(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343855
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】MAC層のレベルにおいてデータ伝送のリソースを最適化する方法、及びその方法を実施する装置
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
H04L1/00 E
H04L1/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-173451(P2013-173451)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-50107(P2014-50107A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】1202339
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505157485
【氏名又は名称】テールズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】ギャダ、バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ワンベク、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジネスト、マチュー
【審査官】
谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/126545(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01296494(EP,A2)
【文献】
特表2009−506713(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0002499(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0260266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中間アクセス層と物理層とを含むOSI型モデルに従ったデータ伝送のリソースを最適化する方法であって、変調及び前記物理層に適応した第1訂正符号の利用可能なペアに基づいて、
− 不完全な通信路上において伝送後に受け取ったデータ内のエラー率TEPsが、最大でも目標エラー率に等しいように、前記第1の訂正符号及び前記変調を適用する前に、前記ペアの各々に対し、伝送されるデータに適用されるべき第2の訂正符号の最大比率を決定することと、
− その全てが同じ大きさを持つように穴埋めのセクションで補完されている、受け取った複数Kのデータビットのパケットに基づいて、複数の冗長ビットのパケットNPRを生成するように、前記第2の訂正符号が、中間アクセス層のレベルにおいて適用されるべく意図されていることと、
− 前記中間アクセス層の入力におけるビット数と、実際に伝送されたビット数との間の比率を表わす情報の項目、又は変調と、第1及び第2の訂正符号を結び付ける解決策のグループに必要とされる伝送ビットレートを表わす情報の項目を評価することと、
− 変調と、第1及び第2の訂正符号を結び付ける解決策のグループの中から、どれが前記比率を最大化すること又は前記伝送ビットレートを最小化することを可能にするかを選定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記第2の訂正符号は、前記目標エラー率に適合するために必要なその最大比率が:
− 伝送路と関連する、変調と第1の訂正符号とからなるペアの、エラーの理論的確率を決定することと、
− 前記理論的確率によってモデル化された通信路上で、前記第2の訂正符号により保護されたデータの伝送のエラー率TEPsをシミュレートすることと、
− シミュレートされたエラー率TEPsが目標のエラー率よりも小さくなるまで、前記第2の訂正符号により生成された冗長ビットのパケット数を増加させることと
によって決定される、「最大距離分離」符号であることを特徴とする、請求項1に記載のデータ伝送のリソースを最適化する方法。
【請求項3】
前記中間アクセス層の入力におけるビット数と、実際に伝送されたビット数との間の前記比率を表わす、前記情報の項目が、次の関係式:
E=1−(TEPs.K.R)/(K+NPR)により計算され、ここで、NPRはK個のデータパケットを保護するために生成された冗長ビットのパケット数であり、かつRは前記変調の記号毎のビット数により乗算された前記第1の訂正符号の比率であることを特徴とする、請求項2に記載のデータ伝送のリソースを最適化する方法。
【請求項4】
前記第2の訂正符号がブロック符号、例えばReed Solomon(リード・ソロモン)符号であることを特徴とする、請求項2に記載のデータ伝送のリソースを最適化する方法。
【請求項5】
− 前記エラー率が誤ったMACパケットの比率であり、
− 変調と、採用された第1の訂正符号とからなるペアが、前記第1の訂正符号と前記変調の前記データパケットへの適用、及び前記中間アクセス層により提供される冗長パケットへの適用のために、物理層へと伝送されることを特徴とする、請求項1に記載のデータ伝送のリソースを最適化する方法。
【請求項6】
前記Kで補完されたデータパケットが、前もって前記第2の訂正符号の適用とインターリーブされることを特徴とする、請求項5に記載のデータ伝送のリソースを最適化する方法。
【請求項7】
冗長ビットの前記パケットのサイズが相互に等しく、かつ前記補完されたデータパケットのサイズに等しいことを特徴とする、請求項6に記載のデータ伝送のリソースを最適化する方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の、前記リソースを最適化する方法を実施するための手段を含む、データ伝送システム。
【請求項9】
前記手段が、少なくとも1つの中間アクセス層と、物理層と、伝搬路の品質についての情報項目とを含むことを特徴とする、請求項8に記載のデータ伝送システム。
【請求項10】
プログラムがプロセッサにより実行されるとき、請求項1に記載のリソースを最適化する方法を実行するための指示を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は無線データ伝送システムに関し、特に伝送チャンネルが時間と共に大幅に変化する妨害を受ける伝送システムに関する。
【0002】
本発明は、とりわけ通信路符号化、及び消費されるビットレートと伝送媒体の変動に対する堅牢性との間の効果的な妥協を探求することによる、データリンクのリソースにおける最適化の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明によって目的としている全般の技術的問題点は、伝搬路の変動に対するデータ伝送の適応である。伝搬路の品質についての情報項目に応じた変調と符号化のペアを適応させることにある、頭字語ACMにより既知の、いわゆる適応符号化及び変調技術(Adaptive Coding and Modulation technique)が知られている。この技術は特にWimax,UMTS,3GPP/LTE或いはDVB−S2規格において用いられている。この方法の目的は、システムによって提供される有用なビットレートを最適化しながら、与えられたサービスの品質レベルを保証するために、最善の変調と符号化パラメータとを決定することである。
【0004】
伝送システムにおけるACM法の実施は、幾つかのタイプの変調及び、同一訂正符号の幾つかの比率の管理を必要とする。ビットレート/保護の最適化をできる限り良好にし、伝搬路の変動に対する効果的な適応を可能にするため、極力多数の変調と符号化のペアによって益を得ることが絶対に必要である。今、この必要性は、それがとりわけ、通信路上で測定された、又は幾つかの別の等価な測定基準で測定された信号対雑音比(SN比)の関数として、変調/符号化のペアに関連するエラーの確率を推定できるようにする様々なグラフを格納するように、記憶スペースの観点で相当なリソースを持つことを伴うため、技術的な限界に直面する。さらに、あまりに多数の可能な選択肢はまた、伝送リンクの品質測定に基づき変調と符号化のパラメータの適応化を行なう制御ループの不安定さを生じる可能性があり、従って行われる処理の遅れを発生させ、それはリアルタイムの状況において不利益をもたらし得る。
【0005】
ACM法の実際の実施は、それゆえ一般的に限られた数の変調/符号化ペアを通じて行われる。
【0006】
この著しい細分性は、そのときシステムの性能に関する欠点を示す。実際、ACM法の適用は、受信の際の与えられたエラー率の制約に適合できるようにする変調/符号化のペアの決定を目的としている。しかしながら、この目的を達成するために採用される選択は、訂正符号によって加えられる冗長性のために、有用なビットレート及びスペクトル効率の低下を生じる。1つの変調/符号化のペアから別の変調/符号化のペアへの切り替えは、その著しい細分性のために有用なビットレート及びスペクトル効率の大幅な低下を生じ得る。
【0007】
この欠点は、4つの異なる変調/符号化のペアに対するSN比の関数としてのスペクトル効率を表わす、
図1に例証されている。曲線10は、比率が1/3の符号と関連するQPSK(四相位相偏移変調=quadrature phase shift keying)に対応する。曲線20は、比率が1/2の符号と関連するQPSK(四相位相偏移変調)に対応する。曲線30は、比率が2/3の符号と関連するQPSK(四相位相偏移変調)に対応する。曲線40は、比率が3/4の符号と関連するQPSK(四相位相偏移変調)に対応する。SN比のしきい値を超えると、スペクトル効率は水平域の値に達する。最大の到達可能なスペクトル効率は、選ばれたペアに応じて、時に0.1ビット/sec/Hzよりも大きい差を示す。ポテンシャル過剰効率の領域50は曲線上で識別される。それらは、加えられた保護が、得られる堅牢性におけるゲインに関して、有用なビットレートをあまりに著しく制限する場合に相当する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、いわゆるACM法の前述の欠点を軽減できるようにする、解決策を提案する。
【0009】
この解決策は、ACMの解決策だけに関してMAC層のレベルで考えられる、有用なビットレート及びスペクトル効率の低下を制限しながら、最大のエラー率を保証するように、生成された冗長ビットのパケット数がそれに対して決定される、望ましくはMDS(最大距離分離=Maximum Distance Separable)タイプの抹消符号である第2の訂正符号を、MAC層のレベルにおいて通信路符号化の上流に適用することにある。
【0010】
さらに、本発明による方法は、通信路の品質に応じて伝送のパラメータを適応させるため、性能を改善し、そしてループのレベルにおける不安定さを生じずに、限られた数の変調/符号化のペアを保つことを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、変調及び第1訂正符号の一組の利用可能なペアに基づいて、
− 不完全な通信路上において伝送後に受け取ったデータ内のエラー率が、最大でも目標エラー率に等しいように、第1の訂正符号及び変調を適用する前に、前記ペアの各々に対し、伝送されるデータに適用されるべき第2の訂正符号の最大比率を決定することと、
− その全てが同じ大きさを持つように穴埋めのセクションで補完されている、受け取った複数のデータビットのパケットに基づいて、複数の冗長ビットのパケットを生成するように、前記第2の訂正符号が、中間アクセス層のレベルにおいて適用されるべく意図されていることと、
− 中間アクセス層(MAC)の入力におけるビット数と、実際に伝送されたビット数との間の比率を表わす情報の項目、又は変調と、第1及び第2の訂正符号を結び付ける解決策のグループに必要とされる伝送ビットレートを表わす情報の項目を評価すること(411)と、
− 変調と、第1及び第2の訂正符号を結び付ける解決策のグループの中から、どれが前記比率を最大化すること又は前記伝送ビットレートを最小化することを可能にするかを選定すること(412)と
を含むことを特徴とする、とりわけデータ伝送のリソースを最適化する方法である。
【0012】
本発明の特定の態様によれば、前記第2の訂正符号は、前記目標エラー率に適合するために必要なその最大比率が:
− 伝送路と関連する、変調と第1の訂正符号とからなるペアの、エラーの理論的確率を決定することと、
− 前記理論的確率によってモデル化された通信路上で、前記第2の訂正符号により保護されたデータの伝送のエラー率をシミュレートすることと、
− シミュレートされたエラー率が目標のエラー率よりも小さくなるまで、前記第2の訂正符号により生成された冗長ビットのパケット数を増加させることと
によって決定される、「最大距離分離」符号である。
【0013】
本発明の特定の態様によれば、中間アクセス層(MAC)の入力におけるビット数と、実際に伝送されたビット数との間の前記比率を表わす、前記情報の項目は、次の関係式により計算される:
E=1−(TEP
s.K.R)/(K+N
PR)
ここで、N
PRはK個のデータパケットを保護するために生成された冗長ビットのパケット数であり、かつRは変調の記号毎のビット数により乗算された第1の訂正符号の比率である。
【0014】
本発明の特定の態様によれば、前記第2の訂正符号はブロック符号、例えばReed Solomon(リード・ソロモン)符号である。
【0015】
本発明の特定の態様によれば、前記エラー率(TEP
s、TEP
c)は誤ったMACパケットの比率であり、変調と、採用された第1の訂正符号とからなるペアは、前記第1の訂正符号と前記変調のデータパケットへの適用、及び中間アクセス層により提供される冗長パケットへの適用のための、物理層へと伝送される。
【0016】
本発明の特定の態様によれば、前記Kで補完されたデータパケットは、前もって第2の訂正符号の適用とインターリーブされる。
【0017】
本発明の特定の態様によれば、冗長ビットの前記パケットのサイズは相互に等しく、そして前記補完されたデータパケットのサイズに等しい。
【0018】
本発明の主題はまた、本発明によるリソースを最適化する方法を実施するための手段を含む、データ伝送システムである。前記手段は、少なくとも1つの中間アクセス層と、物理層と、伝搬路の品質についての情報項目とを含み得る。
【0019】
本発明の主題はまた、プログラムがプロセッサにより実行されるとき、本発明に従ってリソースを最適化する方法の実行のための指示を含む、コンピュータプログラム製品である。
【0020】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図に関連して以下に続く説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】各種の変調と符号化のペアに対するSN比の関数としての、スペクトル効率を表わす図である。
【
図2】本発明による方法を実施するのに適したデータ伝送システムの図である。
【
図3】伝送システムの中間アクセス層(MAC)のレベルにおいて受け取った複数のパケットに対する、いわゆる「最大距離分離」符号の適用を例証する図である。
【
図4】MAC層のレベルにおいて生成される、最適な変調と符号化のペア、及び冗長パケットの数の決定を可能にする、本発明による方法を記述しているフローチャートである。
【
図5】本発明の適用により得られる処理ゲインを示すSN比の関数としての、結果として生じるスペクトル効率の曲線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による方法は、中間アクセス層(MAC層)によって受け取られるパケットに、MDS(最大距離分離=Maximum Distance Separable)符号と称される抹消訂正符号を適用することにある。そのような符号の主な特性は、Kが情報パケットの数で、Nが情報パケットと冗長パケットを含む伝送されたパケットの総数である場合、N個のパケットのうちのK個の任意の組合せが、訂正符号を適用する前にK個の有用なパケット内に含まれる情報の項目を回復できるようにすることである。使用される訂正符号はブロック符号、例えばReed Solomon(リード・ソロモン)符号であり得る。本発明はMDS符号を用いた有利なやり方で適用されるが、しかしまた他のタイプの訂正符号、例えばLDPC(低密度パリティチェック=Low Density Parity Check)符号、又は同じ特性を得ることを可能にする他の任意の訂正符号にも依然として適合する。
【0023】
図2は、本発明による方法の実施のためのデータ伝送システムを図式的に示す。
【0024】
本発明は、無線リンクを介し受信機202に向けてデータを送信するための、一般的にはアンテナである手段210を備える送信機201の中で実施され得る。
【0025】
送信機201は、送信機201内又は別個の実体内で実施されるアプリケーション211から生じるデータを送信するために、適応的変調及び符号化手法を行なうことができる。そのようなアプリケーションは、音声、画像又はビデオ、或いはテキストデータを送るための伝送アプリケーションであり得る。アプリケーション211により生成されるデータパケットは、中間アクセス層212もしくはMAC層に伝送され、次に、とりわけ、それらを物理的通信路上で伝送するようにデータを整形することを担当している物理層213に伝送される。特に、適切な変調と適切な通信路符号化が、MAC層により伝送されるパケットに、このレベルで適用される。伝送チャンネルの品質の測定214の関数として、必要とされるサービスの品質レベルを得るように、MAC層は変調と通信路符号化とに関するペアのパラメータを選定する。
【0026】
本発明による方法は、送信機201のMAC層212のレベルにおいて有利に実施される。
【0027】
図3は、MAC層によって受け取られる一組のパケットに対する、MDS訂正符号の例示的な適用を説明する。
【0028】
数量K個のMACパケットPM
1、PM
2、PM
i、PM
Kが考慮され、その各々はアプリケーション211から由来するヘッダーH
1、H
2、H
i、H
K及びペイロードP
1、P
2、P
i、P
Kを含む。ペイロードは可変の大きさであり、ペイロードの最大サイズはL
MAXと称される。MDS訂正符号は次のやり方で適用される。穴埋め領域B1、B2、BKは、全てのもたらされるパケットがL
MAXに等しい大きさを持つように、各ペイロードの後で連結される。これらの穴埋め領域は、例えば全て0に等しいビットから成り、物理層には伝送されない。それらはMAC層により実施される符号化演算のためだけに役立つ。
【0029】
K個の結果として生じるパケットは、K行及びL
MAX列のマトリックスを構成するために並べられ、次に訂正符号が列ごとに適用される。K個の記号(ビット又はバイト)を含む各列に対して、冗長信号の数Mが従って生成される。この演算は列のグループに対して繰り返され、それにMACヘッダーH
K+1、H
K+Mが加えられる、M個の冗長パケットP
K+1、P
K+Mの生成をもたらす。冗長パケットの数Mは、以下に記述される本発明による方法を適用することにより決定される。N=K+Mのパケットはその後、選ばれた変調/符号化のペアに関する情報の項目と共に、物理層へ伝送される。
【0030】
本発明の範囲から逸脱することなく、MDS訂正符号のその他の適用は、それらがK個の有用なデータパケットに基づいてM個の冗長パケットの生成を可能にする限り、そしてN=M+K個の結果として生じるパケットが物理層に伝送される限り想定される。
【0031】
ここで記述されるのは、システムの物理層のレベルにおいて、適用されるべき最適な変調/符号化のペアと、そして同様に冗長パケットの数、言い換えればMAC層のレベルにおいて適用される、MDS訂正符号の比率とを選ぶことを可能にする本発明による方法である。
【0032】
探求される目的は、目標の比率未満である誤ったか又は失われたパケットの比率を得ることを可能にする、全体の変調及び符号化のパラメータを決定する一方で、得られたデータ流の伝送用に必要なビットレートを最小化し、或いは一方でMAC層のレベルにおいて計算されるスペクトル効率を最大化することである。
【0033】
この目的に達するために、本発明による方法は最初に、物理層のために利用できる各々の変調/符号化のペアに対して、目指しているエラー率の目標を達成するために必要とされる、追加の冗長ビットの最小パケット数を決定することにある。この最小数は、物理層の通信路符号化の比率が十分である場合、任意選択的にゼロであり得る。言い換えれば、これは物理的な通信路符号化及び変調の上流で、MAC層のレベルにおいて適用される抹消符号の比率を決定することを伴う。
【0034】
その後に、物理層に対する変調及び通信路符号化と、MAC層に対するMDS符号とを組み合わせる全体的な解決策は、MAC層が採用されるレベルにおいて、最小の伝送ビットレートを必要とし、又は最大のスペクトル効率を得ることを可能にする。
【0035】
図4は、本発明による方法の1つの例示的実施形態をフローチャートで説明している。
【0036】
本方法の実施は、次の入力データ401を必要とする:MDS訂正符号の適用により保護されるMACパケットの数K、目標とされるSN比に関する動作点、目標とするパケットのエラー率TEP
c、変調/符号化ペアの各々、及び各ペアのスペクトル効率と関連する理論的なパケットのエラー率の確率。スペクトル効率は、選ばれた変調の記号当たりのビット数により乗算された、物理層のレベルにおいて適用される、訂正符号の比率として定義される。例えば、1/3の比率の訂正符号と関連するQPSK(四相位相偏移変調)は、2/3に等しい全体比率を示す。
【0037】
各々の利用可能な変調/符号化の解決策に関して、次のステップのグループが実行される。
【0038】
初期化ステップ402において、シミュレートされたパケットのエラー率TEP
sは1へと初期化され、MACレベルにおいて生成されるべき冗長ビットのパケット数N
PRは0へと初期化され、そして正しく受け取られたバーストの数は0へと初期化される。1つのバーストはK+M個のパケットからなる。
【0039】
シミュレートされたパケットのエラー率TEP
sと目標のパケットのエラー率TEP
cとの比較403が行われる。TEP
sが厳密にTEP
cよりも大きい限り、次のステップが実行される。
【0040】
404において冗長ビットのパケット数N
PRは増やされる。
【0041】
シミュレートされたパケットのエラー率TEP
sは、その後、伝送されたパケットの大きな数N
M、すなわち、少なくとも理論的なエラー確率で100を除算した値に等しい数に対して次のステップを繰り返すことにより計算される。
【0042】
正しく受け取られたパケットの数N
Rは405において0へと初期化される。
【0043】
MDS訂正符号の適用後にMAC層のレベルにおいて生成された、N=K+M個のパケットの伝送に対する伝搬路の影響は、その後にシミュレートされる。この時点において、冗長ビットMのパケット数はN
PRに等しい。
【0044】
K+N
PR個のパケットに対して、ガウス確率ドローの結果を理論的エラー確率と比較することにより、テスト406が行われる。このテストが正の場合、これは現在のパケットが受け取られ、正しく受け取られたパケットの数N
Rは増加することを407において表わす。一旦このテストがK+N
PR個のパケットに対して行われると、正しく受け取られたパケットの数N
RがKよりも大きいか、又はKに等しいかが408において確認される。その場合は、正しく受け取られたバーストの数N
Bは409において増加する。
【0045】
伝送されたパケットの数N
Mにわたるループが終了したとき、シミュレートされたエラー率TEP
s=1−N
B/N
Mが410において計算される。
【0046】
シミュレートされたエラー率TEP
sが目標エラー率TEP
cよりも小さくなるとき、シミュレートされた解と関連するMAC層のレベルにおけるスペクトル効率は、次の式により411において計算される:
E=1−(TEP
s.K.R)/(K+N
PR)
ここで、Rは物理層に適用される変調/符号化の解決策と関連する全体の比率である。ここで計算されている「MAC層のレベルにおけるスペクトル効率」の表現は、シミュレートされたエラー率の影響を考慮しており、伝送された信号の累乗のような、別のパラメータを考慮する物理層のレベルにおいて計算されたスペクトル効率からは区別されるべきである。
【0047】
MAC層Eのレベルにおけるスペクトル効率はまた、MAC層の入力において伝送されるビット数と、物理層の出力において伝送される総ビット数との比率としても定義され得る。
【0048】
MAC層のレベルにおけるスペクトル効率が、物理層に対して利用可能な解決策のグループのために、最後のステップ412において計算されているとき、採用されるSN比に関する動作点に対して、最高のスペクトル効率Eを示す解決策が採用される。
【0049】
本発明の変形の一実施形態において、MAC層のレベルにおけるスペクトル効率の代わりに、採用される解決策に従って符号化され、変調されたデータ流を伝送するために必要とされる、物理的ビットレートを評価することが可能である。そのとき、選定基準は最も低い物理的ビットレートを必要とする解決策を採用することにある。この変形は、伝送されるべきMACパケットの実際と最大のサイズが考慮されることを必要とする。
【0050】
上述の方法はMAC層のレベルにおいて適用され、次の3つのパラメータの決定を可能にする:採用される変調、物理層に対して採用される訂正符号、及びMAC層のレベルにおいて適用されるMDS訂正符号の比率。最初の2つのパラメータは物理層へ伝送され、3番目は
図3に述べられているやり方でMACパケットを符号化するために用いられる。
【0051】
本発明による方法は、いわゆるMDS符号である、第2の訂正符号によって生成される冗長ビットが全体的なMACパケットの形で直接提供され、従ってそれらをフレーム内に置くための複雑な管理を必要としないため、プロトコルスタックの管理に関わる、伝送装置の大幅な変更を必要としないという利点をとりわけ提供する。特に、提案されている方法は何ら追加的な断片化又は連結を必要としない。
【0052】
さらに、それは通信路の品質に応じて、伝送のパラメータ、言い換えれば、物理層のレベルにおいて適用される通信路符号化及び変調パラメータを適応させるためのループを安定させることを可能にする。
【0053】
それはハードウェア及び/又はソフトウェア要素に基づいて実施され得る。それは特にその実行に対する指示を含むコンピュータプログラムの名の下に実施され得る。コンピュータプログラムは、プロセッサによって読み取り可能な記録媒体上に記録されることができる。
【0054】
図5は、SN比の関数としてスペクトル効率を与える図において、本発明による方法を適用することによって得られる性能を例証している。曲線501は、従来のACM法、ここでは比率が2/3の符号と組み合わされたQPSK変調を適用することにより選定される解決策のスペクトル効率を与える。曲線502は、本発明に従う方法を適用することによって得られたスペクトル効率を与える。かなりのゲインが得られていることが見られる。同一のSN比に対して、スペクトル効率は増大している。同一のスペクトル効率に対して、SN比の観点からの動作点は低下している。
【符号の説明】
【0055】
10 曲線
20 曲線
30 曲線
40 曲線
50 ポテンシャル過剰効率の領域
201 送信機
202 受信機
210 一般的にはアンテナである手段
211 アプリケーション
212 MAC層
213 物理層
214 伝送チャンネルの品質の測定
501 曲線
502 曲線