特許第6344534号(P6344534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6344534
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】水産生物成長促進剤
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/80 20160101AFI20180611BHJP
   A23K 10/37 20160101ALI20180611BHJP
【FI】
   A23K50/80
   A23K10/37
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-559133(P2017-559133)
(86)(22)【出願日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】JP2017038642
【審査請求日】2018年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-210701(P2016-210701)
(32)【優先日】2016年10月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舩田 茂行
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏征
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝成
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−174779(JP,A)
【文献】 特開2016−174588(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0034344(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0337030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 − 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV検出器を用いたGPC分子量分析において、波長254nmにおける分子量ピークを、分子量4,000〜9,500の範囲に有する低分子リグニンおよび/または分子量10,000〜40,000の範囲に有する高分子リグニンを有効成分とする、水産生物成長促進剤。
【請求項2】
前記低分子リグニンおよび/または高分子リグニンがバガスのアルカリ熱水抽出物由来である、請求項1に記載の水産生物成長促進剤。
【請求項3】
甲殻類の脱皮を促進する、請求項1または2に記載の水産生物成長促進剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水産生物成長促進剤を含む、水産生物成長促進用飼料。
【請求項5】
前記低分子リグニンおよび/または高分子リグニンを、ポリフェノール量としてカテキン換算0.007重量%以上含む、請求項4に記載の水産生物成長促進用飼料。
【請求項6】
請求項1または2に記載の水産生物成長促進剤を水産生物に投与して、水産生物の成長を促進する方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載の水産生物成長促進用飼料を水産生物に給餌して、水産生物の成長を促進する方法。
【請求項8】
前記水産生物が甲殻類である、請求項6または7に記載の水産生物の成長を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水産生物の成長を促進する剤、およびそれを用いた水産生物の成長促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜用の飼料に、従来廃棄されていた植物資源を有効利用する検討が行われており、例えば、木質系バイオマスはリグニンを除去することによって、家畜の飼料として有効活用されている(特許文献1)。また、飼料に様々な植物資源由来の化学物質を添加して、水産生物の肉質や成長を向上させる検討も行われており、例えば、ビタミンEやビタミンCを魚類の飼料に添加すると魚肉の褐変や脂質酸化の抑制に効果があることが古くから知られているが、最近では、エノキタケ廃菌床抽出物(非特許文献1)や、柚子の皮(非特許文献2)でも同様の効果が得られることが明らかになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−231752号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Huynh N.D. Baoら、Aquaculture 295, 243−249 (2009)
【非特許文献2】Fukadaら、Journal of aquatic food product technology 23, 5, 511−521 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水産生物の成長促進を目的とした植物由来の安全な飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、UV検出器を用いたGPC分子量分析において、波長254nmにおける分子量ピークを、分子量4,000〜9,500の範囲に有する低分子リグニンおよび/または分子量10,000〜40,000の範囲に有する高分子リグニンが、水産生物の成長を促進することを発見し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[3]の構成を有する。
[1]UV検出器を用いたGPC分子量分析において、波長254nmにおける分子量ピークを、分子量4,000〜9,500の範囲に有する低分子リグニンおよび/または分子量10,000〜40,000の範囲に有する高分子リグニンを有効成分とする、水産生物成長促進剤。
[2]前記低分子リグニンおよび/または高分子リグニンがバガスのアルカリ熱水抽出物由来である、[1]に記載の水産生物成長促進剤。
[3]甲殻類の脱皮を促進する、[1]または[2]に記載の水産生物成長促進剤。
[4]前記水産生物成長促進剤を含む、水産生物成長促進用飼料。
[5]前記低分子リグニンおよび/または高分子リグニンを、ポリフェノール量としてカテキン換算0.007重量%以上含む、[4]に記載の水産生物成長促進用飼料。
[6]前記水産生物成長促進剤を水産生物に投与して、水産生物の成長を促進する方法。
〔7〕前記水産生物成長促進用飼料を水産生物に給餌して、水産生物の成長を促進する方法。
[8]前記水産生物が甲殻類である、〔6〕または〔7〕に記載の水産生物の成長を促進する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、これまで水産生物用飼料として活用されてこなかったバガスのアルカリ抽出物を有効成分とし、水産生物の成長促進効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バガスアルカリ熱水抽出液のGPC分子量分析結果具体例
図2】低分子リグニンのGPC分子量分析結果具体例
図3】高分子リグニンのGPC分子量分析結果具体例
図4】バガス水熱処理液のGPC分子量分析結果具体例
図5】リグノスルホン酸液のGPC分子量分析結果具体例
図6】アルカリ水熱処理液のGPC分子量分析結果具体例
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態に関し、詳細に説明する。
【0011】
リグニンは植物由来の高分子フェノール性化合物である。リグニンは、複雑かつ多様な構造を有しているため、詳細な構造は明らかになっていない。また、バイオマスの種類、抽出方法、分析方法によって分子量が異なるが、報告されている一般的な数平均分子量は、2400〜9700である(Biofuels Bioproducts & Biorefinering, Volume8, Issue6, 836−856(2014))。
【0012】
本発明の水産生物成長促進剤は、波長254nmにおけるGPC分子量分析において、分子量4,000〜9,500の範囲に分子量ピークを有する低分子リグニンおよび/または、分子量10,000〜40,000の範囲に分子量ピークを有する高分子リグニンを有効成分とする。
【0013】
本発明で用いる低分子リグニンが有する分子量ピークの好ましい分子量の範囲は、4,500〜9,400であり、さらに好ましくは5,000〜9,300である。
【0014】
本発明で用いる高分子リグニンが有する分子量ピークの好ましい分子量の範囲は、10,200〜37,000であり、さらに好ましくは11,000〜35,000である。
【0015】
また、リグニンの分子量は、数平均分子量でも判断することができる。本発明で用いる低分子リグニンの好ましい平均分子量は、UV検出器を用いたGPC分子量分析における数平均分子量として3,500以上6,000以下であり、より好ましくは3,600以上5,000以下である。本発明で用いる高分子リグニンの好ましい平均分子量は、UV検出器を用いたGPC分子量分析における数平均分子量として10,000以上20,000以下であり、より好ましくは10,000以上15,000以下である。本発明で用いる低分子リグニンおよび高分子リグニンが両方含まれるリグニンの好ましい数平均分子量は、UV検出器を用いたGPC分子量分析における数平均分子量として4,000以上15,000以下であり、よりに好ましくは、6,000以上10,000以下である。
【0016】
また、本発明で用いる低分子リグニンおよび高分子リグニンには、上記の分子量範囲内であれば分子量ピークは複数あってもよい。さらに、上記の分子量範囲外に分子量ピークを有していてもよいが、その場合は、波長254nmにおける分子量ピークのうち、最大の高さを持つピークが、本発明で用いる低分子リグニンであれば分子量4,000〜9,500、本発明で用いる高分子リグニンであれば、分子量10,000〜40,000の範囲内であることが好ましい。
【0017】
本発明で用いる低分子リグニンおよび本発明で用いる高分子リグニンを両方含んでいる場合の、UV検出器を用いたGPC分子量分析の具体例を図1に示す。また、本発明で用いる低分子リグニンの具体例を図2、本発明で用いる高分子リグニンの具体例を図3に示す。
【0018】
以降、本明細書中では、本発明で用いる低分子リグニンを本発明の低分子リグニン、本発明で用いる高分子リグニンを本発明の高分子リグニンと記載する。
【0019】
GPCは、Gel Permeation chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィーの略であり、測定試料中の化合物を、分子サイズごとに分離することができる。また、分離したポリマーの相対量を検出器により検出することで、分子量も計算することができる。GPC分子量分析では、標準ポリマーを用いて溶出時間と分子量との関係を予め求め、これに基づいて測定試料の分子量を換算する。本発明の低分子リグニンと本発明の高分子リグニンの分子量は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイドを標準ポリマーとして用いて測定した値である。
【0020】
GPC分子量分析の検出器はリグニンの吸収波長領域である250〜300nmを検出できる検出器を利用することができる。本発明では、GPC分子量分析時に低分子芳香族であるクマル酸、フェルラ酸等の桂皮酸類の影響を除くために桂皮酸類の吸収を持たない254nmで分析した値を用いている。本発明の低分子リグニンと本発明の高分子リグニンは、株式会社島津製作所製の多波長紫外−可視吸収検出器(SPD−M20A)で検出した値である。GPC分子量分析では、以下の式1より数平均分子量を算出することができる。
【0021】
Mn=Σ(Mi・Ni)/Σ(Ni)=ΣCi/Σ(Ci/Mi)・・・式(1)。
ここでMnは数平均分子量、Mは分子量、Nはポリマーの数、Cは試料濃度を示す。
【0022】
GPC分子量分子量分析に用いるカラムとしては、特に制限はないが、本願発明の分子量はTSKgelGMPWXLとG2500PWXLを使用して測定した値である。
【0023】
本発明の低分子リグニン、および/または、本発明の高分子リグニンの原料となる植物としては、マツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹、ユーカリ、アカシアなどの広葉樹、さとうきびの搾りかすであるバガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、稲わら、麦わらなどの草本系バイオマス、さらに藻類、海草など水生環境由来のバイオマス、コーン外皮、小麦外皮、大豆外皮、籾殻などの穀物外皮バイオマスなどを用いることができる。好ましくはバガスである。
【0024】
前記植物から本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンを抽出する方法としては、有機溶媒(エタノール、酢酸エチル等)による抽出、酸抽出、アルカリ抽出、水熱抽出、アルカリ水熱抽出またはアルカリ熱水抽出等があり、好ましくはアルカリ抽出またはアルカリ熱水抽出であり、さらに好ましくは、アルカリ熱水抽出である。
【0025】
アルカリ抽出、アルカリ水熱抽出またはアルカリ熱水抽出に用いるアルカリ化合物は特に制限されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニアなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであり、さらに好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0026】
アルカリ熱水抽出の条件は、pH10〜13.5、温度80℃〜120℃、処理時間0.5時間以上が好ましく、pH10.5〜13.0、温度90℃〜120℃、処理時間1時間以上反応させることがより好ましい。アルカリ濃度の上限は、本発明の低分子リグニンと本発明の高分子リグニンを得られれば特に制限はないが、バイオマスに対してアルカリ濃度が高すぎる場合は最終的に添加する飼料のpHに影響し、水産生物の飼料への嗜好性や生育環境の変化を伴うため、4(wt/wt)%以下が好ましい。
【0027】
水熱処理は、加圧熱水(180〜240℃)で処理しリグニンを抽出する方法である。
【0028】
アルカリ水熱抽出は、アルカリ熱水抽出のpH条件において、加圧熱水(180〜240℃)で処理しリグニンを抽出する方法である。
【0029】
アルカリ熱水抽出方法の具体例としては、例えばバガス5(wt/wt)%(乾燥重量)濃度の溶液に対し、90℃、0.45(wt/wt)%の水酸化ナトリウム水溶液で2時間反応させることによって本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンを抽出することができる。上記の乾燥重量とはバガスを105℃で重量が一定になるまで乾燥させた後の重量である。
【0030】
本発明の低分子リグニンと本発明の高分子リグニンを分離したい場合には、pH5以下に中和して固液分離することで、液体画分に本発明の低分子リグニンを、固体画分に本発明の高分子リグニンを分離することができる。これは、pH5以下の条件で本発明の低分子リグニンは水に溶解するのに対し、本発明の高分子リグニンは水に溶解せず沈殿する特長を有しているためである。pH5以下の条件で不溶化した高分子リグニンはpHを再度pH5よりアルカリ側に、例えばpH8以上にすることで水に再溶解させることができる。
【0031】
本発明の水産生物成長促進剤の水産生物への投与の形態は、本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンを薬剤として有効量を水産生物に投与する形態であってよく、また、本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンを飼料に配合して水産生物成長促進用飼料として給餌する形態であってもよいが、水産生物成長促進用飼料の形態をとることが好ましい。
【0032】
本発明が水産生物成長促進用飼料である場合は、該飼料に本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンをポリフェノール量としてはカテキン換算0.007重量%以上含んでいることが好ましく、有量は、0.0128重量%以上含んでいることがより好ましく、0.14重量%以上含んでいることがさらに好ましい。ポリフェノール量の上限は成長促進効果が発揮されれば特に制限はないが、他の飼料成分の相対的な割合低下がほとんど影響のない程度である0.5重量%以下が好ましい。
【0033】
本発明でのカテキン換算のポリフェノール量はフォーリンチオカルト法によって算出した値である。フォーリンチオカルト法は、元来、チロシン、トリプトファン等の芳香族アミノ酸やこれらを有するたんぱく質の分析を目的に開発された方法である。フェノール性水酸基がアルカリ性でリンタングステン酸、モリブデン酸を還元して生ずる青色を700〜770nmで比色定量する方法である。没食子酸、カテキン等特定の基準物質で同様の操作を行い、その化合物換算で定量値を示すことができる。
【0034】
本発明の低分子リグニンおよび/または高分子リグニンを有効成分とする水産生物成長促進剤または、当該水産生物成長促進剤を含む飼料を水産生物に与えると、当該有効成分を含まない水産生物用飼料を与えた場合と比べて、水産生物の成長が促進される。ここでいう成長促進とは、水産生物の体重(生物内に水分を含んだ調理前の魚の重量)、体長が増加すること、あるいは甲殻類等での脱皮回数の増加、あるいは過密な養殖条件下における斃死率の低下(生残率の増加)である。
【0035】
本発明の水産生物成長促進用飼料の調製方法としては、本発明の有効成分を含む液体を通常の水産生物用飼料に噴霧したり、各種飼料原料の配合時に水などのバインダーと共に添加したりしても良い。また、本発明の有効成分を含む液体を濃縮したり、乾燥させたり、上記のように本発明の高分子リグニンのpHをpH5以下に調整して沈殿を生じさせたりして固体とし、通常の水産生物用飼料に混ぜ込んで与えたりすることもできる。また本発明の有効成分を通常の水産生物用飼料に噴霧したり、混ぜ込んだりした場合には、本発明の有効成分を飼料中に十分に保持させることを目的として、当該飼料の表面に疎水性の物質などでコーティングしても良い。コーティングに用いる疎水性物質としては、例えば脂肪酸を含む植物油、植物油を精製したサラダ油、動物性の油などが挙げられる。
【0036】
本発明の水産生物成長促進用飼料に含まれる水産成長促進剤以外の飼料原料としては、飼料に適用できるものであれば特に制限はないが、魚粉、オキアミミール、イカミール、エビミール、コペポーダ粉末、デンプン、魚介抽出物、レシチン、飼料用酵母、酵母抽出物、リン酸カルシウム、精製魚油、天然ベタイン、甘草末、スケトウダラ肝油、各種ビタミンなどがある。飼料の分析組成についても、粗タンパク、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、カルシウム、リンなどが水産生物の生育に著しく問題がない程度に十分量含有されていれば特に制限はない。
【0037】
また、有効成分以外の物質として、植物由来物質が含まれていてもよい。有効成分以外の物質としては例えば、植物由来のクマル酸、フェルラ酸等の桂皮酸類が挙げられる。その他の成分として飼料中に含まれる濃度としては、高濃度の場合は添加のためのコストがかかる事から、クマル酸0〜0.02重量%フェルラ酸0〜0.01重量%が好ましく、さらに好ましくはクマル酸0.0001〜0.01重量、フェルラ酸0.00001〜0.01重量%である。これらのクマル酸、フェルラ酸は精製したものでも良いし、粗抽出物の状態でも良い。
【0038】
また、飼料の保管中の酸化防止を目的とした抗酸化剤が含まれていても良い。具体的には、エトキシキン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0039】
水産生物への飼料の給餌方法としては、常法に則った給餌タイミング、給餌量であれば特に制限はないが、たとえば、1日〜1週間に1度給餌することができ、好ましくは、1日1〜3回、水産生物の体重の2〜5重量%にあたる飼料を、残餌量に合わせて調整して給与することがよい。
【0040】
成長促進の対象となる水産生物としては、海水、淡水で生活する生物であれば特に制限はないが、好ましくは魚類または甲殻類であり、より好ましくは甲殻類である。
【0041】
魚類の具体例としては、カクレクマノミ、スズキ、スズメダイ、マグロ、カツオなどのスズキ目、ウナギなどのウナギ目、チョウザメなどのチョウザメ目、ニシン、マイワシなどのニシン目、コイ、フナ、ドジョウなどのコイ目、ナマズなどのナマズ目、アユ、サケ、ニジマスなどのサケ目、キンメダイなどの棘鰭上目、スケトウダラなどのタラ目、オコゼ、アンコウなどのアンコウ目、アカエイなどのエイ目、カサゴ、ホウボウなどのカサゴ目、カレイ、ヒラメなどのカレイ目、カワハギ、フグなどのフグ目が挙げられ、さらに好ましくはスズキ目である。
【0042】
甲殻類の具体例としては、シリプトシャコ科、フトユビシャコ科、ハナシャコ科、トゲシャコ科、シャコ科、チヒロエビ科、クダヒゲエビ科、クルマエビ科、イシエビ科、サクラエビ科、ヒオドシエビ科、ヌマエビ科、オキエビ科、ミカワエビ科、テナガエビ科、テッポウエビ科、モエビ科、タラバエビ科、トゲヒラタエビ科、エビシャコ科、アメリカザリガニ科、ザリガニ科、アカザエビ科、オサテエビ科、センジュエビ科、イセエビ科、セミエビ科、アナエビ科、ヨシオリエビ科、カニダマシ科、タラバガニ科、サワガニ科、アサヒガニ科、コウナガカムリ科、カイカムリ科、ミズヒキガニ科、ホモラ科、ヘイケガニ科、カラッパ科、クモガニ科、ヤワラガニ科、ヒシガニ科、イチョウガニ科、コブシガニ科、クリガニ科、ヒゲガニ科、ガザミ科、オオエンコウガニ科、オウギガニ科、エンコウガニ科、スナガニ科、イワガニ科、カクレガニ科などが挙げられる。このうち、特に、イセエビ科のイセエビ、セミエビ科のウチワエビ、ゾウリエビ、セミエビ、クルマエビ科のブラックタイガー、ホワイトタイガー、クルマエビ、シバエビ、アカエビ、バナメイエビ、アシアカエビ、サクラエビ科のサクラエビ、タラバエビ科のアマエビ、ボタンエビ、アカザエビ科のアカザエビが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0044】
(参考例1)GPC分子量分析測定
GPC分子量分析は以下の条件で実施した。
検出器:多波長紫外−可視吸収検出器 UV(株式会社島津製作所製SPD−M20A、波長254nm)
カラム:TSKgelGMPWXL、G2500PWXL各1本(φ7.8mm×30cm、東ソー)
溶媒:アンモニア緩衝液(pH11)/メタノール(1/1=v/v)
流速:0.7mL/min
カラム温度:23℃
注入量:0.2mL
標準試料:東ソー株式会社製、Polymer Laboratories製単分散ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール。
【0045】
標準試料であらかじめ溶出時間と分子量の対数との関係を取得し、LogM(Mは分子量)あたりの重量分率dW/dlogM(Wは重量)で変換し、横軸を分子量の対数、縦軸をピーク面積が1になるようにプロットして解析した。
【0046】
(参考例2)ポリフェノール量の測定
適宜希釈した測定試料1.0mL、フェノール試液(ナカライテスク社)1.0mL、水5mLを25mLのメスフラスコに入れて5分間室温で放置し、これに7%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加える。更に水を加えて25mLとして混合し、2時間室温で放置する。反応液の一部を取り、φ0.45μmのPTFEフィルターでろ過し、750nmで吸光度を測定する(吸光度は0.6ABS以下となるようにサンプルを適宜希釈)。標準物質としてカテキン試薬(シグマ社、純度98%以上)を用い、カテキン換算値として算出した。
【0047】
(参考例3)芳香族化合物の測定
クマル酸、フェルラ酸等の芳香族化合物濃度の測定は以下の条件で実施した。
機器:日立高速液体クロマトグラムLaChrom Eite
カラム:Synergi 2.5μ Hydro−RP100A 100×3.00mm (Phenomenex)
移動相:0.1%リン酸:アセトニトリル=93:7から5:95までグラジェント
検出器:Diode Array
流速:0.6mL/min
温度:40℃。
【0048】
(試験例1)クルマエビの脱皮促進効果(本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニン)
[飼料の調製]
バガス1kg(台糖農産株式会社より購入、ベトナム製)を0.45wt%水酸化ナトリウム水溶液に乾燥重量で5wt%添加・混合し、90℃、2時間反応させ、6N塩酸を用いてpHを7に調整した後、ザルで固体を分離し、MF膜(商品名:トレフィルHFSタイプ、東レ社製)で濾過を行い、バガスアルカリ熱水抽出液を作製した。このアルカリ抽出液を参考例1に記載の方法でGPC分子量分析を行った。分析結果は図1に示すとおりで、分子量7,000にピークを有する本発明の低分子リグニン、および分子量21,000に分子量ピークを有する本発明の高分子リグニンを含有することを確認した。また、数平均分子量は8,900であった。更にこのバガスアルカリ抽出液を参考例2に従ってポリフェノール量を測定したところ、カテキン換算で0.2重量%であった。また、参考例3に記載の方法でクマル酸、フェルラ酸を測定したところ、クマル酸が0.08重量%、フェルラ酸が0.016重量%であり、同濃度のクマル酸、フェルラ酸のみ含有した液体のポリフェノール含量はカテキン換算で0.072重量%であった。このことから、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンのポリフェノール含量はカテキン換算で0.128重量%あることが分かる。このバガスアルカリ熱水抽出液(固形分2%、固形分あたりポリフェノール含量はカテキン換算10%)を溶質の重量ベースで配合飼料(ヒガシマル醤油株式会社製、ノーサン印くるまえび育成用配合飼料 H クルマエビ スーパーB)に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりポリフェノール含量はカテキン換算0.02%、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンのポリフェノール含量はカテキン換算0.0128重量%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面にコーティングした。作製した飼料を本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料として用いた。
【0049】
[成長促進効果の評価]
平均体重14.1g(標準偏差1.5)、平均全長143.1mm(標準偏差6.0)のクルマエビ24尾を1水槽あたり8尾(12.5尾/m)3水槽で本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料の水産生物成長促進効果を評価した。水槽底部には底砂をひき、海水は天然濾過海水を加温し、20〜25℃とし、換水率は3.8回/日とした。光条件は12時間明、12時間暗とし、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料を1回/日、消灯直後に給餌した。給餌量は開始時のエビ体重比3%で計量し、その後、試験開始9日目に同比4%、試験開始20日目に同比5%と摂餌状況に応じて段階的に給餌量をあげていった。30日間試験を実施し、その期間中の24尾の合計脱皮回数を計測した。結果を表1に示す。
【0050】
(試験例2)クルマエビの脱皮促進効果(本発明の低分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例1で作製したバガスアルカリ熱水抽出液を6N塩酸でpH5に中和し、本発明の高分子リグニンを沈殿させた。珪藻土を1%添加・混合後、フィルタープレス(薮田機械社株式会社製YTO型)を用いて固液分離を行い、本発明の低分子リグニン液をろ液側に、本発明の高分子リグニンを固形分側に分離した。得られたろ液を水酸化ナトリウム50%(wt/v)溶液でpH7に調整し本発明の低分子リグニン液を得た。この本発明の低分子リグニン液を参考例1に記載の方法でGPC分子量分析を行った。結果は図2に示すとおりで、分子量7,000にピークを有する本発明の低分子リグニンを含有することを確認した。また、GPC分子量分析結果から求められる数平均分子量は4,000であった。更にこの低分子リグニン液を参考例2に従ってポリフェノール量を測定したところ、カテキン換算で0.1%であった。また、参考例3に記載の方法でクマル酸、フェルラ酸を測定したところ、クマル酸が0.06重量%、フェルラ酸が0.012重量%であり、同濃度のクマル酸、フェルラ酸のみ含有した液体のポリフェノール含量はカテキン換算で0.05重量%であった。このことから、本発明の低分子リグニンはカテキン換算で0.05重量%あることが分かる。この低分子リグニン液(固形分1.5%、固形分あたりカテキン換算7%)を溶質の重量ベースで配合飼料(ヒガシマル醤油株式会社製、ノーサン印くるまえび育成用配合飼料 H クルマエビ スーパーB)に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.014%、本発明の低分子リグニンのポリフェノール含量はカテキン換算0.007重量%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。作製した飼料を本発明の低分子リグニンを含有する飼料として用いた。
【0051】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した飼料を用いる以外は試験例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0052】
(試験例3)クルマエビの脱皮促進効果(本発明の高分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例1で作製したバガスアルカリ熱水抽出液を6N塩酸でpH3に中和し、本発明の高分子リグニンを沈殿させた。濾過助剤として珪藻土を1%添加・混合後、フィルタープレス(薮田機械株式会社製YTO型)を用いて固液分離を行い、固体として珪藻土を含有した本発明の高分子リグニンを得た。珪藻土を含有した本発明の高分子リグニンを乾燥させ、固形分85%とした。この本発明の高分子リグニン(固形分あたりのポリフェノール量がカテキン換算で7%)を溶質の重量ベースで配合飼料(ヒガシマル醤油株式会社製、ノーサン印くるまえび育成用配合飼料 H クルマエビ スーパーB)に飼料乾燥重量あたり0.2%で混合した(飼料乾燥重量あたりポリフェノール含量はカテキン換算0.014%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。作製した飼料を本発明の高分子リグニンを含有する飼料として用いた。
【0053】
一方、飼料作製とは別に、本発明の高分子リグニンの分画分子量の測定を実施した。珪藻土含有不溶性本発明の高分子リグニンに対し、50%(wt/v)の水酸化ナトリウムを添加してpHを12に調整し、本発明の高分子リグニンを溶解した。この本発明の高分子リグニン液に6N塩酸でpH7に調整し、参考例1に記載の方法でGPC分子量分析を行った。結果を図3に示す。この分析結果から、得られたリグニンは、分子量21,000にピークを有する本発明の高分子リグニンであり、本発明の低分子リグニンは含有していないことを確認した。また、この分析結果から求められる数平均分子量は13,800であった。この時調整した本発明の高分子リグニン液を参考例2に従ってポリフェノール量を測定したところ、カテキン換算で0.1重量%であった。また、参考例3に記載の方法でクマル酸、フェルラ酸を測定したところ、クマル酸、フェルラ酸は検出されなかった。
【0054】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した飼料を用いる以外は試験例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0055】
(試験例4)クルマエビの脱皮促進効果(無添加)
[飼料の調製]
配合飼料(ヒガシマル醤油株式会社製、ノーサン印くるまえび育成用配合飼料 H クルマエビ スーパーB)に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させ、無添加飼料を作製した。
【0056】
[成長促進効果の評価]
本試験例での無添加飼料を用いる以外は試験例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0057】
(試験例5)クルマエビの脱皮促進効果(バガス水熱処理液)
[飼料の調製]
バガスを乾燥重量30%に調整し、高圧で180℃、10分水熱処理(高圧蒸煮処理)を行った。得られたバガス熱水処理液を、1N水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整した。バガス熱水処理液を参考例1に記載の方法でGPC分子量分析を行った結果を図4に示す。この分析結果から、バガスの熱水処理液は、ピーク高さが高い順に、分子量3,200、分子量6,000および分子量17,000に分子量ピークを有するリグニンを含んでいることがわかった。また、GPC分子量分析結果から求められる数平均分子量は2,870であった。バガス水熱処理液は、ピーク高さが最高となる有効成分は分子量4,000以下にピークをもち、このピーク高さが最高となる有効成分は本発明の低分子リグニン、本発明の高分子リグニンとは異なるものの、組成としては本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する。また、このバガス水熱処理液を参考例2に従ってポリフェノール量を測定したところ、カテキン換算で0.001%であった(固形分1.0%、固形分あたりのカテキン換算0.1%)。このバガス水熱処理液を溶質の重量ベースで配合飼料(ヒガシマル醤油株式会社製、ノーサン印くるまえび育成用配合飼料 H クルマエビ スーパーB)に飼料乾燥重量あたり0.2%で混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.0002%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。
【0058】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した飼料を用いる以外は試験例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す通り、試験例1〜3の本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンを含有する飼料を用いた場合、試験例4の無添加飼料を用いた場合と比べてクルマエビの脱皮回数が増加することが分かった。
【0061】
(試験例6)カクレクマノミの成長促進効果(本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例1で作製したバガスアルカリ熱水抽出液(固形分2%、固形分あたりカテキン換算10%)を溶質の重量ベースで配合飼料(Feed One社製、アンブローズ400)に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.02%、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンはカテキン換算0.0128重量%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。
【0062】
[成長促進効果の評価]
体長20±3mmのカクレクマノミを1水槽あたり10固体(10固体/20L)3水槽で本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料の水産生物成長促進効果を評価した。海水は天然濾過海水を加温し、約25℃とし、換水率は1日に50%換水とした。光条件は12時間明、12時間暗とし、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料を1回/日、消灯直後に給餌した。給餌量は開始時のカクレクマノミ体重比3%とした。7日間試験を実施し、試験終了後にカクレクマノミを回収し1個体当たりの平均体重を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
(試験例7)カクレクマノミの成長促進効果(本発明の低分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例2で作製した本発明の低分子リグニン液(固形分1.5%、固形分あたりカテキン換算7%)を溶質の重量ベースで配合飼料(Feed One社製、アンブローズ400)に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.014%、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンはカテキン換算0.007重量%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。
【0064】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した本発明の低分子リグニンを含有する飼料を用いる以外は試験例6と同様とした。結果を表2に示す。
【0065】
(試験例8)カクレクマノミの成長促進効果(本発明の高分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例3で作製した不溶性の本発明の高分子リグニン(固形分85%、固形分あたりカテキン換算7%)を溶質の重量ベースで配合飼料(Feed One社製、アンブローズ400)に飼料乾燥重量あたり0.2%で混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.014%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。
【0066】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した本発明の高分子リグニンを含有する飼料を用いる以外は試験例6と同様とした。結果を表2に示す。
【0067】
(試験例9)カクレクマノミの成長促進効果(無添加)
[飼料の調製]
配合飼料(Feed One社製、アンブローズ400)に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させ、無添加飼料を作製した。
【0068】
[成長促進効果の評価]
本試験例での無添加飼料を用いる以外は試験例6と同様とした。結果を表2に示す。
【0069】
(試験例10)カクレクマノミの成長促進効果(バガス水熱処理液)
[飼料の調製]
試験例5で作製したバガス熱水処理液(固形分1%、固形分あたりのカテキン換算0.1%)を溶質の重量ベースで配合飼料(Feed One社製、アンブローズ400)に飼料乾燥重量あたり0.2%で混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.0002%)。更に飼料重量の1%の油(日清オイリオ株式会社製、日清サラダ油)を飼料表面に浸漬させた。
【0070】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製したバガス水熱処理液含有する飼料を用いる以外は試験例6と同様とした。結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示す通り、試験例6〜8の本発明の低分子リグニンおよび/または本発明の高分子リグニンを含有する飼料を用いた場合、試験例9の無添加飼料を用いた場合と比べて、カクレクマノミの平均体重が増加することが分かった。
【0073】
(試験例11)クルマエビの成長促進効果(本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例1で調製したバガスアルカリ熱水抽出液(固形分2%、固形分あたりカテキン換算10%)を溶質の重量ベースで配合飼料(バイオ科学社製、エビコング)造粒時に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.02%、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンはカテキン換算0.0128重量%)。作製した飼料を本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料として用いた。
【0074】
[成長促進効果の評価]
平均体重32.2mg(標準偏差11.3)、平均全長15.5mm(標準偏差1.9)のクルマエビを1水槽あたり150尾(1,500尾/m)で本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料の水産生物成長促進効果を評価した。水槽底部には底砂をひかず、海水は天然濾過海水を加温し、20〜25℃とし、換水率は5回/日とした。光条件は12時間明、12時間暗とし、本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料を1日3回給餌した。給餌量はエビ体重比3〜5%で摂餌状況に応じて段階的に給餌量をあげていった。50日間試験を実施し、その期間中の生残数、平均体重、平均全長を測定した。結果を表3に示す。
【0075】
(試験例12)クルマエビの成長促進効果(本発明の低分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例2で調製した低分子リグニン(固形分1.5%、固形分あたりカテキン換算7%)を溶質の重量ベースで配合飼料(バイオ科学社製、エビコング)造粒時に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.014%、本発明の低分子リグニンはカテキン換算0.007重量%)。作製した飼料を本発明の低分子リグニンを含有する飼料として用いた。
【0076】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した飼料を用いる以外は試験例11と同様とした。結果を表3に示す。
【0077】
(試験例13)クルマエビの成長促進効果(本発明の高分子リグニン)
[飼料の調製]
試験例3で調製した珪藻土を含有した本発明の高分子リグニン(固形分あたりのポリフェノール量がカテキン換算で7%)を溶質の重量ベースで配合飼料(バイオ科学社製、エビコング)造粒時に飼料乾燥重量あたり0.2%で噴霧・混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.014%)。作製した飼料を本発明の高分子リグニンを含有する飼料として用いた。
【0078】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した飼料を用いる以外は試験例11と同様とした。結果を表3に示す。
【0079】
(試験例14)クルマエビの成長促進効果(無添加)
[飼料の調製]
配合飼料(バイオ科学社製、エビコング)を何も添加することなく造粒し無添加飼料を作製した。
【0080】
[成長促進効果の評価]
本試験例での無添加飼料を用いる以外は試験例11と同様とした。結果を表3に示す。
【0081】
(試験例15)クルマエビの成長促進効果(バガス水熱処理液)
[飼料の調製]
試験例5で調製したバガス水熱処理液を溶質の重量ベースで配合飼料(バイオ科学社製、エビコング)造粒時に飼料乾燥重量あたり0.2%で混合した(飼料乾燥重量あたりカテキン換算0.0002%)。
【0082】
[成長促進効果の評価]
本試験例で調製した飼料を用いる以外は試験例11と同様とした。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
表3に示す通り、試験例11〜13の本発明の低分子リグニンおよび本発明の高分子リグニンを含有する飼料、本発明の低分子リグニンを含有する飼料、本発明の高分子リグニンを含有する飼料を用いた場合、試験例14の無添加飼料に比べてクルマエビの生残数、体重、全長が増加することが分かった。
【0085】
(参考例4)リグノスルホン酸液のGPC分子量分析
一般的なリグニン市販品であるリグノスルホン酸(日本製紙ケミカル社製 サンエキスP252をNaOHでpH10に調整した水溶液に3%溶解させたもの)を参考例1に記載の方法でGPC分子量分析を行った。結果を図5に示す。この結果から、得られたリグニンは、分子量100,000にピークを有するリグニンを含有し、本発明の低分子リグニン、高分子リグニンを含有しないことを確認した。また、数平均分子量は39,000であった。
【0086】
(参考例5)UV検出器を用いたGPC分子量分析において、波長254nmにおける分子量ピークが4,000以下に有するリグニンのGPC分子量分析
バガス1kg(台糖農産株式会社より購入、ベトナム製)を0.6(wt/wt)%水酸化ナトリウム水溶液に乾燥重量で5wt%添加・混合し、180℃、5分反応させ、6N塩酸を用いてpHを7に調整した後、ザルで固体を分離し、MF膜(商品名:トレフィルHFSタイプ、東レ社製)で濾過を行い、バガスアルカリ水熱処理液を作製した。このアルカリ水熱処理を参考例1に記載の方法でGPC分子量分析を行った。分析結果を図6に示す。この分析結果から、得られたリグニンは、分子量3,700にピークを有するリグニンを含有し、本発明の低分子リグニン、高分子リグニンを含有しないことを確認した。また、数平均分子量は3,300であった。
【0087】

【要約】
UV検出器を用いたGPC分子量分析において、波長254nmにおける分子量ピークを、分子量4,000〜9,500の範囲に有する低分子リグニンおよび/または分子量10,000〜40,000の範囲に有する高分子リグニンを有効成分とする、水産生物成長促進剤。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6