(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343920
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】ラジアル・スラスト組合せ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/38 20060101AFI20180611BHJP
F16C 19/48 20060101ALI20180611BHJP
F16C 33/60 20060101ALI20180611BHJP
F16C 33/64 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
F16C19/38
F16C19/48
F16C33/60
F16C33/64
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-255106(P2013-255106)
(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公開番号】特開2015-113883(P2015-113883A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久松 聖民
【審査官】
佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−057666(JP,A)
【文献】
特開2012−167710(JP,A)
【文献】
特開2008−232240(JP,A)
【文献】
米国特許第3829181(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00 − 19/56
F16C 33/30 − 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道を持つ円筒状部分と、前記円筒状部分の軸方向他端部を径方向内方に向け直角に折り曲げて内向フランジ状としたスラスト鍔部と、を備えるラジアル軌道輪と、
前記ラジアル軌道輪の径方向内側にラジアル保持器によって転動自在に保持された複数のラジアルニードルと、
前記ラジアル軌道輪の軸方向一端寄り部分を径方向外方に向け直角に折り曲げて外向フランジ状とした円輪状部分と、前記円輪状部分の径方向外端部を軸方向一端側に向け直角に折り曲げて短円筒状とした筒状フランジと、前記筒状フランジの先端部の円周方向複数箇所を径方向内方に曲げ形成した第一係止部と、を備える第一スラスト軌道輪と、
前記第一スラスト軌道輪の円輪状部分の軸方向一端側に設けられた円輪状のバックアップレースと、
平坦な円輪状の本体部分と、この本体部分の内径寄り端部を軸方向他端側に折り曲げて短円筒状とした第二筒状フランジと、この第二筒状フランジの先端部の円周方向複数箇所を径方向外方に曲げ形成した第二係止部と、を備える第二スラスト軌道輪と、
前記バックアップレースと前記第二スラスト軌道輪との間にあってスラスト保持器によって転動自在に保持された複数のスラストニードルと、
を備えた組合せニードル軸受において、
前記第二スラスト軌道輪の前記第二筒状フランジは、前記スラストニードルの軸方向他端側よりも突出し、
前記バックアップレースの内径は、前記第二筒状フランジの内径よりも小さく、
前記バックアップレースには、直径が、前記第二筒状フランジの外径よりも大きく、かつ、前記各スラストニードルの転動面の内接円よりも小さい凹部が設けられていることを特徴とする組合せニードル軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用変速機等の回転支持部に組み込まれるラジアル軸受とスラスト軸受とを組合せた組合せニードル軸受の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用変速機を構成する為、動力伝達軸の周囲に配置する歯車は、シンクロメッシュ機構の働きにより、この動力伝達軸と共に回転したり、或いはこの動力伝達軸に対して相対回転したり(動力伝達軸の回転に拘らず静止したままとなったり)する。又、前記歯車としてはすば歯車を使用する為、この歯車には、動力伝達に伴って、ラジアル荷重に加えてスラスト荷重も加わる。更に、前記自動車用変速機の回転支持部の設置スペースは限られる為、この回転支持部を構成する軸受は小型なものとする必要がある。この様な事情により従来から、前記動力伝達軸と前記歯車との間に、ラジアルニードル軸受とスラストニードル軸受とを組み込んでいた。又、これら両軸受を組合せたラジアル・スラスト組合せニードル軸受も、例えば特許文献1に記載される等により従来から知られている。
【0003】
図5は、特許文献1に記載された、ラジアル・スラスト組合せニードル軸受の従来構造の1例を示している。この
図5に示した組合せニードル軸受1は、それぞれがニードル軸受であるラジアル軸受2とスラスト軸受3とを一体に組合せて成る。この為に前記組合せニードル軸受1は、第一、第二両ラジアル軌道輪4、5と、複数本のラジアルニードル6、6と、ラジアル保持器7と、第一スラスト軌道輪8と、バックアップレース15と、第二スラスト軌道輪10と、複数本のスラストニードル11、11と、スラスト保持器12とを備える。そして、これら各構成部材4、5、6、7、8、15、10、11、12を、必要箇所を相対的回転を可能に、且つ、非分離に組合せている。即ち、前記組合せニードル軸受1として回転支持部に組み込む以前の状態でも、前記各構成部材4、5、6、7、8、15、10、11、12が、それぞれが隣接する部材から分離する事を防止している。
【0004】
前記各構成部品4、5、6、7、8、15、10、11、12のうちの第一、第二両ラジアル軌道輪4、5は、それぞれが円筒状に形成されて互いに同心に配置している。そして、これら両ラジアル軌道輪4、5のうちの第一ラジアル軌道輪4を、前記第一スラスト軌道輪8と一体としている。即ち、肌焼鋼等の、熱処理により少なくとも表面を硬化可能な、炭素鋼製の引き抜き鋼管の如き円筒状の素材の軸方向一端寄り(
図1の右端寄り)部分を径方向外方に向け直角に折り曲げて、外向フランジ状の円輪状部分としている。そして、このうちの円筒状部分を前記第一ラジアル軌道輪4とし、円輪状部分を前記第一スラスト軌道輪8としている。又、この第一ラジアル軌道輪4の内周面を、外輪軌道13としている。
【0005】
又、前記円筒状部分の軸方向他端部を径方向内方に向け直角に折り曲げて、内向フランジ状のスラスト鍔部17としている。又、前記円輪状部分の径方向外端部を、軸方向に関して前記第一ラジアル軌道輪4と反対側に向け直角に折り曲げて、短円筒状の筒状フランジ9としている。更に、この筒状フランジ9の先端部の円周方向複数箇所(例えば3〜4箇所)を径方向内方に曲げ形成して(突出させて)、第一係止部18を形成している。これら各第一係止部18の内接円の直径は、前記スラスト保持器12の外径よりも少しだけ小さい。
【0006】
一方、前記第二ラジアル軌道輪5は、炭素鋼(軸受鋼を含む)等の焼き入れ硬化可能な鉄系合金製の素材に、鍛造等の塑性加工、或いは旋削等の削り加工を施す事により、全体を円筒状に加工している。本例の場合、前記第二ラジアル軌道輪5の外周面のうち、軸方向中間部乃至他端寄り部分を内輪軌道14としている。前記各ラジアルニードル6、6は、それぞれの中心軸を前記両ラジアル軌道輪4、5の中心軸と平行にし、前記ラジアル保持器7に保持された状態で、前記外輪軌道13と前記内輪軌道14との間に、転動自在に配置している。又、前記第二ラジアル軌道輪5の外周面のうち、この内輪軌道14から外れた軸方向一端寄り部分を、この内輪軌道14部分よりも径方向内方に凹ませて、小径段部19としている。そして、これら内輪軌道14と小径段部19との間に、段差面20を設けている。
【0007】
そして、この段差面20に、前記バックアップレース15の内径寄り端部の軸方向片側面を対向させている。このバックアップレース15は、軸受鋼、肌焼鋼等、少なくとも表面を熱処理硬化可能な鉄系合金製の板材により全体を円輪状としている。この様なバックアップレース15の外径は、前記筒状フランジ9の内径と同じか、この内径よりも僅かに小さい。同じく内径は、前記内輪軌道14の外径よりも小さく、前記小径段部19の外径よりも大きい。又、前記バックアップレース15と前記第一スラスト軌道輪8とを隙間なく重ね合わせた状態で、このバックアップレース15の軸方向片側面と前記スラスト鍔部17の内側面との間隔は、前記第二ラジアル軌道輪5のうちの前記内輪軌道14を形成した部分の幅(軸方向長さ)よりも少し大きい。本例の場合には、前記バックアップレース15の径方向内端部と前記スラスト鍔部17との間で、前記第二ラジアル軌道輪5のうちの前記内輪軌道14を形成した部分を軸方向両側から緩く(隙間を開けて)挟む事により、前記第一、第二両ラジアル軌道輪4、5の軸方向に関する相対変位を抑えている。この構成により、前記ラジアル軸受2の構成各部材同士の分離防止が図られる。
【0008】
又、前記第二スラスト軌道輪10は、肌焼鋼等、熱処理により少なくとも表面を硬化可能な鉄系合金製の素板に、例えばプレスによる打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により、断面L字形で全体を円輪状に形成している。即ち、前記第二スラスト軌道輪10の本体部分となる、平坦な円輪状部分の内径寄り端部を前記第一スラスト軌道輪8に向けて直角に折り曲げる事により、短円筒状の第二筒状フランジ16を設けている。更に、この第二筒状フランジ16の先端部の円周方向複数箇所(例えば3〜4箇所)を径方向外方に曲げ形成して(突出させて)、第二係止部21を形成している。これら各第二係止部21の外接円の直径は、前記スラスト保持器12の内径よりも少しだけ大きい。
【0009】
前記各スラストニードル11、11は、それぞれの中心軸を前記両スラスト軌道輪8、10の径方向に(放射状に)配置し、前記スラスト保持器12に保持した状態で、これら両スラスト軌道輪8、10の互いに対向する軸方向片側面(スラスト軌道面)同士の間に転動自在に設けている。この状態で、前記スラスト保持器12の外周縁と前記各第一係止部18との係合により、このスラスト保持器12が前記第一スラスト軌道輪8から離れる方向に変位する事が抑えられる。又、このスラスト保持器12の内周縁と前記各第二係止部21との係合により、前記第二スラスト軌道輪10がこのスラスト保持器12から離れる方向に変位する事が抑えられる。この結果、前記スラスト軸受3の構成各部材同士の分離防止が図られる。
【0010】
前述した通り、前記ラジアル軸受2の構成各部材同士が分離する事はなく、このラジアル軸受2を構成する前記第一ラジアル軌道輪4と、前記スラスト軸受3を構成する前記第一スラスト軌道輪8とは一体である。従って、前記組合せニードル軸受1の構成各部材4、5、6、7、8、15、10、11、12は、必要箇所を相対的回転を可能な状態として、非分離に組み合わされている。従って、前記組合せニードル軸受1を回転支持部に組み付ける以前の状態で、この組合せニードル軸受1の構成各部材4、5、6、7、8、15、10、11、12を抑えておかなくても、これら構成各部材4、5、6、7、8、15、10、11、12同士が分離する事がなくなる。この為、部品管理、組み付け作業を何れも簡略化できて、優れた取り扱い性を持たせる事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−057666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に記載された、組合せニードル軸受を設計する際に、コスト低減のために既存の量産スラスト軸受を流用したり、部品の流用しようとした場合、第二筒状フランジ16の端面が軸方向において転動面に近接、あるいは、転動面よりも突出しているものは、バックアップレース15との干渉のため選択出来ず、設計の自由度が損なわれてしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、第二筒状フランジの端面が転動面に近接、あるいは、転動面よりも突出しているスラスト軸受、またはその部品であっても、流用可能な、設計の自由度の高い組合せニードル軸受を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成によって達成される。
内周面に外輪軌道を持つ円筒状部分と、前記円筒状部分の軸方向他端部を径方向内方に向け直角に折り曲げて内向フランジ状としたスラスト鍔部と、を備えるラジアル軌道輪と、
前記ラジアル軌道輪の径方向内側にラジアル保持器によって転動自在に保持された複数のラジアルニードルと、
前記ラジアル軌道輪の軸方向一端寄り部分を径方向外方に向け直角に折り曲げて外向フランジ状とした円輪状部分と、前記円輪状部分の径方向外端部を軸方向一端側に向け直角に折り曲げて短円筒状とした筒状フランジと、前記筒状フランジの先端部の円周方向複数箇所を径方向内方に曲げ形成した第一係止部と、を備える第一スラスト軌道輪と、
前記第一スラスト軌道輪の円輪状部分の軸方向一端側に設けられた円輪状のバックアップレースと、
平坦な円輪状の本体部分と、この本体部分の内径寄り端部を軸方向他端側に折り曲げて短円筒状とした第二筒状フランジと、この第二筒状フランジの先端部の円周方向複数箇所を径方向外方に曲げ形成した第二係止部と、を備える第二スラスト軌道輪と、
前記バックアップレースと前記第二スラスト軌道輪との間にあってスラスト保持器によって転動自在に保持された複数のスラストニードルと、
を備えた組合せニードル軸受において、
前記第二スラスト軌道輪の前記第二筒状フランジは、前記スラストニードルの軸方向他端側よりも突出し、
前記バックアップレースの内径は、前記第二筒状フランジの内径よりも小さく、
前記バックアップレースには、直径が、前記第
二筒状フランジの外径よりも大きく、かつ、前記各スラストニードルの転動面の内接円よりも小さい凹部が設けられていることを特徴とする組合せニードル軸受。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組合せニードル軸受によれば、スラスト軸受の第二スラスト軌道輪の第二筒状フランジとバックアップレースの干渉の心配が無いため、量産品の流用などが可能となり、設計上の自由度が増すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
図1は、
図5に示す従来構造の組合せニードル軸受1のスラスト軸受3の代わりに構造の異なるスラスト軸受3aを用いた、本発明の実施の形態の第1例である組合せニードル軸受1aを示している。より具体的には、複数のスラストニードル11、11と、スラスト保持器12aと、第二スラスト軌道輪10aと、から成る量産品を用いたユニットを用いることを可能とした組合せニードル軸受1aを示している。なお、従来構造と同じ構成には同じ符号を付け、説明を簡略化する。
【0018】
スラスト保持器12aは、円環状の2枚の金属板からなり、複数のスラストニードル11、11を挟持した状態でこの2枚の金属板をカシメ結合して成る。そして、スラストニードル11、11の軸方向一端側にあってスラストニードル11、11の軌道面を持つ第二スラスト軌道輪10aは、本体部分となる平坦な円輪状部分の内径寄り端部を軸方向他端側に向けて直角に折り曲げる事により、短円筒状の第二筒状フランジ16aを設けている。更に、この第二筒状フランジ16aの先端部の円周方向複数箇所(例えば3〜4箇所)を径方向外方に曲げ形成して(突出させて)、第二係止部21aを形成している。これら各第二係止部21aの外接円の直径は、前記スラスト保持器12aの内径よりも少しだけ大きくなっており、スラストニードル11、11と、スラスト保持器12aと、第二スラスト軌道輪10aとが分離しないよう一体となっている。
【0019】
そして、従来構造と同様、第一スラスト軌道輪8とスラストニードル11、11の間には、軸方向一端側にスラストニードル11、11の軌道面をもつバックアップレース15aが設けられており、バックアップレース15aの径方向内端部と前記スラスト鍔部17との間で、第二ラジアル軌道輪5のうちの内輪軌道14を形成した部分を軸方向両側から緩く(隙間を開けて)挟む事により、第一ラジアル軌道輪4、第二ラジアル軌道輪5の軸方向に関する相対変位を抑えている。この構成により、ラジアル軸受2の構成各部材同士の分離防止が図られる。
【0020】
ここで、第二スラスト軌道輪10aの第二筒状フランジ16aは、スラストニードル11の軸方向他端側よりも突出している。そのため、従来構成のバックアップレース15では、干渉してしまう。そこで、本実施形態のバックアップレース15aは、径方向内周寄りの軸方向一端側を第
二筒状フランジ16aが干渉しないように凹部22aを形成している。この凹部22aの外径は、第
二筒状フランジ16aの外径よりも大きく、各スラストニードル11、11の転動面の内接円よりも小さい。(バックアップレース15a上に設けられたスラストニードル11、11の軌道面よりも小さい)また、凹部の軸方向深さは、第二筒状フランジ16aがスラストニードル11の軸方向他端側よりも突出している突出長さよりも深い。
【0021】
このようなバックアップレース15aを用いることにより、第二筒状フランジ16aがスラストニードル11の軸方向他端側よりも突出していたとしても、組合せニードル軸受1aの構成部品として流用可能となる。また、この構成に限定されず、
図5に示す従来技術の組み合せニードル軸受1に用いているスラスト保持器12であっても問題なく使用することができる。さらに、スラストニードル11、11と、スラスト保持器12と、第二スラスト軌道輪10と、から成る
図5に示す従来技術の組み合せニードル軸受1に用いているユニットであっても、問題なく使用することができる。このように、設計時に、安価な量産品を流用することが可能となり、また、その選択範囲も広がるため、設計上の自由度が増す。
【0022】
[実施の形態の第2例]
図2は、本発明の実施の形態の第2例である組合せニードル軸受1bを示している。第1例との違いは、本例の組合せニードル軸受1bは、第二ラジアル軌道輪5を持たない構成であり、実施の形態の第1例の第二ラジアル軌道輪5の内輪軌道14に相当する構成は、本実施例の組合せニードル軸受1bを組み込む、軸側に設けられている。
【0023】
ラジアル軸受2aのスラスト鍔部17aは、実施の形態の第1例のスラスト鍔部17とは、内径のみが異なる。スラスト鍔部17aの内径は、ラジアル保持器7の軸方向移動を制限するためにラジアル保持器7の軸方向他端側端面の内径よりも小さく、相手軸との干渉を避けるために各ラジアルニードル6の転動面の内接円よりも大径である。
【0024】
同じく、バックアップレース15bは、実施の形態の第1例のバックアップレース15aとは、内径のみが異なる。バックアップレース15bの内径は、ラジアル保持器7の軸方向移動を制限するためにラジアル保持器7の軸方向他端側端面の内径よりも小さく、相手軸との干渉を避けるために各ラジアルニードル6の転動面の内接円よりも大径である。バックアップレース15bには、バックアップレース15aと同様の凹部22bが設けられている。
【0025】
この様な構成をとることにより、第二ラジアル軌道輪5を持たない構成であっても、実施の形態の第1例と同様に設計上の自由度を増すことができる。
【0026】
[実施の形態の第3例]
図3は、本発明の実施の形態の第3例である組合せニードル軸受1cを示している。本実施の形態の構成の、実施の形態の第2例の構成との違いは、バックアップレース15cの形状のみである。バックアップレース15cの軸方向一端側には、バックアップレース15bと同様の凹部22cが設けられているが、軸方向項他端側には凹部22cに対応する凸部23aが設けられ、バックアップレース15cの一部が薄肉化することを防いでいる。なお、図示していないが、第二ラジアル軌道輪を持つ組合せニードル軸受の場合には、バックアップレース15aに凸部を設けることにより、同様の効果を得ることが出来る。
【0027】
[実施の形態の第4例]
図4は、本発明の実施の形態の第4例である組合せニードル軸受1dを示している。本実施の形態の構成の、実施の形態の第2例の構成との違いは、バックアップレース15dの形状のみである。バックアップレース15bの凹部22bは軸方向一端側にのみ設けられているが、本実施例の場合、バックアップレース15dの軸方向両面に凹部22d、22dが設けられている。これにより、バックアップレース15dの方向性がなくなり、組み立て性が向上する。なお、図示していないが、第二ラジアル軌道輪を持つ組合せニードル軸受の場合には、バックアップレース15aの両面に凹部を設けることにより、同様の効果を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明の組合せニードル軸受は、スラスト軸受の第二スラスト軌道輪の第二筒状フランジとバックアップレースの干渉の心配が無いため、量産品の流用などが可能となり、設計上の自由度が増すことができるので、例えば自動車用変速機等の回転支持部に組み込まれるラジアル・スラスト組合せニードル軸受として好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1、1a、1b、1c、1d 組合せニードル軸受
2、2a ラジアル軸受
3、3a スラスト軸受
4 第一ラジアル軌道輪
5 第二ラジアル軌道輪
6 ラジアルニードル
7 ラジアル保持器
8 第一スラスト軌道輪
9 筒状フランジ
10、10a 第二スラスト軌道輪
11 スラストニードル
12、12a スラスト保持器
13 外輪軌道
14 内輪軌道
15、15a、15b、15c、15d バックアップレース
16、16a 第二筒状フランジ
17、17a スラスト鍔部
18 第一係止部
19 小径段部
20 段差面
21、21a 第二係止部
22a、22b、22c、22d 凹部
23a 凸部