特許第6343883号(P6343883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343883
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   C08F290/04
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-156224(P2013-156224)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25087(P2015-25087A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神戸 慎哉
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−060657(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147692(WO,A1)
【文献】 特開昭62−053380(JP,A)
【文献】 特開2004−176025(JP,A)
【文献】 特開平06−336583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基含有化合物(A)、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)及び光重合開始剤(C)を含み、
前記(A)は、多官能(メタ)アクリレートを含み、且つ、前記(B)を含まないものであり、
前記多官能(メタ)アクリレートは、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、当該ポリオールポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド付加物又はカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(B)のガラス転移温度が−85〜0℃であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)及び(B)の合計を100質量部としたときに、前記(A)を30〜90質量部、前記(B)を10〜70質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)の重量平均分子量が、5,000〜20,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)の末端重合性官能基がアクリロイル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及びこれより得られる硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化性に優れるため生産性が高い、ほとんど溶剤を使用しないため環境に対する負荷が少ない等の理由により、コーティング剤、接着剤、インク、空隙充填剤等の種々の分野で使用されている。
しかしながら、活性エネルギー線硬化型組成物は、硬化時の収縮が大きく、樹脂中に大きな残留応力が残るため、基材に対する密着性が悪い、あるいは、塗膜が硬くなりすぎて脆く割れやすい等の問題を有していた。このような問題を解決するため、可塑剤や粘着付与樹脂等を配合した組成物が検討されている。
【0003】
一般に、可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)のようなフタル酸エステル化合物が広く用いられているが、硬化後のアクリル系樹脂層からブリードアウトする問題があった。また、石油系樹脂及びロジン系樹脂といった粘着付与樹脂を配合する場合は、疎水性が高くアクリル系樹脂との相溶性が悪いため、適用可能なアクリル系樹脂及び粘着付与樹脂の組成が制限されるものであった。
上記相溶性の問題を解決する手段として、アクリル系高分子を配合した組成物も提案されている。特許文献1には、アクリル系高分子を可塑剤として含む活性放射線硬化型インク組成物が開示されている。
【0004】
一方、無溶剤で効率よくアクリル系高分子可塑剤を製造する方法として、特許文献2に示すように、150〜350℃で重合する方法が知られている。この方法によって製造される高分子化合物は、分子末端付近にビニリデン型不飽和基を有しており、これを利用して他の重合性単量体とラジカル共重合させることで、経時による硬化物中からのブリードアウトを抑制できる。
さらに、出願人は、前記特許文献2に記載のアクリル系高分子可塑剤を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−28405号公報
【特許文献2】国際公開第2001/083619号パンフレット
【特許文献3】特開2013−129799号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の可塑剤高分子は、硬化塗膜中に骨格成分と結合することなく、それ自身独立して存在しているため、硬化物から経時でブリードアウトする傾向があった。そのため、硬化物表面が汚染されたり、可塑剤としての機能を十分に発揮できなくなるという問題があった。
これに対し、特許文献2に記載の方法で合成された高分子化合物は、分子末端付近にビニリデン型不飽和基を有している。このため、得られた高分子化合物の前記不飽和基を利用して、他の重合性単量体とラジカル共重合させることで、経時による硬化物中からのブリードアウト抑制が期待される。ところが、特許文献2及び3に示される高分子化合物のビニリデン型不飽和基は、一般に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の成分として用いられる(メタ)アクリレート系化合物との共重合性が十分ではないため、硬化性等について改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可塑剤成分等のブリードが抑制され、硬化物の強度、柔軟性及び耐久性に優れ、且つ、硬化性が良好な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者は、片末端に(メタ)アクリロイル基を有する特定のマクロモノマーを用いることにより、硬化物の強度、柔軟性及び耐久性が良好に優れ、且つ、硬化性の良好な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とすることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った
【0008】
本発明は以下の通りである。
〔1〕エチレン性不飽和基含有化合物(A)、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)及び光重合開始剤(C)を含み、
前記エチレン性不飽和基含有化合物(A)は、多官能(メタ)アクリレートを含み、且つ、前記(B)を含まないものであり、
前記多官能(メタ)アクリレートは、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、当該ポリオールポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド付加物又はカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(B)のガラス転移温度が−85〜℃であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
〔2〕前記(A)及び(B)の合計を100質量部としたときに、前記(A)を30〜90質量部、前記(B)を10〜70質量部含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
〔3〕前記(B)の重量平均分子量が、5,000〜20,000であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
〔4〕前記(B)の末端重合性官能基がアクリロイル基であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、良好な硬化性を有し、強度、柔軟性及び耐久性に優れ、且つ、耐ブリード性も良好な硬化物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本願明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、また、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す。
【0011】
<エチレン性不飽和基含有化合物(A)>について
本発明におけるエチレン性不飽和基含有化合物(A)(以下、「(A)成分」ともいう)は、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物である。前記エチレン性不飽和基としては、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基が挙げられる。
(A)成分としては、種々の化合物が使用可能である。具体的には、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド並びにN−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0012】
これらの中でも(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕及び分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕が挙げられる。
【0013】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物等の水酸基含有(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のヘテロ原子含有(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール誘導体のアルキレンオキサイド変性物の(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの芳香族(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド及びN−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のマレイミド(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトン変性物;3−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−トリイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−メチルジエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、−メチルジイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルイソプロポキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、8−トリメトキシシリルオクチル(メタ)アクリレート等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート類;並びにオキサゾリジノンエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−ノナンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等〕付加物のポリ(メタ)アクリレート;これらポリ(メタ)アクリレートの原料アルコールのカプロラクトン変性物のポリ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限らない。
多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマーも使用することができ、具体的にはウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
これらの、単官能または多官能(メタ)アクリレートは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、並びに(メタ)アクリルロイルモルホリン等が挙げられる。
【0017】
(A)成分としては、硬化物の耐衝撃性及び耐薬品性に優れる点、並びに、組成物を適切な粘度とすることができる点で、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。本発明では、後述する(B)成分が可塑剤として作用することにより、化合物(A)として多官能(メタ)アクリレートのみを使用しても、硬化物の柔軟性及び密着性を良好なものとすることができる。
多官能(メタ)アクリレートは、(A)成分中に20〜100質量%含まれることが好ましく、より好ましくは50〜100質量%である。
【0018】
<片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)>について
片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)(以下、「(B)成分」ともいう)は、ビニル系単量体を主な構造単位とする重合体であって、その片末端に(メタ)アクリロイル基を有するものである。
(B)成分の製造方法としては特に限定されないが、ビニル単量体の選択範囲が広い点、製造に重金属を必須とせず電子材料周辺の部材に適用しやすい点、安価に製造が行える点点において、以下に示す工程により得られることが好ましい。
第1工程;水酸基、カルボキシル基等の官能基を有する連鎖移動剤の存在下でビニル単量体を重合し、片末端に官能基を有する重合体を合成する工程。
第2工程;上記第1工程で得られた重合体の片末端に存在する官能基に対し、当該官能基と反応可能な官能基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーを得る工程。
【0019】
ビニル系単量体の例としては、特に制限はなく、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられるが、共重合性、硬化物の機械的特性、耐候性、耐水性等が優れるため、(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリレートの例としては、前記(A)成分として挙げた(メタ)アクリレートと同様の化合物を使用することができる。
【0021】
(B)成分を得るために用いる連鎖移動剤の具体例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−プロパンチオール、2−メルカプタンエタノール、チオフェノール、ドデシルメルカプタン、チオグリセロールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
これらの中でも水酸基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する連鎖移動剤を用いると、後述のエチレン性不飽和基を有する化合物と反応させることによって容易に片末端に(メタ)アクリロイル基を導入できるため、好ましい。
【0022】
(B)成分を得るために用いる(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、前記連鎖移動剤が有する反応性官能基と対応するものが用いられる。
例えば反応性官能基がカルボキシル基である場合、エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が好適に用いられる。反応性官能基が水酸基である場合、イソシアナト基を有する2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート等が好適に用いられる。
また、上記反応を促進するための触媒として、3級アミン、4級アンモニウム塩、金属触媒等を併用することができる。
これらの組み合わせの中でも片末端に水酸基を有する重合体にイソシアナト基を有する化合物を反応させることが、低温・短時間・微量触媒条件で反応を完結でき、硬化物の経時着色を抑制できる点から好ましい。
また活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としての硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基の中でもアクリロイル基を有する化合物を用いるのが好ましい。
【0023】
(B)成分を得るために用いる重合開始剤の例としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)などのアゾ系化合物が挙げられる。
【0024】
(B)成分は、適当な有機溶媒を用いた溶液重合により得るのが好ましい。使用する有機溶媒は特に限定はされないが、有機炭化水素系化合物、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等を使用することができる。
また、有機溶媒中の水分を除くためにオルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
【0025】
本発明における(B)成分は、重量平均分子量が、5,000〜20,000であることが好ましい。重量平均分子量を5,000以上とすることにより柔軟な硬化物が得られ易い。また、重量平均分子量が20,000以下の場合、相溶性に優れるため硬化物に濁りが生じ難くい。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定したポリスチレン換算の値である。
また、本発明における(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、−85〜20℃であり、好ましくは−80〜0℃であり、さらに好ましく−70〜−30℃である。Tgを20℃以下とすることにより、得られる硬化物に柔軟性が付与される。また、一般に、ビニル系単量体を主な構造単位とした場合、Tgは−85℃を下回ることはない。本発明では、ガラス転移温度は、示差走査熱量計において検出される吸熱ピークの中間点により測定される。
【0026】
(A)成分と(B)成分の質量比は、特に制限されないが、(A)成分と(B)成分の合計を100質量部としたときに、(B)成分が10質量部以上70質量部以下になることが好ましい。10質量部以上になることにより柔軟性が付与され、70質量部以下であることにより、硬化物の強度が発現される。より好ましくは、20質量部以上40質量部以下である。
【0027】
本発明では、(B)成分は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーであることが必要である。両末端に(メタ)アクリロイル基を有するもの及び末端以外の主鎖の途中に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーは、いずれも得られる硬化物の柔軟性に劣るため、好適に用いることができない。
【0028】
<光重合開始剤(C)>について
本組成物は、紫外線、可視光等の活性エネルギー線により硬化させる目的で、光重合開始剤(C)(以下、「C成分」ともいう)を加える必要がある。
(C)成分としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4-(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパンー1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチルプロパンー1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、アデカオプトマーN−1414((株)ADEKA製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;並びに
9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することもできる。
【0029】
(C)成分の配合割合としては、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.01〜10質量部となることが好ましい。(C)成分の配合割合を0.01質量部以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10質量部以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
【0030】
<その他の成分>
本発明は、前記した(A)、(B)及び(C)の各成分を必須とするものであるが、必要に応じて種々の成分を含有してもよい。以下、その他の成分について説明する。
(1)有機溶剤
本発明の組成物は、有機溶剤を含有しない無溶剤系であってもよいし、または、塗工性を改善する等の目的で、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、(B)成分の製造に関連して上記した有機溶剤を使用できる。
有機溶剤の使用割合としては、適宜設定すれば良いが、組成物中に10〜90質量%が
好ましく、より好ましくは30〜80質量%である。
【0031】
(2)可塑剤
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、より高い柔軟性を付与するために片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)に該当しない可塑剤を併用することができる。
可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)のようなフタル酸エステル化合物の他、重合性官能基を持たない(メタ)アクリル系共重合体、片末端に(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体等が用いられる。一般に、重合性官能基を持たない可塑剤は経時で硬化物からブリードアウトが起きやすいが、本発明では、硬化組成物中に(B)成分が含まれていることによりブリードがある程度抑制される。
【0032】
重合性官能基を持たない可塑剤を併用する場合、その使用量は(B)成分の使用量に対して同質量以下とすることが好ましい。また、組成は(メタ)アクリレート系単量体を共重合して得られるものであることが好ましい。これらの条件を満たさない場合、硬化物から経時でブリードアウトしやすくなる。
(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を有する可塑剤を併用する場合、その使用量は(A)成分及び(B)成分の合計を100質量部としたときに、10質量部以下とすることが好ましい。(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を有する可塑剤を10質量部以上用いると、硬化性の低下が起こる。
【0033】
(3)その他の成分
前記以外に、本発明の組成物には重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤、表面調整剤、密着性付与剤、レオロジーコントロール剤、ワックス、無機フィラー、有機フィラー等を添加することができる。
【0034】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、4、4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2、2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
【0036】
光安定性剤としては、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0037】
本発明の組成物は、前述の原料を、常温または加熱下で、従来公知の方法により混合することにより得られる。組成物の粘度には、特に制限はないが、25℃において、200〜20,000mPasとなることが好ましい。粘度がこの範囲になることにより、平滑な塗工が可能になる。
【0038】
以下に、合成例及び実施例を挙げて具体的に説明する。尚、下記において「部」とは、質量部を意味する。
【実施例】
【0039】
○片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(B)の製造
<製造例1>
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器、窒素ガス導入管および温度計を備えたガラス製フラスコに、ビニル単量体としてアクリル酸ブチル(以下、「BA」という)100部、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール酸1.3部、及び重合溶剤として酢酸ブチル(以下、「BAC」という)80部を仕込み、窒素気流下で90℃に加熱攪拌した。別容器にてBAC20部に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ファインケム製、商品名「ABN−E」)0.5部を添加、溶解して重合開始剤溶液を調整し、フラスコ内溶液を90℃に保ったままこの重合開始剤溶液を3時間かけてフラスコへ滴下した。さらに3時間加熱攪拌を継続することにより重合を完結させ、片末端に水酸基を有する重合体を得た。
窒素気流を空気バブリングに切り替えて、引き続き同じフラスコ内にメトキシフェノール0.02部、ジオクチルスズジラウレート(日東化成製、商品名「ネオスタンU−810」)0.01部、変性剤として2−イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工製、商品名「カレンズAOI」)2.3部を加えて90℃で3時間加熱した後に室温まで冷却し、片末端にアクリロイル基を有するマクロモノマーB1のBAC溶液を得た。
この溶液を圧力3kPaの減圧下で100℃に加熱することでBACを除去し、高粘度液状物としてマクロモノマーB1を得た。
得られたマクロモノマーB1の分子量を測定したところ、重量平均分子量(Mw)=11,500であった。また、このマクロモノマーB1のTgは−55℃であった。
【0040】
<製造例2〜9>
単量体、連鎖移動剤および変性剤を表1に示す通り用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、マクロモノマーB2〜B9を得た。
得られたマクロモノマーB2〜B9の物性値について表1に示す。
【0041】
<製造例10>
単量体、連鎖移動剤および変性剤を表1に示す通り用い、さらに、重合終了後、ジオクチルスズジラウレート0.01部をテトラブチルアンモニウムブロミド1.0部に置き換え、110℃で8時間反応させた以外は製造例1と同様の操作を行い、マクロモノマーB10を得た。
得られたマクロモノマーB10の物性値について表1に示す。
【0042】
<比較製造例1>
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器、窒素ガス導入管および温度計を備えたガラス製フラスコに、ビニル単量体としてBA100部、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール1.3部、及び重合溶剤としてBAC80部を仕込み、窒素気流下で90℃に加熱攪拌した。別容器にてBAC20部に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ファインケム製、商品名「ABN−E」)0.5部を添加、溶解して重合開始剤溶液を調整し、フラスコ内溶液を90℃に保ったままこの重合開始剤溶液を3時間かけてフラスコへ滴下した。さらに3時間加熱攪拌を継続することにより重合を完結させ、片末端に水酸基を有する重合体C1のBAC溶液を得た。
この溶液を圧力3kPaの減圧下で100℃に加熱することでBACを除去し、高粘度液状物として重合体C1を得た。
得られた重合体C1の物性値について表2に示す。
【0043】
<比較製造例2>
単量体および連鎖移動剤を表2に示す通り用いた以外は比較製造例1と同様の操作を行い、重合体C2を得た。
得られた重合体C2の物性値について表2に示す。
【0044】
<比較製造例3>
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器、窒素ガス導入管および温度計を備えたガラス製フラスコに、ビニル単量体としてBA90部、メタクリル酸グリシジル10部、連鎖移動剤として2−メルカプトエタノール1.3部、及び重合溶剤としてBAC80部を仕込み、窒素気流下で90℃に加熱攪拌した。別容器にてBAC20部に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ファインケム製、商品名「ABN−E」)0.5部を添加、溶解して重合開始剤溶液を調整し、フラスコ内溶液を90℃に保ったままこの重合開始剤溶液を3時間かけてフラスコへ滴下した。さらに3時間加熱攪拌を継続することにより重合を完結させ、片末端に水酸基を有する重合体のBAC溶液を得た。
窒素気流を空気バブリングに切り替えて、引き続き同じフラスコ内にメトキシフェノール0.02部、テトラブチルアンモニウムブロミド1.0部、変性剤としてアクリル酸5.1部を加えて110℃で3時間加熱した後に室温まで冷却し、分子内に複数のメタクリロイル基を有する重合体C3のBAC溶液を得た。
この溶液を圧力3kPaの減圧下で100℃に加熱することでBACを除去し、高粘度液状物として重合体C3を得た。
得られた重合体C3の物性値について表2に示す。
【0045】
<比較製造例4>
単量体、連鎖移動剤および変性剤を表2に示す通り用いた以外は比較製造例3と同様の操作を行い、重合体C4を得た。
得られた重合体C4の物性値について表2に示す。
【0046】
<比較製造例5及び6>
単量体、連鎖移動剤および変性剤を表2に示す通り用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体C5及びC6を得た。
得られた重合体C5及びC6の物性値について表2に示す。
【0047】
<比較製造例7>
オイルジャケットを備えた容量1,000mLの加圧式攪拌槽型反応器のジャケット温度を248℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、BA100部、重合溶媒として、イソプロピルアルコール4.2部、メチルエチルケトン12.2部、重合開始剤としてジt−ブチルパーオキサイド1.0部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御することにより、反応器の内温を239〜241℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、未反応モノマー等の揮発成分を除去し、片末端にビニリデン型不飽和結合を有する重合体C7を得た。
得られた重合体C7の物性値について表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1及び表2において用いた略称を以下に示す。
BA:アクリル酸n−ブチル
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
C−1:アクリル酸2−メトキシエチル(東亞合成製「アクリックスC−1」)
MMA:メタクリル酸メチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
MPA:3−メルカプトプロピオン酸
MTG:2−メルカプトエタノール
MOI:メタクリル酸2−イソシアナトエチル(昭和電工製「カレンズMOI」)
AOI:アクリル酸2−イソシアナトエチル(昭和電工製「カレンズAOI」)
AA:アクリル酸
【0051】
<実施例1〜14、参考例1、比較例1〜9>
(A)成分、(B)成分及び光開始剤(C)、及びその他成分を表3に示す割合で配合し、均一に混合することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた各組成物について、以下に記載する評価方法により各種性能を評価した。
【0052】
(1)硬化性
アプリケーターを用いて、各組成物をガラス板に膜厚が50μmになるように塗布した。その後、紫外線照射装置(ECS−401GX、アイグラフィックス(株)製)を用いて、以下の条件により紫外線を照射した。紫外線を1回照射するごとに指触により塗膜表面を観察し、指に液状物が付着しなくなった照射回数(パス回数)により、硬化性を評価した。
紫外線照射条件:
80W/cm集光型高圧水銀灯
ランプ高さ10cm
コンベアスピードは、1パス当たりの照射量が100mJ/cm2になるように調節。
【0053】
(2)塗膜外観
硬化後の塗膜を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
○:外観上透明である
△:僅かな白濁が観察される
×:明らかな白濁が観察される
【0054】
(3)硬化物の破断強度
アプリケーターを用いて、各組成物を幅300mm×長さ300mmの東レ(株)製フィルム「ルミラー50−T60」(表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ50μm、以下「ルミラー」という)に膜厚が50μmになるように塗布した。 次いで、前記紫外線照射装置を用いて、積算光量が3000mJ/cm2となるように塗布面に紫外線を照射した。その後、ルミラーから硬化物を剥がし、15mm×150mmのサンプルを切り出した。このサンプルを、引張試験機((株)島津製作所製オートグラフAGS−J)を用いて、引張速度:50mm/分の条件で引張試験を行い、破断強度を求めた。
【0055】
(4)柔軟性
バーコーターを用いて、各組成物を易接着PETフィルム(コスモシャインA4300、膜厚:100μm、東洋紡(株)製)に膜厚が10μmになるように塗布した。次いで、前記紫外線照射装置を用いて、積算光量が3000mJ/cm2となるように塗布面に紫外線を照射した。その後、100mm×50mmの大きさに切り出し、JIS K5600−5−1に従って耐屈曲性試験を実施した。屈曲させた時に、割れまたは剥がれが生じた時の円筒の直径により柔軟性を評価した。
【0056】
(5)耐ブリード性
硬化後の塗膜を60℃の乾燥機中で1ヶ月保管した後に取り出し、硬化物表面を以下の基準に従って評価した。
○:加熱前と変化がない
△:塗膜表面にわずかに液状物が浮き出している
×:塗膜表面に明らかに液状物が浮き出し、タックがある
××:塗膜表面がほぼ完全に液状物で覆われている
【0057】
(6)着色
硬化後の塗膜を60℃の乾燥機中で1ヶ月保管した後に取り出し、硬化物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。なお、表面にブリード成分があったサンプルに関しては、これをふき取った後に評価した。
○:着色が観察されない
△:僅かに着色がある
×:明らかな着色がある
【0058】
【表3】
【0059】
表3において用いた略称を以下に示す。
M−211B:ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジアクリレート(東亞合成製、商品名「アロニックス M−211B」)
Irg184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASF製、商品名「Irgacure184」)
DOP:ジオクチルフタレート
【0060】
片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーを含む実施例1〜14の各組成物は、硬化に必要なパス回数が少なく、良好な硬化性を示した。また、得られた硬化物は、破断強度と柔軟性のバランスに優れ、塗膜外観も良好であり、且つ、可塑剤成分等のブリードも抑制されたものであった。
また、(B)成分として末端にメタクリロイル基を有するマクロモノマーを用いた実施例及びに比較して、末端にアクリロイル基を有するマクロモノマーを用いた他の実施例の方が、その硬化性が良好であった。
【0061】
これに対し、重合性不飽和基を有しない重合体を配合した比較例1は、塗膜に白濁が生じる結果となった。配合する重合体の分子量が低い比較例2では、塗膜外観は改善傾向であったが、耐ブリード性が悪化し、両者のバランスが取れない結果であった。低分子量可塑剤を配合した比較例8も、顕著なブリードが確認された。
比較例3及び4は、末端ではなく、主鎖途中にアクリロイル基を有する重合体を配合した組成物の実験例であるが、硬化物の柔軟性に劣る結果となった。Tgの高い(B)成分を用いた比較例5及び6も同様であった。
また、末端にビニリデン型重合性不飽和基を有する重合体を用いた比較例7は、その硬化性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線による硬化性が良好であり、強度・柔軟性・耐久性に優れる硬化物が得られるため、コーティング剤、接着剤、インク、空隙充填剤等の種々の用途に有用である。