(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記識別シートは、前記鋼製部材と前記ライニング鋼板とを離間させて形成された間隙部に充填された経時硬化性材料の前面側及び背面側の何れか一方又は両方に設けられること
を特徴とする請求項7に記載の防護層を有する鋼製部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された防食用パネル構造体は、鋼板及びチタン板、チタン合金板の端面が、鋼矢板の表面(被防食面)に対して直角に形成されるものであり、鋼板の端面と鋼矢板の表面(被防食面)とが、隅肉溶接で接合されるものとなる。
【0007】
このとき、特許文献1に開示された防食用パネル構造体は、鋼板の端面が直角に形成されるため、隅肉溶接された部位が露出した状態で設けられるものとなる。このため、特許文献1に開示された防食用パネル構造体は、隅肉溶接された部位が露出するものとなることから、隅肉溶接された部位の腐食の進行によって、鋼板が鋼矢板から脱離するおそれがあるという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に開示された防食用パネル構造体は、隅肉溶接された部位を防食材で被覆して、隅肉溶接された部位の腐食を防止することもできるが、この場合であっても、水域での漂流物等の衝突、擦過等の外的要因等によって、防食材が損耗、剥離するおそれがあり、隅肉溶接された部位の防食が不十分なものとなるという問題点があった。
【0009】
さらに、特許文献1に開示された防食用パネル構造体は、想定される腐食の進行速度に応じて、板厚の大きな鋼板を溶接接合させた場合に、鋼板の大きな板厚に対応する脚長で隅肉溶接されるため、溶接量が増大して溶接コストが嵩んだり、鋼矢板の表面から供給される溶接熱が増大して鋼矢板が変形するおそれがあるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ライニング鋼板を鋼製部材に容易に取り付けて、鋼製部材をライニング鋼板で確実に防護することのできる防護層を有する鋼製部材及び基礎構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の防護層を有する鋼製部材は、前面側と背面側との境界に設けられる防護層を有する鋼製部材であって、断面略ハット形状又は断面略U形状の鋼矢板が用いられた鋼製部材と、前記鋼製部材の軸芯方向で所定の範囲に取り付けられるライニング鋼板とを備え、前記ライニング鋼板は、前記鋼製部材の腐食、摩耗又は衝突力に抵抗するための前面側で、前記鋼製部材に面状に取り付けられる取付面を形成して、前記鋼製部材に固定され
、前記鋼製部材に取り付けられる内側面の面積よりも前記内側面と反対側の外側面の面積の方が大きくなるように、前記内側面と前記外側面との間に側端面が形成されるとともに、前記側端面と前記内側面との境界部の少なくとも一部で、前記側端面が前記鋼製部材に対して鋭角となった間隙から溶接箇所が突出しないように、前記鋼製部材に溶接されることを特徴とする。
【0012】
第2発明の防護層を有する鋼製部材は、第1発明において、前記ライニング鋼板は、前記鋼製部材と略同一断面形状の鋼矢板の継手部を切除した鋼矢板が用いられることを特徴とする。
【0018】
第
3発明の防護層を有する鋼製部材は、第
1発明又は第
2発明において、前記側端面は、前記内側面から前記外側面にかけて、凹部及び凸部の何れか一方又は両方が形成されることを特徴とする。
【0019】
第
4発明の防護層を有する鋼製部材は、第
1発明〜第
3発明の何れかにおいて、前記側端面は、少なくとも前記鋼製部材に溶接された溶接箇所を覆うようにして、防食材が設けられることを特徴とする。
【0023】
第
5発明の防護層を有する鋼製部材は、第
1発明〜第
4発明の何れかにおいて、前記ライニング鋼板は、前記内側面及び前記外側面の何れか一方又は両方に、被覆防食又は塗装が施された防食層が設けられることを特徴とする。
【0024】
第
6発明の防護層を有する鋼製部材は、第1発明〜第
5発明の何れかにおいて、前記ライニング鋼板は、前記鋼製部材と離間させて形成された間隙部に、経時硬化性材料が充填されることを特徴とする。
【0025】
第
7発明の防護層を有する鋼製部材は、第1発明〜第
6発明の何れかにおいて、前記鋼製部材と前記ライニング鋼板との間に、腐食、摩耗又は衝突力により前記ライニング鋼板に形成された孔部を視認するための識別シートが設けられることを特徴とする。
【0026】
第
8発明の防護層を有する鋼製部材は、第
7発明において、前記識別シートは、前記鋼製部材と前記ライニング鋼板とを離間させて形成された間隙部に充填された経時硬化性材料の前面側及び背面側の何れか一方又は両方に設けられることを特徴とする。
【0027】
第
9発明の基礎構造物は、前面側と背面側との境界に設けられる基礎構造物であって、断面略ハット形状又は断面略U形状の鋼矢板が用いられた鋼製部材と、前記鋼製部材の軸芯方向で所定の範囲に取り付けられるライニング鋼板とを備え、前記鋼製部材は、軸芯方向の下部が地盤に立設されるとともに、軸芯方向の上部が前面側と背面側との境界に設けられて、前記ライニング鋼板は、前記鋼製部材の腐食、摩耗又は衝突力に抵抗するための前面側で、前記鋼製部材に面状に取り付けられる取付面を形成して、前記鋼製部材に固定され
、前記鋼製部材に取り付けられる内側面の面積よりも前記内側面と反対側の外側面の面積の方が大きくなるように、前記内側面と前記外側面との間に側端面が形成されるとともに、前記側端面と前記内側面との境界部の少なくとも一部で、前記側端面が前記鋼製部材に対して鋭角となった間隙から溶接箇所が突出しないように、前記鋼製部材に溶接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
第1発明〜第
8発明によれば、鋼製部材の腐食、摩耗又は衝突力に抵抗するための前面側で、ライニング鋼板を鋼製部材に容易に取り付けて、鋼製部材をライニング鋼板で確実に防護することが可能となる。
【0029】
特に、第2発明によれば、ハット形鋼矢板から、一対の継手部を切断加工等により切除して、鋼製部材と略同一断面形状のライニング鋼板を製作することができることから、ライニング鋼板のための鋼矢板等を別途製作することを必要としないで、簡単な切断加工等をするのみで、容易かつ低コストにライニング鋼板を製作することが可能となる。
【0030】
第1発明〜第8発明によれば、略楔形状の間隙に奥まった状態となって溶接箇所や防食材が露出しないもの、又は露出量が極めて少なくなることで、ライニング鋼板の外側面で溶接箇所や防食材を保護するものとして、ライニング鋼板の鋼製部材からの脱離を防止することが可能となる。また、
第1発明〜第8発明によれば、溶接箇所の脚長を大きくすることを必要としないで、溶接量の増大を抑制することができるため、溶接コストを低減させることが可能となり、また、溶接箇所から鋼製部材に供給される溶接熱の増大を抑制して、溶接熱による鋼製部材の変形を防止することが可能となる。
【0031】
特に、第
3発明によれば、ライニング鋼板の側端面に凹部及び凸部の何れか一方又は両方が形成されて、防食材と側端面との密着力を向上させることで、防食材が側端面に強固に固定されたものとなり、防食材に水域での漂流物等が衝突等した場合であっても、防食材の側端面からの脱離を防止することが可能となる。
【0032】
特に、第
4発明によれば、ライニング鋼板の側端面で、防食材係止部材を巻き込むようにして、防食材が鋼製部材との間に設けられるため、防食材が内部で防食材係止部材と一体化することで、防食材の剥離、脱落を防止することが可能となる。
【0033】
特に、第
6発明によれば、ライニング鋼板と鋼製部材との間に間隙部が形成されて、この間隙部に経時硬化性材料が充填されるため、間隙部に充填された経時硬化性材料で、鋼製部材の腐食や磨耗を防止することが可能となるとともに、鋼製部材やライニング鋼板の曲げ剛性及びねじり剛性を向上させることが可能となる。さらに、第
6発明によれば、ライニング鋼板に腐食などにより孔が開いたとしても、経時硬化性材料が防護効果を発揮するので、鋼製部材へのダメージを軽減させることが可能となる。
【0034】
特に、第
9発明によれば、あらかじめ溶接されてライニング鋼板が設けられるため、現地作業におけるライニング鋼板の側端面の溶接等を必要としないで、ライニング鋼板を鋼製部材に容易に固定することが可能となる。また、第
9発明によれば、複数の鋼製部材が前面側と背面側との境界に設けられた状態で、ライニング鋼板が現地作業で溶接される場合に、海洋、港湾で鋼材の腐食が激しい集中腐食部位や、水底の底質(砂、砂礫等)の移動が激しい部位にのみ、ライニング鋼板を後付けで集中的に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明を適用した基礎構造物を示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第1実施形態の鋼製部材を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図4】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第1実施形態のライニング鋼板を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図5】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第1実施形態で鋼矢板等のライニング鋼板を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図6】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第1実施形態で複数の略平板状の平鋼板のライニング鋼板を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図7】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第1実施形態で略平板状の平鋼板及び折り曲げた平鋼板のライニング鋼板を示す平面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図8】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の左端部及び右端部で全長又は一部に形成された側端面を示す側面図である。
【
図9】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の上端部及び下端部で全長又は一部に形成された側端面を示す側面図である。
【
図10】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の側端面を示す拡大平面図である。
【
図11】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の側端面に形成された凹部及び凸部を示す拡大平面図である。
【
図12】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の溶接箇所を示す拡大平面図であり、(b)は、その拡大正面図である。
【
図13】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の防食材を示す拡大平面図であり、(b)は、その拡大正面図である。
【
図14】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の防食材係止部材を示す拡大平面図であり、(b)は、その拡大正面図である。
【
図15】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の内側面に設けられた防食層を示す平面図であり、(b)は、その外側面に設けられた防食層を示す平面図である。
【
図16】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の内側面に設けられた防食層を示す継手部の拡大平面図である。
【
図17】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板の外側面に設けられた防食層を示す継手部の拡大平面図である。
【
図18】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材のライニング鋼板に設けられた防食層を示す正面図である。
【
図19】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材に形成された間隙部及び経時硬化性材料を示す平面図である。
【
図20】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材に棒部材を介在させて形成された間隙部及び経時硬化性材料を示す平面図である。
【
図21】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第2実施形態で鋼矢板等のライニング鋼板を示す平面図である。
【
図22】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第2実施形態で複数の平鋼板のライニング鋼板を示す平面図である。
【
図23】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の第2実施形態で鋼矢板等のライニング鋼板の変形例を示す平面図である。
【
図24】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の一対の分割鋼板のライニング鋼板を示す平面図である。
【
図25】本発明を適用した基礎構造物を示す側面図である。
【
図26】(a)は、本発明を適用した基礎構造物でライニング鋼板が上部コンクリートに延びたものを示す側面図であり、(b)は、タイロッド式の鋼矢板壁を示す側面図である。
【
図27】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材の略楔形状の間隙を示す拡大平面図である。
【
図28】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材でせん断方向の強度を向上させた防食材を示す拡大平面図である。
【
図29】(a)は、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材で識別シートが設けられた状態を示す拡大平面図であり、(b)は、その拡大正面図である。
【
図30】本発明を適用した防護層を有する鋼製部材で経時硬化性材料の前面側及び背面側の何れか一方又は両方に識別シートが設けられた状態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1及び基礎構造物8を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
本発明を適用した基礎構造物8は、
図1に示すように、主に、港湾鋼構造物等の水域構造物、擁壁、土留壁等の陸域構造物で、前面側Aと背面側Bとの境界に設けられる。本発明を適用した基礎構造物8は、ハット形鋼矢板6又はU形鋼矢板7等が水底地盤80に打設されて立設されるものであり、複数のハット形鋼矢板6又はU形鋼矢板7が並べられることで、壁体構造が構築される。複数のハット形鋼矢板6又はU形鋼矢板7は、これに限らず、水底地盤80に埋め込まれるもの、又は、フーチングコンクリートに立設されるものとすることもできる。
【0038】
最初に、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1の第1実施形態について説明する。本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、前面側Aと背面側Bとの境界に設けられるものであって、
図2に示すように、第1実施形態において、断面略ハット形状の鋼矢板が用いられた鋼製部材2と、鋼製部材2の軸芯方向Yで所定の範囲に取り付けられるライニング鋼板3とを備える。
【0039】
鋼製部材2は、
図3に示すように、断面略ハット形状のハット形鋼矢板6が用いられるものである。ハット形鋼矢板6の鋼製部材2は、フランジ部61と、一対のウェブ部62と、一対のアーム部63と、一対の継手部64とを備える。一対のウェブ部62は、ハット形鋼矢板6の幅方向Xでフランジ部61の両端から傾斜させて連続して設けられる。一対のアーム部63は、フランジ部61と略平行になるように一対のウェブ部62の各々から連続して設けられる。一対の継手部64は、一対のアーム部63の各々の片端から連続して設けられる。ハット形鋼矢板6は、複数の鋼製部材2を幅方向Xに連結させて壁体構造を構築する場合に、隣り合うハット形鋼矢板6の一方の継手部64に、他方の継手部64を嵌合させるものとなる。
【0040】
ライニング鋼板3は、ハット形鋼矢板6の鋼製部材2に取り付けられる場合に、
図4、
図5に示すように、鋼製部材2と略同一断面形状の鋼矢板等が用いられる。ライニング鋼板3は、例えば、鋼製部材2と略同一断面形状のハット形鋼矢板40が用いられるときに、略同一断面形状のハット形鋼矢板40から、一対の継手部44が切断加工等により切除されて、フランジ部41と、一対のウェブ部42と、一対のアーム部43とを備える。また、ライニング鋼板3は、これに限らず、ハット形鋼矢板6の鋼製部材2と略同一断面形状になるように、フランジ部41と、一対のウェブ部42と、一対のアーム部43とを備えるものとして、熱間圧延又はプレス加工された鋼板が用いられてもよい。
【0041】
ライニング鋼板3は、ハット形鋼矢板6の鋼製部材2と略同一断面形状になるものとして、
図6、
図7に示すように、組立溶接された平鋼板45が用いられて、フランジ部41、一対のウェブ部42及び一対のアーム部43を備えるものとしてもよい。このとき、ライニング鋼板3は、
図6に示すように、複数の略平板状の平鋼板45を組み合わせて各々を溶接等することによって組立溶接されてもよく、
図7に示すように、略平板状の平鋼板45と折り曲げ加工等した平鋼板45とを組み合わせて各々を溶接等することによって組立溶接されてもよい。なお、ライニング鋼板3は、複数の平鋼板45を互いに離間させて鋼製部材2に取り付けられるが、これに限らず、複数の平鋼板45を互いに連設させて鋼製部材2に取り付けられてもよい。
【0042】
ライニング鋼板3は、
図5、
図6、
図7に示すように、鋼製部材2に取り付けられる内側面31と、内側面31と反対側の外側面32と、上端部36、下端部37、左端部38及び右端部39からなる側端部35とを有する。ライニング鋼板3は、上端部36、下端部37、左端部38及び右端部39の少なくとも一部で、
図8、
図9に示すように、内側面31よりも外側面32の方が大きくなるように、内側面31と外側面32との間に側端面33が形成される。
【0043】
ライニング鋼板3は、
図8(a)に示すように、左端部38及び右端部39の何れか一方又は両方で、側端部35の全長に亘って側端面33が形成される。ライニング鋼板3は、これに限らず、
図8(b)に示すように、左端部38及び右端部39の何れか一方又は両方で、一部においてのみ側端面33が形成されてもよい。ライニング鋼板3は、
図9(a)に示すように、上端部36及び下端部37の何れか一方又は両方で、側端部35の全長に亘って側端面33が形成される。ライニング鋼板3は、これに限らず、
図9(b)に示すように、上端部36及び下端部37の何れか一方又は両方で、一部においてのみ側端面33が形成されてもよい。
【0044】
側端面33は、
図10(a)に示すように、ライニング鋼板3の内側面31から外側面32にかけて、連続的に傾斜するテーパ状に形成される。側端面33は、これに限らず、
図10(b)に示すように、ライニング鋼板3の内側面31から外側面32にかけて、傾斜する角度を段階的に異ならせて、段階的に傾斜するテーパ状に形成されてもよい。また、側端面33は、これに限らず、
図10(c)に示すように、湾曲面と組み合わせることで、段階的に傾斜するテーパ状に形成されてもよい。
【0045】
側端面33は、
図11(a)に示すように、側端部35にブラスト処理等が実施されることによって、内側面31から外側面32にかけて、複数の凹部33aが形成される。側端面33は、これに限らず、
図11(b)に示すように、内側面31から外側面32にかけて、複数の突出した凸部33bが形成されてもよい。また、側端面33は、これに限らず、
図11(c)に示すように、凹部33a及び凸部33bの両方が形成されてもよい。
【0046】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図5、
図6、
図7に示すように、鋼製部材2の腐食、摩耗又は衝突力に抵抗するための前面側Aで、ライニング鋼板3が溶接等によって鋼製部材2に固定される。本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10を形成して、ライニング鋼板3が鋼製部材2に固定される。本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、左端部38及び右端部39の何れか一方又は両方に側端面33が形成されて、また、上端部36及び下端部37の何れか一方又は両方に側端面33が形成される。
【0047】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図12(a)に示すように、内側面31と側端面33との境界部34の少なくとも一部で、ライニング鋼板3が鋼製部材2に溶接される。このとき、ライニング鋼板3は、
図12(b)に示すように、側端面33の一部又は全部の境界部34において、幅方向X又は軸芯方向Yで断続的に又は連続的に溶接されて固定されるものとなる。このとき、ライニング鋼板3は、例えば、ライニング鋼板3の側端部35の四隅部や中間部で、鋼製部材2に溶接されて固定される。
【0048】
ライニング鋼板3の側端面33には、
図13(a)に示すように、ライニング鋼板3を鋼製部材2に溶接してから、鋼製部材2に溶接された溶接箇所11を覆うようにして、エポキシ系パテ材等の防食材12が、鋼製部材2との間に設けられる。ライニング鋼板3の側端面33には、
図13(b)に示すように、鋼製部材2に溶接された溶接箇所11だけでなく、鋼製部材2との間で、側端部35の全長に亘って防食材12が設けられてもよい。エポキシ系パテ材は、海水中等でも鋼材面に密着して硬化する水中硬化パテ等が用いられる。
【0049】
ライニング鋼板3の側端面33には、
図14(a)に示すように、溶接等の手段で溶接箇所11に固定された丸棒等の防食材係止部材14を折り曲げて、防食材係止部材14を巻き込むようにして、防食材12が鋼製部材2との間に設けられてもよい。なお、防食材係止部材14は、鋼製部材2又はライニング鋼板3に溶接等の手段で直接固定されるものとされてもよい。本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図14(b)に示すように、防食材12が内部で防食材係止部材14と一体化することで、防食材12の剥離、脱落を防止することが可能となる。
【0050】
ライニング鋼板3は、内側面31及び外側面32の何れか一方又は両方において、
図15に示すように、被覆防食又は塗装が施された防食層15が設けられる。例えば、ライニング鋼板3は、被覆防食が施される場合において、シアノアクリレート系瞬間接着剤等の防食溶剤等を浸透させて防食層15が設けられて、また、塗装が施される場合において、防食塗料等を塗布することにより防食層15が設けられる。
【0051】
ライニング鋼板3は、内側面31に防食層15が設けられるとき、
図15(a)に示すように、鋼製部材2の前面側Aに取り付けられた状態で、鋼製部材2とライニング鋼板3の内側面31との間に、鋼製部材2に溶接していない部位から、防食溶剤等が注入される。防食層15は、
図16(a)に示すように、鋼製部材2の継手部64の嵌合箇所外側で、継手部64まで到達するようにして設けられて、また、
図16(b)に示すように、鋼製部材2の継手部64の嵌合箇所内側で、継手部64の手前のアーム部63まで設けられる。
【0052】
ライニング鋼板3は、外側面32に防食層15が設けられるとき、
図15(b)に示すように、鋼製部材2の前面側Aに取り付けられた状態で、ライニング鋼板3の外側面32が防食層15で覆われる。防食層15は、
図17に示すように、側端面33に設けられた防食材12を覆うようにして設けられる。防食層15は、
図17(a)に示すように、鋼製部材2の継手部64の嵌合箇所外側で、継手部64まで到達するようにして設けられて、また、
図17(b)に示すように、鋼製部材2の継手部64の嵌合箇所内側で、継手部64の手前のアーム部63まで設けられる。
【0053】
ライニング鋼板3は、
図18(a)に示すように、側端部35に沿うようにして防食層15が設けられる。防食層15は、これに限らず、
図18(b)に示すように、ライニング鋼板3の全面に亘って設けられてもよい。
【0054】
ライニング鋼板3は、
図19に示すように、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10を形成して、鋼製部材2に溶接等によって固定される。ライニング鋼板3は、
図19(a)に示すように、ライニング鋼板3のウェブ部42と、鋼製部材2のウェブ部62とを当接させることで、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10が形成される。このとき、ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のフランジ部41と、鋼製部材2のフランジ部61との間に隙間が設けられて、奥行方向Zで鋼製部材2と離間させた間隙部16が形成されてもよい。
【0055】
ライニング鋼板3は、
図19(b)に示すように、ライニング鋼板3のフランジ部41と、鋼製部材2のフランジ部61とを当接させることで、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10が形成される。このとき、ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のウェブ部42と、鋼製部材2のウェブ部62との間に隙間が設けられて、鋼製部材2と離間させた間隙部16が形成されてもよい。なお、ライニング鋼板3は、内側面31に防食層15が設けられるとき、防食層15に面状に当接されて鋼製部材2に取り付けられる取付面10が形成される。
【0056】
ライニング鋼板3は、
図20に示すように、ライニング鋼板3のアーム部43と、鋼製部材2のアーム部63との間に、鉄筋等の棒部材18を介在させてもよい。このとき、ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のアーム部43と鋼製部材2のアーム部63との間に間隙部16が形成された状態で、鉄筋等の棒部材18がライニング鋼板3のアーム部43及び鋼製部材2のアーム部63に溶接等で取り付けられて、この溶接箇所11が防食材12で覆われるものとなる。
【0057】
ライニング鋼板3は、鋼製部材2と離間させて形成された間隙部16に経時硬化性材料17が充填される。経時硬化性材料17は、ライニング鋼板3の全長に亘って充填されて、又は、必要な範囲にのみ充填される。経時硬化性材料17は、例えば、セメント系経時硬化性充填材(セメントミルク、コンクリート、モルタル、レジンモルタル等)、高分子樹脂系充填材(エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等)、ソイル系充填材(ソイルセメント等)又は歴性質系充填材(アスファルト等)が用いられる。また、経時硬化性材料17は、必要に応じて、ガラス繊維等の繊維材や、スチールファイバー等が混入されてもよい。
【0058】
次に、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図21に示すように、第2実施形態において、断面略U形状の鋼矢板が用いられた鋼製部材2と、鋼製部材2に取り付けられるライニング鋼板3とを備える。
【0059】
鋼製部材2は、断面略U形状のU形鋼矢板7が用いられるものである。U形鋼矢板7の鋼製部材2は、フランジ部71と、一対のウェブ部72と、一対の継手部74とを備える。一対のウェブ部72は、U形鋼矢板7の幅方向Xでフランジ部71の両端から傾斜させて連続して、また、一対の継手部74は、一対のウェブ部72の各々の片端から連続して設けられる。U形鋼矢板7は、複数の鋼製部材2を幅方向Xに連結させて壁体構造を構築する場合に、隣り合うU形鋼矢板7の一方の継手部74に、他方の継手部74を嵌合させるものとなる。
【0060】
ライニング鋼板3は、U形鋼矢板7の鋼製部材2に取り付けられる場合に、鋼製部材2と略同一断面形状の鋼矢板等が用いられる。ライニング鋼板3は、熱間圧延又はプレス加工された鋼板が用いられて、フランジ部51と、一対のウェブ部52とが形成される。ライニング鋼板3は、これに限らず、鋼製部材2と略同一断面形状のU形鋼矢板50が用いられて、鋼製部材2と略同一断面形状のU形鋼矢板50から、一対の継手が切断加工等により切除されることで、フランジ部51と、一対のウェブ部52とを備えるものとされてもよい。
【0061】
ライニング鋼板3は、
図22に示すように、U形鋼矢板7の鋼製部材2と略同一断面形状になるものとして、組立溶接された平鋼板55が用いられて、フランジ部51と一対のウェブ部52とを備えるものとしてもよい。このとき、ライニング鋼板3は、
図22(a)に示すように、複数の略平板状の平鋼板55を組み合わせて各々を溶接等することにより組立溶接されてもよく、
図22(b)に示すように、略平板状の平鋼板55と折り曲げ加工等した平鋼板55とを組み合わせて各々を溶接等することにより組立溶接されてもよい。ライニング鋼板3は、複数の平鋼板55を互いに離間させて鋼製部材2に取り付けられるが、これに限らず、複数の平鋼板55を互いに連設させて鋼製部材2に取り付けられてもよい。
【0062】
ライニング鋼板3は、内側面31よりも外側面32の方が大きくなるように、内側面31と外側面32との間に側端面33が形成される。ライニング鋼板3は、
図21(a)、
図22(a)に示すように、U形鋼矢板7のフランジ部71と一対のウェブ部72とにより形成される溝部の外側で、鋼製部材2の前面側Aに取り付けられる。また、ライニング鋼板3は、
図21(b)、
図22(b)に示すように、U形鋼矢板7のフランジ部71と一対のウェブ部72とにより形成される溝部の内側で、鋼製部材2の前面側Aに取り付けられる。
【0063】
ライニング鋼板3は、これに限らず、
図23(a)に示すように、ライニング鋼板3の内側面31と、U形鋼矢板7の鋼製部材2のウェブ部72の屈曲箇所との隙間に、溶接箇所11が設けられてもよい。また、ライニング鋼板3は、
図23(b)に示すように、ライニング鋼板3の内側面31と、U形鋼矢板7の鋼製部材2のウェブ部72から継手部74に連続する屈曲箇所との隙間に、溶接箇所11が設けられてもよい。この溶接箇所11は、防食材12で覆われるものとなる。
【0064】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、鋼製部材2の腐食、摩耗又は衝突力に抵抗するための前面側Aで、ライニング鋼板3が溶接等によって鋼製部材2に固定される。ライニング鋼板3は、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10を形成して、鋼製部材2に溶接等によって固定される。本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、間隙部16や防食層15を設けることができる。ライニング鋼板3は、内側面31に防食層15が設けられるときに、防食層15に面状に当接させて取付面10が形成される。
【0065】
ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のウェブ部52と、鋼製部材2のウェブ部72とを当接させることで、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10が形成される。このとき、ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のフランジ部51と、鋼製部材2のフランジ部71との間に隙間が設けられて、鋼製部材2と離間させた間隙部16が形成されてもよい。
【0066】
ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のフランジ部51と、鋼製部材2のフランジ部71とを当接させることで、鋼製部材2に面状に取り付けられる取付面10が形成されてもよい。このとき、ライニング鋼板3は、ライニング鋼板3のウェブ部52と、鋼製部材2のウェブ部72との間に隙間が設けられて、鋼製部材2と離間させた間隙部16が形成されてもよいものとなる。ライニング鋼板3は、鋼製部材2と離間させて形成された間隙部16に、ライニング鋼板3の全長に亘って、又は、必要な範囲にのみ、経時硬化性材料17が充填されてもよい。
【0067】
ライニング鋼板3は、内側面31に防食層15が設けられるとき、鋼製部材2の前面側Aに取り付けられた状態で、鋼製部材2とライニング鋼板3の内側面31との間に、鋼製部材2に溶接していない部位から、防食溶剤等が注入される。防食層15は、鋼製部材2の継手部74の嵌合箇所内側で、継手部74の手前のウェブ部72まで設けられるとともに、鋼製部材2の継手部74の嵌合箇所外側で、継手部74まで到達するようにして設けられる。
【0068】
ライニング鋼板3は、外側面32に防食層15が設けられるとき、鋼製部材2の前面側Aに取り付けられた状態で、ライニング鋼板3の外側面32が防食層15で覆われる。防食層15は、側端面33に設けられた防食材12を覆うようにして設けられるものであり、鋼製部材2の継手部74の嵌合箇所内側で、継手部74の手前のウェブ部72まで設けられるとともに、鋼製部材2の継手部74の嵌合箇所外側で、継手部74まで到達するようにして設けられる。
【0069】
本発明を適用した基礎構造物8は、第1実施形態及び第2実施形態の何れか一方又は両方の本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1が用いられるものである。
【0070】
本発明を適用した基礎構造物8は、前面側Aと背面側Bとの境界に設けられるものであって、
図25に示すように、ハット形鋼矢板6又はU形鋼矢板7が用いられた鋼製部材2と、鋼製部材2の軸芯方向Yで所定の範囲に取り付けられるライニング鋼板3とを備える。鋼製部材2は、軸芯方向Yの下部2aが水底地盤80に打設されて、又は埋め込まれて地盤に立設されるとともに、軸芯方向Yの上部2bが前面側Aと背面側Bとの境界に設けられる。
【0071】
本発明を適用した基礎構造物8は、複数の鋼製部材2の少なくとも一部に、ライニング鋼板3があらかじめ溶接された状態で、鋼製部材2が前面側Aと背面側Bとの境界に設けられる。本発明を適用した基礎構造物8は、これに限らず、複数の鋼製部材2が前面側Aと背面側Bとの境界に設けられた状態で、複数の鋼製部材2の少なくとも一部に、ライニング鋼板3が現地作業で溶接されてもよい。
【0072】
本発明を適用した基礎構造物8は、鋼製部材2の軸芯方向Yの所定範囲Lにライニング鋼板3が溶接されて固定される。この所定範囲Lは、構造設計(計算)や、設置環境(劣化環境、腐食環境、漂砂・流砂環境、漂流物環境等)によって決定されるものであり、例えば、大きな曲げモーメントが作用する部位をカバーする範囲や、鋼製部材2の変位を抑制するのに効果的な範囲に決定される。また、この所定範囲Lは、標準的な海洋環境において集中腐食が生じるおそれのある干満帯付近をカバーする範囲に決定されてもよい。さらに、この所定範囲Lは、例えば、波や河川流の影響による洗掘を考慮する場合に、水底地盤80に対する所定深度までカバーする範囲に決定されてもよい。
【0073】
本発明を適用した基礎構造物8は、海水面81において鋼製部材2の前面側Aにライニング鋼板3が溶接されて固定される。本発明を適用した基礎構造物8は、
図26(a)に示すように、自立式鋼矢板壁において、ライニング鋼板3の軸芯方向Yの上端が上部コンクリート82に埋め込まれるとともに、ライニング鋼板3の下端が水底地盤80に埋め込まれるようにしてもよい。このとき、本発明を適用した基礎構造物8は、水底地盤80から海水面81及び上部コンクリート82まで、鋼製部材2の前面側Aにライニング鋼板3が連続して取り付けられる。本発明を適用した基礎構造物8は、
図26(b)に示すように、控え工83と鋼製部材2の上部2bとがタイロッド84で連結されて、タイロッド式の鋼矢板壁が構築されてもよい。
【0074】
ライニング鋼板3は、チタン、ステンレス等の耐腐食性、耐摩耗性の高い金属が前面側Aに用いられたクラッド鋼板や、鋼板の前面側Aに溶融めっき、電気めっきが施されためっき鋼板が用いられて、ライニング鋼板3の耐腐食性、耐摩耗性を向上させてもよい。ライニング鋼板3は、鋼板とチタン、ステンレス等との界面や、鋼板と溶融めっき、電気めっき等との界面において、異種金属接触による腐食対策として電気防食等の手段が施されて、異種金属の電位差等に起因するライニング鋼板3の腐食を防止することが可能となる。
【0075】
ライニング鋼板3は、
図6、
図7、
図22、
図24に示すように、所定の鋼板厚とさせた平鋼板45(55)や、鋼製部材2の略中央部で離間させた一対の分割鋼板46(56)等を、必要に応じて使い分けて用いることができる。これにより、ライニング鋼板3は、海洋、港湾で鋼材の腐食が激しい集中腐食部位や、水底の底質(砂、砂礫等)の移動が激しい部位において、ライニング鋼板3の板厚を必要に応じて大きくすることができるものとなり、鋼製部材2の耐腐食性能を任意に向上させることが可能となる。
【0076】
ライニング鋼板3は、有機材料等を用いることなく、鋼製部材2にライニング鋼板3を固定することができるため、海洋、港湾での波浪によって大きな漂流物が衝突した場合や、水底の底質(砂、砂礫等)が衝突した場合であっても、ライニング鋼板3が割れて破損等することを回避して、鋼製部材2をライニング鋼板3で確実に保護することが可能となる。
【0077】
本発明を適用した基礎構造物8は、
図25に示すように、あらかじめ溶接されてライニング鋼板3が設けられるため、現地作業におけるライニング鋼板3の側端面33の溶接等を必要としないで、ライニング鋼板3を鋼製部材2に容易に固定することが可能となる。本発明を適用した基礎構造物8は、複数の鋼製部材2が前面側Aと背面側Bとの境界に設けられた状態で、ライニング鋼板3が現地作業で溶接される場合に、海洋、港湾で鋼材の腐食が激しい集中腐食部位や、水底の底質(砂、砂礫等)の移動が激しい部位にのみ、ライニング鋼板3を後付けで集中的に固定することが可能となる。
【0078】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図4に示すように、ライニング鋼板3のハット形鋼矢板40から、一対の継手部44を切断加工等により切除して、鋼製部材2と略同一断面形状のライニング鋼板3を製作することができる。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、ライニング鋼板3のための鋼矢板等を別途製作することを必要としないで、簡単な切断加工等をするのみで、容易かつ低コストにライニング鋼板3を製作することが可能となる。
【0079】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図19に示すように、ライニング鋼板3と鋼製部材2との間に間隙部16が形成されて、この間隙部16に経時硬化性材料17が充填される。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、間隙部16に充填された経時硬化性材料17で、鋼製部材2の腐食や磨耗を防止することが可能となり、また、鋼製部材2やライニング鋼板3の曲げ剛性及びねじり剛性を向上させることが可能となる。さらに、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、ライニング鋼板3に腐食などにより孔が開いたとしても、経時硬化性材料17が防護効果を発揮するので、鋼製部材2へのダメージを軽減させることが可能となる。
【0080】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図5〜
図7、
図19〜
図24に示すように、鋼製部材2の腐食、摩耗又は衝突力に抵抗するための前面側Aで、取付面10を形成してライニング鋼板3が鋼製部材2に面状に取り付けられる。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、鋼製部材2とライニング鋼板3との当接面積を取付面10で大きく確保することができることから、ライニング鋼板3が割れて破損等した場合であっても、鋼製部材2からのライニング鋼板3の脱落を防止しながら、鋼製部材2をライニング鋼板3で確実に防護することが可能となる。
【0081】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図27に示すように、ライニング鋼板3の内側面31よりも外側面32の方が大きくなるように、ライニング鋼板3に側端面33が形成されるため、ライニング鋼板3の側端面33が鋼製部材2に対して鋭角となった状態で、略楔形状の間隙Gが形成される。このとき、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、ライニング鋼板3の側端面33で、溶接箇所11が略楔形状の間隙Gに奥まった状態となって露出しないものとなることで、ライニング鋼板3の外側面32で溶接箇所11を保護することができる。
【0082】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図27(a)に示すように、ライニング鋼板3の外側面32で溶接箇所11を保護することができるため、溶接箇所11に水域での漂流物等が衝突、擦過等することを防止することが可能となり、ライニング鋼板3の鋼製部材2からの脱離を防止することが可能となる。
【0083】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、溶接箇所11を覆うようにして設けられた防食材12も、ライニング鋼板3の側端面33で、略楔形状の間隙Gに奥まった状態となって露出しないもの、又は露出量が極めて少なくなることで、ライニング鋼板3の外側面32で防食材12を保護するものとなる。このとき、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、防食材12に漂流物等が衝突、擦過等することを防止して、防食材12の損耗、剥離を防止することが可能となり、溶接箇所11が防食材12で保護されて、ライニング鋼板3の鋼製部材2からの脱離を防止することが可能となる。
【0084】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図27(b)に示すように、ライニング鋼板3の腐食進行速度等に応じて、ライニング鋼板3の板厚を大きくした場合であっても、ライニング鋼板3の側端面33で、略楔形状の間隙Gに溶接箇所11が奥まった状態で設けられて、溶接箇所11が防食材12で保護されるため、溶接箇所11の脚長Wを大きくする必要がない。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、溶接箇所11の脚長Wを大きくすることを必要としないで、溶接量の増大を抑制することができるため、溶接コストを低減させることが可能となるだけでなく、溶接箇所11から鋼製部材2に供給される溶接熱の増大を抑制して、溶接熱による鋼製部材2の変形を防止することが可能となる。
【0085】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、ライニング鋼板3の側端部35の四隅部や中間部で、ライニング鋼板3の側端面33が鋼製部材2に断続的に溶接されることで、ライニング鋼板3の側端部35に対する溶接箇所11の占める割合の増大を抑制することができ、溶接コストを低減させることが可能となるだけでなく、溶接箇所11から鋼製部材2に供給される溶接熱の増大を抑制して、溶接熱による鋼製部材2の変形を防止することが可能となる。
【0086】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図28に示すように、ライニング鋼板3の内側面31から外側面32にかけて、ライニング鋼板3の側端面33に複数の凹部33a及び凸部33bの何れか一方又は両方が形成されることで、溶接箇所11を覆うようにして設けられた防食材12のせん断方向Sの強度を向上させたものとなる。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、防食材12と側端面33との密着力を向上させることで、防食材12が側端面33に強固に固定されたものとなり、防食材12に水域での漂流物等が衝突等した場合であっても、防食材12の側端面33からの脱離を防止することが可能となる。
【0087】
ライニング鋼板3は、
図29に示すように、鋼製部材2とライニング鋼板3との間に、腐食、摩耗又は衝突力によりライニング鋼板3に形成された孔部3aを視認するための識別シート19が設けられてもよい。このとき、ライニング鋼板3は、
図30に示すように、鋼製部材2と離間させて形成された間隙部16に充填された経時硬化性材料17の前面側A及び背面側Bの何れか一方又は両方に、識別シート19が設けられるものとすることもできる。識別シート19は、ライニング鋼板3と異なる色彩で、黄色、赤色等の目立つ色彩のポリエチレンシート等が用いられる。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、亀裂等の孔部3aがライニング鋼板3に形成された場合に、鋼製部材2より先に識別シート19を視認することができるため、早期に孔部3aを発見するとともに経時硬化性材料17の劣化状況を確認して、迅速に補修作業等を実施することが可能となる。
【0088】
本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、
図15(a)に示すように、鋼製部材2とライニング鋼板3の内側面31との間に防食層15が設けられることで、鋼製部材2とライニング鋼板3の内側面31との間に海水等が浸入した場合であっても、鋼製部材2の表面からの腐食の進行を防止することが可能となる。これにより、本発明を適用した防護層を有する鋼製部材1は、不測の事態により防食材12が脱落等した場合であっても、防食材12の脱落箇所の補修に着手するまで時間を要するときの安全代として防食層15を機能させることができることから、防食層15によって鋼製部材2の表面を腐食から保護することが可能となる。
【0089】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。