出する機能を有する。
【0124】
なお、当該評価関数P(θ)、P(θ)としては、アレイアンテナにおける信号の到来方向及び出発方向を推定する、各種の到来方向推定方法及び出発方向推定方法における評価関数が用いられてよい。第2の実施形態では、評価関数算出部245は、公知の各種の到来方向推定方法及び出発方向推定方法における評価関数P(θ)、P(θ)を算出することができる。ここでは、一例として、評価関数算出部245がMUSIC法における評価関数P(θ)、P(θ)を算出する場合について説明する。
【0125】
ここで、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示す評価関数P(θ)の算出方法は、上記[1−2.検出装置の構成]で説明した方法と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。ここでは、評価関数算出部245によって行われる、送信アレイアンテナ212における信号の出発方向を示す評価関数P(θ)の算出方法について詳しく説明する。
【0126】
まず、評価関数算出部245は、送信相関行列Rを固有値分解することにより、当該送信相関行列Rの固有ベクトルVと、当該固有ベクトルVの複素共役転置ベクトルであるVを算出する。送信相関行列Rの固有値分解は、下記数式(13)で表現される。
【0127】
【数13】
……(13)
【0128】
ここで、固有ベクトルVは、送信相関行列Rの固有ベクトルvによって構成される行列であり、下記数式(14)で表現される。なお、vはi列目の固有ベクトルを示しており、その要素数はm個である。
【0129】
【数14】
……(14)
【0130】
また、Dは対角要素が送信相関行列Rの固有値λt1,・・・,λtmtである対角行列であり、下記数式(15)で表される。なお、以下の説明では、送信相関行列Rの固有値λt1,・・・,λtmtを総称して固有値λとも呼称する。
【0131】
【数15】
……(15)
【0132】
次に、評価関数算出部245は、下記数式(16)で表現される評価関数P(θ)を算出する。
【0133】
【数16】
……(16)
【0134】
ここで、Lは方向検出の対象である対象物510の数である。上記数式(16)から、第2の実施形態においては、送信アレイアンテナ212に設けられる送信アンテナ213の数mは、対象物510の数Lよりも多いことが求められる。換言すれば、送信アレイアンテナ212を構成する送信アンテナ213の数mが、対象物510の数Lよりも多い場合であれば、第2の実施形態における対象物510の検出処理が適用可能であると言える。
【0135】
また、a(θ)は送信アレイアンテナ212におけるステアリングベクトルであり、下記数式(17)で表される。
【数17】
……(17)
【0136】
ステアリングベクトルa(θ)は、角度θに対する送信アレイアンテナ212を構成する各送信アンテナ213の振幅比及び位相差を表すベクトルであり、対象物510の方向を検出する際の角度θの基準となる位置(図5に示す基準点Q)に対する各送信アンテナ213の位置に基づいて決定される。なお、ステアリングベクトルa(θ)の具体的な設定方法は、一般的なMUSIC法におけるステアリングベクトルの設定方法と同様であってよい。
【0137】
以上、評価関数算出部245による評価関数P(θ)の算出方法について詳しく説明した。評価関数算出部245は、算出した評価関数P(θ)、P(θ)についての情報を、方向検出部246に提供する。
【0138】
方向検出部246は、評価関数P(θ)に基づいて、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を検出する。また、方向検出部246は、評価関数P(θ)に基づいて、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を検出する。このように、方向検出部246は、図2に示す第1の実施形態に係る方向検出部146の機能に加えて、評価関数P(θ)に基づいて送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を検出する機能を有する。
【0139】
具体的には、評価関数P(θ)と同様に、上記数式(16)に示す評価関数P(θ)によって表現される特性は、MUSICスペクトルと呼ばれるものであり、評価関数P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θが、送信アレイアンテナ212からの対象物510が存在する方向に対応している。よって、方向検出部246は、評価関数P(θ)におけるピーク位置を抽出することにより、送信アレイアンテナ212に対する対象物510の存在する方向を示す角度θを求めることができ、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を検出することができる。対象物510が複数存在する場合には、評価関数P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θが複数抽出されることとなる。なお、以下の説明では、送信相関行列Rに基づいて検出される送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向のことを、第2の方向とも呼称する。
【0140】
上記[1−2.検出装置の構成]で説明した方法と同様の方法により、方向検出部246は、評価関数P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θを抽出することにより、受信アレイアンテナ122に対する対象物510の存在する方向を示す角度θを求めることができ、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を検出することができる。方向検出部246は、検出した第1の方向及び第2の方向についての情報を位置検出部248に提供する。方向検出部246は、第1の方向及び第2の方向についての情報として、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す角度θ、θについての情報を、位置検出部248に提供してもよい。
【0141】
位置検出部248は、方向検出部246によって検出された第1の方向及び第2の方向に基づいて、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置を検出する。方向検出部246による検出結果から、角度θによって表される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が分かる。また、同様に、方向検出部246による検出結果から、角度θによって表される送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向が分かる。更に、位置検出部248は、例えば記憶部130を参照することにより、受信アレイアンテナ122における基準点Qの位置(絶対座標)についての情報及び送信アレイアンテナ212における基準点Qの位置(絶対座標)についての情報を得ることができる。従って、位置検出部248は、受信アレイアンテナ122の位置、送信アレイアンテナ212の位置、第1の方向及び第2の方向に基づいて、これらの方向が示す直線の交点に対応する位置を、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510が存在する位置として検出することができる。対象物510が複数存在する場合には、評価関数P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θと、評価関数P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θとが、それぞれ複数個検出され得るので、位置検出部248は、それらの角度が示す複数の直線の各交点に対応する位置を、対象物510が存在する位置としてそれぞれ検出することができる。
【0142】
なお、図5に示すように、角度θは、受信アレイアンテナ122の受信面上に設定される基準点Qを基準とする角度であるため、方向検出部246によって検出される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向は、厳密には当該基準点Qからの対象物510の方向であるとも言える。同様に、角度θは、送信アレイアンテナ212の送信面上に設定される基準点Qを基準とする角度であるため、方向検出部246によって検出される送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向は、厳密には当該基準点Qからの対象物510の方向であるとも言える。ただし、当該基準点Q、Qは、受信アレイアンテナ122の受信面上及び送信アレイアンテナ212の送信面上にそれぞれ設定されればよく、これらの位置は例えばユーザによって適宜設定され得る。従って、基準点Qが設定される位置によっては、方向検出部246によって検出される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向は、例えば受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123のいずれかからの対象物510の方向でもあり得る。同様に、基準点Qが設定される位置によっては、方向検出部246によって検出される送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向は、例えば送信アレイアンテナ212を構成する送信アンテナ213のいずれかからの対象物510の方向でもあり得る。
【0143】
以下の説明においては、評価関数P(θ)に基づいて方向検出部246によって検出される対象物510の方向(すなわち、第1の方向)のことを、便宜的に、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向等と呼称するが、第2の実施形態においては、方向検出部246によって検出される第1の方向は、基準点Qからの対象物510の方向であってもよいし、受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123のいずれかからの対象物510の方向であってもよい。また、同様に、以下の説明においては、評価関数P(θ)に基づいて方向検出部246によって検出される対象物510の方向(すなわち、第2の方向)のことを、便宜的に、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向等と呼称するが、第2の実施形態においては、方向検出部246によって検出される第2の方向は、基準点Qからの対象物510の方向であってもよいし、送信アレイアンテナ212を構成する送信アンテナ213のいずれかからの対象物510の方向であってもよい。更に、同様に、以下の説明では、第1の方向及び第2の方向に基づいて位置検出部248によって検出される対象物510の位置のことを、便宜的に、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置等と呼称するが、第2の実施形態においては、位置検出部248によって検出される対象物510の位置は、第1の方向を示す角度θ及び第2の方向を示す角度θの基準となる位置に対する対象物510の位置であってよい。
【0144】
以上、図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る検出装置20の一構成例について説明した。第2の実施形態では、第1の実施形態によって得られる効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0145】
第2の実施形態においては、方向検出部246によって、第1の実施形態で検出される受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向(第1の方向)に加えて、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向(第2の方向)が検出される。そして、位置検出部248によって、受信アレイアンテナ122の位置、送信アレイアンテナ212の位置、第1の方向及び第2の方向に基づいて、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置が検出される。
【0146】
ここで、第2の実施形態における第2の方向の検出においても、第1の実施形態における第1の方向の検出と同様に、第1の複素伝達関数と第2の複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数を用いた検出処理が行われる。従って、第2の方向の検出処理も、より短い測定時間で行うことができる。このように、第2の実施形態では、対象物510の有無での伝搬路の差分を表す複素差分伝達関数を用いることにより、例えば非特許文献1に記載された従来の方法に比べて、より短い測定時間(例えばmsオーダー(order)程度のごく短い時間)で受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向の検出処理を行うことができる。また、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向の検出は、例えば図4に示すように、非特許文献2に示す従来の方法に比べてより正確に行うことができる。従って、第2の実施形態では、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向の検出、更には、検出されたこれらの方向に基づく受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置の検出を、より短い測定時間でより正確に行うことが可能となる。
【0147】
なお、第1の実施形態と同様、第2の実施形態では、評価関数算出部245によって行われる演算処理は、一般的にMUSIC法において行われる演算処理と同様であってよい。従って、第2の実施形態における評価関数P(θ)、P(θ)の算出処理は、一般的なMUSIC法での評価関数の算出処理において用いられる相関行列を上記数式(4)及び上記数式(12)に示す受信相関行列R又は送信相関行列Rにそれぞれ置換したものであり得る。
【0148】
また、上記では、信号の到来方向を推定する方法としてMUSIC法を用いる場合について説明したが、第2の実施形態はかかる例に限定されない。第2の実施形態では、評価関数算出部245は、信号の到来方向及び出発方向を推定する他の方法における評価関数を算出してもよく、方向検出部246は、当該他の方法における評価関数に基づいて対象物510の方向を検出してもよい。到来方向及び出発方向を推定する他の方法としては、例えば、ビームフォーマ法、Capon法及び線形予測法等を用いることができる。評価関数算出部245は、一般的にこれらの各方法の評価関数の算出処理において用いられる相関行列を、上記数式(4)、(12)に示す受信相関行列R又は送信相関行列Rにそれぞれ置換することにより、これらの各方法に対応する評価関数を算出することが可能である。
【0149】
また、第2の実施形態に係る検出装置20も、第1の実施形態と同様に、図6には明示されない各種の構成、例えば、表示画面に各種の情報を表示する表示部や、外部の他の機器との間で各種の情報を送受信する通信部等の機能を更に備えてもよい。そして、方向検出部246によって検出された第1及び第2の方向についての情報や、位置検出部248によって検出された対象物510の位置についての情報が、例えば当該表示部に表示されてユーザに対して通知されたり、当該通信部を介して外部の他の機器に送信されて当該他の機器の記憶部に保存されたりしてよい。このように、第2の実施形態では、方向検出部246によって検出された第1及び第2の方向についての情報や、位置検出部248によって検出された対象物510の位置についての情報が出力される先は任意であってよい。例えば、検出装置20の表示部や外部の他の機器の表示部に、検出結果がリアルタイムで表示されてもよいし、検出装置20の記憶部130や外部の他の機器の記憶部に所定の期間の検出結果が履歴として保存されてもよい。
【0150】
また、第2の実施形態に係る検出装置20の機能構成は図6に示す例に限定されない。第1の実施形態に係る検出装置10と同様に、第2の実施形態に係る検出装置20が有する機能は、必ずしも単一の装置によって実現されなくてもよく、ネットワークによって互いに接続された複数の装置の協働によって実現されてもよい。
【0151】
[2−3.検出方法の処理手順]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る検出方法の処理手順について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る検出方法の処理手順の一例を示すフロー図である。なお、図7に示す各処理は、上述した検出装置20の機能構成によって実現されることができ、例えば、検出装置20の制御部240を構成するプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより実現され得る。
【0152】
また、図7に示す第2の実施形態に係る検出方法の処理手順は、図3を参照して説明した第1の実施形態に係る検出方法の処理手順に対して、その一部が変更されたものに対応する。従って、以下の第2の実施形態に係る検出方法の処理手順についての説明では、第1の実施形態との相違点について主に説明することとし、重複する事項についてはその詳細な説明は省略する。
【0153】
図7を参照すると、本発明の第2の実施形態に係る検出方法においては、まず、例えば複素伝達関数測定部242によって、送信アレイアンテナ212と受信アレイアンテナ122との間における信号の伝搬路を表す複素伝達関数が測定される(ステップS201)。ステップS201に示す処理は、算出される複素伝達関数の数が、受信アレイアンテナ122を構成する受信アンテナ123の数m及び送信アレイアンテナ212を構成する送信アンテナ213の数mに対応するm×mに拡張されること以外は、図3に示す第1の実施形態におけるステップS101に示す処理と同様であってよい。ステップS201に示す処理では、複素伝達関数が行列の形式で表現された、対象物510が存在する場合における複素伝達関数行列H及び対象物510が存在しない場合における複素伝達関数行列Hnoが測定され得る。
【0154】
次に、例えば複素差分伝達関数算出部143によって、対象物510が存在する場合における複素伝達関数と対象物510が存在しない場合における複素伝達関数との差分である複素差分伝達関数が算出される(ステップS103)。次いで、例えば受信相関行列算出部144によって、複素差分伝達関数行列H’に基づいて、送信アンテナ112に対する受信アレイアンテナ122の複数の受信アンテナ123の相関を表す受信相関行列Rが算出される(ステップS105)。これらステップS103及びステップS105に示す処理は、図3に示す第1の実施形態におけるステップS103及びステップS105に示す処理と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。
【0155】
第2の実施形態では、次に、例えば送信相関行列算出部247によって、受信アンテナ123に対する送信アレイアンテナ212の複数の送信アンテナ213の相関を表す送信相関行列Rが算出される(ステップS206)。送信相関行列Rは、例えば上記数式(12)を用いて算出され得る。なお、ステップS105に示す受信相関行列Rを算出する処理と、ステップS206に示す送信相関行列Rを算出する処理とは、どちらの処理が先に行われてもよいし、並列して行われてもよい。
【0156】
次に、例えば評価関数算出部245によって、受信相関行列R及び送信相関行列Rが固有値分解され、受信相関行列Rの固有値λ、受信相関行列Rの固有ベクトルU、送信相関行列Rの固有値λ、送信相関行列Rの固有ベクトルV及びステアリングベクトルa(θ)、a(θ)が算出される(ステップS207)。そして、同じく例えば評価関数算出部245によって、これらの算出結果に基づいて、受信アレイアンテナ122における信号の到来方向を示す評価関数P(θ)及び送信アレイアンテナ212における信号の出発方向を示す評価関数P(θ)が算出される(ステップS209)。ステアリングベクトルa(θ)、a(θ)及び評価関数P(θ)、P(θ)は、例えば上記数式(9)、(17)、(8)、(16)をそれぞれ用いて算出され得る。
【0157】
次に、例えば方向検出部246によって、評価関数P(θ)に基づいて受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向が検出されるとともに、評価関数P(θ)に基づいて送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向が検出される(ステップS211)。具体的には、評価関数P(θ)、P(θ)におけるピーク位置に対応する角度θ、θが抽出され、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510が存在する方向を示す角度θ、θが求められることにより、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向(第1の方向)及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向(第2の方向)が検出され得る。
【0158】
次に、例えば位置検出部248によって、ステップS211で検出された第1の方向及び第2の方向に基づいて、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置が検出される(ステップS213)。具体的には、受信アレイアンテナ122の位置、送信アレイアンテナ212の位置、第1の方向及び第2の方向に基づいて、これらの方向が示す直線の交点に対応する位置が、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510が存在する位置として検出され得る。
【0159】
以上、図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る検出方法の処理手順について説明した。なお、上記では、ステップS209に示す処理において、評価関数P(θ)、P(θ)として、上記数式(8)及び上記数式(16)に示すMUSIC法における評価関数P(θ)、P(θ)が算出されているが、第2の実施形態はかかる例に限定されない。第2の実施形態では、ステップS209に示す処理において、信号の到来方向及び出発方向を推定する他の方法における評価関数が算出されてもよく、ステップS211、S213に示す処理において、当該他の方法における評価関数に基づいて対象物510の方向及び位置が検出されてもよい。信号の到来方向及び出発方向を推定する他の方法としては、例えば、ビームフォーマ法、Capon法及び線形予測法等が用いられてよい。
【0160】
<3.第3の実施形態>
[3−1.第3の実施形態の概要]
次に、図8を参照して、本発明の第3の実施形態の概要について説明する。図8は、本発明の第3の実施形態における対象物の検出処理の概要について説明するための説明図である。
【0161】
図8を参照すると、複数の送信アンテナ213からなる送信アレイアンテナ212を有する送信装置211と、複数の受信アンテナ123からなる受信アレイアンテナ122を有する受信装置121とが、所定の領域を挟んで対向して配置されている。当該所定の領域内には、複数の対象物510(例えば人)が存在している。なお、送信装置211及び受信装置121の具体的な構成は、図5を参照して説明した第2の実施形態における送信装置211及び受信装置121の構成と同様であってよいため、詳細な説明は省略する。
【0162】
このように、図8に示す構成は、図5に示す第2の実施形態における対象物510の検出処理における構成と同様である。上記[2−1.第2の実施形態の概要]で説明したように、当該構成においては、受信アレイアンテナ122及び送信アレイアンテナ212に対する対象物510の位置を検出することが可能となる。具体的には、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線と、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線との交点に対応する位置として、当該対象物510の位置が検出され得る。
【0163】
ここで、図8に示すように、複数の対象物510の位置が検出される場合について考える。上記[2−2.検出装置の構成]で説明したように、複数の対象物510が存在する場合には、評価関数P(θ)、P(θ)におけるピーク位置が、対象物510の数に対応する数だけ現れる。従って、複数の当該ピーク位置に対応する複数の角度θ、θが抽出されることとなり、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線及び送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線も、それぞれ複数本検出され得る。
【0164】
上述したように、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線と、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線との交点に対象物510が存在し得るはずであるが、これらの直線が複数本存在する場合には、図8に示すように、実際には対象物510が存在しない位置にも交点が存在することとなる。このような対象物510が存在しない位置に現れる交点は、対象物510の検出処理を行った際に、実際には対象物510が存在しないにもかかわらず、あたかも対象物510が存在するかのように検出されてしまう可能性がある。このように誤検出された対象物510のことを、虚像とも呼称する。図8では、虚像が検出され得る位置である虚像位置530のうちのいくつかを黒丸で図示している。
【0165】
本発明の第3の実施形態における対象物510の検出処理では、受信アレイアンテナ122によって受信された信号に対して、下記[3−2.検出装置の構成]で詳述する処理を施すことにより、複数の対象物510が存在する場合において、虚像位置530が除去された対象物510の検出処理を行うことができる。このように、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線と、送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、虚像位置530が除去された対象物510の検出を行うことにより、より正確な対象物510の位置検出を行うことが可能となる。以下では、下記[3−2.検出装置の構成]において、第3の実施形態における対象物510の検出処理を実現するための検出装置の一構成例について説明する。また、下記[3−3.検出方法の処理手順]において、第3の実施形態における対象物510の検出処理における処理手順の流れの一例について説明する。
【0166】
なお、図8に示す例では、対象物510が3つ存在する場合について図示している。以下の第3の実施形態についての説明においても、対象物510が3つ存在する場合を例に挙げて説明を行うが、第3の実施形態はかかる例に限定されない。第3の実施形態においては、対象物510の数は限定されず、1よりも多い任意の数であってよい。対象物510の数が他の場合であっても、以下に説明する処理と同様の処理を行うことにより、虚像位置530が除去された対象物510の検出を行うことが可能である。
【0167】
[3−2.検出装置の構成]
図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る検出装置の一構成例について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係る検出装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0168】
図9を参照すると、第3の実施形態に係る検出装置30は、送信部210、受信部120、記憶部130及び制御部340を備える。なお、図9に示す検出装置30の各機能は、例えば、後述する図12に示すハードウェア構成によって実現され得る。ここで、第3の実施形態に係る検出装置30は、図6に示す第2の実施形態に係る検出装置20に対して、一部の機能が変更されたものに対応する。従って、以下の検出装置30の構成についての説明では、第2の実施形態との相違点について主に説明することとし、重複する事項については詳細な説明を省略する。
【0169】
検出装置30における送信部210、受信部120及び記憶部130の機能は、図6に示す第2の実施形態における送信部210、受信部120及び記憶部130の機能と同様であってよいため、その詳細な説明は省略する。
【0170】
制御部340は、例えばCPU、DSP等の各種のプロセッサによって構成され、検出装置30の動作を統合的に制御する。制御部340は、その機能として、受信駆動制御部141、送信駆動制御部147、複素伝達関数測定部242、複素差分伝達関数算出部143、受信相関行列算出部144、送信相関行列算出部247、評価関数算出部245、方向検出部246及び位置検出部348を有する。なお、これらの各機能は、制御部340を構成するプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより実現され得る。
【0171】
ここで、制御部340が有する機能のうち、受信駆動制御部141、送信駆動制御部147、複素伝達関数測定部242、複素差分伝達関数算出部143、受信相関行列算出部144、送信相関行列算出部247、評価関数算出部245及び方向検出部246の機能は、第2の実施形態に係る制御部240が有するこれらの機能と同様であってよい。このように、第3の実施形態に係る制御部340は、第2の実施形態に係る制御部240に対して、位置検出部248の機能が変更されたものに対応している。従って、以下では、制御部340が有する機能の中でも、位置検出部348について詳しく説明する。
【0172】
位置検出部348は、受信相関行列Rの固有値λと、受信相関行列Rの固有ベクトルUと、送信相関行列Rの固有値λと、送信相関行列Rの固有ベクトルVと、受信アレイアンテナ122におけるステアリングベクトルa(θ)と、送信アレイアンテナ212におけるステアリングベクトルa(θ)と、に基づいて、虚像位置530が除去された対象物510の位置を検出する。具体的には、位置検出部348は、受信相関行列Rの固有ベクトルUと受信アレイアンテナ122における第1の方向に対応するステアリングベクトルa(θ)との内積値、送信相関行列Rの固有ベクトルVと送信アレイアンテナ212における第2の方向に対応するステアリングベクトルa(θ)との内積値、受信相関行列Rの固有値λ、及び、送信相関行列Rの固有値λに基づいて、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線と送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、虚像位置530が除去された対象物510の位置を検出する。
【0173】
具体的に数値を挙げて、第3の実施形態に係る位置検出部348における対象物510の検出処理について説明する。例えば、受信アレイアンテナ122における受信アンテナ123の数及び送信アレイアンテナ212における送信アンテナ213の数が、ともに4本(すなわち、m=4、m=4)であるとする。また、図8に示すように、対象物510が3つ存在するとする。このとき、検出装置30の評価関数算出部245により、受信アレイアンテナ122に対する評価関数P(θ)を算出すると、当該評価関数P(θ)は、例えば図10に示すような特性を有する。図10は、第3の実施形態における評価関数P(θ)の一例を示すグラフ図である。
【0174】
図10を参照すると、評価関数P(θ)には、対象物510の数に対応して、3つのピークが現れていることが分かる。これらのピーク位置に対応する角度θは、それぞれ、−42(deg)、−18(deg)、26(deg)である。このように、評価関数算出部245による算出結果から、例えば方向検出部246によって、評価関数P(θ)におけるピーク位置及び当該ピーク位置に対応する角度θが抽出される。
【0175】
まず、位置検出部348は、受信相関行列Rの固有値λと、送信相関行列Rの固有値λとを、ともに降順に並べ替える処理を行う。降順に並べ替えた後における受信相関行列Rの固有値をλr1,λr2,λr3,λr4とし、降順に並べ替えた後における送信相関行列Rの固有値をλt1,λt2,λt3,λt4とする。すなわち、固有値λのうち、最大固有値はλr1であり、最小固有値はλr4である。また、固有値λのうち、最大固有値はλt1であり、最小固有値はλt4である。ここで、受信相関行列Rの固有値λと、送信相関行列Rの固有値λとを、ともに降順に並べ替えると、i番目(i=1〜4)の固有値同士は、比較的近い値になる。当該i番目の固有値同士は、同一の対象物510に対応していると考えることができる。
【0176】
また、受信相関行列Rの固有値λと、送信相関行列Rの固有値λとを、ともに降順に並べ替えた場合には、固有値の値が大きいものから順に対象物510に対応していると考えられる。つまり、最大固有値であるλr1及びλt1が第1の対象物510に対応しており、次に大きい値を有する固有値であるλr2及びλt2が第2の対象物510に対応しており、次に大きい値を有する固有値であるλr3及びλt3が第3の対象物510に対応している。このように、位置検出部348は、受信相関行列Rの固有値λと、送信相関行列Rの固有値λとを、降順に並べ替え、その値が大きいものから順に抽出することにより、各対象物510に対応する固有値λ、λを抽出することができる。
【0177】
次に、位置検出部348は、方向検出部246から評価関数P(θ)のピーク位置に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、評価関数P(θ)における各ピーク位置を示す角度θに対応するステアリングベクトルa(θ)と、受信相関行列Rの固有ベクトルu,・・・,uとの内積を、その全ての組み合わせについて計算する。当該内積計算の結果の一例を下記表1に示す。なお、固有ベクトルu,・・・,uは、降順に並び替えられた固有値λr1,λr2,λr3,λr4にそれぞれ対応している。
【0178】
【表1】
【0179】
上記表1の各列(すなわち、各固有ベクトルu,・・・,uに対応する列)に注目すると、各列の中に、内積値が最も大きくなる、固有ベクトルu,・・・,uとステアリングベクトルa(θ)との組み合わせが存在することが分かる。例えば、固有ベクトルuに対応する列では、uとθ=18(deg)に対応するa(18)との内積値が、uと他のステアリングベクトルa(θ)との内積値よりも大きな値を有している。表1では、説明のため、各列において最も大きい値を有する内積値に下線を付して示している。なお、本例では、対象物510の数は3であり、固有ベクトルuに対応する対象物510は存在しないと考えられるため、固有ベクトルuに対応する列においては下線の記載は省略している。
【0180】
このようにして、各固有ベクトルu,・・・,uに対して、各固有ベクトルとの内積値が最大となるステアリングベクトルa(θ)及び当該最大の内積値を与えるステアリングベクトルa(θ)に対応する角度θが抽出される。上記表1の例であれば、位置検出部348は、固有ベクトルuに対応するステアリングベクトルa(θ)及び角度θとしてa(18)及びθ=18(deg)を抽出し、固有ベクトルuに対応するステアリングベクトルa(θ)及び角度θとしてa(26)及びθ=26(deg)を抽出し、固有ベクトルuに対応するステアリングベクトルa(θ)及び角度θとしてa(−42)及びθ=−42(deg)を抽出する。
【0181】
同様に、位置検出部348は、送信アレイアンテナ212に対しても、方向検出部246から評価関数P(θ)のピーク位置に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、評価関数P(θ)における各ピーク位置を示す角度θに対応するステアリングベクトルa(θ)と、送信相関行列Rの固有ベクトルv,・・・,vとの内積を、その全ての組み合わせについて計算する。そして、その計算結果から、位置検出部348は、各固有ベクトルv,・・・,vに対して、各固有ベクトルとの内積値が最大となるステアリングベクトルa(θ)及び当該最大の内積値を与えるステアリングベクトルa(θ)に対応する角度θを抽出する。
【0182】
当該抽出結果に基づいて、位置検出部348は、最大固有値であるλr1及びλt1に対応する第1の対象物に対応する角度θ及びθと、2番目に大きな値を有する固有値であるλr2及びλt2に対応する第2の対象物に対応する角度θ及びθと、3番目に大きな値を有する固有値であるλr3及びλt3に対応する第3の対象物に対応する角度θ及びθと、を抽出することができる。抽出されたこれらの対象物510と角度θ及びθとの関係は、虚像の影響が除去された対象物510と角度θ及びθとの関係である。従って、位置検出部348は、当該抽出結果に基づいて対象物510の位置を検出することにより、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線と送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、虚像位置530が除外された対象物510の位置を検出することができる。
【0183】
以上、図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る検出装置30の一構成例について説明した。第3の実施形態では、第2の実施形態によって得られる効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0184】
第3の実施形態においては、第2の実施形態における構成に加えて、位置検出部348によって虚像の影響が除去された対象物510の位置の検出処理が行われる。具体的には、位置検出部348は、受信相関行列Rの固有値λ及び送信相関行列Rの固有値λを降順に並び替えた際に、少なくとも降順において互いに1番目に位置する固有値同士である最大固有値同士を含む、互いに同じ順序に位置する固有値同士に対して、受信相関行列Rの固有値に対応する固有ベクトルとの内積値が最大となる受信アレイアンテナ122のステアリングベクトルa(θ)に対応する第1の方向と、送信相関行列Rの固有値に対応する固有ベクトルとの内積値が最大となる送信アレイアンテナ212のステアリングベクトルa(θ)に対応する第2の方向と、に基づいて対象物510の位置を検出する。より具体的には、位置検出部348は、受信相関行列Rの固有値λ及び送信相関行列Rの固有値λを降順に並び替え、受信相関行列Rの降順における1番目の固有値である最大固有値に対応する固有ベクトルとの内積が最大となる受信アレイアンテナ122のステアリングベクトルa(θ)に対応する第1の方向と、送信相関行列Rの降順における1番目の固有値である最大固有値に対応する固有ベクトルとの内積が最大となる送信アレイアンテナ212のステアリングベクトルa(θ)に対応する第2の方向と、に基づいて第1番目の対象物510の位置を検出し、受信相関行列Rの降順における2番目以降の固有値に対応する固有ベクトルとの内積が最大となる受信アレイアンテナ122のステアリングベクトルa(θ)に対応する第1の方向と、送信相関行列Rの降順における2番目以降の固有値に対応する固有ベクトルとの内積が最大となる送信アレイアンテナ212のステアリングベクトルa(θ)に対応する第2の方向と、に基づいて第2番目以降の対象物510の位置を検出する。
【0185】
このように、第3の実施形態では、各対象物510に対応する受信相関行列Rの固有値λ及び送信相関行列Rの固有値λが抽出され、それらの固有値に対応する角度θ、θが、受信相関行列Rの固有ベクトルUとステアリングベクトルa(θ)との内積値及び送信相関行列Rの固有ベクトルVとステアリングベクトルa(θ)との内積値に基づいて抽出されることにより、虚像位置530が除外された対象物510の位置が検出される。従って、第3の実施形態においては、より短い測定時間で対象物510の位置が検出可能であるとともに、虚像の影響が除去された、より正確な対象物510の位置検出が実現される。
【0186】
また、第3の実施形態に係る検出装置30も、第1及び第2の実施形態と同様に、図9には明示されない各種の構成、例えば、表示画面に各種の情報を表示する表示部や、外部の他の機器との間で各種の情報を送受信する通信部等の機能を更に備えてもよい。そして、方向検出部246によって検出された第1及び第2の方向についての情報や、位置検出部348によって検出された虚像位置530が除去された対象物510の位置についての情報が、例えば当該表示部に表示されてユーザに対して通知されたり、当該通信部を介して外部の他の機器に送信されて当該他の機器の記憶部に保存されたりしてよい。このように、第3の実施形態では、方向検出部246によって検出された第1及び第2の方向についての情報や、位置検出部348によって検出された虚像位置530が除去された対象物510の位置についての情報が出力される先は任意であってよい。例えば、検出装置30の表示部や外部の他の機器の表示部に、検出結果がリアルタイムで表示されてもよいし、検出装置30の記憶部130や外部の他の機器の記憶部に所定の期間の検出結果が履歴として保存されてもよい。
【0187】
また、第3の実施形態に係る検出装置30の機能構成は図9に示す例に限定されない。第1及び第2の実施形態に係る検出装置10、20と同様に、第3の実施形態に係る検出装置30が有する機能は、必ずしも単一の装置によって実現されなくてもよく、ネットワークによって互いに接続された複数の装置の協働によって実現されてもよい。
【0188】
[3−3.検出方法の処理手順]
次に、図11を参照して、本発明の第3の実施形態に係る検出方法の処理手順について説明する。図11は、本発明の第3の実施形態に係る検出方法の処理手順の一例を示すフロー図である。なお、図11に示す各処理は、上述した検出装置30の機能構成によって実現されることができ、例えば、検出装置30の制御部340を構成するプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより実現され得る。
【0189】
また、図11に示す第3の実施形態に係る検出方法の処理手順は、図7を参照して説明した第2の実施形態に係る検出方法の処理手順に対して、その一部が変更されたものに対応する。従って、以下の第3の実施形態に係る検出方法の処理手順についての説明では、第2の実施形態との相違点について主に説明することとし、重複する事項についてはその詳細な説明は省略する。
【0190】
図11を参照すると、第3の実施形態に係る検出方法の処理手順においては、評価関数P(θ)、P(θ)を算出し、そのピーク位置に対応する角度θ、θを抽出するまでの処理、すなわち、ステップS101〜ステップS211に示す処理は、上述した第2の実施形態におけるこれらの処理と同様であってよい。第3の実施形態に係る検出方法の処理手順は、第2の実施形態に係る検出方法の処理手順に対して、対象物510の位置を検出する旨の処理であるステップS213に示す処理の内容が変更されたものに対応している。従って、以下では、第3の実施形態に係る検出方法の処理手順の中でも、これらの処理について詳しく説明する。
【0191】
第3の実施形態においては、ステップS111に示す処理(対象物の方向を検出する処理)に次いで、例えば、位置検出部348によって、受信相関行列Rの固有値λと、受信相関行列Rの固有ベクトルUと、送信相関行列Rの固有値λと、送信相関行列Rの固有ベクトルVと、受信アレイアンテナ122におけるステアリングベクトルa(θ)と、送信アレイアンテナ212におけるステアリングベクトルa(θ)と、に基づいて、受信アレイアンテナ122からの対象物510の方向を示す直線と送信アレイアンテナ212からの対象物510の方向を示す直線との交点に対応する位置の中から、虚像位置530が除去された対象物510の位置が検出される(ステップS313)。当該虚像位置530が除去された対象物510の位置検出の具体的な方法については、上記[3−2.検出装置の構成]で説明しているため、詳細な説明は省略する。
【0192】
以上、図11を参照して、本発明の第3の実施形態に係る検出方法の処理手順について説明した。第3の実施形態によれば、第2の実施形態に係る検出方法の処理手順に加えて、虚像位置530が除去された対象物510の位置検出が行われるため、より短い測定時間で対象物510の位置が検出可能であるとともに、虚像の影響が除去されたより正確な対象物510の位置検出が実現される。
【0193】
<4.ハードウェア構成>
次に、図12を参照して、本発明の第1、第2及び第3の実施形態に係る検出装置のハードウェア構成の一例について説明する。図12は、本発明の第1、第2及び第3の実施形態に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、図12に示す検出装置900は、例えば、図2図6及び図9に示す検出装置10、20、30を実現し得る。
【0194】
検出装置900は、CPU901、ROM903(Read Only Memory 903)、およびRAM905(Random Access Memory 905)を含む。また、検出装置900は、ホストバス907(host bus 907)、ブリッジ909(bridge 909)、外部バス911、インターフェース913(interface 913)、送信装置914、受信装置916、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919(storage device 919)、通信装置921、ドライブ923(drive 923)、接続ポート925(connection port 925)を含んでもよい。検出装置900は、CPU901に代えて、又はこれとともに、DSP若しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)と呼ばれるような処理回路を有してもよい。
【0195】
CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919又はリムーバブル記録媒体929(removable recording medium 929)に記録された各種プログラムに従って、検出装置900内の動作全般又はその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ(parameter)等を記憶する。RAM905は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行時のパラメータ等を一次記憶する。CPU901、ROM903及びRAM905は、CPUバス等の内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。更に、ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス等の外部バス911に接続されている。CPU901は、本実施形態では、例えば上述した検出装置10、20、30の制御部140、240、340に対応する。
【0196】
ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0197】
送信装置914は、少なくとも1つの送信アンテナを有し、当該送信アンテナから所定の領域に向かって例えばマイクロ波等の電波からなる信号を送信する。送信装置914は、送信装置914を駆動し所定の特性を有する信号を送信させる駆動回路を含み得る。当該駆動回路は、例えば、信号を発生させる信号源、信号を変調する変調回路及び信号を増幅する増幅器等を有し、所定の特性(例えば、振幅、周波数、位相等)の信号を送信可能に構成される。送信装置914は、本実施形態では、例えば上述した図1図5及び図8に示す送信装置111、211に対応するものであり、検出装置10、20、30の送信部110、210を構成し得る。
【0198】
受信装置916は、少なくとも1つの受信アンテナを有し、当該受信アンテナによって例えばマイクロ波等の電波からなる信号を受信する。受信装置916は、受信装置916を駆動し所定の特性を有する信号を受信させる駆動回路を含み得る。当該駆動回路は、例えば、信号を復調する復調回路及び信号を増幅する増幅器等を有し、例えば送信装置914が送信する信号の特性に応じて、当該特性を有する信号を受信可能に構成される。受信装置916は、本実施形態では、例えば上述した図1図5及び図8に示す受信装置121に対応するものであり、検出装置10、20、30の受信部120を構成し得る。
【0199】
入力装置915は、例えば、マウス(mouse)、キーボード(keyboard)、タッチパネル(touch panel)、ボタン(button)、スイッチ(switch)及びレバー(lever)等、ユーザによって操作される装置によって構成される。また、入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール装置(remote control device)であってもよいし、検出装置900の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器931であってもよい。更に、入力装置915は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。検出装置900のユーザは、この入力装置915を操作することにより、検出装置900に対して各種のデータ(data)を入力したり処理動作を指示したりすることができる。本実施形態においては、例えば、ユーザが、入力装置915を介して、対象物510の方向検出及び位置検出に関する各種の情報や指示(例えば、受信部120及び送信部110、210の駆動条件についての情報や、方向検出又は位置検出の開始指示等)を検出装置900に対して入力してもよい。
【0200】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ(display)装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ(plasma display)装置、ELディスプレイ装置及びランプ(lamp)等の表示装置や、スピーカ(speaker)及びヘッドホン(headphone)等の音声出力装置や、プリンタ(printer)装置等がある。出力装置917は、例えば、検出装置900が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、検出装置900が行った各種処理により得られた結果を、テキスト(text)、イメージ(image)、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。当該表示装置は、本実施形態では、例えば上述した検出装置10、20、30の表示部(図2図6及び図9では図示せず。)に対応する。本実施形態では、当該表示装置に、検出された対象物510の方向や位置についての情報が表示されてよい。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ(audio)信号をアナログ(analog)信号に変換して聴覚的に出力する。
【0201】
ストレージ装置919は、検出装置900の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ及び外部から取得した各種のデータ等を格納する。ストレージ装置919は、本実施形態では、例えば上述した検出装置10、20、30の記憶部130に対応する。本実施形態においては、検出装置10、20、30において処理される各種の情報(例えば検出された対象物510の方向や位置についての情報)が、ストレージ装置919に記憶されてもよい。
【0202】
通信装置921は、例えば、通信網(ネットワーク)927に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置921は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置921は、光通信用のルータ(router)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ又は各種通信用のモデム(modem)等であってもよい。この通信装置921は、例えば、インターネット(internet)や他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコル(protocol)に則して信号等を送受信することができる。また、通信装置921に接続されるネットワーク927は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ(radio)波通信又は衛星通信等であってもよい。通信装置921は、本実施形態では、例えば上述した検出装置10、20、30の通信部(図2図6及び図9では図示せず。)に対応する。本実施形態においては、検出装置10、20、30において処理される各種の情報(例えば検出された対象物510の方向や位置についての情報)が、通信装置921によってネットワーク927を介して他の装置との間で送受信されてもよい。
【0203】
ドライブ923は、記録媒体用リーダライタ(reader writer)であり、検出装置900に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ923は、装着されている磁気ディスク(disk)、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ(memory)等のリムーバブル記録媒体929に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ923は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体929に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体929は、例えば、DVDメディア(medium)、HD−DVDメディア、Blu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体929は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ(flash memory)又はSDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体929は、例えば、非接触型ICチップ(chip)を搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。本実施形態では、検出装置10、20、30において処理される各種の情報(例えば検出された対象物510の方向や位置についての情報)が、ドライブ923によってリムーバブル記録媒体929から読み出されたり、リムーバブル記録媒体929に書き込まれたりしてもよい。
【0204】
接続ポート925は、機器を検出装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート925の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート及びSCSI(Small Computer System Interface)ポート等がある。接続ポート925の別の例として、RS−232Cポート、光オーディオ端子及びHDMI(登録商標)(High−Definition Multimedia Interface)ポート等がある。この接続ポート925に外部接続機器931を接続することで、検出装置900は、外部接続機器931から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器931に各種のデータを提供したりする。本実施形態では、検出装置10、20、30において処理される各種の情報(例えば検出された対象物510の方向や位置についての情報)が、接続ポート925を介して外部接続機器931から取得されたり、外部接続機器931に出力されたりしてもよい。
【0205】
以上、本開示の実施形態に係る検出装置900の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0206】
また、上記図2図6及び図9に示す、第1、第2及び第3の実施形態に係る検出装置10、20、30の各機能は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、これらの機能を、CPU等のプロセッサが全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0207】
なお、上述のような本実施形態に係る検出装置10、20、30、900の各機能を実現するためのコンピュータプログラム(computer program)を作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。当該記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0208】
<5.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0209】
10、20、30 検出装置
110、210 送信部
120 受信部
130 記憶部
140、240、340 制御部
141 受信駆動制御部
142、242 複素伝達関数測定部
143 複素差分伝達関数測定部
144 受信相関行列算出部
145、245 評価関数算出部
146、246 方向検出部
147 送信駆動制御部
247 送信相関行列算出部
248、348 位置検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12