(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(C)導電粉が、(C1)平均粒径が1〜9μmの表面に銀を被覆した銅粉および(C2)平均粒径が1〜9μmの銀粉を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
(C)導電粉が、(C1)平均粒径が1〜4μmの表面に銀を被覆した銅粉および(C2)平均粒径が1〜4μmの銀粉を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。
(C)導電粉のうち、被覆に要した銀および銀粉の占める銀の総重量%/銅の総重量%が86/14〜15/85重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペースト
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、ATM、カーナビゲーションシステム等、幅広い用途において利用されている。一般的に、タッチパネルには、ガラス・PETフィルム等の基材に酸化インジウム錫(ITO)層を形成し、エッチングにより電極を形成した透明導電性基材が用いられている。導電性ペーストは、透明導電性基材上に、印刷等により塗布されることで、配線が形成される。
タッチパネルの検出方式としては、抵抗膜式と静電容量式があげられる。抵抗膜式は、二枚の対向する透明導電性基材を備え、操作した位置の電圧を検知することで場所を認識するものである。指以外にペン入力等も可能である一方で、圧力に反応するため、意図に反した作動や、タッチによる透明導電膜の劣化という問題がある。
これに対し、静電容量式は、指先と透明導電性基材の間での静電容量の変化を捉えて位置を検出する方式で、マルチタッチと呼ばれる指先の多点検出が可能である。さらに、圧力を必要としないため、耐久性に優れる、透明性に優れる等、有利な点も多く、注目を集めている。
【0003】
これら検出方式に対応するため、透明導電性基材もまた、透明性、導電性など、用途により様々な特徴を持つものが開発されている。
導電性ペーストは、各種透明導電性基材(エッチング部および電極を含む)に対応可能な密着性および環境評価に対する高信頼性が必要となる。さらに、近年では、抵抗膜式より高価な静電容量式でも、価格低下が進んでおり、それに伴い各部材へのコストダウンも強く要求されている。
これら要求に対し、種々のバインダー樹脂と導電性粉末を含む導電性ペーストが開発されている(例えば特許文献1)。
特許文献1では、酸価含有ウレタン樹脂の凝集力および架橋剤により、透明導電性基材に対する密着性が良好な導電性ペーストが開示されている。しかしながら、良好な導電性を得るために、導電性粉末として銀粉末が使用されているため、銀がコストに占める割合が高く、さらに導電性ペーストの不揮発成分中に85%以上を占める必要があるため、コストダウンへの対応には限界があった。
ところで、導電性ペーストに用いられる導電性粉末のうち、金、銀は導電性が良好である一方で、高価であり、安価なニッケル、アルミニウム、亜鉛等では、良好な導電性が得られない。銅については、導電性は銀同等に良好である上に安価であるが、容易に酸化され、導電性を悪化させたり安定性に欠ける場合があった。
【0004】
このような問題を解決するために、表面に銀を被覆した銅粉を用いた導電性ペーストが種々開発されてきた。しかし、これら導電性ペーストは、保管時において、粘度が上昇したりゲル化したりして、ペーストとしての保存安定性が確保し辛いという欠点があった。保存安定性低下の原因としては、銅粉に銀を被覆する工程において、完全に銀で覆うことが出来ず表層に銅が存在する、または、ペーストの分散工程で、機械的な負荷により銅表面が露出してしまうため、活性の高い銅表面の触媒作用により、保管時に粘度が上昇しやすいと考えられている。
そこで、保存安定性を改良するために、特許文献2では、銅粉に銀を被覆する工程を二度行うことで、銅表面が露出しにくくしている。しかしながら、この方法で銀を被覆した銅粉は、二度のメッキ工程の間にボールミルによる解砕工程を必要とし、製造が煩雑になる他、コストメリットも低下する。さらに、メッキ工程の特性上、ピンホールと呼ばれる極微小の細孔の発生を防ぎ、完全に銀を被覆することは難しい。その結果、常温で安定性を確保できていても、夏場を想定した40℃のような高温下では、粘度が上昇しやすくなる傾向があった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に使用する樹脂(A)は、酸価5mgKOH/g以下のポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂である。樹脂の酸価が5mgKOH/gを超えると、銅表面との相互作用により、特に40℃以上での高温保管時において、導電性ペーストの顕著な粘度上昇またはゲル化が発生することを本発明者らは見出した。樹脂(A)の酸価は好ましくは5mgKOH/g以下、より好ましくは2mgKOH/g以下である。
該ポリエステルおよび/またはポリウレタン樹脂を使用することにより、表面に銀を被覆した銅粉を含んだ導電性ペーストにおいて従来では達成し得なかった、高度な保存安定性を達成できる。さらに特別な工程を必要としないため、コストの増加を避けることができる。
該ポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂の数平均分子量は10,000以上45,000以下が好ましい。数平均分子量が10,000未満であると凝集力が低下することで導電性が低下する他、ペースト粘度が低下して好ましくない。一方、数平均分子量が45,000を超えると、樹脂の溶液粘度が高くなり生産性が低下するため好ましくない。
【0010】
該ポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂のガラス転移温度は−20℃以上100℃以下が好ましく、50℃以上がさらに好ましい。−20℃未満では、硬化剤を配合しない場合に、高温時に樹脂が軟化するため、塗膜の信頼性が低下する可能性がある。さらに、塗膜の鉛筆硬度も低下する傾向にある。ガラス転移温度が−20℃〜50℃の樹脂を用いる場合は、塗膜の鉛筆硬度が低下する場合があるため、硬化剤を配合するか、50℃以上の樹脂を混合して配合することが望ましい。また、100℃を超えると、基材への密着性が低下するので好ましくない。
該ポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂としては、特に、ガラス転移温度が50℃以上のポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂および、ガラス転移温度が20℃以下のポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂を配合することが密着性の点より好ましい。この場合、配合比はガラス転移温度が50℃以上の樹脂に対し、ガラス転移温度が20℃以下の樹脂を50〜90重量%配合することが好ましい。
50重量%未満では塗膜の密着性が低下し、90重量%を超えると塗膜の鉛筆硬度および密着性が低下する場合がある。
【0011】
本発明に用いられる(A)のポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂に使用されるジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、炭素数12〜28の二塩基酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。また、発明の内容を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価のカルボン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸、さらに、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩などのスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸を併用してもよい。
基材への密着性の点より、全酸成分のうち脂肪族ジカルボン酸を20モル%以上含むポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステルに使用される全酸成分のうち脂肪族ジカルボン酸の含有量は、耐湿熱性の点より、60モル%以下が好ましい。この内、芳香族ジカルボン酸としては、屈曲性より、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸が好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸としては、耐湿性の面からセバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0012】
本発明における(A)のポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂に使用されるグリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオールなどが挙げられる。また、発明の内容を損なわない範囲でトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンなどの多価ポリオールを併用してもよい。
【0013】
ウレタン樹脂に使用するジイソシアネート化合物は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリウレタン樹脂は、プレポリマー法、ワンショット法等、公知の方法により重合される。
これらの反応においては、必要に応じて適当量の3級アミンや錫、チタン、鉛等の化合物で代表される公知の重合触媒を用いてもよい。また、これらの反応はペーストに使用される溶剤中で行ったり、反応に使用した溶剤を別の溶剤で置換してもよい。
【0014】
本発明に使用する樹脂として、発明の内容を損なわない範囲でポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂以外の樹脂を配合してもよい。例えばポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、水素添加ポリブタジエン系樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類、ポリアミドイミド樹脂を、特性を落とさない範囲で配合してもよい。この場合も、保管安定性の面より、個々の樹脂の酸価は5KOHmg/g以下が好ましい。
【0015】
本発明に使用する導電粉(C)は、(C1)表面に銀を被覆した銅粉および(C2)銀粉を含むものである。(C1)表面に銀を被覆した銅粉は、無電解メッキ、電解メッキ等、公知の方法を用いて製造することができる。特に、均一な膜厚形成が可能な置換メッキによる無電解メッキが好ましい。
本発明に用いる表面に銀を被覆した銅粉の平均粒径は、1〜9μmが好ましい。ここで、平均粒径とは、塗膜を走査型電子顕微鏡で5000倍又は10000倍の倍率で写真を撮影し、銀粉の粒径を測定した際の、測定個数50個の平均値とした。なお、平均粒径5〜9μmの粒径については、5000倍で粒径を測定し、1〜5μmの粒径については、10000倍の倍率で粒径を測定した。
粒径が1μmより小さいと、導電粉の配合量を増やし、粒子同士の接点を確保しなければ、導電性が低下する傾向がある他、比表面積が増えるため、被覆する銀の量が多くなり、コストの増加に繋がる可能性がある。また9μmより大きいと、ロールミルでのペースト混練時のせん断応力により、銅粉が変形しやすく、銅表面が露出する不具合が生じる。
さらに、近年タッチパネル用途で要求される100μm以下の微細印刷を行う用途に適用される場合、平均粒径は1〜5μmがより好ましい。
【0016】
(C1)表面に銀を被覆した銅粉の形状としては、公知のフレーク状(リン片状)、不定形を含む球状、板状、樹枝状(デンドライト状)、球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状などがあるが、この内導電性、銀の被覆均一性の点より、フレーク状、または不定形を含む球状が好ましい。
銅粉の表面に銀を被覆する量は、コストおよび導電性の点から、銅粉に対して5〜30%重量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜25%の範囲である。
銀を被覆した銅粉の粉末特性としては、タップ密度が2.5g/cm
3以上であることが好ましい。2.5g/cm
3より小さいと、銀の被覆量が同じ場合、被覆不足となり、保存安定性が悪化する場合がある。また、比表面積は導電性と保存安定性の点より、0.2〜1.2m
2/gであることが好ましい。
【0017】
本発明に使用する導電粉(C2)銀粉の形状としては、公知のフレーク状(リン片状)、不定形を含む球状、板状、樹枝状(デンドライト状)、球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状などがあるが、この内導電性、印刷性の点より、フレーク状、または不定形を含む球状が好ましい。
銀粉の平均粒径としては、1〜9μmが好ましい。粒径が1μmより小さいと、銀粉の配合量を増やし、粒子同士の接点を確保しなければ、導電性が低下する傾向がある。また9μmより大きいと、スクリーン版の開口部よりも大きな粒子の存在量が増すことで、印刷性を損ねる可能性がある。さらに、近年タッチパネル用途で要求される100μm以下の微細印刷を行う用途に適用される場合、平均粒径は1〜4μmがより好ましい。
また、タップ密度は1.5〜4.5g/cm
3であることが好ましい。1.5g/cm
3より小さいと、ペースト粘度が上昇しすぎる他、4.5g/cm
3より大きいと、銀粉の配合量が多くなり、コスト上昇に繋がる。
さらに、銀粉の比表面積としては、保存安定性および導電性の点より、1.0〜3.5m
2/gであることが望ましい。
【0018】
(C)導電粉のうち、被覆に要した銀および銀粉の占める銀の総重量%/銅の総重量%が86/14〜15/85重量%で含まれることが好ましい。被覆に要した銀および銀粉の占める銀の総重量が86重量%を超えると、コストが増加し好ましくない。一方で、15重量%より少ないと、導電性が確保できない場合がある。100μm以下の微細印刷を行う用途では、2.0×10−4Ω・cm以下の比抵抗が求められており、被覆に要した銀および銀粉の占める銀の総重量が15重量%より少ないと該比抵抗を達成できない場合がある。導電性とコストより、被覆に要した銀および銀粉の占める銀の総重量%/銅の総重量%は76/34〜37/73重量%がさらに好ましい。
導電粉(C)としては、(C1)表面に銀を被覆した銅粉および(C2)銀粉の他に、カーボンブラック、グラファイト粉などの炭素系のフィラー、および/または、金、白金、パラジウム、ニッケル、アルミ、亜鉛などの金属やこれらの中から選ばれる合金を配合することができる。
さらには、シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどの無機フィラー、などを混合して使用できるが、導電性、耐湿性などの環境特性、コスト面より、カーボンブラック、シリカを全導電粉中に20重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下0.1重量%以上で配合することが好ましい。
本発明の導電性ペーストはF値が80〜95%であることが好ましい。より好ましくは85〜92%である。F値とはペースト中に含まれる全固形分100質量部に対する導電性粉末重量部を示す数値であり、F値=(導電性粉末重量部/固形分質量部)×100で表される。ここで言う固形質量部とは溶剤以外の導電性粉末、その他のフィラー、樹脂、その他の硬化剤や添加剤を全て含む。F値が80%未満であると導電性が悪化する傾向にある。また、密着性および又は鉛筆硬度が低下する場合がある。F値が95%を超えると、バインダー樹脂量が不足し、密着性および印刷性が低下する場合がある。
本発明の導電性ペーストに含まれる(A)を含む樹脂を100重量%としたときに(C1)と(C2)の合計が400重量%〜2400重量%、さらに(C1)と(C2)の合計を100重量%としたとき(C1)と(C2)以外の導電性粉末が0〜5重量%であることが好ましい。
【0019】
本発明に使用される(B)溶剤はその種類に制限はなく、エステル系、ケトン系、エーテルエステル系、アルコール系、エーテル系、テルペン系、炭化水素系などが挙げられる。このうち、スクリーン印刷に適したエチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、DBE、イソホロン、ベンジルアルコール、ターピネオール、γ−ブチロラクトンなどの高沸点溶剤が好ましい。樹脂溶解性、印刷性より、エチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、DBEが好ましい。Aを100重量%としたときに、Cは50〜300重量%とすることが好ましい。印刷性より、50〜250重量%とすることがさらに好ましい。
本発明の導電性ペーストを用いて、100μm以下の微細印刷を行う場合は、上記溶剤により、印刷性に適したペースト粘度に調整することができる。例えば、80μmの微細印刷を行う場合の粘度は、5×HBDVIII(BROOKFIELD社製)で、ローターCPE−52を用いて、2.5rpmで25℃3分間測定した際に、70〜150Pa・sが適当である。作業性より、70〜120Pa・sがより好ましい。
【0020】
本発明の導電性ペーストには、ポリエステルおよび/またはポリウレタン樹脂に反応し得る硬化剤を配合しても良い。硬化剤の好ましい配合量は、樹脂100重量部に対して1〜10重量部である。硬化剤の種類は特に限定しないが、硬化性の面から、イソシアネート化合物が特に好ましい。これらのイソシアネート化合物はブロック化して使用することが保存安定性の面から好ましい。
ブロックイソシアネート化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第三級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。このうち、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類がとくに好ましい。これらの架橋剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。
本発明の導電性ペーストには、公知の消泡剤、レベリング剤、分散剤等の添加剤を添加してもよい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。実施例中、単に部とあるものは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
1.酸価(mgKOH/g)
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。
2.ガラス転移温度(Tg)
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、−50〜200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度より求めた。
3.テストピースの作成
導電性ペーストを厚み100μmのアニール処理PETフィルムに、乾燥後の膜厚が7〜12μmになるように25mm幅で長さ200mmのパターン(比抵抗、密着性、鉛筆硬度測定用)をスクリーン印刷した。これを、熱風循環式オーブンを用い、130℃で30分の条件で乾燥したものをテストピースとした。また、基材を透明導電性フィルムに換えて同パターンをスクリーン印刷し、密着性測定用とした。
4.比抵抗
3.で作成したテストピースを用い、膜厚と4端子抵抗測定器を用いてシート抵抗および膜厚を測定し、これらより比抵抗を算出した。膜厚はゲージスタンドST-022(小野測器社製)を用い、シート抵抗はMILLIOHMMETER4338B(HEWLETT PACKARD社製)を用いて測定した。
5.密着性
3.で作成したテストピースを用いて、碁盤目テープ剥離により密着性を評価した。なお、格子パターンの各方向のカット数は11個、カット間隔は1mmで100マスを作成し、粘着テープは、セロハンテープCT−12(ニチバン(株)製)を用いた。テープ剥離後、100マス中100%塗膜が基材に残っている場合を◎、95〜100%残っている場合を○、それ以下を×とした。
6.鉛筆硬度
3.で作成したテストピースを厚さ2mmのSUS304板上に置き、JIS K 5600−5−4に準じて測定した。
7.環境試験
3.で透明導電性基材V150A(日東電工社製)上に作製したテストピースを、85℃85%RHで240時間加熱する耐湿熱試験を行い、密着性評価を実施した。
8.保存安定性
導電性ペーストを密封容器に入れ、40℃で2週間保存した。保存前後の粘度を5×HBDVIII(BROOKFIELD社製)で、ローターCPE−52を用いて、2.5rpmで25℃3分間測定し、保存前と比較した保存後の粘度変化が−10〜10%以内を○、−30〜30%以内を△、それ以上を×とした。
9.印刷性
配線幅/スペース=80μm/80μmの印刷パターンを用いて、微細印刷性を評価した。直線部の直線性良好で、印刷塗膜の幅が80μm±20μmであるものを○、ニジミが発生し、配線幅が80μm±40であるものを△、スクリーン版に詰まりが発生し、印刷枚数を重ねると同じ箇所に欠けが発生するものを×とした。
【0022】
合成例.1(ポリエステル樹脂1)
撹拌機、リービッヒ冷却器、温調装置を具備した四口フラスコにジメチルテレフタル酸101部、ジメチルイソフタル酸35部、エチレングリコール93部、ネオペンチルグリコール73部、テトラブチルチタネート0.068部を仕込み、180℃、3時間エステル交換を行なった。ついで、セバシン酸61部を仕込み、さらにエステル化反応を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1時間重合した。得られた共重合ポリエステルの組成は、テレフタル酸/イソフタル酸/セバシン酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=52/18/30//55/45(モル比)、数平均分子量22、000、酸価1.5mgKOH/g、Tg7℃であった。結果を表1に示す。
合成例.2〜6(ポリエステル樹脂2〜7)
合成例.1と同様に合成した。結果を表1に示す。なお、ポリエステル樹脂4、5については、合成例.1の重合後、窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を所定量投入し、30分間反応を行った。また、表1に示す原料は以下のものを用いた。
BPE20:三洋化成工業(株)製ニューポールBPE20(ビスフェノールAエチレンオキシド付加物)
BPE40:三洋化成工業(株)製ニューポールBPE40(ビスフェノールAエチレンオキシド付加物)
合成例.7(ポリウレタン樹脂1)
温度計、攪拌機、冷却器を具備した反応容器中に合成例のポリエステル樹脂6 100部、鎖延長剤としての1,6−ヘキサンジオール2部、ネオペンチルグリコール6部、溶剤としてエチルカルビトールアセテートを仕込み、80℃で溶解後、ジフェニルメタンジイイソシアネート(MDI)28部及びジブチル錫ジラウレート0.08部を仕込み、固形分濃度35%、80℃で3時間以上かけて残存イソシアネートが無くなるまで反応させた後、エチルカルビトールアセテートで固形分濃度35%に希釈し、ウレタン変性ポリエステル樹脂1を得た。数平均分子量は40000、酸価0.6mgKOH/g、Tg83℃であった。結果を表2に示す。
合成例.8〜9(ポリウレタン樹脂2)
合成例.6と同様に合成した。結果を表2に示す。
【0023】
実施例1
銀粉1 531部、12重量%の銀で被覆した銅粉1 531部、導電性カーボンブラック8部、ポリエステル樹脂1 100固形部、レベリング剤としてMKコンク(共栄社化学社製)6部、分散剤としてDisperbyk130(ビックケミー・ジャパン社製)を5部、溶剤としてエチルカルビトールアセテート158部を配合し、充分プレミックスした後、チルド三本ロールミル機で、3回通して分散した。得られた導電性ペーストを5.に記述した方法で印刷、乾燥し評価した。得られた塗膜の物性は、比抵抗は1.7×10-
4Ω・cm、密着性良好、鉛筆硬度Hで良好であった。透明導電性基材は、V150(日東電工社製)を用いた。また、環境試験、印刷性および保管安定性を評価した。結果を表3に示す。
実施例2〜6
実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
いずれの実施例も、塗膜物性および環境試験は良好であった。さらに保存安定性および印刷性についても、良好な結果を得た。
表3に示す導電粉末、添加剤および溶剤は以下のものを用いた。
銀粉1:AMES Goldsmith(株)製(平均粒径1.5μm、タップ密度4.0g/cm
3、比表面積1.3m
2/g)
銀粉2:AMES Goldsmith(株)製(平均粒径8.5μm、タップ密度1.7g/cm
3、比表面積1.7m
2/g)
銀を被覆した銅粉1:フェロ・ジャパン(株)製(平均粒径2.5μm、タップ密度4.5g/cm
3、比表面積0.4m
2/g、12重量%の銀で表面を被覆)
銀を被覆した銅粉2:AMES Goldsmith(株)製(平均粒径5.5μm、タップ密度2.8g/cm
3、比表面積1.0m
2/g、10重量%の銀で表面を被覆)
導電性カーボンブラック:東海カーボン(株)製のトーカブラック#4500
レベリング剤:共栄社化学(株)製のMKコンク
分散剤:ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk130
溶剤:(株)ダイセル製のエチルカルビトールアセテート
【0024】
比較例1〜4
実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
表4に示す導電粉末、添加剤および溶剤は以下のものを用いた。記載のないものについては、実施例と同じものを用いた。
10重量%の銀被覆銅粉3:三井金属(株)製(平均粒径6.3μm、タップ密度0.9g/cm
3、比表面積1.0m
2/g)
10重量%の銀被覆銅粉4:三井金属(株)製(平均粒径2.2μm、タップ密度2.7g/cm
3、比表面積1.8m
2/g)
比較例1では、酸価の高いポリエステル樹脂を用いたところ、保存安定性が悪く、ペーストがゲル化した。比較例2では、酸価の高いポリウレタン樹脂を用いたところ、ペーストがゲル化した。
比較例3では、タップ密度が低い銀被覆銅粉を用いたところ、保存安定性が確保できなかった。
比較例4では、比表面積が高い銀で被覆したフレーク状の銅粉を用いたところ、導電性が不足であった。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】