特許第6344594号(P6344594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6344594電子ビームリソグラフィによってプレート又はマスク上に印刷されるパターンを準備する方法、対応する印刷回路設計システム、及び対応するコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6344594
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】電子ビームリソグラフィによってプレート又はマスク上に印刷されるパターンを準備する方法、対応する印刷回路設計システム、及び対応するコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20180611BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180611BHJP
   G03F 1/78 20120101ALI20180611BHJP
【FI】
   H01L21/30 541M
   G03F7/20 504
   G03F1/78
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-172517(P2013-172517)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-45191(P2014-45191A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年8月22日
(31)【優先権主張番号】1257975
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510191207
【氏名又は名称】コミサリアト ア レネルジー アトミクー エ オ エネルジーズ アルタナティヴズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ベルドン
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/134017(WO,A1)
【文献】 特開平03−166713(JP,A)
【文献】 特開平10−256124(JP,A)
【文献】 特開2010−062562(JP,A)
【文献】 特表2012−501474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変成形電子ビームリソグラフィによってプレート又はマスク上に印刷されるパターン(C)を準備するための方法であって、前記方法は、以下のステップ:
前記パターン(C)を再生産するために、個々に印刷されることが意図された基本幾何学的形状(M[1,1]・・・M[N,N])の集合(Mに前記パターン(C)を解体することによって前記パターン(C)モデル化するステップ(102)、及び取得されたモデルをメモリ(14)に記録するステップ、並びに
前記モデルの基本幾何学的形状の各々に関して基本幾何学的形状の個々の印刷の間に、基本幾何学的形状の各々の電子ビームに適用される電荷のドーズを、前記メモリ(14)に対するアクセスを有するプロセッサ(12)によって、前記メモリ(14)に記録された所定の複数の非ゼロのドーズから構成されるドーズの離散集合(D)から選択して、決定するステップ(104、106)
を包含し、
前記基本幾何学的形状(M[1,1]・・・M[N,N])の集合は、印刷される前記パターン(C)を覆う同一の基本幾何学的形状の二次元ペイビングであること、及び前記幾何学的形状の各々の電子ビームに適用されドーズが決定された(104、106)時に、離散化誤差補正(106)がディザリングによって行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記電子ビームに対する単一の露光で印刷されることをそれぞれが意図された大きいサイズの幾何学的形状で、前記ドーズが同一である隣接する基本幾何学的形状を分類するステップ(108)をさらに包含する、請求項1に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項3】
論理的ドーズの集合(D)とそれぞれ関連付けられる異なる寸法を有する幾何学的形状の論理的集合(M)に前記パターン(C)を解体することによって、前記パターン(C)をモデリングする事前のステップ(100)をさらに包含し、前記基本幾何学的形状ペイビングに適用されるドーズが決定される(104、106)時に、前記基本幾何学的形状(M[1,1]・・・M[N,N])の前記集合(M)上での論理的集合(M)の事前画素化(104)が前記基本幾何学的形状に適用されるドーズの初期値(D’)を決定するために実行される、請求項1又は2に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項4】
ドーズの離散集合が、前記論理的ドーズ(D)を決定するために事前モデリングステップ(100)の間に使用され、前記ドーズの離散集合は、前記基本幾何学的形状に適用されドーズの決定(104、106)の間に使用されるドーズの離散集合とは異なり、事前モデリングステップ(100)の間に使用されるドーズの離散集合は、より少ない離散ドーズ値を備える、請求項3に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項5】
前記基本幾何学的形状に適用されるドーズ決定(104、106)は、前記メモリに記録された所定のドーズの前記離散集合(D)と前記ドーズの前記初期値(D’)との比較(106)、前記離散集合(D)からのドーズの選択(106)、及び前記選択によって引き起こされる誤差のディザリングによる補正(106)を包含する、請求項3又は4に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項6】
前記所定のドーズは単位表面当たりの電荷の数として表される電荷密度の形態で定義される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項7】
前記ディザリングによる離散化誤差補正(106)は、所定の、フロイド−スタインバーグアルゴリズムの誤差拡散マトリックスによって行われる、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項8】
前記基本幾何学的形状に適用されるドーズが決定され(104、106)時に、
粗い集合と呼ばれる、メモリに記録された所定のドーズの第1の離散集合は、印刷される前記パターンの内側に置かれる前記基本幾何学的形状に対して使用され、
細かい集合と呼ばれる、メモリに記録された所定のドーズの第2の離散集合は、前記粗い集合よりも多くのドーズの離散値を備え、印刷される前記パターンの輪郭上に置かれた前記基本幾何的形状に対して使用される、
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の印刷されるパターンを準備するための方法。
【請求項9】
通信ネットワークからダウンロード可能であり、および/またはコンピュータによって読み取られることが出来、および/またはプロセッサ(12)によって実行されることが出来る媒体上に記録されるコンピュータプログラム(16、18、20、22、24)であって、前記コンピュータプログラム(16、18、20、22、24)は、前記プログラムがコンピュータ上で実行された時に、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の電子ビームリソグラフィによって印刷されるパターンを準備するための方法のステップを実行するための命令を備えることを特徴とする、コンピュータプログラム(16、18、20、22、24)。
【請求項10】
電子ビームリソグラフィを使用してプレートまたはマスク上にパターンを印刷することによって印刷回路を設計するためのシステム(10)であって、前記システム(10)は、
パターン(C)を再生産するために個々に印刷されることを意図された基本的幾何学的形状(M[1,1]・・・M[N,N])の集合によって前記パターンをモデリングするためのパラメータを格納するためのメモリ(14)、及び
請求項1〜請求項8のうちのいずれか1項に記載の印刷されるパターンを準備するための方法を実装するようにプログラミングされたプロセッサ(12)
を備えることを特徴とする、システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ビームリソグラフィによってプレート又はマスク上に印刷されるパターンを準備するための方法に関する。本発明はまた、この方法を使用して印刷回路を設計するためのシステムと、対応するコンピュータプログラムとに関する。
【0002】
本発明は機械によって伝播される電子ビームが可動直角定規によって調節されることが出来る形状を有する調節可能な可変成形電子ビームを用いたリソグラフィの分野に適用する。調節可能な形状は通常長方形であり、この長方形形状の横方向の寸法が直角定規によって調節可能である。
【0003】
本発明は、さらに詳細には、以下のステップ:
パターンを再生産するために電子ビームの形状を調節することによって、個々に印刷されることが意図された基本幾何学的形状の集団にこのパターンを解体することによって、前記パターンをモデリングするステップ、及びメモリに取得されたモデルを記録するステップ、並びに
モデルの各基本幾何学的形状に関して、この基本幾何学的形状の個々の印刷の間に電子ビームに適用される電荷のドーズをメモリにアクセスするプロセッサによって決定するステップであって、このドーズはメモリに記録された所定のドーズの離散集団から選択される、ステップ
を包含するこの種の方法に適用する。
【背景技術】
【0004】
電子ビームリソグラフィは、電子の拡散によって引き起こされる近接効果、樹脂中の化学種、又は印刷されるパターンを変形させやすい他の効果が原因で、印刷されるパターンを準備する段階を省くことが出来ず、上記の効果を補償することが必要である。一般的には、周知の方法は、(露光時間と呼ばれる)一定の長さの時間の間、可変成形電子ビームに個々に露光されることによってそれぞれ印刷されることが出来る、例えば長方形などの簡単な基本幾何学的形状の集団によってパターンをモデリングすることからなる。その幾何学的形状の集団は、パターンの輪郭に正確には対応しないが、露光時間を賢明にパラメータ化することによって、そして、パターンを印刷するために電子ビームに適用される、以前に計算された電荷のドーズを各幾何学的形状に割り当てることによって、満足な精度を有すると共に上記の効果を補償したパターンが印刷されることが出来る。
【0005】
第1の解決策は、さらに正確には、並列された基本形状の集団によってパターンをモデリングすること、及び他の形状とは無関係にドーズ及び露光時間を各基本形状に割り当てることからなる。実際には、ドーズは所定のドーズの限定された離散集団から選択されなければならないことも分かるので、ドーズの離散化に対して補償し、良好な印刷の精度を取得するために、基本幾何学的形状の数を増加させること、及び小さいサイズの特定の形状を提供することが必要である場合が多い。しかしながら、現在の器具の信頼性により、特に10nm未満の寸法を有する形状などの小さい形状を露光させることは出来ない。さらに、個々に連続して露光させられる幾何学的形状の数が増加するほど、モデルの基本幾何学的形状に対する個々の露光時間の合計を表す全露光時間がさらに増加する。
【0006】
別の解決策は、例えば、非特許文献1による記事に記載される。この解決策は、幾何学的形状の数を非常に大幅に減らし、小さいサイズの幾何学的形状を限定することを可能にするように、基本幾何学的形状の重ね合わせを可能にする。しかしながら、形状の重ね合わせは他のパラメータを作り、特に、互いに依存する電荷のドーズ及び露光時間を作る。これは結果的に自由度を減らし、特定の複雑な幾何学的形状を印刷することが必ずしも出来ない。さらに、これは、特に、形状の交差部における局所的な過剰な強度が避けられることが出来ないので、ドーズの決定をかなり複雑なものにする。
【0007】
特許文献1、非特許文献2による研究論文、及び非特許文献3における研究論文は全て、パターンを画素化し、走査される複数のビームレットに適用される二値のドーズを使用した走査によって画素を連続的に印刷することを開示する。しかし、これらの開示は可変成形電子ビームリソグラフィの分野には関連しない。それらの開示は、電子ビームが小さくてビームレットと呼ばれるが成形されていない複数の調節不可能なガウスビームレットを用いたラスタ走査リソグラフィの分野に関連する。この分野において、印刷される範囲をドーズに分けることは、範囲を画素化して、ディザリングによって二値化することによってのみ調整されることが出来る。画素のサイズは通常約1nmであり、すなわち、10nmよりもずっと小さい。画素のサイズが小さいほど、各画素が二値のドーズを割り振られるので、ディザリングの精度は良くなる。対照的に、本発明の分野においては、すなわち、可変成形電子ビームリソグラフィの分野においては、パターンをモデリングする基本幾何学的形状は、全体的な露光時間を減らすために、そして10nm未満の小さい形状を露光させることが可能ではないことを考慮に入れるために、できる限り大きくすることが望ましく、特に10nm又は20nmをも超えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/134018号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C. Pierrat et al著、「Mask data correction methodology in the context of model−base fracturing and advanced mask models」、Proceedings SPIE of Optical Microlithography、第24号、第7973巻、2011年3月1日〜3日、米国カリフォルニア州サンノゼ
【非特許文献2】Martin et al著、「Combined dose and geometry correction (DMG) for low energy multi electron beam lithography (5kV) : application to the 16nm mode」、Proceedings of SPIE、第8323巻、83231W−1ページ〜83231W−10ページ
【非特許文献3】「Multi−tone rasterization, dual pass scan, data path, cell based vector format」、IP.COM Journal
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、上記の問題及び制約のうちの少なくとも一部をなくすことを可能にする可変成形電子ビームリソグラフィによってプレート又はマスク上に印刷されるパターンを準備するための方法を提供することが所望され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、電子ビームリソグラフィによってプレートまたはマスク上に印刷されるパターンを準備するための方法が提案され、その方法は以下のステップ:
パターンを再生産するために電子ビームの形状を調節することによって、個々に印刷されることが意図された基本幾何学的形状の集団にこのパターンを解体することによって、前記パターンをモデリングするステップ、及びメモリに取得されたモデルを記録するステップ、並びに
モデルの各基本幾何学的形状に関して、この基本幾何学的形状の個々の印刷の間に電子ビームに適用される電荷のドーズをメモリにアクセスするプロセッサによって決定するステップであって、このドーズはメモリに記録されたいくつかの非ゼロの所定のドーズを含むドーズの離散集団から選択される、ステップ
を包含し、
その基本幾何学的形状の集団は、印刷されるパターンを覆う同一の基本幾何学的形状の二次元ペイビングであり、幾何学的形状に適用されるドーズが決定された時には、離散化誤差補正がディザリングによって行われる。
【0012】
本発明によって、全ての基本幾何学的形状によるパターンの空間的モデリングが非常に単純化される。これらの基本幾何学的形状は単に並列されるだけでなく、ペイビングを構成するように同一でもある。従って、いくつかの非ゼロの所定のドーズを含む離散集団におけるドーズの離散化とは別に、モデリング自体が単純化され、モデリングはディザリングによる離散化誤差補正によって公正に補償される。
【0013】
必要に応じて、本発明に従った、印刷されるパターンを準備するための方法はさらに、電子ビームに対する単一の露光で印刷されることがそれぞれ意図された大きいサイズの幾何学的形状で、ドーズが同一である隣接する基本幾何学的形状を分類するステップを包含してもよい。従って、電子ビームに対する連続的な露光の数を非常に減らすことにより、全露光時間を非常に減少させることが可能である。
【0014】
また必要に応じて、本発明に従った、印刷されるパターンを準備するための方法はさらに、論理的ドーズの集団とそれぞれ関連付けられる異なる寸法を有する幾何学的形状の論理的集団にこのパターンを解体することによってパターンをモデリングする事前のステップを包含してもよく、基本幾何学的形状のペイビングに適用されるドーズが決定された時には、基本幾何学的形状の集団に対する論理的集団の事前画素化が基本幾何学的形状に適用されるドーズの初期値を決定するために実行される。
【0015】
また必要に応じて、ドーズの離散集団が論理的ドーズを決定するために事前モデリングステップの間に使用され、このドーズの離散集団は基本幾何学的形状に適用されるドーズの決定の間に使用される集団とは異なり、特に、この離散集団は少ない離散ドーズ値を備える。
【0016】
また必要に応じて、基本幾何学的形状に適用されるドーズの決定は、メモリ内に記録された所定のドーズの離散集団とドーズの初期値の比較、この離散集団からのドーズの選択、およびこの選択によって引き起こされる誤差のディザリングによる上記補正を包含する。
【0017】
また必要に応じて、所定のドーズが単位表面当たりの電荷の数で表される電荷の密度の形態で定義される。
【0018】
また必要に応じて、ディザリングによる補正が所定の誤差拡散マトリックスによって行われ、特にフロイド−スタインバーグアルゴリズムの拡散マトリックスによって行われる。
【0019】
また必要に応じて、基本幾何学的形状に適用されるドーズが決定された時に、
粗い集団と呼ばれる、メモリに記録された所定のドーズの第1の離散集団は、印刷されるパターンの内側に置かれる基本幾何学的形状に対して使用され、
細かい集団と呼ばれる、メモリに記録された所定のドーズの第2の離散集団は、粗い集団よりも多くのドーズの離散値を備え、印刷されるパターンの輪郭上に置かれた基本幾何的形状に対して使用される。
【0020】
通信ネットワークからダウンロード可能であり、並びに/又はコンピュータによって読み取られることが出来、及び/若しくはプロセッサによって実行されることが出来る媒体に記録されるコンピュータプログラムがまた提案され、そのコンピュータプログラムは、上記のプログラムがコンピュータ上で実行された時には、先に定義された通り、電子ビームリソグラフィによって印刷されるパターンを準備するための方法のステップを実行するための命令を備える。
【0021】
電子ビームリソグラフィによってプレートまたはマスク上にパターンを印刷することによって印刷回路を設計するためのシステムがまた提供され、そのシステムは、
上記パターンを再生産するために個々に印刷されることが意図された基本幾何学的形状の集団によってパターンをモデリングするためのパラメータを格納するためのメモリ、及び
先に定義された通り、印刷されるパターンを準備するための方法を実装するようにプログラミングされたプロセッサ
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、単に例として与えられると共に、添付の図面に対して参照が行われる以下の記載によってより良く理解される。
図1】本発明の一実施形態に従った印刷回路設計システムの一般的な構造を概略的に示す。
図2図1の設計システムによって実装される、印刷されるパターンを準備するための方法の連続的なステップを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に概略的に示された印刷回路設計システム10は、メモリ14(例えば、RAMメモリ)と従来の方法で関連付けられる処理モジュール12を備える。処理モジュール12は、例えば、データファイル及びコンピュータプログラムを格納するための1つ以上のメモリと関連付けられるプロセッサを備える従来のコンピュータなどのデータ処理デバイスにおいて使用されてもよい。従って、処理モジュール12自体は、処理モジュール12がコンピュータプログラムの形態で実行する命令を格納するためのメモリと関連付けられるプロセッサの形態であると考えられることが出来る。
【0024】
従って、処理モジュール12は、図1に例示される通り、5つのコンピュータプログラム16、18、20、22、および24を機能的に備える。
【0025】
第1のコンピュータプログラム16は、輪郭パラメータが例えばメモリ14に格納される所与のパターンの事前モデリングのためのプログラムである。印刷されるパターンの輪郭C、及び必要に応じて、同様にメモリ14に記録されたいくつかの所定の非ゼロのドーズ値を含む離散ドーズ値の表Dから、この第1のプログラム16は、パターンをモデリングする異なる寸法の幾何学的形状の論理的集団M、及び例えば表Dにおけるドーズの離散値から選択された論理的ドーズの関連付けられる集団Dを提供するように設計される。「ドーズ」は電子ビームと関連付けられる幾何学的形状の個々の印刷の間に電子ビームに適用される電荷の量を意味する。このドーズは単位表面当たりの電荷の数、例えば、μC/cmで表される電荷密度の形態で定義されてもよい。ドーズは離散値の表Dから選択されなければならないという事実に対して補償するために、論理的集団Mは多数の幾何学的形状を備え、その多数の幾何学的形状の一部は、10nm未満の寸法を有することがあり得る小さいサイズのものである。変化形において、及びさらに一般的に、コンピュータプログラム16の実行中に選択された論理的ドーズDは離散化されなくてもよく、すなわち、論理的ドーズDは表Dにおけるドーズの離散値に限定されなくてもよいことを留意されたい。
【0026】
第2のコンピュータプログラム18は上記のパターンを再生産するために個々に印刷されることが意図された基本幾何学的形状の集団Mにおいて所与のパターンをモデリングするためのプログラムである。第2のコンピュータプログラム18は、印刷されるパターンを覆う、従って、印刷されるパターンの輪郭Cを含む同一の基本幾何学的形状の二次元ペイビングの形態でこの集団を構成するように設計される。これらの同一の基本形状は、例えば、上記の10nmを超える寸法を有する正方形であり、これ以降、「画素」と呼ばれる。
【0027】
第3のコンピュータプログラム20は、基本幾何学的形状の集団M上への論理的集団Mの画素化のためのプログラムである。この画素化は、本来公知の方法において、基本幾何学的形状の集団Mにおける各画素に関して、少なくとも部分的にこの画素によって覆われた論理的集団Mの幾何学的形状、及びそれらの関連付けられる論理的ドーズに従って、各画素に適用される初期ドーズ値を決定することからなる。この初期値は、従来、幾何学的形状と関連付けられる論理的ドーズによって重みを付けられた、問題となっている画素によって覆われた論理的集団Mの幾何学的形状の表面の一部分の線形の組み合わせによって決定される。こうして、画素化プログラム20の実行は各画素に割り当てられるドーズの非離散化初期値の集団D’を提供する。
【0028】
第4のコンピュータプログラム22は離散化及びディザリングによる離散化誤差補正のためのプログラムである。第4のコンピュータプログラム22は、あらゆるディザーアルゴリズムによって引き起こされる離散化誤差を補正しながら、表Dにおける離散値のうちの1つで初期値のそれぞれを処理することによって初期値の組D’を離散化するように設計される。一般的に、離散化誤差を無作為にすることによって、ディザリングによる補正が行われる。有利なことに、ディザリングは離散化誤差を最小化するアルゴリズムによって行われてもよい。また有利なことに、ディザリングが所定の誤差拡散マトリックスによる離散化誤差の拡散によって行われてもよい。この目的のために、例えば、フロイド−スタインバーグアルゴリズムが実行され、画素における、フロイド−スタインバーグアルゴリズムの誤差拡散マトリックスは、上に置かれた画素に対して7/16の係数を有し、右上に置かれた画素に対して1/16の係数を有し、右に置かれた画素に対して5/16の係数を有し、そして右下に置かれた画素に対して3/16の係数を有し、ドーズの初期値の離散化及び誤差補正の間、下から上に、そして左から右に画素を通り抜ける。このようにして、集団Mの画素に適用される離散化された最終的なドーズの集団Dが供給される。
【0029】
選択された移動の方向におけるパターンの変形という望ましくない効果を避けるために、離散化及び誤差の拡散の間に2つの連続した経路を作ることが可能であり、例えば、離散化誤差の半分がその度に補正される第1の経路に対しては、下から上および右から左という経路、それから残りの半分の離散化誤差がその度に補正される第2の経路に対しては、上から下および右から左という経路を作ることが可能である。実際には、これは、一方の方向が他方の方向よりも2倍大きい離散化ステップを使用して行われることが出来る。変化形においては、各経路において離散化誤差の半分だけを補正するのではなく、2つの経路の際に異なるサイズの画素のペイビングを使用すること、又は一方の経路から他方の経路へ画素のペイビングを単に偏らせることが可能である。
【0030】
最後に、第5のコンピュータプログラム24は電子ビームに対する単一の露光で印刷されることを意図されたサイズが大きい幾何学的形状で、離散化された最終的なドーズが同一である隣接する画素を分類するためのプログラムである。この分類の結果は、必要に応じて、例えば長方形などの、所定の複雑な投影形状と優先的に関連付けられることが出来る。この選択肢は、第2のプログラム18の実行のために採用されたパターンのモデル自体が空間的に非常に離散化されるので、簡略化されることが出来る。従って、第5のプログラム24は、必要に応じて所定の投影形態で分類される画素の集団M’及び分類され離散化された最終的なドーズの関連付けられる集団D’を提供するように設計される。
【0031】
さらに、コンピュータプログラム16、18、20、22、及び24は別個であると表されるが、この区別は単に機能的なものであることを留意されたい。コンピュータプログラムは適切に1つ以上のソフトウェアパッケージにおいて分類されることが出来る。ソフトウェアパッケージの機能もまた、少なくとも部分的には、専用の集積回路においてマイクロプログラミングされることが出来、又はマイクロワイヤ接続されることが出来る。従って、変化形において、設計システム10を実装するデータ処理デバイスは、同じ作用を行うための(コンピュータプログラムを伴わない)デジタル回路だけで構成された電子デバイスと交換されることが出来る。
【0032】
図2に例示され、プログラム16、18、20、22、及び24の実行の際に処理モジュール12によって実装される、印刷されるパターンを準備するための方法は、第1のステップ100を包含し、さらに詳細には、印刷されるパターンの事前モデリングに関するコンピュータプログラム16の実行によって行われる第1のステップ100を包含する。事前モデリングは、輪郭Cを使用し、必要に応じてドーズの離散値の表Dを使用して行われ、これらのデータは事前にメモリ14に格納されている。事前モデリングは関連付けられる論理的集団M及びDを提供し、論理的集団M及びDは自身の順番においてはメモリ14に格納される。パターンの輪郭Cを事前にモデリングするために採用された長方形の幾何学的形状M[1]・・・M[N]は、多数であり様々なサイズのものであることが図2に示される。参照番号M[J]を帯びる幾何学的形状などの一部のものは、小さいサイズのものであり、10nm未満の寸法をも有する可能性があり、このことは、リソグラフィによるこの形状の正確な印刷を可能とすることが出来ないので、最終的にはパターンの正確な印刷を可能とすることが出来ず、電子ビームの一定のドーズ露光時間を延長する。
【0033】
第2のコンピュータプログラム18の実行によって行われる、パターンをモデリングする第2のステップ102の間、基本幾何学的形状の集団Mが生成されメモリ14に格納される。集団における各基本幾何学的形状M[1,1]・・・M[N,N]は画素の形態を取る。
【0034】
集団M、M及びDに基づいて第3のコンピュータプログラム20の実行によって行われる第3の画素化ステップ104の間、各画素に割り当てられるドーズの初期値の集団D’が生成され、基本幾何学的形状の集団Mと関連付けてメモリ14に格納される。
【0035】
集団M、D’及び離散ドーズ値の表Dに基づいて第4のコンピュータプログラム22の実行によって行われる第4の離散化及びディザリングのステップ106の間、各画素に割り当てられる離散化された最終的なドーズの集団Dが生成され、基本幾何学的形状の集団Mと関連付けてメモリ14に格納される。単純な非限定的例示として、4つの離散化レベルがこのステップ106において図2に示される。
【0036】
最終的に、集団M及びDに基づいて第5のコンピュータプログラム24の実行によって行われる第5の分類ステップ108の間、分類された集団M’及びD’が生成され、メモリ14に格納される。画素の分類は電子ビームに対する連続的な露光の数を非常に減少させ、このことは、全露光時間を非常に顕著に減少させるという直接的な結果を有する。このように、図2に例示された例において、4つの離散化レベルは、2つ、3つ、または4つの画素の長方形における隣接する画素の一定の分類を可能にする。空白の画素は露光されていないと考える場合、図2の例における画素の分類は、ステップ106の終了時における22回の連続的な露光からステップ108の終了時におけるたった9回の連続的な露光に変わることを可能にする。
【0037】
本発明の実装において、ステップ100及び108の実行は任意選択であることを留意されたい。
【0038】
ステップ100及び106の実行において、上記の例で使用されるものは、ドーズの離散値の表Dと同じであることを留意されたい。しかしながら、本発明の異なる実施形態において、離散値に関するいくつかの異なる表が使用されることが出来る。
【0039】
特に、そして有利なことに、事前モデリングを行うためのステップ100の間に使用される離散値の表は、離散化及びディザリングのステップ106の間に使用される離散値の表と同じである理由は特にない。離散化及びディザリングのステップ106の前に使用されるドーズの離散値の表は、ステップ108における画素の分類を最適化するために、事前モデリングステップ100において使用される表よりも粗い(すなわち、より少ない数のドーズの離散値を用いる)ことがあり得る。また、変化形において、そして、コンピュータプログラム16の機能及びステップ100の実施の記載の間に先に強調された通り、離散ドーズ値の表の使用はステップ100に必須ではなく、次に、論理的ドーズDが離散化を伴うことなく完全に自由に選択されることが出来る。
【0040】
ステップ106の間、離散値に関するいくつかの表を使用することも可能である。なぜならば、粗い表は輪郭Cの完全に内側に置かれた画素に対して使用されることが出来るが、より多くの数のドーズの離散値を有する細かい表は輪郭上に置かれた画素に対して使用されることが出来、この場合、画素はリソグラフィによる印刷の間に輪郭の正しい配置に非常に寄与するからである。
【0041】
上に記載されたシステム及び方法などの印刷回路設計システム及び印刷されるパターンを準備するための方法は、わずかな数の空間的に離散化された基本幾何学的形状を使用して電子ビームリソグラフィによってプレート又はマスクに印刷されるパターンをモデリングすることを可能にし、これは、プレート又はマスク上で要求されるパターンを再生産するために電子ビームに対するモデルの露光の合計時間を非常に減少させるという直接的な結果を有することが明らかである。画素のサイズが電子ビームの幅及び露光される最も小さいパターン要素のサイズと比較して最適化される場合には、本発明の貢献は、パターン自体が複雑な輪郭を有するので、時間を節約し精度を得る点で益々明らかになる。
【0042】
本発明は上で記載された実施形態には限定されないことも留意されたい。実際に、当業者に対して今開示された教示を鑑みて、様々な改変が上で記載された実施形態に対して行われることが出来ることも当業者には明らかである。以下の特許請求の範囲において、使用される用語は本記載において開示された実施形態に特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではないが、特許請求の表現、及び当業者が当業者に今開示された教示の使用に当業者の一般的な知識を適用する能力の範囲内である均等物の予見により特許請求の範囲が包含しようとする全ての均等物を特許請求の範囲に含むように解釈されるべきである。
図1
図2