特許第6343854号(P6343854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6343854-階段設置方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343854
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】階段設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/02 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   E04F11/14
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-134176(P2013-134176)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-10326(P2015-10326A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】長澤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】久世 尚之
(72)【発明者】
【氏名】國岡 潤
(72)【発明者】
【氏名】横並 努
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−223422(JP,A)
【文献】 特開平08−144460(JP,A)
【文献】 特開2005−090116(JP,A)
【文献】 特開2005−240286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00−11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製の階段ユニットが、構造体の上端支持部に支持される上端部分と、構造体の下端支持部に支持される下端部分とを備え、
前記上端支持部と前記上端部分とに亘って二次コンクリートを打設することにより、前記上端部分を前記上端支持部に剛接合すると共に、前記下端部分を前記下端支持部に滑り支承を介して支持する階段設置方法であって、
前記上端部分を、前記上端部分の下面と前記階段ユニットの階段部分の下面とによって構成される入隅部が前記上端支持部の先端の上角部に当接する状態で前記上端支持部に支持し、
前記上端部分が前記上端支持部に載置されてから前記二次コンクリートが硬化するまでの間、前記入隅部を前記上角部に当接させた状態で、前記下端部分に突張作用して前記階段ユニットが水平方向に移動しないように位置保持する突張具を、当該下端部分と構造体の反力受け部とに亘って装着し、
前記二次コンクリートが硬化した後、前記突張具を撤去する階段設置方法。
【請求項2】
前記突張具が、前記下端部分と前記反力受け部との距離を調節可能な調節部を備えている請求項1に記載の階段設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート製の階段ユニットが、構造体の上端支持部に支持される上端部分と、構造体の下端支持部に支持される下端部分とを備え、前記上端部分を前記上端支持部に剛接合すると共に、前記下端部分を前記下端支持部に滑り支承を介して支持する階段設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記階段設置方法は、例えば地震により建物の変形が生じたときに、階段ユニットの建物に対する変位を許容してその破損を回避できるように、階段ユニットの上端部分を上端支持部に剛接合すると共に、下端部分を下端支持部に滑り支承を介して支持する。
特許文献1には、階段ユニットの上端部分を上端支持部に剛接合するために、構造体側にスタッドボルトを設けておくと共に、階段ユニット側にスタッドボルトを挿入するボルト挿入孔を形成しておき、スタッドボルトがボルト挿入孔に入り込むように階段ユニットを吊り下げて設置する階段設置方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−223422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の階段設置方法は、構造体側にスタッドボルトを設けおくと共に、階段ユニット側にボルト挿入孔を形成しておくので、構造が複雑化し易い。
また、スタッドボルトがボルト挿入孔に入り込むように階段ユニットを吊り下げて設置するので、設置に手間を要し、階段ユニットを作業用通路として早期に確保し難い。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、構造の簡略化を図り易く、階段ユニットを作業用通路として早期に確保し易い階段設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴構成は、プレキャストコンクリート製の階段ユニットが、構造体の上端支持部に支持される上端部分と、構造体の下端支持部に支持される下端部分とを備え、前記上端支持部と前記上端部分とに亘って二次コンクリートを打設することにより、前記上端部分を前記上端支持部に剛接合すると共に、前記下端部分を前記下端支持部に滑り支承を介して支持する階段設置方法であって、前記上端部分を、前記上端部分の下面と前記階段ユニットの階段部分の下面とによって構成される入隅部が前記上端支持部の先端の上角部に当接する状態で前記上端支持部に支持し、前記上端部分が前記上端支持部に載置されてから前記二次コンクリートが硬化するまでの間、前記入隅部を前記上角部に当接させた状態で、前記下端部分に突張作用して前記階段ユニットが水平方向に移動しないように位置保持する突張具を、当該下端部分と構造体の反力受け部とに亘って装着し、前記二次コンクリートが硬化した後、前記突張具を撤去する点にある。
【0006】
本構成の階段設置方法は、スタッドボルトやそのボルト挿入孔などの複雑な接合構造を設けることなく、階段ユニットの上端部分を上端支持部に載置して、その上端部分が上端支持部から脱落する方向への下端部分の移動を、下端部分に対して移動方向下手側から突張作用する突張具により阻止することができる。
このため、階段ユニットの上端部分を上端支持部に載置して、下端部分と構造体の反力受け部とに亘って突張具を装着するという簡便な作業で、上端部分が上端支持部から脱落しないように、階段ユニットを容易に設置することができる。
したがって、本構成の階段設置方法であれば、構造の簡略化を図り易いと共に、階段ユニットを作業用通路として早期に確保し易い。
更に、本構成であれば、複雑な接合構造を設けることなく、上端支持部と上端部分とを二次コンクリートで簡便に剛接合することができる。また、上端部分を上端支持部に載置した階段ユニットを、作業用通路として一層早期に確保し易い。
【0007】
本発明の他の特徴構成は、前記突張具が、前記下端部分と前記反力受け部との距離を調節可能な調節部を備えている点にある。
【0008】
本構成であれば、階段ユニットの下端部分と反力受け部との距離を調節して、階段ユニットを所定位置に位置決めすることができるので、階段ユニットの設置作業の能率向上を図り易い。
【0009】
【0010】
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】階段設置方法を示す側面断面図である。
図2】階段設置方法を示す側面断面図である。
図3】階段設置方法を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1図3は、鉄筋コンクリート製建物を構築する構造体Aの内部に、プレキャストコンクリート製の階段ユニットBを設置する本発明による階段設置方法を示す。階段ユニットBは、平面視で矩形の階段部分1と、階段部分1の前後に一体形成された上端部分2および下端部分3とを備える。
【0013】
上端部分2は、階段部分1の上端側から水平方向に突出するフラットな板状に形成され、構造体Aの階段室壁A1から突設した階段踊り場などを構成する上端支持部4に支持される。上端部分2の先端面2aには、多数の定着筋5を突出させてある。上端部分2の下面と階段ユニットBの階段部分1の下面とによって構成される入隅部2cが上端支持部4の先端の上角部4bに当接する状態で、上端部分2を上端支持部4に支持してある。
【0014】
上端支持部4は、上端部分2を受け止める段部6を備えたプレキャストコンクリートで構成されている。段部6は、上端部分2の先端面2aに対して水平方向から対向する側面6aと、上端部分2の下面に対して対向する底面6bとを備え、上端部分2の突出長さを超える長さで上端支持部4の先端に亘って形成してある。
【0015】
上端部分2を、定着筋5が段部6に入り込むように、当該段部6の端部に載置することにより、上端部分2の上面2bと上端支持部4の上面4aとが略面一に位置決めされる。
【0016】
段部6に載置した上端部分2と上端支持部4は、段部6の側面6aと上端部分2の先端面2aとの間に形成された充填空間に上端部分2と上端支持部4とに亘って打設した二次コンクリート7の付着力により、互いに剛接合される。
【0017】
下端部分3は、階段部分1の下端側下部に形成した水平方向に沿うフラットな被支持面3aを備え、被支持面3aが構造体Aに設けた床スラブなどの下端支持部8に滑り支承9を介して支持される。
【0018】
滑り支承9は、被支持面3aに固定された上部滑り板と、下端支持部(床スラブ)8の上面(床面)に固定された下部滑り板とを重ね合わせて構成してある。上部滑り板と下部滑り板との相対摺動により、下端部分3の下端支持部8に対する変位を許容する。
【0019】
上端部分2を上端支持部4に剛接合すると共に、下端部分3を下端支持部8に滑り支承9を介して支持する本発明による階段設置方法を説明する。
図1は、上端部分2を上端支持部4に形成した段部6の底面6bに載置すると共に、下端部分3を滑り支承9を介して下端支持部8に載置して、階段ユニットBを構造体Aに仮置きした状態を示す。
上端支持部4は、仮支柱10で下端支持部(床スラブ)8に支持されている。
【0020】
この仮置き状態において、上端部分2が上端支持部4から脱落する方向への下端部分3の移動に対して移動方向下手側から突張作用する突張具11を、当該下端部分3と構造体Aの階段室壁A1などで構成される反力受け部12とに亘って装脱自在に装着する。
突張具11の装着により、階段ユニットBが仮固定され、階段ユニットBを作業用通路として確保することができる。
【0021】
突張具11は、例えば駒部材11aの回転操作で伸縮自在なターンバックルで構成してある。突張具11の伸縮操作によって下端部分3と反力受け部12との距離を調節して、階段ユニットBを所定位置に位置決めする。したがって、駒部材11aが、下端部分3と反力受け部12との距離を調節可能な調節部に相当している。
なお、突張具11として、伸縮自在なパイプサポートを使用してもよい。
【0022】
図2は、段部6の側面6aと上端部分2の先端面2aとの間に形成された充填空間に、上端部分2と上端支持部4とに亘って二次コンクリート7を打設した状態を示す。二次コンクリート7の硬化により、上端部分2と上端支持部4とが互いに剛接合される。
【0023】
したがって、突張具11は、二次コンクリート7が所定強度を発現するように硬化するまで、下端部分3と反力受け部12とに亘って装着される。また、仮支柱10も、二次コンクリート7が所定強度を発現するように硬化するまで、上端支持部4と下端支持部(床スラブ)8との間に設置される。
【0024】
図3は、二次コンクリート7が硬化した後、仮支柱10および突張具11を撤去した状態を示す。したがって、例えば地震により建物の変形が生じたときに、階段ユニットBの建物に対する変位を滑り支承9により許容してその破損を回避できる。
【0025】
[別実施形態]
上記実施形態では、上端支持部4はプレキャストコンクリート部材として説明したが、上端支持部4は、段部6を備えないハーフプレキャストコンクリート部材や在来の床型枠等であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
2 上端部分
2c 入隅部
3 下端部分
4 上端支持部
4b 上角部
7 二次コンクリート
8 下端支持部
9 滑り支承
11 突張具
11a 調節部
12 反力受け部
A 構造体
B 階段ユニット
図1
図2
図3