(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、前記セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置であって、
前記集電体が、前記複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、
前記集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部が挿入されることにより、前記集電体が前記弾性片によって前記セル配列に対して取り付けられており、
前記弾性片の位置が前記燃料電池セルの電極に対して変位しないように、前記弾性片が前記燃料電池セルに接着剤によって固定されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池装置。
前記接着剤は、導電性を有し、前記弾性片と前記燃料電池セルの電極との間に配置されており、前記接着剤は、少なくとも前記弾性片の一部が前記接着剤内に沈み込んだ状態で硬化されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池装置。
燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、前記セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置の製造方法であって、
集電体を前記セル配列に対して取り付ける取付工程であって、前記集電体が、前記複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、前記集電体を前記セル配列に対して押し付けることにより、前記集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入し、前記集電体を前記弾性片の弾性力によって前記セル配列に対して取り付ける、前記取付工程と、
前記弾性片の位置が前記燃料電池セルの電極に対して変位することを防止するように、前記集電体の前記弾性片を前記燃料電池セルに接着剤により接着する接着工程と、
を備えたことを特徴とする固体酸化物型燃料電池装置の製造方法。
燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、前記セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置の製造方法であって、
前記セル配列の各燃料電池セルの端部に形成された電極に導電性を有する接着剤を塗布する塗布工程と、
集電体を前記セル配列に対して取り付ける取付工程であって、前記集電体が、前記複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、前記集電体を前記セル配列に対して押し付けることにより、前記集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入し、前記接着剤に前記弾性片を接触させた状態で、前記集電体を前記弾性片の弾性力によって前記セル配列に対して取り付ける、前記取付工程と、
前記接着剤を硬化させ、前記弾性片の位置が前記燃料電池セルの電極に対して変位することを防止する硬化工程と、
を備えたことを特徴とする固体酸化物型燃料電池装置の製造方法。
燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、前記セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置の製造方法であって、
複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に導電性の接着剤を塗布する塗布工程と、
前記複数の燃料電池セルをセル配列に組み付け可能とするように、前記複数の燃料電池セルに塗布された接着剤を第1硬化させる第1硬化工程と、
前記複数の燃料電池セルにより前記セル配列を形成するモジュール化工程と、
集電体を前記セル配列に対して取り付ける取付工程であって、前記集電体が、前記複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、前記集電体を前記セル配列に対して押し付けることにより、前記集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入し、前記弾性片を前記第1硬化された接着剤に弾性的に当接させた状態で、前記集電体を前記弾性片の弾性力によって前記セル配列に対して取り付ける、前記取付工程と、
前記第1硬化された接着剤を加熱して第2硬化させる第2硬化工程であって、第2硬化の進行中において、前記弾性片の弾性力により、前記弾性片の一部を前記接着剤内に沈み込ませ、前記弾性片の一部が前記接着剤内に沈み込んだ状態で前記接着剤を完全硬化させて、前記接着剤を介して前記弾性片と前記電極とを接着し、前記弾性片の位置が前記燃料電池セルの電極に対して変位することを防止する第2硬化工程と、
を備えたことを特徴とする固体酸化物型燃料電池装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の燃料電池装置のように、燃料電池セルの両端部において、隣接する燃料電池セルの端部間を接続部材及びシール材により接続する場合、燃料電池セルが多数であると、燃料電池セルの電気的接続作業が非常に手間が掛かり面倒である。
【0006】
一方、特許文献2の燃料電池装置では、3枚の集電体のみで多数の燃料電池セルの端部を電気的に接続するため、燃料電池セルの電気的接続作業が容易となる。具体的には、各集電体には、対応する複数の燃料電池セルを取り付けるための取付孔が形成されており、各取付孔には、孔の縁部から孔の中心へ向けて放射状に延びる複数の弾性片が形成されている。このため、複数の燃料電池セルからなるセル配列に対して各集電体を押し付けることにより、各集電体の複数の取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入することができる。そして、各取付孔の複数の弾性片を、対応する燃料電池セルの端部の外周面に弾性的に接触させることができる。これにより、多数の燃料電池セルに対して集電体を取り付ける作業についての作業効率が大幅に改善され、燃料電池セルの電気的接続作業が簡単化される。
【0007】
しかしながら、本発明者は、特許文献2のような集電体には以下のような問題点があることを見出した。即ち、燃料電池セルは、セラミック材料で形成されるため、個々の燃料電池セルの形状(径、長さ、曲がり等)にばらつきがある。このため、複数の燃料電池セルにより形成されたセル配列において、各燃料電池セルの端部は、理想的な位置からずれてしまう。
【0008】
したがって、集電体をセル配列に対して位置合わせしても、一部の燃料電池セルの軸中心位置が集電体の対応する取付孔に対してずれるので、集電体のセル配列への取付動作において、集電体をセル配列に対して押し付けるために必要な押圧力が大きくなる。そして、無理に集電体をセル配列に対して押し付けると、燃料電池セルの端部の外表面に設けられた電極を弾性片によって剥がしてしまうおそれがある。このような電極の損傷は、電池性能及び装置寿命に悪影響を与える。
【0009】
複数の燃料電池セルを集電体へ挿入することを容易にすると共に、挿入時における電極の剥がれを防止するためには、集電体の厚みを薄くして弾性片の弾性力を小さくすればよい。しかしながら、引用文献2の燃料電池装置では、集電体と燃料電池セルとを弾性片の弾性力を用いて接触させているので、弾性片の弾性力が低下した場合に、集電体と燃料電池セルとの電気的接続が失われてしてしまう。即ち、集電体の厚みを薄くして弾性片の弾性力を小さくした場合、集電体のセル配列への取り付け時、及び、燃料電池装置の運転中に、弾性片の片当たり(即ち、取付孔の複数の弾性片のうちの一部が燃料電池セルに適切に接触しない)が発生するおそれがある。特に、運転中に弾性片が高温(例えば、600℃以上)に晒されると弾性片の弾性係数が低下し、さらに再結晶化等により弾性片の弾性力が失われるおそれがあるため、弾性片の片当たりが発生し易い。一部の弾性片において導通不良が発生すると、接触している弾性片に電流が集中するため、特定の燃料電池セル又はその一部に電流が集中し、所定の電池性能が発揮されなくなると共に、製品寿命が短くなってしまう。
【0010】
このように特許文献2の燃料電池装置における集電体構造は、セル配列に対する集電体の取り付け作業を容易とするが、集電体の取り付け時に燃料電池セルの電極を破損するおそれ、及び、少なくとも燃料電池装置の運転時に集電体と燃料電池セルとの間の導通不良が発生するおそれがあるという問題があった。
【0011】
従って、本発明は、集電体により複数の燃料電池セルを電気的に接続する構造を有する固体酸化物燃料電池装置において、燃料電池セルの電極の破損を防止できると共に、燃料電池セルと集電体との電気的接続を確保することができる固体酸化物型燃料電池装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置であって、集電体が、複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部が挿入されることにより、集電体が弾性片によってセル配列に対して取り付けられており、弾性片の位置が燃料電池セルの電極に対して変位しないように、弾性片が燃料電池セルに接着剤によって固定されていることを特徴としている。
【0013】
集電体をセル配列に対して押し付けて、集電体の複数の取付孔に燃料電池セルを挿入させることにより、集電体をセル配列に弾性的に取り付ける場合、燃料電池セルの製造寸法精度が高くないことに起因して、集電体を大きな押圧力でセル配列に対して押し付ける必要がある。ところが、無理に集電体を押し付けると、燃料電池セル(特に電極層)を損傷させてしまうおそれがある。特に、集電体の取付孔に設けられた弾性片の弾性力が大きいと、挿入時に弾性片が燃料電池セルの外周面をひっかくことにより、燃料電池セルの電極層を傷付けてしまう。
【0014】
このような燃料電池セルの損傷を回避するためには、例えば、弾性片を厚みの薄い板材で形成することにより、弾性片の弾性力を低めに設定する必要がある。しかしながら、弾性片の弾性力が低いと、燃料電池セルの製造寸法誤差に起因して取り付け時に弾性片が片当たりし、製造当初から弾性片と電極との間に導通不良が生じるおそれがある。また、弾性片の弾性力が低いと、燃料電池装置の運転中に集電体が高温に晒され、弾性片の弾性力のさらなる低下が生じることに起因して、弾性片が片当たりして、弾性片と燃料電池セルの電極との間に部分的な導通不良が生じるおそれがある。
【0015】
そこで、本発明では、集電体に設けた取付孔に形成された弾性片により、集電体をセル配列に対して弾性的に係合させると共に、これら弾性片が燃料電池セルの電極に対して変位しないように(即ち、弾性片が電極から離間するように移動しないように)、弾性片が燃料電池セルに対して接着剤によって固定された構成を採用している。このように構成された本発明においては、集電体をセル配列に対して取り付ける際に燃料電池セルの電極を損傷させないように、弾性片の弾性力が低めに設定されていても、弾性片が電極に対して変位しないように接着剤によって固定されているため、燃料電池装置の運転中において、弾性片の弾性力が低下又は消失しても、弾性片と電極との間の電気導電性を確保することができる。即ち、本発明では、運転中における弾性片の弾性力の低下分を接着剤の接着力が補償するので、仮に弾性片の弾性力が消失したとしても、弾性片と電極との間の導通を確保することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、弾性片は、燃料電池セルの側面に沿って折れ曲がることにより、燃料電池セルの電極に弾性的に係合しており、接着剤は、少なくとも折れ曲がった弾性片の一部を覆うように配置されている。
接着剤の粘度が高いと作業性が悪くなり、燃料電池セルの全周にわたって接着剤を塗布することが難しい。しかしながら、本発明によれば、燃料電池セルの側面に沿って折れ曲がった弾性片の少なくとも一部を覆うように接着剤が配置されるので、弾性片が接着剤の垂れ防止となるため、低い粘度の接着剤を使用することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、接着剤は、導電性を有し、弾性片と燃料電池セルの電極との間に配置されており、接着剤は、少なくとも弾性片の一部が接着剤内に沈み込んだ状態で硬化されている。
このように構成された本発明によれば、集電体をセル配列に対して取り付け、接着剤を硬化する際に、少なくとも弾性片の一部が弾性力によって導電性を有する接着剤内に沈み込んだ状態で接着剤が硬化されているので、弾性片と接着剤との間の接触面積が増大する。これにより、弾性片と接着剤との間の接触抵抗を低減することができると共に、弾性片と接着剤との間の電気的及び物理的な接着をより強固とすることができる。
【0018】
上述した課題を解決するために、本発明は、燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置の製造方法であって、集電体をセル配列に対して取り付ける取付工程であって、集電体が、複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、集電体をセル配列に対して押し付けることにより、集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入し、集電体を弾性片の弾性力によってセル配列に対して取り付ける、取付工程と、弾性片の位置が燃料電池セルの電極に対して変位することを防止するように、集電体の弾性片を燃料電池セルに接着剤により接着する接着工程と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
上述のように、取付孔を有する集電体をセル配列に対して押し付けて、集電体をセル配列に弾性片によって弾性的に取り付ける場合、弾性片によって燃料電池セルの電極を損傷させてしまうおそれがある。ところが、電極の損傷を回避するために、弾性片の弾性力を低めに設定すると、取り付け時に片当たりして良好な電気的接触が得られなかったり、運転中の高温状態において弾性力の低下に伴い弾性片と電極との良好な電気的接触が失われたりするおそれがある。
【0020】
そこで、本発明では、集電体をセル配列に対して取り付けた後に、弾性片の位置が燃料電池セルの電極に対して変位しないように、弾性片を燃料電池セルに対して接着剤によって接着するように構成されている。このように構成された本発明によれば、集電体をセル配列に対して取り付ける際に燃料電池セルの電極を損傷させないように、弾性片の弾性力が低めに設定されていたとしても、接着剤による固定によって弾性片が電極に対して変位しないように構成されている。このため、燃料電池装置の運転中における弾性片の弾性力の低下による電気的非接触を防止して、弾性片と電極との間の良好な導通状態を確保することができる。
【0021】
上述した課題を解決するために、本発明は、燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置の製造方法であって、セル配列の各燃料電池セルの端部に形成された電極に導電性を有する接着剤を塗布する塗布工程と、集電体をセル配列に対して取り付ける取付工程であって、集電体が、複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、集電体をセル配列に対して押し付けることにより、集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入し、接着剤に弾性片を接触させた状態で、集電体を弾性片の弾性力によってセル配列に対して取り付ける、取付工程と、接着剤を硬化させ、弾性片の位置が燃料電池セルの電極に対して変位することを防止する硬化工程と、を備えたことを特徴としている。
【0022】
上述のように、取付孔を有する集電体をセル配列に対して押し付けて、集電体をセル配列に弾性片によって弾性的に取り付ける場合、燃料電池セルの製造寸法精度が高くないことに起因して、一部の弾性片が燃料電池セルの電極と物理的に接触しないおそれがある。即ち、片当たりが発生するおそれがある。片当たりを防止するには、弾性片の弾性力を大きく設定すればよい。ところが、弾性片の弾性力が大きいと、集電体をセル配列に取り付ける際に、弾性片によって燃料電池セルの電極を損傷させてしまうおそれがある。したがって、設定可能な弾性片の弾性力の大きさには限界がある。
【0023】
そこで、本発明では、先ず、セル配列の燃料電池セルに導電性を有するペースト状の接着剤を塗布する。このとき接着剤の粘度を調整して、接着剤を電極表面に厚めに塗布することが好ましい。次に、集電体をセル配列に対して取り付ける。集電体がセル配列に取り付けられた状態では、一部の弾性片は接着剤に物理的に接触するが、残りの弾性片は、製造寸法のばらつきにより、電極に物理的に接触しないおそれがある。しかしながら、本発明では、すべての弾性片を、少なくとも厚みのあるペースト状の接着剤の層に接触させることはできる。好ましくは、弾性片を接着剤の層の中に埋没させることができる。したがって、弾性片が電極に直接的に接触しないとしても、弾性片を接着剤には接触させることができる。そして、この状態で接着剤を硬化させることにより、硬化した接着剤を介して、弾性片が電極に対して変位しないように、弾性片を電極に固定することができる。接着剤は電気導電性を有するので、弾性片と電極とが接着剤により物理的に連結されることにより、弾性片と電極とが電気的に接続された状態を確保することができる。
【0024】
このように本発明では、電極に当接していない弾性片と電極とを導電性を有する接着剤により物理的に連結すると共に、電気的に接続することができる。したがって、本発明では、弾性片の弾性力を低く設定しても、燃料電池セルの寸法精度を高めることなく、集電体とセル配列との間の電気的接触を確保することができると共に、運転中の高温状態における弾性力低下に伴う弾性片と電極との間の導通不良の発生を防止することができる。
【0025】
上述した課題を解決するために、本発明は、燃料電池モジュールに収容された複数の燃料電池セルからなるセル配列と、セル配列を構成する複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に電気的に接続された集電体と、を備えた固体酸化物型燃料電池装置の製造方法であって、複数の燃料電池セルの端部に形成された電極に導電性の接着剤を塗布する塗布工程と、複数の燃料電池セルをセル配列に組み付け可能とするように、複数の燃料電池セルに塗布された接着剤を第1硬化させる第1硬化工程と、複数の燃料電池セルによりセル配列を形成するモジュール化工程と、集電体をセル配列に対して取り付ける取付工程であって、集電体が、複数の燃料電池セルの端部をそれぞれ挿入するための複数の取付孔が形成された金属板であり、各取付孔には複数の弾性片が設けられており、集電体をセル配列に対して押し付けることにより、集電体の各取付孔に、対応する燃料電池セルの端部を挿入し、弾性片を第1硬化された接着剤に弾性的に当接させた状態で、集電体を弾性片の弾性力によってセル配列に対して取り付ける、取付工程と、第1硬化された接着剤を加熱して第2硬化させる第2硬化工程であって、第2硬化の進行中において、弾性片の弾性力により、弾性片の一部を接着剤内に沈み込ませ、弾性片の一部が接着剤内に沈み込んだ状態で接着剤を完全硬化させて、接着剤を介して弾性片と電極とを接着し、弾性片の位置が燃料電池セルの電極に対して変位することを防止する第2硬化工程と、を備えたことを特徴としている。
【0026】
このように構成された本発明によれば、燃料電池セルが単体の状態で燃料電池セルの電極に接着剤を塗布して、その後の組み付け作業を実行可能な程度まで接着剤を硬化(第1硬化)させる。そして、その後、複数の燃料電池セルをセル配列にモジュール化する。本発明とは異なり、モジュール化後に各燃料電池セルの電極に接着剤を塗布する場合、複数の燃料電池セルが密集して配置されているため、導通を確保するように確実に接着剤を塗布することは困難かつ非常に手間が掛る。しかしながら、本発明では、単体の状態で燃料電池セルに対して接着剤を塗布して、硬化させるので、良好な作業性を確保することができる。
【0027】
また、本発明では、セル配列に対して集電体を取り付けた後、さらに、接着剤を完全硬化させる(第2硬化)。この第2硬化により、第1硬化していた接着剤の層に弾性片を接着させることができる。即ち、弾性片が接着剤の層に対して弾性的に当接しているので、第2硬化の進行中に、この弾性力により弾性片の一部を接着剤の層に沈み込ませ、弾性片の一部が沈み込んだ状態で接着剤の第2硬化を完了させることができる。弾性片の一部が接着剤に沈み込むことにより、弾性片と接着剤との間の接触面積を増大させ、より強固に弾性片を電極に対して固定することができる。
【0028】
このように、本発明は、良好な作業性、弾性片と電極との間の増大された固定強度、運転中の高温環境に起因する弾性片の弾性力低下に伴う弾性片と電極との間の導通不良の発生防止を実現できる、実用性に優れた発明である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の固体酸化物型燃料電池装置及びその製造方法によれば、燃料電池セルの電極の破損を防止できると共に、燃料電池セルと集電体との電気的接続を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)を示す全体構成図である。この
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0032】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して燃料電池セル収容容器8が配置されている。この燃料電池セル収容容器8内の内部には発電室10が構成され、この発電室10の中には複数の燃料電池セル16が同心円状に配置されており、これらの燃料電池セル16により、燃料ガスと酸化剤ガスである空気の発電反応が行われる。
【0033】
各燃料電池セル16の上端部には、排気集約室18が取り付けられている。各燃料電池セル16において発電反応に使用されずに残った残余の燃料(オフガス)は、上端部に取り付けられた排気集約室18に集められ、この排気集約室18の天井面に設けられた複数の噴出口から流出される。流出した燃料は、発電室10内で発電に使用されずに残った空気により燃焼され、排気ガスが生成されるようになっている。
【0034】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この純水タンクから供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された炭化水素系の原燃料ガスの流量を調整する燃料供給装置である燃料ブロア38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
【0035】
なお、燃料ブロア38を通過した原燃料ガスは、燃料電池モジュール2内に配置された脱硫器36と、熱交換器34、電磁弁35を介して燃料電池セル収容容器8の内部に導入される。脱硫器36は、燃料電池セル収容容器8の周囲に環状に配置されており、原燃料ガスから硫黄を除去するようになっている。また、熱交換器34は、脱硫器36において温度上昇した高温の原燃料ガスが直接電磁弁35に流入し、電磁弁35が劣化されるのを防止するために設けられている。電磁弁35は、燃料電池セル収容容器8内への原燃料ガスの供給を停止するために設けられている。
【0036】
補機ユニット4は、空気供給源40から供給される空気の流量を調整する酸化剤ガス供給装置である空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)を備えている。
【0037】
さらに、補機ユニット4には、燃料電池モジュール2からの排気ガスの熱を回収するための温水製造装置50が備えられている。この温水製造装置50には、水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュール2により発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0038】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置(SOFC)の燃料電池モジュールに内蔵された燃料電池セル収容容器の内部構造を説明する。
図2は燃料電池セル収容容器の断面図であり、
図3は燃料電池セル収容容器の主な部材を分解して示した断面図である。
図2に示すように、燃料電池セル収容容器8内の空間には、複数の燃料電池セル16が同心円状に配列され、その周囲を取り囲むように燃料流路である燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、酸化剤ガス供給流路22が順に同心円状に形成されている。ここで、排ガス排出流路21及び酸化剤ガス供給流路22は、酸化剤ガスを供給/排出する酸化剤ガス流路として機能する。
【0039】
まず、
図2に示すように、燃料電池セル収容容器8は、概ね円筒状の密閉容器であり、その側面には、発電用の空気を供給する酸化剤ガス流入口である酸化剤ガス導入パイプ56、及び排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58が接続されている。さらに、燃料電池セル収容容器8の上端面からは、排気集約室18から流出した残余燃料に点火するための点火ヒーター62が突出している。
【0040】
図2及び
図3に示すように、燃料電池セル収容容器8の内部には、燃料電池セル16の周囲を取り囲むように、内側から順に、発電室構成部材である内側円筒部材64、外側円筒部材66、内側円筒容器68、外側円筒容器70が配置されている。上述した燃料ガス供給流路20、排ガス排出流路21、及び酸化剤ガス供給流路22は、これらの円筒部材及び円筒容器の間に夫々構成される流路であり、隣り合う流路の間で熱交換が行われる。
即ち、排ガス排出流路21は燃料ガス供給流路20を取り囲むように配置され、酸化剤ガス供給流路22は排ガス排出流路21を取り囲むように配置されている。また、燃料電池セル収容容器8の下端側の開放空間は、燃料を各燃料電池セル16に分散させる燃料ガス分散室76の底面を構成する概ね円形の分散室底部材72により塞がれている。
【0041】
内側円筒部材64は、概ね円筒状の中空体であり、その上端及び下端は開放されている。また、内側円筒部材64の内壁面には、分散室形成板である円形の第1固定部材63が気密的に溶接されている。この第1固定部材63の下面と、内側円筒部材64の内壁面と、分散室底部材72の上面により、燃料ガス分散室76が画定される。また、第1固定部材63には、各々燃料電池セル16を挿通させる複数の挿通穴63aが形成されており、各燃料電池セル16は、各挿通穴63aに挿通された状態で、セラミック接着剤により第1固定部材63に接着されている。このように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池モジュール2を構成する部材間相互の接合部には、セラミック接着剤が充填され、硬化されることにより、各部材が相互に気密的に接合されている。
【0042】
外側円筒部材66は、内側円筒部材64の周囲に配置される円筒状の管であり、内側円筒部材64との間に円環状の流路が形成されるように、内側円筒部材64と概ね相似形に形成されている。さらに、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間には中間円筒部材65が配置されている。中間円筒部材65は、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間に配置された円筒状の管であり、内側円筒部材64の外周面と中間円筒部材65の内周面の間には改質部94が構成されている。また、中間円筒部材65の外周面と、外側円筒部材66の内周面の間の円環状の空間は、燃料ガス供給流路20として機能する。このため、改質部94及び燃料ガス供給流路20は、燃料電池セル16における発熱及び排気集約室18上端における残余燃料の燃焼により熱を受ける。また、内側円筒部材64の上端部と外側円筒部材66の上端部は溶接により気密的に接合されており、燃料ガス供給流路20の上端は閉鎖されている。さらに、中間円筒部材65の下端と、内側円筒部材64の外周面は、溶接により気密的に接合されている。
【0043】
内側円筒容器68は、外側円筒部材66の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、外側円筒部材66との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が外側円筒部材66と概ね相似形に形成されている。この内側円筒容器68は、内側円筒部材64の上端の開放部を覆うように配置される。外側円筒部材66の外周面と、内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間は、排ガス排出流路21(
図2)として機能する。この排ガス排出流路21は、内側円筒部材64の上端部に設けられた複数の小穴64aを介して内側円筒部材64の内側の空間と連通している。また、内側円筒容器68の下部側面には、排ガス流出口である排ガス排出パイプ58が接続されており、排ガス排出流路21が排ガス排出パイプ58に連通される。
【0044】
排ガス排出流路21の下部には、燃焼触媒60及びこれを加熱するためのシースヒーター61が配置されている。
燃焼触媒60は、排ガス排出パイプ58よりも上方に、外側円筒部材66の外周面と内側円筒容器68の内周面の間の円環状の空間に充填された触媒である。排ガス排出流路21を下降した排気ガスは、燃焼触媒60を通過することにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58から排出される。
シースヒーター61は、燃焼触媒60の下方の、外側円筒部材66の外周面を取り囲むように取り付けられた電気ヒーターである。固体酸化物型燃料電池装置1の起動時において、シースヒーター61に通電することにより、燃焼触媒60が活性温度まで加熱される。
【0045】
外側円筒容器70は、内側円筒容器68の周囲に配置される円形断面のカップ状の部材であり、内側円筒容器68との間にほぼ一定幅の円環状の流路が形成されるように、側面が内側円筒容器68と概ね相似形に形成されている。内側円筒容器68の外周面と、外側円筒容器70の内周面の間の円環状の空間は、酸化剤ガス供給流路22として機能する。
また、外側円筒容器70の下部側面には、酸化剤ガス導入パイプ56が接続されており、酸化剤ガス供給流路22が酸化剤ガス導入パイプ56に連通される。
【0046】
分散室底部材72は、概ね円形の皿状の部材であり、内側円筒部材64の内壁面にセラミック接着剤により気密的に固定される。これにより、第1固定部材63と分散室底部材72の間に、燃料ガス分散室76が構成される。また、分散室底部材72の中央には、バスバー80(
図2)を挿通させるための挿通管72aが設けられている。各燃料電池セル16に電気的に接続されたバスバー80は、この挿通管72aを通して燃料電池セル収容容器8の外部に引き出される。また、挿通管72aには、セラミック接着剤が充填され、燃料ガス分散室78の気密性が確保されている。さらに、挿通管72aの周囲には、断熱材72b(
図2)が配置されている。
【0047】
内側円筒容器68の天井面から垂下するように、発電用の空気を噴射するための、円形断面の酸化剤ガス噴射用パイプ74が取り付けられている。この酸化剤ガス噴射用パイプ74は、内側円筒容器68の中心軸線上を鉛直方向に延び、その周囲の同心円上に各燃料電池セル16が配置される。酸化剤ガス噴射用パイプ74の上端が内側円筒容器68の天井面に取り付けられることにより、内側円筒容器68と外側円筒容器70の間に形成されている酸化剤ガス供給流路22と酸化剤ガス噴射用パイプ74が連通される。酸化剤ガス供給流路22を介して供給された空気は、酸化剤ガス噴射用パイプ74の先端から下方に噴射され、第1固定部材63の上面に当たって、発電室10内全体に広がる。
【0048】
燃料ガス分散室76は、第1固定部材63と分散室底部材72の間に構成される円筒形の気密性のあるチャンバーであり、その上面に各燃料電池セル16が林立されている。第1固定部材63の上面に取り付けられた各燃料電池セル16は、その内側の燃料極が、燃料ガス分散室76の内部と連通されている。各燃料電池セル16の下端部は、第1固定部材63の挿通穴63aを貫通して燃料ガス分散室76の内部に突出し、各燃料電池セル16は第1固定部材63に、接着により固定されている。
【0049】
図2に示すように、内側円筒部材64には、第1固定部材63よりも下方に複数の小穴64bが設けられている。内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間は、複数の小穴64bを介して燃料ガス分散室76内に連通されている。供給された燃料は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の空間を一旦上昇した後、内側円筒部材64の外周と中間円筒部材65の内周の間の空間を下降し、複数の小穴64bを通って燃料ガス分散室76内に流入する。燃料ガス分散室76に流入した燃料は、燃料ガス分散室76の天井面(第1固定部材63)に取り付けられた各燃料電池セル16の燃料極に分配される。
【0050】
さらに、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16の下端部は、燃料ガス分散室76内でバスバー80に電気的に接続され、挿通管72aを通して電力が外部に引き出される。バスバー80は、各燃料電池セル16により生成された電力を、燃料電池セル収容容器8の外部へ取り出すための細長い金属導体であり、碍子78を介して分散室底部材72の挿通管72aに固定されている。バスバー80は、燃料ガス分散室76の内部において、各燃料電池セル16に取り付けられた集電体82と電気的に接続されている。また、バスバー80は、燃料電池セル収容容器8の外部において、インバータ54(
図1)に接続される。なお、集電体82は、排気集約室18内に突出している各燃料電池セル16の上端部にも取り付けられている(
図4)。これら上端部及び下端部の集電体82により、複数の燃料電池セル16が電気的に並列に接続されると共に、並列に接続された複数組の燃料電池セル16が電気的に直列に接続され、この直列接続の両端が夫々バスバー80に接続される。
【0051】
次に、
図4及び
図5を参照して、排気集約室の構成を説明する。
図4は排気集約室の部分を拡大して示す断面図であり、
図5は、
図2におけるV−V断面である。
図4に示すように、排気集約室18は、各燃料電池セル16の上端部に取り付けられたドーナツ型断面のチャンバーであり、この排気集約室18の中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74が貫通して延びている。
【0052】
図5に示すように、内側円筒部材64の内壁面には、排気集約室18支持用の3つのステー64cが等間隔に取り付けられている。
図4に示すように、各ステー64cは金属製の薄板を折り曲げた小片であり、排気集約室18を各ステー64cの上に載置することにより、排気集約室18は内側円筒部材64と同心円上に位置決めされる。これにより、排気集約室18の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の隙間、及び排気集約室18の内周面と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面との間の隙間は、全周で均一になる(
図5)。
【0053】
排気集約室18は、集約室上部材18a及び集約室下部材18bが気密的に接合されることにより構成されている。
集約室下部材18bは、上方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための円筒部が設けられている。
集約室上部材18aは、下方が開放された円形皿状の部材であり、その中央には、酸化剤ガス噴射用パイプ74を貫通させるための開口部が設けられている。集約室上部材18aは、集約室下部材18bの上方に開口したドーナツ型断面の領域に嵌め込まれる形状に構成されている。
【0054】
集約室下部材18bの周囲の壁の内周面と集約室上部材18aの外周面の間の隙間にはセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。
また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、大径シールリング19aが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。大径シールリング19aは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
【0055】
一方、集約室下部材18b中央の円筒部の外周面と、集約室上部材18a中央の開口部の縁の間にもセラミック接着剤が充填され、硬化されており、この接合部の気密性が確保されている。また、この接合部に充填されたセラミック接着剤により形成されたセラミック接着剤層の上には、小径シールリング19bが配置され、セラミック接着剤層を覆っている。小径シールリング19bは円環状の薄板であり、セラミック接着剤の充填後、充填されたセラミック接着剤を覆うように配置され、接着剤の硬化により排気集約室18に固定される。
【0056】
集約室下部材18bの底面には複数の円形の挿通穴18cが設けられている。各挿通穴18cには燃料電池セル16の上端部が夫々挿通され、各燃料電池セル16は各挿通穴18cを貫通して延びている。各燃料電池セル16が貫通している集約室下部材18bの底面上にはセラミック接着剤が流し込まれ、これが硬化されることにより、各燃料電池セル16の外周と各挿通穴18cの間の隙間が気密的に充填されると共に、各燃料電池セル16が集約室下部材18bに固定されている。
【0057】
さらに、集約室下部材18bの底面上に流し込まれたセラミック接着剤の上には、円形薄板状のカバー部材19cが配置され、セラミック接着剤の硬化により集約室下部材18bに固定されている。カバー部材19cには、集約室下部材18bの各挿通穴18cと同様の位置に複数の挿通穴が設けられており、各燃料電池セル16の上端部はセラミック接着剤の層及びカバー部材19cを貫通して延びている。
【0058】
一方、排気集約室18の天井面には、集約された燃料ガスを噴出させるための複数の噴出口18dが設けられている(
図5)。各噴出口18dは、集約室上部材18aに、円周上に配置されている。発電に使用されずに残った燃料は、各燃料電池セル16の上端から排気集約室18内に流出し、排気集約室18内で集約された燃料は各噴出口18dから流出し、そこで燃焼される。
【0059】
次に、
図2を参照して、燃料供給源30から供給される原燃料ガスを改質するための構成について説明する。
まず、内側円筒部材64と外側円筒部材66の間の空間で構成されている燃料ガス供給流路20の下部には、水蒸気改質用の水を蒸発させるための蒸発部86が設けられている。蒸発部86は、外側円筒部材66の下部内周に取り付けられたリング状の傾斜板86a及び水供給パイプ88から構成されている。また、蒸発部86は、発電用の空気を導入するための酸化剤ガス導入パイプ56よりも下方で、排気ガスを排出する排ガス排出パイプ58よりも上方に配置されている。傾斜板86aは、リング状に形成された金属の薄板であり、その外周縁が外側円筒部材66の内壁面に取り付けられる。一方、傾斜板86aの内周縁は外周縁よりも上方に位置し、傾斜板86aの内周縁と、内側円筒部材64の外壁面との間には隙間が設けられている。
【0060】
水供給パイプ88は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプであり、水流量調整ユニット28から供給された水蒸気改質用の水が、水供給パイプ88を介して蒸発部86に供給される。水供給パイプ88の上端は、傾斜板86aを貫通して傾斜板86aの上面側まで延び、傾斜板86aの上面側に供給された水は、傾斜板86aの上面と外側円筒部材66の内壁面の間に留まる。傾斜板86aの上面側に供給された水は、そこで蒸発され水蒸気が生成される。
【0061】
また、蒸発部86の下方には、原燃料ガスを燃料ガス供給流路20内に導入するための燃料ガス導入部が設けられている。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、燃料ガス供給パイプ90を介して燃料ガス供給流路20に導入される。燃料ガス供給パイプ90は内側円筒部材64の下端から燃料ガス供給流路20内に鉛直方向に延びるパイプである。
また、燃料ガス供給パイプ90の上端は、傾斜板86aよりも下方に位置している。燃料ブロア38から送られた原燃料ガスは、傾斜板86aの下側に導入され、傾斜板86aの傾斜により流路を絞られながら傾斜板86aの上側へ上昇する。傾斜板86aの上側へ上昇した原燃料ガスは、蒸発部86で生成された水蒸気と共に上昇する。
【0062】
燃料ガス供給流路20内の蒸発部86上方には、燃料ガス供給流路隔壁92が設けられている。燃料ガス供給流路隔壁92は、外側円筒部材66の内周と中間円筒部材65の外周の間の円環状の空間を上下に隔てるように設けられた円環状の金属板である。この燃料ガス供給流路隔壁92の円周上には等間隔に複数の噴射口92aが設けられており、これらの噴射口92aにより燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間と下側の空間が連通されている。燃料ガス供給パイプ90から導入された原燃料ガス及び蒸発部86で生成された水蒸気は、一旦、燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留した後、各噴射口92aを通って燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間に噴射される。各噴射口92aから燃料ガス供給流路隔壁92の上側の広い空間に噴射されると、原燃料ガス及び水蒸気は急激に減速され、ここで十分に混合される。
【0063】
さらに、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の、円環状の空間の上部には、改質部94が設けられている。改質部94は、各燃料電池セル16の上部と、その上方の排気集約室18の周囲を取り囲むように配置されている。改質部94は、内側円筒部材64の外壁面に取り付けられた触媒保持板(図示せず)と、これにより保持された改質触媒96によって構成されている。
【0064】
このように、改質部94内に充填された改質触媒96に、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間で混合された原燃料ガス及び水蒸気が接触すると、改質部94内においては、式(1)に示す水蒸気改質反応SRが進行する。
C
mH
n+xH
2O → aCO
2+bCO+cH
2 (1)
【0065】
改質部94において改質された燃料ガスは、中間円筒部材65の内周と内側円筒部材64の外周の間の空間を下方に流れ、燃料ガス分散室76に流入して、各燃料電池セル16に供給される。水蒸気改質反応SRは吸熱反応であるが、反応に要する熱は、排気集約室18から流出するオフガスの燃焼熱、及び各燃料電池セル16において発生する発熱により供給される。
【0066】
次に、
図6を参照して、燃料電池セル16について説明する。
本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1においては、燃料電池セル16として、固体酸化物を用いた円筒横縞型セルが採用されている。各燃料電池セル16上には、複数の単セル16aが横縞状に形成されており、これらが電気的に直列に接続されることにより1本の燃料電池セル16が構成されている。各燃料電池セル16は、その一端がアノード(陽極)、他端がカソード(陰極)となるように構成され、複数の燃料電池セル16のうちの半数は上端がアノード、下端がカソードとなるように配置され、残りの半数は上端がカソード、下端がアノードとなるように配置されている。
【0067】
図6(a)は、下端がカソードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図であり、
図6(b)は、下端がアノードにされている燃料電池セル16の下端部を拡大して示す断面図である。
【0068】
図6に示すように、燃料電池セル16は、細長い円筒状の多孔質支持体97と、この多孔質支持体97の外側に横縞状に形成された複数の層から形成されている。多孔質支持体97の周囲には、内側から順に、燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、空気極層101が夫々横縞状に形成されている。このため、燃料ガス分散室76を介して供給された燃料ガスは、各燃料電池セル16の多孔質支持体97の内部を流れ、酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射された空気は、空気極層101の外側を流れる。燃料電池セル16上に形成された各単セル16aは、一組の燃料極層98、反応抑制層99、固体電解質層100、及び空気極層101から構成されている。1つの単セル16aの燃料極層98は、インターコネクタ層102を介して、隣接する単セル16aの空気極層101に電気的に接続されている。これにより、1本の燃料電池セル16上に形成された複数の単セル16aが、電気的に直列に接続される。
【0069】
図6(a)に示すように、燃料電池セル16のカソード側端部には、多孔質支持体97の外周に電極層103aが形成され、この電極層103aの外側にリード膜層104aが形成されている。カソード側端部においては、端部に位置する単セル16aの空気極層101と電極層103aが、インターコネクタ層102により電気的に接続されている。これらの電極層103a及びリード膜層104aは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。電極層103aは、リード膜層104aよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103aに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの空気極層101がインターコネクタ層102、電極層103aを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104aの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104aの外周で第1固定部材63に固定される。
【0070】
図6(b)に示すように、燃料電池セル16のアノード側端部においては、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が延長されており、燃料極層98の延長部が電極層103bとして機能する。電極層103bの外側にはリード膜層104bが形成されている。
これらの電極層103b及びリード膜層104bは、燃料電池セル16端部において第1固定部材63を貫通し、第1固定部材63よりも下方に突出するように形成されている。
電極層103bは、リード膜層104bよりも下方まで形成されており、外部に露出された電極層103bに集電体82が電気的に接続されている。これにより、端部に位置する単セル16aの燃料極層98が、一体的に形成された電極層103bを介して集電体82に接続され、図中の矢印のように電流が流れる。また、第1固定部材63の挿通穴63aの縁とリード膜層104bの間の隙間には、セラミック接着剤が充填されており、燃料電池セル16は、リード膜層104bの外周で第1固定部材63に固定される。
【0071】
図6(a)(b)においては、各燃料電池セル16の下端部の構成を説明したが、各燃料電池セル16の上端部における構成も同様である。なお、上端部においては、各燃料電池セル16は、排気集約室18の集約室下部材18bに固定されているが、固定部分の構成は下端部における第1固定部材63に対する固定と同様である。
【0072】
次に、多孔質支持体97及び各層の構成を説明する。
多孔質支持体97は、本実施形態においては、フォルステライト粉末、及びバインダーの混合物を押し出し成形し、焼結することにより形成されている。
燃料極層98は、本実施形態においては、NiO粉末及び10YSZ(10mol%Y
2O
3−90mol%ZrO
2)粉末の混合物により構成された導電性の薄膜である。
【0073】
反応抑制層99は、本実施形態においては、セリウム系複合酸化物(LDC40。すなわち、40mol%のLa
2O
3−60mol%のCeO
2)等により構成された薄膜であり、これにより、燃料極層98と固体電解質層100の間の化学反応を抑制している。
固体電解質層100は、本実施形態においては、La
0.9Sr
0.1Ga
0.8Mg
0.2O
3の組成のLSGM粉末により構成された薄膜である。この固体電解質層100を介して酸化物イオンと水素又は一酸化炭素が反応することにより電気エネルギーが生成される。
【0074】
空気極層101は、本実施形態においては、La
0.6Sr
0.4Co
0.8Fe
0.2O
3の組成の粉末により構成された導電性の薄膜である。
インターコネクタ層102は、本実施形態においては、SLT(ランタンドープストロンチウムチタネート)により構成された導電性の薄膜である。燃料電池セル16上の隣接する単セル16aはインターコネクタ層102を介して接続される。
電極層103a、103bは、本実施形態においては、燃料極層98と同一の材料で形成されている。
リード膜層104a、104bは、本実施形態においては、固体電解質層100と同一の材料で形成されている。
【0075】
なお、リード膜層104a、104bは、固体電解質層100と同じ緻密な層であり、セラミック接着剤と接着されることにより、気密性を確保することができる。
また、本実施形態では、電極層103a、103bが燃料極層98と同一の多孔質材料で形成されているが、これに限らず、電極層103a、103bが、反応抑制層99や空気極層101と同一の多孔質材料を含む他の電気導電性の多孔質材料で形成されていてもよい。例えば、燃料電池セル16の端部に最も近い位置に形成された単セル16aの空気極層101を更に端部方向に延長し、その延長した部分を電極層としてもよい。
【0076】
次に、
図7を参照して、集電体について説明する。
図7は、集電体82を上から見た図である。
図7(a),
図7(b)はそれぞれ燃料電池セル16の上端部,下端部に取り付けられる集電体82A,82Bを示している。
図7(c)は、集電体82A,82Bに形成された取付孔84の拡大図である。
【0077】
集電体82は、弾性及び導電性を有する薄い板材を機械加工することにより形成されている。本実施形態では、ニッケルの板材を用いて形成されている。
集電体82Aは、2つの略半円形の集電板83a,83bからなる。集電体82Aは、これら集電板83a,83bが隣接して配置されることにより、略円形の外形を有すると共に、中央部分に酸化剤ガス噴射用パイプ74を挿入するための円形の開口が形成される。
【0078】
集電体82Bは、1つの略半円形の集電板83cと2つの略四分円形の集電板83d,83eからなる。集電体82Bは、これら集電板83c−83eが隣接して配置されることにより、略円形の外形を有すると共に、中央部分に円形の開口が形成される。集電板83d,83eには、バスバー80を接続するための接続部83f,83gが設けられている。
【0079】
本実施形態では、複数(この例では76本)の燃料電池セル16が、19本毎の4つのグループに分割されている。そして、
図2に示すように燃料電池セル16の上端部及び下端部に集電体82が接続されると、集電体82を介して、各グループの燃料電池セル16が並列接続され、さらに4つのグループが直列接続される。即ち、例えば、一方のバスバー80に接続された集電板83dがアノード(陽極)であるとすると、集電板83dに接続された第1グループの燃料電池セル16を介して、集電板83aの下側半分がカソード(陰極),上側半分がアノードとなり、さらに第2グループの燃料電池セル16を介して、集電板83cの左側半分がカソードとなる。同様に、集電板83cの右側半分がアノードとなり、第3グループの燃料電池セル16を介して、集電板83bの上側半分がカソード,下側半分がアノードとなり、最後に第4グループの燃料電池セル16を介して、他方のバスバー80に接続された集電板83eがカソードとなる。
【0080】
図7(c)に示すように、各集電板の取付孔84は、機械加工による放射状の切込みにより形成されている。1つの取付孔84は、6本の切込み線により形成されている。切込み線の両端をつなぐ仮想線84bは、燃料電池セル16の外形寸法(仮想線84c)よりも大きな円形を形成する。この切込み線により、この仮想線84b(即ち、取付孔84の内周縁)から、円の中心方向(径方向内側)へ延出するように12個の弾性片84aが形成されている。
【0081】
各弾性片84aは、先端に向かうにつれて先細りとなる略扇形の形状であり、基端部(仮想線84b)に対して先端部が弾性的に撓むことが可能である。従って、取付孔84に燃料電池セル16が挿入されるとき、弾性片84aの先端部は燃料電池セル16の外周面と当接して外周面に沿って撓み、弾性片84aは燃料電池セル16に弾性的に係合する。そして、集電板に対して燃料電池セル16が所定位置まで挿入されると、集電板は、弾性片84aの弾性力によって燃料電池セル16に保持される。
【0082】
次に、
図1及び
図2を参照して、固体酸化物型燃料電池装置1の作用を説明する。
まず、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程において、燃料ブロア38が起動され、燃料の供給が開始されると共に、シースヒーター61への通電が開始される。シースヒーター61への通電が開始されることにより、その上方に配置された燃焼触媒60が加熱されると共に、内側に配置された蒸発部86も加熱される。燃料ブロア38により供給された燃料は、脱硫器36、熱交換器34、電磁弁35を介して、燃料ガス供給パイプ90から燃料電池セル収容容器8の内部に流入する。流入した燃料は、燃料ガス供給流路20内を上端まで上昇した後、改質部94内を下降し、内側円筒部材64の下部に設けられた小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、改質部94内の改質触媒96の温度が十分に上昇していないため、燃料の改質は行われない。
【0083】
燃料ガス分散室76に流入した燃料ガスは、燃料ガス分散室76の第1固定部材63に取り付けられた各燃料電池セル16の内側(燃料極側)を通って排気集約室18に流入する。なお、固体酸化物型燃料電池装置1の起動直後においては、各燃料電池セル16の温度が十分に上昇しておらず、また、インバータ54への電力の取り出しも行われていないため、発電反応は発生しない。
【0084】
排気集約室18に流入した燃料は、排気集約室18の噴出口18dから噴出される。噴出口18dから噴出された燃料は、点火ヒーター62により点火され、そこで燃焼される。この燃焼により、排気集約室18の周囲に配置された改質部94が加熱される。また、燃焼により生成された排気ガスは、内側円筒部材64の上部に設けられた小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。高温の排気ガスは、排ガス排出流路21内を下降し、その内側に設けられた燃料ガス供給流路20を流れる燃料、外側に設けられた酸化剤ガス供給流路22内を流れる発電用の空気を加熱する。さらに、排気ガスは、排ガス排出流路21内に配置された燃焼触媒60を通ることにより一酸化炭素が除去され、排ガス排出パイプ58を通って燃料電池セル収容容器8から排出される。
【0085】
排気ガス及びシースヒーター61により蒸発部86が加熱されると、蒸発部86に供給された水蒸気改質用の水が蒸発され、水蒸気が生成される。水蒸気改質用の水は、水流量調整ユニット28により、水供給パイプ88を介して燃料電池セル収容容器8内の蒸発部86に供給される。蒸発部86で生成された水蒸気と、燃料ガス供給パイプ90を介して供給された燃料は、一旦、燃料ガス供給流路20内の燃料ガス供給流路隔壁92の下側の空間に滞留し、燃料ガス供給流路隔壁92に設けられた複数の噴射口92aから噴射される。噴射口92aから勢いよく噴射された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路隔壁92の上側の空間内で減速されることにより、十分に混合される。
【0086】
混合された燃料及び水蒸気は、燃料ガス供給流路20内を上昇し、改質部94に流入する。改質部94の改質触媒96が改質可能な温度まで上昇している状態においては、燃料及び水蒸気の混合気が改質部94を通過する際、水蒸気改質反応が発生し、混合気が水素を多く含む燃料に改質される。改質された燃料は、小穴64bを通って燃料ガス分散室76に流入する。小穴64bは燃料ガス分散室76の周囲に多数設けられ、燃料ガス分散室76として十分な容積が確保されているため、改質された燃料は、燃料ガス分散室76内に突出している各燃料電池セル16に均等に流入する。
【0087】
一方、空気流量調整ユニット45により供給された酸化剤ガスである空気は、酸化剤ガス導入パイプ56を介して酸化剤ガス供給流路22に流入する。酸化剤ガス供給流路22に流入した空気は、内側を流れる排気ガスにより加熱されながら酸化剤ガス供給流路22内を上昇する。酸化剤ガス供給流路22内を上昇した空気は、燃料電池セル収容容器8内の上端部で中央に集められ、酸化剤ガス供給流路22に連通された酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入する。酸化剤ガス噴射用パイプ74に流入した空気は下端から発電室10内に噴射され、噴射された空気は第1固定部材63の上面に当たって発電室10内全体に広がる。発電室10内に流入した空気は、排気集約室18の外周壁と内側円筒部材64の内周壁の間の隙間、及び排気集約室18の内周壁と酸化剤ガス噴射用パイプ74の外周面の間の隙間を通って上昇する。
【0088】
この際、各燃料電池セル16の外側(空気極側)を通って流れる空気の一部は発電反応に利用される。また、排気集約室18の上方に上昇した空気の一部は、排気集約室18の噴出口18dから噴出する燃料の燃焼に利用される。燃焼により生成された排気ガス、及び発電、燃焼に利用されずに残った空気は、小穴64aを通って排ガス排出流路21に流入する。排ガス排出流路21に流入した排気ガス及び空気は、燃焼触媒60により一酸化炭素が除去された後、排出される。
【0089】
このように、各燃料電池セル16が発電可能な温度である650℃程度まで上昇し、各燃料電池セル16の内側(燃料極側)に改質された燃料が流れ、外側(空気極側)に空気が流れると、化学反応により起電力が発生する。この状態において、燃料電池セル収容容器8から引き出されているバスバー80にインバータ54が接続されると、各燃料電池セル16から電力が取り出され、発電が行われる。
【0090】
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池装置1においては、発電用の空気は、発電室10の中央に配置された酸化剤ガス噴射用パイプ74から噴射され、発電室10内を排気集約室18と内側円筒部材64の間の均等な隙間及び排気集約室18と酸化剤ガス噴射用パイプ74の間の均等な隙間を通って上昇する。このため、発電室10内の空気の流れは、ほぼ完全に軸対称の流れとなり、各燃料電池セル16の周囲には、ムラなく空気が流れる。これにより、各燃料電池セル16間の温度差が抑制され、各燃料電池セル16で均等な起電力を発生することができる。
【0091】
次に、
図2−
図4,
図8及び
図9を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1の製造工程の概略を説明する。
まず、内側円筒部材64、中間円筒部材65、外側円筒部材66、及び第1固定部材63を溶接により一体に組み立てる(
図3参照)。また、内側円筒部材64と中間円筒部材65の間に設けられる改質部94には、改質触媒96を充填する。さらに、水供給パイプ88及び燃料ガス供給パイプ90も溶接により取り付ける。
【0092】
次に、燃料電池セル16の一方の端部を第1固定部材63の挿通穴63aに挿通し、燃料電池セル16を第1固定部材63に対して治具等により位置決めする。次いで、位置決めされた燃料電池セル16の他方の端部側に、第2固定部材である集約室下部材18bを配置する。
このように、各燃料電池セル16が位置決めされた状態で、集約室下部材18bの上にセラミック接着剤を注入し、カバー部材19cを配置した後、乾燥炉内で加熱することによりセラミック接着剤を硬化させる。これにより、セラミック接着剤層118(
図2参照)が形成される。セラミック接着剤層118により、燃料電池セル16と集約室下部材18bとのセル接合部が気密的に接合される。
なお、各燃料電池セル16は、そのリード膜層104a、104bの部分でセラミック接着剤により接着される(
図6参照)。
【0093】
セラミック接着剤の加熱工程においては、乾燥炉内の温度は、常温から約120分で約60℃まで上昇され、次いで、約20分で約80℃まで上昇され、その後約60分間約80℃に維持される。約80℃の温度を維持した後、乾燥炉内の温度は、約30分で常温に戻される。
この加熱工程により、セラミック接着剤は、以後の製造工程を実施可能な状態まで硬化される。また、後の工程において、セラミック接着剤は、第2の加熱工程を行うことにより、固体酸化物型燃料電池装置1の起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで硬化される。
【0094】
次に、組立体を上下反転し、各燃料電池セル16の先端部が突出している第1固定部材63の上にセラミック接着剤を注入し、カバー部材67を配置した後、乾燥炉内で上述の加熱工程を実施することにより、セラミック接着剤を硬化させる。これにより、セラミック接着剤層122(
図2参照)が形成される。セラミック接着剤層122により、燃料電池セル16と第1固定部材63とのセル接合部が気密的に接合される。
【0095】
次に、
図8に示すように、第1固定部材63から突出している各燃料電池セル16の先端部(上下反転させていないときの下端部)に集電体82が取り付けられ、この集電体82がバスバー80に接続される。集電体82は、複数の燃料電池セル16からなるセル配列に対して、各取付孔84が対応する燃料電池セル16の軸方向の上方に位置するように位置決めされる。そして、集電体82は、上方からセル配列に対して所定の押圧力で押し付けられる。これにより、各取付孔84に燃料電池セル16の端部が挿入され、取付孔84の弾性片84aによる弾性力によって、集電体82はセル配列に取り付けられる。
【0096】
次に、組立体に分散室底部材72を取り付ける。さらに、分散室底部材72の外周面と内側円筒部材64の内周面の間の円環状の隙間に、セラミック接着剤を充填する。また、分散室底部材72の中央に設けられた、挿通管72aの中に、碍子78を配置し、セラミック接着剤を充填する。集電体82から延びる各バスバー80は、この碍子78及びセラミック接着剤を貫通する。この状態で、組立体に対して上述の加熱工程を実行して、セラミック接着剤を硬化させる。
【0097】
次に、
図9に示すように、組立体の上下を反転し、集約室下部材18bから突出するように固定された各燃料電池セル16の先端部に集電体82を取り付ける。さらに、集約室下部材18b上に集約室上部材18aを配置し、集約室上部材18aと集約室下部材18bの隙間に、セラミック接着剤を注入する。また、セラミック接着剤の上に大径シールリング19a,小径シールリング19bを配置する。この状態で、組立体に対して上述の加熱工程を実行して、セラミック接着剤層120a,120b(
図4参照)を形成する。
【0098】
次に、組立体に対して、内側円筒容器68及び外側円筒容器70を溶接又はセラミック接着剤により取り付ける。その後、外側円筒部材66と内側円筒容器68との隙間にセラミック接着剤を充填し、上述の加熱工程により硬化させる。この加熱工程の後に、さらに高い温度(例えば、約650℃)まで昇温する第2の加熱工程が実行され、各セラミック接着剤層を、起動工程における温度上昇に耐え得る状態まで硬化させる。
【0099】
以上の工程により、
図2に示す組立体が製造され、最後に還元工程が行われる。この還元工程では、高温(例えば、約650℃)の炉内で高温の還元ガス(燃料ガス、即ち、水素ガス)を燃料ガス供給パイプ90から供給し、還元ガスが各燃料電池セル16の燃料極側を通過するようにする。これにより、高温の還元ガスの雰囲気内で酸化された燃料極を還元して、例えば、燃料極に含まれていた酸化ニッケルをニッケルに還元することができる。
なお、還元工程は、上述の第2の加熱工程の実施後に組立体を低温に戻してから実行してもよいし、第2の加熱工程に引き続き連続して実行してもよいし、両工程を同時に実行してもよい。
【0100】
次に、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池装置1の製造工程のうち、集電体82を燃料電池セル16のセル配列に固定する方法について詳細に説明する。
先ず、
図10−
図12を参照して、第1実施例を説明する。
図10は集電体の固定方法の説明図であり、
図11は固定方法のフローチャートであり、
図12は集電体が燃料電池セルに固定された状態を示す説明図である。
各燃料電池セル16は、円筒形状の多孔質支持体97を有し、その外周面に、燃料極層98,反応抑制層99,固体電解質層100,空気極層101,電極層103a及び103b,リード膜層104a及び104bが形成されている(
図6参照)。
【0101】
先ず、
図10(a)に示すように、各燃料電池セル16の両端部の電極層103a,103bの露出面に導電性を有する接着剤151が塗布される(
図11のステップS1)。この接着剤塗布工程は、複数の燃料電池セル16がセル配列にモジュール化される前に、即ち、各燃料電池セル16が単体の状態で実行される。
【0102】
本実施形態における接着剤151は、バインダー成分151aに固体粉末151bが混合されたものであり、硬化前はペースト状である。バインダー成分としては、例えば、α−テルピネオール、ノニオン系界面活性剤、ポリビニルブチラール及びポリアセタールの混合材のいずれかを用いることができる。固体粉末は、固体酸化物型燃料電池装置1の運転温度(例えば、約600℃以上)以下で焼結する粒子状の導電性材料であり、例えば、ニッケルの粉末である。粉末は、その平均粒径が、多孔質体である電極層の細孔径と同程度かそれよりも小さくなるように設定される。本実施形態の粉末は、粒径がμmオーダーから数十μm程度である。したがって、接着剤塗布工程において、接着剤151のバインダー成分151a及び固体粉末151bの一部が、多孔質体である電極層の細孔内に進入し、又は、電極層の細孔の開口を塞ぐように配置される。
【0103】
次に、
図10(b)に示すように、接着剤151を加熱して、バインダー成分151aを乾燥させる(
図11のステップS2)。この乾燥工程(第1硬化工程)は、例えば、上述の加熱工程と同様に、乾燥炉内の約80℃の雰囲気中に各燃料電池セル16を配置することにより、バインダー成分151aを乾燥させることができる。乾燥工程における乾燥温度は、バインダー成分151aを乾燥させることはできるが、固定粉末151bを焼結させる温度以下に設定される。なお、上述のセラミック接着剤の加熱工程が、この乾燥工程を兼ねてもよい。
【0104】
乾燥工程において、バインダー成分151aが乾燥することによって、電極層の全体の細孔内又は表面に近い細孔内には、主に固体粉末151bからなる電極保護層152が形成される(電極保護層形成工程)。
本実施形態の電極保護層152は、主に微細なニッケル粉末からなり、電極層よりも硬い層である。そして、電極保護層152は、電極層を覆うことにより、電極層に対する外力から電極層を保護することができる。
【0105】
次に、電極保護層152が形成された燃料電池セル16を、第1固定部材63及び集約室下部材18bに位置決めした状態で固定することにより(
図8参照)、複数の燃料電池セル16からなるセル配列にモジュール化する(
図11のステップS3)。
【0106】
次に、
図10(c)に示すように、モジュール化された燃料電池セル16の両端部にそれぞれ集電体82を取り付ける集電体取付工程を実行する(
図11のステップS4)。具体的には、
図10(c)に仮想線で示すように、集電体82の各集電板83a−83eをセル配列に対して位置決めする。即ち、集電体82の取付孔84の中心が対応する燃料電池セル16の略軸中心上に位置するように、各集電板を配置する。そして、
図10(c)に実線で示すように、集電板82をセル配列に対して押し付ける。これにより、各燃料電池セル16が、対応する取付孔84内に挿入される。このとき、取付孔84の複数の弾性片84aが、燃料電池セル16の外周面に沿って弾性的に撓み、外周面と当接する。そして、各集電板を所定位置まで押し込むと、弾性片84aが電極保護層152に対して弾性的に係合する。これにより、弾性片84aと電極保護層152とが電気的に接続される。
【0107】
集電体82をセル配列に対して取り付ける際に、撓んだ弾性片84aが燃料電池セル16の外周面に形成された電極保護層152と当接しながら、集電体82は所定位置まで移動する。このとき、燃料電池セル16の電極層は、電極保護層152によって覆われているため、弾性片84aとの当接による損傷から保護される。したがって、本実施形態では、大きな弾性力を有する弾性片84aを備えた集電体82を用いることができる。
【0108】
次に、
図10(d)に示すように、弾性片84aと電極保護層152とを接着する接着工程(第2硬化工程)を実行する(
図11のステップS5)。具体的には、電極保護層152を固体粉末151bの融点以下の温度で加熱して、固体粉末151bを焼結させる工程を実施する。焼結により、電極保護層152は体積が収縮して緻密化される。この焼結工程は、集電体82と燃料電池セル16との接着のためだけに実行してもよいが、上述のセラミック接着剤の第2の加熱工程、又は、還元工程が焼結工程を兼ねることもできる。第2の加熱工程、又は、還元工程が焼結工程を兼ねるように構成すると、製造工程を短縮化することができる。
【0109】
本実施形態では、固体粉末151bとして、ニッケル粉末を使用している。このため、固体粉末151bは、約250℃付近から徐々に焼結が開始され、約550℃まで昇温する間に完全に焼結する。したがって、焼結工程を兼ねる第2の加熱工程又は還元工程において、例えば、約650℃まで徐々に昇温する過程で、焼結工程を完了させることができる。
【0110】
一方、本実施形態では、集電体82は、ニッケル板により形成されており、集電体82の温度が上昇すると、板材料の弾性係数が低下し、また、再結晶を起こして弾性力が低下するおそれがある。弾性係数の低下や再結晶による弾性力の低下が起こると、電極保護層152に対する弾性片84aの押圧力が低下し、弾性片84aと電極保護層152との接触が失われるおそれがある。ニッケルの再結晶温度は、約530℃−約660℃である。
【0111】
しかしながら、本実施形態では、集電体82のニッケル板材料が弾性力を有している間に、電極保護層152の焼結が完了又は少なくとも部分的に完了するように、集電体82及び接着剤151に含まれる固体粉末151bの材料が選択されている。具体的には、本実施形態では、集電体82が再結晶化する前に、固体粉末151bが焼結するように、固体粉末151bの粒径等を設定している。したがって、焼結工程において、弾性片84を電極保護層152に接着することができる。
【0112】
さらに、本実施形態では、集電体取付工程の前に、電極層の表面に電極保護層152を形成しているので、集電体を取り付ける際に、電極層が弾性片84aによってひっかかれて、損傷すること(剥がれ)を防止することができる。このため、比較的弾性力の大きな弾性片84aを有する集電体82を用いることができる。即ち、比較的板厚の大きい板材から集電体82を形成することができる。弾性片84aの弾性力が大きいと、固体酸化物型燃料電池1の運転中に燃料電池セル16及び集電体82が高温に晒されたときであっても、弾性片84aが比較的大きな弾性力を保持することができる。これにより、接着工程を実行することによる電極保護層152の接着力が無い場合でも、弾性片84aは、その弾性力で電極層に対して係合し、電気的接続を維持することができる。
【0113】
焼結工程においては、固体粉末151bが加熱されると、少なくとも固体粉末151bの表面部分が流動性を有するようになり、部分的な融解状態となる。このとき、弾性片84aが弾性力により電極保護層152を押圧しているので、弾性片84aの先端部が、部分的に電極保護層152内に沈み込む、又は、埋没する。焼結の完了時点では、固体粉末151bの流動性が無くなり固体状態となる。電極保護層152は流動状態から固体状態になることにより、接着機能を発揮する。このように、電極保護層152が焼結されると、
図12に示すように、弾性片84aは、焼結された電極保護層152に対して強固に接着される。これにより、運転中において、弾性片84aに応力や熱等の外的な負荷が加えられたときに、弾性片84aが電極層に対して物理的に変位することが防止される。よって、導電性の電極保護層152を介して、集電体82とセル配列との間の導電性が確保される。
【0114】
このように、焼結工程において、弾性片84aが部分的に接着剤(電極保護層152)に沈み込んだり、覆われたりすることにより、弾性片84aと接着剤との接触面積が大きくなり、両者間の接着度合が強固になると共に、弾性片84aと電極層との間の電気的抵抗を小さくすることができる。
【0115】
また、本実施形態では、電極層103a,103bを、燃料極層98又は空気極層101と同一の多孔質材料で形成することにより、製造工程を簡単化している。このため、電極層は多孔質構造を有しているので、電気導電性がそれほど良好でなかったり、接触抵抗が大きくなったりするおそれがある。しかしながら、本実施形態では、電極層の表面だけでなく、少なくとも電極層の表層の細孔内にも電極保護層152が形成されるので、電極層の電気導電性を改善すると共に、電極保護層152と電極層との間の電気的抵抗をも小さくすることができ、より効率のよい燃料電池を構成することができる。
【0116】
さらに、電極保護層152が焼結により、多孔質構造の電極層の細孔に入り込んだ固体粉末151bが部分的に溶融状態となった後、固化して、緻密化されるので、多孔質内での電気導通経路が実質的に拡大される。これにより、導電性の高い緻密なインターコネクタ構造を形成することができる。
さらに、焼結工程における緻密化の過程で、電極保護層152が弾性片84aによって加圧されるので、弾性片84aが電極層を加圧する箇所における電極保護層152の緻密性が高められる。これにより、弾性片84a付近の電気導通経路における導電性をさらに高めることができる。
さらに、本実施形態では、接着工程が緻密化工程を兼ねているので、製造工程を簡単化することができる。
【0117】
また、複数の燃料電池セル16をセル配列にモジュール化した後に、接着剤塗布工程を実行する場合、接着剤塗布工程は非常に手間が掛る作業となる。しかしながら、本実施形態では、モジュール化工程の前に、単体の状態の燃料電池セル16に対して、接着剤塗布工程及びバインダー乾燥工程を実行することができる。このため、本実施形態では、作業に手間が掛らず、製造工程を簡単にすることができる。
【0118】
なお、本実施形態では、電極保護層152が接着剤を兼ねているが、これに限らず、電極保護層152とは別の接着剤を更に用いて、弾性片84aを電極保護層152に更に強固に接着してもよい。別の接着剤の使用は、電極保護層152による接着機能が十分でない場合や、電極保護層152が接着機能を有しない場合に有効である。
【0119】
次に、
図13を参照して、集電体の固定方法についての第2実施例を説明する。
上述のように第1実施例では、複数の燃料電池セル16をセル配列にモジュール化するモジュール化工程の前に、各燃料電池セル16に対して、接着剤塗布工程及びバインダー乾燥工程が実行されているが、モジュール化工程後に、セル配列に対して接着剤塗布工程及びバインダー乾燥工程を実行してもよい。
【0120】
即ち、第2実施例では、
図13に示すように、モジュール化工程(ステップS11)、接着剤塗布工程(ステップS12)、バインダー乾燥工程(ステップS13)、集電体取付工程(ステップS14)、接着工程(ステップS15)が順に実行される。
このように構成することにより、バインダー乾燥工程をセラミック接着剤の加熱工程と同時に実行することが可能となるので、製造工程の短縮化及び省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0121】
次に、
図14及び
図15を参照して、集電体の固定方法についての第3実施例を説明する。
第3実施例では、先ず、複数の燃料電池セル16を、
図8のように、セル配列にモジュール化する(
図15のステップS21)。
次に、
図14(a)に示すように、電極層103a,103bの表面に導電性の接着剤151を塗布する(
図15のステップS22)。この接着剤塗布工程では、ペースト状の接着剤151を電極層の表面に対して厚めに塗布する。接着剤151は、バインダー成分151a及び導電性の固体粉末151bから成るものであり、
図10に示した実施例のものと同様である。
ただし、接着剤151は、厚めに塗布できるように、塗布後に電極層上に留まることが可能な程度の粘性があることが好ましい。このため、第3実施例では、接着剤151として、
図10の実施例とは異なる導電性接着剤を用いてもよい。
【0122】
次に、
図14(b)に示すように、集電体82の各集電板83a−83eをセル配列に対して位置合わせし(
図14(b)の仮想線参照)、各集電板をセル配列に対して押し込む(
図15のステップS23)。これにより、各燃料電池セル16が、対応する取付孔84に挿入される。所定位置まで各集電板が押し込まれると、取付孔84の弾性片84aが燃料電池セル16の電極層103a,103bの側方に位置する(
図14(b)の実線参照)。
【0123】
燃料電池セル16は、セラミック材料で形成されており、高い寸法精度で形成することが難しい。このため、複数の燃料電池セル16の間で、長さ、径、曲がり等においてばらつきが生じる。このため、セル配列に対して集電体82を位置合わせしても、取付孔84が、対応する燃料電池セル16に対してずれるおそれがある。このため、集電体取付工程(ステップS23)において、集電体82をセル配列に仮付けした場合、一部の弾性片84aが電極層の表面に接触しないおそれがある。例えば、
図14(b)の右側の弾性片84aは電極層の表面に接触しているが、左側の弾性片84aは電極層の表面に接触していない。
【0124】
このため、接着剤塗布工程(ステップS22)では、燃料電池セル16の寸法誤差を考慮して、接着剤151が電極層の表面に厚めに塗布されている。これにより、集電体取付工程において、電極層の表面に接触しない弾性片84aを、接着剤151内に埋もれた状態か、少なくとも接着剤151に接触した状態にすることができる。
【0125】
次に、
図14(c)に示すように、接着剤151を加熱して、バインダー成分151aを乾燥させる(
図15のステップS24)。この乾燥工程は、
図10(b)に関連して説明した乾燥工程と同様である。
この乾燥工程により、
図14(c)の右側の弾性片84aは、電極層の表面に接触した状態で、固体粉末151bからなる電極保護層152に一部が覆われ電極層に固定される。一方、
図14(c)の左側の弾性片84aは、電極層の表面には接触していないが、電極保護層152を介して、電極層に対して固定される。
【0126】
次に、
図14(d)に示すように、弾性片84aと電極保護層152とを接着する接着工程を実行する(
図15のステップS25)。この接着工程は、
図10(d)に関連して説明した乾燥工程と同様である。
この接着工程により、弾性片84aは、電極層に強固に接着される。そして、
図14(d)の右側の弾性片84aは、電極層の表面に接触した状態で、電極保護層152により電極層に接着されるため、電極層との直接的な接触により導通が確保される。一方、
図14(d)の左側の弾性片84aは、電極層の表面に接触していないが、電極保護層152を介して電極層に接着されるため、導電性を有する電極保護層152を介して電極層との導通を確保することができる。
【0127】
このように第3実施例では、燃料電池セル16の寸法誤差が比較的大きく、集電体取付工程の実施後において、一部の弾性片84aが電極層と接触しない場合であっても、確実にすべての弾性片84aを電極層に対して電気的に接続することができる。
また、固体酸化物型燃料電池装置1の運転時に、集電体82が運転温度まで昇温されることによって、集電体82の弾性片84aの弾性力が低下しても、接着により、弾性片84aの電極層に対する変位が防止されるので、電極保護層152によって弾性片84aと電極層との間の導通を確保することができる。
【0128】
次に、
図16及び
図17を参照して、集電体の固定方法についての第4実施例を説明する。
第4実施例では、先ず、複数の燃料電池セル16を、
図8のように、セル配列にモジュール化する(
図17のステップS31)。
次に、
図16(a)に示すように、集電体82の各集電板83a−83eをセル配列に対して位置合わせし(
図16(a)の仮想線参照)、各集電板をセル配列に対して押し込む(
図17のステップS32)。これにより、各燃料電池セル16が、対応する取付孔84に挿入される。所定位置まで各集電板が押し込まれると、取付孔84の弾性片84aが燃料電池セル16の電極層103a,103bに弾性的に係合する(
図16(a)の実線参照)。
【0129】
次に、
図16(b)に示すように、各弾性片84aと電極層103a,103bとの間に接着剤153を塗布し(
図17のステップS33)、接着剤153を硬化させ、弾性片84aと電極層とを接着する(
図17のステップS34)。
なお、接着剤153は、実施例1で用いた導電性の接着剤を用いてもよいし、他の導電性接着剤を用いてもよい。この場合、集電体取付工程(ステップS32)の実施後において、仮に一部の弾性片84aと電極層とが接触していなくても、接着剤153を介して導通を確保することができる。
また、接着剤153として、導電性の無い接着剤を用いてもよい。この場合、集電体取付工程の実施後に、少なくとも電極層と接触している弾性片84aについては、その弾性片84aと電極層との間では導通を確保することができる。
【0130】
また、本実施形態では、固体酸化物型燃料電池装置1の運転時に、集電体82が運転温度まで昇温されることによって、集電体82の弾性片84aの弾性力が低下しても、接着剤153によって弾性片84aと電極層との間の導通を確保することができる。
上述のように、燃料電池セル16は寸法誤差が比較的大きいため、集電体取付工程(ステップS32)において、集電板をセル配列に対して位置合わせしても、取付孔84に対して、対応する燃料電池セル16がずれるおそれがある。このため、比較的大きな押圧力で集電板をセル配列に対して押し付ける必要があるが、無理に集電板を押し付けると、露出した電極層103a,103bが弾性片84aによって損傷するおそれがある(例えば、電極層の剥がれ等)。このような損傷を防ぐため、弾性片84aの弾性力を小さくするように、さらに薄い板材で集電体82を形成することが考えられる。しかしながら、弾性力を小さくすると、固体酸化物型燃料電池装置1の運転時において、集電体82が高温に晒されたときに、弾性片84aの弾性力がさらに低下して、弾性片84aと電極層との間の接触が失われるおそれがある。
【0131】
そこで、第4実施例では、弾性片84aと電極層とを接着剤153で固定することにより、弾性片84aが電極層から変位することを防止して、高温時における電極層との非接触を防止することができる。このため、弾性力が小さく設定された弾性片84aを有する集電体82を使用することが可能であり、集電体82をより薄い板材から形成することにより、製造コストを装置の軽量化等を図ることができる。