特許第6344589号(P6344589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6344589
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】劣化防止部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/24 20060101AFI20180611BHJP
   B65D 39/04 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B65D81/24 A
   B65D39/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-529407(P2017-529407)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2016083493
(87)【国際公開番号】WO2017082383
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-222572(P2015-222572)
(32)【優先日】2015年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515309944
【氏名又は名称】株式会社バリューサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100150843
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】今喜多 秀幸
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−126459(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3174885(JP,U)
【文献】 仏国特許出願公開第01368483(FR,A1)
【文献】 特開2005−022665(JP,A)
【文献】 実公昭34−017394(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0166281(US,A1)
【文献】 特開2008−110775(JP,A)
【文献】 特許第5466231(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0102311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/24
B65D 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と、前記口部の内径と略等しい内径を有する首部と、前記首部の内径より大きい内径を有する胴部とを備えた容器に収容された内容物上に配置され、前記内容物の劣化を防止する劣化防止部材であって、
周縁部全体が前記胴部の横断面内側に近接又は当接するように形成され、前記口部から前記首部を経て前記胴部に挿入されるために巻き上げ可能であり、
上部の縦断面形状が第1中心部を最高点として前記第1中心部から第1周縁部に向かって緩やかに下降する略山形状を呈するように形成され、
下部の縦断面形状が第2中心部を最低点として前記第2中心部から第2周縁部に向かって緩やかに上昇する略逆山形状を呈するように形成され、
前記上部と前記下部との間にガスバリア性を有するフィルム又は金属箔のいずれか一方又は両方が挿入され
前記第1周縁部及び前記第2周縁部から前記第1中心部及び前記第2中心部に向かって曲線的に伸張する切り込みが所定間隔で複数形成されている
ことを特徴とする劣化防止部材。
【請求項2】
口部と、前記口部の内径と略等しい内径を有する首部と、前記首部に連続し、前記首部の内径より大きい内径を有する肩部と、前記肩部に連続し、前記肩部の内径より大きい内径を有する胴部とを備え、前記肩部の内径は前記首部から前記胴部へかけて次第に拡大し、前記口部から前記胴部までの距離が前記胴部の内径より長い容器に収容された内容物上に配置され、前記内容物の劣化を防止する劣化防止部材であって、
周縁部全体が前記胴部の横断面内側に近接又は当接するように形成され、前記口部から前記首部を経て前記胴部に挿入されるために巻き上げ可能であり、
上部の縦断面形状が第1中心部を最高点として前記第1中心部から第1周縁部に向かって緩やかに下降する略山形状を呈するように形成され、
下部の縦断面形状が第2中心部を最低点として前記第2中心部から第2周縁部に向かって緩やかに上昇する略逆山形状を呈するように形成され、
前記上部と前記下部との間にガスバリア性を有するフィルム又は金属箔のいずれか一方又は両方が挿入されている
ことを特徴とする劣化防止部材。
【請求項3】
前記上部と前記下部との間に少なくとも1つの空間部が形成され、前記少なくとも1つの空間部に気体が封入されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の劣化防止部材。
【請求項4】
前記上部は、前記第1中心部が最も厚く、前記第1中心部から前記第1周縁部に向かって徐々に薄くなるように形成され、
前記下部は、前記第2中心部が最も厚く、前記第2中心部から前記第2周縁部に向かって徐々に薄くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の劣化防止部材。
【請求項5】
前記第1中心部及び前記第2中心部と前記第1周縁部及び前記第2周縁部との間に、放射状又は渦巻き状に、線状又は紐状のものあるいはチューブ状のものが内蔵されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の劣化防止部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や粒体、粉体等の内容物を収容する容器に挿入され、内容物の品質等が劣化することを防止する劣化防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
酒類や清涼飲料水、乳酸菌飲料、牛乳等の飲料、又は、醤油、酢、みりん、魚醤、たれ、つゆ、ウスターソースなどの液体調味料、ドレッシング、食用油等は、様々な材質や形状、容積等を有する容器に収容され、密封されて市販されている。これらの容器内の内容物は、購入後、容器が開封されれば、時間が経てば経つほど、味や香り、風味等が変化していく。この変化は、例えば、内容物を構成する成分の酸化、内容物の生成過程で発生又は混入した酢酸菌等の各種菌類の繁殖、内容物の生成過程で発生又は圧入した二酸化炭素等の揮発物質の揮発などに起因している。
【0003】
このような容器開封後の内容物の味や香り、風味等の劣化を抑えるために、従来、様々な技術が提案されている。例えば、ワインボトル中に残ったワインと空気との接触を制限するワイン保護部材がある。このワイン保護部材は、外側周辺縁がワインボトルのボディ領域の内側断面サイズと近似して形成された第1状態から、ワインボトルのネック領域を通って挿入されるための第2状態に変形可能であり、一旦ボディ領域に入ると第1状態に戻り、ワインボトル中に残ったワインの液面上に配置される。
【0004】
ワイン保護部材は、第1柔軟シート材料と第2柔軟シート材料とを有している。第1柔軟シート材料は、第1ゾーン中に個別にほぼ密閉された複数のポケットを有し、いくつかのポケットは気体を含有している。第2柔軟シート材料は、概ね第1ゾーンの回りで密閉ラインを介して第1柔軟シート材料に封じられて密閉空間としての第1ゾーンを形成している。
【0005】
第1柔軟シート材料又は第2柔軟シート材料の一方又は双方は、ワイン保護部材の外側周辺縁を形成する放射状方向の外側縁を有している。放射状方向の外側縁は、密閉ラインにより規定された第1ゾーンを越えて放射状に伸張し、第1柔軟シート材料又は第2柔軟シート材料の少なくとも一方は、ほぼワイン不透性及び気体不透性を有している。
【0006】
また、このワイン保護部材は、第1ゾーンの周辺領域又はその近辺に位置づけられているポケットのいくつかに液体又はジェルが含有される場合もある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5466231号公報(請求項1,請求項11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来例では、ワイン保護部材は、特許文献1の図2及び図4を参照すると、上面側に複数のポケットが形成され、下面側が略平坦状に形成されており、縦断面形状が上下非対称である。このワイン保護部材は、外側周辺縁がワインボトルのボディ領域の内側断面サイズと近似して形成された第1状態で、下面側がワイン液面上に配置されることにより、所定の機能を発揮するものと思われる。
【0009】
しかし、ワイン保護部材を、第1状態から、ワインボトルのネック領域を通るのに十分に収縮した第2状態になるまで直径線の回りで巻き上げた後、ボディ領域に投入しても、ワイン保護部材は、必ず第1状態に戻るとは限らず、一部がワイン内に沈んだ状態となる場合がある。また、ワイン保護部材は、第1状態に戻ったとしても必ず下面側がワイン液面上に配置されるわけではない。
【0010】
ワインボトルのネック領域はワインをグラスに注ぐのに必要最小限の内径しか有さないため、ワイン保護部材を一旦ボディ領域に投入してしまうと、第1状態に戻すことも、ワイン保護部材を上下反転させることもできなくなってしまう。この場合には、ワイン保護部材がワイン液面を十分に覆うことができないため、所定の機能を発揮することができない。
【0011】
この点、上記した従来例では、ワイン保護部材の第1ゾーンの周辺領域又はその近辺に位置づけられているポケットのいくつかに液体又はジェルが含有される場合もある。しかし、このように構成したからといって、必ずしも第1状態に戻るとは限らないし、必ずしも下面側がワイン液面上に配置されるわけではない。ポケットに含有された液体又はジェルの重みのために、却ってワイン保護部材の一部がワイン内に沈んだり、上下が逆転した状態でワイン液面上に配置されたりする場合があり得る。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができる劣化防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、口部と、前記口部の内径と略等しい内径を有する首部と、前記首部の内径より大きい内径を有する胴部とを備えた容器に収容された内容物上に配置され、前記内容物の劣化を防止する劣化防止部材に係り、周縁部全体が前記胴部の横断面内側に近接又は当接するように形成され、前記口部から前記首部を経て前記胴部に挿入されるために巻き上げ可能であり、上部の縦断面形状が第1中心部を最高点として前記第1中心部から第1周縁部に向かって緩やかに下降する略山形状を呈するように形成され、下部の縦断面形状が第2中心部を最低点として前記第2中心部から第2周縁部に向かって緩やかに上昇する略逆山形状を呈するように形成され、前記上部と前記下部との間にガスバリア性を有するフィルム又は金属箔のいずれか一方又は両方が挿入され、前記第1周縁部及び前記第2周縁部から前記第1中心部及び前記第2中心部に向かって曲線的に伸張する切り込みが所定間隔で複数形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、口部と、前記口部の内径と略等しい内径を有する首部と、前記首部に連続し、前記首部の内径より大きい内径を有する肩部と、前記肩部に連続し、前記肩部の内径より大きい内径を有する胴部とを備え、前記肩部の内径は前記首部から前記胴部へかけて次第に拡大し、前記口部から前記胴部までの距離が前記胴部の内径より長い容器に収容された内容物上に配置され、前記内容物の劣化を防止する劣化防止部材に係り、周縁部全体が前記胴部の横断面内側に近接又は当接するように形成され、前記口部から前記首部を経て前記胴部に挿入されるために巻き上げ可能であり、上部の縦断面形状が第1中心部を最高点として前記第1中心部から第1周縁部に向かって緩やかに下降する略山形状を呈するように形成され、下部の縦断面形状が第2中心部を最低点として前記第2中心部から第2周縁部に向かって緩やかに上昇する略逆山形状を呈するように形成され、前記上部と前記下部との間にガスバリア性を有するフィルム又は金属箔のいずれか一方又は両方が挿入されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明に係り、前記上部と前記下部との間に少なくとも1つの空間部が形成され、前記少なくとも1つの空間部に気体が封入されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明に係り、前記上部は、前記第1中心部が最も厚く、前記第1中心部から前記第1周縁部に向かって徐々に薄くなるように形成され、前記下部は、前記第2中心部が最も厚く、前記第2中心部から前記第2周縁部に向かって徐々に薄くなるように形成されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明に係り、前記第1中心部及び前記第2中心部と前記第1周縁部及び前記第2周縁部との間に、放射状又は渦巻き状に、線状又は紐状のものあるいはチューブ状のものが内蔵されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成で容器開封後の内容物の味や香り、風味等の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1に係る劣化防止部材の構造を示す正面図である。
図2図1に示す劣化防止部材の平面図である。
図3図2のA−A’断面図である。
図4図1に示す劣化防止部材の使用の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る劣化防止部材1の構造を示す正面図、図2図1に示す劣化防止部材の平面図、図3図2のA−A’断面図である。本実施の形態1に係る劣化防止部材1は、上部11と下部12とからなる。劣化防止部材1は、平面形状が略円形状を呈している。また、劣化防止部材1は、上部11の縦断面形状と下部12の縦断面形状は同一形状を呈している。
【0021】
上部11の縦断面形状は、中心部11aを最高点として、中心部11aから周縁部11bに向かって緩やかに下降する略山形状を呈している。一方、下部12の縦断面形状は、中心部12aを最低点として、中心部12aから周縁部12bに向かって緩やかに上昇する略逆山形状を呈している。すなわち、劣化防止部材1の縦断面形状は、上下及び左右がいずれも対称であり、丸みを帯びた略菱形状を呈している。
【0022】
また、上部11の縦断面形状は、中心部11aの厚さが最も厚く、中心部11aから周縁部11bに向かってその厚さが徐々に薄くなるように形成されている。一方、下部12の縦断面形状は、中心部12aの厚さが最も厚く、中心部12aから周縁部12bに向かってその厚さが徐々に薄くなるように形成されている。このように構成することにより、劣化防止部材1の重心は、中心部11aと中心部11bとを通る軸線上に位置する。
【0023】
上部11の下面11cと、下部12の上面12cとの間には、空間部13が形成されている。空間部13には、例えば、空気又は、窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガスからなる気体が封入されている。上部11と下部12とは、一体に形成されていても、接着又は溶着等されていても良い。
【0024】
劣化防止部材1は、図1図3に示すような展開された状態において、外周縁の形状及び寸法が、品質等の劣化防止をすべき内容物が収容される容器の横断面内側の形状及び寸法に略等しいことが好ましい。例えば、容器がワインボトル(容量:750ml)の場合、横断面形状はいずれも略円形状を呈しているが、縦断面形状は異なっており、代表的なものとして、ボルドー型(外径80mm)、ブルゴーニュ型(外径90mm)、シャンパン型(外径90mm)などがある。また、同型のワインボトルでも、寸法にバラツキがあることが多いので、これらを考慮して劣化防止部材1の展開された状態における外周縁の形状及び寸法を設定する必要がある。
【0025】
次に、上記した構造を備えた劣化防止部材1の素材について説明する。上部11及び下部12は、いずれも同一の素材であることが好ましい。劣化防止部材1の素材に要求される特徴として、例えば、以下の点があげられる。
【0026】
(1)劣化防止部材1を、容器の首部を通るのに十分に収縮した状態になるまで劣化防止部材1の直径線の回りで巻き上げた後、容器に投入した際、容器内で十分に展開すること。すなわち、ある程度の柔軟性と弾力性があること。
(2)劣化防止部材1の比重が容器内に収容される内容物の比重と同じ程度かより低いこと。すなわち、劣化防止部材1が内容物内に沈み込まないことであり、内容物が液体である場合には、劣化防止部材1についてある程度の浮力を維持できる素材であること。
【0027】
(3)内容物が食品や化粧品など、人体に直接関わるもの(以下「食品等」と略す。)である場合には、安全性が高いこと。
(4)内容物が食品等である場合には、抗菌性があること。
(5)内容物が食品等である場合には、無味無臭であること。
(6)液体及び気体に対してほぼ不透性を有すること。
(7)不活性度が高いこと。すなわち、劣化防止部材1が内容物と反応したり、空気、酸素などと反応したりしにくいこと。
(8)ガスバリア性を有すること。
【0028】
上記特徴を備えた素材としては、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレン等、これらの樹脂あるいは他の樹脂とのブレンド物、あるいは、シリコンゴムなどがある。例えば、容器内に保存すべき内容物がワインの場合、その比重が通常0.95〜0.995程度であるので、劣化防止部材1をワインの液面上に確実に配置するための浮力を確保するには、ワインの比重と同じ程度かより低いものが好ましい。ポリプロピレンの比重は0.90〜0.91、ポリエチレンの比重は0.91〜0.97、シリコンゴムの比重は0.95〜0.98である。
【0029】
なお、上記特徴は、上部11及び下部12自体が有していない場合には、上記特徴を有する素材を劣化防止部材1の表面にコーティングしたり、上記特徴を有する素材で劣化防止部材1全体を覆うようにしたりしても良い。例えば、上部11及び下部12に使用される素材がガスバリア性を有していない場合には、劣化防止部材1全体にDLC(Diamond-Like Carbon)をコーティングしたり、劣化防止部材1全体をガスバリア性を有するフィルムで覆ったりしても良い。
【0030】
次に、上記構造を備えた劣化防止部材1の使用方法の一例について、図4を参照して説明する。図4は、ワインボトル21中に残ったワイン22の劣化を防止するために劣化防止部材1を使用する例を示している。
【0031】
まず、ワインボトル21に収容されたワイン22は、購入時においては、図4に示すワインボトル21の首部21b下方から肩部21cの間にまで満たされている。そして、ワイン22の購入者が当該ワイン22を飲み残すことにより、ワインボトル21に残ったワイン22が胴部21dの中間部やや上方付近まで減少したとする。
【0032】
そこで、購入者は、ワインボトル21を卓上に置き、劣化防止部材1を、ワインボトル21の口部21a及び首部21b(例えば、内径約20mm)を通るのに十分に収縮した状態になるまで劣化防止部材1の直径線の回りで巻き上げた後、ワインボトル21の口部21aから投入する。
【0033】
これにより、劣化防止部材1は、ワインボトル21内で展開してワイン22の液面上に配置される。劣化防止部材1は縦断面形状が上下対称であるので、上部11又は下部12のいずれの表面がワイン22の液面上に配置された場合でも、所定の機能を発揮する。また、劣化防止部材1の重心が中心部11aと中心部11bとを通る軸線上に位置しているので、劣化防止部材1は展開してワイン22の液面上に配置される。
【0034】
なお、劣化防止部材1をワインボトル21に投入した際、劣化防止部材1が十分に展開しない場合には、ワインボトル21を手で把持して円を描くように数回ゆっくり振ることにより、劣化防止部材1は展開して下部12又は上部11のいずれかの表面全体がワイン22の液面上に配置される。
【0035】
この際、上部11が上方に向けられている場合には中心部11aが最高点であり、下部12が上方に向けられている場合には中心部12aが最高点である。したがって、一旦上部11又は下部12の一部がワイン22に浸ったとしても、上部11又は下部12からワイン22が速やかに流れ落ちるため、上部11又は下部12の一部がワイン22に浸った状態が保持される虞は少ない。
【0036】
劣化防止部材1を投入したワインボトル21から残ったワイン22をワイングラスに注ぐ場合には、ワインボトル21を傾ければ、劣化防止部材1はワイン22の液面上に配置されたままであるので、ワイン22をワイングラスに注ぐのに何ら支障はない。したがって、購入者は、ワインボトル21を開封した後直ちに劣化防止部材1をワインボトル21に投入しても良い。このようにすれば、残っているワイン22と空気との接触を常に最小限に抑えることができる。
【0037】
すなわち、本発明の実施の形態1によれば、簡単かつ安価な構成でワインボトル21開封後のワイン22の酸化又は、味や香り、風味等の劣化を抑えることができる。このため、飲み残しのワイン22をその品質を維持しつつ、一定期間保存することができる。
【0038】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、劣化防止部材1を上部11及び下部12だけで構成する例を示したが、これに限定されない。中心部11a及び中心部12aと周縁部11b及び周縁部12bとの間に、例えば、放射状又は渦巻き状に、線状又は紐状のものあるいはチューブ状のものを内蔵しても良い。チューブ状のものは、内部に空気又は不活性ガスを注入した後、両端を閉じることが好ましい。また、線状又は紐状のものあるいはチューブ状のものは、ある程度の柔軟性と弾力性がある素材を用いる。
【0039】
このように構成すれば、劣化防止部材1を巻き上げた状態でワインボトル21に投入した際にワインボトル21内で常に十分展開させることができる。さらに、チューブ状のものを用いた場合には、劣化防止部材1全体の浮力が増加するため、空間部13を形成することなく、劣化防止部材1の一部又は全部がワイン22内に沈むことを防止することができる。また、チューブ状のものを用いた場合には、上部11及び下部12の素材として、内容物の比重より多少大きい比重の素材を用いることができる。
【0040】
実施の形態3.
上述の実施の形態1では、上部11の下面11cと、下部12の上面12cとの間に1つの空間部13を形成する例を示したが、これに限定されない。例えば、劣化防止部材1を構成する素材の比重が、容器に収容する内容物の比重に比べてかなり小さい場合には、空間部13を形成しなくても良い。このように構成すれば、劣化防止部材1を形成するための金型等を安価に製造できるため、劣化防止部材1も安価に製造することができる。
【0041】
これに対し、複数の空間部13を形成しても良い。この場合、上部11の中心部11a近傍の下面11cと、下部12の中心部12a近傍の上面12cとの間には空間部13を形成せず、中心部11a周辺と中心部12a周辺との間に複数の空間部13を所定間隔を置いて形成しても良い。この場合には、上部11及び下部12の素材として、内容物の比重より多少大きい比重の素材を用いることができる。
【0042】
実施の形態4.
上述の実施の形態1では、周縁部11b及び周縁部12bには何ら形成しない例を示したが、これに限定されない。例えば、周縁部11b及び周縁部12bから中心部11a及び中心部12aに向かって伸張する切り込みを所定間隔で複数形成しても良い。この場合、切り込みは周縁部11b及び周縁部12bから中心部11a及び中心部12aに直線的に伸張するのではなく、曲線的に伸張するように形成した方が良い。
【0043】
このように構成すれば、容器の横断面寸法にバラツキがあった場合でも、劣化防止部材1周縁部全体が容器の横断面内側に近接又は当接する。例えば、容器の横断面寸法が劣化防止部材1の最大径よりも小さい場合には、周縁部11b及び周縁部12bのうち、切り込みで切断された隣接部分同士の一部が重なりあって容器の横断面内側に当接するのである。切り込みは、容器の横断面寸法のバラツキに相当する長さにすることが好ましい。
【0044】
実施の形態5.
上述の実施の形態1では、空間部13を形成するとともに、上部11の縦断面形状を中心部11aの厚さが最も厚く、中心部11aから周縁部11bに向かってその厚さが徐々に薄くなるように形成する一方、下部12の縦断面形状を中心部12aの厚さが最も厚く、中心部12aから周縁部12bに向かってその厚さが徐々に薄くなるように形成することにより、劣化防止部材1の重心を中心部11aと中心部11bとを通る軸線上に位置させる例を示したが、これに限定されない。
【0045】
例えば、空間部13を形成するとともに、上部11の縦断面形状及び下部12の縦断面形状の厚さを位置に応じて変えずに、劣化防止部材1の重心を中心部11aと中心部11bとを通る軸線上に位置させるために、中心部11a又は中心部11bのいずれか一方又は両方に、比重が容器に収容される内容物の比重以上のおもりを埋設又は外付けしても良い。このように構成すれば、劣化防止部材1を形成するための金型等を安価に製造できるため、劣化防止部材1も安価に製造することができる。
【0046】
実施の形態6.
上述の実施の形態1では、上部11及び下部12に使用される素材がガスバリア性を有していない場合、劣化防止部材1全体にDLCをコーティングしたり、劣化防止部材1全体をガスバリア性を有するフィルムで覆ったりする例を示したが、これに限定されない。
【0047】
例えば、劣化防止部材1は、上部11と下部12を別々に形成するとともに、上部11と下部12との間にガスバリア性を有するフィルム又は金属箔のいずれか一方又は両方を挿入して互いに接着又は溶着等して構成しても良い。ガスバリア性を有するフィルムとしては、第1に、基材と、この基材に積層された層とを含む多層構造体で構成されているものがある。基材の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びナイロン−66からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましい。層の材料としては、アルミニウムを含む金属酸化物と無機リン化合物との反応生成物を含んでいる。
【0048】
ガスバリア性を有するフィルムとしては、第2に、ポリアミド樹脂(PA)層又はエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)層、若しくはPAとEVOHの混合樹脂層から構成されているものもある。このフィルムは、単層でも複層でも良い。
【0049】
上記ポリアミド樹脂は、特に限定されないが、ガスバリア性や耐ピンホール性の観点からナイロン系樹脂(Ny)を用いることが好ましい。例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン、等の縮合単位の重合体又はこれら2種以上との共重合体、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。中でもガスバリア性の高いMXD6ナイロンや耐ピンホール性の高い6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。一方、上記EVOH樹脂は、エチレン含有量が30〜60モル%、けん化度が95%以上のものが、成形性やガスバリア性の点から好ましい。
【0050】
一方、金属箔の金属として、アルミニウムが主として用いられるが、その他亜鉛、スズ、銅、ステンレス等も使用することができる。劣化防止部材1の上部11と下部12との間に金属箔を挿入した場合、ガスバリア性を有するとともに、劣化防止部材1を容器に投入した際、容器内で十分に展開して元の形状に戻るため、劣化防止部材1の表面全体がワイン22の液面上に配置されやすい。
【0051】
以上、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0052】
例えば、上述の各実施の形態では、劣化防止部材1の平面形状が略円形状を呈している例を示したが、これに限定されない。劣化防止部材1の平面形状は、要するに、容器の横断面内側の形状に近似していれば良い。すなわち、容器の横断面内側の形状が略楕円形状の他、略四角形状又は略六角形状等の略多角形状を呈していれば、劣化防止部材1の平面形状もそれらの形状に近似した、略楕円形状、略四角形状又は略六角形状等の略多角形状を呈していれば良い。同様に、劣化防止部材1の平面寸法も、容器の横断面内側の寸法に近似していれば良い。つまり、劣化防止部材1の平面形状及び寸法は、周縁部11b及び12b全体が容器の横断面内側に近接又は当接するように形成されていれば良い。
【0053】
また、上述の各実施の形態では、容器に収容される内容物がワイン22である例を示したが、内容物は、ワイン22等の飲料に限定されず、飲用以外の液体(例えば、液体調味料、ドレッシング、食用油等、化粧品、薬品)、あるいは粉体又は粒体でも良い。内容物が揮発性を有する場合には揮発による量の減少や濃度が高くなることなどを最小限に抑えることができる。
【0054】
また、上述の各実施の形態では、容器開封後に容器に劣化防止部材1を挿入する例を示したが、これに限定されず、容器に内容物を充填した後容器を密閉する前に劣化防止部材1を挿入して内容物上に配置しても良い。このように構成すれば、購入者は手間がはぶけるとともに、容器開封直後から内容物の劣化を防止することができる。
【0055】
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…劣化防止部材、11…上部、11a…中心部(第1中心部)、11b…周縁部(第1周縁部)、11c…下面、12…下部、12a…中心部(第2中心部)、12b…周縁部(第2周縁部)、12c…上面、13…空間部、21…ワインボトル、21a…口部、21b…首部、21c…肩部、21d…胴部、22…ワイン
図1
図2
図3
図4