(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置取得手段は、前記人物の側面方向から撮影した撮影画像から推定される、該人物の身体の予め定められた部位の少なくとも二次元座標上の位置を示す情報を取得し、
前記検出手段は、前記位置取得手段により取得された予め定められた部位の二次元座標値に基づいて予め定められた部位の前記人物の前後方向の傾き度合いを検出する、
請求項1記載の姿勢判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る姿勢判定システム2の構成の一例を示す模式図である。本発明の姿勢判定システム2は、端末装置4と、撮影装置6と、圧力測定装置8とから構成されており、撮影装置6及び圧力測定装置8は、有線又は無線により通信可能に端末装置4に接続されている。
【0031】
端末装置4は、コンピュータとしての機能を備えた装置であり、例えば、タブレットPC(personal computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォンなどである。
【0032】
撮影装置6は、着座状態の人物を撮影するカメラである。本実施形態では、撮影装置6は、端末装置4に一体的に設けられており、椅子10に着座した人物12を人物12の正面から撮影する。なお、撮影装置6は、端末装置4とは別に設けられていてもよい。また、椅子10に着座した人物12を人物12の背面から撮影してもよい。また、本実施形態では、撮影装置6は、距離画像センサを搭載したカメラであり、距離画像を撮影するよう構成されている。このため、撮影装置6からは撮影データとして3次元のデータが得られる。本実施形態では、撮影装置6は、距離画像が撮影できればよく、距離画像の撮影方式については問わない。例えば、距離画像の撮影方式としてTOF(Time Of Flight)方式であってもパターン照射方式であってもよい。なお、後述するように、人物12の側面から撮影する場合には、撮影装置6は、2次元画像を撮影するカメラとして構成し、距離画像を撮影しなくてもよい。
【0033】
撮影装置6は、本実施形態では、着座状態の人物12の例えば臀部を含む上半身を撮影するよう設けられているが、撮影範囲はこれに限られない。例えば、腰部から上の身体を撮影するよう設けられていてもよいし、臀部よりも下部を含む範囲を撮影するよう設けられていてもよい。
【0034】
圧力測定装置8は、人物が着座する座面にかかる圧力を測定する測定装置である。圧力測定装置8は、例えば、シート状に構成されており、座面に敷かれ、着座により座面にかかる圧力を検知する。本実施形態では、圧力測定装置8は、椅子10の座面に設けられており、座面領域の各地点(例えば、16×16の256地点)の圧力を検知する。
【0035】
図2は、端末装置4のハードウェア構成の一例を示す図である。
端末装置4は、
図2に示されるように、CPU14、メモリ16、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶部18、撮影装置6及び圧力測定装置8との間でデータの送受信を無線又は有線で行う通信インタフェース(IF)20、操作者によってなされる入力を受付け、表示対象の情報を表示するタッチパネルなどのユーザインタフェース(UI)部22を有し、これらの構成要素は、制御バス24を介して互いに接続されている。なお、通信IF20は、図示しないネットワークを介して、他の装置との間ともデータの送受信を行ってもよい。また、UI部22は、タッチパネルによる構成に限らず、ポインティングデバイス又はキーボードとディスプレイとから構成されてもよい。
【0036】
CPU14は、メモリ16または記憶部18に格納されたプログラムに基づいて処理を実行して、端末装置4の動作を制御する。なお、本実施形態では、CPU14は、メモリ16または記憶部18内に格納されたプログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU14に提供することも可能であるし、通信IF20を介してCPU14に提供することも可能である。
【0037】
図3は、プログラムが実行されることにより実現される端末装置4の機能構成を示すブロック図である。
【0038】
図3に示すように、端末装置4は、位置取得部30と、傾き検出部32と、圧力取得部34と、重心位置検出部36と、統計量算出部38と、対称性判定部40と、基準データ記憶部42と、評価部44と、表示部46とを有する。
【0039】
位置取得部30は、着座状態の人物12の身体の予め定められた部位の位置情報を取得する。具体的には、位置取得部30は、撮影装置6による撮影で得られた撮影データから推定される位置情報を取得する。
【0040】
位置取得部30は、例えば、機械学習などにより予め人体の骨格などをモデル化しておき、撮影装置6からの撮影画像にモデルをあてはめることにより、着座状態の人物12の身体の部位の位置を推定し、位置情報を取得する。なお、位置取得部30は、着座状態の人物12の身体の予め定められた部位の位置情報を取得すればよく、位置情報の推定方法は限定されない。また、位置取得部30は、他の装置により推定された位置情報を取得してもよい。
【0041】
本実施形態では、位置取得部30は、予め定められた部位の位置情報として、頭部、肩部、腰部、臀部などの部位の位置情報を取得する。位置取得部30は、頭部の位置情報として例えば頭部の中心部分として推定される位置を取得し、肩部の位置情報として例えば肩の関節部分として推定される位置を取得し、腰部の位置情報として例えば腰椎の中央部分として推定される位置を取得し、臀部として仙骨の中心部分として推定される位置を取得する。
【0042】
傾き検出部32は、位置取得部30により取得された位置情報に基づいて人物12の身体の傾きを検出する。傾き検出部32は、人物12の姿勢を判定する際の基準となるデータを得る場合には、検出した傾きについての情報を基準データ記憶部18に出力する。一方、傾き検出部32は、人物12の姿勢を判定する場合には、検出した傾きについての情報を後述する評価部44に出力する。なお、傾き検出部32による傾き検出の詳細については具体例を用いて後述する。
【0043】
圧力取得部34は、人物12が着座する座面にかかる圧力情報を取得する機能を備え、本実施形態では圧力測定装置8により測定された圧力の測定データを取得する。本実施形態では、座面領域上に等間隔で配列される縦16×横16の計256地点の圧力値からなる圧力分布を取得する。
【0044】
重心位置検出部36は、圧力取得部34により取得された測定データから、着座状態の人物12により座面にかかる圧力の重心位置を検出する。重心位置検出部36は、人物12の姿勢を判定する場合に、検出した重心位置についての情報を後述する評価部44に出力する。
【0045】
統計量算出部38は、圧力取得部34により取得された測定データから、予め定められた統計量を算出する。本実施形態では、圧力取得部34から得られた圧力分布に基づいて、平均値μ、分散σ
2、標準偏差σ、ピーク値(極大値)Vp、尖度Vkを算出する。なお、統計量算出部38は、これらの統計量に限らず他の統計量について算出してもよい。統計量算出部38は、人物12の姿勢を判定する際の基準となるデータを得る場合には、算出した統計量についての情報を基準データ記憶部18に出力する。一方、統計量算出部38は、人物12の姿勢を判定する場合には、算出した統計量についての情報を後述する評価部44に出力する。
【0046】
対称性判定部40は、圧力取得部34により取得された圧力分布の対称性を判定する。本実施形態では、対称性判定部40は、区分された座面領域間の圧力分布の対称性から、人物12の姿勢を推定する。対称性判定部40は、人物12の姿勢を判定する場合に、判定した圧力分布の対称性についての情報を後述する評価部44に出力する。なお、対称性判定部40による対称性の判定の詳細については具体例を用いて後述する。
【0047】
基準データ記憶部18は、人物12の姿勢を判定する際の基準となる基準データを記憶する。具体的には、人物12に基準となる姿勢状態をとってもらい、その際に傾き検出部32及び統計量算出部38から得られたデータを基準データとして記憶する。
【0048】
評価部44は、位置取得部30により取得された位置情報と圧力取得部34により取得された圧力情報とに基づいて、人物12の着座状態における姿勢を評価する。評価部44は、基準データ記憶部18に記憶された基準データと、人物12の姿勢判定時に位置取得部30及び圧力取得部34によりそれぞれ取得された位置情報及び圧力情報を表すデータとの差分を用いて、当該人物12の姿勢について評価する。なお、評価部44による具体的な評価例については後述する。
【0049】
表示部46は、評価部44による評価結果をUI部22に表示する。なお、表示部46による表示例については後述する。
【0050】
次に、傾き検出部32による傾き検出の詳細について、
図4から
図6を参照しながら説明する。
図4は、傾き検出部32が傾きを検出する箇所について説明する模式図である。
図4に示した図では、着座状態の人物12の側面からの様子を表しており、各部位の推定される位置が人物12上に図示されている。具体的には、
図4では、各部位として、人物12の頭部A、肩部B、腰部C、臀部Dが示されている
【0051】
本実施形態では、傾き検出部32は、頭部Aにおける人物12の前後方向の傾きθ
1と、肩部B(両肩間の中央部)における人物12の前後方向の傾きθ
2と、腰部Cにおける人物12の前後方向の傾きθ
3とを検出する。
図4で示した例では、傾きθ
1は肩部B(両肩間の中央部)及び頭部Aを結ぶベクトルと、肩部B(両肩間の中央部)を通る垂線とがなす人物12の前後方向の角度であり、傾きθ
2は腰部C及び肩部B(両肩間の中央部)を結ぶベクトルと、腰部Cを通る垂線とがなす人物12の前後方向の角度であり、傾きθ
3は腰部C及び臀部Dを結ぶベクトルと、臀部Dを通る垂線とがなす人物12の前後方向の角度である。
【0052】
なお、本実施形態では、傾き検出部32は、人物12の前後方向の各部の傾きについて求める構成について説明するが、傾き検出部32は、他の方向についての各部の傾きについて求めてもよい。
【0053】
次に、傾き検出部32による傾きの検出方法の例について説明する。まず、撮影装置6により人物12を人物12の正面から撮影した場合における傾き検出の一例について
図5を用いて説明する。
【0054】
図5(a)は、着座状態の人物12の正面から撮影した様子を表しており、各部位の推定される位置を人物12上に図示した模式図である。ここでは、撮影装置6により人物12の距離画像が撮影され、人物12の頭部A、左肩部B1、右肩部B2、腰部C、臀部D、左肘部E1、右肘部E2、左手部F1、右手部F2の位置が位置取得部30により取得されているものとする。なお、ここでは、各部位の位置情報が、人物12の正面から見た場合の左右方向(水平方向)をx座標、人物12の正面から見た場合の上下方向(垂直方向)をy座標、撮影装置からの距離をz座標とする(x,y,z)からなる座標により表されているものとする。なお、本実施形態ではz座標はあくまで距離であるので、方向を一意に特定するものではない。
【0055】
傾き検出部32は、傾きθ
1を以下のようにして求める。
傾き検出部32は、まず、左肩部B1及び右肩部B2の中心となる肩中心Pの座標(x
p,y
p,z
p)を算出する。なお、位置取得部30により既に肩中心Pの座標が取得されている場合には傾き検出部32による肩中心Pの座標の算出は不要である。
【0056】
次に、傾き検出部32は、頭部Aと肩中心Pの人物12の前後方向の距離及び垂直方向の距離を求める。前後方向の距離は、
図5(b)に示されるように撮影装置6からの距離の差、すなわちz座標の差により近似される。また、垂直方向の距離については、y座標の差により算出される。
【0057】
次に、
図5(c)に示されるように、傾き検出部32は、頭部Aと肩中心Pを斜辺にもつ直角三角形の角度θを算出する。具体的には、
図5(d)に示す式で表されるように、タンジェントの逆関数を用いて角度θを算出し、90°からθを減算することで傾きθ
1を求める。傾き検出部32は傾きθ
2及び傾きθ
3についても同様にして求める。
【0058】
次に、撮影装置6により人物12を人物12の側面から撮影した場合における傾き検出方法について
図4及び
図6を用いて説明する。
【0059】
撮影装置6により人物12の距離画像が撮影され、人物12の頭部A、肩部B、腰部C、臀部Dの位置が位置取得部30により取得されているものとする(
図4参照)。ここでは、各部位の位置情報が、人物12の側面から見た場合の左右方向(水平方向)をx座標、人物12の側面から見た場合の上下方向(垂直方向)をy座標とする(x,y)からなる座標により表されているものとする。なお、撮影装置6は必ずしも距離画像を撮影しなくてもよく、人物12の予め定められた各部について、人物12の側面から見た場合の左右方向(水平方向)及び人物12の側面から見た場合の上下方向(垂直方向)の座標位置が推定できる場合には撮影装置6は距離画像ではなく2次元画像を撮影する装置であってもよい。
【0060】
傾き検出部32は、傾きθ
1を以下のようにして求める。
まず、傾き検出部32は、肩部Bから頭部Aへのベクトルsと、肩部Bから肩部Bを通る垂線上のy座標が頭部Aのy座標と等しい点B’へのベクトルtとのなす角度θ
1(
図6(a)参照)について、
図6(b)に示されるように内積によりコサインを求める。ここで、頭部Aの座標を(x
a,y
a)、肩部Bの座標を(x
b,y
b)とすると、ベクトルsは(x
a−x
b,y
a−y
b)と表され、ベクトルtは(0,y
a−y
b)と表され、コサインは
図6(b)に示されるように計算される。傾き検出部32は、その後、コサインの逆関数により傾きθ
1を求める。傾き検出部32は傾きθ
2及び傾きθ
3についても同様にして求める。
【0061】
次に、評価部44による具体的な評価例について説明する。
評価部44は、着座状態の人物12の姿勢の適正度合いについて評価した評価値Eを次式により算出する。
【0062】
E=100−(E
1+E
2+E
3+E
4)・・・(1)
【0063】
式(1)は、姿勢判定時の人物12の姿勢が基準の姿勢と同じ場合を100点として、基準の姿勢からの乱れを減点することにより姿勢を点数化したものである。なお、式(1)において、E
1〜E
4は減点数を示している。E
1は人物12の予め定められた各部の傾き度合いによる減点数を表し、E
2は圧力取得部34が取得した圧力情報から算出される重心の位置についての基準位置からのずれに応じた減点数を表し、E
3は圧力取得部34が取得した座面における圧力分布についての基準値からのずれに応じた減点数を表し、E
4は圧力取得部34が取得した座面における圧力分布の対称性に応じた減点数を表す。以下、E
1〜E
4の算出例について説明する。
【0064】
まず、減点数E
1について説明する。評価部44は、傾き検出部32が検出した姿勢判定時の傾き及び基準データ記憶部18が記憶した基準となる姿勢時の傾きに基づいて、減点数E
1を例えば次式により算出する。
【0065】
E
1=k
1×Tθ
1+k
2×Tθ
2+k
3×Tθ
3・・・(2)
【0066】
式(2)では、上述の傾きθ
1〜θ
3について、基準となる姿勢の際の傾きθ
1〜θ
3と姿勢判定時の傾きθ
1〜θ
3の差について重み付け和を計算している。ここで、k
1〜k
3は、傾きθ
1〜θ
3の減点への寄与度合いを示す減点係数である。また、Tθ
1〜Tθ
3は、姿勢判定時の傾きθ
1〜θ
3と基準となる姿勢の際の傾きθ
1〜θ
3の差分Δθ
1〜θ
3について、減点数E
1の算出のために換算した値である。
【0067】
k
1〜k
3、Tθ
1〜Tθ
3は、例えば、
図7に示される表のように差分Δθ
1〜θ
3に応じて予め定められている。
図7を例に、Δθ
1=10°、Δθ
2=20°、Δθ
3=10°である場合の減点数E
1は、1.03×5+1.10×25+1.02×5=37.75となる。なお、Δθ
n=(姿勢判定時の傾きθ
n)−(基準となる姿勢の際の傾きθ
n)とする。
【0068】
また、式1、式2及び
図7からわかるように、評価部44は評価値Eの算出にあたり、人物12の身体の前方向の傾きについて、人物12の身体の後ろ方向の傾きよりも低く評価する(多く減点する)。これにより、着座状態の人物12の身体の前後方向の傾き度合いが同じであっても、反り返りの姿勢よりも前かがみの姿勢の方が相対的に低く評価される。例えば、身体への負担を考えた場合、前かがみの姿勢と反り返りの姿勢では前かがみの姿勢の方がより体への負担が大きいと思われるところ、上記評価によればこの点が評価に反映されることとなる。
【0069】
さらに、
図7に示した例では、減点係数は、k
3に比べk
1が相対的に大きく、k
1に比べk
2が相対的に大きく設定されている。これにより、腰部C・臀部D間の傾きにおける基準とのずれ度合い、頭部A・肩部B間の傾きの基準とのずれ度合い、肩部B・腰部C間の傾きにおける基準とのずれ度合いの順に、減点への影響が大きくなっている。例えば、基準となる姿勢の際の傾きθ
1〜θ
3が0°である場合、腰部C・臀部D間の傾き、頭部A・肩部B間の傾き、肩部B・腰部C間の傾きの順に、身体への負担が大きいと思われるところ、この点が評価に反映されることとなる。なお、
図7に示した例では、減点係数k
1〜k
3は、それぞれ差分Δθ
1〜θ
3に応じて異なる値としているが、差分Δθ
1〜θ
3に関わらず定数としてもよい。
【0070】
以上、減点数E
1の算出方法について説明したが、差分Δθ
1〜θ
3の算出にあたって、基準となる姿勢の際の傾きθ
1〜θ
3としては、人物12が実際に基準となる姿勢を行った際の傾き検出部32の検出結果でなくてもよい。基準となる姿勢の際の傾きθ
1〜θ
3として、予め定められた基準値、例えば0°を用いてもよい。
【0071】
次に、減点数E
2について説明する。評価部44は、重心位置検出部36が検出した姿勢判定時の重心の位置に基づいて、減点数E
2を例えば次式により算出する。
【0072】
E
2=k
4×Gr_Level・・・(3)
【0073】
式(3)において、Gr_Levelは姿勢判定時の重心の位置の基準位置からのずれ度合い応じた減点数を表している。また、k
4は、全体の減点に対する重心の位置に伴う減点の寄与度合いを示す減点係数であり、評価値Eを調整するために例えば実験的に定められる。
【0074】
図8は、評価部44における減点数Gr_Levelの決定方法について説明する模式図である。評価部44は、減点数Gr_Levelについて、座面の前後方向(人物の前後方向)に区分された座面のいずれの領域に重心の位置があるかによって、値を決定する。
【0075】
図8に示される例では、座面は、座面の前後方向に5つの領域に区分されており、減点数Gr_Levelは、座面の後方から順に、1,0,2,3,4と定められている。なお、
図8に示した例では、重心の位置座標(8.2,3.0)は、減点数Gr_Level=3の座標領域にあり、この場合の減点数Gr_Levelの値は3となる。
【0076】
このように、
図8に示した例では、重心の位置の座面前方へのずれについて、座面後方へのずれよりも姿勢の適正度合いを低く評価するよう減点数Gr_Levelが設定されている。椅子の座面に対して着座位置が適正な位置(Gr_Level=0)よりも浅くなるに従って身体への負担が大きくなると思われるところ、この点が評価に反映されることとなる。
【0077】
次に、減点数E
3について説明する。評価部44は、統計量算出部38が算出した統計量に基づいて、減点数E
3を例えば次式により算出する。
【0078】
E
3=K((k
5×ΔVp)×(k
6×ΔVk)/(k
7×Δσ))・・・(4)
【0079】
本実施形態では、姿勢判定時の圧力分布に基づくピーク値Vp、尖度Vk及び標準偏差σと、基準データ記憶部18が記憶したピーク値Vp、尖度Vk及び標準偏差σとの差分ΔVp、ΔVk及びΔσとを用いて、上記式(4)に基づいて減点数E
3の値を決定する。ここで、k
5〜k
7は、ΔVp、ΔVk及びΔσの減点への寄与度合いを示す減点係数であり、Kは、全体の減点に対する統計量に伴う減点の寄与度合いを示す減点係数であり、k
5〜k
7及びKは、評価値Eを調整するために例えば実験的に定められる。
【0080】
本実施形態では、着座状態において人物12の坐骨部分が配置される座面上の位置への圧力の集中度合いに基づいて減点数を決定している。なお、式(4)で示した算出式では、ピーク値Vp又は尖度Vkだけにより圧力の集中度合いを判定する場合における誤判定を抑制するよう、ピーク値Vp、尖度Vk及び標準偏差σ(ばらつき度合い)を用いているが、ピーク値Vp又は尖度Vkのいずれかと標準偏差σとにより減点数を決定してもよいし、標準偏差σを用いずに減点数を決定してもよい。また、ばらつき度合いとして、分散σ
2を用いてもよい。
【0081】
ここで、
図9乃至
図11を用いて、減点数E
3の具体例について、姿勢判定の基準となる姿勢の一例である正しい姿勢(身体への悪影響が他の姿勢よりも少なく、身体の健康上望ましいとされる着座姿勢)に比べて猫背の姿勢をとった場合を例に説明する。
【0082】
図9は、基準となる着座姿勢と、姿勢判定対象の猫背の着座姿勢及び骨盤が倒れた浅い着座姿勢とについて示す模式図であり、
図9(a)は基準となる着座姿勢を示し、
図9(b)は猫背の着座姿勢を示し、
図9(c)は骨盤が倒れた浅い着座姿勢を示している。なお、
図9において太線で描かれた曲線は、着座姿勢における背骨の様子を模式化したものである。
図9(c)において撮影装置6による撮影範囲内の身体部分は実線で表され、撮影範囲外の身体部分は破線で表されている。また、
図9(c)に示した例では、撮影装置6の撮影範囲が限られているため、頭部A及び肩中心Pについては位置取得部30による位置情報の取得ができるものの肩部よりも下部については位置情報を取得できない場合を想定している。ここで、
図9(c)に示す着座姿勢において、撮影装置6により撮影される範囲内の身体部分の姿勢は、基準となる着座姿勢と同じである。なお、
図9(c)では、一例として、頭部Aの撮影装置6からの距離(z座標)と肩中心Pの撮影装置6からの距離(z座標)とが、基準となる着座姿勢と同様に、おおよそ等しくなっている様子が図示されている。
【0083】
人物12が衣服を着用している場合などには、撮影装置6の撮影画像からは人物12の姿勢を正しく捉えることができない恐れがある。その結果、例えば、
図9(a)及び(b)のように、実際には背骨の線の形状が異なっており異なる姿勢であるにもかかわらず、撮影装置6の撮影画像に基づく位置取得部30による位置の取得では両者の違いを判別できないことが考えられる。また、例えば、位置取得部30により位置情報が取得される部位が限られる場合には、
図9(a)及び(c)のように、実際には異なる姿勢であるにもかかわらず、位置取得部30による位置の取得のみでは両者の違いを判別できないことが考えられる。これに対し、統計量による姿勢の判定を行うことにより、撮影装置6の撮影画像では判定しきれない姿勢を判定することが期待される。
【0084】
図10は、姿勢判定の基準となる姿勢である正しい姿勢での圧力分布例と、この圧力分布例に基づく統計量の計算について示した模式図である。
図10に示されるように、圧力取得部34は、縦16×横16の計256地点の圧力値からなる圧力分布を取得する。
図10において、各マス目に記載された数字は各地点での圧力値(mmHg)を示している。なお、数字が記載されていないマス目の圧力値は0である。
【0085】
統計量算出部38は、
図10に示される圧力分布に基づいて例えば次のように統計量を算出する。まず、分散を求めるために、平均値μを算出する。なお、ここでは、全256地点のうち圧力値が0ではない計198地点を対象に平均値μを算出するが、全256地点を対象に平均値μを算出してもよい。また、統計量算出部38は、算出した平均値μを用いて198地点の圧力分布について分散σ
2を算出し、算出した分散値から標準偏差σを算出する。また、統計量算出部38は、ピーク値Vp及び尖度Vkについても算出する。具体的には、統計量算出部38は、
図10に示す算出式により、ここでは平均値μ=56.5mmHg、分散σ
2=1126、標準偏差σ=33.6、ピーク値Vp=198mmHg、尖度Vk=3.34を算出する。なお、尖度は、正規化分布の場合、値は0をとり、正規化分布よりも尖っている場合にはプラスの値をとり、正規化分布よりも尖っていない場合にはマイナスの値をとる。
【0086】
図11は、猫背の着座姿勢での圧力分布例と、この圧力分布例に基づく統計量の計算について示した模式図である。統計量算出部38は、
図10を用いて説明した算出と同様に、ここでは平均値μ=57.8mmHg、分散σ
2=536、標準偏差σ=23.2、ピーク値Vp=99mmHg、尖度Vk=−1.15を算出する。
【0087】
評価部44は、上述の算出結果に基づいて、以下のように減点数E
3を決定する。
まず、評価部44は、ΔVp、ΔVk、Δσについて、ΔVp=abs|198−99|=99、ΔVk=abs|3.34−(−1.15)|=4.49、Δσ=abs|33.6−23.2|=10.4と算出する。なお、ここでabs|x|は、xの絶対値を示す関数である。
【0088】
評価部44は、上記式(4)に、算出したΔVp、ΔVk、Δσを適用し、減点数E
3を決定する。例えば、k
5〜k
7について、k
5=0.1、k
6=1.0、k
7=1.0と設定され、K=2.0と設定されていた場合、減点数E
3=8.5となる。
【0089】
次に、減点数E
4について
図12乃至
図14に基づいて説明する。評価部44は、対称性判定部40により判定された座面における圧力分布の対称性に基づいて、減点数E
4を決定する。対称性判定部40は、圧力分布の対称性が、予め定められた分類のいずれに該当するかを推定し、推定した分類に割り当てられている減点数をE
4の値とする。これにより、着座状態が予め定められた特定の姿勢である場合に、当該特定の姿勢に応じた評価が反映させられることとなる。
【0090】
図12は、対称性判定部40により特定される分類の一例を示す表である。ここでは、対称性判定部40は、座面を第1象限から第4象限の4つの領域に区分した場合(
図13参照)の各領域間の対象性に基づいて人物12の着座姿勢として予測される姿勢を特定している。
【0091】
図12に示した例に基づいて説明すると、例えば、対称性判定部40は、第1象限の圧力分布と第2象限の圧力分布について比較し、両領域の圧力分布が予め定められたパターンに該当する場合には、人物12は片足を組んだ姿勢であると推定し、この場合、評価部44は、減点数E
4の値を5とする。
【0092】
また、対称性判定部40は、第3象限の圧力分布と第4象限の圧力分布について比較し、両領域の圧力分布が予め定められたパターンに該当する場合には、人物12は左右のバランスを崩して着座していると推定し、この場合、評価部44は、減点数E
4の値を7とする。
【0093】
第1象限の圧力分布と第2象限の圧力分布が片足を組んだ姿勢であると推定される予め定められたパターンに該当し、第3象限の圧力分布と第4象限の圧力分布が左右のバランスを崩して着座していると推定される予め定められたパターンに該当する場合には、対称性判定部40は、人物12が片足を組み、かつ、左右のバランスを崩して着座していると推定し、この場合、評価部44は、減点数E
4の値を9とする。
【0094】
また、対称性判定部40は、第1象限及び第4象限の圧力分布と第2象限及び第3象限の圧力分布について比較し、両領域の圧力分布が予め定められたパターンに該当する場合には、人物12は片肘をついている姿勢であると推定し、この場合、評価部44は、減点数E
4の値を7とする。
【0095】
評価部44は、対称性判定部40による判定により、該当すると推定される姿勢(該当する分類)が複数存在する場合には、各姿勢(分類)に割り当てられている減点数のうち最大の値をE
4の値とする。
【0096】
なお、本実施形態では、人物12が座面の前後方向のいずれの位置に着座しているか(着座位置が座面の基準位置よりも浅いか深いか)を重心位置検出部36により検出する構成について説明したが、着座位置が座面の基準位置よりも浅いか深いかについて対称性判定部40により判定してもよい。例えば、第1象限の圧力分布と第4象限の圧力分布について比較し、両領域の圧力分布が予め定められたパターンに該当し、かつ、第2象限の圧力分布と第3象限の圧力分布について比較し、両領域の圧力分布が予め定められたパターンに該当する場合には、人物12は基準位置よりも浅い位置に着座していると推定するよう構成してもよい。
【0097】
次に、
図13及び
図14により、対称性判定部40による判定の具体例について説明する。対称性判定部40は、例えば、各領域の圧力分布のx方向及びy方向のそれぞれのヒストグラムの形状が予め定められたパターンに該当するか否かを判定する。
【0098】
図13は、対称性を判定する際の座面区分として第1象限から第4象限に領域を区分した場合の圧力分布の一例を示す模式図である。ここでは、座面の左右方向の中心、及び前後方向の中心を境にして、4つの領域に区分している。
図14は、第1象限及び第2象限のヒストグラムについて示す模式図であり、
図14(a)は第1象限におけるx方向及びy方向のヒストグラムを示し、
図14(b)は第2象限におけるx方向及びy方向のヒストグラムを示している。
【0099】
なお、
図14において、x方向ヒストグラムとは、各x座標において、当該領域内の全y座標の圧力値を合計したものである(x座標ごとにy方向の各圧力値を合計したものである)。また、y方向ヒストグラムとは、各y座標において、当該領域内の全x座標の圧力値を合計したものである(y座標ごとにx方向の各圧力値を合計したものである)。
【0100】
対称性判定部40は、例えば、
図14に示される4つのヒストグラムの形状の組み合わせが予め定められたパターンに該当すると判定し、
図13に示される圧力分布から推定される姿勢として、片足を組んだ着座姿勢であると推定する。これに対し、評価部44は、片足を組んだ姿勢と推定される際の予め定められた減点数5をE
4の値として決定する。
【0101】
なお、ここでは、ヒストグラムを用いた推定について説明したが、圧力分布の対称性の判定方法としては、ヒストグラムに限らない。例えば、領域ごとに統計量を算出し、算出した統計量を領域ごとに比較することにより、圧力分布の各領域間の対称性について判定してもよい。例えば、領域ごとに分散を算出し、領域間の分散値の差分の大きさに応じて非対称度合いを判断し、非対称度合いに応じた減点数を設定してもよい。
【0102】
次に、表示部46による表示例について説明する。
図15は、表示部46によりUI部22に表示される画面の一例を示す模式図である。表示部46は、評価部44の評価結果として、式(1)により算出される評価値Eの点数を表示する。また、表示部46は、
図15に示されるように、位置取得部30が取得した位置情報を図示してもよいし、圧力取得部34が取得した圧力分布を図示してもよい。
【0103】
次に、姿勢判定システム2の動作について
図16乃至
図18により説明する。
図16は、姿勢判定システム2の動作について例示するフローチャートである。
図16に示されるように、姿勢判定システム2は、まず、人物12の姿勢の判定の際、基準となる姿勢での基準データを取得し(S10)、その後、人物12の姿勢の判定を行う(S20)。
【0104】
この際、判定対象の人物12に基準となる姿勢で着座面に着座してもらい、基準データを取得することが好ましいが、基準データは必ずしも判定対象の人物12による着座のデータでなくてもよい。また、ステップ10において着座する着座面は、姿勢判定の際に着座される着座面と同じであることが好ましい。これにより、基準データの取得時と姿勢判定時とで圧力測定装置8による測定条件を揃えることができるため、着座面の弾力性による測定への影響が抑制される。なお、ステップ10の詳細については、
図17を用いて説明する。また、ステップ20の詳細については、
図18を用いて説明する。
【0105】
図17は、姿勢判定システム2における基準データの取得動作(S10)の一例を示すフローチャートである。
【0106】
ステップ100(S100)において、基準となる姿勢で着座している人物12を撮影装置6が撮影する。
【0107】
ステップ102(S102)において、位置取得部30が、ステップ100で撮影された撮影画像から身体の部位の位置を推定し、位置情報を取得する。
【0108】
ステップ104(S104)において、傾き検出部32が、ステップ102で取得した位置情報に基づいて人物12の身体の傾きを検出する。
【0109】
ステップ106(S106)において、基準データ記憶部18が、基準となる姿勢時の身体の傾きデータを記憶する。
【0110】
ステップ108(S108)において、圧力測定装置8が、基準となる姿勢での着座における座面の圧力を測定し、圧力取得部34が圧力分布を取得する。
【0111】
ステップ110(S110)において、統計量算出部38は、ステップ108で取得された測定データから、予め定められた統計量を算出する。
【0112】
ステップ112(S112)において、基準データ記憶部18が、ステップ110で算出した基準となる姿勢時の統計量のデータを記憶する。
【0113】
以上、基準データの取得動作のフローチャートとして、撮影処理及び撮影データに基づく処理の後に、圧力の測定及び測定データに基づく処理を行う例について示したが、これら動作の順序が逆であってもよいし、これら動作が並列に行われてもよい。
【0114】
図18は、姿勢判定システム2における姿勢判定動作(S20)の一例を示すフローチャートである。
【0115】
ステップ200(S200)において、判定対象の姿勢で着座している人物12を撮影装置6が撮影する。
【0116】
ステップ202(S202)において、位置取得部30が、ステップ200で撮影された撮影画像から身体の部位の位置を推定し、位置情報を取得する。
【0117】
ステップ204(S204)において、傾き検出部32が、ステップ202で取得した位置情報に基づいて人物12の身体の傾きを検出する。
【0118】
ステップ206(S206)において、圧力測定装置8が、判定対象の姿勢での着座における座面の圧力を測定し、圧力取得部34が圧力分布を取得する。
【0119】
ステップ208(S208)において、重心位置検出部36が、ステップ206で取得された測定データから、着座状態の人物12により座面にかかる圧力の重心位置を検出する。
【0120】
ステップ210(S210)において、統計量算出部38は、ステップ206で取得された測定データから、予め定められた統計量を算出する。
【0121】
ステップ212(S212)において、対称性判定部40が、ステップ206で取得された圧力分布の対称性を判定する。
【0122】
ステップ214(S214)において、評価部44が、上述のステップ106及びステップ112で基準データ記憶部18が記憶した基準データと、ステップ204及び210で判定対象のデータとの差分を算出する。
【0123】
ステップ216(S216)において、評価部44が、式(1)に基づいて評価値Eを算出する。
【0124】
ステップ218(S218)において、表示部46が、評価部44による評価結果をUI部22に表示する。
【0125】
以上、姿勢判定動作のフローチャートとして、撮影処理及び撮影データに基づく処理の後に、圧力の測定及び測定データに基づく処理を行う例について示したが、これら動作の順序が逆であってもよいし、これら動作が並列に行われてもよい。
【0126】
以上、本発明の実施形態として、椅子10に着座した人物12について姿勢判定を行う例について説明したが、人物12の着座は、椅子10への着座に限らず、座面への着座であればよく、床、畳などへの着座であってもよい。また、姿勢判定システム2は、
図1に示す座り方に限らず、正座、胡坐など任意の座り方について、評価してもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、撮影装置6が、人物12の正面、背面又は側面から撮影する場合について説明したが、撮影の方向は人物12の正面、背面又は側面でなくてもよい。
【0128】
また、位置取得部30は、撮影装置6による撮影で得られた撮影データから推定される位置情報を取得するものとして説明したが、人物12の身体の予め定められた部位にマーカをつけて、このマーカの位置を測定することにより位置情報を取得してもよい。