(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定ステップにより前記デブリであると判定された後又は前記ガウス曲線推定ステップから前記判定ステップの間に、前記行方向の近似ガウス曲線と前記列方向の近似ガウス曲線との高さの比率が閾値を超える場合にノイズであると判定するノイズ除去ステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のデブリ検出方法。
前記判定ステップにより前記デブリであると判定された後又は前記ガウス曲線推定ステップから前記判定ステップの間に、同一行又は同一列における前記画素値分布の数値と前記近似ガウス曲線の数値とを比較したときの誤差が閾値を超える場合にノイズであると判定するノイズ除去ステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のデブリ検出方法。
前記判定ステップにより前記デブリであると判定された後又は前記判定ステップよりも前に、前記検出対象領域の微分画像を作成し、該微分画像から微分画素値分布を作成し、該微分画素値分布の変化率が閾値を超える場合にノイズであると判定するノイズ除去ステップを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のデブリ検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図10を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るデブリ検出方法を示すフロー図である。
図2は、検出対象領域のサンプルを示す説明図であり、(a)はデブリを含むもの、(b)はノイズの第一例を含むもの、(c)はノイズの第二例を含むもの、(d)はノイズの第三例を含むもの、を示している。
図3は、本発明の第一実施形態に係るデブリ検出方法の説明図であり、(a)は二次元輝度分布、(b)は二次元ガウス曲線、を示している。
【0016】
本発明の第一実施形態に係るデブリ検出方法は、地上から撮像した天球画像からデブリ1を検出するデブリ検出方法であって、天球画像を取得する撮像ステップStep1と、天球画像からデブリ1の検出対象領域2を特定する領域特定ステップStep2と、検出対象領域2の画素値分布3を作成する画素値分布作成ステップStep3と、画素値分布3から近似ガウス曲線4を推定するガウス曲線推定ステップStep4と、画素値分布3と近似ガウス曲線4とを比較して誤差を算出する誤差算出ステップStep5と、この誤差を用いて検出対象領域2にデブリ1が含まれているか否かを判定する判定ステップStep6と、を有している。
【0017】
ここで、画素値とは、画素(ピクセル)の色の種類や明るさを表す数値であるが、画素値として輝度値を用いることが好ましい。輝度値は、一般的な撮像機器であれば撮像時に容易に取得することができるデータであり、画素値としての利便性が高い。なお、画素値は、輝度値に限定されるものではなく、明度、彩度等、撮像機器の画像から取得可能な画素(ピクセル)ごとに取得可能なデータであってもよいし、生値を平均、分散、正規化等によって加工した特徴量であってもよい。以下の説明では、画素値として輝度値を用いた場合について説明する。
【0018】
撮像ステップStep1は、天体望遠鏡にCCDカメラ等を接続した撮像機器により、デブリの周回軌道を含む天球画像を撮像するステップである。具体的には、一定時間毎に予め設定された露光時間で繰り返し連続撮像し、その画像信号をコンピュータに取り込んで保存する。このとき、以下の重ね合わせ法を適用することによって、撮像した画像から恒星の影響を除去することができる。
【0019】
まず、同一領域を撮像した複数の画像のそれぞれについて、デブリ1を含む移動天体(以下、総称して「デブリ1」と称する。)の移動に合わせて所定の領域を切り取る。これらの切り取り画像では、デブリ1の位置は一致し、恒星の位置が移動した状態となっている。次に、これらの切り取り画像を順番に並べて、同一画素(ピクセル)の輝度値を抽出し、その中央値を選択して中央値画像を作成する。ここで、輝度値の中央値を用いることにより特異点の影響を除去することができる。
【0020】
特許文献1(特開2002−139319号公報)に記載されたような重ね合わせ法では、考えられる全ての方向に重ね合わせる方向を仮定して、重ね合わせを試行することが重要である。したがって、使用している観測システムにおいて、検出が可能なあらゆる移動方向、速度の移動天体に対して重ね合わせを実施することが好ましい。
【0021】
また、中央値画像の作成後又は中央値画像の作成前に、各画素(ピクセル)について、各画像の背景の輝度値との対比を取ることによって(例えば、各画素の輝度値/背景の輝度値の数式によって)、明るい点を明確にするようにしてもよい。かかる処理により、暗い移動天体を検出することができる。
【0022】
領域特定ステップStep2は、デブリ1を検出したい領域、換言すればノイズを除去したい領域を特定するステップである。撮像ステップStep1において重ね合わせ法を用いた場合には、重ね合わせ法により得られた切り取り画像をそのまま検出対象領域2として特定してもよい。また、重ね合わせ法により得られた切り取り画像の一部、例えば、高輝度点(背景の輝度値よりも輝度値が高い点)の周囲のみを更に切り取って、検出対象領域2として特定してもよい。
【0023】
ここで、検出対象領域2の特定時に用いる画像は、重ね合わせ法により得られた切り取り画像に限定されるものではなく、撮像ステップStep1により得られた天球画像そのものであってもよい。なお、
図2(a)〜(d)において、説明の便宜上、検出対象領域2を切り取った画像により図示しているが、検出対象領域2は後述する画素値分布を算出できる領域を特定することができれば、必ずしも画像を切り取る必要はない。
【0024】
ここで、
図2(a)は、デブリ1を含む検出対象領域2のサンプルを示している。検出対象領域2は、例えば、矩形に設定される。また、検出対象領域2の縦方向は、例えば、デブリ1(高輝度点)の移動方向に設定され、検出対象領域2の横方向は、例えば、デブリ1(高輝度点)の移動方向に垂直な方向に設定される。
図2(a)に示したように、デブリ1は、中心点が最も輝度値が高く(明るく)、徐々に輝度値が低く(暗く)なる傾向にある。
【0025】
図2(b)〜(d)は、ノイズを含む検出対象領域2のサンプルを示している。
図2(b)に示した第一例は、検出対象領域2の一部に背景の輝度値よりも低い輝度値を有する真っ黒な帯状のノイズNを含むものである。
図2(c)に示した第二例は、検出対象領域2の一部に背景の輝度値よりも高い輝度値を有する白い帯状のノイズNを含むものである。
図2(d)に示した第三例は、検出対象領域2の一部に背景の輝度値よりも低い真っ黒な部分と背景の輝度値よりも高い輝度値を有する白い部分とが交互に縞状に現れた輝度値の変化幅の大きなノイズNを含むものである。
【0026】
画素値分布作成ステップStep3は、検出対象領域2から
図3(a)に示したような画素値分布3(輝度分布)を作成するステップである。
図3(a)に示した画素値分布3は、検出対象領域2の輝度値(生値)をX軸及びY軸に対して表示したもの(二次元輝度分布)である。
【0027】
ガウス曲線推定ステップStep4は、画素値分布作成ステップStep3により作成した画素値分布3について近似ガウス曲線4(二次元ガウス曲線)を推定するステップである。
図3(b)に示した近似ガウス曲線4は、平面的にガウシアンフィッティングさせたものであるが、XY座標軸のそれぞれにおける近似ガウス曲線に分解できるものであり、近似ガウス曲線4であることに変わりはない。
【0028】
誤差算出ステップStep5は、
図3(a)に示した画素値分布3と
図3(b)に示した近似ガウス曲線4とを比較して誤差を算出するステップである。誤差の算出方法としては、例えば、画素値分布3と近似ガウス曲線4とを画像マッチング(パターンマッチング)処理する方法や同一座標の数値を個々に比較して差分を算出する方法等、公知の方法を任意に選択して採用することができる。
【0029】
判定ステップStep6は、例えば、予め作成しておいたデブリ判定領域に誤差算出ステップStep5で算出した誤差を投入することによって、高輝度点がデブリ1であるかノイズNであるかを判定するステップである。デブリ判定領域は、過去の多数のデブリ画像及びノイズ画像を用いて、画素値分布作成ステップStep3〜誤差算出ステップStep5の処理を行い、機械学習法等の公知の方法を用いて作成される。なお、判定方法は、かかる方法に限定されるものではなく、誤差算出ステップStep5で算出した誤差が所定の閾値以下である場合にデブリ1であると判定するようにしてもよい。
【0030】
上述した本実施形態に係るデブリ検出方法によれば、デブリ1とノイズNの撮像画像における写り方の違いに基づいて、検出対象領域2の画素値分布3を作成して近似ガウス曲線4を推定することによりデブリ1であるか否かを判定するようにしたことから、撮像機器や撮像環境によって生じるノイズNを効率よく除去することができ、デブリ1の検出精度を向上させることができる。
【0031】
次に、本発明の第二実施形態に係るデブリ検出方法について、
図4〜
図6を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、本発明の第二実施形態に係るデブリ検出方法の説明図であり、(a)はデブリを含む検出対象領域、(b)は行方向の画素値分布、(c)は列方向の画素値分布、(d)は行方向の近似ガウス曲線、(e)は列方向の近似ガウス曲線、を示している。
図5は、本発明の第二実施形態に係るデブリ検出方法の説明図であり、(a)はノイズを含む検出対象領域、(b)は行方向の画素値分布、(c)は列方向の画素値分布、(d)は行方向の近似ガウス曲線、(e)は列方向の近似ガウス曲線、を示している。
図6は、近似ガウス曲線の高さと誤差の大きさとの相関関係を示す図である。
【0032】
本発明の第二実施形態に係るデブリ検出方法では、画素値分布作成ステップStep3は、検出対象領域2における行方向及び列方向のそれぞれについて画素値分布3r,3sを作成し、ガウス曲線推定ステップStep4は、行方向及び列方向のそれぞれについて近似ガウス曲線4r,4sを推定し、誤差算出ステップStep5は、行方向及び列方向のそれぞれについて誤差χ
2を算出し、判定ステップStep6は、近似ガウス曲線4r,4sの高さと誤差χ
2の大きさとの相関関係によってデブリ1であるかノイズNであるかを判定するようにしている。具体的には、以下のとおりである。
【0033】
画素値分布作成ステップStep3は、検出対象領域2から
図4(b),(c)又は
図5(b),(c)に示したような画素値分布3r,3s(輝度分布)を作成するステップである。ここで、
図4(b),(c)は、デブリ1を含む検出対象領域2の画素値分布3r,3s(輝度分布)を図示したものであり、
図5(b),(c)は、ノイズNを含む検出対象領域2の画素値分布3r,3s(輝度分布)を図示したものである。
【0034】
図4(b)に示した行方向の画素値分布3rは、
図4(a)に示した検出対象領域2において、画素列ごとに縦方向の輝度値の平均値(平均輝度値)を算出し、行方向に平均輝度値を並べて図示したものである。
図5(b)に示した行方向の画素値分布3rも、同様にして、行方向に平均輝度値を並べて図示したものである。
【0035】
また、
図4(c)に示した列方向の画素値分布3sは、
図4(a)に示した検出対象領域2において、画素行ごとに横方向の輝度値の平均値(平均輝度値)を算出し、列方向に平均輝度値を並べて図示したものである。
図5(c)に示した列方向の画素値分布3sも、同様にして、列方向に平均輝度値を並べて図示したものである。なお、
図4(c)及び
図5(c)において、列方向の画素値分布3sは、行方向の画素値分布3rと対比しやすくするために、90°回転させた状態を図示している。
【0036】
ガウス曲線推定ステップStep4は、画素値分布作成ステップStep3により作成した画素値分布3r,3sについて、それぞれ近似ガウス曲線4r,4sを推定するステップである。例えば、
図4(b)に示した行方向の画素値分布3rについて、最も近似したガウス曲線を推定すると、
図4(d)に示した近似ガウス曲線4rを求めることができる。
【0037】
このガウス曲線推定ステップStep4では、例えば、一次元のガウス関数であるYi(xi)=Aexp[−{(xi−μ)/σ}
2]+Cをモデル式として、Levenberg-Marquardt法によりガウシアンフィッティングし、近似ガウス曲線4rを推定する。かかるモデル式において、Yiはi番目のビン(行又は列)の推定値、xiはi番目のビン(行又は列)の平均輝度値、Aは高さ係数、σは標準偏差、μは平均値、Cは定数、を示している。かかる一次元のガウス関数を利用することにより、容易に近似ガウス曲線4rを推定することができる。
【0038】
そして、同様にして、
図4(c)に示した列方向の画素値分布3sについて、
図4(e)に示した列方向の近似ガウス曲線4sを求め、
図5(b)に示した行方向の画素値分布3rについて、
図5(d)に示した行方向の近似ガウス曲線4rを求め、
図5(c)に示した列方向の画素値分布3sについて、
図5(e)に示した列方向の近似ガウス曲線4sを求める。
【0039】
誤差算出ステップStep5は、行方向及び列方向のそれぞれについて画素値分布3r,3sと近似ガウス曲線4r,4sとを比較して誤差を算出するステップである。このステップでは、例えば、
図4(b)に示した行方向の画素値分布3rと
図4(d)に示した行方向の近似ガウス曲線4rとを比較して誤差χ
2を求める。ここで、誤差χ
2は、例えば、χ
2=Σ{(yi−Yi)/σ}
2の誤差関数により算出される。かかる計算式において、yiはi番目のビン(行又は列)の平均輝度値、Yiはi番目のビン(行又は列)の推定値、σは標準偏差、を示している。なお、分散値σ
2として、背景画像の分散値σ
2を使用してもよい。
【0040】
同様にして、
図4(c)に示した列方向の画素値分布3sと
図4(e)に示した列方向の近似ガウス曲線4sとを比較して誤差χ
2を求め、
図5(b)に示した行方向の画素値分布3rと
図5(d)に示した行方向の近似ガウス曲線4rとを比較して誤差χ
2を求め、
図4(c)に示した列方向の画素値分布3rと
図4(e)に示した列方向の近似ガウス曲線4sとを比較して誤差χ
2を求める。
【0041】
ここで、
図6は、近似ガウス曲線の高さと誤差の大きさとの相関関係を示す図である。
図5の横軸は、ガウス曲線推定ステップStep4で求めた近似ガウス曲線4r,4sの高さ係数Aを示し、縦軸は、誤差算出ステップStep5で算出した誤差χ
2を示している。また、図中の◇(白菱形)はデブリ1の行方向データ、◆(黒菱形)はデブリ1の列方向データ、○(白丸)はノイズNの行方向データ、●(黒丸)はノイズNの列方向データ、を示している。
【0042】
過去のデータから、デブリ1を含む画像(デブリ画像)とノイズNを含む画像(ノイズ画像)を多数(例えば、数百枚)用意し、それぞれの画像について上述した画素値分布作成ステップStep3、ガウス曲線推定ステップStep4及び誤差算出ステップStep5の処理を行うことにより、各画像の行方向データ及び列方向データについて、高さ係数A及び誤差χ
2を求める。この高さ係数A及び誤差χ
2の相関関係を図示したものが
図6である。
【0043】
図6に示した高さ係数A及び誤差χ
2の相関関係によれば、デブリ1の行方向データ◇及び列方向データ◆は、高さ係数Aが大きく誤差χ
2が小さい傾向にあり、ノイズNの行方向データ○及び列方向データ●は、高さ係数Aが小さく誤差χ
2が大きい傾向にあることが容易に理解できる。その結果、
図6に示したように、閾値を示す直線Lを引くことができ、直線L以下の領域(ハッチングした部分)をデブリ判定領域Rとして設定することができる。
【0044】
すなわち、撮像ステップStep1及び領域特定ステップStep2により取得した検出対象領域2について、画素値分布作成ステップStep3、ガウス曲線推定ステップStep4及び誤差算出ステップStep5の処理を行うことにより、検出対象領域2の行方向及び列方向の高さ係数A及び誤差χ
2を算出し、判定ステップStep6において高さ係数Aと誤差χ
2との相関関係がデブリ判定領域R内か否か判定することにより、デブリ1とノイズNに振り分けることができる。
【0045】
デブリ判定領域Rは、技術者の目視によって設定してもよいし、コンピュータを用いて機械的に設定してもよい。また、デブリ判定領域Rは、SVM(Support Vector Machine)やブースティング等の機械学習法を用いて設定するようにしてもよい。なお、閾値を示す直線Lは直線に限定されるものではなく曲線や折れ線であってもよいし、デブリ判定領域Rは曲線又は直線によって囲まれた領域であってもよい。
【0046】
また、上述した誤差関数は、分母に推定値Yiを置いたもの、すなわち、E
2=Σ{(y′i−Y′i)/(Y′i+1)}
2の関数であってもよい。ここで、y′i=(yi−C)/σ、Y′i=(Yi−C)/σ、を示している。この関数は、E
2の数値が、画像中心に近いほど小さくなり、画像中心から遠ざかるほど大きくなる性質を有しており、画素値分布3r,3sの中心から遠い部分(背景部分)の感度を高めることができる。
【0047】
上述した第二実施形態に係るデブリ検出方法によれば、画素値分布3や近似ガウス曲線4の計算を行方向と列方向とに分離して2方向のみを計算すればよいことから、第一実施形態の説明として図示した二次元的な画素値分布3及び近似ガウス曲線4の計算を簡略化しつつ、実質的に同程度の精度を保持することができる。なお、上述した判定ステップStep6では、高さ係数Aと誤差χ
2との相関関係に基づいてデブリ判定をしているが、高さ係数Aや誤差χ
2にそれぞれ閾値を設定してデブリ判定をするようにしてもよい。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態に係るデブリ検出方法について説明する。ここで、
図7は、本発明の第三実施形態に係るデブリ検出方法を示すフロー図である。また、
図8は、本発明の第四実施形態に係るデブリ検出方法を示す図であり、(a)は検出対象領域、(b)は行方向の画素値分布及び近似ガウス曲線、(c)は列方向の画素値分布及び近似ガウス曲線、を示している。
図9は、本発明の第五実施形態に係るデブリ検出方法を示す図であり、(a)は検出対象領域、(b)は行方向の微分画像、(c)は列方向の微分画像、(d)は行方向の輝度勾配分布、(e)は列方向の輝度勾配分布、を示している。
図10は、本発明の他の実施形態に係るデブリ検出方法を示す図であり、(a)は第六実施形態、(b)は第七実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るデブリ検出方法と同じ構成については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0049】
図7に示した第三実施形態に係るデブリ検出方法は、上述した判定ステップStep6によりデブリ1であると判定された後、行方向の近似ガウス曲線4rと列方向の近似ガウス曲線4sとの高さの比率が閾値を超える場合にノイズNであると判定するノイズ除去ステップStep7を追加したものである。具体的には、ノイズ除去ステップStep7は、行方向の近似ガウス曲線4rと列方向の近似ガウス曲線4sとの高さの比率を算出する行列比率算出ステップStep71と、その比率が閾値以下であるか否かを判定する行列比率判定ステップStep72と、を有している。
【0050】
一般に、デブリ1は、高輝度点の中心の輝度値が高く、徐々に輝度値が低くなる傾向にあることから、
図4(d)及び
図4(e)に示したように、行方向の近似ガウス曲線4rと列方向の近似ガウス曲線4sとは比較的類似した形状となる。それに対して、ノイズNの場合には、
図5(d)及び
図5(e)に示したように、行方向の近似ガウス曲線4rと列方向の近似ガウス曲線4sとは大きく異なった形状となる。
【0051】
したがって、デブリ1を含む場合には、検出対象領域2における行方向の近似ガウス曲線4rと列方向の近似ガウス曲線4sとの高さは差分が小さく、ノイズNを含む場合には差分が大きくなる傾向にある。例えば、近似ガウス曲線4r,4sの高さ係数Aのうち、数値が大きい方をA_high、数値が小さい方をA_low、と定義すれば、低値A_lowに対する高値A_highの比率A_high/A_lowを指標として容易に算出することができる。そこで、行列比率判定ステップStep72では、この比率に閾値を設定し、比率が閾値以下の場合にデブリ1と判定し、比率が閾値を超える場合にノイズNと判定している。
【0052】
比率の閾値は、例えば、過去のデータから、デブリ1を含む多数のデブリ画像とノイズNを含む多数のノイズ画像とを用いて、統計的処理によって設定することができる。また、SVMやブースティング等の機械学習法を用いて閾値を設定するようにしてもよい。なお、ここでは高さの比率を指標としているが、行方向の近似ガウス曲線4rと列方向の近似ガウス曲線4sとのずれ量を示す指標であれば、例えば、面積比等の他の指標を用いることもできる。
【0053】
上述した第三実施形態に係るデブリ検出方法によれば、上述した第二実施形態に係るデブリ検出方法において算出済みである行方向及び列方向の近似ガウス曲線4r,4sを用いて、ノイズNを効率よく除去することができ、デブリ1の検出精度をさらに向上させることができる。なお、上述したノイズ除去ステップStep7は、ガウス曲線推定ステップStep4から判定ステップStep6の間に挿入するようにしてもよい。
【0054】
図8(a)〜(c)に示した第四実施形態に係るデブリ検出方法は、上述した判定ステップStep6によりデブリ1であると判定された後、同一ビン(同一行又は同一列)における画素値分布3r,3sの数値と近似ガウス曲線4r,4sの数値とを比較したときの誤差が閾値を超える場合にノイズNであると判定するノイズ除去ステップを追加したものである。
【0055】
例えば、
図8(a)に示したように、検出対象領域2が1ビンだけ輝度値が急に低下しているノイズNを含む場合、
図8(c)に示したように、近似ガウス曲線4sを推定するとノイズNの影響が緩和されてしまい、ノイズNを除去できない場合がある。そこで、このノイズ除去ステップでは、同一ビン(同一行又は同一列)における画素値分布3r,3sの数値と近似ガウス曲線4r,4sの数値とを比較して誤差を算出し、この誤差に基づいてノイズNを除去するようにしている。
【0056】
例えば、誤差Eyは、Ey=|yi−Yi|/σの関係式により求めることができ、この誤差Eyが予め設定した閾値を超える場合にノイズNと判断する。閾値は、多数のデブリ画像及びノイズ画像を用いて統計的処理によって設定するようにしてもよいし、SVMやブースティング等の機械学習法を用いて設定するようにしてもよい。
【0057】
上述した第四実施形態に係るデブリ検出方法によれば、上述した第二実施形態に係るデブリ検出方法において算出済みである行方向及び列方向の画素値分布3r,3s及び近似ガウス曲線4r,4sを用いて、ノイズNを効率よく除去することができ、デブリ1の検出精度をさらに向上させることができる。なお、かかるノイズ除去ステップは、ガウス曲線推定ステップStep4から判定ステップStep6の間に挿入するようにしてもよい。
【0058】
図9(a)〜(e)に示した第五実施形態に係るデブリ検出方法は、判定ステップStep6によりデブリ1であると判定された後に、検出対象領域2の微分画像5h,5wを作成し、微分画像5h,5wから微分画素値分布6h,6wを作成し、微分画素値分布6h,6wの変化率が閾値を超える場合にノイズであると判定するノイズ除去ステップを追加したものである。
【0059】
例えば、
図9(a)に示したように、検出対象領域2の一部にピンポイント的に明るいノイズNを含む場合、
図4(a)に示したデブリ1の画像と比較すれば、デブリ1は中心が明るく徐々に暗くなるように表示され、ノイズNは中心のみ明るく急に暗くなるように表示される。そこで、本実施形態では、この画素値(例えば、輝度値)の変化率に基づいてデブリ1とノイズNとを判定するようにしている。
【0060】
かかる第五実施形態におけるノイズ除去ステップでは、
図9(b)及び(c)に示したように、検出対象領域2の画像を縦方向に微分した微分画像5hと、検出対象領域2の画像を横方向に微分した微分画像5wと、を作成する。かかる画像処理は、一般的な一次微分フィルタによって容易に処理することができる。
【0061】
図9(d)に示した縦方向の微分画素値分布6hは、
図9(b)に示した縦方向の微分画像5hにおいて、画素列ごとに縦方向の微分値の平均値(平均微分輝度値)を算出し、行方向に平均微分輝度値を並べて図示したものである。
図9(e)に示した横方向の微分画素値分布6wは、
図9(c)に示した横方向の微分画像5wにおいて、画素行ごとに横方向の微分値の平均値(平均微分輝度値)を算出し、列方向に平均微分輝度値を並べて図示したものである。なお、微分画素値分布6h,6wは、微分画像5h,5wの全域に亘って作成してもよいが、画像の中心部分に絞って作成するようにしてもよい。
【0062】
そして、
図9(d)及び(e)に示した微分画素値分布6h,6wにおいて、各ビンの平均微分輝度値について隣接する平均微分輝度値との変化率が所定の閾値よりも大きい場合にノイズNであると判定する。この閾値は、多数のデブリ画像及びノイズ画像を用いて統計的処理によって設定するようにしてもよいし、SVMやブースティング等の機械学習法を用いて設定するようにしてもよい。
【0063】
ところで、一般に、平均微分輝度値の変化率が大きな箇所は、高輝度点の縦方向の外縁部における二箇所、高輝度点の横方向の外縁部における二箇所で生じることとなる。そこで、微分画素値分布6h,6wを左右に二分割し、左右それぞれの領域内における平均微分輝度値の最大値を算出し、その両隣の平均微分輝度値との変化率を算出することにより、デブリ1であるかノイズNであるか容易に判定するようにしてもよい。
【0064】
上述した第五実施形態に係るデブリ検出方法によれば、行方向及び列方向の画素値分布3r,3s及び近似ガウス曲線4r,4s以外の指標を用いていることから、ノイズNを効率よく除去することができ、デブリ1の検出精度をさらに向上させることができる。なお、かかるノイズ除去ステップは、判定ステップStep6より前に挿入するようにしてもよい。
【0065】
図10(a)に示した第六実施形態に係るデブリ検出方法は、上述した第一実施形態に係るデブリ検出方法における画素値分布作成ステップStep3の処理内容を変更したものである。具体的には、画素値分布3r,3sを作成する際における、行方向を検出対象領域2に含まれる高輝度点(デブリ1)の移動方向に設定し、列方向を検出対象領域2に含まれる高輝度点(デブリ1)の移動方向に垂直な方向に設定している。
【0066】
このように行方向及び列方向を高輝度点(デブリ1)の移動方向及びそれに垂直な方向に設定することにより、デブリ1の特徴を明確にすることができ、判定しやすい画素値分布3r,3s及び近似ガウス曲線4r,4sを取得することができる。
【0067】
図10(b)に示した第七実施形態に係るデブリ検出方法は、上述した第一実施形態に係るデブリ検出方法における画素値分布作成ステップStep3の処理内容を変更したものである。具体的には、行方向及び列方向のうち輝度値が基準値よりも高い領域Wx,Wyに亘って画素値分布3r,3sを作成するようにしたものである。図示したように、デブリ1は、高輝度点の中心の輝度値が高く、徐々に輝度値が低くなる傾向にある。
【0068】
そこで、例えば、背景画像の輝度値を基準値として、背景画像の輝度値よりも高い輝度値を有する部分(領域Wx,Wy)においてのみ画素値分布3r,3sを作成することによっても、デブリ1とノイズNとの判定を行うことができる。なお、領域Wx,Wy以外の部分については、各ビン(行又は列)における輝度値の中心値を用いて、画素値分布3r,3sを作成するようにしてもよい。
【0069】
上述した第一実施形態や第二実施形態に係るデブリ検出方法では、検出対象領域2の全域に亘って輝度値の平均を算出していることから、明るさの情報が低くなって表示されることとなるが、かかる第七実施形態に係るデブリ検出方法によれば、領域Wx,Wy以外の部分については平均値を使用しないようにしたことから、明るさの情報が少ない暗い部分における感度を高めることができる。
【0070】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。