特許第6344075号(P6344075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6344075
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】静電容量タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20180611BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   G06F3/041 400
   G06F3/041 495
   G06F3/044 122
   G06F3/044 127
   G06F3/044 128
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-125134(P2014-125134)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-4458(P2016-4458A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安原 寿二
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 智博
【審査官】 ▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−079238(JP,A)
【文献】 特開2015−079377(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/038718(WO,A1)
【文献】 特開2014−026071(JP,A)
【文献】 特開2015−176465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の片面に、金属細線を多数を平行して配列形成し、前記金属細線が縦横交差する様に2枚を重ねるか、
又は、透明基材の両面に、それぞれの面に、金属細線が縦横交差する様に金属細線を多数を平行して配列形成させた静電容量タッチパネルであって、
前記透明基材と前記金属細線との間にアンカー層を有し、
前記アンカー層は、前記透明基材側から順に第一アンカー層と第二アンカー層を有し、
前記第二アンカー層は、粒径0.5μmのアクリルナノ粒子が0.5質量部添加されていることを特徴とする静電容量タッチパネル。
【請求項2】
前記アンカー層が、3次元架橋された有機樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の静電容量タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量タッチパネルに関し、金属電極とフィルム基材との密着性を向上させ、電極の断線や容量異常の発生のない静電容量タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、指入力またはペン入力によるモバイル情報端末として種々のタッチパネルが開発され実用化されている。タッチパネルは、通常特殊なペンを使用しないで、指または普通のペンで容易に入力でき、構造が比較的簡単であって価格も安いという利点を有している。タッチパネルには、種々の方式が提案されているが、その中で抵抗膜方式と静電容量方式が主体を占めている。
【0003】
静電容量式タッチパネルは、特定の電極パターンを形成し電極間の静電容量値の変化を検出して、押圧した位置を特定する構造となっている。この静電容量式の1つの方式は、2面の電極をパターン化し、コントローラーにて押圧位置の微弱な電流を電圧に変換して検出しようとするものである。したがって静電容量式のタッチパネルに使用される導電性フィルムまたは導電性シートは、表面抵抗値が小さくかつ透明性の高いものが要求される。
【0004】
図3は、静電容量タッチパネルの構成の一例を示しており、透明基材1の両面に、それぞれの面に、金属細線2が平面視で縦横交差する様に金属細線2を多数を平行して配列形成させた静電容量タッチパネルである。
【0005】
図4は、透明基板1の片面の表面に、導電性金属細線2の多数が並行して一方向に配列して形成された透明複合基板を2枚、金属細線2が配列された面が互いに向かい合い、且つ金属細線2の配列方向が直交する様に絶縁性接着剤5を介して重ね合わせた構成をした静電容量タッチパネルである(特許文献1)。
【0006】
透明基材に金属配線パターンを設けた静電容量方式タッチパネルは、一般に印刷法、フォトリソ法などによって金属配線のパターン形成が行われている。
【0007】
透明導電膜を用いたタッチパネルとは異なり、金属配線を用いるタッチパネルは、視認性の点で劣るため、金属配線の細線化が必須であり、そのためにはフォトリソ法が最も適している。
【0008】
フォトリソ法に用いられる金属フィルムは、PETなどの透明基材上に蒸着、スパッタ、めっきによりミクロンもしくはサブミクロン単位の厚さの金属膜を直接形成している。
【0009】
透明基材は引っ張り強度を得るため、延伸処理が行われており、一般には透明性が優れているため、二軸延伸PETフィルムが使用されている。こうした二軸延伸フィルムには数十μm以上の長さで深さが数μm深さの表面キズが多数存在し、PETフィルム上に金属膜を形成した場合、金属の持つ内部応力のため、上記の表面キズを起点に金属膜表面が裂ける不具合が生じる。
【0010】
この様な金属膜の裂目は、長さ数十〜数百μm、幅数μmであり、裂目が金属フィルムタッチセンサーの配線部に存在すれば、断線もしくは容量値異常となり、静電容量タッチパネルが欠陥品となる不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−28699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
透明基材として、表面キズが多数存在する二軸延伸フィルムを用いても、金属配線の断線や断線起因の容量値異常がない、微細な金属配線を用いた静電容量タッチパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、透明基材の片面に、金属細線を多数を平行して配列形成し、前記金属細線が縦横交差する様に2枚を重ねるか、
又は、透明基材の両面に、それぞれの面に、金属細線が縦横交差する様に金属細線を多数を平行して配列形成させた静電容量タッチパネルであって、
前記透明基材と前記金属細線との間にアンカー層を設けたことを特徴とする静電容量タッチパネルである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記アンカー層が、3次元架橋された有機樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の静電容量タッチパネルである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記アンカー層が、ナノ粒子を含有し、ヘーズ値が2以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電容量タッチパネルである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記アンカー層が、1層もしくは2層以上の多層構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電容量タッチパネルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、表面キズが多数存在する二軸延伸フィルムを用いても、本発明のアンカー層により表面キズが埋め込まれるため、金属割れを減少させることができ配線断線による不良数を低減させることが可能である。また、金属膜と二軸延伸フィルム基材との密着性をあげることがで、金属配線の耐擦性アップにより信頼性が向上した静電容量タッチパネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の透明基材と金属細線との間にアンカー層を設けた静電容量タッチパネルの構成を示した概念平面図(A)及び概念断面図(B)である。
図2】本発明のアンカー層が多層構造の静電容量タッチパネルの構成を示した概念断面図である。
図3】一般的な静電容量タッチパネルの構成を示した概念断面図である。
図4】透明基材の片面に、金属細線を多数を平行して配列形成し、前記金属細線が縦横交差する様に絶縁性接着剤を介して重ね合せ構成の静電容量タッチパネルを示した概念断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、透明基材1と金属細線2との間にアンカー層3を設けた静電容量タッチパネルの構成を示した概念平面図(A)および概念断面図(B)であり、透明基材1の両面に、それぞれの面に、金属細線2が縦横交差する様に属細線を多数を平行して配列形成させた静電容量タッチパネルである。
【0020】
本発明の静電容量タッチパネルにおけるアンカー層は、透明基材として使用する二軸延伸フィルムに存在する数十μm以上の長さで深さが数μm深さの表面キズ起因の、金属膜表面の裂けを防止するもので、透明基材上のミクロン単位の表面キズを埋め、且つ金属膜と透明基材との密着性を向上させ、更には、アンカー層の硬度を向上させることで、機械的耐性を持たせることにあり、断線や容量値異常といった不具合を生じない静電容量タッチパネルを提供するものである。
【0021】
図2は、アンカー層を、アンカー層(第一)3、アンカー層(第二)4と2層構成としたものである。アンカー層に保持させる、表面キズを埋める平滑性向上機能、金属膜と透明基材との密着性向上機能、硬度向上機能は、必ずしも1層に持たせる必要はなく、図2に示す様に、第一のアンカー層3、第二のアンカー層4の様に、1層もしくは機能層分離をした2層以上の複数のアンカー層を設けても良い。
【0022】
<透明基材>
透明基材としては、PET、アクリルフィルム、COP(環状オレフィンポリマー)、CO(環状オレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロース)、PC(ポリカーボネート)が使用可能であり、二軸延伸PETフィルムが好適である。
【0023】
<金属細線>
金属細線としては、銀線や銅線が好適であり、中でも安価な銅線が望ましい。細線は、スパッタ等の薄膜形成法により、0.5〜12.0μmの厚みの金属薄膜を形成させ、フォトリソ法により線幅2.0〜12.0μmの細線を形成する。
【0024】
<3次元架橋された有機樹脂>
アンカー層としては、3次元架橋された樹脂が好適であり、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂が使用可能である。
【0025】
<ナノ粒子>
また、添加材としてアクリルナノ粒子を1%以下加えることにより、ブロッキングを防ぐ機能を持たせることができる。
【0026】
<ヘーズ>
ヘーズ値が2以上だと、ディスプレイとしての視認性が悪くなる。
【実施例1】
【0027】
二軸延伸フィルムとして100μm厚みの商品名XU483(東レ社製)に、0.3μmの厚さでアクリルナノ粒子を添加したアクリル樹脂を面に塗布して第一アンカー層を形成し、蒸着法により2μmの銅膜を、二軸延伸フィルムの面に形成し、フォトリソ法により線幅3μmの細線パターン(金属細線多数を平行に配列)を形成し、前記金属細線が縦横交差する様に絶縁性接着剤を介して重ね合せてなる構成の、ヘーズ値1.0の実施例1の金属配線フィルムタッチパネルを作製した。
尚、アンカー層塗布液へのアクリルナノ粒子は、粒径0.3μmを用い、添加量を0.5質量部とした。
【実施例2】
【0028】
二軸延伸フィルムとして100μm厚みの商品名XU483(東レ社製)に、2μmの厚さでアクリル樹脂を片面に塗布して第一アンカー層を形成し、さらに第一アンカー層上に0.5μmの厚さでアクリルナノ粒子を添加したエステル樹脂を塗布して第二アンカー層を形成し、蒸着法により2μmの銅膜を、二軸延伸フィルムの面に形成し、フォトリソ法により線幅3μmの細線パターン(金属細線多数を平行に配列)を形成し、前記金属細線が縦横交差する様に絶縁性接着剤を介して重ね合せてなる構成の、ヘーズ値1.2実施例2の金属配線フィルムタッチパネルを作製した。
尚、第二アンカー層塗布液へのアクリルナノ粒子は、粒径0.5μmを用い、添加量を0.5質量部とした。
【実施例3】
【0029】
実施例2の第二アンカー層を無くした以外は同一条件で、実施例3の金属配線フィルムタッチパネルを作製して、ヘーズ値1.4の実施例3の金属配線フィルムタッチパネルを作製した。
【実施例4】
【0030】
実施例1と同じ条件で、ヘーズ値1.8の実施例4の金属配線フィルムタッチパネルを作製した。但し、以下の点が実施例1とは異なる。具体的には、二軸延伸フィルムに厚み2μmのアクリル樹脂を塗布し、第一のアンカー層を形成する。第一アンカー層上にアクリルナノ粒子を添加したウレタン樹脂を塗布することにより第二アンカー層を形成する。蒸着法により二軸延伸フィルムの片面に形成された厚み2μmの銅膜に対して、フォトリソ法により線幅2μmの細線パターン(金属細線多数を平行に配列)を形成する。尚、第二アンカー層塗布液へのアクリルナノ粒子は、粒径0.5μmを用い、添加量を0.5質量部とした。
【実施例5】
【0031】
二軸延伸フィルムの両面に、2μmの厚さでアクリル樹脂を塗布して第一アンカー層を形成した。蒸着法により厚さ2μmの銅膜を第一アンカー層に形成した。フォトリソ法により線幅2μmの細線パターンを、金属細線が縦横交差する様に形成した。これにより、ヘーズ値2.5の実施例5の金属配線フィルムタッチパネルを作製した。
【0032】
<比較例1>
実施例1におけるアクリル樹脂からなる第一のアンカー層を設けず、他は実施例1と同条件で、ヘーズ値1.5の比較例1の金属配線フィルムタッチパネルを作製した。
【0033】
<静電容量値測定>
静電容量値測定はフライングプローバを用いて測定した。
【0034】
<金属裂け>
光学顕微鏡を用いて、金属細線にできた裂けを確認した。
【0035】
結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
透明基材と金属細線との間にアンカー層を設けることにより、金属細線が裂ける不具合が生じることがなく、静電容量値測定の測定においても良好な結果となった。またアンカー層中に、ナノ粒子を添加することにより改善が見られた。
【符号の説明】
【0037】
1・・・透明基材
2・・・金属細線
3・・・アンカー層(第一)
4・・・アンカー層(第二)
5・・・絶縁性接着剤
図1
図2
図3
図4