特許第6343921号(P6343921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343921
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】プログラム及び楽音発生制御方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   G10H1/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-257615(P2013-257615)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-114563(P2015-114563A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】平塚 賢
【審査官】 冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−091181(JP,A)
【文献】 特開平09−244647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置のコンピュータに楽音発生制御方法を実行させるプログラムであって、
前記楽音発生制御方法は、
複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、
前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを前記電子音楽装置が有する前記音源によって再生させるための指示を前記電子音楽装置に送るよう、前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記MIDIデータは前記電子音楽装置に記憶されており、前記制御ステップは、前記選択された特定情報に対応するMIDIデータの再生指示を前記電子音楽装置に送ることを特徴とする請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
前記MIDIデータは、前記楽音発生制御装置に記憶されるかまたは、前記電子音楽装置以外の装置から前記楽音発生制御装置によって取得され、前記制御ステップは、前記選択された特定情報に対応するMIDIデータを該MIDIデータの再生指示と共に前記電子音楽装置に送ることを特徴とする請求項1記載のプログラム。
【請求項4】
前記MIDIデータは、伴奏スタイルデータと該伴奏スタイルのデモ用のコード進行データとから成り、
前記オーディオデータは、前記伴奏スタイルデータ中のスタイルデータを前記コード進行データで規定されるコード進行で生成した自動伴奏データを録音して成ることを特徴とする請求項1記載のプログラム。
【請求項5】
電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置のコンピュータに楽音発生制御方法を実行させるプログラムであって、
前記楽音発生制御方法は、
複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、
前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを順次読み出して前記電子音楽装置に送信するよう前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記MIDIデータは、前記楽音発生制御装置に記憶されるかまたは、前記電子音楽装置以外の装置から前記楽音発生制御装置によって取得されることを特徴とする請求項記載のプログラム。
【請求項7】
前記MIDIデータは、伴奏スタイルデータと該伴奏スタイルのデモ用のコード進行データとから成り、
前記伴奏スタイルデータは前記電子音楽装置に記憶され、
前記オーディオデータは、前記伴奏スタイルデータ中のスタイルデータを前記コード進行データで規定されるコード進行で生成した自動伴奏データを録音して成り、
前記制御ステップは、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記伴奏スタイルデータ中のデータのうち前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するものを指定する情報を前記電子音楽装置に送信すると共に、前記選択された特定情報に対応するコード進行データ内のコード情報を順次読み出して前記電子音楽装置に送信する請求項5記載のプログラム。
【請求項8】
前記選択ステップは、前記複数の特定情報の各々に対応するアイコンを表示部に表示させ、前記表示部においてユーザにより指定されたアイコンに対応する特定情報を選択することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記複数の特定情報は、前記電子音楽装置の前記音源で発音可能な音色に対応して分類されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置における楽音発生制御方法であって、
複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、
前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを前記電子音楽装置が有する前記音源によって再生させるための指示を前記電子音楽装置に送るよう、前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とする楽音発生制御方法。
【請求項11】
電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置における楽音発生制御方法であって、
複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、
前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを先頭から順次読み出して前記電子音楽装置に送信するよう前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とする楽音発生制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源を有する電子音楽装置と通信可能に接続でき、且つオーディオデータを再生できる楽音発生制御装置における楽音発生制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上位機種の電子ピアノ等の電子音楽装置は、高価な音源及びサウンドシステムを備えている。従って、リアルタイム演奏により取得されるか、あるいは予め記憶されたMIDIデータ等の演奏データを、音源及びサウンドシステムを用いて豊かな音響にすることが可能である。このような電子音楽装置を未購入等で入手していないユーザにとっては、電子音楽装置の楽音を聞くことができず、購入前に音色デモ等を試聴したいという要求があると考えられる。
【0003】
一方、パソコン等の端末装置においては、電子音楽装置でデモ演奏用に用いるのと同じMIDIデータを入手すれば、端末装置に備わる音源を用いて一応の再生が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ミュージックシーケンサソフトウェア XGworks Family「らくらく作曲名人2」取扱説明書 ヤマハ株式会社、2000年作成、16、17、30、31、40、41ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、端末装置に備わる音源は通常、廉価なソフト音源等であって、高級な電子ピアノに搭載される音源とは異なる。MIDIデータにおいて、音色については、音色の番号を引数として持つMIDIイベントデータで音源に対して指定をするだけである。そのため、指定した音源に電子音楽装置の音源と一致する音色がない場合は、代替の音色で発音されることになり、電子音楽装置で発音される楽音とは聴覚上異なったものとなる。従って、電子音楽装置で発音可能な音色の全てを端末装置でリアルに体感することは困難である。
【0006】
ところで、端末装置等において、MIDIデータを発音させるための音源を指定できるソフトウェアが知られている(特許文献1)。このソフトウェアにおいては、例えば、再生に用いる音源として、端末装置が有する音源、または、MIDIインターフェイスで接続される外部音源を選択的に指定することができる。従って、外部音源として上記のような電子音楽装置の音源を指定することも可能である。
【0007】
しかし、仮に、外部音源を指定した状態で、ケーブルの外れ等によってMIDIによる通信が遮断された場合に、そのままでは音が発生しない状態となる。その状態となったときに楽音を発生させるためには、楽音の再生に用いる音源の指定を外部音源から端末装置が有する音源に切り替える必要があり、そのための切り替えの設定操作が煩雑である。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、煩雑な設定操作を要することなく、電子音楽装置との接続の有無にかかわらず、良好な音響で楽音を再生させることができるプログラム及び楽音発生制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の請求項1のプログラムは、電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置のコンピュータに楽音発生制御方法を実行させるプログラムであって、前記楽音発生制御方法は、複数の特定情報(34)の中から1つを選択する選択ステップと、前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを前記電子音楽装置が有する前記音源によって再生させるための指示を前記電子音楽装置に送るよう、前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータ(31)を前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の請求項のプログラムは、電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置のコンピュータに楽音発生制御方法を実行させるプログラムであって、前記楽音発生制御方法は、複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを順次読み出して前記電子音楽装置に送信するよう前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の請求項10の楽音発生制御方法は、電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置における楽音発生制御方法であって、複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを前記電子音楽装置が有する前記音源によって再生させるための指示を前記電子音楽装置に送るよう、前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の請求項11の楽音発生制御方法は、電子音楽装置が有する音源で再生可能なMIDIデータのそれぞれに対応し前記MIDIデータとは独立したオーディオデータ、を記憶する記憶手段を有し、前記オーディオデータを再生可能な楽音発生制御装置における楽音発生制御方法であって、複数の特定情報の中から1つを選択する選択ステップと、前記楽音発生制御装置と電子音楽装置とが通信可能に接続されているか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていると判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するMIDIデータを先頭から順次読み出して前記電子音楽装置に送信するよう前記楽音発生制御装置を制御する一方、前記判別ステップにより前記楽音発生制御装置と前記電子音楽装置とが通信可能に接続されていないと判別された場合は、前記選択ステップにより選択された特定情報に対応するオーディオデータを前記記憶手段から取得し、該取得したオーディオデータが前記楽音発生制御装置によって再生されるよう前記楽音発生制御装置を制御する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0013】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【0014】
なお、請求項1または記載のプログラムを格納したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体は、本発明を構成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、煩雑な設定操作を要することなく、電子音楽装置との接続の有無にかかわらず、良好な音響で楽音を再生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る楽音発生制御方法が適用される楽音発生制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】デモ試聴用のアプリケーション及び電子ピアノの内部構成とこれらの関係を示すブロック図である。
図3】デモ試聴の際にタッチパネルディスプレイに表示される表示画面の例を示す図である。
図4】デモ試聴の際の楽音発生制御の処理のフローチャートである。
図5】第2の実施の形態におけるデモ試聴用のアプリケーション及び電子ピアノの内部構成とこれらの関係を示すブロック図である。
図6】第2の実施の形態におけるデモ試聴の際の楽音発生制御の処理のフローチャートである。
図7】第1、第2の実施の形態の変形例に係る、アプリケーション及び電子ピアノの内部構成とこれらの関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る楽音発生制御方法が適用される楽音発生制御装置の概略構成を示すブロック図である。この楽音発生制御装置は、例えば、スマートフォンやタブレット等の通信端末装置100として構成される。
【0019】
通信端末装置100は、各種情報を入力するための複数のスイッチを含む操作子2と、操作子2の操作状態を検出する検出回路5と、装置全体の制御を司るCPU7と、該CPU7が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶するROM8と、オーディオデータ、各種入力情報および演算結果等を一時的に記憶するRAM9と、各種情報等を表示する、タッチパネル形式の液晶ディスプレイ(LCD)であるタッチパネルディスプレイ16と、タッチパネルディスプレイ16の表示を制御する表示回路3と、タッチパネルディスプレイ16のタッチパネルの操作を検出する検出回路4と、前記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種データ等を記憶する記憶部11と、通信インターフェイス(I/F)12と、音源10と、効果回路13とを備える。
【0020】
符号3〜13で示される構成要素は、バス15を介して相互に接続され、効果回路13にはサウンドシステム14が接続され、CPU7にはタイマ6が接続される。音源10は、演奏データ等を楽音信号に変換する。効果回路13は、オーディオデータや音源10から入力される楽音信号に各種効果を付与する。DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等で構成されるサウンドシステム14は、効果回路13から入力される楽音信号等を音響に変換する。
【0021】
通信I/F12としては、例えば、MIDI(musical instrument digital interface)信号などの音楽信号を専用に送受信する音楽専用有線I/F、USB(universal serial bus)やIEEE1394などの汎用近距離有線I/F、Ethernet(登録商標)などの汎用ネットワークI/F、無線LAN(local area network)やBluetooth(登録商標)などの汎用近距離無線I/Fを挙げることができるが、例示に限られない。通信I/F12には、これは複数種類のI/Fが含まれていてもよい。
【0022】
例えば、通信I/F12の無線LAN等を用いて、CPU7は外部記憶装置20にアクセスすることができる。外部記憶装置20は、例えば、ネットワーク上に存在するサーバ装置の記憶装置である。また、通信I/F12を用いて、CPU7は電子ピアノ200を通信可能に接続することができる。電子ピアノ200は、本実施の形態における電子音楽装置の例示である。
【0023】
記憶部11は、半導体メモリ等の記憶媒体とその駆動装置である。記憶媒体または記憶部11自体が着脱可能であってもよい。なお、記憶部11(の記憶媒体)には、前述のようにCPU7が実行する制御プログラムも記憶でき、ROM8に制御プログラムが記憶されていない場合には、この記憶部11に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM9に読み込むことにより、ROM8に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU7にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。CPU7は、外部記憶装置20からアプリケーションをダウンロードして記憶部11に格納させ、そのアプリケーションを通信端末装置100で実行することができる。
【0024】
本実施の形態では、電子ピアノ200が発音可能な音色や電子ピアノ200によるデモ演奏を、電子ピアノ200を入手しなくても通信端末装置100を有していれば体感できるようにするためのアプリケーション30(図2)をユーザに提供する。
【0025】
図2は、デモ試聴用のアプリケーション及び電子ピアノ200の内部構成とこれらの関係を示すブロック図である。
【0026】
デモ試聴用のソフトウェアであるアプリケーション30は、例えば外部記憶装置20からダウンロードされて記憶部11に格納される。なお、アプリケーション30の入手経路は問わず、予めROM8または記憶部11に記憶されてもよい。アプリケーション30は、本実施の形態における楽音発生制御方法を実現するためのソフトウェアであり、電子ピアノ200のデモ演奏を通信端末装置100で試聴する機能、及び、電子ピアノ200に対してデモ演奏を指示する機能を有する。
【0027】
本実施の形態では、電子ピアノ200の豊富な音色を電子ピアノ200の購入前においても体感できるようにすることを主目的とするので、用いるデータはデモデータと呼称するが、これは音楽コンテンツの一例に過ぎず、既存楽曲の演奏や、スタイル及びコード進行の指定によりなされる演奏を含む。他の実施の形態や変形例については後述する。
【0028】
図2に示すように、電子ピアノ200は通信I/F42を備える。通信I/F42は、通信I/F12と同様に構成される。通信I/F12と通信I/F42とが接続されて、通信端末装置100と電子ピアノ200との間でデータ通信が可能となる。
【0029】
電子ピアノ200は、音源44及びサウンドシステム45を備える。これらは、通信端末装置100が備えるものよりも十分に高価な上位構成のものである。電子ピアノ200は、自身を特定する機種IDを含む機種情報43を記憶し、さらに、発音可能な複数の音色に対応したデモデータで構成される演奏データ41を記憶している。演奏データ41は、音色ごとに分類されたMIDI形式の複数のデモデータとして「音色01、音色02・・・音色XX」を含んでいる。
【0030】
音源44は、MIDIフォーマットの演奏データを再生可能であり、演奏データ41は音源44によって再生される。すなわち、音源44が演奏データ41を楽音信号に変換し、不図示の効果回路を含んだサウンドシステム45が楽音信号等を音響に変換する。電子ピアノ200における鍵盤演奏による楽音の発音も音源44及びサウンドシステム45によってなされる。
【0031】
通信端末装置100にアプリケーション30がダウンロードされる際、オーディオデータ31及びアイコン表示情報32も一緒にダウンロードされ、記憶部11に格納される。なお、オーディオデータ31及びアイコン表示情報32のいずれかまたは双方は、アプリケーション30とは別に、ダウンロード等によって通信端末装置100が取得する構成としてもよく、デモ試聴がなされる段階で何らかの方法で通信端末装置100が扱えるようになっていればよい。
【0032】
オーディオデータ31は、音色ごとに分類されたオーディオ形式の複数のデモデータとして「音色01、音色02・・・音色XX」を含んでいる。オーディオデータ31に含まれるデモデータと演奏データ41に含まれるデモデータとはデータ同士が対応している。オーディオデータ31が含むデモデータは、音色ごとの単音でもよいが、各音色をユーザが把握できればよいので、電子ピアノ200による演奏を記録した短い曲に相当する楽音でもよい。
【0033】
通信端末装置100またはアプリケーション30は、オーディオデータ31を再生する機能を有する。アイコン表示情報32は、オーディオデータ31及び演奏データ41の各デモデータに対応するアイコンを表示させるための情報である。
【0034】
図3(a)、(b)は、デモ試聴の際にタッチパネルディスプレイ16に表示される表示画面の例を示す図である。
【0035】
デモ試聴設定の指示がなされると、アイコン選択画面(図3(a))が表示される。本実施の形態では、このアイコン選択画面でのアイコンの選択は、デモ音色を選択する操作となる。アイコンの表示態様に限定はないが、例えば、左右に並ぶアイコン列(アイコン34A、34B、34C・・・)が表示される。特定情報としての各アイコン34が、アイコン表示情報32(図2)に対応している。
【0036】
左右方向における画面中央に表示されているものが、選択状態にある「選択アイコン」となる。最初はデフォルトのアイコンが画面中央に表示される。ユーザはフリック操作等によってアイコン列を左右に移動させることができる。そして、所望のアイコンを画面中央に表示させて選択状態としているとき(図3(a)ではアイコン34B)、その選択アイコンの中の「i」で表示される情報ボタン35をタップ操作等によってオンすると、画面が図3(b)に示す情報表示画面に切り替わる。
【0037】
この情報表示画面においては、選択アイコン(アイコン34B)に対応する音色Nに関する情報表示37中に試聴開始ボタン36が表示される。このとき試聴開始ボタン36をタップ操作等によってオンすると、その選択アイコン(アイコン34B)に対応する音色Nのデモデータが再生される。
【0038】
このとき、再生されるデモデータがオーディオデータ31であるか演奏データ41であるかは、通信端末装置100と電子ピアノ200との接続状態によって決まり、アプリケーション30に従ってCPU7により判断・制御される。すなわち、通信I/F12と通信I/F42とによって、通信端末装置100と電子ピアノ200とが通信可能に接続されていれば、演奏データ41が電子ピアノ200で再生される。しかし、通信端末装置100と電子ピアノ200とが通信可能でない場合は、オーディオデータ31が通信端末装置100で再生される。このようなデモ試聴の際の楽音発生制御の手順を図4で説明する。
【0039】
図4は、デモ試聴の際の楽音発生制御の処理のフローチャートである。図4において、横型の六角形で囲まれた処理ステップは、CPU7により判別される判別ステップである。この処理は、CPU7がアプリケーション30を実行することで実現される。操作子2またはタッチパネルディスプレイ16におけるデモ試聴設定の指示の入力により開始される。
【0040】
本発明における「選択ステップ」、「判別ステップ」、「制御ステップ」には、主に、図4のステップS104〜S106、ステップS116〜S122、ステップS107〜S110がそれぞれ相当する。
【0041】
まず、CPU7は初期設定を実行する(ステップS101)。ここでは、アイコン選択画面(図3(a))をタッチパネルディスプレイ16に表示させると共に、機種ID、接続フラグF、選択アイコンをリセットする。次に、デモ試聴設定の終了指示の操作が検出されたか否かを判別し(ステップS102)、デモ試聴設定の終了指示の操作が検出された場合は、終了処理を実行して(ステップS103)、図4の処理を終了させる。この終了処理においては、例えば、発音中であれば消音処理、画面表示を閉じる処理、一時的に確保したメモリの解放等がなされる。一方、デモ試聴設定の終了指示の操作が検出されない場合は、アイコン選択操作が検出されたか否かを判別する(ステップS104)。
【0042】
その判別の結果、アイコン選択操作(アイコン選択画面(図3(a))におけるフリック操作)が検出された場合は、その選択操作に応じて表示を切り替える(ステップS105)。すなわち、新たに選択状態とされるアイコン34を画面中央に配置して選択アイコンとしての表示態様とする。直前まで選択状態にあったアイコン34は非選択状態の表示態様に戻す。さらにこれらに伴い、選択アイコンとして認識されるアイコン34を更新して(ステップS106)、処理をステップS107に進める。
【0043】
ステップS104で、アイコン選択操作が検出されない場合は、デモ試聴開始の指示操作が検出されたか否かを判別する(ステップS107)。デモ試聴開始の指示操作は、図3(b)の情報表示画面において試聴開始ボタン36がオン操作されることでなされる。そして、デモ試聴開始の指示操作が検出されない場合は、デモ試聴終了の指示操作が検出されたか否かを判別する(ステップS111)。なお、デモデータの再生中には、不図示の再生中画面が表示され、その画面中に、デモ試聴終了を指示するための終了指示ボタンが表示される。この終了指示ボタンがオンされることで、デモ試聴終了の指示操作がなされたことになる。
【0044】
その判別の結果、デモ試聴終了の指示操作が検出されない場合は、接続フラグFが「ON」であるか否かを判別する(ステップS116)。この接続フラグFは、通信I/F12と通信I/F42とを介して通信端末装置100と電子ピアノ200の両者が通信可能に接続されていることを「ON」で示し、両者が通信可能に接続されていないことを「OFF」で示すフラグである。
【0045】
その判別の結果、接続フラグFが「ON」でなく「OFF」である場合は、通信I/F12を介してMIDIメッセージであるアクティブセンシング信号を所定時間(例えば200ms)内に受信したか否かを判別する(ステップS117)。通信I/F12に接続されているMIDI機器があればその機器から定期的にアクティブセンシング信号が送られてくるので、それを捉えることができれば、機器と通信状態にあることがわかる。従って、アクティブセンシング信号を所定時間内に受信しなかった場合は、通信状態にあるMIDI機器がないので、ステップS123に処理を進める。
【0046】
一方、アクティブセンシング信号を所定時間内に受信した場合は、その信号の送信元の機器にID要求信号を送信することで、アクティブセンシング信号の送信元の機器の機種IDを取得し、取得した機種IDを、接続機種IDとして認識する(ステップS118)。次に、接続フラグFを「ON」にして(ステップS109)、処理をステップS123に進める。
【0047】
この接続機種IDは、通信可能状態にある機器を特定する情報となる。従って、仮に、接続の可能性がある電子ピアノ200が複数存在しても、CPU7は、実際に接続されている1つを特定することが可能である。なお、通信可能に接続されているかどうかを判別し、接続されている機器を特定する手法は例示であり、アクティブセンシング信号やID要求信号の送受信に限られない。通信I/F12、42の構成に応じた手法を用いればよい。
【0048】
ステップS116の判別の結果、接続フラグFが「ON」である場合は、現在、アクティブセンシング信号が途切れているか否かを判別する(ステップS120)。上記所定時間より長い時間(例えば400ms)継続してアクティブセンシング信号が受信されなかったときに当該信号が途切れていると判別される。
【0049】
そして、アクティブセンシング信号が途切れている場合は、電子ピアノ200とは通信可能な状態でないので、接続フラグFを「OFF」にし(ステップS121)、接続機種IDを「なし」にリセットして(ステップS122)、ステップS123に処理を進める。一方、アクティブセンシング信号が途切れず、継続して受信できている場合は、ステップS123に処理を進める。ステップS123では、音量調整やページ切り替え等の「その他の処理」を実行して、処理をステップS102に戻す。
【0050】
ステップS107の判別の結果、デモ試聴開始の指示操作が検出された場合は、接続フラグFが「ON」であるか否かを判別する(ステップS108)。その判別の結果、接続フラグFが「ON」である場合は、接続機種IDの送信元の機器(電子ピアノ200)に対して、電子ピアノ200に記憶されている演奏データ41に含まれるデモデータのうち選択アイコンに対応するデモデータの再生指示を送信する(ステップS110)。これにより、通信端末装置100と接続状態にある電子ピアノ200において、ユーザが所望する音色の楽音が豊かな音響で発生する。その後、処理をステップS111に進める。
【0051】
一方、接続フラグFが「OFF」である場合は、通信端末装置100に格納されているオーディオデータ31に含まれるデモデータのうち選択アイコンに対応するデモデータの再生を開始する(ステップS109)。これにより、電子ピアノ200が接続状態にない場合に、通信端末装置100においてデモ試聴が行える。オーディオ形式のデータが、通信端末装置100に備わる効果回路13及びサウンドシステム14を用いて音響となるので、比較的良好な楽音でユーザは電子ピアノ200の音色を確かめることができる。サウンドシステム14による楽音再生には、イヤホンを用いた再生も含まれ得る。その後、処理をステップS111に進める。
【0052】
ステップS111の判別の結果、デモ試聴終了の指示操作が検出された場合は、接続フラグFが「ON」であるか否かを判別する(ステップS112)。その判別の結果、接続フラグFが「ON」であれば、MIDI形式のデモデータが電子ピアノ200で発音中であり得るので、再生終了の信号を受信済みでない限り(ステップS114)、接続機種IDの送信元の電子ピアノ200に、演奏データ41中の選択アイコンに対応するデモデータの再生を停止する指示を送信する(ステップS115)。その後、処理をステップS116に進める。
【0053】
一方、接続フラグFが「OFF」であれば、オーディオ形式のデモデータが通信端末装置100で発音中であり得るので、オーディオデータ31中の選択アイコンに対応するデモデータの再生を停止させる(ステップS113)。その後、処理をステップS116に進める。
【0054】
本実施の形態によれば、通信端末装置100と電子ピアノ200の両者が通信可能であれば、演奏データ41のうち選択アイコンに対応するデモデータが電子ピアノ200の音源44で再生されるので、電子ピアノ200本来のクオリティの音響でデモ音色を確かめることができる。また、両者が通信可能でないならば、オーディオデータ31のうち選択アイコンに対応するデモデータが通信端末装置100で再生される。従って、電子ピアノ200を入手していないユーザであっても、通信端末装置100でMIDIデータを再生させるとした場合と比べればリアルな音響でデモ音色を確かめることができる。
【0055】
しかも、再生装置の切り替えは通信接続状態に応じて自動でなされるので、ユーザにとっては煩雑な切り替えの設定操作が不要である。
【0056】
よって、煩雑な設定操作を要することなく、電子音楽装置との接続の有無にかかわらず、良好な音響で楽音を再生させることができる。
【0057】
ところで、通信接続状態にかかわらず、豊かな音響で音色デモを再生するためには、オーディオデータ31を通信端末装置100から電子ピアノ200に送信する態様が考えられる、しかしそうすると、オーディオデータ31を送ることによるデータ送信の負荷が過大となるし、MIDIケーブルとは別にオーディオデータ31を送るための通信I/Fが必要となり、現実的でない。あるいは、音色デモに対応するオーディオデータを電子ピアノ200に記憶させておくことも考えられる。しかしそうすると、オーディオデータを電子ピアノ200側で記憶することによるメモリ負担が過大となる。本実施の形態ではこれらのような不利も生じない。
【0058】
なお、オーディオデータ31は、通信端末装置100に記憶されていない場合は、図4のステップS109で、オーディオデータ31をサーバ装置等からダウンロードしつつストリーミング再生してもよい。
【0059】
なお、演奏データ41を電子ピアノ200に記憶するのではなく、通信端末装置100に記憶されるかまたは、通信端末装置100以外の装置から通信端末装置100によって取得されるようにし、ステップS110では、選択アイコンに対応する演奏データ41を該演奏データ41の再生指示と共に通信端末装置100から電子ピアノ200に送る構成としてもよい。
【0060】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、MIDI形式の演奏データ41は電子ピアノ200に記憶されたが、本発明の第2の実施の形態では、演奏データ41を通信端末装置100の側に置き、MIDIイベントを順次読み出し送信して電子ピアノ200でストリーミング再生させる。
【0061】
図5は、第2の実施の形態におけるデモ試聴用のアプリケーション及び電子ピアノ200の内部構成とこれらの関係を示すブロック図である。演奏データ41は、通信端末装置100により取得ないし記憶される。通信端末装置100が演奏データ41を取得する態様は問わず、例えば、アプリケーション30と一緒にダウンロードにより取得してもよいし、アプリケーション30とは別に、サーバ装置等から通信端末装置100が取得する構成としてもよい。必ずしも通信端末装置100が記憶している必要はなく、デモ試聴の際に何らかの方法で通信端末装置100がアクセスして取得できればよい。通信I/F12及び通信I/F42は、MIDIデータの送受信が可能な構成である必要がある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0062】
図6は、第2の実施の形態におけるデモ試聴の際の楽音発生制御の処理のフローチャートである。図6では、第1の実施の形態において図4に示した処理と同一の処理については記載を省略しているか、または同一のステップ番号を付して記載してある。
【0063】
ステップS101〜S109の処理は第1の実施の形態と同様である。ステップS108の判別の結果、接続フラグFが「ON」である場合は、ステップS201に進み、通信端末装置100によって取得される演奏データ41に含まれるデモデータのうち選択アイコンに対応するデモデータの先頭のMIDIイベントに読み出しポインタを合わせる。その後、処理をステップS111に進める。
【0064】
ステップS111〜S113の処理は第1の実施の形態と同様である。ステップS111の判別の結果、デモ試聴終了の指示操作が検出されない場合は、ステップS204に進み、選択アイコンに対応するデモデータにおける読み出しポインタが指すMIDIイベントデータを送信するタイミングとなったか否かを判別する。その判別の結果、上記MIDIイベントデータを送信するタイミングとなった場合は、ステップS205に進み、読み出しポインタが指すMIDIイベントデータを接続機種IDの送信元の機器(電子ピアノ200)に対して送信する。これにより、通信端末装置100と接続状態にある電子ピアノ200において、ユーザが所望する音色の楽音が豊かな音響で発生する。
【0065】
次に、ステップS206では、選択アイコンに対応するデモデータにおいて、読み出しポインタを1つ進めて、ステップS116に処理を進める。ステップS116〜S123の処理は第1の実施の形態と同様である。
【0066】
ステップS112の判別の結果、接続フラグFが「ON」であれば、接続機種IDの送信元の機器(電子ピアノ200)へのMIDIイベントデータの送信を停止し(ステップS202)、読み出しポインタを初期化して(ステップS203)、処理をステップS204に進める。ステップS113の処理後も処理をステップS204に進める。
【0067】
本実施の形態によれば、煩雑な設定操作を要することなく、電子音楽装置との接続の有無にかかわらず、良好な音響で楽音を再生させることに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
なお、上記各実施の形態において、オーディオデータ31及び演奏データ41は、電子ピアノ200の音源44で発音可能な音色に対応して分類された音色のデモデータであった。しかしこれに限るものではなく、音楽コンテンツであればよく、デモ曲等の楽曲データであってもよい。楽曲データとした場合は、図3(b)に示すアイコン34には音色でなく曲名を表示してもよい。
【0069】
なお、音源44で発音される演奏データ41は、MIDIデータを基本とするが、必ずしも厳密に限定されるものではなく、電子ピアノ200等の電子音楽装置が有する音源で再生可能なフォーマットの演奏データであればよい。例えば、オーディオ形式で記録されたリズムデータを、スタイルデータとテンポとに応じてタイムストレッチして音源で再生されるような演奏データも含まれる。
【0070】
また、演奏データ41は、伴奏スタイルデータとコード進行データとの組み合わせで構成されてもよい。このようなデータを第1、第2の実施の形態に適用する例を図7に示す。
【0071】
図7(a)、(b)は、それぞれ、第1、第2の実施の形態の変形例に係る、アプリケーション及び電子ピアノ200の内部構成とこれらの関係を示すブロック図である。
【0072】
まず、第1の実施の形態の構成(図2)と比較すると、図7(a)に示すように、電子ピアノ200において、演奏データ41の構成が異なる。この演奏データ41は、いずれもMIDI形式の伴奏スタイルデータ41Aと伴奏スタイルのデモ用のコード進行データ41Bとからなる。伴奏スタイルデータ41A及びコード進行データ41Bは、電子ピアノ200が有する自動伴奏機能に対する入力情報となるものである。伴奏スタイルデータ41A中のデータとコード進行データ41B中のデータとの組み合わせに応じた伴奏スタイル演奏が音源44で再生される。
【0073】
また、第1の実施の形態に対して、アプリケーション30が有するオーディオデータ31及びアイコン表示情報32の構成が異なる。このアイコン表示情報32は、伴奏スタイルを示すアイコンを表示するための情報である。従って、図3(b)に示すアイコン34には音色でなく伴奏スタイルが表示される。オーディオデータ31は、複数の伴奏スタイルデモデータを含む。オーディオデータ31中の伴奏スタイルデモデータは、アイコン表示情報32に対応すると共に、伴奏スタイルデータ41A中のデータとコード進行データ41B中のデータとの組み合わせにも対応している。この伴奏スタイルデモデータは、伴奏スタイルデータ41A中のスタイルデータをコード進行データ41Bで規定されるコード進行で生成した自動伴奏データを録音したものに相当する。
【0074】
この図7(a)に示す変形例においては、通信端末装置100と電子ピアノ200の両者が通信可能に接続されていれば、伴奏スタイルデータ41A中のデータとコード進行データ41B中のデータとの組み合わせのうち選択されたアイコン表示情報32に対応するものが、電子ピアノ200の音源44で再生される。一方、通信端末装置100と電子ピアノ200の両者が通信可能に接続されていない場合は、オーディオデータ31中の伴奏スタイルデモデータのうち、選択されたアイコン表示情報32に対応するものが、通信端末装置100で再生される。
【0075】
次に、第2の実施の形態の変形例である図7(b)の構成においては、図7(a)に示した演奏データ41のうち、伴奏スタイルデータ41Aは電子ピアノ200に記憶されるが、伴奏スタイルのデモ用のコード進行データ41Bは、通信端末装置100によって取得ないし記憶される。
【0076】
そして、通信端末装置100と電子ピアノ200の両者が通信可能に接続されていれば、CPU7は、伴奏スタイルデータ41A中のデータのうち、選択されたアイコン表示情報32に対応するものを指定する情報を電子ピアノ200に送信する。それと並行して、選択されたアイコン表示情報32に対応するコード進行データ41B内のコード情報を、順に電子ピアノ200に送信する。これにより、電子ピアノ200にてストリーミング再生がなされる。
【0077】
一方、通信端末装置100と電子ピアノ200の両者が通信可能に接続されていない場合は、オーディオデータ31中の伴奏スタイルデモデータのうち、選択されたアイコン表示情報32に対応するものが、通信端末装置100で再生される。
【0078】
なお、上記各実施の形態において、通信端末装置100に接続され得る電子ピアノ200が異なる機種として複数あり得る場合は、オーディオデータ31及び演奏データ41は、電子ピアノ200の各々に対応して取得ないし記憶されるようにすればよい。この場合、電子ピアノ200の特定は、機種IDで管理することができる。
【0079】
なお、ユーザが所望の音色デモ等の音楽コンテンツを選択する手法は、アイコン34を用いたものに限定されない。音楽コンテンツを選択する特定情報を操作子で直接に入力させてもよいし、あるいは視覚的な手法に限定されず、音声ガイダンスによって特定情報が選択されるようにしてもよい。
【0080】
また、本発明が実現される楽音発生制御装置は、アプリケーション30をダウンロードして実行できるものであればよく、スマートフォンやタブレット等の可搬型装置に限定されるものではない。
【0081】
なお、電子音楽装置としては、電子ピアノ200に限定されず、音源と通信I/Fを有する装置であればよい。
【0082】
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0083】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードおよび該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0084】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、通信ネットワークを介してサーバコンピュータからプログラムコードが供給されるようにしてもよい。
【0085】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0086】
さらに、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【符号の説明】
【0087】
7 CPU、 12、42 通信I/F、 30 アプリケーション、 31 オーディオデータ、 34 アイコン(特定情報)、 36 試聴開始ボタン、 41 演奏データ、 44 音源、 100 通信端末装置、 200 電子ピアノ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7