(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
人工衛星などの人工物を、地上から打ち上げた後は、万が一の不具合が発生したとしても、その状態を直接的に検査したり、原因を調査したり、修理したりなどのメンテナンスが極めて困難、乃至、不可能とされる場合がある。人工物のなかには、予め検査機能、バックアップ機能を有したものはあるものの、これらのメンテナンスには、基本的には地上との通信を介した地上スタッフによる補助が必要とされる。特に、人工物の通信機能に障害が発生した場合には、地上スタッフは人工物の現状すら知り得ない状況に追い込まれかねない。
【0003】
しかし、地球を周回する人工物を、地上から光学的に観測することで、その人工物の状態などをたとえ部分的であったとしても、知ることが出来る場合がある。
【0004】
図1は、地球を周回する人工物を地上から光学的に観測するシステムを概念的に示す図である。
図1は、光学観測システム10と、いわゆる低軌道11と、低軌道衛星12と、中軌道13と、中軌道衛星14と、いわゆる静止軌道15と、いわゆる静止軌道衛星16と、観測範囲17とを示している。低軌道11は、80km〜2000kmを表し、中軌道13は、2000km〜35000kmを表し、静止軌道15近傍は、35000km〜37000kmを表している。
【0005】
図1の例において、光学観測システム10は、地上に配置されている。一般的な光学観測システム10の実質的な観測範囲17は、いわゆる低軌道11までなら、すなわち、地上から高度数千キロメートル程度で地球を周回する低軌道衛星12などなら、カバー出来る。しかしながら、地上から高度約36000キロメートルのいわゆる静止軌道15で地球を周回する、いわゆる静止軌道衛星16などを、地上の光学観測システム10から観測しようとしても、その形状や姿勢を映すために必要な解像度が得られない。
【0006】
上記に関連して、特許文献1(特開2002−220098号公報)には、天球上で特定の運動をする対象物(静止軌道上のデブリ等)の検出方法に係る記載が開示されている。特許文献1に記載の検出方法は、天体観測において、望遠鏡を所定の駆動法で駆動し、ある時刻t
0から時刻t
Tの間露出して得られる画像データから、特定の運動をする対象物を検出する方法である。この検出方法では、画像の任意のある点P
xについて、露出開始時刻t
0に観測対象物が点P
xに結像すると仮定したとき、画像データ上で時刻t
0から時刻t
Tまでの間の対象物の運動軌跡を計算し、軌跡上の画像データを加算する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明による監視システムおよび監視方法を実施するための形態を以下に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図2は、本発明による監視システムの全体的な構成例を示すブロック回路図である。
図2に示した構成例によるブロック回路図の構成要素について説明する。
【0016】
図2に示した構成例による監視システムは、バス21と、光学観測システム22と、データ処理システム23とを有している。
【0017】
光学観測システム22は、補償光学221を有している。
【0018】
データ処理システム23は、演算部231を有しており、演算部231は、解析部2311と、周波数フィルタリング部2312と、抽出部2313とを有している。
【0019】
データ処理システム23は、記憶部232をさらに有しており、記憶部232は、恒星データベース2321と、宇宙物体データベース2322と、ライトカーブ推定データベース2323と、重要監視対象データベース2324とを有している。
【0020】
恒星データベース2321は、輝度を基準として利用可能な恒星に係るデータを格納している。宇宙物体データベース2322は、地球を周回する人工物に係る諸データを格納している。ライトカーブ推定データベース2323は、輝度の変化の周期性の特徴と、目標対象物の形状や、姿勢や、表面材料の反射率などの特徴との関係性に係るデータを格納している。重要監視対象データベース2324は、目標対象物のうち、重要監視の対象と判定されたもののリストや、それらに係る諸データなどを格納している。
【0021】
図2に示した構成要素の接続関係について説明する。バス21は、光学観測システム22と、データ処理システム23とに接続されている。言い換えれば、光学観測システム22と、データ処理システム23とは、バス21を介して自由に通信することが出来る。
【0022】
図2に示した構成要素の動作について説明する。
【0023】
光学観測システム22は、地上に設置されており、上空を光学的に観測する。補償光学221は、光学的な補償によって、光学観測システム22に対する大気などによる影響を除去する。
【0024】
演算部231は、記憶部232や入力装置24などから供給される所定のプログラムを実行することで、各種の機能を実現する。なお、演算部231は、各種の機能を実現するために、記憶部232や入力装置24などから供給される各種のデータを参照しても良いし、記憶部232の一部などをメモリ領域として流用しても良い。
【0025】
解析部2311は、演算部231の一機能として、光学観測システム22より取得されたデータを、バス21を介して受け取り、恒星と目標対象物を明確にするために、恒星データベース2321を利用して、各データについてマッチングを実施する。その後、目標対象物及び基準恒星の輝度の時間変化を解析する。
【0026】
周波数フィルタリング部2312は、演算部231の一機能として、目標対象物から光学的に得られた輝度情報の時間変化を示すデータに対する所定の周波数フィルタリング処理を行うことによって、大気などによる影響を除去する。
【0027】
抽出部2313は、演算部231の一機能として、解析の結果に基づいて、輝度情報の周期性を抽出する。
【0028】
入力装置24は、選定された観測対象などを入力する。また、入力装置24は、演算部231に実行させる各種のプログラムを所定の記録媒体から入力しても良い。
【0029】
出力装置25は、監視システムが監視、解析または抽出した結果などを出力する。
【0030】
図3は、本発明による監視方法の全体的な構成例を示すフローチャートである。
図3を参照して、本発明による監視方法、すなわち本発明による監視システムの動作全般について説明する。
【0031】
図3に示したフローチャートは、大きく分けて、3つの段階を含んでいる。そのうち、第1の段階S1では、観測指示を行う。第2の段階S2では、光学観測を行う。第3の段階S3では、データ処理を行う。
【0032】
図3に示したフローチャートにおいて、第1の段階S1は、3つの段階を含んでいる。そのうち、第1−1の段階S11では、目標対象物の選定を行う。第1−2の段階S12では、宇宙物体データベース2322の参照を行う。第1−3の段階S13では、目標対象物の座標を抽出する。
【0033】
図3に示したフローチャートにおいて、第2の段階S2は、2つの段階を含んでいる。そのうち、第2−1の段階S21では、補償光学221を利用して光学観測システム22にて、観測する。第2−2の段階S22では、観測画像を取得する。
【0034】
図3に示したフローチャートにおいて、第3の段階S3は、13の段階を含んでいる。そのうち、第3−1の段階S31では、恒星データベース2321と観測画像とのマッチングを実施する。第3−2の段階S32では、目標対象物の時間変化における輝度情報をプロットする。第3−3の段階S33では、基準恒星の輝度の変化をプロットする。第3−4の段階S34では、目標対象物の輝度変化を補正する。第3−5の段階S35では、周波数フィルタリング処理を実施する。第3−6の段階S36では、目標対象物の輝度情報を抽出する。第3−7の段階S37では、目標対象物の輝度の周期性を抽出する。この結果により、目標対象物の姿勢制御の有無が推定でき、姿勢制御がなされていない場合は運用されていないと考えることもできる。これ以降の処理は、目標対象物が新規観測か否かで手順が変わる。今までに輝度情報の抽出を実施したことのない物体(以後、新規物体)の場合、第3−8の段階S38では、ライトカーブ推定データベース2323との比較を実施する。第3−9の段階S39では、目標対象物の形状、姿勢、表面材料を推定する。第3−10の段階S310では、目標対象物を宇宙物体データベース2322に登録する。今までに輝度情報の抽出を実施したことのある物体(以後、既知物体)の場合、第3−11の段階S311では、前回までに取得したデータとの比較を実施する。第3−12の段階S312では、目標対象物の異常の検知を行う。第3−13の段階S313では、第3−12の段階S312で異常が検知された場合、目標対象物を重要監視対象データベース2324に登録する。
【0035】
これらの第1の段階S1〜第3の段階S3は、この順番に実行される。また、第1−1の段階S11〜第1−3の段階S13と、第2−1の段階S21〜第2−2の段階S22と、第3−1の段階S31〜第3−7の段階S37とは、この順番に実行される。第3−8の段階S38〜第3−310の段階及び第3−8の段階S311〜第3−313の段階313とは、新規物体、既知物体で順番の内容が異なる以降、各段階について、より詳細に説明する。
【0036】
第1−1の段階S11では、目標対象物を選定する。この選定は、監視システムの利用者が行っても良いし、データ処理システム23が所定のリストから所定の条件に沿って行っても良い。ここで、所定のリストおよび所定の条件は、宇宙物体データベース2322に含まれていても良いし、重要監視対象データベース2324に含まれていても良い。
【0037】
第1−2の段階S12では、データ処理システム23の宇宙物体データベース2322を参照して、目標対象物を地上から光学的に観測するために必要な諸データを取得する。この諸データには、特に、目標対象物がどのような軌道で地球を周回しているかの情報が含まれていることが好ましい。なお、目標対象物は、宇宙物体データベース2322に未登録の新規物体であっても良い。
【0038】
第1−3の段階S13では、演算部231が、第1−2の段階S12で得られた諸データから、光学的に観測する際に目標対象物が位置する座標を抽出または算出する。このとき、光学観測システム22が目標対象物を観測できる時間帯もあわせて算出することが好ましい。
【0039】
第2−1の段階S21では、光学観測システム22で、目標対象物を光学的に観測する。その時、大気の影響を除去する目的として、補償光学221を利用する場合がある。
【0040】
第2−2の段階S22では、光学観測システム22にて、画像を取得する。この観測は、演算部231によって支援されても良い。また、この観測は、同じ目標対象物に対して定期的に、または不定期的に、複数回繰り返されることが好ましい。
【0041】
第3−1の段階S31では、演算部231が、記憶部232に予め格納されている恒星データベース2321を参照する。ここで、演算部231は、特に、第2−2の段階S22で取得された観測画像において、目標対象物の付近に撮像された恒星を特定し、この恒星に係る諸データを取得することが好ましい。恒星の諸データには、例えば、恒星の座標または地球から見た方角や、恒星の等級または見かけ上の輝度および変光星であればその変光周期などが、目標対象物の観測結果と比較可能な形式で含まれていることが好ましい。
【0042】
第3−2の段階S32では、演算部231が、目標対象物の推定輝度の、時間の経過に伴う変化を示すデータをプロットする。このようなデータの一例として、目標対象物の推定輝度と、時間の経過とを2次元座標上にプロットしたグラフを作成しても良い。ただし、この段階で得られるデータには、補償光学221で補正しきれなかった大気揺らぎによる影響や、観測環境に由来するノイズデータなどが含まれている場合がある。
【0043】
第3−3の段階S33では、演算部231が、基準恒星の輝度変化をプロットする。
【0044】
図4Aは、本発明による輝度変化をプロットした結果の一例を示すグラフである。
図4Aに示したグラフにおいて、横軸は時間の経過を示し、縦軸は目標対象物の推定輝度を示している。
【0045】
第3−4の段階S34では、第3−2の段階S32でプロットとした目標対象物と、第3−3の段階S33でプロットした基準恒星とを比較し、大気の影響または観測環境の影響と考えられる輝度の変化の比率から、目標対象物の輝度を補正する。
【0046】
第3−5の段階S35では、周波数フィルタリング部2312が、第3−4の段階S34で作成されたデータに所定の周波数フィルタリング処理を行うことで、目標対象物の輝度データと、目標対象物以外に由来する輝度データとを分類する。
【0047】
図4Bは、本発明による輝度の周波数フィルタリングの一例を示すグラフである。
図4Bに示したグラフは、
図4Aに示したグラフに、以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、プロットデータを、輝度の範囲ごとに第1グループ41、第2グループ42または第3グループ43に振り分け、第1グループ41または第3グループ43に属するプロットデータを白く示している。
図4Bに示した例では、第2グループ42を目標対象物の輝度データと推定し、残る第1グループ41および第3グループ43についてはノイズデータと推定している。
【0048】
第3−6の段階S36では、解析部2311が、第3−5の段階S35で行った分類にしたがって、
図3の第3−4の段階S34で作成したデータからノイズデータを除去し、目標対象物の輝度情報を抽出する。
【0049】
第3−7の段階S37では、抽出部2313が、目標対象物の推定輝度の時間変化から、その周期性を抽出する。この結果より、目標対象物の姿勢制御の有無が確認できると考え、姿勢制御がなされている場合は運用されていると推定できる。
【0050】
図5Aは、本発明による輝度の周期性の抽出に係る原理を示すグラフである。
図5Aに示したグラフにおいて、横軸は時間の経過を示し、縦軸は目標対象物の推定輝度を示している。
図5Aに示した例では、大きい山と小さい山を合わせた一組が、目標対象物が1回自転する1自転周期になる場合を示している。
【0051】
図5Bは、本発明による輝度の周期性の抽出に係る原理を示す別のグラフである。
図5Bに示したグラフの例において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は目標対象物の推定輝度を示している。さらに、
図5Bには、目標対象物の第1姿勢51、第2姿勢52、第3姿勢53、第4姿勢54および第5姿勢55が示されている。これらの姿勢は、輝度を撮像した時刻に目標対象物が取っていた姿勢を示している。
【0052】
図5Bに示した例では、目標対象物の幅が最大になる第2姿勢52および第4姿勢54において輝度が上がり、反対に目標対象物の幅が最小になる第1姿勢51、第3姿勢53および第5姿勢55において輝度が下がっている。
【0053】
図5Bの例に示したように、目標対象物が、地球を周回しながらさらに自転もしている場合は、目標対象物の姿勢、すなわち自転運動の位相によって、地上からの見かけの輝度が変化する。その理由としては、目標対象物の表面積のうち、太陽光などをよく反射する面積の比率などが、自転によって変化することなどが考えられる。そして、この輝度の変化の周期は、自転周期に実質的に一致する。
【0054】
(第2の実施形態)
本発明による監視方法に含まれる複数の段階のうち、第3−7の段階S37までを第1の実施形態として説明した。その続きを、第2の実施形態として説明する。なお、本実施形態で使用する、本発明による監視システムは、第1の実施形態の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0055】
第3−8の段階S38では、目標対象物について得られたデータが宇宙物体データベース2322に未登録であった場合、すなわち新規物体を観測した場合、第3−7の段階S37で抽出した目標対象物の輝度と記憶部232のライトカーブ推定データベース2323を参照し、比較する。ライトカーブ推定データベース2323の内容の具体例について、
図6A〜
図6Cを参照して説明する。なお、
図6A〜
図6Cに示す例は、あくまでも説明を容易にするための概略的な一例に過ぎないが、実際のライトカーブ推定データベース2323は、光学的な実測やコンピュータシミュレーションの結果に基づいて作成される。
【0056】
図6Aは、本発明によるライトカーブ推定データベース2323に含まれる、目標対象物の形状に係るデータの一例を示す図である。
図6Aは、円筒形状61と、円筒形状61に対応する第1グラフ611と、直方体形状62と、直方体形状62に対応する第2グラフ621とを含んでいる。第1グラフ611は、目標対象物の形状が円筒形状61であった場合に推定される輝度変化パターンの一例を示している。同様に、第2グラフ621は、目標対象物の形状が直方体形状62であった場合に推定される輝度変化パターンの一例を示している。
【0057】
図6Bは、本発明によるライトカーブ推定データベース2323に含まれる、目標対象物の反射特性に係るデータの他の一例を示す図である。
図6Bは、所定の第1材質に対応する第1グラフ63と、所定の第2材質に対応する第2グラフ64とを含んでいる。第1グラフ63は、目標対象物の表面が第1材質で形成されていた場合に推定される輝度変化パターンの一例を示している。同様に、第2グラフ64は、目標対象物の表面が第2材質で形成されていた場合に推定される輝度変化パターンの一例を示している。
【0058】
図6Cは、本発明によるライトカーブ推定データベース2323に含まれる、目標対象物の姿勢に係るデータの他の一例を示す図である。
図6Cは、円筒形状がその線対称軸の方向に自転する第1姿勢65と、第1姿勢65に対応する第1グラフ651と、同じ円筒形状がその線対称軸と直交する方向に自転する第2姿勢66と、第2姿勢66に対応する第2グラフ661とを含んでいる。第1グラフ651は、目標対象物がその線対称軸の方向に自転する場合に推定される輝度変化パターンの一例を示している。同様に、第2グラフ661は、目標対象物がその線対称軸と直交する方向に自転する場合に推定される輝度変化パターンの一例を示している。
【0059】
第3−9の段階S39では、演算部231が、目標対象物の輝度変化に係る観測結果と、ライトカーブ推定データベース2323との間でマッチングを取ることで、目標対象物の形状や、姿勢や、表面材質などの特徴を推定する。以下に、
図6A〜
図6Cの例に基づく推定の一例を記す。
【0060】
図6Aに示した例に基づくと、変化する輝度の振幅がより大きく、かつ、その平均値がより小さければ、目標対象物の形状が円筒形状61により近く、変化する輝度の振幅がより小さく、かつ、その平均値がより大きければ、目標対象物の形状が直方体形状62により近いと推定し得る。
【0061】
図6Bに示した例に基づくと、輝度が変化する振幅がより大きければ、目標対象物の表面反射特性は第1材質のものにより近く、反対に輝度が変化する振幅がより小さければ、目標対象物の表面反射特性は第2材質のものにより近いと推定し得る。
【0062】
図6Cに示した例に基づくと、輝度が変化する振幅がより小さく、かつ、輝度が変化する周期がより長ければ、目標対象物の姿勢は第1姿勢により近く、反対に、輝度が変化する振幅がより大きく、かつ、輝度が変化する周期がより短ければ、目標対象物の姿勢は第2姿勢により近いと推定し得る。
【0063】
実際のライトカーブ推定データベース2323では、より多くの実測値またはシミュレーション結果を用いることで、さらに詳細なマッチングが可能であり、目標対象物の形状をより具体的に推定して絞り込むことが可能となる。
【0064】
第3−10の段階S310では、第3−9の段階S39で推定した結果を、記憶部232の宇宙物体データベース2322に登録する。
【0065】
(第3の実施形態)
本発明による監視方法に含まれる複数の段階のうち、第3−10の段階S310までを、第1の実施形態または第2の実施形態として説明した。その続きを、第3の実施形態として説明する。なお、本実施形態で使用する、本発明による監視システムは、第1の実施形態の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0066】
第3−11の段階S311では、目標対象物が既に宇宙物体データベース2322に登録済みであった場合、すなわち、既知物体を再度観測した場合、第3−7の段階S37で抽出した目標物体と記憶部232の宇宙物体データベース2322に登録されている輝度情報を比較する。
【0067】
第3−12の段階S312では、宇宙物体データベース2322で登録されていた輝度情報との差異が判明すると、
図7に示すような異常を検知し、推定することができる。
【0068】
第3−13の段階S313では、第3−12の段階S312で異常が検知できた既知物体については、記憶部232の重要監視対象データベース2324に登録されて継続的に監視される。このように検知され得る異常について、以下、2つの例を用いて概略的に説明する。このように検知され得る異常について、以下、2つの例を用いて概略的に説明する。
【0069】
第1の例を、
図7A〜
図7Cを参照して説明する。
図7Aは、本発明による抽出され得る、周期的な輝度の通常の抽出結果の一例を示すグラフである。
図7Bは、本発明により検知され得る、周期的な輝度に発生する異常の一例を示すグラフである。
【0070】
図7Aおよび
図7Bに示した2つのグラフにおいて、横軸は時間の経過を示し、縦軸は輝度を示している。
図7Aに示したグラフの場合は、輝度が周期的に振幅し続けており、目標対象物の通常の様子を示している。反対に、
図7Bに示したグラフの場合は、途中から輝度の振幅が大幅に変動している。このような変化を、演算部231は異常として検知し、その結果を出力装置25に出力する。
【0071】
図7Cは、本発明により検知され得る、周期的な輝度に発生する異常の原因の一例を示す図である。
図7Cに示した例では、目標対象物71の周囲に、異物72が周回している。この異物72が、もしある時点を境に、目標対象物71の周囲に周回し始めたとしたら、異物72による反射光によって目標対象物71の輝度がより強く観測されたり、反対に、異物72に遮られて、目標対象物71の輝度がより弱く観測されたりする。すなわち、
図7Bに示した例のような異常の原因は、
図7Cに示した例のような現象である可能性が推定され得る。
【0072】
第2の例を、
図7A、
図7Dおよび
図7Eを用いて説明する。
図7Dは、本発明により検知され得る、周期的な輝度に発生する異常の他の一例を示すグラフである。
【0073】
図7Dに示したグラフにおいても、横軸は時間の経過を示し、縦軸は輝度を示している。
図7Dに示したグラフの場合は、途中から輝度の平均値が大幅に低下している。このような変化も、演算部231は異常として検知し、その結果を出力装置25に出力する。
【0074】
図7Eは、本発明により検知され得る、周期的な輝度に発生する異常の原因の他の一例を示す図である。
図7Eに示した例では、目標対象物73が、異物74との衝突によって、部分的に破損している。この例では、目標対象物73の中でも特に面積の大きい太陽パネルの部分が損傷している。したがって、目標対象物73の輝度は、衝突以降は大幅に弱く観測される。すなわち、
図7Dに示した例のような異常の原因は、
図7Eに示した例のような現象である可能性が推定され得る。
【0075】
以上、簡単のために2つの極端な例を挙げたが、実際にはより多くの因果関係を予めデータベース化しておくことで、本発明による監視システムおよび監視方法を用いてさらに詳細な原因の推定が可能となる。
【0076】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。