(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン(A)70〜94質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜15質量%、及びメタキシリレン基含有ポリアミド(C)3〜15質量%を含有する樹脂組成物から形成される成形体からなる容器用キャップであって、
全窒素分析により測定されるキャップ天面部におけるポリアミド由来の窒素%(X)のキャップ側面部におけるポリアミド由来の窒素%(Y)に対する比(X/Y)が、1.2〜3.0である容器用キャップ。
メタキシリレン基含有ポリアミド(C)は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位を70モル%以上含むジアミン単位と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸及びイソフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、かつ炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位とイソフタル酸由来の構成単位のモル比率が30:70〜100:0であるジカルボン酸単位とを含む、請求項1に記載の容器用キャップ。
前記射出成形を行う射出成形機のノズル先端における樹脂温度が、DSCにより測定されるメタキシリレン基含有ポリアミド(C)の融点に対して−5℃〜+15℃の範囲にある請求項8〜10のいずれか1項に記載の容器用キャップの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明について実施形態を用いてさらに詳細に説明する。
本発明に係る容器用キャップは、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及びメタキシリレン基含有ポリアミド(C)(なお、以下では、単に「ポリアミド(C)」ということがある。)を含有する樹脂組成物から形成される成形体からなる。以下、これら(A)〜(C)成分について詳細に説明する。
【0011】
(ポリオレフィン(A))
ポリオレフィン(A)は、種々のものが挙げられ、射出成形体に利用できるものであれば制限無く使用することができる。具体的なポリオレフィン(A)としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン樹脂が使用される。ブロックポリプロピレンは、例えば、プロピレンと、エチレン等の他のオレフィンとを多段で重合することにより得られる。また、ブロックポリプロピレンには、プロピレン−エチレンブロック共重合体や、ホモポリプロピレン中にポリエチレンが分散され、かつポリエチレンの周りにエチレンプロピレンゴム(EPR)相がある海島構造を有するもの等が含まれる。
また、上記したポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂以外にも、1−ブテン、1−メチルペンテン等の炭素数4〜20のα−オレフィンの単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体等も例示される。なお、ポリオレフィン(A)は、未変性ポリオレフィンであり、すなわち、酸により変性されていないポリオレフィンである。
【0012】
ポリオレフィン(A)としては、上記したものの中では、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましく、ブレンド組成物の成形性、柔軟性の観点からポリプロピレン樹脂がより好ましい。また、ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレンが好ましいが、キャップ側面の割れをより有効に防止する観点から、ブロックポリプロピレンがより好ましい。
【0013】
ポリオレフィンの溶融粘度及び分子量の指標となるものとしては、メルトフローレート(MFR)が代表的なものとしてある。ポリオレフィン(A)は、例えば190℃、21.18N(2.16kgf)の荷重におけるメルトフローレート(MFR)が3〜28g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内であると、容器用キャップ成形時に、ポリオレフィン(A)に適度な流動性が付与され、容器用キャップの成形性が良好となる。また、ポリアミド(C)の相対粘度を後述する範囲としたときに、ポリアミド(C)を層状に分散させやすくなり、さらには天面部にポリアミド(C)を偏在させやすくなる。これら観点から、ポリオレフィン(A)のMFRは、より好ましくは5〜26g/10分、さらに好ましくは6〜24g/10分である。なお、MFRは、JIS K7210−1:2014に準拠して測定した値をいう。
【0014】
(酸変性ポリオレフィン(B))
酸変性ポリオレフィン(B)は、樹脂組成物を構成するポリオレフィン(A)とポリアミド(C)とを接着する役割を有する。容器用キャップにおいて酸変性ポリオレフィン(B)を用いることで、ポリオレフィン(A)とポリアミド(C)との接着強度を向上させることができる。また、酸変性ポリオレフィン(B)を使用することでポリアミド(C)を層状に分散させやすくなり、ガスバリア性をより一層向上させやすくなる。さらには、天面部にポリアミド(C)を偏在させやすくなる。
【0015】
酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性したものであることが好ましい。このような酸変性ポリオレフィンは、一般に相溶化剤や接着剤として広く用いられているものである。酸変性ポリオレフィン(B)に使用されるポリオレフィンは、上記したポリオレフィン(A)で列挙したものと同様のものが使用され、好ましくはポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂が使用される。また、酸変性ポリオレフィン(B)は、使用されるポリオレフィン(A)と同種のポリオレフィンを変性したものが好ましい。すなわち、ポリオレフィン(A)がポリエチレン樹脂ならば、酸変性ポリオレフィン(B)もポリエチレン樹脂を変性したものが好ましく、ポリオレフィン(A)がポリプロピレン樹脂ならば、酸変性ポリオレフィン(B)もポリプロピレン樹脂を変性したものが好ましい。したがって、酸変性ポリオレフィン(B)としては、ポリプロピレン樹脂を変性したものがより好ましい。
【0016】
不飽和カルボン酸又はその無水物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロロマレイン酸、ブテニルコハク酸、及びこれらの酸無水物が挙げられる。中でも、マレイン酸及び無水マレイン酸が好ましく用いられる。
不飽和カルボン酸又はその無水物をポリオレフィンにグラフト共重合して酸変性ポリオレフィンを得る方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。例えば、ポリオレフィンを押出機等で溶融させ、グラフトモノマーを添加して共重合させる方法、あるいはポリオレフィンを溶媒に溶解させてグラフトモノマーを添加して共重合させる方法、ポリオレフィンを水懸濁液とした後グラフトモノマーを添加して共重合させる方法等を挙げることができる。
【0017】
酸変性ポリオレフィン(B)の190℃、21.18N(2.16kgf)の荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、1〜25g/10分の範囲にあることが好ましい。酸変性ポリオレフィン(B)のMFRをこのような範囲内に調整すると、成形時に酸変性ポリオレフィン(B)に適度な流動性が付与され、容器用キャップの成形性が良好となるとともに、ポリアミド(C)を層状に分散させやすくなる。さらには、天面部にポリアミド(C)を偏在させやすくなる。酸変性ポリオレフィン(B)のMFRは、より好ましくは2〜23g/10分、さらに好ましくは4〜20g/10分である。
【0018】
酸変性ポリオレフィン(B)の変性率の指標となるものとしては、酸価が挙げられる。酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に準拠して測定される。酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、好ましくは15mgKOH/gより高く30mgKOH/g以下である。
酸価が15mgKOH/gより高いと、キャップ成形時に、酸変性ポリオレフィン(B)がポリアミド(C)の末端アミノ基に多く結合する。そのため、成形時にポリアミド(C)の流動性が抑制されることになり、ポリアミド(C)がキャップ天面部に偏在し、キャップ天面部におけるポリアミドの割合を高めやすくなる。また、ポリアミド(C)が層状に分散しやすくなるとともに、ポリオレフィン(A)に対するポリアミド(C)の接着強度を向上させやすくなる。また、酸価が30mgKOH/g以下であると、ポリオレフィン(A)及びポリアミド(C)の流動性を適度なものにし、キャップ表面に凹凸が生じたり、厚みムラが生じたりすることを防止する。
流動性を適度なものとし、かつポリアミド(C)をキャップ天面により偏在しやすくする観点から、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価は、より好ましくは17〜25mgKOH/g、さらに好ましくは18〜22mgKOH/gである。
【0019】
(メタキシリレン基含有ポリアミド(C))
メタキシリレン基含有ポリアミド(C)は、メタキシリレン基を有することでガスバリア性が良好となる。メタキシリレン基含有ポリアミド(C)は、ガスバリア性樹脂として機能するものであり、容器用キャップの酸素透過性などのガス透過性を低くすることが可能である。メタキシリレン基含有ポリアミド(C)は、ジアミン単位及びジカルボン酸単位を含み、かつジアミン単位がメタキシリレンジアミン由来の構成単位(メタキシリレンジアミン単位)を有する。
【0020】
また、ポリアミド(C)におけるジアミン単位は、メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を有してもよい。メタキシリレンジアミン単位以外のジアミン単位を構成しうる化合物としては、パラキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン等の芳香環を有するジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等の脂環式構造を有するジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナンメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族ジアミンが例示できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
ポリアミド(C)におけるジカルボン酸単位としては、適度な結晶性と柔軟性を付与する観点から、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(以下、単に“α,ω−ジカルボン酸”ともいう)由来の構成単位(α,ω−ジカルボン酸単位)を有することが好ましい。α,ω−ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸等を例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
α,ω−ジカルボン酸としては、結晶性、ガスバリア性、柔軟性等の観点から、炭素数6〜14のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜10のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。また、中でもアジピン酸、セバシン酸がより好ましく、ガスバリア性を優れたものとする観点からアジピン酸が特に好ましい。
【0022】
また、ジカルボン酸単位は、α,ω−ジカルボン酸単位に加え、α,ω−ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を有してもよい。α,ω−ジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、メチルマロン酸、メチルコハク酸、リンゴ酸、酒石酸等のα,ω−ジカルボン酸以外の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
α,ω−ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。これらのジカルボン酸、特にイソフタル酸を使用することで、ポリアミド(C)製造時における重縮合反応を阻害することなく、ガスバリア性能に優れるポリアミド(C)を容易に得ることができる。
【0023】
ポリアミド(C)のより好適な例としては、ジアミン単位がメタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むとともに、ジカルボン酸単位がα,ω−ジカルボン酸及びイソフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸由来の構成単位を70モル%以上含み、α,ω−ジカルボン酸由来の構成単位とイソフタル酸由来の構成単位のモル比率が、30:70〜100:0となるポリアミドが挙げられる。
ポリアミド(C)は、ジアミン単位の70モル%以上をメタキシリレンジアミン単位とすることで、ガスバリア性能をより高めやすくなる。また、ジカルボン酸単位として、上記のようにα,ω−ジカルボン酸単位を所定量以上含むことで、ガスバリア性能を低くすることなく、ポリアミド(C)の柔軟性、結晶性等を向上させやすくなる。また、上記のより好適な例のポリアミド(C)は、イソフタル酸由来の構成単位(イソフタル酸単位)を有してもよいし、有さなくてもよいが、イソフタル酸単位を有することで、ガスバリア性能を向上させやすくなる。
上記のα,ω−ジカルボン酸単位とイソフタル酸単位のモル比率は、50:50〜100:0であることがより好ましく、70:30〜100:0であることがさらに好ましく、90:10〜99:1であることがよりさらに好ましい。
【0024】
上記のようにポリアミド(C)におけるジアミン単位は、メタキシリレンジアミン単位を70モル%以上含むことが好ましいが、80〜100モル%含むことがより好ましく、90〜100モル%含むことがさらに好ましく、メタキシリレンジアミン単位からなること(すなわち、メタキシリレンジアミン単位が100モル%)が特に好ましい。このように、メタキシリレンジアミン単位の含有量を高くすると、ガスバリア性能をより高めやすくなる。
【0025】
また、ポリアミド(C)におけるジカルボン酸単位において、α,ω−ジカルボン酸単位及びイソフタル酸単位の合計量は、上記のように70モル%以上であることが好ましいが、80〜100モル%含むことがより好ましく、90〜100モル%含むことがさらに好ましく、ジカルボン酸単位は、α,ω−ジカルボン酸単位、イソフタル酸単位又はこれら2成分からなること(すなわち、上記合計量が100モル%であること)が特に好ましい。ここで、α,ω−ジカルボン酸単位とは、上記したように炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位を意味するが、好ましくは炭素数6〜14のα、ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位、より好ましくは炭素数6〜10のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸単位、特に好ましくはアジピン酸単位を意味する。
【0026】
ポリアミド(C)において、ジアミン単位とジカルボン酸単位との含有量(全構成単位に対するモル%)の割合は、重合反応の観点から、ほぼ同量であることが好ましく、ジカルボン酸単位の含有量がジアミン単位の含有量の±2モル%であることがより好ましいが、後述するように、末端アミノ基濃度を高くするためには、ジアミン単位の含有量が、ジカルボン酸単位の含有量より高いほうがさらに好ましい。
【0027】
ポリアミド(C)は、ジアミン単位及びジカルボン酸単位からなるものであってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外の共重合体単位を含有してもよい。そのような共重合体単位を構成し得るモノマーとしては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アラニン、2−アミノ酪酸、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、t−ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、2−フェニルグリシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリン等のα−アミノ酸、3−アミノ酪酸等のβ−アミノ酸、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸、p−アミノメチル安息香酸などのアミノカルボン酸などが挙げられる。
ポリアミド(C)において、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外の共重合体単位の比率は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下である。
【0028】
さらに、ポリアミド(C)の分子量や末端アミノ基濃度を調整するために、単官能性の化合物を、ポリアミド(C)の末端アミノ基または末端カルボキシル基と反応させてもよい。そのような単官能性の化合物は、ポリアミド(C)の末端アミノ基または末端カルボキシル基と反応性を有するものであればよいが、例えばモノカルボン酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸等のモノカルボン酸が挙げられる。またモノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化合物、モノエステル化合物、モノアルコール化合物等を用いてもよい。
【0029】
ポリアミド(C)の重合度の指標としてはいくつかあるが、相対粘度が一般的に使われる。本発明に用いられるポリアミド(C)の相対粘度は好ましくは1.5〜4.2である。相対粘度を1.5以上とすることで、成形時のポリアミド(C)の流動性が抑えられ、ポリアミド(C)がキャップ天面部に偏在しやすくなる。また、ポリオレフィン(A)と相溶化しにくくなり、層状分散状態を形成しやすくなる。一方で、相対粘度を4.2以下とすることで重合時間が必要以上に長くなることを防止し、ポリアミド(C)の製造コストを低く抑えることができる。これら観点から相対粘度は、より好ましくは2.0〜3.5、さらに好ましくは2.4〜3.0である。
なお、ここで言う相対粘度は、ポリアミド0.2gを96%硫酸20mLに溶解し、キャノンフェンスケ型粘度計にて25℃で測定した落下時間(t)と、同様に測定した96%硫酸そのものの落下時間(t
0)の比であり、次式で示される。
相対粘度=t/t
0
【0030】
ポリアミド(C)は、その融点が、通常、200〜255℃となるものであるが、好ましくは210〜250℃、より好ましくは220〜245℃である。ポリアミド(C)の融点をこれら範囲内とすることで、ポリアミド(C)の融点を、例えば、ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)の融点よりも十分に高くすることが可能になる。そして、容器用キャップを射出成形するとき、(A)、(B)成分を溶融等させて十分に流動化した状態で混合させる一方、ポリアミド(C)を少なくとも一部溶融させないで、樹脂組成物をキャビティ内に射出することが可能になる。これにより、ポリアミド(C)は、キャップ天面部に偏在しやすくなり、また、層状に分散しやすくなる。また、融点を上限値以下とすることで、成形温度を必要以上に高くすることを防止できる。
なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定される融点であり、詳細な測定条件は後述する実施例で記載されたとおりである。
【0031】
また、ポリアミド(C)の末端アミノ基濃度は、10〜100μ当量/gであることが好ましい。末端アミノ基濃度を10μ当量/g以上とすることで、酸変性ポリオレフィン(B)と結合するポリアミド(C)の量が多くなり、成形時のポリアミド(C)の流動性が抑制される。そのため、ポリアミド(C)がキャップ天面部に偏在し、天面部におけるポリアミドの割合を高めやすくなる。また、ポリアミド(C)が層状に分散しやすくなる。一方で、末端アミノ基濃度を100μ当量/g以下とすることで、ポリアミド(C)の適度な分子量が確保でき、流動性が必要以上に低くなることを防止できる。また、成形時の加熱によりポリアミド(C)が分解したりすることも防止する。
これらの観点から、ポリアミド(C)の末端アミノ基濃度は、12〜50μ当量/gであることがより好ましく、14〜30μ当量/gであることがさらに好ましい。
ポリアミド(C)の末端アミノ基濃度を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、重縮合によりポリアミド(C)を製造するとき、ジアミンとジカルボン酸の仕込み量を調整すればよい。あるいは、上記した単官能性の化合物を、ポリアミド(C)の末端アミノ基等と反応させることで調整してもよい。ただし、ジアミンとジカルボン酸の仕込み量を調整して末端アミノ基濃度を調整することが好ましい。
【0032】
ポリアミド(C)は、上記したジアミンとジカルボン酸とを重縮合することにより得られるものである。重合法としては、溶融重縮合法が挙げられ、例えばジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重縮合させる方法がある。また、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0033】
ポリアミド(C)の重縮合系内にはアミド化反応を促進する効果や、重縮合時の着色を防止する効果を得るために、リン原子含有化合物を添加してもよい。
リン原子含有化合物としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられる。これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましいが、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
ポリアミド(C)の重縮合系内に添加するリン原子含有化合物の添加量は、重縮合中のポリアミド(C)の着色を防止する観点から、ポリアミド(C)中のリン原子濃度換算で好ましくは1〜500ppm、より好ましくは5〜450ppm、さらに好ましくは10〜400ppmである。
【0034】
ポリアミド(C)の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド(C)の着色を防止するためにはリン原子含有化合物を十分な量存在させる必要があるが、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を共存させることが好ましい。
例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属の水酸化物や、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等のアルカリ金属/アルカリ土類金属の酢酸塩等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
ポリアミド(C)の重縮合系内にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値が、好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.6〜1.8である。アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の添加量を上述の範囲とすることでリン原子含有化合物によるアミド化反応促進効果を得つつゲルの生成を抑制することが可能となる。
さらに、重縮合系内には、ポリアミド(C)の分子量や、末端アミノ基濃度等を調整するために、上記した単官能性の化合物を添加してもよい。また、必要に応じて、ジアミン単位及びジカルボン酸単位以外の共重合体単位を構成し得るモノマーを適宜添加してもよい。
【0035】
溶融重縮合で得られたポリアミド(C)は反応缶等の反応系から取り出され、ペレット化されることが好ましい。溶融重縮合で得られたポリアミド(C)、好ましくはペレット化されたポリアミド(C)は、乾燥したり、更に重合度を高めるために固相重合したりしてもよい。乾燥乃至固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置及びナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特に固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、かつ着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
【0036】
(各材料の配合比率)
樹脂組成物における各材料の配合比率は、樹脂組成物全量に対して、ポリオレフィン(A)が70〜94質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が3〜15質量%、ポリアミド(C)が3〜15質量%である。また、樹脂組成物全量に対して、ポリオレフィン(A)が72〜90質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が5〜14質量%、ポリアミド(C)が5〜14質量%であることが好ましく、ポリオレフィン(A)が74〜88質量%、酸変性ポリオレフィン(B)が6〜13質量%、ポリアミド(C)が6〜13質量%であることがより好ましい。ただし、(A)〜(C)の3成分の合計が100質量%を超えることはない。樹脂組成物全量に対する(A)〜(C)の3成分の合計は76質量%以上であり、好ましくは76〜100質量%、より好ましくは82〜100質量%、さらに好ましくは86〜100質量%、よりさらに好ましくは90〜100質量%、よりさらに好ましくは95〜100質量%であり、特に好ましくは100質量%(すなわち、樹脂組成物が(A)〜(C)の3成分のみからなる)である。
本発明においては、上述の範囲に各材料の配合比率を設定することによって、後述するように比(X/Y)を所定の範囲に設定しやすくなり、キャップのガスバリア性を効率的に高めることができる。また、キャップ側面部におけるポリアミド(C)の割合が必要以上に高くならず、キャップを容器に取り付け締め付けたときに、キャップ側面部に割れが生じたりすることを防止する。
【0037】
(その他の成分)
樹脂組成物には、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及びメタキシリレン基含有ポリアミド(C)の3成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、様々な材料を配合することができる。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12などのメタキシリレン基含有ポリアミド(C)以外のポリアミド;アイオノマー;エチレン−エチルアクリレート共重合体やエチレン−メチルアクリレート共重合体等の各種変性ポリエチレン;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート等の各種ポリエステル;スチレン−ブタジエン共重合体やその水添化物;各種熱可塑性エラストマー等を加えてもよい。
また、酸化防止剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、滑剤、ゲル化防止剤、層状ケイ酸塩等のクレイやナノフィラー等の添加剤を加えてもよい。これら各添加剤は、(A)、(B)及び(C)成分の1つ以上に予め混合された状態で成形機に投入してもよい。
【0038】
[容器用キャップ]
図1は、容器用キャップを示す断面図である。以下、
図1を用いて、容器用キャップ10の構造について図面を参照して詳細に説明する。容器用キャップ10は、容器の口部を閉じるための蓋体であって、口部上方に配置されるキャップ天面部11と、キャップ天面部11の周縁から垂下し、口部の外周を取り囲むように配置されるキャップ側面部12とを備える。容器用キャップ10は、雄螺子が設けられた容器の口部の外周面に螺着することで、容器の口部を閉じるものである。したがって、キャップ側面部12の内周面には、容器の口部の雄螺子と螺着可能な雌螺子13が形成されている。
【0039】
容器用キャップ10(すなわち、キャップ天面部11及びキャップ側面部12)は、上記した樹脂組成物から形成された成形体である。成形体は、好ましくは後述する射出成形により成形された射出成形体であり、キャップ天面部11及びキャップ側面部12は、射出成形により一体的に成形されたものである。ポリアミド(C)は、成形体において、ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)と均一に混ざり合っているわけではなく、一定の大きさを有するように粒状ないし層状に分散されており、好ましくは層状に分散されている。ポリアミド(C)は、層状に分散されることにより、容器用キャップのガスバリア性をより良好にすることが可能になる。なお、ポリアミド(C)は、キャップ天面部11において層状に分散していればよい。
層状に分散されるポリアミド(C)は、一部連続して連続相を形成してもよい。また、層状に分散したポリアミド(C)は、厚さ方向においてポリオレフィン(A)と交互に存在するような分散状態となっていてもよい。なお、層状に分散されたポリアミド(C)は、キャップ天面部においては、通常、その面方向に沿って層状ないし面状に広がるものである。
【0040】
また、キャップ天面部11の内面には、シール部14が設けられる。シール部14は、容器の口部に密着することで容器を密閉する。なお、
図1において、シール部14は、環状の突起により構成される例を示すが、キャップ天面部11の内面に設けられるシート状の部材であってもよいし、その他の構成を有していてもよい。
シール部14は、キャップ天面部11と一体的に成形されてもよいが、キャップ天面部11とは別部材により成形されてもよい。シール部14は、一体的に成形される場合には、キャップ天面部11とキャップ側面部12とともに、成形体(すなわち、キャップ天面部11)の一部として後述する射出成形等により成形される。一方で、シール部は、別部材として成形される場合、後述する射出成形等により成形された成形体のキャップ天面部の内面に、接着、圧着、融着、嵌合等により取り付ければよい。
【0041】
本発明の容器用キャップにおいては、キャップ天面部11におけるポリアミド由来の窒素%(X)のキャップ側面部12におけるポリアミド由来の窒素%(Y)に対する比(X/Y)が、1.2〜3.0となる。窒素%(X)、(Y)は、それぞれキャップ天面部11、キャップ側面部12におけるポリアミドの割合を示す指標となるものである。比(X/Y)を1.2未満とすると、キャップ天面部11にポリアミド(C)が十分に偏在せず、キャップ側面部12にポリアミド(C)が多く存在することになる。そのため、容器用キャップ10を口部に取り付けて締め付けるとき、キャップ側面部に存在するポリアミド(C)がポリオレフィン(A)から剥離するなどして、キャップに割れが生じやすくなる。なお、このようなキャップ側面部の割れは、ポリアミド(C)が層状に分散しているときに発生しやすい。
【0042】
また、キャップ天面部11は、容器用キャップ10により閉じられた容器内の空間に面するが、キャップ側面部12は、容器の口部の外周側に配置されるので、容器内の空間には実質的に面していない。そのため、容器用キャップ10により閉じられた容器のガスバリア性を高めるためには、キャップ天面部11のガスバリア性を高くしたほうがよい。しかし、上記比(X/Y)が1.2未満であると、キャップ天面部11のガスバリア性を確保しにくくなり、キャップ10により閉じられた容器のガスバリア性を向上させにくくなる。一方で、比(X/Y)を3.0より大きくしようとすると、キャップ10を後述する製造方法により製造しにくくなる。
【0043】
キャップ側面部の割れ防止、天面部のガスバリア性向上、及び製造容易性の観点から、上記比(X/Y)は、1.4〜2.8が好ましく、2.0〜2.5がさらに好ましい。
なお、ポリアミド由来の窒素%(X),(Y)とは、後述する実施例に示すように、キャップ天面部及びキャップ側面部の窒素量を全窒素分析により測定して、その値からキャップ天面部及びキャップ側面部それぞれにおけるポリアミド由来の窒素%(質量%)を算出したものである。そして、比(X/Y)は、算出されたポリアミド由来の窒素%(X),(Y)から求められる。
【0044】
なお、樹脂組成物は、ポリアミド(C)以外にも窒素原子を有する化合物が含まれることもあり得る。そのような場合には、ポリアミド(C)以外の窒素原子を有する化合物は、同定及び定量して、その化合物由来の窒素量を算出する。そして、その窒素量を全窒素分析により得られた窒素量から減じて、ポリアミド由来の窒素%を算出すればよい。
また、ポリアミド由来の窒素%(X),(Y)における“ポリアミド”とは、メタキシリレン基含有ポリアミド(C)以外のポリアミドが樹脂組成物に含まれる場合には、そのようなポリアミド由来の窒素%も含めた値である。
【0045】
容器用キャップ(すなわち、樹脂組成物より形成された成形体)は、その直径が10〜200mmであることが好ましく、20〜100mmであることがより好ましい。また、その厚さ(成形体のキャップ天面部及びキャップ側面部の厚さ)は、0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜2mmであることがより好ましい。このようなサイズを有する容器用キャップは、後述する製造方法により製造した場合に、ポリアミド(C)をキャップ天面部に容易に偏在させることが可能になる。
【0046】
容器用キャップは、樹脂製容器、ガラス製容器等、いかなる材料から形成された容器に使用してもよいが、口部の硬度が高い容器に対して使用することが好ましい。具体的には、ガラス製容器など、口部がガラス製である容器に対して使用することが好ましい。ガラス製の口部など、口部の硬度が高い場合、容器用キャップを口部に取り付けて締めるとき、口部はほとんど変形しない。そのため、キャップを締めるときにキャップ側面部に高い応力が作用し、上記した割れが生じやすくなるが、本発明の容器用キャップは、キャップ側面部のポリアミド含有率が低くなるので、容器の口部の硬度が高い場合でも、キャップ側面部の割れが生じにくくなる。
【0047】
[容器用キャップの製造方法]
以下、容器用キャップの製造方法の一実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る製造方法は、上記した(A)、(B)及び(C)成分を含む樹脂組成物を、射出成形して、容器用キャップを構成する成形体を得るものである。
本製造方法の射出成形に使用する射出成形機の一例を
図2に示す。
図2に示すように、射出成形機20は、加熱シリンダー21と、加熱シリンダー21の先端に設けられたノズル22と、加熱シリンダー21に取り付けられたホッパー23と、ノズル22の先端に接続される金型30とを備える。
【0048】
加熱シリンダー21は、射出成形機20において一般的に使用できる構造のものであれば特に限定されないが、例えば、シリンダー内部を加熱するためのヒーター(図示せず)と、内部にスクリュー26を有するものが使用される。また、ノズル22は、内部を通る樹脂組成物が所定の温度に維持されるように通常ヒーターによって加熱される。シリンダー21及びノズル22のヒーターの温度は、例えば、200〜300℃、好ましくは210〜270℃に設定される。これら温度範囲にすることで、ノズル22の先端における樹脂温度を後述する温度範囲に調整しやすくなる。
金型30は、内部にキャビティ33が形成されるとともに、ノズル22に接続されるスプルー31と、スプルー31に接続されるランナー34を有する。ランナー34は、ピンポイントゲート35を介してキャビティ33に接続される。キャビティ33に接続されるピンポイントゲート35は1つである。すなわち、ピンポイントゲート35は、1点ゲートと呼ばれるものである。なお、通常、金型30は加熱されておらず、ランナー34はコールドランナーである。
【0049】
図2に示すように、金型30は、例えば、固定金型30A、中間金型30B、及び可動金型30Cからなる3枚型である。3枚型においては、可動金型30Cと中間金型30Bの間にキャビティ33が形成される。また、固定金型30Aにスプルー31が、中間金型30Bにランナー34が設けられる。
3枚型では、射出成形後に、3つの金型30A,30B,30Cが分離され、かつ可動金型30C内部に設けられるエジェクタピン36等から構成されるスリーブ突き出し機構により押し出されて成形体が取り出される。また、ネジ抜き装置としてモーターによりネジ部を回転させ、かつスリーブ突き出し機構を併用して突き出して取り出すこともできる。
ただし、金型30は、3枚型に限定されず他のタイプの金型であってもよい。また、
図2には、金型30にキャビティ33が1つ設けられるのみであるが、複数のキャビティ33が設けられてもよい。その場合には、スプルー31に複数のランナー34が接続され、各ランナー34がピンポイントゲート35を介してキャビティ33に接続される。
【0050】
キャビティ33は、キャップ天面部及びキャップ側面部それぞれを成形するための天面中空部33Aと、側面中空部33Bとを有し、ピンポイントゲート35は、天面中空部33Aに接続する。したがって、樹脂組成物は、キャップ天面部側から1点ゲートによりキャビティ33内部に射出される。ピンポイントゲート35は、
図2に示すように、キャップ天面部の中央に対応する位置に設けられてもよいが、中央に対応する位置以外に設けられてもよい。
ピンポイントゲート35(1点ゲート)のゲート径は、0.5〜1.2mmであることが好ましく、0.6〜1.0mmであることがより好ましい。ゲート径を1.2mm以下とすると、後述するようにポリアミド(C)が側面中空部33Bに流入しにくくなり、比(X/Y)を上記範囲内としやすくなる。また、ゲート径を0.5mm以上とすると、樹脂組成物を構成する各成分、特にポリアミド(C)がピンポイントゲート35を通過できなくなるなどの不具合が生じにくくなる。
【0051】
本製造方法においては、(A)、(B)及び(C)成分など、樹脂組成物を構成する各成分を、ホッパー23より投入して、加熱シリンダー21内部で、加熱しながら(A)、(B)及び(C)成分などを可塑化しつつ混合し、かつ必要に応じてこれらの少なくとも一部を溶融させる。そして、ノズル22、スプルー31、ランナー34、及びピンポイントゲート35を介して、樹脂組成物をキャビティ33内部に射出する。キャビティ33内に射出された樹脂組成物は、冷却されて固化され射出成形体となる。射出成形体は、上記のようにして金型30から取り出される。
【0052】
射出成形機20内部における(A)、(B)、及び(C)成分の挙動は、例えば以下のとおりである。(A)、(B)、及び(C)成分は、シリンダー21においてヒーターから受けた熱により軟化し可塑化する。ここで、ポリオレフィン(A)及び酸変性ポリオレフィン(B)は、シリンダー21内において、十分に溶融ないし流動化して混合する。一方で、ポリアミド(C)は、シリンダー21内部の例えばスクリュー26による剪断応力によって層状に引き延ばされるが、融点が高いため、溶融しかつ(A)成分中に均一に混合する状態までは至らず、一定の大きさを持ったまま、好ましくは層状に引き延ばされた状態のままキャビティ33内部に射出される。そのため、ポリアミド(C)は、成形体においても、一定の大きさを有するように粒状ないし層状に分散され、好ましくは層状に分散された状態となる。
【0053】
上記のように、ポリアミド(C)を、一定の大きさを持ち、かつ層状に引き延ばした状態のままキャビティ33に射出するには、射出成形機20内部において樹脂温度を制御することにより達成することが好ましい。具体的には、ノズル22の先端における樹脂温度を、ポリアミド(C)の融点に対して−5℃〜+15℃の温度範囲になるように、加熱シリンダー21の温度等を調整するとよい。また、この温度範囲は、成形体においてポリアミド(C)をより適切に層状に分散させるために、好ましくは−5℃〜+10℃、より好ましくは−5℃〜+5℃である。
なお、ノズル22の先端における樹脂温度は、ノズル22の先端に取り付けられた熱電対により、実温度を測定して確認すればよい。あるいは、実温度を測定せず、加熱シリンダー21のヒーター温度などから推定できる場合には推定により求めてもよい。
【0054】
本発明においては、上記比(X/Y)を達成するために、ポリアミド(C)を、キャビティ33の天面中空部33Aにとどめて、側面中空部33Bに多く流入しないように調整する必要がある。具体的な調整方法としては、酸変性ポリオレフィン(B)の酸価、ポリアミド(C)の末端アミノ基濃度等を一定の範囲として酸変性ポリオレフィン(B)にポリアミド(C)を一定量以上結合させるとともに、ピンポイントゲート35のゲート径を比較的小さい所定範囲とする方法が挙げられる。
ポリアミド(C)を酸変性ポリオレフィン(B)に一定量結合させると、成形時のポリアミド(C)の流動性を低く抑えられる。そして、このような結合状態を有し、かつ完全に溶融しない状態のポリアミド(C)を所定の径を有するピンポイントゲート35を通過させると、ポリアミド(C)は、ピンポイントゲート35において適度なせん断抵抗が作用されると考えられ、結果として、天面中空部33Aには流入するが、側面中空部33Bには多く流入しない状態となりやすくなる。また、ポリアミド(C)は、層状分散したままキャビティ33内に射出されやすくなる。なお、ピンポイントゲートのゲート径の好ましい範囲は、上記したとおりである。
ただし、比(X/Y)を達成するためには、以上で示した調整方法に限らず、他の調整方法を採用することも可能である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
各種物性測定、及び評価方法は下記のとおりである。
(1)ポリオレフィン(A)及び酸変性オレフィン(B)のMFR(g/10分)
(株)東洋精機製作所製メルトインデクサーを使用し、JIS K7210−1:2014に準拠して、190℃、2.16kgfの条件にて測定を行った。
(2)酸変性ポリオレフィン(B)の酸価(mgKOH/g)
JIS K0070:1992に準拠して、中和滴定により測定を行った。酸変性ポリオレフィン1gを精秤し、キシレン100mLに約120℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、フェノールフタレイン溶液を加え、予め正確な濃度を求めた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を用いて中和滴定を行った。滴下量(T)、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター(f)、水酸化カリウムの式量56.11の1/10(5.611)、酸変性ポリオレフィンの質量(S)から以下の式(1)により酸価を算出した。
酸価=T×f×5.611/S ・・・(1)
【0057】
(3)ポリアミド(C)の相対粘度
ポリアミド(C)0.2gを精秤し、96%硫酸20mLに20〜30℃で撹拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温層中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また同様の条件で96%硫酸そのものの落下時間(t
0)を測定した。t及びt
0から以下の式(2)により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t
0 ・・・(2)
(4)融点
示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC−60)を用い、窒素気流下にて、室温から260℃まで10℃/分の昇温速度で試料を融解させた後、液体窒素を用いて測定試料を急冷し、再度室温から260℃まで10℃/分の速度で昇温して測定を行った。次いで、得られたチャートから融解ピーク頂点の温度を読み取って融点とした。
(5)末端アミノ基濃度
ポリアミド0.3〜0.5gを精秤し、フェノール/エタノール混合溶液(混合容積比4:1)30mLに室温で撹拌溶解した。完全に溶解した後、撹拌しつつ0.01モル/L塩酸水溶液で中和滴定して、末端アミノ基濃度;μ当量/g([NH
2])を求めた。
【0058】
(6)ポリアミド由来の窒素%(X),(Y)、比(X/Y)
得られたキャップより、天面部については、天面中心より天面半径の90%にあたる範囲を切り出し、側面部については、キャップの天面部の厚み部分を除いた、残り部分を側面部として切り出し、液体窒素を用いて凍結粉砕した。得られた粉砕品を、CHN元素分析計(サーモフィニガン製、商品名:EA1112)にて、燃焼炉温度:950℃、オーブン温度:65℃、キャリア流量:140mL/min、酸素流量:250mL/min、リファレンス流量:100mL/minにて、天面部の窒素含有率と側面部の窒素含有率を測定した。これら窒素含有率をポリアミド由来の窒素%(X)と、ポリアミド由来の窒素%(Y)として比(X/Y)を算出した。
【0059】
(7)容器用キャップのガスバリア性(酸素透過率:OTR)
CPP/アルミ箔/PET=50/9/12(μm)のフィルムからなる蓋体で、得られたキャップの開口部を覆いヒートシールした後、フィルム(蓋体)に穴を開けて、ガス導入管及びガス排出管を挿しこみ、挿しこみ部をエポキシ系接着剤で固めた。ガス導入管より窒素ガスを10mL/min流し、酸素透過率測定装置(Mocon社(米国)製、商品名:Ox−Tran2/61)を用いて温度23℃、内:0%RH、外:50%RHの条件でJIS K7126−2:2006に準じてキャップ一個当たりの酸素透過率(ml/キャップ・day・0.21atm)を求めた。
【0060】
(8)キャップ側面部の強度評価
得られた容器用キャップをガラス製容器の口部に取り付け、締め付け力:10N、30Nでヘッドがパイプレンチタイプのトルクレンチ(東日製作所製、商品名:PHL50N)を用いて締め付けたときのキャップ側面部の状態を確認することでキャップ側面部の強度を以下の基準により評価した。
A:いずれの締め付け力で締め付けてもキャップ側面部に割れが生じない。
B:締め付け力10Nで締め付けてもキャップ側面部に割れが生じないが、30Nで締め付けるとポリアミド(C)の剥離等により割れが生じた。
C:いずれの締め付け力で締め付けても、ポリアミド(C)の剥離等により割れが生じた。
【0061】
(9)キャップ天面部の分散状態の評価
得られたキャップの天面部を切断し、断面をミクロトーム(REICHERT−JUNG LIMITED製、商品名:ULTRACUT E)を用いて平滑にした後、希ヨードチンキ(月島薬品(株)製)を断面に塗布してポリアミド部分を染色した。これをデジタル顕微鏡((株)キーエンス製、 デジタルマイクロスコープ VHX−1000)を用いてポリアミドの分散状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
A:ポリアミドの殆どが層状に分散していた。
B:ポリアミドの一部が層状に分散しているものの、粒状に分散しているポリアミドが相当量見られた。
C:ポリアミドの殆ど全てが粒状に分散していた。
【0062】
実施例、比較例で使用した(A)、(B)、及び(C)成分は以下のとおりである。
<ポリオレフィン(A)>
PO−1:住友化学(株)製、商品名:ノーブレン AW564、ブロックポリプロピレン、MFR:9g/10分
PO−2:日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP MA3、ホモポリプロピレン、MFR:11g/10分
PO−3:日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP MA1B、ホモポリプロピレン、MFR:21g/10分
【0063】
<酸変性ポリオレフィン(B)>
AD−1:三井化学(株)製、商品名:アドマー QE800、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、MFR:9g/10分、酸価:20mgKOH/g
AD−2:三菱化学(株)製、商品名:モディック P555、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、MFR:7g/10分、酸価:7.7mgKOH/g
【0064】
<ポリアミド(C)>
製造例1(ポリアミド(PA−1)の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽、ポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、及びストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧溶融重合釜に、精秤したアジピン酸(AA)12120g(82.94mol)、イソフタル酸(IPA)880g(5.29mol)、次亜リン酸ナトリウム10.96g(0.10mol)、及び酢酸ナトリウム5.68g(0.07mol)を入れ、十分に窒素置換した後、溶融重合釜内を密閉し、溶融重合釜内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下170℃まで昇温した。
170℃に到達後、溶融重合釜内の溶融した原料に対し、滴下槽に貯めたメタキシリレンジアミン(MXDA)11962g(87.83mol)(ジアミン成分/ジカルボン酸成分の仕込みモル比(MXDA/(AA+IPA))=0.9955)の滴下を開始し、溶融重合釜内の圧力を0.4MPaGに保ち、生成する縮合水を系外へ除きながら、溶融重合釜内を連続的に260℃まで昇温した。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、溶融重合釜内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて溶融重合釜内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、溶融重合釜内を窒素で加圧し、底排弁を開け抜き出し、ペレット化してペレット状のイソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミドの溶融重合品(相対粘度2.1)を得た。
次にこのペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、更に系内温度を130分間で190℃まで昇温した。系内温度が190℃に達した時点から、同温度にて60分間、固相重合反応を継続した。
反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出し、高分子量化されたイソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(PA−1)を得た。
得られたポリアミド(PA−1)は、相対粘度2.8、融点229℃、イソフタル酸共重合比率6mol%、末端アミノ基濃度([NH
2])15μ当量/gであった。
【0065】
製造例2(ポリアミド(PA−2)の製造)
反応容器にアジピン酸12120g及びイソフタル酸880gを仕込む代わりに、アジピン酸12893g(88.23mol)を仕込んだこと以外は製造例1と同様にし、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミド(PA−2))を得た。ポリアミド(PA−2)は、相対粘度2.7、融点238℃、末端アミノ基濃度([NH
2])19μ当量/gであった。
【0066】
製造例3(ポリアミド(PA−3)の製造)
各モノマーの仕込みがメタキシリレンジアミン:アジピン酸:イソフタル酸=87.39:82.94:5.29(mol)(ジアミン成分/ジカルボン酸成分の仕込みモル比(MXDA/(AA+IPA))=0.9905)となるようにし、さらに、固相重合反応時間を300分とした以外は製造例1と同様にして、イソフタル酸共重合比率6mol%のイソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミド(PA−3))を得た。ポリアミド(PA−3)は、相対粘度2.5、融点229℃、末端アミノ基濃度([NH
2])6μ当量/gであった。
【0067】
実施例1
射出成形機(日精樹脂工業(株)製、商品名「NEX80」、スクリュー:36mmφ、型締力:80トン)に、表1に示す配合比率で、ポリオレフィン(A)、酸変性ポリオレフィン(B)及び製造例1で得られたポリアミド(C)を投入して、射出成形法により直径40mm、厚さ1.5mmの容器用キャップを作製した。
また、射出成形機で使用した金型は、加熱されず室温下に設置されたものであり、直径3.5mmから5mmに漸次拡径されかつ長さが4cmのスプルー、直径4mm、長さ5cmのコールドランナー、ゲート径0.7mm、断面形状:丸、長さ1.5mmのピンポイントゲート(1点ゲート)を有する3枚型であり、
図2に示すとおり、キャビティ内には天面部側から樹脂組成物を射出した。射出成形時、射出成形機のシリンダーは、上流側から順に4つのヒーターによって加熱されており、その各ヒーター及びノズルのヒーター温度(C1/C2/C3/C4/ノズル)を220/225/225/225/220(℃)とし、ノズル先端における樹脂温度を表1に示す温度になるようにした。また、射出成形は、スクリュー回転数100rpm、可塑化時間:2.37秒、背圧:5MPa、V/P切り替え:10mm、クッション量:6mm、金型温度:25℃の条件下で行った。得られた容器用キャップの評価結果を表1に示す。また、実施例1の容器用キャップを切断し、希ヨードチンキを断面に塗布してメタキシリレン基含有ポリアミド部分を染色した後、その断面を拡大して撮影した写真を
図3に示す。
【0068】
実施例2、3
ポリオレフィン(A)の種類を表1に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にして容器用キャップを製造した。
実施例4
ポリアミド(C)の種類を表1に示したように変更し、かつシリンダーにおける各ヒーター及びノズルのヒーター温度(C1/C2/C3/C4/ノズル)を230/235/235/235/230(℃)とし、ノズル先端における樹脂温度を表1に示す温度になるようにした以外は実施例1と同様にして容器用キャップを製造した。
【0069】
比較例1
酸変性ポリオレフィン(B)の種類を表1に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にして容器用キャップを製造した。
比較例2
シリンダーにおける各ヒーター及びノズルのヒーター温度(C1/C2/C3/C4/ノズル)を240/245/245/245/240(℃)とし、ノズル先端における樹脂温度を表1に示す温度になるようにした以外は実施例1と同様にして容器用キャップを製造した。比較例2の容器用キャップを切断し、希ヨードチンキを断面に塗布してメタキシリレン基含有ポリアミド部分を染色した後、その断面を拡大して撮影した写真を
図4に示す。
比較例3
ポリアミド(C)の種類を表1に示したように変更したこと以外は実施例1と同様にして容器用キャップを製造した。
比較例4、5
酸変性ポリオレフィン(B)、及びポリアミド(C)を使用せず、樹脂として表1に示す各種のポリオレフィン(A)を使用した点を除いて実施例1と同様に実施した。
【0070】
【表1】
※表1におけるポリアミド含有率は、天面部及び側面部の窒素含有率それぞれを、ポリアミド(C)中の窒素比率で除することで算出した。なお、ポリアミド(PA−1)、(PA−3)中の窒素比率は9.9質量%、ポリアミド(PA−2)中の窒素比率は10.6質量%である。
【0071】
実施例1〜4では、比(X/Y)を大きくして、キャップ天面部にポリアミド(C)を偏在させることができ、さらには、ポリアミド(C)が層状に分散した。そのため、酸素透過率が低くなり、キャップのガスバリア性が良好となった。また、キャップ側面部の強度が良好となり、キャップを容器に取り付け締め付けたときに、ポリアミド(C)の剥離を防止して割れの発生を抑制できた。
それに対して、比較例1、3では、比(X/Y)が低く、ポリアミド(C)がキャップ天面部に偏在しなかったため、キャップ側面部の強度が低くなり、キャップを容器に取り付け締め付けたときに、ポリアミド(C)の剥離が生じやすくなった。また、比較例2では、樹脂温度が高いため、比(X/Y)が低く、かつポリアミド(C)が層状分散に留まらず粒状分散した。そのため、キャップ側面部の強度は比較的良好となったが、酸素透過率が高くなり、ガスバリア性が不十分であった。同様に、比較例4、5では、ポリアミド(C)を使用しなかったため、キャップ側面部に割れが生じにくかったが、キャップの酸素透過率が高くなりガスバリア性が不十分であった。
本発明は、ポリオレフィン(A)70〜94質量%、酸変性ポリオレフィン(B)3〜15質量%、及びメタキシリレン基含有ポリアミド(C)3〜15質量%を含有する樹脂組成物から形成される成形体からなる容器用キャップ(10)であり、全窒素分析により測定されるキャップ天面部(11)におけるポリアミド由来の窒素%(X)の、キャップ側面部(12)におけるポリアミド由来の窒素%(Y)に対する比(X/Y)が1.2〜3.0であり、優れたガスバリア性を有する。