特許第6344810号(P6344810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 下村 恭一の特許一覧

特許6344810グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー
<>
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000002
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000003
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000004
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000005
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000006
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000007
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000008
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000009
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000010
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000011
  • 特許6344810-グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6344810
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】グラビア印刷方法およびそれに用いるスキージー
(51)【国際特許分類】
   B41F 9/10 20060101AFI20180611BHJP
   B41F 31/02 20060101ALI20180611BHJP
   B41F 31/20 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B41F9/10
   B41F31/02 Z
   B41F31/20
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-22925(P2018-22925)
(22)【出願日】2018年2月13日
【審査請求日】2018年2月13日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】714011259
【氏名又は名称】下村 恭一
(72)【発明者】
【氏名】下村恭一
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−142805(JP,U)
【文献】 特開2000−343682(JP,A)
【文献】 特許第6202459(JP,B2)
【文献】 特開平11−254650(JP,A)
【文献】 特開2005−041175(JP,A)
【文献】 特開2003−190856(JP,A)
【文献】 特開2015−098100(JP,A)
【文献】 米国特許第02310788(US,A)
【文献】 米国特許第04848269(US,A)
【文献】 中国実用新案第201020917(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/00 − 35/06
B41F 5/00 − 13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア印刷に供する版円周の異なるグラビア印刷版に対し、可動支点を中心にファニッシャーロールを回動して接触させ、またインキパンを上下に調整し、前記インキパンにインキを供給して貯めて、前記ファニッシャーロールより前記グラビア印刷版にインキを供給するグラビア印刷機にあって、前記ファニッシャーロールより前記インキを掻き落すスキージー治具を前記インキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させ、前記スキージー治具のスキージー部を前記ファニッシャーロールの所望の位置にあてがい、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーロールから供給されるインキ付着量を少なくすることを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項2】
グラビア印刷に供する版円周の異なるグラビア印刷版に対し、可動支点を中心にファニッシャーロールを回動して接触させ、またインキパンを上下に調整し、前記インキパンにインキを供給して貯めて、前記ファニッシャーロールより前記グラビア印刷版にインキを供給するグラビア印刷機にあって、前記ファニッシャーロールより前記インキを掻き落すスキージー治具を前記インキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させ、前記スキージー治具のスキージー部を前記ファニッシャーロールの所望の位置にあてがい、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーロールから供給されるインキ付着量を少なくすることを特徴とするスキージー治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グラビア印刷において、グラビア印刷版にファニッシャーロールから供給されるインキを、スキージー治具をファニッシャーロールに沿わせることで、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に供給されるインキを掻き落としインキ付着量を少なくすることにより、グラビア印刷版両端のR部及び版側面から印刷ユニットのフレーム、チャキングコーン周辺へのインキ飛散を少なくし、グラビア印刷物の品質向上、生産性向上を図るスキージー治具に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷において、グラビア印刷版にインキを塗布するには、主たる方法として、(1)インキパンに貯めたインキに直接グラビア印刷版を浸し塗布する方法。(2)ファニッシャーロールにインキパンに貯めたインキを塗布し、ファニッシャーロールからグラビア印刷版に塗布する方法がある。
【0003】
前者は、グラビア印刷が、低速(100m/分程度)で印刷されていた時には、この方法であった。しかし、グラビア印刷の速度が、高速(最大速度は150から300m/分程度)になるにつれ、(1)インキパン・グラビア印刷版周辺のインキ飛散が大きくなったため、(2)印刷絵柄の再現性をよくするように、セルへインキを押し込むため、後者のファニッシャーロールを使用する仕様が一般的になっている。
【0004】
ファニッシャーロールを使用するようになり、グラビア印刷の高速化が進むほどグラビア印刷版周辺のインキ飛散が大きくなり、グラビア印刷物の品質(インキ飛び)、印刷ユニットのフレーム、チャキングコーン周辺へのインキ付着による清掃など、グラビア印刷の生産効率を阻害している。
【0005】
また、包装材に求められる絵柄のピッチは任意でありグラビア印刷版の版円周は500mmから950mmと様々であり、これらの版円周の対応したグラビア印刷方法が必要となる。
【0006】
更にグラビア印刷版の価格は、グラビアシリンダーの幅(版幅)や版面の表面積(版円周)で決められるため、グラビア印刷版の幅は数種を保有し、同じ印刷機で印刷されている。このため、幅が異なる3種のニップ圧胴を内蔵し自由に選択できるタイプのグラビア印刷機が多く販売されている。異なる幅のグラビア印刷版の使用頻度が少ないグラビア印刷機においては、ニップ圧胴交換で対応する。
【0007】
異なる幅、異なる版円周のグラビア印刷版を使用するために、ニップ圧胴の交換を行うが、ファニッシャーロールについては、全ての異なる幅、異なる版円周のグラビア印刷版に対して、共通で使用されている。従って異なる版円周のグラビア印刷版にファニッシャーロールが対応できるように、印刷機フレームに可動アームを設けファニッシャーロールを取り付けることで、可動支点を中心にファニッシャーロールを回動してグラビア印刷版に接触させる機構としている。
【0008】
従って、版側面及びドクターが接触するR部などに塗布される過剰なインキについて、仕方がないものと考えられていた。また、グラビア印刷版幅に合わせたファニッシャーロールを持つことは、場所の問題、費用の問題の他に、ファニッシャーロールの交換時の洗浄と言う問題もあり、グラビア印刷機においては1種類の幅のファニッシャーロールが使用されている。
【0009】
また、グラビア印刷版幅に対応したファニッシャーロールを持ち、版側面及びR部へのインキ供給を少なくすることは、印刷速度、インキ粘度、グラビア印刷版のチャッキング位置のわずかなズレなどにより、万一ドクター刃とグラビア版面の接点にインキが全く供給されない場合、グラビア印刷版の端部でドクター刃の急速な摩耗、発熱などの異常が発生するため、ファニッシャーロールの幅をグラビア印刷版の幅よりも短くすることはされてこなかった。
【0010】
このことなどの理由より、ファニッシャーロールがグラビア印刷版に両端部での、過剰なインキ供給については、改善が図られてこなかった。
【0011】
本願発明者は、先に特許第6202459号で、グラビア印刷に供するグラビア印刷版にグラビアインキを供給するファニッシャーローラーにあって、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域において、インキパンフレームに固定した治具及びスキージーをもって、前記グラビアインキを前記ファニッシャーローラーより掻き落とすことで、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーローラーからのインキ付着を少なくすることを特徴とするグラビア印刷方法および治具及びスキージーを提案した。
【0012】
しかし、本発明ではグラビア印刷版の版円周が異なればインキパンフレームからファニッシャーローラーまでの距離が異なり、前記ファニッシャーローラーに適切な位置にスキージーを取り付けるためには、長さの異なるスキージーを多く用意することが必要であった。
【0013】
また、スキージーの自重でファニッシャーローラーに加圧されるため、スキージーが接触する角度によりファニッシャーローラーより掻き落とすインキ量が変化すること及びスキージー先端とインキパンフレームまでの長さがグラビア版の円周により異なり、スキージーの自重が長さにより異なること、この長さが長いと振動でインキの飛散が見られこと、更にはスキージーで掻き落としたインキで治具やインキパンフレームを汚し清掃に時間を必要とするなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
特開2006−272710
特開2016−203387
特許第6202459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
グラビア印刷において、グラビア印刷版にグラビア版にインキを供給するファニッシャーロールからのインキ供給方法おいて、グラビア印刷版両端のR部版側面のへのインキ付着を少なくすることにより、版側面及びドクターが接触するR部などからのインキ飛散を少なくし、グラビア印刷物の品質向上、印刷ユニットのフレーム、チャキングコーン周辺へのインキ飛散をなくしグラビア印刷の生産性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のグラビア印刷方法は、グラビア印刷に供する版円周の異なるグラビア印刷版に対し、可動支点を中心にファニッシャーロールを回動して接触させ、またインキパンを上下に調整し、前記インキパンにインキを供給して貯めて、前記ファニッシャーロールより前記グラビア印刷版にインキを供給するグラビア印刷機にあって、前記ファニッシャーロールより前記インキを掻き落すスキージー治具を前記インキパン底部に磁石の吸引力(磁力による密着を以下吸引力と記す)を持ってスライド可能に密着させ、前記スキージー治具のスキージー部を前記ファニッシャーロールの所望の位置にあてがい、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーロールから供給されるインキ付着量を少なくすることを特徴とする。
【0017】
フャニッシャーローラーは、グラビア印刷版に設けられた絵柄を形成するセルにインキを押し込むことが、主たる役割であり印刷速度の高速化に伴い不可欠なロールとなった。グラビア印刷版の速度と同じならファニッシャーロールからインキが飛散するので、周速を調整できる。従ってファニッシャーロールにより持ち上げられたインキは、障害物があれば、障害物に当たったインキは大半がインキパンに戻る。このような現象を利用すれば、障害物としてスキージーの役割をする治具(以下、スキージー治具と言う)を設ければグラビア印刷版両端のR部を含む一部領域にインキの供給を少なくすることができる。
【0018】
図1に、本発明のグラビア印刷方法の印刷ユニットの概念斜視図を示す。インキパン(1)に貯めたインキ<インキを太斜線で表した>(2)にファニッシャーロール(3)をインキ(2)に漬け回転することでインキ(2)をグラビア印刷版(4)に運びインキ溜まり(5)を作り、過剰なインキ(2)はインキパン(1)に落下し、一部はグラビア印刷版(4)の両端のR部(6)からインキパン(1)に落下する。グラビア印刷版(4)及びファニッシャーロール(3)の回転方向を側面に黒矢印で示した。尚、グラビア印刷版(4)とファニッシャーロール(3)のシャフトは図1から省略している。
【0019】
本発明のインキパンの底部(7)にインキパン外面底部に設けた磁石(12)の吸引力を持ってスライド可能に密着させたスキージー治具(9)で、ファニッシャーロール(3)により持ち上げられたインキ(2)を掻き落としグラビア印刷版(4)両端のR部(6)を含む一部領域にインキ(2)を供給しないことにより、R部(6)及び版側面(10)へのインキ(2)の付着を少なくするものである。グラビア印刷版(4)両端のR部(6)近傍においてもドクター刃(11)で掻き落とされるインキも少なくなり版側面(10)のインキ汚れも軽減される。
【0020】
このように、本発明のグラビア印刷方法である、インキパン底部にスキージー治具を磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させて取り付けることにより、R部及び版側面からのインキ飛散がなくなり、版側面へのインキ付着もR部の近傍だけとなることで、グラビア印刷機のフレーム内面やグラビア印刷版を保持するシャフト、更にはグラビア印刷版とシャフト先端のチャッキングコーンの間にもインキの侵入がなく、常にグラビア印刷機を汚れのない状態を維持するだけでなくグラビア印刷版の清掃作業もなくなり、グラビア印刷の効率を高めるものである。
【0021】
スキージー治具をインキパン底部にセット(固定又は密着)する方法として、<1>ボルトでの固定では、インキの漏れを招く恐れがあり現実的でなく、<2>インキパン底部にスキージー治具の固定ガイドを設けることはスペースが狭く現実的でなく、本発明は<3>磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させる方法を選択したものである。また、スキージー治具を磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させることで、所望の位置にスキージーを設けることが容易にでき、またグラビア印刷稼働中においても容易に調整ができるものである。
【0022】
本発明のスキージー治具は、グラビア印刷に供する版円周の異なるグラビア印刷版に対し、可動支点を中心にファニッシャーロールを回動して接触させ、またインキパンを上下に調整し、前記インキパンにインキを供給して貯めて、前記ファニッシャーロールより前記グラビア印刷版にインキを供給するグラビア印刷機にあって、前記ファニッシャーロールより前記インキを掻き落すスキージー治具を前記インキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させ、前記スキージー治具のスキージー部を前記ファニッシャーロールの所望の位置にあてがい、前記グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーロールから供給されるインキ付着量を少なくすることを特徴とする。
【0023】
先に示した図1に示したように、インキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させたスキージー治具により、ファニッシャーロールに塗布したインキは掻き落とされ、ファニッシャーロールが接するグラビア印刷版両端のR部を含む一部領域のインキ溜まりは少なくなり、グラビア印刷版両端のR部及び版側面へのインキ付着量を少なくすることが出来る。
【0024】
図2に、本発明の1例としてインキパン外面底部(7)に磁石を設け、スキージー治具(9)を該磁石(12)の吸引力を持ってスライド可能に密着させた拡大断面図を示す。また、図3にグラビア印刷版(4)の版円周が小さくなった場合にグラビア印刷版(4)の位置に対するファニッシャーロール(3)、インキパン(1)、スキージー治具(9)の位置を示す。グラビア印刷版(4)は印刷機フレームから延びるチャキング軸で保持されるため同一の位置となる。
【0025】
図2、及び図3において、グラビア印刷版(4)は同じ位置に、機械フレームからチャッキング軸で保持され、ファニッシャーロール(3)が機械フレームを可動支点(14)とした可動アーム(13)に設けられグラビア印刷版の下部に接触する。インキパン(1)は上下に動くインキパン架台の定位置にセットされ、ファニッシャーロール(3)に対応した位置に調整される。
【0026】
インキパン外面底部に磁石を設けるには、インキパン外面底部に磁石を接着し固定、又はインキパン外面底部に枠を設け磁石を収納して固定してもよい。
【0027】
図4にインキパン外面底部に磁石設けた場合のスキージー治具(9)の外観斜視図を示す。図5に別なスキージー治具(9)の外観斜視図を示す。
【0028】
磁石は、インキパン外面底部に設ける必要はなく、スキージー治具と一体として磁石を設けることができる。この場合はスキージー治具及び磁石の洗浄適性とインキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着できるようにインキパンが鉄製又は鉄製でなければインキパン外面底部に鉄板を設ければよい。この場合のスキージー治具について説明をする。
【0029】
図6は、スキージー治具に磁石の収納部を設けたもので、インキパンが鉄製あればインキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着することができる。更に図7は本発明のスキージー治具に展開図を示した。スキージー治具を磁石が付かないステンレスで作成すれば簡単に磁石を外し洗浄することができる。
【0030】
図8は、スキージー治具に磁石を密封した状態を示す断面図である。このスキージー治具の素材としては、鉄、ステンレス、アルミなどの金属類、又はポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスッチク類より選択すればよい。また、スキージー部分だけを金属類又はプラスッチク類にして、勘合式又はキャップ式にして使い捨てることができるようにしてもよい。スキージー治具は単一材料に限定するものでなく、スキージーに適した材料をスキージー部分にだけ使用してもよい。
【0031】
このように、インキパン底部にスキージー治具と磁石一体にしてインキパンに磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させてもよく、インキパンがステンレスなど磁石の吸引力を持って密着しない場合はインキパン外面底部に板状の鉄を接着しておけばよい。
【0032】
磁石をインキパン内に又はインキパン外面底部に設けること、磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着できるスキージー治具を任意に選択することができる。スキージー治具は単一材料に限定するものでなく、スキージーに適した材料をスキージー部分にだけ使用してもよい。
【0033】
本発明のインキパンの外面底部に設けた磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着できるスキージー治具は、グラビアインキをファニッシャーロールより掻き落すことができればよいが、グラビア印刷版の版円周が変われば、ファニッシャーロールの位置が変わる為、任意の位置にスキージー治具を移動できるように、磁石を用いることは好ましい。また、グラビア印刷版の幅が異なってもグラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面にスキージー治具を容易に移動でき磁石を用いることは好ましい。
【0034】
尚、磁石は磁力の強い希土類磁石ネオジウムなどを使用するのが好ましい。また、インキパンの清掃を容易にするためインキパンにフィルムを引く場合は、スキージー治具とインキパン底部の間にフィルムが介在するが磁力の強い磁石であれば影響を受けない。
【0035】
図1から図9示すように、本発明ではスキージー治具をインキパン底部に密着するための磁石は、インキパンに内部設けても、インキパン外面底部に設けても、どちらであってもよい。
【0036】
本発明者は、先に特許第6202459号で、インキパンフレームに固定した治具及びスキージーをもって、ラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーローラーからのインキ付着量を少なくするグラビア印刷方法および治具及びスキージーを提案した。
【0037】
しかし、インキパンフレームに固定した治具から延びるスキージー部は、ファニッシャーローラーに自重での加圧であり、加圧によりファニッシャーローラーに摩耗が生じること、グラビア版の版円周によりスキージー部の長さが異なりスキージー部の調整が煩雑でること、スキージー部が長いと該部分に振動が生じファニッシャーローラーに安定した加圧が困難なこと、スキージー部が長いと該部分の振動によりスキージーで掻き落としたインキが飛散し易いこと、治具及びスキージーが多くの部材より構成されており洗浄性に劣ること、部材が多くなることで高価な装置となること、印刷機によりインキパンフレームの形状が異なり汎用性がないこと、などを考慮して本発明に至ったものである。
【0038】
本発明と特許第6202459号とは、ファニシャーロールからインキを掻き落とすことは同一であるが、本発明はスキージー治具をインキパン底部に磁石の吸引力を持って密着スキージー治具のスキージー部を持ってファニッシャーロールの表面に垂直に近い角度で沿わすものでありファニッシャーロールを傷つけることがなく、ファニッシャーロールの円周方向の広い表面範囲でインキを掻き落とすことができるのに対し、特許第6202459号はスキージーの自重でファニッシャーロールからインキを掻き落とすのでファニッシャーロールの上部に限られる。また、スキージーの自重は、インキパンフレームからの長さ及び角度によりファニッシャーロールへの加圧力が変化するためスキージーの効果は不安定になるだけでなく、ファニッシャーロールを傷つける危険性もある。
【0039】
本発明の掻き落とし可能な範囲について図10を持って説明する。スキージー治具のスキージー部はファニッシャーロールに垂直に近い角度で沿わせ、インキパン底部の密着部分からスキージー部が長くない方が操作は容易で、また短くなり過ぎると操作しにくいものであった。
【0040】
比較として、特許第6202459号掻き落とし可能な範囲について図11を持って説明する。図11においても実線で示したスキージー部が好ましい範囲となるが範囲が狭く操作が容易ではないだけなく、荷重が大きいとファニッシャーロールを傷つける摩耗する危険があり、またインキ粘度の違いで掻き落とされるインキ量が異なるものであった。
【発明の効果】
【0041】
グラビア印刷版にインキを供給するファニッシャーロールからのインキ供給において、グラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーロールから供給されるインキ付着量を少なし、機械フレームなどへのインキ飛散をなくすため、ファニッシャーロールにインキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させるスキージー治具を沿わすことで改善が図れた。
【0042】
ファニッシャーロールにインキパン底部に磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させスキージー治具を沿わすことで、ファニッシャーロールにスキージー治具のスキージー部を加圧しないためファニッシャーロールを傷つけることなくインキを掻き落とすことができた。これにより、グラビア印刷物の品質向上、印刷ユニットのフレーム、チャキングコーン周辺へのインキ飛散がなくなり、グラビア印刷の生産性向上及び品質向上を図ることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明のグラビア印刷方法の概念斜視図
図2図1のスキージー治具の部分を含む断面図
図3図2の版円周の異なる場合のスキージー治具の部分を含む断面図
図4図2に使用するスキージー治具の斜視図
図5図2に使用する別なスキージー治具の斜視図
図6】磁石収納部を設けた設けたスキージー治具の断面図
図7図6に示したスキージー治具の展開図
図8】磁石を内部に密封したスキージー治具の展開図
図9】磁石を内部に密封した別なスキージー治具の展開図
図10】本発明のスキージー治具とファニッシャーロールの位置関係図
図11】別な発明のスキージー先端部とファニッシャーロールの位置関係図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0044】
グラビア印刷を、図1に示した状態で行った。スキージーは図8のタイプのものを使用した。スキージー治具は磁石の吸引力を持ってインキパン底部に密着させ、ファニッシャーロールに持ち上げられたインキの9割程度をスキージー治具により除去できた。この状態でR部を観察すると、R部からインキパンに落ちるインキはなかった。また、スキージー治具と対向するグラビア印刷版とファニッシャーロールとの間のインキ溜まりは明らかに少ない状態であった。
【0045】
この状態での印刷を、10万m行ったが、印刷機フレーム、版のチャッキングコーンへのインキ飛散はなかった。
【符号の説明】
【0046】
1 インキパン
2 インキ
3 ファニッシャーロール
4 グラビア印刷版
5 インキ溜まり
6 両端のR部
7 インキパンの底部
9 スキージー治具
10 版側面
11 ドクター刃
12 磁石
13 ファニッシャーロール可動アーム
14 ファニッシャーロール可動支点
15 折り曲げ部
16 スキージー治具とファニッシャーロールの位置関係
17 スキージー治具とファニッシャーロールの好ましい位置関係
18 スキージー先端とファニッシャーロールの位置関係
19 スキージー先端とファニッシャーロールの好ましい位置関係
20 スキージー先端部
【要約】
ファニッシャーロールからのグラビア印刷版側面へインキが付着するのを防ぐために、インキパン底部にスキージー治具を磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させファニッシャーロールにスキージー部を沿わせることでグラビア印刷版両端のR部を含む一部領域の版面及び版側面に前記ファニッシャーロールから供給されるインキ付着量を少なくすることグラビア印刷版側面からのインキ飛散をなくした。
【課題】グラビア印刷版側面からのインキ飛散を少なくする。
【解決手段】インキパン底部にスキージー治具を磁石の吸引力を持ってスライド可能に密着させ、スキージー部をグラビア印刷版側面近傍にファニッシャーロールに沿わせることでグラビア印刷版側面へのインキ供給を少なくし、機械フレーム・グラビア版のチャッキング部などへのインキ飛散をなくした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11