(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の搬送速度が変動しても前記第2の搬送速度が常に該第1の搬送速度を上回るように該第2の搬送速度が設定されていることを特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上流側と下流側との搬送速度差を簡易な構成で解消した用紙搬送装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、
第1の駆動源と、
前記第1の駆動源により駆動されて回転することにより用紙を挟み込んで搬送する第1の搬送部材と、
第2の駆動源と、
前記第1の搬送部材よりも用紙搬送方向下流側に配置され前記第2の駆動源により駆動されて回転することにより、該第1の搬送部材から用紙を受け取り該用紙を挟み込んでさらに下流側に搬送する第2の搬送部材と、
前記第2の搬送部材よりも用紙搬送方向の更に下流側に配置され該第2の搬送部材とともに前記第2の駆動源により駆動されて回転することにより該第2の搬送部材から用紙を受け取り該用紙を挟み込んでさらに下流側に搬送する第3の搬送部材と、
前記第2の搬送部材および前記第3の搬送部材の双方と前記第2の駆動源との間に介在し過負荷時に該第2の搬送部材および該第3の搬送部材への駆動力の伝達を遮断するトルクリミッタとを備え、
前記第2の駆動源が、前記第2の搬送部材および第3の搬送部材に、前記第1の駆動源が前記第1の搬送部材に用紙を搬送させる第1の搬送速度よりも速い第2の搬送速度で用紙を搬送させ、
用紙を挟み込んだときに挟み込まれた用紙を引き抜くのに要する引き抜き力に関し、前記第2の搬送部材の方が
前記第1の搬送部材および前記第3の搬送部材
のいずれよりも強い引き抜き力に設定されていることを特徴とする用紙搬送装置である。
【0007】
請求項2は、
前記第1の搬送速度が変動しても前記第2の搬送速度が常に該第1の搬送速度を上回るように該第2の搬送速度が設定されていることを特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置である。
【0008】
請求項3は、
請求項1又は2記載の用紙搬送装置を備え、搬送中の用紙上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の用紙搬送装置および請求項3の画像形成装置によれば、上流側と下流側との一方の搬送速度を検出してもう一方の速度を制御するといった複雑な制御なしに上流側と下流側の速度差が解消される。
【0010】
請求項2の用紙搬送装置によれば、速度変動があっても上流側と下流側との速度差が常に解消される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置の構成を示した模式図である。この画像形成装置は、本発明の一実施形態としての用紙搬送装置を包含している。
【0014】
この画像形成装置1には、ユーザインタフェース2と制御部3が備えられている。この画像形成装置1は、ユーザインタフェース2からユーザの指示を受け、その指示に基づいて、制御部3がこの画像形成装置1の動作を制御する。
【0015】
また、この画像形成装置1には、トナー像形成部10が備えられている。このトナー像形成部10には、4つのトナー像形成部エンジン11Y,11M,11C,11Kが備えられている。これら4つのトナー像形成エンジン11Y,11M,11C,11Kは、それぞれイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),および黒(K)の色トナーを用いてトナー像を形成するトナー像形成エンジンである。以下では、色ごとに区別する必要がある場合を除き、色を表わすY,M,C,Kを省いた符号で説明する。また図面上も、1つのトナー像形成エンジン11Yのみに符号を付している。
【0016】
各トナー像形成エンジン11には、矢印A方向に回転する感光体ドラム12が備えられている。この感光体ドラム12上には静電潜像が形成され、トナーで現像されてトナー像が形成される。また、この感光体ドラム12の周りには、帯電器13、露光器14、現像器15、1次転写器26、およびクリーナ17が配置されている。ここで、1次転写器26は、後述する中間転写部20を構成する要素であって、感光体ドラム12との間に中間転写ベルト21を挟んだ位置に配置されている。
【0017】
帯電器13は、感光体ドラム12の表面を一様に帯電する。
【0018】
露光器14は、外部から入力された画像信号に基づいて変調された露光光Bmを感光体ドラム12上に照射して、感光体ドラム12上に静電潜像を形成する。
【0019】
現像器15は、感光体ドラム12上に形成された静電潜像をトナーで現像して感光体ドラム12上にトナー像を形成する。
【0020】
1次転写器26は、感光体ドラム12上に形成されたトナー像を中間転写ベルト21上に転写する。
【0021】
クリーナ17は、トナー像転写後の感光体ドラム12上に残存するトナー等を感光体ドラム12上から除去する。
【0022】
これら4つのトナー像形成エンジン11を備えたトナー像形成部10の下側には、中間転写部20が備えられている。この中間転写部20には、中間転写ベルト21と、その中間転写ベルト21を支える複数のロール22と、クリーナ23と、前述した1次転写器26を備えている。中間転写ベルト21は、複数のロール22に支持されて矢印Bで示す向きに循環移動している。この中間転写ベルト21上には、各トナー像形成エンジン11で形成された各色トナー像が、それぞれ対応して備えられている1次転写器26の作用により、順次重なるように転写される。そしてこの中間転写ベルト21上に転写されたトナー像は、その中間転写ベルト21により2次転写位置T2に搬送される。この2次転写位置T2には、2次転写器30が供えられている。この2次転写位置T2に搬送されてきた中間転写ベルト21上のトナー像は、2次転写器30の作用により、やはりその2次転写位置T2に搬送されてきた用紙P上に転写される。用紙Pの搬送については後述する。トナー像転写後の中間転写ベルト21上に残存しているトナー等はクリーナ23によりその中間転写ベルト21上から除去される。
【0023】
この中間転写部20のさらに下部には、2つの用紙トレイ31が備えられている。これらの用紙トレイ31には、画像形成前の用紙が積み重ねられた状態に収容されている。これらの用紙トレイ31は、引出し式となっていて、装置外に引き出されて用紙の補充や交換が行なわれる。
【0024】
画像形成にあたっては、それらの用紙トレイ31のいずれかからピックアップロール32により用紙が1枚取り出されて、搬送ロール33により矢印C方向に、タイミングロール34にまで搬送される。このタイミングロール34まで搬送されてきた用紙Pは、中間転写ベルト21上のトナー像が2次転写位置T2に搬送されるタイミングに合わせてその2次転写位置に搬送されるように、タイミングロール34から送り出される。タイミングロール34から送り出された用紙Pは、2次転写位置T2において中間転写ベルト21と2次転写器30とに挟まれ、トナー像の転写を受け、搬送ベルト35によりさらに搬送されて定着器40に送り込まれる。この定着器40は、加熱ベルト41と加圧ロール42とを備えており、搬送されてきた用紙Pは加熱ベルト41と加圧ロール42との間に挟まれて加熱および加圧を受け、これにより、用紙P上のトナー像がその用紙P上に定着される。
【0025】
定着器40を通過した用紙は次にデカーラ50に送り込まれる。このデカーラ50は、定着器40による加熱および加圧を受けたことによる用紙のわん曲を取り除く装置である。
【0026】
デカーラ50を通過した用紙は、さらに搬送ロール60,70により搬送されて冷却器80に送り込まれる。この冷却器80は、2つの無端ベルト81,82の間に用紙Pを挟んで搬送しながら、その用紙を冷却する装置である。
【0027】
この冷却器80を通り抜けた用紙は、矢印Dの向きに、この画像形成装置1の外部に排出される。この排出された用紙には、定着トナー像からなる画像が形成されている。
【0028】
ここで、定着器40を構成する加圧ロール42は、加熱ベルト41からの伝熱により膨張して、その径が変化する。加圧ロール42の径が変化しても用紙Pの搬送速度を一定にして適正な定着を行なうために、この定着器40を駆動するモータの回転数が調整される。また、この画像形成装置1では、定着器40の下流側に設置されているデカーラ50も、定着器40の駆動モータと同一のモータで駆動される。このため、その駆動モータの回転数が調整されると、定着器40を通過する用紙の搬送速度は一定となるものの、デカーラ50による用紙搬送速度は変動することになる。また、デカーラ50自体も、用紙搬送速度が変動する要因を含んでいる。これらの要因により、この画像形成装置1の場合、デカーラ50から送り出される用紙の速度は3%程度変動する。
【0029】
また、このデカーラ50の下流側2箇所の搬送ロール60,70は、定着器40およびデカーラ50の駆動モータとは別のモータで駆動される。ただし、これら2箇所の搬送ロール60,70は、コスト低減化および省スペースにために同一のモータで駆動される構成となっている。
【0030】
この画像形成装置1では、デカーラ50が本発明にいう第1の搬送部材の一例に相当し、そのデカーラ50を定着器40とともに駆動するモータが本発明にいう第1のモータの一例に相当する。
【0031】
また、2箇所の搬送ロール60,70のうちの上流側の搬送ロール60が本発明にいう第2の搬送部材の一例に相当し、下流側の搬送ロール70が本発明にいう第3の搬送部材の一例に相当する。さらに、これらの搬送ロール60,70を駆動するモータが本発明にいう第2のモータの一例に相当する。
【0032】
図2は、本実施形態の用紙搬送系の要部を模式化して示した図である。
【0033】
ここには、デカーラ50、搬送ロール60,70が示されている。デカーラ50は、用紙を単に搬送するだけでなく、用紙のわん曲を矯正する機能を備えたものであって、本来はもっと複雑な構造を有する。ただし、ここでは用紙の搬送に着目しているため、デカーラ50を単純化して2本のロール51,52で示している。また、各搬送ロール60,70もそれぞれ2本のロール61,62;71,72の回転により、各2本のロール51,52;61,62;71,72に挟み込まれながら矢印S方向に搬送される。
【0034】
デカーラ50を構成する2本のロール51,52のうちの1本のロール51は、第1のモータ53で駆動されて回転する。もう1本のロール52は、不図示の押当て機構により、駆動側のロール51に力F
1で押し当てられていて、駆動側のロール51の回転に応じて従動回転する。尚、前述の通り、デカーラ50と定着器40は同じモータ(第1のモータ53)で駆動されるが、ここでは定着器40の駆動については省いている。この第1のモータ53は、定着器40での用紙搬送速度を一定に保つために3%程度の速度変動があり、したがってデカーラ50による用紙搬送速度もその程度変動する。
【0035】
2ヵ所の搬送ロール60,70のうちの上流側の搬送ロール60を構成する2本のロール61,62のうちの1本のロール61は、第2のモータ63で駆動されて回転する。もう1本のロール62は、不図示の押当て機構により駆動側のロール61に力F
2で押し当てられていて、駆動側のロール61の回転に応じて従動回転する。上流側の搬送ロール60は、第2のモータ63により駆動されて回転することにより、デカーラ50により搬送されてきた用紙を受け取り、その用紙をさらに挟み込んでさらに下流側に搬送する。このとき用紙は、一時的に、デカーラ50の2本のロール51,52と搬送ロール60の2本のロール61,62との双方に挟まれて、双方から搬送力を受けることになる。
【0036】
また、搬送ロール60のうちの駆動側のロール61と第2のモータ63との間には、トルクリミッタ64が介在している。このトルクリミッタ64は、用紙の搬送負荷が過負荷になったときに、第2のモータ63の駆動力の伝達を遮断する。また、この駆動側のロール61と、下流側の搬送ロール70を構成する駆動側のロール71は、ギア列65を介して連結されている。下流側の搬送ロール70を構成するもう1本のロール72は、不図示の押当て機構により、駆動側のロール71に押し当てられている。この下流側の搬送ロール70は、上流側の搬送ロール60とともに第2のモータ63により駆動されて回転することにより、上流側の搬送ロール60から用紙を受け取りその用紙を挟み込んでさらに下流側の冷却器(
図1参照)に向けて搬送する。
【0037】
ここで、ギア列65は、トルクリミッタ64よりもロール51側にある。すなわち、このトルクリミッタ64は、搬送ロール60,70のいずれよりも第2のモータ63側にある。したがって、このトルクリミッタ64は、上流側と下流側双方の搬送ロール60,70による合計の用紙搬送負荷が閾値を越えたとき、第2のモータ63の駆動力の、搬送ロール60,70への伝達を遮断する機能を有する。
【0038】
第2のモータ61は、2箇所の搬送ロール60,70に、デカーラ50による第1の用紙搬送速度V
1よりも速い、第2の搬送速度V
2(V
1<V
2)で用紙を搬送させる回転数に設定されている。ここで、上述の通り、デカーラ50による第1の用紙搬送速度V
1には3%程度の速度変動がある。ここでは、搬送ロール60,70による第2の用紙搬送速度V
2として、デカーラ50による第1の用紙搬送速度V
1が変動しても第2の用紙搬送速度V
2の方が常に第1の用紙搬送速度V
1を上回る用紙搬送速度に設定されている。このため、デカーラ50から送り出されて上流側の搬送ロール60に送り込まれた用紙は、デカーラ50と搬送ロール60との双方に跨って搬送されている間、常に張力を受けていることになる。したがってデカーラ50と上流側の搬送ロール60との間で用紙の弛みは形成されず、弛みの形成が不可能な厚紙であっても搬送の対象とすることができる。
【0039】
ここで、2本のロールで用紙を挟みこんだときに挟まれた用紙を引く抜くのに要する引き抜き力について考察する。引き抜き力は、ロールの材質やロール径、押当ての力Fなどに依存するが、ここでは分かり易さのため、デカーラ50上流側の搬送ロール60、および下流側の搬送ロール70はいずれも同一形状、同一材質のロールと仮定し、押当て力F
1〜F
3の大小が引き抜き力の大小を決定するものとして説明する。
【0040】
ここでは、トルクリミッタ64による駆動力の伝達の遮断の閾値について考察する。
【0041】
第2のモータ63による上流側と下流側との2箇所の搬送ロール60,70を回転駆動する駆動力は、トルクリミッタ64を経由して搬送ロール60,70に確実に伝達される必要がある。したがって、トルクリミッタ64による駆動力の伝達の遮断の閾値は、搬送ロール60,70を回転駆動するのに要する駆動力すなわち搬送負荷を越えている必要がある。
【0042】
搬送負荷<閾値・・・(1)
一方、デカーラ50による用紙搬送速度よりも搬送ロール60,70による用紙搬送速度が常に上回るように設定されている。このため用紙デカーラ50と搬送ロール60との双方に挟まれた状態にあるときは、デカーラ50と搬送ロール60との間で用紙が引っ張られることになる。用紙の引っ張り力が強過ぎると第2のモータ63への負荷が大き過ぎて第2のモータ63が正常に作動しなくなるおそれがある。そこで、そうなる前にトルクリミッタ64が作動し、第2のモータ63からの駆動力の伝達が遮断される必要がある。
【0043】
閾値<搬送負荷+引っ張り力限界値・・・(2)
このようにトルクリミッタ64の閾値は、上記の(1)式と(2)式との双方を満足する値に設定される必要がある。
【0044】
ここで、上記(1)式を満足させるためには、力F
2,F
3をできるだけ小さい力に抑えることにより搬送負荷を下げる必要がある。一方、ここに示す用紙搬送装置では、デカーラ50との間での用紙の引っ張り合いが生じるため、その引っ張り合いに打ち勝つだけの強さのニップ圧、すなわち押当て力が必要である。
【0045】
この矛盾した両者を満足するために、ここでは、
F
2>F
3・・・(3)
としている。すなわち上流側の搬送ロール60については、従動側のロール62を駆動側のロール61に強く押し当て、下流側の搬送ロール70について従動側のロール72は駆動側のロール71に相対的に弱く押し当てている。これにより、合計の力F
2+F
3を抑えて(1)式の搬送負荷を下げ、(1)式における「搬送負荷」と(2)式における「搬送負荷+引っ張り力限界値」との間に差異を生じさせて、「閾値」を、その差異の中間に設定している。
【0046】
本実施形態では、この工夫により、(1)式と(2)式との双方を満足させ、モータの回転数のフィードバック制御等の複雑な構成を避けた上で、厚紙の搬送にも耐える用紙搬送装置を実現している。
【0047】
尚、ここでは、画像形成装置1のデカーラ50とそのデカーラ50の下流側の搬送ロール60,70に本発明の用紙搬送装置を適用した例を示したが、本発明の用紙搬送装置は、この位置に限らず、必要に応じて、例えば搬送ロール70とその後段の冷却器80とに適用してもよく、適用箇所が限定されるものではない。
【0048】
また、ここでは本発明の用紙搬送装置を電子写真方式の画像形成装置1に適用した例を示したが、本発明の画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置に限られるものではなく、インクジェット方式など他の方式の画像形成装置に適用してもよい。
【0049】
さらに、ここでは、本発明の用紙搬送装置を画像形成装置に適用した例を示したが、本発明の用紙搬送装置は、画像形成装置に限らず用紙の搬送を伴う様々な種類の装置に適用可能である。