(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一の実施形態)
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳説する。
図1は、投影装置10の外観斜視図である。なお、本実施形態において、投影装置10における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とは投影装置10のスクリーン側方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
【0017】
そして、投影装置10は、
図1に示すように、略直方体形状であって、プロジェクタ筐体の前方の側板とされる正面板12の側方に投影部を有するとともに、この正面板12には複数の排気孔17を設けている。さらに、図示しないがリモートコントローラからの制御信号を受信するIr受信部を備えている。
【0018】
また、筐体の上ケース11にはキー/インジケータ部37が設けられ、このキー/インジケータ部37には、電源スイッチキーや電源のオン又はオフを報知するパワーインジケータ、投影のオン、オフを切りかえる投影スイッチキー、光源装置や表示素子又は制御回路等が過熱したときに報知をする過熱インジケータ等のキーやインジケータが配置されている。また、上ケース11は、投影装置10の筐体の上面と左側面の一部までを覆っており、故障時等には上ケース11を下ケース16から取り外せる構成とされている。
【0019】
さらに、筐体の背面には、図示されない背面板にUSB端子やアナログRGB映像信号が入力される映像信号入力用のD−SUB端子、S端子、RCA端子、音声出力端子等を設ける入出力コネクタ部及び電源アダプタプラグ等の各種端子が設けられている。また、背面板には、複数の吸気孔が形成されている。
【0020】
次に、投影装置10の投影装置制御手段について
図2の機能ブロック図を用いて述べる。投影装置制御手段は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成される。
【0021】
この制御部38は、投影装置10内の各回路の動作制御を司るものであって、CPU、各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
【0022】
そして、この投影装置制御手段により、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
【0023】
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0024】
表示駆動部26は、表示素子制御手段として機能するものであり、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動するものである。そして、この投影装置10は、光源装置60から出射された光線束を、光源側光学系を介して表示素子51に照射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、投影側光学系を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。なお、この投影側光学系の可動レンズ群235は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0025】
また、画像圧縮/伸長部31は、画像信号の輝度信号及び色差信号をADCT及びハフマン符号化等の処理によりデータ圧縮して着脱自在な記録媒体とされるメモリカード32に順次書き込む記録処理を行う。
【0026】
さらに、画像圧縮/伸長部31は、再生モード時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長し、この画像データを、画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行う。
【0027】
そして、筐体の上ケース11に設けられるメインキー及びインジケータ等により構成されるキー/インジケータ部37の操作信号は、直接に制御部38に送出され、リモートコントローラからのキー操作信号は、Ir受信部35で受信され、Ir処理部36で復調されたコード信号が制御部38に出力される。
【0028】
なお、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
【0029】
また、制御部38は、光源制御手段としての光源制御回路41を制御しており、この光源制御回路41は、画像生成時に要求される所定波長帯域の光が光源装置60から出射されるように、光源装置60の赤色、緑色及び青色の波長帯域光を発光させる個別の制御を行う。
【0030】
さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源装置60等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせ、この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を制御させている。また、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43にタイマー等により投影装置本体の電源オフ後も冷却ファンの回転を持続させる、あるいは、温度センサによる温度検出の結果によっては投影装置本体の電源をオフにする等の制御も行う。
【0031】
次に、この投影装置10の内部構造について述べる。
図3は、投影装置10の内部構造を示す平面模式図である。ここで、投影装置10の光源装置60は、第一光源70、第二光源100、第三光源400、光学素子(光学ユニット)である層保持体141が備えられている。また、投影装置10は、光源側光学系として、マイクロレンズアレイ254、集光レンズ255、光軸変換ミラー173及びコンデンサレンズ174が配置される。さらに、投影装置10は、投影側光学系168が備えられている。
【0032】
図3に示すように、投影装置10は、中央部分に光源装置60を備え、左側方にはレンズ鏡筒225が設けられた投影側光学系168を備えている。また、投影装置10は、レンズ鏡筒225と背面板13との間にDMD等の表示素子51を備えている。さらに、投影装置10は、図示しない主制御回路基板を備えている。
【0033】
光源装置60は、投影装置10筐体の左右方向における略中央部分に配置される第一光源70及びこの第一光源70から出射される光線束の光軸上であって正面板12の近傍に配置される蛍光ホイール装置としての第二光源100と、第一光源70と第二光源100との間で並設して配置される青色光源装置300と赤色光源装置120とにより形成される第三光源400と、後述する層保持体141と、を備える。
【0034】
また、投影装置10は、表示素子51と背面板13との間に、表示素子51を冷却させるヒートシンク191を備えている。また、光源装置60と右側パネル15との間には、赤色光源121及び青色光源301用のヒートシンク131,190を備えている。
【0035】
第一光源70は、背面板13と光軸が垂直になるよう配置された固体発光素子による励起光源71と、励起光源71と背面板13との間に配置されたヒートシンク81と、を備える。
【0036】
励起光源71は、2個の固体発光素子である青色レーザーダイオードが並列に配置されており、各青色レーザーダイオードの光軸上には、各青色レーザーダイオードからの出射光を平行光に変換する集光レンズであるコリメータレンズ73が夫々配置されている。
【0037】
ヒートシンク81と背面板13との間には、冷却媒体として外気をヒートシンク81側に送風する送風ファンである冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261とヒートシンク81とによって励起光源71が冷却される。
【0038】
緑色光源装置80は、蛍光ホイール装置である第二光源100と、励起光源としての第一光源70とにより形成される。第二光源100は、正面板12と平行となるように、つまり、第一光源70からの出射光の光軸と直交するように配置された蛍光ホイール101と、この蛍光ホイール101を回転駆動するホイールモータ110と、蛍光ホイール101から背面板13方向に出射される光線束を集光する集光レンズ群111と、を備える。
【0039】
蛍光ホイール101は、円板状の金属基材であって、励起光源71からの出射光を励起光として緑色波長帯域の蛍光発光光を出射する環状の蛍光発光領域が凹部として形成され、励起光を受けて蛍光発光する蛍光体として機能する。また、蛍光発光領域を含む蛍光ホイール101の励起光源71側の表面は、銀蒸着等によってミラー加工されることで光を反射する反射面が形成され、この反射面上に緑色蛍光体の層が敷設されている。
【0040】
そして、蛍光ホイール101の緑色蛍光体層に照射された第一光源70からの出射光は、緑色蛍光体層における緑色蛍光体を励起する。緑色蛍光体から全方位に蛍光発光された光線束は、直接、励起光源71側へ、あるいは、蛍光ホイール101の反射面で反射した後に励起光源71側へ出射される。そして、ホイールモータ110と正面板12との間にはヒートシンク130、冷却ファン135等が配置されており、これらによって蛍光ホイール101が冷却される。
【0041】
青色光源装置300と赤色光源装置120とにより形成される第三光源400は、その出射光の光軸と励起光源71からの光の光軸とが直行するように並設されている。そして、装置内の青色光源装置300は、青色光源301と、青色光源301からの出射光を所定範囲の光に集光して出射するコリメータレンズ305と、を備える。また、装置内の赤色光源装置120は、赤色光源121と、赤色光源121からの出射光を所定範囲の光に集光して出射するコリメータレンズ125と、を備える。そして、青色光源装置300及び赤色光源装置120は、第一光源70からの出射光及び蛍光ホイール101から出射される緑色波長帯域光と光軸が交差するように配置されている。
【0042】
青色光源301は、青色の波長帯域光を発する固体発光素子としての青色レーザーダイオードである。また、赤色光源121は、赤色の波長帯域光を発する固体発光素子としての赤色レーザーダイオードである。さらに、青色光源装置300及び赤色光源装置120は、青色光源301及び赤色光源121近傍に配置されるヒートシンク131、190を備える。
【0043】
そして、ヒートシンク131、190と正面板12との間には、送風ファンから送風されヒートシンク131、190によって暖められた冷却媒体を吸い込んで装置外部に排出するための吸込みファンとしての冷却ファン261が配置されており、この冷却ファン261によって赤色光源121及び青色光源301が冷却される。
【0044】
光源装置60には、第一光源70から出射される励起光源である青色波長帯域光及び蛍光ホイール101から出射される緑色波長帯域光の光軸と、第三光源400から出射される赤色波長帯域光及び青色波長帯域光の光軸と、が交差する位置に、層保持体141が配置されている。
【0045】
層保持体141は、板状に形成されている。層保持体141の一方側の面は、拡散層141aが設けられている。そして、層保持体141の他方側の面には、ダイクロイック層141bが設けられている。本実施形態においては、ダイクロイック層141b側の面に第一光源70の出射光及び第三光源400からの出射光が入射されるよう配置されている。
【0046】
層保持体141は、単一のガラス板を基材として形成されている。拡散層141aは、基材の一方側の面にサンドブラストを施して微細な凹凸面を形成したものである。一方、ダイクロイック層141bは、基材の他方側の面にダイクロイックコーティングが施されて形成されている。
【0047】
具体的には、このダイクロイック層141bは、赤色及び青色波長帯域光を透過させ、緑色波長帯域光を反射する特性を有する。したがって、このダイクロイック層141bにより、第一光源70及び第三光源400からの出射光は透過され、第二光源100からの出射光は左側パネル14方向へ90度光軸を変換して反射される。
【0048】
詳細に説明すると、第一光源70から出射される励起光である青色波長帯域光は、ダイクロイック層141bを透過する。ダイクロイック層141bを透過した励起光である青色波長帯域光は、拡散層141aの裏側から拡散層141aに入射する。そして、拡散層141aに入射した励起光である青色波長帯域光は、拡散層141aの表面に形成された微細な凹凸面により拡散され、拡散層141aの表面から蛍光ホイール101方向に出射する。そして、拡散層141aの表面から出射した拡散された光線束としての励起光は、集光レンズ群111を介して蛍光ホイール101の蛍光体層に照射される。
【0049】
また、第三光源400の赤色光源装置120から出射される赤色波長帯域光及び青色光源装置300から出射される青色波長帯域光についても同様に、ダイクロイック層141bを透過して、拡散層141aの表面から、拡散された光線束として左側パネル14方向に出射する。
【0050】
一方、第二光源100から出射された緑色波長帯域光は、層保持体141の拡散層141aに入射する。拡散層141aに入射した緑色波長帯域光は、拡散層141aの表面に形成された微細な凹凸面により拡散されつつ、ダイクロイック層141bにより反射される。ダイクロイック層141bにより反射された緑色波長帯域光は、再度拡散層141aに入射して、拡散層141aの表面から左側パネル14方向に出射する。このようにして、第二光源100から出射された緑色波長帯域光は、拡散層141aにより拡散されつつ、層保持体141のダイクロイック層141bにより、光軸を90度変換される。
【0051】
そして、層保持体141の左側パネル14側には、各光源からの出射光を夫々に所定範囲に拡散させながら、所定範囲内で輝度分布を均一化させるマイクロレンズアレイ254を配置している。マイクロレンズは、レンズ形状として平凸非球面レンズや両凸レンズ等を格子状又は六方格子状等に配列されているものである。そして、マイクロレンズアレイ254近傍には、マイクロレンズアレイ254からの拡散均一光が透過された光を表示素子51の有効サイズに集光させる集光レンズ255が配置される。
【0052】
したがって、マイクロレンズアレイ254により均一な強度分布とされた光線束を表示素子51に導光するにあたって、集光レンズ255を介して、光軸変換ミラー173に出射させることができる。
【0053】
また、コンデンサレンズ174は、光軸変換ミラー173で反射された光源光を表示素子51に効果的に照射する。そして、この表示素子51と背面板13との間には表示素子51を冷却するためのヒートシンク191等が配置されている。
【0054】
そして、投影側光学系168のレンズ鏡筒225は、表示素子51で反射されたオン光をスクリーンに放出するレンズ群を有している。この投影側光学系168としては、レンズ鏡筒225に内蔵する固定レンズ群と可動鏡筒に内蔵する可動レンズ群235とを備えてズーム機能を備えた可変焦点型レンズとされ、レンズモータにより可動レンズ群を移動させてズーム調整やフォーカス調整を可能としている。
【0055】
次に、
図4に基づいて、層保持体141を製造する方法について説明する。まず、層保持体141の基材となる板状の透明ガラス板等を準備する。そして、拡散層形成工程として、基材の一方側の面に対してブラスト処理を行い、拡散層を形成する(ステップS100)。次に、ダイクロイック層形成工程として、基材の他方側の面に対して、ダイクロイックコーティング処理を施して、ダイクロイック層を形成する(ステップS200)。このようにして、本実施形態における層保持体141が製造される。
【0056】
ここで、ステップS200のダイクロイック層形成工程を先に処理して、次にステップS100の拡散層形成工程を行うこともできる。しかし、ダイクロイック層形成工程を先に行ってから拡散層形成工程を行うと、サンドブラスト処理により先に塗布されたダイクロイックコーティングに影響が及ぼされることがあるので、
図4に示すフローチャートのように、拡散層形成工程を行ってからダイクロイック層形成工程を行う方が好ましい。
【0057】
(第二の実施形態)
次に、本発明における第二の実施形態について
図5により説明する。第二の実施形態は、第一の実施形態における層保持体141に換えて、層保持体341を配置した。また、第一の実施形態におけるマイクロレンズアレイ254に換えて、ライトトンネル454とした。その他の構成については第一の実施形態と同じであるので、第一の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
本実施形態における層保持体341は、第一層保持体341aと第二層保持体341bとが接合して板状に形成されている。第一層保持体341aの表面には、第一の実施形態における拡散層141aと同様の拡散層が形成されている。そして、第二層保持体341bにおいても、第一の実施形態におけるダイクロイック層141bと同様に、表面側にダイクロイック層が形成されている。すなわち、換言すれば、第一層保持体341aは、拡散透過板として形成されるものであり、第二層保持体341bは、ダイクロイックミラーとして形成されているものである。そして、層保持体341は、拡散透過板である第一層保持体341aと、ダイクロイックミラーである第二層保持体341bとを接合して形成されたものである。
【0059】
層保持体341の配置は、第一の実施形態と同様に、第二層保持体341bのダイクロイック層が設けられる面に第一光源70からの出射光及び第三光源400からの出射光が入射されるよう配置されている。
【0060】
層保持体341の作用は第一の実施形態における層保持体141と同様である。すなわち、第一光源70から出射した励起光である青色波長帯域光は、第二層保持体341bのダイクロイック層を透過して、さらに第一層保持体341aの拡散層を透過することにより、この拡散層の表面から拡散された光線束として出射する。拡散された光線束とされた励起光は、蛍光ホイール101の蛍光体層に照射される。
【0061】
また、第三光源400から出射される赤色及び青色波長帯域光も同様に、第二層保持体341bのダイクロイック層を透過して、第一層保持体341aの拡散層を透過することにより、拡散された光線束として第一層保持体341aの表面から出射される。一方、第二光源100の蛍光ホイール101における蛍光体層から出射される緑色波長帯域光は、第二層保持体341bのダイクロイック層により光軸を90度変換されて反射され、第一層保持体341aの拡散層の表面から、拡散された光線束として出射する。
【0062】
このようにして、層保持体341により同一方向へ出射された各色波長帯域光は、ライトトンネル454に入射する。そして、各色波長帯域光は、ライトトンネル454により拡散均一光とされ、光源側光学系である集光レンズ255や光軸変換ミラー173及びコンデンサレンズ174を介して表示素子51に照射される。このようにして、投影装置10により投影される投影画像光は、むらのない鮮明な投影光として投影される。
【0063】
次に、本実施形態における層保持体341の製造方法について、
図6を用いて説明する。
板状に形成される透明ガラス板等の基材である第一基材の一方側の面にサンドブラスト処理により拡散層を形成し、第一層保持体341aを作成(準備)する(ステップS300)。また、同様に、板状に形成される透明ガラス板等の基材である第二基材の一方側の面にダイクロイックコーティングを塗布してダイクロイック層を形成し、第二層保持体341bを作成(準備)する(ステップS320)。このとき、第一層保持体341a及び第二層保持体341bそれぞれの他方側の面は、表面処理されておらず、基材のままの状態である。次に、第一層保持体341a及び第二層保持体341bそれぞれの拡散層とダイクロイック層とが外側となるように、それぞれの他方側の面同士を接着剤で接合する(ステップS340)。このようにして、層保持体341が製造される。
【0064】
ここで、二枚のガラス板を貼り合わせるようにして形成した層保持体341は、その接合面に接着剤を塗布する溝等を形成しておくと好適である。接合面に接着剤等が付着してしまうと、層保持体を透過又は反射する際の光線束の光路に悪影響を及ぼすこともあるからである。または、層保持体341は、第一層保持体341aと第二層保持体341bとの間に空間を設け、両者を接合せずに近接させて形成することもできる。
【0065】
(第三の実施形態)
次に、
図7により、第三の実施形態を説明する。本実施形態は、第二の実施形態の層保持体341に換えて、層保持体441としたものである。以下の説明において、第二の実施形態と同様の構成については同じ符号を付して、その説明は省略する。本実施形態の層保持体441は、拡散層を有し、板状に形成される第一層保持体441aと、ダイクロイック層を有し、板状に形成される第二層保持体441bにより構成されている。
【0066】
そして、第一層保持体441aと第二層保持体441bは、前述の第二の実施形態と同様に、一方側の面にはそれぞれ拡散層及びダイクロイック層が形成されている。そして、第一層保持体441aと第二層保持体441bは、相対移動可能に近接して配置されている。具体的には、ダイクロイック層を有する第二層保持体441bは投影装置10の筐体に対して固定されている。拡散層を有する第一層保持体441aは、図示しない移動ガイド等により、第二層保持体441bと近接しつつ移動可能に形成されている。
【0067】
また、層保持体441の配置も、第二の実施形態と同様に、第一光源70及び第三光源400からの光線束が入射する側に、ダイクロイック層を有する第二層保持体441bが配置されている。ここで、第一層保持体441aは、移動ガイド等に沿って、駆動手段442により移動される。駆動手段442は、例えばピエゾ素子やリニアガイド等を用いることができる。そして、駆動手段442は、可動部制御手段443と接続され、制御される。可動部制御手段443は、制御部38と接続される。
【0068】
層保持体441の作用は、第二の実施形態における層保持体341と同様である。すなわち、層保持体441は、ダイクロイック層を有する第二層保持体441bに第一光源70から出射された青色波長帯域光及び第三光源400から出射された赤色及び青色波長帯域光が入射されるよう配置される。そして、赤色及び青色波長帯域光を透過させ、第二光源100から出射される緑色波長帯域光を反射させる。第二層保持体341bを透過した赤色及び青色の各波長帯域光及び第二層保持体341bに反射された緑色波長帯域光は、拡散層を有する第一層保持体341aを透過して拡散される。
【0069】
ここで、第一層保持体441aは、駆動手段442により、移動ガイド等に沿って微小な往復運動(振動)が与えられる。すると、拡散層を透過する固体発光素子からの出射光である赤色及び青色波長帯域光を光源としてスクリーン上に投影される画像光は、スペックルが低減される。特に、青色レーザーダイオードを光源とする第一光源70の青色光源装置300に対しては好適である。
【0070】
一般に、レーザー光のようなコヒーレント光を拡散面に照射すると、斑点状の模様であるスペックルが見られる。このスペックルは、拡散面の各点で散乱された光が面上の微視的な凹凸に応じたランダムな位相関係で干渉し合うために生じるものである。よって、本実施形態において、拡散層を有する第一層保持体441aに振動を与えるようにする。その作用により、拡散面上での位相関係が適宜変化されることになり、このスペックルが低減される。
【0071】
なお、本実施形態において、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様の一体とされる層保持体141、341を用いることもできる。この場合、拡散層とダイクロイック層は対向して一体的に層保持体に設けられているので、拡散層の移動とともに、ダイクロイック層も移動される。しかしながら、ダイクロイック層についてその作用を十分に機能させるためには、規定される入射角度に合わせて正確に光を入射させる必要がある。よって、拡散層とともにダイクロイック層も移動させる場合には、層保持体を移動駆動させる駆動手段を精度よく形成する必要がある。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることは無く、適宜変更を加えて実施することができる。例えば、以上の実施形態においては、層保持体141,341,441の向きを、第一光源70である励起光源としての青色波長帯域光及び第三光源400の赤色及び青色波長帯域光が入射されるように配置した。
【0073】
しかしながら、このような配置に限定されることはなく、これに換えて、層保持体の配置を反転させて、拡散層を有する面に第一光源70の青色波長帯域光及び第三光源400の赤色及び青色の各波長帯域光が入射されるようにすることもできる。しかし、この場合、第二光源100からの緑色波長帯域光である蛍光光は、拡散層を介することなく層保持体のダイクロイック層により反射されるので、拡散層による拡散がされないこととなる。よって、前述の実施形態のように、ダイクロイック層に第一光源70の青色波長帯域光及び第三光源400の赤色及び青色の各波長帯域光が入射されるように配置するのが好ましい。
【0074】
また、本発明の実施形態においては、第三光源400は、赤色光源装置120と青色光源装置300とにより形成されることとした。そして、赤色光源装置120は、固体発光素子である赤色レーザーダイオードである赤色光源121を有し、青色光源装置300は、固体発光素子である青色レーザーダイオードである青色光源301を設けた。しかしながら、これに換えて、第三光源400の固体発光素子を高輝度の赤色や青色の発光ダイオード(LED)を用いることもできる。このように、第三光源400は、少なくとも第一光源70と波長の異なる固体発光素子を具備していれば良い。
【0075】
(第四の実施形態)
本発明の上記実施形態においては、第三光源400は、赤色光源装置120と青色光源装置300とにより形成されることとした。
しかしながら、これに換えて、第三光源400の固体発光素子を赤色光源装置120と青色光源装置300とのどちらか一方とし、他方の青色光源装置300か赤色光源装置120を別の位置に配置して、それらを合成するような光学系としてもよい。
【0076】
図8に、その場合の構成例を示す。ここでは、第三光源400は、固体発光素子を赤色光源装置120のみとし、青色発光ダイオード410が、ヒートシンク193、集光レンズ群420とともに、層保持体341に対して、表示素子51側に配置されている。そして、層保持体341と集光レンズ255との間に、赤色及び緑色波長帯域光を透過させ、青色波長帯域光を反射する特性を有するダイクロイックミラー460が配置されている。その他の構成については第一の実施形態と同じであるので、第一の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0077】
図8において、青色光源として、発光ダイオードを用いるようにしているので、レーザーダイオードと比べると、その光束を拡散させる必要はそれ程高くはない。
なお、ダイクロイックミラー460に換えて、第一の実施形態等と同様の拡散層を有する光学素子を用いるようにしてもよい。その場合は、青色発光ダイオード410側に拡散層が向くような配置が、青色の光束も拡散させるという意味では望ましい。
【0078】
(第五の実施形態)
また、第三光源400全体が層保持体に対して、表示素子51側に配置されているような構成であってもよい。
図9に、その場合の構成例を示す。ここでは、第三光源400としての赤色発光ダイオード122と青色発光ダイオード322が、ヒートシンク195、集光レンズ群430とともに、層保持体341に対して、表示素子51側に配置されている。そして、層保持体341と集光レンズ255との間に、緑色波長帯域光を透過させ、赤色及び青色波長帯域光を反射する特性を有するダイクロイックミラー470が配置されている。
【0079】
図9においても、赤色及び青色光源として、発光ダイオードを用いるようにしているので、レーザーダイオードと比べると、その光束を拡散させる必要はそれ程高くはない。
なお、ダイクロイックミラー470に換えて、第一の実施形態等と同様の拡散層を有する光学素子を用いるようにしてもよい。その場合は、第三光源400である発光ダイオード側に拡散層が向くような配置が、赤色及び青色の光束も拡散させるという意味では望ましい。
【0080】
また、第一の実施形態においては、層保持体141からの光線束は、マイクロレンズアレイ254を介して集光レンズ255に出射した。第二の実施形態においては、層保持体341からの光線束は、ライトトンネル454を介して集光レンズ255に出射した。このように、投影装置10の態様により、層保持体の形態に拘らず、マイクロレンズアレイ又はライトトンネルのいずれを又は両者をともに採用するかは適宜選択することができる。
【0081】
以上の通り、本発明の実施形態においては、一方側の面に拡散層を形成し、他方側の面にダイクロイック層が形成された板状の層保持体141,341,441からなる光学素子を光源装置に配置した。具体的には、光源装置において、青色レーザーダイオードを有する第一光源70からの出射光と、第一光源70を励起光源として緑色波長帯域光を発光する蛍光体層を有する第二光源100との間に層保持体141,341,441を配置した。そして、このような光源装置を具備して投影装置10を形成した。
【0082】
これにより、第二光源100における蛍光ホイール101の蛍光体層へ照射する励起光である第一光源70からの出射を拡散光とすることができる。さらに、光を拡散させる拡散層と、所定の波長帯域光を透過・反射させるダイクロイック層を有する層保持体からなる光学素子を得て、光源装置を形成できる。
【0083】
ゆえに、強度の高い第一光源70の固体発光素子からの光を励起光源としながらも、照射される光を拡散光とすることができるので、蛍光体層の焼き付きの虞を解消し、蛍光体層を保護して長寿命化を促進することができる。さらに、このようにして蛍光体層を保護しながら、励起光源以外の第三光源400の固体発光素子からの出射光も拡散光とすることができるので、指向性の高い固体発光素子からの光を光源とした場合においても、スクリーン上で投影される画像光について、輝度むらの無い鮮明な画像とすることができる。
【0084】
さらに、固体発光素子からの光を拡散光としつつ、各波長帯域光の光軸を合わせて出射する光学素子を層保持体として一か所にまとめて構成できるので、装置内の機器レイアウトの自由度が増加し、製造コストも低く抑えることができる光源装置及び投影装置を提供することができる。また、各色の光源ごとに拡散板やダイクロイックミラーを配置する場合に比べて部品点数も少なく構成できるので、光源装置及び投影装置を小型にすることができる。
【0085】
また、層保持体141,341,441は、拡散層を有する面とダイクロイック層を有する面が平行に配置されるように形成した。これにより、光源装置への層保持体のレイアウトも容易となり、層保持体の配置スペースを小さくすることができる。
【0086】
また、層保持体141は、単一の板状部材に拡散層141a及びダイクロイック層141bにより形成されている。そして、この層保持体141の製造方法では、一方側の面にブラスト処理により拡散層を形成し、次にダイクロイックコーティングを施した。よって、さらに省スペース化に寄与する光学素子を用いて光源装置を形成することができる。そして、拡散層を形成するためのブラスト処理を行ってからダイクロイックコーティングを施すことにより、ブラスト処理によるダイクロイックコーティングへの悪影響を回避して層保持体141を製造することができる。
【0087】
また、第二の実施形態のように、層保持体341は、拡散層を有する第一層保持体341a及びダイクロイック層を有する第二層保持体341bを有し、第一層保持体341aと第二層保持体341bが接合されて形成されるようにしてもよい。これにより、層保持体の製造を、第一層保持体と第二層保持体として個別に形成することができるので、それぞれの層保持体を他の装置の光学素子と共通部品として取り扱うこともでき、光源装置等の製造コストの低減を図ることができる。
【0088】
また、第二の実施形態では、層保持体341は、ダイクロイック層としてダイクロイックミラーを用い、拡散層として拡散透過板を用いた。これにより、層保持体を他の機器における共通部品としてのダイクロイックミラーと拡散透過板により形成することができるので、さらにコストを低減した光源装置等を提供することができる。
【0089】
また、光源装置は、第一光源70及び第三光源400が入射する側に層保持体141,341,441のダイクロイック層側の面を配置した。これにより、第一光源70及び第三光源400の固体発光素子からの出射光を拡散できるだけでなく、第二光源100の蛍光発光光についても拡散させることができる。
【0090】
また、第二光源100は、緑色波長帯域光を発光する蛍光体層が敷設された蛍光ホイール101を有する蛍光ホイール装置により形成した。これにより、光源色として緑色波長帯域光を発光可能な光源装置を得ることができる。
【0091】
また、第一光源70は、青色波長帯域光を発する固体発光素子であるレーザーダーオードにより形成した。これにより、励起光源を、省電力で高強度の光を出射する固体発光素子として、レーザーダイオードや高出力の発光ダイオードとすることができるので、より効率の良い蛍光発光光を得ることができる。
【0092】
また、第三の実施形態では、拡散層を有する第一層保持体441aを、移動可能に形成し、駆動手段442により移動駆動されるように形成した。これにより、第一光源70の光束が拡散層を透過する際に、第一層保持体441aに微振動を与えることができるので、コヒーレント光である固体発光素子からの出射光について、スペックルの発生を低減させ、鮮明な投影光を得ることができる。
【0093】
また、層保持体141,341,441のダイクロイック層は、赤色及び青色波長帯域光は透過し、緑色波長帯域光は反射するよう形成した。そして、緑色光源装置80及び励起光源71からの出射光の光軸と、赤色光源装置120及び青色光源装置300からの出射光の光軸とが交差する位置に、層保持体141,341,441を配置した。これにより、緑色光源装置80における励起光源71と蛍光ホイール101を対向して配置できる。よって、各色光源のレイアウトがコンパクトにまとめられるとともに、光の三原色を光源光として有する光源装置及び投影装置を提供することができる。
【0094】
また、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0095】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]固体発光素子を有する第一光源と、
前記第一光源を励起光源として、前記第一光源が発する波長帯域光と異なる波長帯域光を発する蛍光体層を有する第二光源と、
前記第一光源と、前記第二光源との間に配置される光学素子と、
を備え、
前記光学素子は、
前記第一光源が発する光束を透過させ、前記第二光源が発する光束を反射するダイクロイック層と、
前記第一光源の光束を拡散する拡散層と、
を有することを特徴とする光源装置。
[2]前記光学素子は、前記拡散層を有する面と前記ダイクロイック層を有する面が平行に配置されていることを特徴とする前記[1]に記載の光源装置。
[3]前記光学素子は、単一の板状部材により形成され、一方側の面に拡散層が設けられ、他方側の面にダイクロイック層が設けられたことを特徴とする前記[1]又は前記[2]に記載の光源装置。
[4]前記光学素子は、
板状に形成される第一基材の一方側の面に前記拡散層を設けた第一層保持体、及び、
板状に形成される第二基材の一方側の面に前記ダイクロイック層を設けた第二層保持体で形成されることを特徴とする前記[1]又は前記[2]に記載の光源装置。
[5]前記拡散層を有する第一層保持体として拡散透過板を用い、前記ダイクロイック層を有する第二層保持体としてダイクロイックミラーを用いたことを特徴とする前記[4]に記載の光源装置。
[6]前記光学素子は、前記第一光源が入射する側に前記ダイクロイック層が設けられていることを特徴とする前記[1]乃至前記[5]の何れか記載の光源装置。
[7]前記第二光源は、緑色波長帯域光を発する蛍光体層が敷設された蛍光ホイールを有する蛍光ホイール装置からなることを特徴とする前記[1]乃至前記[6]の何れか記載の光源装置。
[8]前記第一光源は、青色波長帯域光を発光する固体発光素子からなることを特徴とする前記[1]乃至前記[7]の何れか記載の光源装置。
[9]前記拡散層の部分は移動可能に形成されるとともに、この部分を移動駆動する駆動手段を有することを特徴とする前記[1]乃至前記[8]の何れか記載の光源装置。
[10]前記第一光源の固体発光素子及び前記第二光源が発する波長帯域光と異なる波長帯域光を発する固体発光素子を有する第三光源をさらに備え、
前記光学素子は、前記第一光源が発する光束の光軸と、前記第三光源が発する光束の光軸とが交差する位置に配置され、
前記ダイクロイック層は、前記第三光源が発する光束を透過させることを特徴とする前記[1]乃至前記[9]の何れか記載の光源装置。
[11]前記第三光源は、赤色波長帯域光を発光する固体発光素子及び/又は青色波長帯域光を発光する固体発光素子からなることを特徴とする前記[10]に記載の光源装置。
[12]前記[1]乃至前記[10]の何れか記載の光源装置と、
画像光を形成する表示素子と、
前記光源装置からの光を前記表示素子に導光する光源側光学系と、
前記表示素子から出射された前記画像光をスクリーンに投影する投影側光学系と、
前記表示素子と前記光源装置を制御する投影装置制御手段と、
を有することを特徴とする投影装置。
[13]板状に形成される層保持体と、
前記層保持体の一方側の面に設けられ、入射光を拡散させる拡散層と、
前記層保持体の他方側の面に設けられ、所定の波長帯域光を透過させ、所定の波長帯域光を反射するダイクロイック層と、
を備えることを特徴とする光学素子。
[14]前記層保持体は、単一の板状部材により形成されることを特徴とする前記[13]に記載の光学素子。
[15]前記層保持体は、
板状に形成される第一基材の一方側の面に前記拡散層を設けた第一層保持体及び
板状に形成される第二基材の一方側の面に前記ダイクロイック層を設けた第二層保持体を有し、
前記第一層保持体及び前記第二層保持体が接合されて形成されていることを特徴とする前記[13]に記載の光学素子。
[16]前記ダイクロイック層は、赤色及び青色の各波長帯域光を透過させ、緑色波長帯域光は反射するよう形成されていることを特徴とする前記[13]乃至前記[15]の何れか記載の光学素子。
[17]基材の一方側の面をブラスト処理し、入射光を拡散させる拡散層を形成する工程と、
前記基材の他方側の面にダイクロイックコーティングを施して、所定の波長帯域光を透過させ、所定の波長帯域光を反射するダイクロイック層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
[18]拡散層を有する第一層保持体を準備する工程と、
ダイクロイック層を有する第二層保持体を準備する工程と、
準備された前記第一層保持体と前記第二層保持体を前記拡散層と前記ダイクロイック層とが外側になるよう接合する工程と、
を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。