特許第6344558号(P6344558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6344558
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】半導体電力変換器の故障検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   H02M7/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-142922(P2014-142922)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-19439(P2016-19439A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】廣川 裕千
(72)【発明者】
【氏名】仲井 康二
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−286148(JP,A)
【文献】 特開平09−247944(JP,A)
【文献】 特開昭59−086417(JP,A)
【文献】 特開2006−109583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換部を備えた半導体電力変換器の故障検出装置において、
前記交流/直流変換部の交流側に設けられた複数の電流検出器と、
前記電流検出器の出力に基づき三相全波整流を行って直流の電流検出値を演算する三相全波整流演算手段と、
三相交流電源の一相分の周期の1/6期間ごとに、前記電流検出値の平均値を演算する平均値演算手段と、
前記平均値の最大値及び最小値を演算する最大値・最小値演算手段と、
前記最大値と前記最小値との差分が所定の閾値を超えたことを判定する差分判定手段と、
前記差分判定手段の出力が所定期間継続したときに故障を検出する故障検出手段と、
を備え
前記差分判定手段は、前記差分がそれぞれ異なる閾値を超えたことを判定して差分判定信号を出力し、
前記故障検出手段は、前記差分判定信号に応じて、前記三相交流電源の欠相、または前記交流/直流変換部を構成する半導体素子の不動作もしくは短絡を故障として検出することを特徴とする半導体電力変換器の故障検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した半導体電力変換器の故障検出装置において、
前記電流検出器を、前記交流/直流変換部の交流側の任意の二相にそれぞれ設けたことを特徴とする半導体電力変換器の故障検出装置。
【請求項3】
三相交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換部を備えた半導体電力変換器の故障検出装置において、
前記交流/直流変換部の直流側に設けられた単一の電流検出器と、
三相交流電源の一相分の周期の1/6期間ごとに、前記電流検出器から出力される電流検出値の平均値を演算する平均値演算手段と、
前記平均値の最大値及び最小値を演算する最大値・最小値演算手段と、
前記最大値と前記最小値との差分が所定の閾値を超えたことを判定する差分判定手段と、
前記差分判定手段の出力が所定期間継続したときに故障を検出する故障検出手段と、
を備え、
前記差分判定手段は、前記差分がそれぞれ異なる閾値を超えたことを判定して差分判定信号を出力し、
前記故障検出手段は、前記差分判定信号に応じて、前記三相交流電源の欠相、または前記交流/直流変換部を構成する半導体素子の不動作もしくは短絡を故障として検出することを特徴とする半導体電力変換器の故障検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三相交流電源に接続された交流/直流変換部を有する半導体電力変換器において、三相交流電源の欠相や電力変換器を構成する半導体素子の故障(不動作、短絡等)を検出するための故障検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源の欠相を検出する従来技術として、特許文献1に記載されたものが知られている。
図7は、この特許文献1に係る負荷制御装置の構成図であり、11は三相三線式の電源母線、12は配線用遮断器、13は主回路、Mは負荷としての電動機、18bは電磁接触器の主接点、14は電流検出部、15は変流器、16は全波整流回路、17は操作用変圧器、18aは電磁接触器の励磁コイル、19は負荷保護継電器30に対する始動操作スイッチ、20は同じく停止操作スイッチである。また、負荷保護継電器30において、31は論理演算回路、32は最大値検出回路、33は平均化回路、34は記憶回路、35は駆動回路、36は伝送路40に接続されたインターフェース回路、37は表示回路である。
【0003】
上記構成において、電源母線11に欠相がなく、配線用遮断器12及び主接点18bがオンしている状態では、電動機Mに三相交流電圧が供給され、電動機Mが駆動されている。
ここで、全波整流回路16の出力は最大値検出回路32及び平均化回路33に入力されており、正常時には、最大値検出回路32が検出する最大値と平均化回路33から出力される平均値とがほぼ等しくなる。しかし、例えば電源母線11のうちの一相に欠相が発生すると、図8に示すように、平均値が最大値より大幅に低下する。
このため、論理演算回路31は、最大値と平均値との偏差が所定の閾値を超えた場合に欠相発生を判定し、主回路13を流れる電流が制限値を超えた場合に駆動回路35及び励磁コイル18aを介して主接点18bをオフすることにより、電動機Mへの電力供給を遮断している。
【0004】
また、他の従来技術として、特許文献2に記載されたものが知られている。
図9は、特許文献2に係る電流検出装置の構成図であり、51は三相交流電源、52は配線用遮断器等の主接点、53は主回路、Mは負荷としての電動機、60は電流検出装置、61,62は主回路53の異なる二相に跨ってそれぞれ挿入されたカレントトランス、63は処理回路、64は電源供給用の全波整流回路を示している。
【0005】
上記構成においては、主回路53の状態(正常、一相または二相欠相、非通電)に応じてカレントトランス61,62の出力電流の大きさがそれぞれ異なるため、処理回路63がカレントトランス61,62の出力電流を監視することにより、三相交流電源51の欠相を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−50487号公報(段落[0025]〜[0031]、図1図3等)
【特許文献2】特開2005−261157号公報(段落[0009]〜[0011]、図1図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された従来技術では、電源母線11に接続された主回路13の各相に変流器15を設置しなくてはならないため、部品数が多くなってコスト高になるおそれがある。また、特許文献2に記載された従来技術では、主回路53の二相に跨ってカレントトランス61,62を設置する作業が煩雑である。
更に、これらの従来技術は、もっぱら三相交流電源の欠相検出を目的としており、電源に接続された半導体電力変換器を構成する半導体素子の異常(不動作や短絡等)を検出する機能については言及されていない。
【0008】
そこで、本発明の解決課題は、電流検出器の数を最小限にして、三相交流電源の欠相、及び、この電源に接続された半導体電力変換器を構成する半導体素子の異常等、各種の故障を検出可能とした故障検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、三相交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換部を備えた半導体電力変換器の故障検出装置において、
前記交流/直流変換部の交流側に設けられた複数の電流検出器と、
前記電流検出器の出力に基づき三相全波整流を行って直流の電流検出値を演算する三相全波整流演算手段と、
三相交流電源の一相分の周期の1/6期間ごとに、前記電流検出値の平均値を演算する平均値演算手段と、
前記平均値の最大値及び最小値を演算する最大値・最小値演算手段と、
前記最大値と前記最小値との差分が所定の閾値を超えたことを判定する差分判定手段と、
前記差分判定手段の出力が所定期間継続したときに故障を検出する故障検出手段と、
を備え
前記差分判定手段は、前記差分がそれぞれ異なる閾値を超えたことを判定して差分判定信号を出力し、
前記故障検出手段は、前記差分判定信号に応じて、前記三相交流電源の欠相、または前記交流/直流変換部を構成する半導体素子の不動作もしくは短絡を故障として検出することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した半導体電力変換器の故障検出装置において、前記電流検出器を、前記交流/直流変換部の交流側の任意の二相にそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、三相交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換部を備えた半導体電力変換器の故障検出装置において、
前記交流/直流変換部の直流側に設けられた単一の電流検出器と、
三相交流電源の一相分の周期の1/6期間ごとに、前記電流検出器から出力される電流検出値の平均値を演算する平均値演算手段と、
前記平均値の最大値及び最小値を演算する最大値・最小値演算手段と、
前記最大値と前記最小値との差分が所定の閾値を超えたことを判定する差分判定手段と、
前記差分判定手段の出力が所定期間継続したときに故障を検出する故障検出手段と、
を備え、
前記差分判定手段は、前記差分がそれぞれ異なる閾値を超えたことを判定して差分判定信号を出力し、
前記故障検出手段は、前記差分判定信号に応じて、前記三相交流電源の欠相、または前記交流/直流変換部を構成する半導体素子の不動作もしくは短絡を故障として検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のように交流側の多数の電流検出器や二相に跨る電流検出器を用いることなく、必要最小限の電流検出器を用いて三相交流電源の欠相、半導体素子の不動作や短絡等を検出することができ、電力変換器の主回路構成を簡略化してコストを低減することが可能である。特に、既存の電力変換器の制御用に予め具備された電流検出器を利用すれば、ハードウェアを新たに追加する必要もなく、ソフトウェアに若干の変更を加えるだけで実現可能であるから、極めて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態を示す構成図である。
図2】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
図3】本発明の第1実施形態における正常時の動作波形図である。
図4】本発明の第1実施形態における一相欠相時の動作波形図である。
図5】本発明の第1実施形態におけるサイリスタ不点弧時の動作波形図である。
図6】本発明の第1実施形態におけるサイリスタ短絡時の動作波形図である。
図7】特許文献1に記載された従来技術の構成図である。
図8図7の動作波形図である。
図9】特許文献2に記載された従来技術の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る故障検出装置の構成図である。図1において、三相交流電源に接続された各相(U,V,W相)の主回路10には、サイリスタ1aをブリッジ接続してなる交流/直流変換部としてのサイリスタ整流器1が接続されている。
主回路10のうちの任意の二相、例えばU,W相には電流検出器(変流器)2a,2bがそれぞれ接続され、電流検出器2aの出力であるU相電流検出値、及び、電流検出器2bの出力であるW相電流検出値は、三相全波整流演算回路3に直接入力されている。また、電流検出器2a,2bの出力は加算器8に図示の符号で入力され、加算器8の出力であるV相電流検出値も三相全波整流演算回路3に入力されている。
【0016】
三相全波整流演算回路3は、U,V,W相の電流検出値を全波整流して直流量に変換し、この直流量を電流検出値として出力する。
平均値演算回路4は、交流電源一相の周波数(例えば60[Hz])を基準とした60°el(電気角60°)期間、すなわち、一周期の1/6期間における電流検出値の平均値Iabe1〜Iabe6を逐次演算し、出力する。
最大値・最小値演算回路5は、平均値演算回路4から出力される平均値Iav1〜Iav6の中から、最大値IavMAXと最小値IavMINとを求めて出力する。
【0017】
次に、加算器9により最大値IavMAXと最小値IavMINとの差分ΔIavを求め、この差分ΔIavを差分判定回路6に入力する。差分判定回路6では、差分ΔIavが所定の閾値を超えた場合に差分判定信号を故障検出回路7に出力する。
故障検出回路7は、差分判定信号が所定期間継続した場合に、三相交流電源(主回路10)の欠相またはサイリスタ1aの不点弧、短絡等を示す故障検出信号を出力する。
【0018】
なお、図2は本発明の第2実施形態を示す構成図である。
この第2実施形態は、第1実施形態における交流側の電流検出器2a,2bに代えて、サイリスタ整流器1の直流出力側の正側母線に電流検出器2cが接続され、その出力が平均値演算回路4に入力されている。ここで、電流検出器2cは、サイリスタ整流器1の出力側の負側母線に配置しても良い。
図2におけるその他の構成は図1と同様であるため、同一の機能を有するものには同一の参照符号を付してある。
【0019】
第2実施形態において、電流検出器2cはサイリスタ整流器1から出力される直流電流を検出する。この直流電流はサイリスタ整流器1により三相全波整流された波形であるため、図1における三相全波整流演算回路3の出力波形と同一である。従って、三相全波整流演算回路3に接続された平均値演算回路4以降の動作も、第1実施形態と同様になる。
この第2実施形態によれば、第1実施形態に比べて電流検出器が単一で済み、また、図1における三相全波整流演算回路3や加算器8が不要になるため、構成の簡略化が可能である。
【0020】
次に、本発明(例えば第1実施形態)の動作を、図3図6に基づいて説明する。
図3は、三相交流電源に欠相がなく、サイリスタ1aの不点弧や短絡が発生していない正常時の動作波形である。図3において、上から電流検出値の波形(三相全波整流演算回路3の出力波形)、60°el期間の平均値の連続波形(平均値演算回路4の出力波形)、一相分の電源電圧波形を示している(図4図6も同様)。
図3の正常時には、60°el期間の平均値は常に一定であり、IavMAX=IavMIN,ΔIav=0であるため、差分判定信号及び故障検出信号は出力されない。
【0021】
図4は、三相のうち一相が欠相している場合の動作波形である。
この場合、図4の上段に示す電流検出値は、60°el期間にわたって零となる期間を電源一相の一周期内に複数有し、図4の中段に示す平均値の連続波形は、IavMAXとIavMINとの間で大きく変化しながら繰り返される。
差分判定回路6は、IavMAXとIavMINとの差分ΔIavが所定の閾値を超えると、差分判定信号をアクティブにして出力する。故障検出回路7は、この差分判定信号が所定期間(例えば複数周期)にわたり継続した場合に、一相欠相を示す故障検出信号を出力する。
【0022】
図5は、サイリスタ1aの不点弧時の動作波形であり、例えば、サイリスタ整流器1の一相の上アームまたは下アームのサイリスタ1aが不点弧である場合が該当する。
図5の例では、電流検出値が零となる期間が図4よりも短いため、IavMAXに対してIavMINの減少分も小さく、結果的に差分ΔIav図4よりも小さくなっている。
差分判定回路6は、この差分ΔIavが所定の閾値を超えた場合に差分判定信号をアクティブにして出力する。故障検出回路7は、この差分判定信号が所定期間にわたり継続した場合に、サイリスタ1aの不点弧を示す故障検出信号を出力する。
【0023】
図6は、サイリスタ1aの短絡時の動作波形であり、例えば、サイリスタ整流器1の一相の上アームまたは下アームのサイリスタ1aが短絡している場合が該当する。
図6の例では、電流検出値が正側、負側に周期的に変化しており、差分ΔIav図5よりも更に小さくなっている。
差分判定回路6は、この差分ΔIavが所定の閾値を超えた場合に差分判定信号をアクティブにして出力する。故障検出回路7は、この差分判定信号が所定期間にわたり継続した場合に、サイリスタ1aの短絡を示す故障検出信号を出力する。
【0024】
図4図6から明らかなように、差分ΔIavの大きさは、欠相や不点弧、短絡等の故障原因によってそれぞれ異なっている。このため、差分判定回路6は、差分ΔIavと比較するための閾値を故障原因に応じてそれぞれ選定することにより、差分判定信号が欠相によるものか、あるいはサイリスタ1aの不点弧または短絡によるものかを判別することができる。従って、差分判定信号に故障原因の情報を含ませれば、故障検出回路7は、推定した故障原因を含む故障検出信号を出力することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係る故障検出装置は、三相交流電源に接続された交流/直流変換部を有する三相の半導体電力変換器であれば、実施形態により説明したサイリスタ整流器のほか、ダイオード整流器の電源側欠相検出、トランジスタ整流器の電源側欠相検出及びトランジスタの不動作,短絡等の検出にも用いることができる。更には、これら各種の整流器と、その直流出力電圧を交流電圧に変換する直流/交流変換部とを備えたインバータ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:サイリスタ整流器
1a:サイリスタ
2a,2b,2c:電流検出器
3:三相全波整流演算回路
4:平均値演算回路
5:最大値・最小値演算回路
6:差分判定回路
7:故障検出回路
8,9:加算器
10:主回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9