(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作部は、前記手すり本体の前方に形成された主操作部と、前記主操作部よりも後方に形成され、蓋に覆われた副操作部よりなることを特徴とする請求項1に記載のトイレ用手すり。
前記操作部はリモコンスイッチであり、リモコン通信用の赤外線発光部は、発した赤外線が前記便器に着座した人体に遮られない前記手すり本体上の部位に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のトイレ用手すり。
前記手すり本体を上方に回動させて起立させた状態で前方に向く面には、前方の水平面と鈍角をなす鈍角面が形成されており、交換を要する部材を収納可能な収納部が、前記鈍角面に開口面を有して前記手すり本体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のトイレ用手すり。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操作部が、棚部や壁面、袖部に設けられている場合には、使用者が便座に着座したまま操作を行うためには、前方を向いて着座した状態から、少なくとも体の向きを変えなければならず、必ずしも利便性が高いとは言えない。また、このような場合に、トイレ用手すりが備えられていれば、手すりとの干渉等により、操作部の操作が行いにくくなる場合もある。そこで、着座した状態からあまり体勢を変えずに操作部を簡単に操作できるように、操作部を手すりに設けることが考えられる。しかし、着座姿勢や使用者の体格が多様である状況で、単に特許文献1のような従来一般の手すりに操作部を設けるだけでは、多様な着座姿勢、体格に対応して、操作部の操作性に関して、高い利便性を提供することは困難である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、便器に備えられる機器を操作するための操作部が備えられるトイレ用手すりにおいて、着座姿勢や使用者の体格の多様性に対応しながら、着座姿勢のままで操作部を操作しやすいトイレ用手すりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるトイレ用手すりは、着座式の便器の側方に取り付けられ、人体を支持可能な長尺状の手すり本体を有し、前記手すり本体は、前記便器に備えられる機器を操作するための操作部を有し、前記便器と別体として形成され、前記便器に対して着脱可能であることを要旨とする。
【0008】
ここで、前記操作部は、前記手すり本体の前方に形成された主操作部と、前記主操作部よりも後方に形成され、蓋に覆われた副操作部よりなるとよい。
【0009】
また、前記操作部はリモコンスイッチであり、リモコン通信用の赤外線発光部は、発した赤外線が前記便器に着座した人体に遮られない前記手すり本体上の部位に設けられていることが好ましい。
【0010】
そして、前記手すり本体は、前後方向、左右方向、および上下方向に移動可能に前記便器に取り付けられているとよい。
【0011】
また、前記手すり本体は、前後方向面内に回動可能に前記便器に取り付けられているとよい。
【0012】
そして、前記手すり本体は、前記便器の右側および左側のいずれにも取り付け可能であることが好ましい。
【0013】
また、前記手すり本体を上方に回動させて起立させた状態で前方に向く面には、前方の水平面と鈍角をなす鈍角面が形成されており、交換を要する部材を収納可能な収納部が、前記鈍角面に開口面を有して前記手すり本体に形成されていることが好適である。
【0014】
そして、前記トイレ用手すりは、ベース板をさらに有し、前記ベース板は、前記便器と前記便器に取り付けられる便座との間に挟まれて前記便器に固定され、前記手すり本体は、前記ベース板に取り付けられることが好ましい。
【0015】
この場合、前記トイレ用手すりは、前記手すり本体の後端部に結合された固定部をさらに有し、前記ベース板は、平面状の水平部と、前記水平部と垂直に前記水平部の両端縁から垂下した側面部を有してなり、前記固定部は、前記ベース板の側面部上の複数の位置に取り付け可能であるとよい。
【0016】
さらに、前記手すり本体は、前記固定部に回動可能に結合されていることが好ましい。
【0017】
また、前記固定部にはネジ穴が形成され、前記ベース板の側面部には、貫通孔が複数の位置に形成されており、前記手すり本体は、前記貫通孔に挿通したネジを前記固定部のネジ穴に締結することによって、前記ベース板の側面部に取り付けられているとよい。
【0018】
そして、前記固定部は、対向する2面に前記ネジ穴を有するとよい。
【0019】
また、前記固定部は、前記固定部と前記ベース板との間に板状のスペーサを挟んだ状態で、前記ベース板に取り付け可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上記発明にかかるトイレ用手すりにおいては、使用者が便座に着座した状態で手や腕を載置する目的で形成された手すり本体に、操作部が設けられている。よって、着座した状態で、使用者の手が届きやすい位置に操作部が配置されていることになる。これにより、便座に着座した使用者が、大きく体勢を変更せずに、操作部を操作することが可能となる。そして、この手すり本体が便器に対して着脱可能に取り付けられていることにより、使用者の体格や着座姿勢、嗜好等の多様性に対応して、操作部の操作が行いやすくなるように、手すり本体を交換したり、取り付け位置を変更したりということを、容易に行うことができる。
【0021】
ここで、操作部が、手すり本体の前方に形成された主操作部と、主操作部よりも後方に形成され、蓋に覆われた副操作部よりなる場合には、便座に着座した使用者が、手すり本体に手や腕を載置した状態のまま、主操作部を操作しやすくなっている。そこで、頻繁に使用される操作スイッチ(ボタン)を主操作部に配置し、使用頻度の低い操作スイッチ(ボタン)を副操作部に配置しておけば、主操作部の構成を簡素にしながら、主操作部の操作に関して、使用者に高い利便性を提供することができる。一方、副操作部に蓋が設けられていることで、副操作部に意図せず使用者の人体等が接触して、機器が誤動作することが回避される。
【0022】
また、操作部がリモコンスイッチであり、リモコン通信用の赤外線発光部が、発した赤外線が便器に着座した人体に遮られない手すり本体上の部位に設けられている場合には、使用者が手すり本体に手や腕を載置した状態でも、リモコンスイッチの操作を行うことができ、機器操作の利便性が高くなる。
【0023】
そして、手すり本体が、前後方向、左右方向、および上下方向に移動可能に便器に取り付けられている場合には、使用者の体格や姿勢の好みに合わせて、手すり本体の取り付け位置を調整することが容易になる。
【0024】
また、手すり本体が、前後方向面内に回動可能に便器に取り付けられている場合には、使用者の体格や好みに合わせて、手すり本体の取り付け角度を調整することが容易になる。
【0025】
そして、手すり本体が、便器の右側および左側のいずれにも取り付け可能である場合には、使用者の好みや手すりが取り付けられるトイレ室の構造等に応じて、手すりの取り付け位置として、便座の右側のみ、左側のみ、左右両側のいずれでも選択することができる。
【0026】
また、手すり本体を上方に回動させて起立させた状態で前方に向く面に、前方の水平面と鈍角をなす鈍角面が形成されており、交換を要する部材を収納可能な収納部が、鈍角面に開口面を有して手すり本体に形成されている場合には、手すり本体を起立させた状態で交換を要する部材の交換を行えば、操作が他の部材によって妨げられたり、交換を要する部材が落下しやすくなったりすることなく、容易に交換を要する部材の交換を行うことができる。また、手すりを倒した状態では、収納部が使用者に視認されにくく、手すりの意匠性も高くなる。
【0027】
そして、トイレ用手すりが、ベース板をさらに有し、ベース板が、便器と、便器に取り付けられる便座との間に挟まれて便器に固定され、手すり本体が、ベース板に取り付けられる場合には、ベース板を便器に固定したまま、手すり本体のみをベース板から取り外すことで、手すり本体の交換時、清掃時や手すり本体の取り付け位置の変更時に、手すり本体を容易に便器から取り外すことができる。また、ベース板を取り付けることができれば、任意の便器に手すり本体を取り付けることが可能となり、種々の便器に手すり本体取り付けることができる。さらに、共通のベース板を使用して、種々の手すり本体を便器に取り付けることも可能となるので、手すり本体を交換する際に要する費用を低く抑えることができる。
【0028】
この場合、トイレ用手すりが、手すり本体の後端部に結合された固定部をさらに有し、ベース板が、平面状の水平部と、水平部と垂直に水平部の両端縁から垂下した側面部を有してなり、固定部が、ベース板の側面部上の複数の位置に取り付け可能である場合には、手すり本体を便器に対して複数の位置に取り付けることができる。
【0029】
さらに、手すり本体が、固定部に回動可能に結合されている場合には、便器に対する手すり本体の前後方向面内での角度の調整を、容易に行うことができる。
【0030】
また、固定部にネジ穴が形成され、ベース板の側面部には、貫通孔が複数の位置に形成されており、手すり本体は、貫通孔に挿通したネジを固定部のネジ穴に締結することによって、ベース板の側面部に取り付けられている場合には、簡素な構成で、手すり本体を便器に対して前後方向および上下方向の複数の位置に容易に取り付けることができるようになる。また、便器に対する手すり本体の着脱も、容易に行うことができる。
【0031】
そして、前記固定部が、対向する2面にネジ穴を有していると、それぞれの面を使用して手すり本体をベース板に取り付けることで、簡素な構成で、手すり本体を便器の左右いずれの側にも取り付けることができるようになる。
【0032】
また、固定部が、固定部とベース板との間に板状のスペーサを挟んだ状態で、ベース板に取り付け可能である場合には、スペーサの厚さや枚数を変更することで、便器の左右方向への手すりの取り付け位置を容易に調節することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態にかかるトイレ用手すりについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
まず、
図1〜3を参照して、本発明の一実施形態にかかるトイレ用手すり(以下単に、手すりと称する場合がある)1の構造を説明する。手すり1は、着座式便器2の側方に取り付けられ、使用者が便器2への着座動作、便器2からの起立動作を行うのを補助したり、着座中の姿勢を維持するのを補助したりするためのものである。なお、本明細書において、前後、上下、左右の各方向は、手すり1が取り付けられた便器2に着座した使用者から見た方向として定義する。
【0036】
手すり1は、ベース板10と、アーム部20を主としてなり、他に、スペーサ40a,40b、第一化粧板50、第二化粧板55と、第三化粧板60、(雄)ネジ65を有する。さらに、手すり1は、アーム部20を覆う外観パネル70を有するが、
図1〜3では、外観パネル70が省略されている。
【0037】
ベース板10は、略水平に形成された便器2の上面と平行になる水平部11と、水平部11の両側の側端縁から水平部11と垂直に垂下した側面部12a,12bよりなる。水平部11には、ベース板10を便器2に固定するためのベース固定穴13,13が形成されている。ベース固定穴13,13は、長穴形状を有する貫通孔として形成されており、それらの位置は、便座3を便器2に固定する2つのネジ(不図示)および便器に形成された取付穴(不図示)の位置と合致している。
【0038】
左右の側面部12a,12bは同じ構造を有し、アーム部20をベース板10に取り付けるための複数のアーム取付穴14が形成されている。アーム取付穴14は、略円形の貫通孔として形成されている。アーム取付穴14は、側面部12a,12bに、上下方向および前後方向に等間隔の配列をなして、複数個が配置されている。
【0039】
アーム部20は、本体骨格21と、固定部30を有してなる。本体骨格21は、使用者が把持したり、腕や手を載置したりするための手すり本体21’の骨格となるものであり、長尺状の部材として形成されている。中途部位には湾曲部24が形成され、湾曲部24よりも前方の部位が骨格延出部22、湾曲部24よりも後方の部位が骨格基部23となっている。アーム部20を便座2に取り付けると、骨格基部23が便座側部から前方斜め上に延び、その先端に骨格延出部22が延出した状態となる。
【0040】
骨格基部23の後端部には、ラチェット機構を備えるヒンジ部35を介して、固定部30が結合されている。本体骨格21と固定部30は、ヒンジ部35のラチェット機構によって、相互に対して、前後方向面内で回転可能となっている。
【0041】
固定部30は、板状の基板31の両面に、片面あたり4つずつ、柱状に突出した取付柱32を有する。取付柱32は、ベース板10の側面部12a,12bに形成されたアーム取付穴14の径よりも一回り小さい外径を有している。また、基板31の各面に形成された4つの取付柱32は、矩形の頂点をなすように配置され、それらの相互間の配置は、ベース板10のアーム取付穴14の配列における相互間の配置と一致している。つまり、固定部30の4つの取付柱32は、ベース板10のアーム取付穴14のうちの矩形の頂点をなして隣接する4つに一体的に挿通可能となっている。各取付柱32には、(雌)ネジ穴33が形成されている。
【0042】
スペーサ40a,40bは、略四角形の板状の部材であり、固定部30の取付柱32およびベース板10のアーム取付穴14の相互配置に一致する相互配置を有して、それぞれ4つのスペーサ穴41a,41bが貫通孔として形成されている。スペーサ穴41a,41bは、ネジ65および固定部30の取付柱32を挿通可能であり、アーム取付穴14とほぼ同じ径を有する。内側スペーサ40aはベース板10の側面部12a,12bの内側(アーム部20が取り付けられるのと反対側)に、外側スペーサ40bは側面部12a,12bの外側(アーム部20が取り付けられる側)に配置される。内側スペーサ40aは、ネジ65のがたつきを防止する役割を果たす。一方、外側スペーサ40bは、ベース板10とアーム部20との間の距離を調節する役割を果たす。
【0043】
第一化粧板50は、面部51と、面部51の上方を除く外周縁上に面部51に対して略垂直に形成された縁部52とを有する。面部51には、4つの第一化粧板穴53が形成されている。第一化粧板穴53は、ベース板10のアーム取付穴14、固定部30の取付柱32、スペーサ40a,40bのスペーサ穴41a,41bと同じ相互配置を有し、アーム部20の取付柱32を挿通可能な貫通孔として形成されている。第二化粧板55も、第一化粧板50と同様の構造を有し、第二化粧板穴58が形成された面部56と、縁部57を有してなる。第一化粧板50と第二化粧板55は、間にアーム部20の固定部30を挟んだ状態で、縁部52、57の端縁で相互に係合可能である。これにより、アーム部20の固定部30を外部から視認されないように覆い隠すことができる。この際、アーム部20の本体骨格21は、2つの化粧板50、55の上部の縁部52、57が形成されていない部位から突出する。第三化粧板60は、第二化粧板55の4つの化粧板穴58を含む部位を被覆した状態で、第二化粧板55と係合する。第三化粧板60は、第二化粧板穴58や取付柱32を外部から視認されないように覆い隠す役割を果たす。
【0044】
手すり1を便器2の側方に取り付けるに際し、まず、ベース板10を便器2に固定する必要がある。通常、着座面となる便座3は、便器2に対してネジ留めによって固定されているが、便器2と便座3の間に、ベース板10の水平部11を挟んで固定すればよい。つまり、ベース固定穴13,13の位置を便座3固定用のネジの位置に合わせて、便座3と共締めすることによって、ベース板10を便器2に固定すればよい。
【0045】
便器2に固定されたベース板10にアーム部20を取り付けるには、
図1のように、ベース板10の内側にスペーサ40aを配置し、ベース板10の外側に、ベース板10側から外側スペーサ40b、第一化粧板50、アーム部20の固定部30を配置する。この時、アーム取付穴14、スペーサ穴41a,41b、取付柱32、第一化粧板穴53の位置を、相互に揃えておく。そして、固定部30の基板31の2面のうちベース板10側に向いている方の面に形成された取付柱32を、第一化粧板50、外側スペーサ40b、ベース板10、内側スペーサ40aのうちの少なくとも一部の穴に挿通させる。さらに、内側スペーサ40aのスペーサ穴41aから、取付柱32に達する長さを有する4本の(雄)ネジ65を挿通し、取付柱32のネジ穴33に締め込む。最後に、固定部30の外側から、第二化粧板55と第三化粧板60を取り付ける。これにより、
図2および
図3に示すように、取付機構を外部に露出させることなく、ベース板10を介して、本体骨格21を便器2に取り付けることができる。
【0046】
アーム部20の本体骨格21はさらに、外観パネル70によって覆われ、手すり本体21’を形成する。
図4〜7に、外観パネル70によって覆われた状態の手すり本体21’を示す。外観パネル70は、本体骨格21の側面を覆う2枚の第一パネル70aと、本体骨格21の下面を覆う第二パネル70bと、本体骨格21の上面および先端面を覆う第三パネル70cとが組み合わせられてなり、本体骨格21の全周を被覆している。
【0047】
骨格延出部22を被覆するパネル延出部72の上面72a先端部には便器2(便座3)に備えられる温水洗浄装置(局部洗浄装置)を操作するための主操作部80が形成されている。ここで、パネル延出部72の先端部とは、おおむねパネル延出部72の前方側1/3または1/2程度の領域を指す。主操作部80は、異なる操作に対応する複数のスイッチを備えてなる。主操作部80には、全スイッチのうち、使用頻度の高いものが選択されて配置されている。
図5に、主操作部80の例を示すが、ここでは、おしり洗浄を開始するおしりスイッチ80b、いわゆるビデ洗浄を開始するビデスイッチ80c、それらを停止する止スイッチ80a、おしり洗浄およびビデ洗浄の洗浄強さを変化させる強スイッチ80dおよび弱スイッチ80eが主操作部80に形成されている。
【0048】
主操作部80に加え、主操作部80よりも後方のパネル基部73上に、蓋81に覆われて、副操作部(不図示)が形成されている。蓋81は、開閉可能に副操作部に取り付けられており、蓋81を開けることで、副操作部を操作することができる。便器2(便座3)には、温水洗浄装置以外にも、便座暖房装置等、複数の機器が付属しており、副操作部には、それらの機器を運転、制御するための操作スイッチのうち、使用頻度の低いものが設けられている。副操作部に設けられる操作スイッチとしては、濡れた人体部位を乾燥させるための乾燥機能に関するスイッチ、便座暖房や局部洗浄用温水の加熱温度の設定に関するスイッチを例示することができる。
【0049】
主操作部80および副操作部は、有線通信または赤外リモコン通信等の無線通信のいずれを用いて便器2に備えられた機器を制御するものであってもよい。リモコン通信形式の場合に、赤外線を発する発光部85は、
図4に示すように、自身が発した赤外線が便器2に着座した人体に遮られない位置に形成されている。具体的には、発光部85は、骨格基部23を覆うパネル基部73の後端部近傍の、上面73aと側面73bの境界領域に設けられている。
【0050】
ここで、主操作部80および副操作部と発光部85を利用したリモコン通信に要する電力は、電力供給手段としての電池によって賄われるが、その電池を収納する収納部である電池ボックス90が、
図6、7に示すように、パネル基部73の下面73cにその開口部90bが臨むように形成され、開口部90bを覆う蓋90aがパネル基部73の下面73cに固定されている。
図6に示すように、手すり本体21’をヒンジ部35のラチェット機構を利用して回動させ、上方に跳ね上げた状態で、手すり本体21’の下面73cとその前方の水平面Hとの間の角度θが、鈍角となっている。つまり、水平面Hと鈍角をなす鈍角面に、電池ボックス90の開口部90bが位置する状態となる。
【0051】
上記実施形態にかかる手すり1においては、機器の制御に頻繁に使用される操作スイッチ群を有する主操作部80が、手すり本体21’に設けられている。手すり本体21’は、便器2の側方から前方斜め上に向かって延び、その前方にパネル延出部72が略水平に形成された構造を有し、便座3に着座した状態で、使用者が手や腕を載置しやすいものとなっている。このように、使用者の手が届きやすい位置に、頻繁に操作される主操作部80が形成されていることで、便座3に着座した使用者が、前方を向いて着座したまま、ほとんど体勢を変えることなく、主操作部80を操作することができる。特に、上記のように、主操作部80がパネル延出部72の上面72aの先端部に設けられている場合には、便座3に着座した使用者は、腕をパネル延出部72に乗せた姿勢のまま、腕を動かさず、指先で主操作部80を操作することができ、全く姿勢を変えなくても、主操作部80を操作することが可能となる。
【0052】
また、主操作部80には、頻繁に操作される操作スイッチのみを設けておくことで、手すり本体21’の外観が簡素になるとともに、頻繁に同じ手すり1が設けられたトイレを使用する使用者ならば、主操作部80のスイッチの配置を容易に記憶することができ、主操作部80を見なくても操作できるようになる。これにより、主操作部80の操作に際して、視線を動かす必要すらなくなり、着座姿勢のまま、簡単に操作部80を操作できるようになる。
【0053】
一方、頻繁には使用されない操作スイッチを後方の副操作部に設けることで、機器に対する多様な操作を可能としながら、手すり本体21’の外観に現れる操作スイッチ群の構成を、簡素なものとすることができる。このように、手すり本体の後方に副操作部を設けた場合に、もし副操作部が露出していると、パネル延出部72上に使用者が腕を乗せた際に、肘や体幹で副操作部の操作スイッチを誤って操作し、機器を誤動作させてしまうことがある。しかし、上記のように、副操作部が蓋81で覆われていることによって、このような意図しない接触を避けることができる。副操作部は、その配置と、蓋81の存在のために、主操作部80よりも、操作の容易性においては劣るが、副操作部には使用頻度の低い操作スイッチしか設けられていないため、使用者に不便を感じさせるものではない。なお、操作スイッチの総数が少ない場合には、操作部を主操作部と副操作部に分けて構成しなくてもよい。
【0054】
本手すり1においては、便器2に対して固定されたベース板10に、本体骨格21を有するアーム部20を取り付ける構成を有することで、手すり本体21’の便器2への取り付けを容易に行うことができる。つまり、ベース板10を便器2に固定したままにして、交換、清掃、保守などが必要な際に、手すり本体21’をベース板10から取り外し、再びベース板10に取り付けることが容易に行える。この際、便座3を外すことも必要ない。また、固定部30の構造さえ同じにしておけば、当初と異なる構造を有するアーム部に交換することも容易である。
【0055】
また、ベース板10が、便器2と便座3の間に挟んで便器2に固定されるものであることから、当初から手すりを有さない便器2に対して、容易に本手すり1を拡張的に後付けすることができる。また、ベース板10の水平部11に、便座3を便器2に固定するネジと位置が揃ったベース固定穴13,13が形成され、このベース固定穴13,13を介してベース板10が便座3と共締めされることから、ベース板10の固定構造が簡素なものとなっている。さらに、便座3を取り付けるネジの位置さえ同じであれば、種々の便器2にベース板10を固定して、手すり1を使用することができる。
【0056】
さらに、ベース板10の側面部12a,12bに、縦横に等間隔に配列されたアーム取付穴14が形成されていることにより、ベース板10に対するアーム部20の取り付け位置を、前後方向および上下方向の複数の位置から選択することができる。
図1の場合には、側面部12a,12bの一方あたり、前後方向に4つ、上下方向に3つの合計12個のアーム取付穴14が形成されていることにより、前後方向に3とおり、上下方向に2とおりの合計6通りの取り付け位置に、アーム部20を取り付けることができる。アーム部20の取り付け位置は、使用者の体格、姿勢の好みなどに応じて、手すり本体21’を適切な位置に配置できるように、適宜選択すればよい。
【0057】
そして、ベース板10の2つの側面部12a,12bに、同じアーム取付穴14の配列が形成されていることと、アーム部20の固定部30の両面に、同じ取付柱32が形成されていることによって、同一のアーム部20を、便器2の左右いずれの側にでも取り付けることができる。スペーサ41a,41bや3種の化粧板50,55,60も、便器2の左右どちら側にアーム部20を取り付ける場合にそのまま使用することができるので、アーム部20を取り付ける側によって、異なる部材を使用するようなことは必要でない。これにより、使用者は、体格や利き手、姿勢の好み、片側の壁面にのみ手すりが造り付けてある等のトイレ室の構造に応じて、便器2の左側、右側、左右両側から、アーム部20の取り付け位置を自由に選択することができる。また、製造者は、左側用と右側用で、アーム部20をはじめとする各部材を作り分ける必要がないので、手すり1の製造および管理に要するコストを抑えることができる。
図3は、便器2の左右両側に同一のアーム部20を取り付けた状態を示している。
【0058】
また、本手すり1のアーム部20においては、本体骨格21と固定部30の間が、ラチェット機構を有するヒンジ部35によって結合されている。そのため、手すり本体21’を便器2に取り付けた状態で、手すり本体21’を便器2に対して前後方向面内で回動することができる。これにより、使用者は、体格や姿勢の好み等に応じて、便器2に対する手すり本体21’の角度を調節することができる。また、特に体格の大きい使用者が着座や起立を行う際に、手すり本体21’を上方に回動させて跳ね上げておけば、手すり本体21’がこれらの動作の妨げになることがない。手すり本体21’を跳ね上げることで、男性小用時に、手すり本体21’に尿がかかることも防止できる。さらに、手すり本体21’を跳ね上げることで、電池ボックス90に設置される電池の交換を容易に行うことができる。手すり本体21’を上方に跳ね上げられることで、便器2の清掃を行う際の作業性も向上される。
【0059】
さらに、本手すり1においては、ベース板10と固定部30の間に、外側スペーサ40bを挟んだ状態で、ネジ65を使用して固定部30をベース板10に固定できることで、手すり本体21’の取り付け位置を左右方向に調節することができる。つまり、外側スペーサ40bの枚数を増減させることや、厚さの異なる外側スペーサ40bを複数用意し、それらを入れ替えることで、ベース板10とアーム部20の間の距離を調整することができる。手すり本体21’を最もベース板10に近づけたい場合には、外側スペーサ40bを1枚も使用しなければよい。このようにして、使用者の体格や姿勢の好み等に応じて、手すり本体21’の左右方向の取り付け位置を適宜調節すればよい。
【0060】
以上のように、本手すり1においては、ベース板10を便器2に固定したままで、便器2やベース板10とは別体に形成された手すり本体21’の着脱が可能となっている。さらに、手すり本体21’の取り付け位置を便器2の左右両側から選択可能であるうえ、前後方向、左右方向、上下方向の位置、および前後方向面内の回転角度を調整することができる。これにより、使用者は、体格や姿勢の好み等に応じて、容易に、かつ大きな自由度で、手すり本体21’の配置を選択することができる。また、各部の寸法等が異なる別の手すり本体21’に交換することも容易に行える。
【0061】
なお、手すり本体21’の取り付け位置の変更を可能とする構成は、上記実施形態のもの以外にも考えられる。まず、上記のような水平部11と側面部12a,12bを有し、側面部12a,12bにアーム取付穴14を有するベース板10を用いる構成によらなくても、例えば、便器2と一体の部材として、手すり本体21’を取り付け可能な構造体を便器2の左右両側に設けておけば、手すり本体21’を、便器2の左右両側に取り付けることができる。このような構造体としては、例えば、上記ベース板10の側面部12a,12bのような形状の部材を、便器2に直接固定しておくことが考えられる。
【0062】
また、手すり本体21’の位置を上下方向および前後方向に調節可能とするための機構としては、上記のように、ベース板10上の複数の取り付け可能位置(アーム取付穴14によって規定される位置に相当)から一部を選択して、固定部30の基板31上の取付部材(取付柱32に相当)を挿入、係合等する形式以外のものも考えられる。例えば、固定部30の基板31上に突出形成した取付部材を、ベース板10に形成した長穴状の取付穴に嵌め込み、取付穴の長さの範囲内で、アーム部20の取り付け位置を変更可能とする構成を挙げることができる。この場合のように、ベース板10上の取り付け可能位置を規定する部材と固定部30上の取付部材は、アーム取付穴14および取付柱32の組み合わせ以外にも、相互に挿入、係合等し、適宜ネジ65のような補助部材を用いて、可逆的に相互に固定可能であれば、いかなる構造を有していてもかまわない。
【0063】
あるいは、本体骨格21および外観パネル70の延出部22,72または基部23,73の中途部に、二重管構造や蛇腹構造などによって伸縮可能な部位を形成することでも、手すり本体21’の見かけ上の取り付け位置を、前後方向および左右方向に変更することができる。この場合、延出部22,72に伸縮可能な部位を設けると、主として前後方向の見かけの取り付け位置が変更され、基部23,73に伸縮可能部位を設けると、主として上下方向の見かけの取り付け位置が変更される。
【0064】
上記実施形態にかかる手すりにおいては、パネル基部73の下面73aに開口部90bを有して、電池ボックス90が形成されている。手すり本体21’を
図2、
図3に示すように前方に倒し、使用状態とした場合には、電池ボックス90およびその蓋90aが使用者に視認されにくく、電池ボックス90が手すり本体21’の意匠性を損なうことがない。一方、ヒンジ部35のラチェット機構を利用して手すり本体21’を跳ね上げた状態では、電池ボックス90の開口部90bが、前方に向く。これにより、電池交換を行う際に、作業者が便器2の前に位置した状態で、かつ電池ボックス90の部分を目視しながら作業を行うことができるので、電池交換の作業が行いやすい。また、手すり本体21’を跳ね上げた状態で、電池ボックス90の開口部90bが前方の水平面Hと鈍角θをなしていることで、電池に働く重力の電池ボックス90内に向かう成分を利用しながら、使用済の電池や新しい電池を床に落下させることなく、電池交換をスムーズに行うことができる。このような電池ボックス90の配置により、電池交換について高い作業性が得られる。ここで、上記実施形態においては、収納部である電池ボックス90に、電池が収納された。しかし、電池以外の電力供給手段等、交換を必要とする任意の部材を収納可能な収納部90を、同様に手すり本体21’を起立させた状態で前方に向く面に形成された鈍角面に開口部90bが臨むように、設けることができる。この場合にも、意匠性を損なうことなく、その交換を必要とする部材の交換に際して高い作業性を享受することができる。電池等の電力供給手段以外の交換を必要とする部材としては、ヒューズ等を例示することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。本発明の実施形態においては、操作部の配置における特徴と合わせて、手すり本体の取り付け構造および電池ボックスの配置が、それぞれの特徴を発揮している。しかし、手すり本体の取り付け構造および電池ボックスの配置は、それぞれ単独で任意のトイレ用手すりに適用された場合にも、それぞれの効果を発揮することができる。例えば任意のトイレ用手すりの、跳ね上げ可能な手すり本体の下面に、跳ね上げた時に前方の水平面と鈍角をなす鈍角面を形成し、その鈍角面に電池ボックス(収納部)の開口部を形成する構成とすれば、電池交換(交換を要する部材の交換)の利便性の効果を享受することができる。