特許第6344096号(P6344096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6344096
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20180611BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20180611BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   G01T1/20 F
   G01T1/202
   G01T1/20 B
   G01T1/20 G
   G01T1/20 J
   G01T1/161 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-140812(P2014-140812)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-17851(P2016-17851A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】大谷 篤
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−009881(JP,A)
【文献】 特開2012−002656(JP,A)
【文献】 特開昭63−188788(JP,A)
【文献】 特開2000−056023(JP,A)
【文献】 特開2013−234921(JP,A)
【文献】 特開2001−330673(JP,A)
【文献】 特開平01−141389(JP,A)
【文献】 米国特許第8084742(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0178347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
G21K 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を蛍光に変換するときの特性である発光特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶が縦横に配列されて構成されるサブブロックを縦横に配列して構成されるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した蛍光を検出する光検出器と、
前記光検出器が検出した蛍光の空間的な広がりに基づいて蛍光が前記サブブロックのいずれから生じたものかを特定するブロック特定手段と、
前記光検出器が検出した発光特性に基づいて、前記ブロック特定手段で特定された前記サブブロックのうちいずれのシンチレータ結晶が蛍光を生じたのかを特定する結晶特定手段とを備えた放射線検出器を搭載し、
前記放射線検出器が弧状に配列されて構成され、消滅放射線のペアを検出する検出器リングと、
前記ブロック特定手段で特定された前記サブブロックのうち2つの前記サブブロックからなるサブブロックペアの間で異なる放射線の検出感度のバラつきを補正するノーマライズ補正を前記検出器リングによって出力され、前記結晶特定手段で特定されたシンチレータ結晶単位で蛍光の発生位置を表した検出データの同時計数を行った同時計数データに対して施す補正手段と、
前記補正手段でノーマライズ補正がなされた同時計数データを基に被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた断層画像を生成する画像生成手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記サブブロックは、蛍光の減衰特性が互いに異なる複数の前記シンチレータ結晶により構成されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記サブブロックは、セリウム元素の含有量が互いに異なる複数の前記シンチレータ結晶により構成されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記シンチレータ結晶は、GSOまたはLGSOで構成されていることを特徴とする放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を用いて被検体のイメージングを行う放射線撮影装置に関し、特に、シンチレータ結晶を備えた放射線検出器を備えた放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を検出して被検体のイメージングを行う放射線撮影装置には、γ線などの高エネルギーの放射線を検出できるものがある。このような放射線撮影装置には、この様な透過性の高い放射線を検出できるような放射線検出器が備えられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図11は、この様な放射線検出器を説明している。放射線検出器51は、シンチレータ結晶cが縦横に2次元的に配列して構成されるシンチレータ52と、シンチレータ52から発した蛍光を検出する光検出器53とを備えている。シンチレータ52から発せられる蛍光は、γ線が変換されたものである。
【0004】
このような放射線検出器51は、シンチレータ52のどこで蛍光が発したかを区別することができる。このような放射線検出器51の機能を位置弁別機能と呼ぶ。位置弁別機能は、光検出器53がシンチレータ結晶cのうちのどれが蛍光を発したのかを区別することで実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−056023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来構成の放射線撮影装置には次のような問題点がある。
すなわち、従来構成の放射線撮影装置では、空間分解能の追及に限界がある。
【0007】
放射線撮影装置の空間分解能を高めるには、放射線検出器の位置弁別機能を強化する必要がある。そのためには、図12に示すように、シンチレータ52を構成するシンチレータ結晶cの個数を単純に増やすというのが従来の考え方である。シンチレータ結晶cの個数が増えるとシンチレータ結晶cの各々はより小さくなる。この小さくなったシンチレータ結晶cのうちのどれから蛍光が生じたかを区別すれば、蛍光の発生位置がより厳密に分かるようになり、放射線撮影装置の空間分解能は高まるはずである。
【0008】
しかし、この考え方に従ったとしても、装置の空間分解能は必ずしも高くはならない。蛍光を発したシンチレータ結晶cの特定が難しくなるからである。シンチレータ結晶cの中で生じた蛍光は広がりながら光検出器53に入射する。従って、光検出器53は、シンチレータ52の内部で広がってしまった蛍光しか検出することができない。つまり、光検出器53からすると蛍光を生じたシンチレータ結晶cはぼやけて見えるというわけである。したがって、シンチレータ結晶cが細かくなると、光検出器53は、蛍光があるシンチレータ結晶cから生じたものなのかそれともその隣のシンチレータ結晶cから生じたものなのかを区別することが難しくなる。結果として装置の空間分解能は改善されない。
【0009】
従って、従来構成の放射線撮影装置ではこれ以上の空間分解能の向上は難しい状況にある。したがって、放射線検出器の構造自体を見直す必要がある。
【0010】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線検出器の構造を見直すことにより空間分解能の高い放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を蛍光に変換するときの特性である発光特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶が縦横に配列されて構成されるサブブロックを縦横に配列して構成されるシンチレータと、シンチレータで発生した蛍光を検出する光検出器と、光検出器が検出した蛍光の空間的な広がりに基づいて蛍光がサブブロックのいずれから生じたものかを特定するブロック特定手段と、光検出器が検出した発光特性に基づいて、前記ブロック特定手段で特定されたサブブロックのうちいずれのシンチレータ結晶が蛍光を生じたのかを特定する結晶特定手段とを備えた放射線検出器を搭載し、前記放射線検出器が弧状に配列されて構成され、消滅放射線のペアを検出する検出器リングと、前記ブロック特定手段で特定された前記サブブロックのうち2つの前記サブブロックからなるサブブロックペアの間で異なる放射線の検出感度のバラつきを補正するノーマライズ補正を前記検出器リングによって出力され、前記結晶特定手段で特定されたシンチレータ結晶単位で蛍光の発生位置を表した検出データの同時計数を行った同時計数データに対して施す補正手段と、前記補正手段でノーマライズ補正がなされた同時計数データを基に被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた断層画像を生成する画像生成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]本発明の放射線撮影装置は、放射線検出器の構造を見直すことにより空間分解能が高いものとなっている。すなわち、本発明に係る放射線検出器は、光検出器が検出した蛍光の空間的な広がりに基づく蛍光の発生位置の弁別はサブブロック単位についてしか行わない。このサブブロックは、発光特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶により構成されている。従って、サブブロックが蛍光を発するときは、これらシンチレータ結晶のいずれかが実際には蛍光を生じたということになる。
本発明の構成によれば、蛍光を発したサブロックのうち実際に発光したシンチレータ結晶はどれなのかを特定するのに発光特性の違いを利用している。サブブロックを構成するシンチレータ結晶は互いに近接した位置にあるので、それぞれから発する蛍光の広がり方はかなり似ていて区別しづらい。本発明によれば、蛍光の発光特性の違いにより蛍光の空間的な広がり方が互いに似通ったシンチレータ結晶を区別できるようになっている。従って、本発明に係る放射線検出器を備えた放射線撮影装置の空間分解能は高いものとなる。
【0014】
本発明に係る放射線検出器は、PET装置に好適である。ノーマライズ補正は、本来はシンチレータ結晶の組み合わせごとに補正値を求めなければならない。検出器リングを備えたPET装置においては、シンチレータ結晶の個数が増えると、シンチレータ結晶の組み合わせが増えるので補正値の算出が難しくなる。本発明によれば、サブブロックの組み合わせごとに補正値を求めるようにしているので、この様な問題が生じない。
【0015】
また、上述の放射線撮影装置において、サブブロックは、蛍光の減衰特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶により構成されていればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置をより具体的に表したものとなっている。サブブロックが蛍光の減衰特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶により構成されていれば、サブブロックから生じた蛍光がどのシンチレータ結晶から生じたものなのかを確実に区別することができる。
【0017】
また、上述の放射線撮影装置において、サブブロックは、セリウム元素の含有量が互いに異なる複数のシンチレータ結晶により構成されていればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置をより具体的に表したものとなっている。サブブロックがセリウム元素の含有量が互いに異なる複数のシンチレータ結晶により構成されていれば、シンチレータ結晶の間で確実に蛍光の減衰特性を違えることができる。
【0019】
また、上述の放射線撮影装置において、シンチレータ結晶は、GSOまたはLGSOで構成されていればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の放射線撮影装置をより具体的に表したものとなっている。シンチレータ結晶がGSOまたはLGSOで構成されていれば、発光特性の異なるシンチレータ結晶を確実に用意することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の放射線撮影装置は、放射線検出器の構造を見直すことにより空間分解能が高いものとなっている。すなわち、本発明に係る放射線検出器は、光検出器が検出した蛍光の空間的な広がりに基づく蛍光の発生位置の弁別は互いに発光特性の異なる複数のシンチレータ結晶で構成されるサブブロック単位についてしか行わない。サブブロックを構成するシンチレータ結晶は互いに近接した位置にあるので、それぞれから発する蛍光の広がり方はかなり似ていて区別しづらい。本発明によれば、蛍光の発光特性の違いにより近接した位置にあるシンチレータ結晶を区別できるようになっている。従って、本発明に係る放射線検出器を備えた放射線撮影装置の空間分解能は高いものとなる。
ノーマライズ補正は、本来はシンチレータ結晶の組み合わせごとに補正値を求めなければならない。検出器リングを備えた放射線撮影装置(この場合にはPET装置)においては、シンチレータ結晶の個数が増えると、シンチレータ結晶の組み合わせが増えるので補正値の算出が難しくなる。本発明によれば、サブブロックの組み合わせごとに補正値を求めるようにしているので、この様な問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1に係る放射線撮影装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
図2】実施例1に係る検出器リングの構成を説明する平面図である。
図3】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する機能ブロック図である。
図4】実施例1に係るシンチレータの構成を説明する斜視図である。
図5】実施例1に係るサブブロック特定処理を説明する模式図である。
図6】実施例1に係る蛍光の発光特性の違いを説明するタイムコースである。
図7】実施例1に係る結晶特定処理を説明する模式図である。
図8】実施例1に係るサブブロックペアを説明する模式図である。
図9】実施例1に係るサブブロックペアを説明する模式図である。
図10】実施例1に係る放射線撮影装置の動作の全容を説明する模式図である。
図11】従来構成の放射線検出器を説明する斜視図である。
図12】従来構成の放射線検出器の問題点を説明する斜視図である。
【実施例1】
【0023】
以下、本発明に係る放射線断層撮影装置の実施例について図面を参照しながら説明する。実施例1におけるγ線は本発明の放射線の一例である。なお、実施例1の構成は、乳房検査用画像診断装置となっている。すなわち、実施例1の放射線断層撮影装置は、乳房Bに分布する放射性薬剤のイメージングを行って断層画像Pを生成するPET(Positron Emission Tomography)装置の一種である。そして、実施例1の装置は、被検体Mの右乳房と左乳房とを片側ずつ2回に分けて撮影する構成となっている。
【0024】
図1は、実施例1に係る放射線断層撮影装置の具体的構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る放射線撮影装置9は、被検体Mの乳房Bをz方向から導入させる開口部を備えた検出器リング12とを備えている。検出器リング12に設けられた開口部は、z方向に伸びた円筒形(正確には、正多角柱)となっている。したがって、検出器リング12自身もz方向に伸びている。なお、検出器リング12における放射線を検出する放射線検出器1が弧状に配列されて構成される貫通孔が被検体Mの薬剤分布をイメージングするときの撮影視野となっている。z方向は、検出器リング12の中心軸の伸びる方向に沿っている。検出器リング12は、放射線を検出する後述の放射線検出器が弧状に配列されて構成される。天板10,検出器リング12,および遮蔽プレート13は、支持台38に支持されている。
【0025】
天板10は、腹ばいの状態となった放射性薬剤投与後の被検体Mを載置する目的で設けられている。天板10には、被検体Mの乳房Bを挿通する穴がz方向に貫通するように設けられており、乳房Bは、この穴を通じて乳房Bを検出器リング12の内部に導入される。検出器リング12の開口部は、鉛直上向きに設けられており、乳房Bは、この開口部に鉛直下向きの方向から導入されることになる。検出器リング12が有する貫通孔のうち被検体Mの乳房Bを挿入する側の開口は、鉛直上向きに配向している。
【0026】
遮蔽プレート13は、タングステンや鉛等で構成される(図1参照)。放射性薬剤は、被検体Mの乳房B以外の部分にも存在するので、そこからも消滅γ線ペアが発生している。この様な関心部位以外から発生する消滅γ線ペアが検出器リング12に入射すると、断層画像撮影の邪魔となる。そこで、検出器リング12のz方向における被検体Mに近い側の一端を覆うようにリング状でγ線を吸収する遮蔽プレート13が設けられているのである。遮蔽プレート13は、天板10と検出器リング12とに挟まれる位置に配置されている。
【0027】
検出器リング12の構成について説明する。検出器リング12は、例えば10個の放射線検出器1がz方向(中心軸方向)に垂直な平面上の仮想円に配列されることで、1つの単位リング12aが形成される。この単位リング12aがz方向に例えば3個配列されて検出器リング12が構成される(具体的には、図2参照)。検出器リング12は、放射線検出器1が弧状に配列されて構成され、被検体内より生じる消滅γ線のペアを検出する。
【0028】
<放射線撮影装置の全体構成>
本発明の検出器リング12を構成する放射線検出器1は、図3に示すようにシンチレータ結晶cが縦横に配列されて構成されたシンチレータ2と、シンチレータ2の下面に設けられているシンチレータ2から生じた蛍光を検出する光検出器3と、シンチレータ2と光検出器3とよって挟まれる位置に配置されるライトガイド4とを備えている。ライトガイド4は、シンチレータ2で生じた蛍光を光検出器3に通過させる目的で設けられている。図3におけるシンチレータ2には、シンチレータ結晶cが縦8×横8の二次元マトリックス状に配列されており、合計64個のシンチレータ結晶cを備えている。
【0029】
図4左側は、本発明の最も特徴的な構成であるシンチレータ2の構成について説明している。すなわち、シンチレータ2は、シンチレータ結晶cが縦2×横2の二次元マトリックス状に配列されたサブブロックSから構成されている(図4左側においては太枠で表示)。したがって、シンチレータ2には、サブブロックSが縦4×横4の二次元マトリックス状に配列されており、合計16個のサブブロックSを備えている。
【0030】
図4中央は、シンチレータ2を構成するサブブロックSの一つを図示している。サブブロックSは、同一形状のシンチレータ結晶cが4本配列された構成となっている。これらシンチレータ結晶cは、セリウム元素を含有するGSO(GdSiO)で構成されており、γ線が入射すると、蛍光を発するような特性を有している。GSOに代えてシンチレータ結晶cをLGSO(Lu,Gd)SiOで構成するようにしてもよい。
【0031】
図4右側は、互いのサブブロックSを光学的に分離する反射材rについて説明している。サブブロックSの4側面には、蛍光を反射する反射材rが設けらており、サブブロックS内で生じた蛍光が隣のサブブロックSに逃げ出したり、シンチレータ2の側面から逃げ出したりするのを防止している。サブブロックSのライトガイド4に結合する下面および、下面に対向する上面には反射材rは設けられていない。
【0032】
シンチレータ2を構成するサブブロックSは、放射線を蛍光に変換するときの特性である発光特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶cが縦横に配列されて構成される。すなわち、サブブロックSは、蛍光の減衰特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶cにより構成されており、より具体的には、セリウム元素の含有量が互いに異なる4本のシンチレータ結晶cにより構成されている。この構成の詳細は後述する。
【0033】
光検出器3は、シンチレータ2で生じた蛍光を検出して検出データDを出力する構成となっている。この検出データDは、蛍光の継時的変化を表したものであり、光検出器3からリアルタイムに出力される。また、光検出器3は、縦横に伸びた矩形の検出面を有している。光検出器3は、蛍光を検出した際に検出面における蛍光の二次元的な分布を検出することができる。したがって、光検出器3が出力する検出データDは、検出面における蛍光の二次元的な分布が継時的に変わる様子を示したデータとなっている。なお、光検出器3は、装置に付属のクロック19より送出される時間信号に基づいて現時刻を把握する構成となっている。
【0034】
<ブロック特定部5の動作>
光検出器3が検出した検出データDは、ブロック特定部5に送出される。このブロック特定部5は、光検出器3が検出した蛍光の空間的な広がりに基づいて蛍光がシンチレータ2を構成するサブブロックSのいずれから生じたものかを特定する。すなわち、ブロック特定部5は、図5に示すように、検出面における蛍光の二次元的な分布を示す検出データDに基づいて蛍光がシンチレータ2構成するサブブロックSのうちのどれから発したものであるかを特定する。なお、ブロック特定部5は、継時的に出力される検出データDの積算値を用いて、単一の蛍光についてサブブロックSの特定を行う。図5では、蛍光を発したサブブロックSは、S23であるものと特定されている。ブロック特定部5は、放射線検出器1の一部としてもよいし、放射線撮影装置の一部としてもよい。ブロック特定部5は、本発明のブロック特定手段に相当する。
【0035】
図4右側に示すようにサブブロックS同士は、反射材rによって光学的に分離されている。このようにすると、蛍光が光検出器3の検出面に到達する位置は、生じたサブブロックSによって大きく変化するようになる。従って、ブロック特定部5は、蛍光の発生したサブブロックSを隣のサブブロックSと取り違えることがなく、蛍光が生じたサブブロックSを確実に特定することができる。
【0036】
<結晶特定部6の動作>
特定されたサブブロックSを示すサブブロック特定データDsは、結晶特定部6に送出される。この結晶特定部6は、光検出器3が検出した発光特性に基づいて、蛍光の発光位置として特定されたサブブロックSのうちいずれのシンチレータ結晶cが蛍光を生じたのかを特定する。すなわち、結晶特定部6は、特定されたサブブロックSを構成する4つのシンチレータ結晶cのどれが蛍光を発したのかを特定する。結晶特定部6は、放射線検出器1の一部としてもよいし、放射線撮影装置の一部としてもよい。結晶特定部6は、本発明の結晶特定手段に相当する。
【0037】
結晶特定部6が行う結晶の特定に利用されるのがサブブロックSを構成する4つのシンチレータ結晶cにドープされているセリウム元素の含有量が互いに異なることである。この構成は、本発明の最も特徴的な構成となっている。
【0038】
セリウム元素の含有量に変化を与えたことにより、シンチレータ結晶cの区別が可能となる。図6の実線で示すタイムコースは、結晶で生じる蛍光の強度の継時的推移を示している。結晶で蛍光が生じると、蛍光強度は速やかに最高となり、そこから次第に減衰する。したがって、結晶で生じた蛍光が完全に消滅するにはしばらくの時間が必要である。
【0039】
図6に示したタイムコースは、シンチレータ結晶cに含まれるセリウム元素の含有量が変わると変化する。例えば、図6の実線で示すシンチレータ結晶cにおけるセリウム元素の濃度を3段階変化させて新たな3種類のシンチレータ結晶cを準備したとする。これらについての蛍光の特性を示すタイムコースを図6に書き足すと、図6の破線のようになる。つまり、互いのシンチレータ結晶cが有する蛍光の減衰特性はすべて違う。さらに、いずれの特性も実線で示す元のシンチレータ結晶cのものとも同一とならない。このように、セリウム元素の含有量を調整すれば蛍光が減衰する様子に変化をつけられるわけである。
【0040】
このような蛍光の減衰の相違に基づいてシンチレータ結晶cを区別することができる。この区別を実際に行うのが結晶特定部6である。結晶特定部6には、光検出器3より検出データがリアルタイムに送出されている。この検出データは、蛍光の強度変化を継時的に表したものでもある。結晶特定部6は、検出データDに基づいて蛍光が極大となる前であって所定の閾値に達する時点から所定の時間が経過した時の蛍光の強度を取得する。この時の蛍光の強度は、セリウム元素の含有量で決まる4種類のうちのどれかとなる。つまり、蛍光の強度を実測すれば蛍光を発したシンチレータ結晶cにおけるセリウム元素の含有量が分かるわけである。サブブロックSの中では、セリウム元素の含有量が同じシンチレータ結晶cはないことからすると、結晶特定部6は、実測された蛍光強度によりこの蛍光を発したシンチレータ結晶cが特定できる。図7は、以上説明した原理に基づいて結晶特定部6がシンチレータ結晶cを特定している様子を表している。図7では、蛍光を発したシンチレータ結晶cは、c(S23,1)であるものと特定されている。図5図7とを比較すると、結晶特定部6の動作により、ブロック特定部5では知りえない蛍光発生に係るシンチレータ結晶cの位置が特定されたことが分かる。
【0041】
<同時計数部20の動作>
同時計数部20(図1参照)には、検出器リング12から出力された検出データが送られてきている。検出器リング12に同時に入射した2つの放射線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線のペアである。同時計数部20は、検出器リング12を構成するシンチレータ結晶cのうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線のペアが検出された回数をカウントし、この結果を補正部21に送出する。なお、同時計数部20による検出データの同時性の判断は、装置に付属のクロック19によって検出データに付与された時刻情報が用いられる。この補正部21は、後述するように2つのサブブロックSからなるサブブロックペアの間で異なる放射線の検出感度のバラつきを補正するノーマライズ補正を検出器リング12が出力する検出データに対して施す。補正部21は、本発明の補正手段に相当する。
【0042】
<補正の必要性>
上述した同時計数データは、図1に示すように、消滅γ線のペアを放射する放射性薬剤を投与した被検体Mを検出器リング12に導入して、被検体Mから生じる消滅γ線のペアを検出することで得られるものである。したがって、この同時計数データは、被検体Mの放射性薬剤分布を示す断層画像Pの生成の元になるデータとなっている。とはいえ、同時計数データをそのまま用いて断層画像Pを生成しても、放射性分布を正確に知ることはできない。画像化処理前に同時計数データを補正する必要があるのである。
【0043】
このとき必要となる補正は、ノーマライズ補正というものである。ノーマライズ補正とは、端的に言えば、検出器リング12の部分によってバラついている放射線の検出特性に起因する同時計数データの乱れを補正するものである。検出器リング12には、数多くのシンチレータ結晶cが備わっている。ライトガイド4による光の広げ方の違いや光検出器3の増倍率のムラなどを含めて、これらシンチレータ結晶cがγ線を検出するときの感度はシンチレータ結晶cによって違っている。同時計数データは、このような感度のバラつきを無視し、シンチレータ結晶cは、同じ感度であるものという前提でのデータである。したがって、同時計数データをノーマライズ補正して、シンチレータ結晶cが有する検出感度のバラつきの影響を断層画像Pに出現させないようにする必要がある。
【0044】
一般的な放射線撮影装置におけるノーマライズ補正は、単に検出素子同士の検出感度のバラつきを測定することで実現できる。ということは、実施例1の装置においても、シンチレータ結晶c同士で蛍光の検出感度がどの程度バラついているかを実際に測定しさえすれば、ノーマライズ補正が実現できるようにも思われる。
【0045】
しかしながら、実施例1のようなPET装置におけるノーマライズ補正は、より複雑である。すなわち、同時計数データは、消滅γ線のペアが入射した回数がシンチレータ結晶cのうちの2つの組み合わせ毎にカウントされたデータセットである。したがって、ノーマライズ補正もシンチレータ結晶cの組み合わせごとに行わなければならない。ノーマライズ補正を行う時に同時計数データに乗じられる補正値は、消滅γ線のペアごとに用意しなければならない。
【0046】
ノーマライズ補正の補正値は、被検体Mの撮影の前にあらかじめ用意しておく必要がある。このような補正値を得るには、検出器リング12の開口に消滅γ線のペアを放射するファントムを置いて実際に同時計数を行い、カウント数のバラつきを知る必要がある。従ってカウント数は、シンチレータ結晶cのペアごとに取得しなければならない。図8は、従来的な補正値の取得時において、カウント数が取得されるシンチレータ結晶cのペアのうちの一つを示している。
【0047】
PET装置の空間分解能を向上させるには、放射線検出器1のシンチレータ2をより細かなシンチレータ結晶cで構成する必要がある。シンチレータ結晶cを小さくするということは、それだけシンチレータ2を構成するシンチレータ結晶cの個数が増えるということでもある。シンチレータ結晶cの個数が増えた状態において補正値を取得しようとして消滅γ線のペアの計数を行おうとすると、補正値の取得に必要なカウント数がなかなか集まらない。シンチレータ結晶cの個数の増加に伴い、シンチレータ結晶cの組み合わせが増えたからである。
【0048】
この事情について説明する。例えば、装置全体でシンチレータ結晶cの組み合わせが1,000通りあったとする。補正値を算出するのには、シンチレータ結晶cの組み合わせ1つにつき1,000回程度のカウント数が必要だとする。このぐらいカウント数がないと、検出時のノイズ成分の影響を受けて十分に信頼性の高い補正値を得ることができない。したがって、信頼性が十分な補正値を算出するには、装置全体で約1×10回だけの消滅γ線のペアのカウントが必要である。
【0049】
ここで、PET装置の空間分解能を向上させようとして、放射線検出器1が有するシンチレータ結晶cの個数を増やすとシンチレータ結晶cの組み合わせはすぐに1,000通りを超えてしまう。すると補正値の取得には、約1×10回のカウントでは不十分になってしまう。シンチレータ結晶cを増やすと補正値の算出により多くのカウントが必要となるわけである。カウントを増やすには、ファントムの放射線検出の時間を長くする必要がある。
【0050】
シンチレータ結晶cの組み合わせの増え方は、シンチレータ結晶cの個数が倍になると倍に増えるというようなものではない。シンチレータ結晶cわずかでも増えると、組み合わせは比較にならないほど増加するのである。したがって、PET装置の空間分解能を向上させようとすると、ノーマライズ補正の補正値の取得作業が難しくなる。シンチレータ結晶cの組み合わせが増え過ぎてノーマライズ補正の補正値の取得に現実離れした長い時間が必要になるからである。このように、装置に取り付けられるシンチレータ結晶c個数を増やすそうとするとノーマライズ補正が限界となる。
【0051】
<ノーマライズ補正に用いる補正値の取得方法>
本発明に係る放射線撮影装置9は、この様な事情を鑑みて、装置を構成するシンチレータ結晶cが増えても、補正値の算出に必要なファントムの放射線検出の時間が長くならないように工夫がされている。すなわち、本発明の係る補正値は、図9に示すように、サブブロックSの組み合わせ(サブブロックペア)単位に算出されるのである。つまり、本発明によれば消滅γ線の検出のバラつきをサブブロックペアごとに実測し、このバラつきをキャンセルするような補正値が算出される。この2つのサブブロックペアにはシンチレータ結晶cが4本ずつ属している。従って、サブブロックペアに消滅γ線のペアが入射したとすると、入射する結晶の組み合わせが異なる16通りの場合がある。従来の考え方によれば、この16通りの全てについて個別に消滅γ線のペアのカウントを行う。これに比べて本発明の考え方によれば、これら16通りの場合を1つにまとめてカウントを実行する。この例からも、本発明の補正値の取得法によれば、消滅γ線のペアの検出に係る時間が短くて済むことが明らかである。
【0052】
したがって、本発明の装置において、補正値を算出する目的でファントムから照射される消滅γ線を検出する際に、同時計数部20は、ブロック特定部5のサブブロック特定データDsに基づいて消滅γ線の検出回数をサブブロックペアごとに計数する。得られた同時計数データは、サブブロックS単位となっており、補正値は、この同時計数データに基づいてサブブロックペア間で見られる検出のバラつきをキャンセルすることができるように算出される。したがって、補正値は、サブブロックペアごとに算出されることになる。サブブロックペアごとに算出された補正値をまとめて補正データと呼ぶことにする。
【0053】
<補正部21の動作>
補正部21は、ノーマライズ補正を実際に行う目的で設けられている。補正部21には同時計数部20より同時計数に係るカウント数を表したデータ(同時計数データ)を受信する。このとき受信される同時計数データは、補正の対象となるデータであり、消滅γ線のペアを放射する放射性薬剤を投与した被検体Mについての検出結果である。このときの同時計数データは、結晶特定部6により、シンチレータ結晶単位で蛍光の発生位置を表した検出データに同時計数を行ったものとなっている。当該同時計数データは、ファントムについての検出結果ではないことには注意すべきである。
【0054】
補正部21は、同時計数データにノーマライズ補正の補正値を乗じることで同時計数データの補正を実行する。この時の補正の方法としては、サブブロックペアごとに実行される。同時計数データの上では、シンチレータ結晶cの組み合わせごとに個別に同時計数のカウントがなされている。ノーマライズ補正においては、属するサブブロックペアが同じならば異なるシンチレータ結晶cの組み合わせであっても当該サブブロックペアに対応した補正値が乗じられる。補正データは補正値とサブブロックペアを示すデータとが対応づけられたものとなっている。
【0055】
<画像生成部22の動作>
ノーマライズ補正がなされた同時計数データは、画像生成部22に送出される。画像生成部22は、補正後の同時計数データを基に被検体内の放射性薬剤の分布がイメージングされた断層画像Pを生成する。断層画像Pの解像度は、同時計数データが持っている空間分解能に依存する。すなわち、同時計数データがより詳細な位置情報を持っていれば、断層画像Pの解像度も高くなるのである。本発明の同時計数データは、シンチレータ結晶単位を検出素子として得られたものなので、断層画像Pの解像度は高いものとなる。
【0056】
図10は、本発明の装置の全体的な動作を表している。図10に示すように、ノーマライズ補正データの取得時における蛍光の発生位置の特定は、サブブロックS単位に止めている。このように構成することで、算出すべき補正値の点数を少なくすることがで、短い時間でノーマライズ補正データの取得を完了することができる。一方、被検体Mの断層画像生成時における蛍光の発生位置の特定は、サブブロックS単位のみならずシンチレータ結晶単位まで詳細に行っている。このように構成することで、被検体Mの断層画像Pの解像度を高めることができるので装置の空間分解能を向上させることができる。
【0057】
<補正データ取得時と断層画像撮影時で空間分解能を変えてよい理由>
続いて、補正データ取得時と断層画像撮影時で空間分解能を変えてよい理由について説明する。シンチレータ結晶cの個数が増えるとノーマライズ補正データの取得の時と同じように断層画像Pの撮影も時間がかかってしまうことは考えられないだろうか。
【0058】
しかし本発明の場合はそうならない。被検体Mに係る消滅γ線のペアの検出をするときには、シンチレータ結晶cの個数の増加がノーマライズ補正精度の劣化を起こさない為、問題とならないからである。なぜなら、ノーマライズ補正を適用する単位はサブブロックS単位であるからであり、ノーマライズ補正精度はサブブロックS単位内でのシンチレータ結晶cの個数がどう増加しようと、なんら違いが無いからである。被検体Mの断層画像Pを取得するのに例えば消滅γ線のペアの検出が約1×106回のカウントが必要だとする。被検体Mの断層画像Pを取得する場合、シンチレータ結晶cの個数が増えたからといって必要なカウント数に変化はない。シンチレータ結晶cの個数が増えたとしても、約1×106回のカウントさえ得られれば断層画像P生成できるからである。それどころか、シンチレータ結晶cの個数を増やしたことにより断層画像Pにおける放射性薬剤の分布がより詳細になる。つまり、断層画像Pの解像度が改善される。
【0059】
これに比べて、ノーマライズ補正データを取得するときには、シンチレータ結晶cのペア同士で放射線の検出特性の差異を比較することが要求される。したがって、信頼性の高いノーマライズ補正データを得るには「ペア1つ当たり」所定のカウント(上述の例では約1,000カウント)が必要になるのである。従って、シンチレータ結晶cのペアの増加に比例して必要なカウント数が増えてしまう。
【0060】
本発明は、この点に着目し、被検体Mの断層画像Pの取得時とノーマライズ補正データの取得時とで空間分解能を変化させる構成を採用している。すなわち、被検体Mの断層画像Pの取得時には、放射線を検出する検出素子を増やしても問題はないので、被検体内の放射性薬剤の分布を高い空間分解能(シンチレータ結晶cに基づく空間分解能)でイメージングする。一方、ノーマライズ補正データの取得時には、検出素子を増やせないので、ファントムの放射性薬剤の検出を低い空間分解能(サブブロックSに基づく空間分解能)で実行するようにしているのである。
【0061】
なお、放射線撮影装置9は、各部を統括的に制御する主制御部41を備えている。この主制御部41は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部20,21,22を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓35は、術者が行う各種指示を入力させる目的で設けられている。表示部36は、画像生成部22が生成した断層画像Pを表示する目的で設けられている。記憶部37は、補正データなど装置の動作に必要なデータの一切を記憶する。
【0062】
以上のように、本発明の放射線撮影装置9は、放射線検出器1の構造を見直すことにより空間分解能が高いものとなっている。すなわち、本発明に係る放射線検出器1は、光検出器3が検出した蛍光の空間的な広がりに基づく蛍光の発生位置の弁別はサブブロックS単位についてしか行わない。このサブブロックSは、発光特性が互いに異なる複数のシンチレータ結晶cにより構成されている。従って、サブブロックSが蛍光を発するときは、これらシンチレータ結晶cのいずれかが実際には蛍光を生じたということになる。
【0063】
本発明の構成によれば、蛍光を発したサブロックのうち実際に発光したシンチレータ結晶cはどれなのかを特定するのに発光特性の違いを利用している。サブブロックSを構成するシンチレータ結晶cは互いに近接した位置にあるので、それぞれから発する蛍光の広がり方はかなり似ていて区別しづらい。本発明によれば、蛍光の発光特性の違いにより蛍光の空間的な広がり方が互いに似通ったシンチレータ結晶cを区別できるようになっている。従って、本発明に係る放射線検出器1を備えた放射線撮影装置9の空間分解能は高いものとなる。
【0064】
また、本発明の構成ではシンチレータ結晶cの個数を増やしても、情報処理に負荷がかからない。シンチレータ結晶cを増やすとそれだけシンチレータ結晶cを区別するための番地が増えてしまうのが従来の常識である。本発明によれば、サブブロックSを区別するための番地にシンチレータ結晶cを区別する情報を付加するだけで検出データの保持が実現できる。
【0065】
本発明に係る放射線検出器1は、PET装置に好適である。ノーマライズ補正は、本来はシンチレータ結晶cの組み合わせごとに補正値を求めなければならない。PET装置を構成するシンチレータ結晶cの個数が増えると、シンチレータ結晶cの組み合わせが増えるので補正値の算出が難しくなる。本発明によれば、サブブロックペアごとに補正値を求めるようにしているので、この様な問題が生じない。
【0066】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施することができる。
【0067】
(1)上述の構成では、PET装置を例にとって説明していたが、本発明は、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等その他の放射線撮影装置に適用することができる。また、本発明は、全身撮影用のPET装置に適用することもできる。
【0068】
(2)上述のサブブロックSは、縦2×横2に配列された4本のシンチレータ結晶cから構成されていたが、本発明はこの構成に限られない。サブブロックSを構成するシンチレータ結晶cの本数および配列の仕方は、自由に選択することができる。
【0069】
(3)上述のシンチレータ2は、縦4×横4に配列されたサブブロックSから構成されていたが、本発明はこの構成に限られない。シンチレータ2を構成するサブブロックSの本数および配列の仕方は、自由に選択することができる。
【符号の説明】
【0070】
c シンチレータ結晶
S サブブロック
3 光検出器
5 ブロック特定部(ブロック特定手段)
6 結晶特定部(結晶特定手段)
12 検出器リング
21 補正部(補正手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12