(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動接点が一対の接触点を有し、前記操作軸が前記ニュートラル位置にある場合に一対の前記第2固定接点に対して、一対の前記接触点が接触して導通状態に達する請求項1記載の多方向操作スイッチ。
前記ケースの内部で前記回路基板の表面側において前記操作軸と一体的に回転するロータと、当該ロータに対し前記操作軸芯に対して直交する方向への付勢力により外方に突出するカム部材とを備え、
前記操作軸の回転操作により所定の回転姿勢に達する毎に前記カム部材が嵌り込んで操作軸の回転姿勢を保持する複数の凹部と、複数の前記凹部に連なる領域での回転操作に作用する操作荷重を変化させるガイド面とが前記ケースの内面に形成されている請求項1又は2に記載の多方向操作スイッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるように、操作軸の回動操作に連係して回動する部材を回路基板の一方の表面側に配置し、操作軸の傾動操作に連係してスライド作動する部材を回路基板の他方の表面側に配置する構成では操作軸の操作に連係して作動する2部材を必要とするためスイッチの大型化に繋がるものであった。
【0006】
また、操作軸の回動操作に連係して回転する部材と、操作軸の傾動操作に連係してスライド作動する部材とを備える構成では2つの部材に備えられる可動接点と、基板等に備えられる固定接点との位置関係に精度が要求されるため、組み立てや調整に手間が掛かることも考えられた。
【0007】
特に、例えば、操作軸の端部にノブを備えた構成において、夜間にノブの位置を把握するためにノブを内部から照明する構成を考えると、特許文献1に記載される構成のように、回路基板のうち操作軸のノブが配置される面に部材を備えるものでは、LED等の光源を備えるスペースがなく、改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、小型化が可能な多方向操作スイッチを構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、孔部が形成された回路基板と、
前記回路基板を収容するケースと、
外端側が前記ケースの外部に露出し、内端側が前記回路基板の前記孔部に挿通し、中間部を支点にして前記ケースに対して傾動自在、かつ、その長手方向に沿う操作軸芯を中心に回転自在に備えられる操作軸と、
前記操作軸を前記回路基板に対し垂直となる中立姿勢に保持する姿勢保持機構と、
前記回路基板のうち前記操作軸の前記外端側の反対側となる裏面側に配置され、前記操作軸の回転操作に連係して前記回路基板の裏面に沿って回転し、かつ、前記操作軸の傾動操作に連係して前記裏面に沿ってスライド移動するスライダーと、
前記スライダーの回転位置と、スライド位置とを検出する操作検出部と、を備え、
前記操作検出部が、前記回路基板の前記裏面に形成した複数の固定接点と、前記スライダーの回転作動時及びスライド作動時に複数の前記固定接点に接触して電気的に導通するように前記スライダーに支持される可動接点とを備え
、
前記操作軸が、前記中立姿勢にある状態でのみ前記操作軸芯を中心とする回転操作が可能に構成されると共に、前記操作軸が、ニュートラル位置を基準にして前記操作軸芯を中心にした右側への回転操作により設定される右位置と、左側への回転操作により設定される左位置とに操作自在、かつ、前記右位置と前記左位置とにおいてのみ前記操作軸の傾動操作が許容されるように構成され、
前記固定接点は、
前記操作軸が前記右位置と前記左位置とに操作された状態の前記中立姿勢において前記スライダーの前記可動接点に重なり合う位置にある第1固定接点と、
前記操作軸の傾動操作に伴う前記スライダーのスライド作動時に前記可動接点が接触して導通状態に達するように、前記第1固定接点を挟んでスライド方向に振り分けて配置される一対の第2固定接点と、で構成されている点にある。
【0010】
この構成によると、操作軸が非操作状態にある場合には、姿勢保持機構により操作軸を中立姿勢に保持できる。また、回路基板の裏面に備えた複数の固定接点と、スライダーに備えた可動接点とにより、操作軸の中間部を支点にした操作軸の傾動操作と、操作軸の操作軸芯を中心とした回転操作とを検出できる。この構成では、操作軸の操作状態を検出するための固定接点を回路基板の両面に形成しないで済み、回路基板の表面側に備える部材を無くすことや、部材数の低減が可能となる。
従って、小型化が可能な多方向操作スイッチが構成された。
【0011】
【0012】
また、本構成によると、操作軸は中立姿勢においてのみ回転操作が可能となり、操作軸の回転操作により右位置と左位置とにある場合に傾動操作が可能となる。更に、操作軸が右位置と左位置との何れに操作された場合でも、操作軸を傾動操作することにより、可動接点を第2固定接点に接触させて導通状態にすること、あるいは、可動接点を第1固定接点と第2固定接点とに同時に接触させて導通状態にすることが可能となる。これにより、操作軸の傾動操作の検出が可能となる。
【0013】
本発明は、前記可動接点が一対の接触点を有し、前記操作軸が前記ニュートラル位置にある場合に一対の前記第2固定接点に対して、一対の前記接触点が接触して導通状態に達する点にある。
【0014】
これによると、操作軸がニュートラル位置にある場合には、可動接点の一対の接触点の各々が第2固定接点に接触して導通状態に達する。これにより操作軸がニュートラル位置にあることの検出が可能となる。
【0015】
本発明は、前記ケースの内部で前記回路基板の表面側において前記操作軸と一体的に回転するロータと、当該ロータに対し前記操作軸芯に対して直交する方向への付勢力により外方に突出するカム部材とを備え、
前記操作軸の回転操作により所定の回転姿勢に達する毎に前記カム部材が嵌り込んで操作軸の回転姿勢を保持する複数の凹部と、複数の前記凹部に連なる領域での回転操作に作用する操作荷重を変化させるガイド面とが前記ケースの内面に形成されても良い。
【0016】
これによると、操作軸が回転操作された場合には、カム部材が凹部に嵌り込むことにより操作軸の回転姿勢が安定し、回転操作時には操作抵抗を変化させ、操作感覚に反映させることが可能となる。その結果、操作軸が所望の回転姿勢に保持することが可能となり、操作感覚から回転姿勢にあることを認識できる。
【0017】
本発明は、前記ケースの内部で前記回路基板の表面側において前記操作軸と一体的に回転するロータを備え、前記操作軸の外端側で、前記ケースより外部位置に光線の透過が可能な素材を含んで構成されるノブを備え、前記回路基板の表面側に、電力供給により発光する発光部を備え、前記操作軸と前記ロータとの少なくとも何れか一方が、光線の透過が可能な素材で構成しても良い。
【0018】
これによると、回路基板の表面側に配置した発光部からの光線を、操作軸又はロータの少なくとも一方の内部と透過させてノブに送り、このノブを内部から照明することが可能となる。つまり、操作軸の操作状態を検出するための部材を回路基板の表面側に配置しないため、回路基板の表面側に配置した発光部からの光線を減衰させることなく、ノブに到達させ夜間等の視認性の向上が可能となるのである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜
図4に示すように、ケース10に対しケース軸芯Zと、その操作軸芯Qが同軸芯となるように操作軸20を備えると共に、操作軸20の外端位置に樹脂製のノブ26を備え、このノブ26(操作軸20)のケース軸芯Zを中心とする回転操作と、このノブ26(操作軸20)の傾動操作とを検出する操作検出部Aを備えて多方向操作スイッチが構成されている。
【0021】
この多方向操作スイッチは、乗用車等の車両のパワードアミラーの制御を運転座席の近傍から行うために使用される。
図2、
図11に示すようにケース軸芯Zが縦向きとなる姿勢で使用されるのが一般的である。この多方向操作スイッチは決まった姿勢で使用するものではないが、縦向き姿勢に基づき各部の位置関係を説明する。
【0022】
この多方向操作スイッチでは、ケース10が樹脂製の上部ケース11と樹脂製の下部ケース12とで構成され、このケース10に中央部に孔部31が穿設された回路基板30が収容される。操作軸20は、その外端側がケース10の外部に露出し、内端側が回路基板30の孔部31に挿通する状態で配置され、その中間部となる中間球状部23を支点としてケース10に対して傾動自在、かつ、操作軸芯Qを中心に回転自在に支持されている。また、外端側の突出端に対してノブ26が固設されている。このノブ26は、ケース10の内部からの光源により、少なくとも指標26Aの部位の照明が可能となるように構成されている。尚、ノブ26は、全体が透明、あるいは、半透明でも良いが、指標26Aや表面の文字等の部位に透光性樹脂を用い、他の部位に非透光性樹脂を用いる二色成形(ダブルモールド)により製造されるものでも良い。
【0023】
操作軸20は光源からの光線の透過が可能となるように透明あるいは半透明の樹脂で樹脂が用いられ、この操作軸20の内端側の端部に、操作軸20を回路基板30に対して垂直となる中立姿勢に保持する姿勢保持機構40を備えている。回路基板30のうち、操作軸20の内端側の端部に面する裏面側(
図2、
図3で下側:操作軸20の外端側とは反対側)に樹脂製のスライダー50が配置されている。スライダー50は、操作軸20の回転操作に伴い、回路基板30の裏面に沿って回転し、かつ、操作軸20の傾動操作に連係して回路基板30の裏面に沿ってスライド移動する。
【0024】
操作検出部Aは、
図3〜
図6に示すように回路基板30の裏面に形成した複数の固定接点Cと、スライダー50の作動時に固定接点Cに接触して導通状態に達する一対の可動接点54とで構成されている。尚、回路基板30の表面と裏面とには絶縁被膜30Aが形成され、固定接点Cは裏面側の絶縁被膜30Aの開口部分から露出する。
【0025】
操作軸20のうち、回路基板30の表面側(
図2、
図3の上側)には、操作軸20と一体回転し、光線の透過が可能となるように透明あるいは半透明の樹脂で形成されるロータ60を備えている。
図3、
図4、
図7〜
図10に示すように、このロータ60は、ケース軸芯Zに直交する方向に向けて付勢するトーションスプリング65を備え、このトーションスプリング65の先端には付勢力によりロータ60の半径方向に沿って外方に突出する第1カム部材66と第2カム部材67とを備えている。この第1カム部材66と第2カム部材67とはケース軸芯Zに直交する一本の仮想直線上に配置され、上部ケース11の内面には第1カム部材66と第2カム部材67とが接触するカム面16が形成されている。
【0026】
この多方向操作スイッチでは、操作軸芯Qを中心にしたノブ26の回転操作により右位置Rと、左位置Lと、格納位置Hとニュートラル位置Nとに操作できるように構成されている。また、ノブ26の操作位置を視覚的に認識できるように、ノブ26の上面には指標26Aが形成されている。
【0027】
特に操作軸20は
図2、
図11に示す中立姿勢にある状態でのみ操作軸芯Qを中心とする回転操作が可能となり、操作軸20がニュートラル位置Nを基準に右側への回転操作により設定される右位置Rと、左側への回転操作により設定される左位置Lとに設定できるように構成されている。更に、操作軸20を、右位置Rと左位置Lとに設定した場合にのみ、
図12に示す如く傾動操作する形態で、前後方向への操作が可能となる。尚、この多方向操作スイッチは、右回転と左回転との何れの方向にも360度を超えてノブ26を回転できるように構成されている。
【0028】
操作軸20は、
図1に示すように、人為操作により「XR−XL」で示される左右方向と、「YF−YB」で示される前後方向に傾動操作自在に構成されている。左右方向「XR−XL」と前後方向「YF−YB」とは互いに直交するように設定されている。これにより操作軸20は四方向に操作自在となる。
【0029】
図5に示すように、回路基板30には、前述した複数の固定接点Cに導通するプリント配線が形成されると共に、プリント配線に導通する複数のリード33が裏面から下方に突設されている。この多方向操作スイッチからの検出信号は、複数のリード33からパワードアミラーを制御するためのECU等の制御装置に出力される。
【0030】
尚、パワードアミラーは、ミラー本体の格納、展開を行う格納モータと、ミラーの上下角を調節する上下角モータと、ミラーの左右角を調節する左右角モータとを有する周知の構成を備えている。
【0031】
制御装置は、ノブ26が右位置R又は左位置Lに操作された状態で操作軸20が左右方向又は前後方向に傾動操作された場合に、対応するモータを制御することによりドアミラーの角度調節を実現する。更に、制御装置は、ノブ26が格納位置Hに操作された場合には、左右のドアミラーを格納姿勢にセットする。特に、車両のフォグライトやヘッドライトが点灯状態にある場合には、発光部として回路基板30に形成した発光ダイオード32に電力を供給して発光を行う。
【0032】
〔ケース・操作軸・姿勢保持機構〕
図2〜
図4に示すように、上部ケース11は、ケース軸芯Zに沿う方向視で正方形となる外ケース部11Aと、この上部で半球のドーム状となるドーム状部11Bとを一体形成すると共に、ドーム状部11Bの上端位置には操作軸20が挿通する開口11Cが形成されている。
【0033】
この上部ケース11の内部には、ロータ60を回転自在に支持するためケース軸芯Zを中心とする円形の内周面となる回転支持面15と、前述したように第1カム部材66と第2カム部材67とが接触するカム面16とが形成されている。
【0034】
下部ケース12は、その上部位置に上部ケース11の外ケース部11Aに嵌り込む正方形の内ケース部12Aと、内ケース部12Aの底部に形成される底壁部12Bと、この下部で複数のリード33が収容されるリード収容部12Cとが一体的に形成されている。
【0035】
上部ケース11の外ケース部11Aの外壁部には係合孔部11Hが形成され、この係合孔部11Hに係合可能な係合突起12Tが下部ケース12の内ケース部12Aの外面に突出状態で形成されている。これにより、係合孔部11Hに対して係合突起12Tを係合させることで上部ケース11と下部ケース12とが連結状態に維持される。
【0036】
操作軸20は全体に棒状であり、外端位置の大径部21にノブ26が連結し、内端位置には断面形状が正8角形となる嵌合部22が形成され、この嵌合部22の外周面には外方に突出する一対の作動片22Aが一体形成されている。また、中間で球状に成形された中間球状部23が一体的に形成され、この中間球状部23の外周には、操作軸芯Qに直交する方向に突出する一対の係合軸部24が形成されている。この操作軸20の内端部はケース軸芯Zと同軸芯となる孔状部が形成され、この孔状部に対して圧縮コイル型のスプリング41が収容され、このスプリング41により突出付勢される突出部材42が収容されている。
【0037】
下部ケース12の底壁部12Bの中央位置には円錐状の窪みとなる中立凹部43が形成され、突出部材42の突出端は先細で滑らかに成形されている。これらスプリング41と突出部材42と中立凹部43とで姿勢保持機構40が形成さる。この姿勢保持機構40は、操作軸20が非操作状態にある場合には、コイルスプリング25Aの付勢力により突出部材42が中立凹部43の中央位置に嵌り込んで安定することにより、操作軸20の操作軸芯Qが回路基板30に対して垂直となり、この操作軸芯Qがケース軸芯Zとが同軸芯となる中立姿勢に保持されるように構成されている。
【0038】
図3及び
図7〜
図10に示すように、中立凹部43の外周に隣接する位置には、中立凹部43の中心を基準として互いに直交する方向に対応する位置の4箇所に規制突起17が形成されている。
【0039】
〔ロータ〕
ロータ60には、第1外周面61と、この第1外周面61より大径の第2外周面62とが形成され、中央部に操作軸20が挿通する貫通孔部63が形成されることにより全体的にリング状に形成されている。また、貫通孔部63に連なる領域にスプリング収容空間64が形成されている。
【0040】
第1外周面61の外周には、上部ケース11の回転支持面15に対しケース軸芯Zを中心にして回転自在に嵌め込まれるため、回転時の摩擦抵抗を低減する複数の突部が形成されている。第2外周面62には第1カム部材66と第2カム部材67とを出退自在に支持するように各々に対応するカム孔部62Aが形成されている。この構成から、一方のカム孔部62Aに第1カム部材66を嵌め込み、他方のカム孔部62Aに第2カム部材67を嵌め込み、スプリング収容空間64に収容されるトーションスプリング65で第1カム部材66と第2カム部材67を付勢する。
【0041】
貫通孔部63の内周には、操作軸20の中間球状部23が嵌り込む球状内面となる軸支部63Aと、この軸支部63Aに連なる位置に係合軸部24が嵌り込む係合溝部63Bとが形成されている。
【0042】
第1カム部材66は、そのカム部が回路基板30に近接する位置に形成され、第2カム部材67は、そのカム部が第1カム部材66のカム面より回路基板30から離間する位置に備えられている。
【0043】
図7〜
図10に示すように、カム面16は、ノブ26が格納位置Hと、ニュートラル位置Nに操作された場合に第1カム部材66及び第2カム部材67が同時に嵌り込む一対の第1凹部16Aと、ノブ26が右位置Rと左位置Lとに操作された場合に第1カム部材66が嵌り込む一対の第2凹部16Bとが形成されている。更に、このカム面16は、一対の第1凹部16Aと一対の第2凹部16Bとに連なる領域にガイド面16Cが形成されている。
【0044】
〔スライダー〕
図3及び
図4に示すように、スライダー50は、中央の上面側に嵌合孔部51が形成され、中央の下面側にガイド孔部52が形成されると共に、押圧スプリング53により回路基板30の裏面側に付勢される一対の可動接点54を備えている。
【0045】
嵌合孔部51は、スライダー50の中央において回路基板30の裏面に対向する側に形成されている。この嵌合孔部51の内縁の4箇所には操作軸20の嵌合部22が当接する当接面51Aが備えられている。また、嵌合部22に形成された一対の作動片22Aが隣り合う一対の当接面51Aの隅部分は、操作軸20の作動片22Aが嵌り込む間隙が形成されている。
【0046】
ガイド孔部52は、スライダー50の中央において下部ケース12の底壁部12Bに対向する側に形成されている。このガイド孔部52は、中立姿勢にあるケース軸芯Zを中心とする円形の内周面52Aが形成されている。この内周面52Aは、
図3、
図7〜
図10に示すように、下部ケース12の底壁部12Bの4つの規制突起17が接触するように半径が設定され、ガイド孔部52の中心から放射状に延びるガイド溝52Bが4箇所に形成されている。ガイド溝52Bは、操作軸20が中立姿勢で、右位置R又は左位置Lにある状態で規制突起17と隣合う位置に配置されている。
【0047】
可動接点54は、銅合金等の良導体の板材を折り曲げることにより、本体部分54Aの両端部分にガイド片54Bを形成すると共に、本体部分54Aに対して一対の接触点Pが突出形成されている。この可動接点54は押圧スプリング53の付勢力により回路基板30の裏面に接触する状態が維持される。
【0048】
接触点Pは回路基板30の固定接点Cに接触して導通状態に達するように、プレス加工により可動接点54に一体的に形成されるものであるが、例えば、耐摩耗性の高い良導体を取り付けることや、良好な導通を実現するために接触点Pに金メッキを施しても良い。
ケース軸芯Zに沿う方向視において、一対の可動接点54は、長手方向が直交する姿勢で配置される。
【0049】
この構成により、嵌合孔部51に対して操作軸20の嵌合部22が嵌め込まれた状態では、スライダー50は、操作軸20の回転操作に伴い回路基板30の裏面に沿って回転すると共に、操作軸20の傾動操作に伴い回路基板30の裏面に沿ってスライド移動する。特に、スライド作動は、ガイド溝52Bに沿って規制突起17が相対移動する姿勢でのみ行われるため、四方向への操作が実現される。また、操作軸20が傾動操作されている状態で、操作軸芯Qを中心に回動操作を行った場合には、規制突起17がガイド溝52Bに係合しているためスライダー50の回転も不能となる。
【0050】
〔回路基板〕
回路基板30は、上部ケース11と下部ケース12とに挟み込まれる位置に配置され、孔部31は、操作軸20の嵌合部22の回転と傾動操作に伴う変位を可能にする大きさに形成されている。
【0051】
図3に示すように、回路基板30の表面には一対の発光ダイオード32を備えている。また、回路基板30の裏面には複数の銅合金等の良導体で成る複数のリード33が突設されている。これらのリード33は、プリント配線を介して複数の固定接点C、及び、発光ダイオード32に導通している。
【0052】
図6は、回路基板30の固定接点Cの配置を示す底面図である。同図に示す如く、孔部31の中心を通る仮想ラインMと重なる位置に中立固定接点群35を備えると共に、仮想ラインMを挟んで対称となる位置関係で右固定接点群36と左固定接点群37とが配置されている。また、孔部31を挟んで中立固定接点群35と対向する位置には一対の格納接点38が配置されている。
【0053】
中立固定接点群35は、基準となる中立基準接点35a(第1固定接点の一例)と、この中立基準接点35aを取り囲む位置の6つの中立検出接点35b(第2固定接点の一例)とを備えている。また、右固定接点群36は、基準となる右基準接点36a(第1固定接点の一例)と、この右基準接点36aを取り囲む位置の6つの右検出接点36b(第2固定接点の一例)とを備えている。左固定接点群37は、基準となる左基準接点37a(第1固定接点の一例)と、この左基準接点37aを取り囲む位置の6つの左検出接点37b(第2固定接点の一例)とを備えている。一対の格納接点38は仮想ラインMに対して対称となる位置に備えられている。
【0054】
つまり、中立固定接点群35と、右固定接点群36と、左固定接点群37と、一対の格納接点38との各々が固定接点Cに対応している。また、これらに複数のリード33のうち対応するものが導通する。この固定接点Cと可動接点54との導通状態は後述する。
【0055】
〔組み立て状態〕
この多方向操作スイッチを組み立る場合には、完成した回路基板30を用い、スライダー50に一対の可動接点54を予め組み付けておく。これと同様に操作軸20の下端にスプリング41と突出部材42とを予め組み付け、ロータ60にトーションスプリング65及び第1カム部材66、第2カム部材67を予め組み付けておく。
【0056】
次に、スライダー50を下部ケース12の底壁部12Bの上面に配置し、この上に回路基板30を配置し、回路基板30の孔部31に内端側が挿通するように操作軸20をセットし、この操作軸20に外嵌する状態でロータ60を配置する。そして、上部ケース11をセットし、上部ケース11の係合孔部11Hと下部ケース12の係合突起12Tとを係合させることで、これらが一体化する。この後に、上部ケース11の開口11Cから外方に突出する操作軸20の外端部にノブ26を嵌め込むことで多方向操作スイッチが完成する。
【0057】
この組み立て状態では、回路基板30の位置が決まり、スライダー50が、回路基板30の裏面と下部ケース12の底壁部12Bとの間において回転自在、かつ、スライド移動自在に配置される。また、ロータ60の第1外周面61が上部ケース11の回転支持面15に嵌め込まれることにより、このロータ60がケース軸芯Zを中心に回転自在となり、ロータ60に支持される第1カム部材66と第2カム部材67とが、上部ケース11のカム面16に接触する位置に配置される。
【0058】
更に、操作軸20の中間球状部23がロータ60の軸支部63Aに支持されるため、この中間球状部23を中心とする操作軸20の傾動操作が可能となる。また、ロータ60の係合溝部63Bに操作軸20の係合軸部24が嵌り込むため、操作軸20とロータ60との一体回転が可能となる。
【0059】
そして、操作軸20が非操作状態にある場合には、姿勢保持機構40の突出部材がスプリング41の付勢力により中立凹部43に嵌り込み、
図2、
図11に示す如く、操作軸芯Qが回路基板30に対して垂直となる中立姿勢に保持される。
【0060】
この組み立て状態では、操作軸20の内端側の嵌合部22がスライダー50の嵌合孔部51の当接面51Aに係合すると共に、作動片22Aがスライダー50に対して相対回転不能に嵌り込む状態にある。これにより、操作軸20の傾動操作に連係してスライダー50がスライド作動し、操作軸20の回動操作に連係してスライダー50が回転する。
【0061】
〔ノブの回動操作の操作荷重〕
この多方向操作スイッチでは、前述したようにノブ26の回動操作により、格納位置Hと、右位置Rと、左位置Lと、ニュートラル位置Nとに操作自在に構成されている。また、格納位置Hとニュートラル位置Nとはケース軸芯Zを中心に互いに180度回転した位置関係にある。右位置Rと左位置Lとはニュートラル位置Nから45度回転した位置(ケース軸芯Zを中心に互いに90度離れた位置)にある。
【0062】
このような構成から、ノブ26が格納位置H又はニュートラル位置Nに操作された場合には、
図8及び
図10に示すように、第1カム部材66と第2カム部材67とが対応する第1凹部16Aに嵌り込むことにより、トーションスプリング65の付勢力によりノブ26の回転姿勢が保持される。このように第1カム部材66と第2カム部材67とが対応する第1凹部16Aに嵌り込む状態では、第1カム部材66と第2カム部材67とが互いに離間する位置関係になるため、係合力は低く、軽い操作荷重で回動操作が可能となる。
【0063】
次に、ノブを左位置L又は右位置Rに操作した場合には、
図7及び
図9に示すように、第1カム部材66が第2凹部16Bに嵌り込み、第2カム部材67がガイド面16Cに接触する状態となり、トーションスプリング65の付勢力によりノブ26の回転姿勢が保持される。特に、第1カム部材66が第2凹部16Bに嵌り込み、第2カム部材67がガイド面16Cに接触する状態では、トーションスプリング65を圧縮するため、ノブ26を格納位置H又はニュートラル位置Nにおいて操作する場合の操作荷重より大きい操作荷重で操作することになり、操作間隔から操作位置の把握も可能となる。
【0064】
〔操作の検出形態〕
図13〜
図16には、ノブ26を左位置Lと、ニュートラル位置Nと、右位置Rと、格納位置Hとに操作した状態でのスライダー50の姿勢を示している。また、これらの図には可動接点54と固定接点Cとの関係を示している。
【0065】
〔操作の検出形態:左位置〕
ノブ26が左位置Lに操作された場合には、
図13に示すように一方の可動接点54の一対の接触点Pが中立固定接点群35の中立基準接点35aを挟む位置の一対の中立検出接点35bに接触する。これと同時に、他方の可動接点54の一対の接触点Pが左固定接点群37の左基準接点37aを挟む一対の左検出接点37bに接触する。
【0066】
また、ノブ26が左位置Lに操作された状態で、ノブ26の人為操作により操作軸20が前側YF又は後側YBに傾動操作された場合には、
図17、
図18に示すように、この傾動操作とは逆方向にスライダー50が作動する。これと同様に、操作軸20が右側XR又は左側XLに操作された場合には、
図19、
図20に示すように、この傾動操作とは逆方向にスライダー50が作動する。
【0067】
つまり、操作軸20が前側YFに操作された場合には、
図17に示すようにスライダー50が「L−YF」に示す方向にスライド作動し、一対の接触点Pが中立固定接点群35の中立基準接点35aを基準に平行移動し、対応する一対の中立検出接点35bに接触して導通状態にする。これと同時に、一対の接触点Pが左基準接点37aを基準に平行移動し、左基準接点37aと対応する左検出接点37bとに接触して導通状態にする。
【0068】
これと同様に、操作軸20が後側YBに操作された場合には、
図18に示すようにスライダー50が「L−YB」に示す方向に作動する。また、操作軸20が右側XRに操作された場合には、
図19に示すようにスライダー50が「L−XR」に示す方向に作動する。更に、操作軸20が後側YBに操作された場合には、
図20に示すようにスライダー50が「L−XL」に示す方向に作動する。これらの操作においても、一対の接触点Pが基準接点の位置から検出接点の方向に平行移動し、対応する固定接点Cに接触して導通状態にする。
【0069】
これら操作は、制御装置により検知され、左側のパワードアミラーの上下角モータ、あるいは、左右角モータの駆動によりミラーの上方角度、あるいは、左右角度を調節する制御が行われる。
【0070】
〔操作の検出形態:ニュートラル〕
ノブ26がニュートラル位置Nに操作された状態では、
図14に示すように、一方の可動接点54の一対の接触点Pの一方が中立固定接点群35の複数の中立検出接点35bの1つに接触し、他方の接触点Pが左固定接点群37の複数の左検出接点37bの1つに接触し、これらを導通状態にする。これと同時に他方の可動接点54の一対の接触点Pの一方が中立固定接点群35の複数の中立検出接点35bの1つに接触し、他方の接触点Pが右固定接点群36の複数の右検出接点36bの1つに接触し、これらを導通状態にする。
【0071】
尚、ニュートラル位置Nでの導通状態は制御装置において検知可能となるが、制御が行われることはない。
【0072】
〔操作の検出形態:右位置〕
次に、ノブ26が右位置Rに操作された場合には、
図15に示すように一方の可動接点54の一対の接触点Pが中立固定接点群35の中立基準接点35aを挟む位置の一対の中立検出接点35bに接触する。これと同時に、他方の可動接点54の一対の接触点Pが右固定接点群36の右基準接点36aを挟む一対の右検出接点36bに接触する。
【0073】
また、ノブ26が右位置Rに操作された状態で、ノブ26の人為操作により操作軸20が前側YF又は後側YBに傾動操作された場合には、
図21、
図22に示すように、この傾動操作とは逆方向にスライダー50が作動する。これと同様に、操作軸20が右側XR又は左側XLに操作された場合には、
図23、
図24に示すように、この傾動操作とは逆方向にスライダー50が作動する。
【0074】
つまり、操作軸20が前側YFに操作された場合には、
図21に示すようにスライダー50が「R−YF」に示す方向にスライド作動し、一対の接触点Pが中立固定接点群35の中立基準接点35aを基準に平行移動し、一対の中立検出接点35bに接触して導通状態にする。これと同時に、一対の接触点Pが右基準接点36aを基準に平行移動し、右基準接点36aと対応する右検出接点36bとに接触して導通状態にする。
【0075】
これと同様に、操作軸20が後側YBに操作された場合には、
図22に示すようにスライダー50が「R−YB」に示す方向に作動する。また、操作軸20が右側XRに操作された場合には、
図23に示すようにスライダー50が「R−XR」に示す方向に作動する。更に、操作軸20が後側YBに操作された場合には、
図20に示すようにスライダー50が「R−XL」に示す方向に作動する。これらの操作においても、一対の接触点Pが基準接点の位置から検出接点の方向に平行移動し、対応する固定接点Cに接触して導通状態にする。
【0076】
これら操作は、制御装置により検知され、右側のパワードアミラーの上下角モータ、あるいは、左右角モータの駆動によりミラーの上方角度、あるいは、左右角度を調節する制御が行われる。
【0077】
〔操作の検出形態:格納位置〕
また、ノブ26が格納位置Hに操作された状態では、
図16に示すように、一方の可動接点54の一方の接触点Pが格納接点38に接触し、他方の接触点Pが左固定接点群37の複数の左検出接点37bの1つに接触し、これらを導通状態にする。これと同時に他方の可動接点54の一方の接触点Pが格納接点38に接触し、他方の接触点Pが右固定接点群36の複数の右検出接点36bの1つに接触し、これらを導通状態にする。
【0078】
このように格納位置Hにあることは制御装置が検知し、パワードアミラーの格納モータの駆動によりパワーミラーを格納姿勢にする制御が行われる。これとは逆に、ノブ26が格納位置Hから外れた場合には、何れの格納接点38も他の固定接点Cに導通しない状況に移行するため、これに基づいてパワードアミラーの格納モータの駆動によりパワードアミラーを使用姿勢(展開姿勢)にする制御が行われる。
【0079】
〔実施形態の効果〕
本発明の多方向操作スイッチは、回路基板30の裏面側のスライダー50を配置し、操作軸20の回転操作に連係してスライダー50を回転させ、操作軸20の傾動操作に連係してスライダー50をスライドさせる構成を備えている。また、スライダー50の作動を、回路基板30の裏面に形成した複数の固定接点Cと、スライダー50に支持される一対の可動接点54とにより検出する。従って、例えば、操作軸20の回転操作の検出を回路基板30の表面で行い、操作軸の傾動操作の検出を回路基板の裏面で行うものと比較して構成が単純化し、部品点数の低下も可能となる。また、スイッチ全体の小型化も可能となる。
【0080】
このようにスライダー50を回路基板30の裏面側に配置しているため、回路基板30の表面側に配置される部品点数を低減し、発光ダイオード32を発光させた際の光線が妨げられ難い。この実施形態では操作軸20とロータ60とが光線を透過する素材で構成されているため、発光ダイオード32からの光線を減衰させずに上部ケース11の開口11Cから上方に送り出し、ノブ26を照明することが可能となる。これにより、夜間のように手元が暗い状況でもノブ26の位置と、ノブ26設定位置を正確に視認できる。
【0081】
尚、操作軸20と、ロータ60との一方だけを透明樹脂で形成することも可能であり、このように構成した場合にも、発光ダイオード32の光線をノブ26に導き、夜間においてもノブ26の設定位置を容易に把握できる。
【0082】
また、ノブ26を格納位置Hとニュートラル位置Nと右位置Rと左位置Lとの何れに設定した場合でも、第1カム部材66と第2カム部材67とが、第1凹部16Aあるいは第2凹部16Bに嵌り込むため、ノブ26の設定位置の保持が可能となると共に、クリック感が得られる。また、設定位置毎にカム部材(66・67)に作用する操作荷重が異なるため、操作間隔からノブ26の回転操作位置の把握も可能となる。