(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0014】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0016】
以下、代表的な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0017】
さらに、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを省略する場合もある。
【0018】
また、以下の実施の形態において、A〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0019】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら実施の形態1の半導体装置について詳細に説明する。
【0020】
<半導体装置の構成>
図1は、実施の形態1の半導体装置の磁気メモリ素子を示す断面図である。
図2は、実施の形態1の半導体装置の構成を示す断面図である。
図3は、実施の形態1の半導体装置の構成を示す回路図である。
図4は、実施の形態1の磁気メモリ素子における強磁性膜の磁化の向きを示す図である。なお、
図1、
図2および
図4では、半導体基板SBの主面にそれぞれ平行であって互いに交差する方向を、X軸方向およびY軸方向とし、半導体基板SBの主面に垂直な方向をZ軸方向とする。また、
図4では、磁化固定層HL1およびHL2、磁気記録層MR1、ならびに、磁化固定層MP1の各々における磁化方向を、矢印で模式的に示してある。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態1の半導体装置は、磁気メモリとしての磁気メモリ素子MM1を有する。磁気メモリは、不揮発性メモリの一種であり、磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory:MRAM)とも称される。磁気メモリは、磁気抵抗効果を有する強磁性膜を有する。なお、本実施の形態1の半導体装置は、磁壁移動型MRAMである。
【0022】
図1に示す磁気メモリ素子MM1は、例えば、
図2および
図3に示すように、2つの選択用トランジスタTR1およびTR2の間に直列に接続されている。このような構成は、2T−1MTJ(2 Transistors-1 Magnetic Tunnel Junction)構成と称される。
図3に示すように、磁気メモリ素子MM1は、3つの端子として、端子a、bおよびcを有する。端子cは、接地電位線GNLに接続されており、端子aは、選択用トランジスタTR1を介してビット線BL1に接続されており、端子bは、選択用トランジスタTR2を介してビット線BL2に接続されている。端子aは、後述する磁化固定層HL1に対応し、端子bは、後述する磁化固定層HL2に対応し、端子cは、後述する磁化固定層MP1に対応する。
【0023】
また、選択用トランジスタTR1およびTR2のゲート電極は、それぞれワード線WLに接続されている。このような磁気メモリ素子MM1が、一対のビット線BL1およびBL2と、ワード線WLとの交点に、複数配置され、メモリセルアレイを構成する。
【0024】
<選択用トランジスタ>
図2に示すように、選択用トランジスタTR1およびTR2の各々は、半導体基板SBの主面、すなわちp型ウェルPWの上面のうち、素子分離領域STで区画された領域に形成されている。選択用トランジスタTR1およびTR2の各々は、半導体基板SB、すなわちp型ウェルPW上に、ゲート絶縁膜GIを介して形成されたゲート電極GEを有する。また、選択用トランジスタTR1およびTR2の各々は、平面視において、ゲート電極GEの両側に位置する部分の半導体基板SBの上層部、すなわちp型ウェルPWの上層部にそれぞれ設けられた2つの半導体領域SDを有する。2つの半導体領域SDのうち、一方がソース領域として機能し、他方がドレイン領域として機能する。ゲート電極GEの側壁には、サイドウォール膜SWが配置され、2つの半導体領域SDの各々は、いわゆるLDD(Lightly Doped Drain)構造を有する。
【0025】
選択用トランジスタTR1およびTR2の各々と、磁気メモリ素子MM1とは、例えばプラグPG1、配線M1、ビア部V1、配線M2、ビア部V2、配線M3、ビア部V3、配線M4およびビア部V4を介して接続されている。プラグPG1、配線M1、ビア部V1、配線M2、ビア部V2、配線M3、ビア部V3、配線M4およびビア部V4は、層間絶縁膜IL1〜IL9中に、それぞれ形成されている。
【0026】
具体的には、選択用トランジスタTR1の2つの半導体領域SDのうち、一方の半導体領域SDは、例えばプラグPG1、配線M1、ビア部V1、配線M2、ビア部V2、配線M3、ビア部V3、配線M4およびビア部V4を介して、磁気メモリ素子MM1の磁化固定層HL1に接続されている。また、選択用トランジスタTR2の2つの半導体領域SDのうち、一方の半導体領域SDは、例えばプラグPG1、配線M1、ビア部V1、配線M2、ビア部V2、配線M3、ビア部V3、配線M4およびビア部V4を介して、磁気メモリ素子MM1の磁化固定層HL2に接続されている。
図2ではビア部V4上に磁気メモリ素子MM1が配置された例を示しているが、磁気メモリ素子MM1の配置はビア部V4上に限定するものではなく、各プラグ上、各配線上、各ビア部上に配置されてもよい。
【0027】
また、選択用トランジスタTR1の2つの半導体領域SDのうち、他方の半導体領域SDは、例えばプラグPG1を介して、ビット線BL1となる配線M1と接続され、選択用トランジスタTR2の他方の半導体領域SDは、例えばプラグPG1を介して、ビット線BL2となる配線M1と接続されている。
【0028】
<磁気メモリ素子>
図1に示すように、磁気メモリ素子MM1は、下地層BF1と、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、キャップ層CL1と、磁化固定層HL1およびHL2と、を有する。半導体基板SBの上方に下地層BF1が形成されており、下地層BF1上に、磁気記録層MR1が形成されており、磁気記録層MR1上に、トンネルバリア層TB1が形成されている。
【0029】
トンネルバリア層TB1の中央部上に、磁化固定層MP1が形成されており、磁化固定層MP1上に、キャップ層CL1が形成されている。下地層BF1のうち、中央部の一方の側に位置する部分の下には、磁化固定層HL1が形成されており、下地層BF1のうち、中央部の他方の側に位置する部分の下には、磁化固定層HL2が、磁化固定層HL1と離れて形成されている。磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、によりMTJが形成されている。すなわち、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、によりトンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0030】
ここで、
図1に示すように、平面視において、磁気記録層MR1の中央部を、磁化自由領域MR1aとする。また、平面視において、磁化自由領域MR1aの一方の側に位置する部分の磁気記録層MR1を、磁化固定領域MR1bとし、平面視において、磁化自由領域MR1aを挟んで磁化固定領域MR1bと反対側に位置する部分の磁気記録層MR1を、磁化固定領域MR1cとする。すなわち、磁気記録層MR1は、磁化自由領域MR1aと、磁化固定領域MR1bと、磁化固定領域MR1cと、を含む。このとき、磁化固定層MP1は、磁化自由領域MR1a上に、トンネルバリア層TB1を介して、形成されている。
【0031】
磁化固定領域MR1bは、磁気記録層MR1のうち、平面視において、磁化固定層HL1と重なる部分であり、磁化固定領域MR1cは、磁気記録層MR1のうち、平面視において、磁化固定層HL2と重なる部分である。磁化自由領域MR1aは、磁気記録層MR1のうち、平面視において、磁化固定層HL1およびHL2のいずれとも重なっていない部分である。言い換えれば、磁化自由領域MR1aは、磁気記録層MR1のうち、平面視において、磁化固定層HL1と磁化固定層HL2との間に位置する部分である。磁化固定層MP1は、平面視において、磁化自由領域MR1aに内包されている。
【0032】
磁気記録層MR1は、強磁性膜FM1からなる。磁気記録層MR1により、データ記憶層が形成される。一方、磁化固定層MP1は、強磁性膜FM2からなる。磁化固定層MP1により、データ参照層が形成される。あるいは、強磁性膜FM2は、複数の強磁性層からなるものでもよい。
【0033】
強磁性膜FM1およびFM2の各々は、垂直磁気異方性(Perpendicular Magnetic Anisotropy:PMA)を有する。すなわち、強磁性膜FM1およびFM2の各々の磁化の向きは、強磁性膜FM1およびFM2の各々の膜厚方向に平行な方向であり、強磁性膜FM1およびFM2の各々の上面に垂直な方向である。
【0034】
強磁性膜FM1およびFM2の各々は、Co(コバルト)とFe(鉄)とB(ボロン)とを含有する。このようなCoとFeとBとを含有する強磁性膜が体心立方構造を有し、MgO(酸化マグネシウム)膜からなるトンネルバリア層TB1とエピタキシャルに接する構造の場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。言い換えれば、より好適には、強磁性膜FM1およびFM2の各々は、(100)配向した体心立方構造を有する結晶膜としてのCoFeB膜からなる。
【0035】
ここで、磁化固定層MP1が、強磁性膜FM2以外の強磁性膜を含む場合を考える。このような場合、磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜は、例えば、Fe(鉄)、Co(コバルト)およびNi(ニッケル)から選択される金属または二種以上の金属の合金からなる。また、この強磁性膜中に、Pt(白金)またはPd(パラジウム)を含ませてもよい。これにより、垂直磁気異方性を安定化することができる。
【0036】
さらに、磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜に、B、C、N、O、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、AuまたはSmなどの各種元素を添加することにより、磁気特性を調整することができる。
【0037】
磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜として、具体的には、Co、Co−Pt、Co−Pd、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−B、Co−Cr−Pt−BまたはCo−Cr−Ta−Bなどの材料からなる合金膜を用いることができる。あるいは、Co−V、Co−Mo、Co−W、Co−Ti、Co−Ru、Co−Rh、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Pt、Fe−Co−PdまたはSm−Coなどの材料からなる合金膜を用いることができる。
【0038】
また、磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜を上記材料からなる膜の積層膜としてもよい。例えば、Fe、CoおよびNiから選択される二種以上の金属膜の積層膜を用いてもよい。具体的には、強磁性膜として、Co/Ni、Co/Pd、Co/PtまたはFe/Auなどの積層膜を用いることができる。なお、Co/Niは、Co膜とNi膜との積層膜であることを意味する。
【0039】
磁化固定層MP1が、非磁性膜を挟むように複数の強磁性膜を積層した積層体を有してもよい。例えば、磁化固定層MP1として、Ru(ルテニウム)膜などからなる非磁性膜を挟むように、上記材料からなる複数の強磁性膜を積層した積層体が形成される。これにより、磁化固定層MP1に含まれる複数の強磁性膜の各々の間の磁気的な結合力を高めることができ、磁化固定層MP1の保磁力を高める効果、すなわち反強磁性結合効果を奏する。また、このような積層体では、複数の強磁性膜の各々の磁化方向が互いに反対方向に向いた状態、すなわち反平行である状態が維持されるため、互いの膜からの漏洩磁界がキャンセルされる。これにより、磁化固定層MP1からの漏洩磁界の影響を小さくすることができる。
【0040】
トンネルバリア層TB1は、絶縁膜IF1からなる。前述したように、トンネルバリア層TB1は、磁気記録層MR1のうち、磁化自由領域MR1a上に形成されている。
【0041】
好適には、絶縁膜IF1は、MgO(酸化マグネシウム)を含有する。このようなMgOを含有する絶縁膜が岩塩構造を有する場合、すなわち絶縁膜がMgおよびOの各々について面心立方構造を有する場合、(100)配向したMgO膜を容易に形成することができる。言い換えれば、より好適には、絶縁膜IF1は、(100)配向した岩塩構造を有する結晶膜としてのMgO膜からなる。
【0042】
本実施の形態1では、半導体基板SBの上方に、導電膜CF1が形成され、導電膜CF1上に、強磁性膜FM1が形成され、強磁性膜FM1上に、絶縁膜IF1が形成され、絶縁膜IF1上に、強磁性膜FM2が形成されている。そして、強磁性膜FM1と、絶縁膜IF1と、強磁性膜FM2と、によりトンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0043】
磁化固定層HL1およびHL2は、強磁性膜FH1からなる。磁化固定層HL1およびHL2は、強磁性膜FH1の上下に金属膜からなる下地層およびキャップ層を有してもよい。下地層を用いることにより、下層絶縁膜との密着性や強磁性膜FH1の垂直磁気異方性を高める効果がある。キャップ層は、磁化固定層HL1およびHL2のエッチング時に強磁性膜FH1への加工ダメージを防ぐ効果がある。強磁性膜FH1は、垂直磁気異方性を有する。すなわち、強磁性膜FH1からなる磁化固定層HL1の磁化MG31(
図4参照)の向きは、強磁性膜FH1の膜厚方向に平行な方向であり、強磁性膜FH1の上面に垂直な方向である。また、強磁性膜FH1からなる磁化固定層HL2の磁化MG32(
図4参照)の向きは、強磁性膜FH1の膜厚方向に平行な方向であり、強磁性膜FH1の上面に垂直な方向である。
【0044】
強磁性膜FH1としては、前述した磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜と同様の膜を用いることができる。例えば、強磁性膜FH1は、例えば、Fe(鉄)、Co(コバルト)およびNi(ニッケル)から選択される金属または二種以上の金属の合金からなる。また、膜中に、Pt(白金)またはPd(パラジウム)を含ませてもよい。これにより、垂直磁気異方性を安定化することができる。
【0045】
さらに、強磁性膜FH1に、B、C、N、O、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、AuまたはSmなどの各種元素を添加することにより、磁気特性を調整することができる。
【0046】
強磁性膜FH1として、具体的には、Co、Co−Pt、Co−Pd、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−B、Co−Cr−Pt−BまたはCo−Cr−Ta−Bなどの材料からなる合金膜を用いることができる。あるいは、Co−V、Co−Mo、Co−W、Co−Ti、Co−Ru、Co−Rh、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Pt、Fe−Co−PdまたはSm−Coなどの材料からなる合金膜を用いることができる。
【0047】
また、強磁性膜FH1を、上記材料からなる膜の積層膜としてもよい。例えば、Fe、CoおよびNiから選択される二種以上の金属膜の積層膜を用いてもよい。具体的には、強磁性膜FH1として、Co/Ni、Co/Pd、Co/PtまたはFe/Auなどの積層膜を用いることができる。
【0048】
また、強磁性膜FH1として、同じ材料からなる強磁性膜を用いてもよく、また、異なる材料からなる強磁性膜を用いてもよい。
図4に示すように、磁化固定層HL1およびHL2は、磁化固定層HL1およびHL2の各々の磁化方向が、互いに反平行になるように、形成されている。磁化固定層HL1とHL2では、異なる強磁性膜を用いてもよい。
【0049】
磁化固定層HL1は、層間絶縁膜IL9に埋め込まれたビア部V4としてのビア部V41上に形成されており、ビア部V41と電気的に接続されている。磁化固定層HL2は、層間絶縁膜IL9に埋め込まれたビア部V4としてのビア部V42上に形成されており、ビア部V42と電気的に接続されている。層間絶縁膜IL9上には、ビア部V41およびV42を覆うように、層間絶縁膜IL10が形成されているが、層間絶縁膜IL10の上面は平坦化されており、平坦化された層間絶縁膜IL10の上面から、磁化固定層HL1およびHL2の各々が露出している。
【0050】
下地層BF1は、磁気記録層MR1と磁化固定層HL1およびHL2との間に形成されている。下地層BF1は、非磁性導電膜としての導電膜CF1からなる。
【0051】
ここで、
図1に示すように、平面視において、下地層BF1すなわち導電膜CF1の中央部を、領域CF1aとする。また、平面視において、領域CF1aの一方の側に位置する部分の導電膜CF1を、領域CF1bとし、平面視において、領域CF1aを挟んで領域CF1bと反対側に位置する部分の導電膜CF1を、領域CF1cとする。すなわち、導電膜CF1は、領域CF1aと、領域CF1bと、領域CF1cと、を含む。
【0052】
このとき、磁気記録層MR1すなわち強磁性膜FM1は、導電膜CF1の領域CF1a上に形成された領域FM1aと、導電膜CF1の領域CF1b上に形成された領域FM1bと、導電膜CF1の領域CF1c上に形成された領域FM1cと、を含む。また、磁化自由領域MR1aは、領域FM1aからなり、磁化固定領域MR1bは、領域FM1bからなり、磁化固定領域MR1cは、領域FM1cからなる。
【0053】
また、磁化固定層HL1は、導電膜CF1の領域CF1bの下に、形成されており、磁化固定層HL2は、導電膜CF1の領域CF1cの下に、形成されている。
【0054】
好適には、導電膜CF1は、例えばTaN(窒化タンタル)などの金属窒化物からなる。これにより、導電膜CF1が結晶化しにくくなる。したがって、後述する
図12を用いて説明するように、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくなる。したがって、CoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1が、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶面に沿って、体心立方構造を有することができ、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0055】
導電膜CF1が、例えばTaN(窒化タンタル)などの金属窒化物からなるとき、さらに、好適には、導電膜CF1は、アモルファス状態であるか、または、十分に結晶化していない状態である。これにより、導電膜CF1がさらに結晶化しにくくなる。したがって、後述する
図12を用いて説明するように、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響をさらに受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響をさらに受けやすくなる。したがって、CoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1が体心立方構造を有することができ、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0056】
なお、導電膜CF1がアモルファス状態であるとは、その導電膜CF1における回折ピークの強度をX線回折法により測定したときに、その導電膜CF1と等しい膜厚を有し、十分に結晶化している導電膜で検出されるいずれの回折ピークも、検出されない場合を意味する。また、導電膜CF1が十分結晶化していない状態であるとは、その導電膜CF1における回折ピークの強度をX線回折法により測定したときに、その導電膜と等しい膜厚を有し、十分に結晶化している導電膜CF1で検出される回折ピークよりも回折ピークの強度が小さい場合を意味する。
【0057】
一方、好適には、導電膜CF1は、例えばアモルファス状態のTa(タンタル)などの金属からなる。このような場合にも、導電膜CF1が結晶化しにくくなる。したがって、導電膜CF1が金属窒化物からなる場合と同様に、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくなる。したがって、CoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1が、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶面に沿って、体心立方構造を有することができ、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0058】
導電膜CF1が、例えばTa(タンタル)などの金属からなるとき、さらに好適には、導電膜CF1は、例えばXe(キセノン)を含有する金属からなる。これにより、導電膜CF1が結晶化しにくくなり、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。また、導電膜CF1の比抵抗を高くすることができるので、磁化固定層HL1と磁化固定層HL2との間で書き込み電流を流すときに、磁気記録層MR1および下地層BF1のうち、磁気記録層MR1に、より大きな電流を流すことができ、磁気記録層MR1にデータを書き込む際の効率を高めることができる。
【0059】
トンネルバリア層TB1は、絶縁膜IF1からなる。トンネルバリア層TB1は、磁気記録層MR1のうち、磁化自由領域MR1a上、磁化固定領域MR1b上、および、磁化固定領域MR1c上に、形成されている。すなわち、絶縁膜IF1は、強磁性膜FM1の領域FM1a上、強磁性膜FM1の領域FM1b上、および、強磁性膜FM1の領域FM1c上に、形成されている。これにより、強磁性膜FM1の領域FM1a、強磁性膜FM1の領域FM1b、および、強磁性膜FM1の領域FM1cのいずれも、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくすることができる。したがって、磁化自由領域MR1a、磁化固定領域MR1b、および、磁化固定領域MR1cの全てにおいて、CoとFeとBとを含有する強磁性膜が、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶面に沿って、体心立方構造を有することができ、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0060】
なお、磁化固定層MP1は、強磁性膜FM1の領域FM1a上に、絶縁膜IF1を介して形成された部分の強磁性膜FM2からなる。
【0061】
絶縁膜IF1は、例えば、MgO(酸化マグネシウム)を含有する。このようなMgOを含有する絶縁膜が岩塩構造を有する結晶膜からなる場合、すなわち絶縁膜がMgおよびOの各々について面心立方構造を有する結晶膜からなる場合、(100)配向したMgO膜を容易に形成することができる。
【0062】
磁化固定層HL1およびHL2の各々の膜厚、すなわち強磁性膜FH1と下地層とキャップ層とを含んだ膜厚を、例えば20〜60nm程度とすることができる。また、下地層BF1の膜厚、すなわち導電膜CF1の膜厚を、例えば1〜5nm程度とすることができる。一方、磁気記録層MR1の膜厚、すなわち強磁性膜FM1の膜厚を、例えば0.5〜2nm程度とすることができる。また、トンネルバリア層TB1の膜厚、すなわち絶縁膜IF1の膜厚を、例えば1〜2nm程度とすることができる。そして、磁化固定層MP1の膜厚、すなわち強磁性膜FM2の膜厚を、例えば10〜20nm程度とすることができる。また、導電膜CF2の膜厚を、例えば20〜70nm程度とすることができる。
【0063】
下地層BF1の膜厚、すなわち導電膜CF1の膜厚については、実施の形態2では、後述する
図25を用いて説明するように、導電膜CF1がTaNからなる場合には、導電膜CF1の膜厚を、例えば1〜20nm程度とすることができる。しかし、本実施の形態1では、導電膜CF1の膜厚が5nmを超える場合、磁化固定層HL1と磁化固定層HL2との間で書き込み電流を流すときに、磁気記録層MR1および下地層BF1のうち、磁気記録層MR1に流れる電流が小さくなり、磁気記録層MR1にデータを書き込む際の効率が低下するおそれがある。したがって、本実施の形態1では、導電膜CF1の膜厚は、好適には、例えば1〜5nm程度である。
【0064】
キャップ層CL1は、導電膜CF2からなる。導電膜CF2として、導電膜CF1と同様の材料からなるものを用いることができる。
【0065】
層間絶縁膜IL10上には、下地層BF1、磁気記録層MR1、トンネルバリア層TB1、磁化固定層MP1およびキャップ層CL1を覆うように、層間絶縁膜IL11が形成されている。層間絶縁膜IL11の上面には、層間絶縁膜IL11を貫通してキャップ層CL1の上面に達するコンタクトホールCH1が形成されている。コンタクトホールCH1の内部には、コンタクトホールCH1の内部に埋め込まれた導電膜からなるプラグPG2が形成されている。なお、
図1および
図2では図示を省略するが、プラグPG2上および層間絶縁膜IL11上には、さらに配線層が形成されていてもよい。
【0066】
<磁気メモリ素子の動作>
図4に示すように、例えば、磁化固定層MP1は、+Z軸方向に固定された磁化MG1を有する。また、磁化固定層HL1すなわち強磁性膜FH1により、磁気記録層MR1のうち磁化固定領域MR1bの磁化MG21の方向は、+Z軸方向に固定されており、磁化固定層HL2すなわち強磁性膜FH1により、磁気記録層MR1のうち磁化固定領域MR1cの磁化MG22の方向は、−Z軸方向に固定されている。このように、磁気記録層MR1のうち、磁化固定領域MR1bと磁化固定領域MR1cとは、それぞれ向きが互いに反対で、平行な磁化を有している。言い換えれば、磁化固定領域MR1cは、磁化固定領域MR1bが有する磁化と反平行な方向に固定された磁化を有する。一方、磁気記録層MR1のうち磁化自由領域MR1aは、+Z軸方向と−Z軸方向との間で反転可能な磁化MG23を有している。
【0067】
次いで、磁気メモリ素子MM1におけるデータの書き込み動作について説明する。ここでは、磁化固定層MP1の磁化MG1が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁化自由領域MR1aの磁化MG21が、−Z軸方向に向いた磁化であり、磁化固定領域MR1bと磁化自由領域MR1aとの境界B1に磁壁が形成される状態をデータ「1」とする。また、磁化固定層MP1の磁化が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁化自由領域MR1aの磁化が、+Z軸方向に向いた磁化であり、磁化固定領域MR1cと磁化自由領域MR1aとの境界B2に磁壁が形成される状態をデータ「0」とする。なお、磁化方向とデータの値の対応は逆でもよい。
【0068】
データ「0」が書き込まれている状態の磁気メモリ素子MM1に、データ「1」を書き込む場合は、書き込み電流を、例えば電流経路CP1により示すように、磁化固定層HL1から磁気記録層MR1を介して磁化固定層HL2の方向へ流す。この書き込み電流により、スピン偏極電子は、磁化固定領域MR1cから磁化自由領域MR1aに注入される。このとき、スピントランスファー効果により磁壁は、境界B2から境界B1の方へ移動し、磁化自由領域MR1aの磁化の向きは、+Z軸方向から−Z軸方向に変化する。
【0069】
データ「1」が書き込まれている状態の磁気メモリ素子MM1に、データ「0」を書き込む場合は、書き込み電流を、例えば電流経路CP1により示すように、磁化固定層HL2から磁気記録層MR1を介して磁化固定層HL1の方向へ流す。この書き込み電流により、スピン偏極電子は、磁化固定領域MR1bから磁化自由領域MR1aに注入される。このとき、スピントランスファー効果により磁壁は、境界B1から境界B2の方へ移動し、磁化自由領域MR1aの磁化の向きは、−Z軸方向から+Z軸方向に変化する。
【0070】
すなわち、磁化固定層HL1に含まれる強磁性膜FH1と、磁化固定層HL2に含まれる強磁性膜FH1との間で、強磁性膜FM1の領域FM1aを介して、書き込み電流が流れることにより、強磁性膜FM1の領域FM1aの磁化MG23が変化する。
【0071】
次いで、磁気メモリ素子MM1におけるデータの読み出し動作について説明する。読み出しは、磁気メモリ素子MM1が低抵抗状態であるか高抵抗状態であるかにより判定される。
【0072】
例えば、上記データ「1」の状態、すなわち、磁化固定層MP1の磁化が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁化自由領域MR1aの磁化が、−Z軸方向に向いた磁化である場合には、磁化固定層MP1と磁化自由領域MR1aとの間の抵抗が、高くなる。すなわち、磁化自由領域MR1aが、磁化固定層MP1の磁化の方向と反平行な方向に固定された磁化を有する場合には、磁化固定層MP1と磁化自由領域MR1aとの間の抵抗が、高くなる。このときの抵抗を、抵抗R1と定義する。
【0073】
また、上記データ「0」の状態、すなわち、磁化固定層MP1の磁化が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁化自由領域MR1aの磁化が、+Z軸方向に向いた磁化である場合には、磁化固定層MP1から磁化自由領域MR1aまでの間の抵抗が、低くなる。すなわち、磁化自由領域MR1aが、磁化固定層MP1の磁化の方向と平行な方向に固定された磁化を有する場合には、磁化固定層MP1から磁化自由領域MR1aまでの間の抵抗が、低くなる。このときの抵抗を、抵抗R0と定義する。
【0074】
よって、例えば電流経路CP2により示すように、磁化固定層MP1と磁化固定層HL2との間に読み出し電流を流し、これらの間に流れる電流値により、抵抗値を検出する。例えば、検出された抵抗値が、基準抵抗値より高い場合には、データ「1」を読み出し、例えば、検出された抵抗値が、基準抵抗値より低い場合には、データ「0」を読み出す。このようにして、磁気メモリ素子MM1に書き込まれたデータを判別することができる。
【0075】
なお、磁化固定層MP1と磁化固定層HL1との間に読み出し電流を流してもよい。また、読み出し電流は、磁化固定層MP1から磁化固定層HL1またはHL2の方向に電流を流してもよいし、磁化固定層HL1またはHL2から磁化固定層MP1の方向に電流を流してもよい。
【0076】
また、磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜FM2、磁化固定層HL1に含まれる強磁性膜FH1、および、磁化固定層HL2に含まれる強磁性膜FH1として、磁気記録層MR1より保磁力が高い強磁性膜を用いることが好ましい。保磁力とは、磁化方向を反転させるために必要なエネルギーをいう。前述した強磁性膜の材料のうち、保持力が比較的高い材料として、Co/Pt、Co/Pdなどが挙げられる。
【0077】
前述したように、磁化自由領域MR1aが、磁化固定層MP1の磁化MG1の方向と反平行な方向に固定された磁化MG23を有するときの、磁化固定層MP1と磁化自由領域MR1aとの間の抵抗を、抵抗R1と定義する。また、磁化自由領域MR1aが、磁化固定層MP1の磁化MG1の方向と平行な方向に固定された磁化MG23を有するときの、磁化固定層MP1と磁化自由領域MR1aとの間の抵抗を、抵抗R0とする。このような場合に、例えば(R1−R0)/R0により定義される比を、MR比と称する。このMR比が大きいほど、高抵抗状態における抵抗R1と低抵抗状態における抵抗R0との差が大きくなり、読み出し時のセンシングマージンが大きくなる。
【0078】
本実施の形態1では、下地層BF1に含まれる導電膜CF1が、金属窒化物からなり、磁気記録層MR1に含まれる強磁性膜FM1が、CoとFeとBとを含有する膜からなり、トンネルバリア層TB1に含まれる絶縁膜IF1が、MgOを含有する膜からなる。
【0079】
このような場合、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けることにより、CoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1を、体心立方構造を有するものとすることができる。トンネル磁気抵抗効果素子においてトンネルバリア層TB1に接触して配置されるCoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1が、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶面に沿って、体心立方構造を有する場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。したがって、本実施の形態1の半導体装置においても、強磁性膜FM1が体心立方構造を有することができ、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、により形成されるトンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0080】
<半導体装置の製造方法>
次いで、
図5〜
図11を参照しながら、本実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明する。
図5は、実施の形態1の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図6〜
図11は、実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6〜
図11のうち、
図6は、選択用トランジスタTR1およびTR2ならびに配線M1〜M4の形成工程を示す断面図であり、
図7〜
図11は、磁気メモリ素子MM1の形成工程を示す断面図である。
【0081】
まず、
図6に示すように、半導体基板SBの主面に、2つの選択用トランジスタTR1およびTR2を形成し、さらに、選択用トランジスタTR1およびTR2の上方に、複数の配線M1〜M4を形成する(
図5のステップS11)。これらの形成方法に制限はないが、例えば、以下の工程により形成することができる。
【0082】
まず、半導体基板SBを準備する。半導体基板SBとしては、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板を用いることができる。
【0083】
次いで、半導体基板SBの主面に、素子分離領域STを形成する。この素子分離領域STを、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法などにより形成することができる。この場合、半導体基板SBの素子分離領域をエッチングすることにより、溝を形成し、この溝の内部に酸化シリコン膜などの絶縁膜を埋め込むことにより、素子分離領域STを形成する。例えば、この溝の内部を含む基板上に酸化シリコン膜などの絶縁膜を堆積し、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法などを用いて、溝以外の絶縁膜を除去することにより、溝の内部に絶縁膜を埋め込むことができる。
【0084】
この素子分離領域STにより活性領域が区画され、この活性領域に、選択用トランジスタTR1およびTR2などの半導体素子が形成される。ここでのトランジスタは、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)とも呼ばれる電界効果トランジスタである。なお、ここでは、nチャネル型のMISFETを例に説明するが、半導体素子として、導電型を逆にしたpチャネル型のMISFETを形成してもよく、また、nチャネル型のMISFETとpチャネル型のMISFETの両方を形成してもよい。
【0085】
次いで、半導体基板SBの活性領域に、p型ウェルPWを形成する。p型ウェルPWは、例えば、半導体基板SB中に、p型の不純物をイオン注入することにより形成される。これにより、半導体基板SBの主面から所定の深さまでのp型の半導体領域であるp型ウェルPWを形成することができる。
【0086】
次いで、半導体基板SBの主面上、すなわちp型ウェルPWの上面上に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GEを形成する。まず、半導体基板SBの主面に、絶縁膜からなるゲート絶縁膜GIを形成する。例えば、熱酸化法などを用いて、酸化シリコン膜などからなるゲート絶縁膜GIを形成する。
【0087】
次いで、ゲート絶縁膜GI上に、例えば、多結晶シリコンなどからなる導電膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて堆積し、この導電膜を所望の形状にパターニングすることにより、ゲート電極GEを形成する。パターニングとは、膜上に、フォトリソグラフィ技術を用いて所望の形状のフォトレジスト膜などを形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして、膜を選択的にエッチングすることにより、膜を所望の形状に加工することをいう。
【0088】
次いで、ゲート電極GEの両側に位置する部分の半導体基板SBの上層部に、ソース領域またはドレイン領域として機能する半導体領域SDを形成する。
【0089】
まず、ゲート電極GEをマスクとしたイオン注入により低不純物濃度のn
−型半導体領域を形成する。次いで、ゲート電極GE上を含む半導体基板SB上に酸化シリコン膜などからなる絶縁膜を形成し、異方的にエッチングすることにより、ゲート電極GEの側壁にサイドウォール膜SWを形成する。次いで、ゲート電極GEおよびサイドウォール膜SWをマスクとしたイオン注入により、高不純物濃度のn
+型半導体領域を形成する。これにより、低不純物濃度のn
−型半導体領域と、それよりも高不純物濃度で接合深さが深いn
+型半導体領域とからなるLDD構造の半導体領域SDを形成することができる。
【0090】
次いで、アニール処理、すなわち熱処理を施し、これまでのイオン注入で導入した不純物を活性化する。
【0091】
以上の工程により、半導体基板SBの主面に、選択用トランジスタTR1およびTR2などの半導体素子を形成することができる。
【0092】
この後、サリサイド技術を用いて、ゲート電極GEおよびn
+型半導体領域の上部に、金属シリサイド膜(図示せず)を形成してもよい。この金属シリサイド膜により、拡散抵抗やコンタクト抵抗などを低抵抗化することができる。
【0093】
次いで、半導体基板SBの主面上に、層間絶縁膜IL1を形成する。例えば、酸化シリコン膜などの絶縁膜を、CVD法などを用いて堆積する。この後、必要に応じて、CMP法などを用いて絶縁膜の表面を平坦化する。
【0094】
次いで、層間絶縁膜IL1中にプラグPG1を形成する。まず、層間絶縁膜IL1をエッチングすることにより、コンタクトホールを形成し、この内部に、導電性膜を埋め込むことにより、プラグPG1を形成する。例えば、コンタクトホール内を含む層間絶縁膜IL1上に、バリア導体膜(図示せず)および主導体膜の積層膜を形成し、層間絶縁膜IL1上の不要な膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去する。
【0095】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線M1を形成する。まず、プラグPG1が埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に、層間絶縁膜IL2を形成する。それから、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって層間絶縁膜IL2の所定の領域に配線M1用の配線溝を形成する。それから、半導体基板SBの主面上にバリア導体膜を形成する。バリア導体膜として、例えばTiN(窒化チタン)膜、Ta(タンタル)膜またはTaN(窒化タンタル)膜などを用いることができる。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に、主導体膜としての銅めっき膜を形成して、銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜をCMP法により除去して、配線溝内に銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜を残す。これにより、
図6に示すように、配線溝内に銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。
【0096】
なお、図面の簡略化のために、
図6では、配線M1を構成する銅めっき膜、シード層およびバリア導体膜を一体化して示してある。配線M1は、プラグPG1に接続され、プラグPG1を介して、半導体領域SDなどと電気的に接続される。
【0097】
次に、シングルダマシン法またはデュアルダマシン法により、第2層目の配線M2とビア部V1とを形成する。ここでは、シングルダマシン法の場合について説明する。
【0098】
まず、
図6に示すように、配線M1が埋め込まれた層間絶縁膜IL2上に、層間絶縁膜IL3を形成する。それから、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって層間絶縁膜IL3の所定の領域にビア部V1用のビアホールを形成する。それから、配線M1を形成したのと同様の手法により、ビア部V1用のビアホールを銅を主体とする導電膜で埋め込んでから、ビアホールの外部の導電膜をCMP法などで除去することで、ビアホール内に導電性のビア部V1を形成する。それから、ビア部V1が埋め込まれた層間絶縁膜IL3上に、層間絶縁膜IL4を形成する。それから、配線M1を形成したのと同様の手法により、層間絶縁膜IL4に配線M2用の配線溝を形成し、この配線溝を銅を主体とする導電膜で埋め込んでから、配線溝の外部の導電膜を除去する。これにより、配線溝内に配線M2を形成する。
【0099】
デュアルダマシン法の場合は、配線M1が埋め込まれた層間絶縁膜IL2上に層間絶縁膜IL3およびIL4を順に形成してから、層間絶縁膜IL3およびIL4にビア部V1用のビアホールと配線M2用の配線溝とを形成し、ビアホールと配線溝とを銅を主体とする導電膜で埋め込んでから、ビアホールおよび配線溝の外部の導電膜を除去する。これにより、ビア部V1と配線M2とを一緒に形成することができ、ビア部V1は配線M2と一体的に形成される。
【0100】
シングルダマシン法では、ビア部V1と配線M2とは別々に形成され、一方、デュアルダマシン法では、ビア部V1と配線M2とは同工程で一体的に形成される。いずれの場合も、ビア部V1の上面は配線M2に接続され、ビア部V1の下面は、配線M1に接続される。このため、配線M1と配線M2とを、ビア部V1を介して電気的に接続することができる。
【0101】
次に、シングルダマシン法またはデュアルダマシン法により、第3層目の配線M3とビア部V2を形成するが、その手法は、第2層目の配線M2とビア部V1を形成する手法と同様である。
【0102】
これにより、配線M2が埋め込まれた層間絶縁膜IL4上に、層間絶縁膜IL5が形成され、層間絶縁膜IL5に形成されたビアホール内に導電性のビア部V2が形成され、ビア部V2が埋め込まれた層間絶縁膜IL5上に、層間絶縁膜IL6が形成され、層間絶縁膜IL6に形成された配線溝内に配線M3が形成される。
【0103】
次に、シングルダマシン法またはデュアルダマシン法により、第4層目の配線M4とビア部V3を形成するが、その手法は、第3層目の配線M3とビア部V2を形成する手法と同様である。
【0104】
これにより、配線M3が埋め込まれた層間絶縁膜IL6上に、層間絶縁膜IL7が形成され、層間絶縁膜IL7に形成されたビアホール内に導電性のビア部V3が形成され、ビア部V3が埋め込まれた層間絶縁膜IL7上に、層間絶縁膜IL8が形成され、層間絶縁膜IL8に形成された配線溝内に配線M4が形成される。
【0105】
次に、シングルダマシン法により、ビア部V4を形成する。ビア部V4を形成する手法は、ビア部V1をシングルダマシン法で形成したのと同様の手法である。すなわち、配線M4が埋め込まれた層間絶縁膜IL8上に、層間絶縁膜IL9を形成してから、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって層間絶縁膜IL9の所定の領域にビアホールを形成する。それから、ビアホールを導電膜で埋め込んでから、ビアホールの外部の導電膜をCMP法などで除去し、ビアホール内に導電膜を残してビア部V4とする。これにより、ビアホール内に導電性のビア部V4を形成することができる。
【0106】
配線M2、M3およびM4が銅配線の場合は、ビア部V1、V2およびV3も、銅を主体とする。ビア部V4用の導電膜の材料は、銅を主体とすることもできるが、これに限定されず、必要に応じて種々選択することができる。ビア部V4は、導電性のプラグとみなすこともできる。
【0107】
以上の工程により、
図6に示すように、選択用トランジスタTR1およびTR2ならびに配線M1〜M4を形成することができる。
【0108】
次いで、ビア部V4が埋め込まれた層間絶縁膜IL9上に、磁気メモリ素子MM1(後述する
図11参照)を形成する。
【0109】
まず、
図7に示すように、磁化固定層HL1およびHL2を形成する(
図5のステップS12)。
【0110】
このステップS12では、まず、例えば、ビア部V4としてのビア部V41およびV42が埋め込まれた層間絶縁膜IL9上に、強磁性膜FH1をスパッタリング法などにより堆積する。次いで、強磁性膜FH1をパターニングすることにより、強磁性膜FH1からなる磁化固定層HL1およびHL2を形成する。
【0111】
磁化固定層HL1は、ビア部V41上に形成され、磁化固定層HL2は、ビア部V42上に形成される。磁化固定層HL1と電気的に接続されるビア部V41は、選択用トランジスタTR1の半導体領域SDの一方と電気的に接続される(
図6参照)。また、磁化固定層HL2と電気的に接続されるビア部V42は、選択用トランジスタTR2の半導体領域SDの一方と電気的に接続される(
図6参照)。磁化固定層HL1およびHL2として用いられる強磁性膜FH1は、「磁気メモリ素子」の欄で説明したとおりである。
【0112】
次に、ステップS12では、
図7に示すように、磁化固定層HL1およびHL2上に、層間絶縁膜IL10を形成する。例えば、磁化固定層HL1、HL2および層間絶縁膜IL9上に、層間絶縁膜IL10として酸化シリコン膜などの絶縁膜をCVD法などにより堆積する。その後、CMP法やエッチバック法などを用いて、層間絶縁膜IL10の表面部を、磁化固定層HL1およびHL2の表面が露出するまで除去する。これにより、
図7に示すように、層間絶縁膜IL10中に磁化固定層HL1およびHL2が埋め込まれ、磁化固定層HL1およびHL2の表面が層間絶縁膜IL10の表面から露出する。
【0113】
次いで、
図8に示すように、導電膜CF1を形成する(
図5のステップS13)。このステップS13では、磁化固定層HL1およびHL2が埋め込まれた層間絶縁膜IL10上に、すなわち半導体基板SBの上方に、金属または金属窒化物からなる下地層BF1用の導電膜CF1を、例えばAr(アルゴン)ガスなどの不活性ガスと窒素ガスとが混合された混合ガスを用いたスパッタリング法などにより堆積する。例えば、半導体基板SBが成膜処理装置に備えられた処理室内に配置され、処理室内の雰囲気が大気圧よりも低い圧力、例えば0.02〜0.2Pa程度の圧力に減圧された状態で、導電膜CF1を成膜することができる。すなわち、ステップS13では、半導体基板SBが大気に曝されない状態で、半導体基板SB上に、導電膜CF1を形成する。
【0114】
好適には、導電膜CF1は、例えばTaN(窒化タンタル)などの金属窒化物からなる。これにより、導電膜CF1が結晶化しにくくなる。したがって、後述する
図12を用いて説明するように、導電膜CF1上に、例えばスパッタ法を用いて形成される強磁性膜FM1(後述する
図10参照)が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1(後述する
図10参照)の結晶構造の影響を受けやすくなる。
【0115】
導電膜CF1が、例えばTaNなどの金属窒化物からなるとき、さらに、好適には、導電膜CF1は、アモルファス状態であるか、または、十分に結晶化していない状態である。アモルファス状態のWN(窒化タングステン)、TiN(窒化チタン)などを用いてもよい。これにより、導電膜CF1がさらに結晶化しにくくなる。したがって、後述する
図12を用いて説明するように、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響をさらに受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響をさらに受けやすくなる。
【0116】
なお、導電膜CF1がアモルファス状態であるとは、その導電膜CF1における回折ピークの強度をX線回折法により測定したときに、その導電膜CF1と等しい膜厚を有し、十分に結晶化している導電膜で検出されるいずれの回折ピークも、検出されない場合を意味する。また、導電膜CF1が十分結晶化していない状態であるとは、その導電膜CF1における回折ピークの強度をX線回折法により測定したときに、その導電膜CF1と等しい膜厚を有し、十分に結晶化している導電膜で検出される回折ピークよりも回折ピークの強度が小さい場合を意味する。
【0117】
一方、好適には、導電膜CF1は、例えばアモルファス状態のTa(タンタル)などの金属からなる。このような場合にも、導電膜CF1は結晶化しにくくなる。したがって、導電膜CF1が金属窒化物からなる場合と同様に、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくなる。
【0118】
さらに好適には、不活性ガスとしてのXe(キセノン)ガスを用いたスパッタリング法により、例えばTaなどの金属からなる導電膜CF1を形成する。または、不活性ガスとしてのXe(キセノン)ガスと窒素ガスとが混合された混合ガスを用いたスパッタリング法により、例えばTaNなどの金属窒化物からなる導電膜CF1を形成する。このとき、導電膜CF1は、例えばXe(キセノン)を含有する金属または金属窒化物からなる。これにより、導電膜CF1からなる下地層BF1の比抵抗を高くすることができる。そのため、磁化固定層HL1と磁化固定層HL2との間で書き込み電流を流すときに、磁気記録層MR1および下地層BF1のうち、磁気記録層MR1に、より大きな電流を流すことができ、磁気記録層MR1にデータを書き込む際の効率を高めることができる。
【0119】
次いで、
図9に示すように、導電膜CF1の表面を改質する(
図5のステップS14)。
【0120】
このステップS14では、まず、例えば導電膜CF1の表面を大気に曝すことにより、導電膜CF1の表面を改質する(第1改質工程)。この第1改質工程では、例えばステップS13で用いられた成膜処理装置に備えられた処理室を大気開放し、処理室から半導体基板SBを処理室の外部に搬出して導電膜CF1の表面を大気に曝すことにより、例えばTaN(窒化タンタル)などからなる導電膜CF1の表面が酸化して自然酸化層が形成される。
【0121】
また、ステップS14では、第1改質工程の後、
図9に示すように、例えば導電膜CF1の表面をエッチングすることにより、導電膜CF1の表面を改質する(第2改質工程)。この第2改質工程では、第1改質工程の後、同一または他の処理室内で、導電膜CF1の表面を、例えばAr
+(アルゴンイオン)などのイオンビームIB1で物理エッチングすることにより、導電膜CF1の表面を改質することができる。このとき、例えばTaN(窒化タンタル)からなる導電膜CF1の表面が酸化して形成された自然酸化層がエッチングにより除去され、物理エッチングにより、TaNからなる導電膜CF1の表面が、よりアモルファス状態になる。この場合のTaNからなる導電膜CF1のエッチング量は、例えば、0.8nm〜2nm程度で行われることが好ましい。
【0122】
または、ステップS14の第1変形例として、以下のような工程を行うこともできる。
【0123】
このステップS14の第1変形例では、まず、例えば導電膜CF1の表面を酸化することにより、導電膜CF1の表面を改質する(第1改質工程の第1変形例)。この第1改質工程の第1変形例では、例えばステップS13の後、導電膜CF1の表面を大気には曝さないが、同一のまたは他の処理室内で酸化雰囲気中に曝す、または熱処理することにより、導電膜CF1の表面が酸化して酸化層が形成される。または、酸素プラズマ中に曝すことにより表面酸化層を形成してもよい。
【0124】
また、ステップS14の第1変形例では、第1改質工程の第1変形例の後、導電膜CF1の表面をエッチングすることにより、導電膜CF1の表面を改質する(第2改質工程の第1変形例)。この第2改質工程の第1変形例では、ステップS14の第2改質工程と同様の工程を行って、導電膜CF1の表面に形成された酸化層をエッチングすることにより、導電膜CF1の表面を改質することができる。
【0125】
あるいは、ステップS14の第2変形例として、以下のような工程を行うこともできる。このステップS14の第2変形例では、第2改質工程の第1変形例を、第1改質工程の第1変形例と同一の工程として行う。すなわち、ステップS14の第2変形例では、例えば導電膜CF1の表面を酸化しながらエッチングすることにより、導電膜CF1の表面を改質する。言い換えれば、ステップS14の第2変形例では、導電膜CF1の表面を酸化する工程とともに、導電膜CF1の表面をエッチングする工程を行って、導電膜CF1の表面を改質する。
【0126】
なお、ステップS13において、例えばアモルファス状態の金属窒化物からなる導電膜CF1が形成されている場合には、ステップS14の表面改質工程を行わなくてもよい。
【0127】
次いで、
図10に示すように、強磁性膜FM1を形成する(
図5のステップS15)。このステップS15では、
図10に示すように、導電膜CF1上に、例えばCoFeB(コバルト鉄ボロン)膜など、Co(コバルト)とFe(鉄)とB(ボロン)とを含有する磁気記録層MR1用の強磁性膜FM1を、スパッタリング法などにより堆積する。
【0128】
ステップS14にて形成された導電膜CF1は、金属または金属窒化物からなり、結晶化しにくい。そのため、ステップS15にて導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1は、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくく、例えばアモルファス状態であるか、または、十分に結晶化していない状態である。
【0129】
次いで、
図10に示すように、絶縁膜IF1を形成する(
図5のステップS16)。このステップS16では、強磁性膜FM1上に、MgO(酸化マグネシウム)を含有する絶縁膜IF1を、RFスパッタリング法などにより堆積する。金属Mg(マグネシウム)をスパッタ法で成膜した後にMg表面を酸化することによって、MgOを形成してもよい。このMgのスパッタと酸化は複数回繰り返して形成してもよい。また、このMgのスパッタと酸化は別チャンバ(処理室)でおこなってもよく、同一チャンバでおこなってもよい。
【0130】
MgOは、岩塩構造を有し、Mg(マグネシウム)およびO(酸素)のいずれの原子に着目しても、面心立方構造を有する。MgOを含有する絶縁膜IF1を形成する場合には、好適には、絶縁膜IF1は、(100)配向した結晶膜としてのMgO膜からなる。
【0131】
次いで、
図10に示すように、強磁性膜FM2を形成する(
図5のステップS17)。このステップS17では、絶縁膜IF1上に、例えばCoFeB(コバルト鉄ボロン)膜など、Co(コバルト)とFe(鉄)とB(ボロン)とを含有する強磁性膜FM2を、スパッタリング法などにより堆積する。なお、ステップS17では、複数の強磁性層を含む強磁性膜FM2を形成してもよい。
【0132】
次いで、
図10に示すように、導電膜CF2を形成する(
図5のステップS18)。このステップS18では、強磁性膜FM2上に、例えば、Ta(タンタル)膜などの非磁性導電膜としての導電膜CF2を、スパッタリング法などにより堆積する。
【0133】
次いで、
図11に示すように、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1および導電膜CF1を、パターニングする(
図5のステップS19)。
【0134】
このステップS19では、まず、導電膜CF2上に、酸化シリコン膜などの絶縁膜(図示せず)をCVD法により形成する。この絶縁膜を、パターニングすることにより、平面視において、磁化自由領域MR1a、磁化固定領域MR1bおよび磁化固定領域MR1cが形成される領域に、その絶縁膜を残す。次いで、磁化自由領域MR1a、磁化固定領域MR1bおよび磁化固定領域MR1cが形成される領域に残された部分の絶縁膜(図示せず)をマスクとして用いて、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1および導電膜CF1をエッチングする。
【0135】
これにより、磁化自由領域MR1a、磁化固定領域MR1bおよび磁化固定領域MR1cが形成される領域で、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1および導電膜CF1を残す。
【0136】
このとき、
図11に示すように、磁化自由領域MR1a、磁化固定領域MR1bおよび磁化固定領域MR1cを含み、強磁性膜FM1からなる磁気記録層MR1が形成される。また、磁化自由領域MR1aの下に残された部分の導電膜CF1、磁化固定領域MR1bの下に残された部分の導電膜CF1、および、磁化固定領域MR1cの下に残された部分の導電膜CF1からなる下地層BF1が形成される。さらに、磁化自由領域MR1a上、磁化固定領域MR1b上、および、磁化固定領域MR1c上に残された部分の絶縁膜IF1からなるトンネルバリア層TB1が、形成される。
【0137】
言い換えれば、導電膜CF1のうち、領域CF1aと、領域CF1aの一方の側に位置する領域CF1bと、領域CF1aを挟んで領域CF1bと反対側に位置する領域CF1cと、が残される。また、強磁性膜FM1のうち、導電膜CF1の領域CF1a上に形成された領域FM1aと、導電膜CF1の領域CF1b上に形成された領域FM1bと、導電膜CF1の領域CF1c上に形成された領域FM1cと、が残される。そして、領域FM1aからなる磁化自由領域MR1aと、領域FM1bからなる磁化固定領域MR1bと、領域FM1cからなる磁化固定領域MR1cと、が形成される。また、強磁性膜FM1の領域FM1a上、強磁性膜FM1の領域FM1b上、および、強磁性膜FM1の領域FM1c上に、絶縁膜IF1が形成される。
【0138】
次いで、導電膜CF2上に形成され、磁化自由領域MR1a上に残された部分の絶縁膜からなるハードマスク(図示せず)をマスクとして用いて、導電膜CF2および強磁性膜FM2をエッチングし、磁化自由領域MR1a上に位置する部分の導電膜CF2および強磁性膜FM2を残す。
【0139】
このとき、
図11に示すように、磁化自由領域MR1a上に残された部分の強磁性膜FM2からなる磁化固定層MP1と、磁化固定層MP1上に残された部分の導電膜CF2からなるキャップ層CL1と、が形成される。すなわち、強磁性膜FM1の領域FM1a上に、絶縁膜IF1を介して形成された部分の強磁性膜FM2からなる磁化固定層MP1が形成される。
【0140】
また、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、磁気メモリ素子MM1が形成される。
【0141】
次いで、層間絶縁膜IL11およびプラグPG2を形成する(
図5のステップS20)。
【0142】
このステップS20では、まず、
図1に示すように、層間絶縁膜IL10上に、下地層BF1、磁気記録層MR1、トンネルバリア層TB1、磁化固定層MP1およびキャップ層CL1を覆うように、層間絶縁膜IL11を形成する。層間絶縁膜IL11として、例えば、酸化シリコン膜などからなる絶縁膜を、CVD法などにより堆積する。
【0143】
また、ステップS20では、次に、層間絶縁膜IL11を貫通してキャップ層CL1の上面に達するコンタクトホールCH1を形成し、コンタクトホールCH1の内部を埋め込むように、導電膜を形成する。これにより、
図1に示すように、コンタクトホールCH1の内部に埋め込まれた導電膜からなるプラグPG2を形成する。
【0144】
その後、層間絶縁膜IL11上に、配線(図示せず)を形成する。以上の工程により、
図2に示すように、選択用トランジスタTR1およびTR2と、配線M1〜M4と、磁気メモリ素子MM1と、を形成することができる。
【0145】
本実施の形態1では、ステップS16においてMgOを含有する絶縁膜IF1を形成した後、磁気メモリ素子MM1を含めて半導体装置を製造する間に、半導体基板SBが、例えば250〜350℃程度の温度で熱処理される。この際に、強磁性膜FM1が結晶化され、例えばアモルファス状態であるか、または、十分に結晶化していない状態であるCoとFeとBを含有する強磁性膜FM1とMgOを含有する絶縁膜IF1が、結晶化される。すなわち、本実施の形態1の半導体装置の製造工程は、絶縁膜IF1が形成された後、強磁性膜FM1および絶縁膜IF1の結晶化のための熱処理をする工程を有する。この工程は、熱処理工程として単独の工程でなくても、例えば、層間絶縁膜などの成膜中の熱履歴によっておこなわれてもよい。なお、本実施の形態1の半導体装置の製造工程が、ステップS16で絶縁膜IF1が形成された後に、半導体基板SBを、例えば250〜350℃程度の温度で熱処理し、強磁性膜FM1および絶縁膜IF1を結晶化する工程を、他の工程とは別に有していてもよい。
【0146】
<導電膜の材料とMR比との関係について>
図12は、導電膜の材料とMR比との関係を示すグラフである。
図12では、
図5のステップS13に相当する工程において、Taからなる導電膜CF1が形成され、
図5のステップS14の表面改質工程としての大気開放が行われなかった場合を、比較例1として示す。また、
図12では、
図5のステップS13に相当する工程において、TaNからなる導電膜が形成され、
図5のステップS14の表面改質工程としての大気開放が行われなかった場合を、実施例1として示す。
【0147】
また、
図12では、
図5のステップS13に相当する工程において、TaNからなる導電膜CF1が形成され、
図5のステップS14の表面改質工程のうち第1改質工程としての大気開放を行って導電膜CF1の表面を大気に曝したものの、第2改質工程が行われなかった場合を、比較例2として示す。さらに、
図12では、
図5のステップS13に相当する工程において、TaNからなる導電膜CF1が形成され、
図5のステップS14の表面改質工程のうち第1改質工程としての大気開放を行って導電膜CF1の表面を大気に曝した後、第2改質工程を行って導電膜CF1の表面をエッチングした場合を、実施例2として示す。
【0148】
なお、実施例1、比較例2および実施例2において、Taに対するNの組成比は、0.56であった。
【0149】
図12に示すように、実施例1では、比較例1に比べ、MR比が高かった。すなわち、TaNからなる導電膜CF1を形成した後、表面改質工程を行わずに、CoFeB膜からなる強磁性膜FM1を形成した場合、Taからなる導電膜CF1を形成した後、表面改質工程を行わずに、CoFeB膜からなる強磁性膜FM1を形成した場合に比べ、MR比が高かった。
【0150】
一方、
図12に示すように、比較例2では、強磁性膜FM1における磁化の方向は、強磁性膜FM1の上面に垂直ではなく、強磁性膜FM1の上面に平行であった。そのため、比較例2では、MR比は100%未満であった。
【0151】
さらに、
図12に示すように、実施例2でも、比較例1に比べ、MR比が高かった。すなわち、TaNからなる導電膜CF1を形成し、表面改質工程を行った後、CoFeB膜からなる強磁性膜FM1を形成した場合、Taからなる導電膜CF1を形成した後、表面改質工程を行わずに、CoFeB膜からなる強磁性膜FM1を形成した場合に比べ、MR比が高かった。また、実施例2では、実施例1に比べても、MR比が高かった。
【0152】
トンネル磁気抵抗効果素子においてトンネルバリア層TB1に接触して配置されるCoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1が体心立方構造を有する場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。しかし、導電膜CF1が例えばTaなど金属からなる場合には、Taからなる導電膜CF1が結晶化しやすく、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けるため、体心立方構造を有しにくくなる。このような場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができず、磁気メモリ素子MM1を備える半導体装置の性能が低下する。
【0153】
一方、導電膜CF1が例えばTaNなど金属窒化物からなる場合には、TaNからなる導電膜CF1が結晶化しにくくなる。ステップS13において導電膜CF1が形成された後、次の工程が行われるまでの間は、導電膜CF1は、アモルファス状態か、または、十分に結晶化していない状態になっている。したがって、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる一方で、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくなる。
【0154】
具体的には、導電膜CF1上にMgOを含有する絶縁膜IF1を形成した後、熱処理することにより、強磁性膜FM1のうち、強磁性膜FM1と絶縁膜IF1との界面近傍の部分から、強磁性膜FM1の結晶化が始まる。そのため、強磁性膜FM1を、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶面に沿って、体心立方構造を有する結晶膜とすることができる。したがって、強磁性膜FM1からなる磁気記録層MR1と、絶縁膜IF1からなるトンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、により形成されるトンネル磁気抵抗効果素子としての磁気メモリ素子MM1のMR比を、高くすることができる。
【0155】
好適には、絶縁膜IF1は、(100)配向した岩塩構造を有するMgO膜からなる。これにより、強磁性膜FM1を、(100)配向した体心立方構造を有するCoFeB膜からなる結晶膜とすることができる。
【0156】
<導電膜の組成比とMR比との関係について>
図13は、導電膜の組成比とMR比との関係を示すグラフである。
図13では、
図5のステップS13に相当する工程において、TaNからなる導電膜CF1が形成され、
図5のステップS14の表面改質工程のうち第1改質工程を行って導電膜CF1の表面を大気に曝した後、第2改質工程を行って導電膜CF1の表面をエッチングした実施例、すなわち
図12の実施例2と同様の実施例を示している。また、
図13では、
図12の比較例1を示している。
図13の横軸は、導電膜CF1の組成比として、N/Ta組成比、すなわちTaに対するNの組成比を示している。
【0157】
図13に示すように、好適には、TaNからなる導電膜CF1における、タンタルに対する窒素の組成比は、0.06〜0.7である。これにより、MR比は、140%よりも大きくなるので、TaNからなる導電膜CF1におけるタンタルに対する窒素の組成比が0の場合、すなわち導電膜CF1がTaからなる場合におけるMR比に比べて、十分大きい。さらに好適には、TaNからなる導電膜CF1における、タンタルに対する窒素の組成比は、0.06〜0.56である。
【0158】
<Xeガスを用いて形成された導電膜について>
前述したように、Xe(キセノン)ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いたスパッタリング法により形成された導電膜CF1は、Xeを含有する。例えばXe(キセノン)ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いたスパッタリング法により形成された導電膜CF1が、Ta、TaNからなる場合、導電膜CF1における、Ta、TaNに対するXeの含有量は、0.2〜2at%であった。
【0159】
また、Xeを含有する導電膜CF1が、例えば0.2〜2at%のXeを含有するTaからなる場合におけるMR比は、152.7%であり、導電膜CF1がXeを含有しないTaからなる場合のMR比よりも大きかった。あるいは、導電膜CF1が、例えば0.2〜2at%のXeを含有するTaN(N/Ta=0.49)からなる場合のMR比は、161.3%であり、導電膜CF1がXeを含有しないTaN(N/Ta=0.38)からなる場合のMR比(155.4%)よりも大きかった。
【0160】
磁壁移動型MRAMを低電流で動作させるという観点では、データの書き込み動作を行う際に、磁気記録層MR1に効率的に電流を流すためには、下地層BF1の比抵抗が高いことが望ましい。このような観点からも、下地層BF1に含まれる導電膜CF1として、Xe(キセノン)ガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1を用いることが望ましい。Ar(アルゴン)ガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1に比べ、Xeガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1は、アモルファス状態により近く、比抵抗も高い。また、Xeガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1は、Xeを含有するTaからなる。
【0161】
具体的には、Arガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1の比抵抗は、197μΩcmであった。一方、直流電力およびガスの流量を変えた各種の条件で、Xeガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1の比抵抗は、244〜377μΩcmであり、Arガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaからなる導電膜CF1の比抵抗よりも高かった。これは、例えば、導電膜CF1の結晶状態がアモルファス状態により近くなったことにより、導電膜CF1の粒径が小さくなったためと考えられる。
【0162】
このように、導電膜CF1の比抵抗を高くすることにより、磁化固定層HL1と磁化固定層HL2との間で書き込み電流を流すときに、比抵抗が相対的に低い磁気記録層MR1に、より大きな電流を流すことができるので、磁気記録層MR1にデータを書き込む際に、効率的に電流を流すことができる。
【0163】
なお、Xeガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaNからなる導電膜CF1の比抵抗も、Arガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaNからなる導電膜CF1の比抵抗よりも高い。このとき、Xeガスを用いたスパッタリング法により形成されたTaNからなる導電膜CF1は、Xeを含有するTaNからなる。
【0164】
この場合も、導電膜CF1の比抵抗を高くすることにより、磁化固定層HL1と磁化固定層HL2との間で書き込み電流を流すときに、磁気記録層MR1および下地層BF1のうち、磁気記録層MR1に、より大きな電流を流すことができるので、磁気記録層MR1にデータを書き込む際に、効率的に電流を流すことができる。
【0165】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態1の半導体装置は、半導体基板の上方に形成された導電膜CF1と、導電膜CF1上に形成された強磁性膜FM1と、強磁性膜FM1上に形成された絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1上に形成された強磁性膜FM2と、を有する。強磁性膜FM1と絶縁膜IF1と強磁性膜FM2とによりトンネル磁気抵抗効果素子としての磁気メモリ素子MM1が形成される。導電膜CF1は、金属窒化物からなるか、または、Xeを含有する金属からなり、強磁性膜FM1は、CoとFeとBとを含有し、絶縁膜IF1は、MgOを含有する。
【0166】
このような場合、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けることにより、CoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1を、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶面に沿って、体心立方構造を有するものとすることができる。トンネル磁気抵抗効果素子としての磁気メモリ素子MM1においてトンネルバリア層TB1に接触して配置されるCoとFeとBとを含有する強磁性膜FM1が体心立方構造を有する場合、トンネル磁気抵抗効果素子としての磁気メモリ素子MM1のMR比を高くすることができる。したがって、本実施の形態1の半導体装置においても、強磁性膜FM1が体心立方構造を有することができ、強磁性膜FM1と絶縁膜IF1と強磁性膜FM2とにより形成されるトンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。そのため、磁気メモリ素子MM1を備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0167】
(実施の形態2)
実施の形態1では、磁壁移動型MRAMへの適用例について説明した。それに対して、実施の形態2では、スピントランスファートルク(Spin Transfer Torque:STT)を用いたMRAM(STT−MRAM)への適用例について説明する。
【0168】
<半導体装置の構成>
図14は、実施の形態2の半導体装置の磁気メモリ素子を示す断面図である。
図15は、実施の形態2の半導体装置の構成を示す断面図である。
図16は、実施の形態2の磁気メモリ素子における強磁性膜の磁化の向きを示す図である。なお、
図16では、磁気記録層MR1および磁化固定層MP1の各々における磁化方向を、矢印で模式的に示してある。
【0169】
図14に示す磁気メモリ素子MM2の一端は、例えば、
図15に示すように、1つの選択用トランジスタTR1と直列に接続されている。また、磁気メモリ素子MM2の他端は、プラグPG2を介してビット線(図示せず)に接続されている。
図15に示すように、本実施の形態2における半導体装置のうち磁気メモリ素子MM2よりも下の部分については、実施の形態1における半導体装置のうち磁気メモリ素子MM1よりも下の部分とほぼ同様にすることができる。また、
図15に示す本実施の形態2における選択用トランジスタTR1およびTR2についても、
図2を用いて説明した実施の形態1における選択用トランジスタTR1およびTR2のそれぞれと同様にすることができる。
【0170】
<磁気メモリ素子>
図14に示すように、磁気メモリ素子MM2は、下地層BF1と、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、キャップ層CL1と、下部電極層BE1と、を有する。半導体基板SBの上方に下地層BF1が形成されており、下地層BF1上に、磁気記録層MR1が形成されており、磁気記録層MR1上に、トンネルバリア層TB1が形成されている。トンネルバリア層TB1上に、磁化固定層MP1が形成されており、磁化固定層MP1上に、キャップ層CL1が形成されている。
【0171】
下地層BF1の下には、下部電極層BE1が形成されている。磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、MTJが形成されている。すなわち、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、トンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0172】
磁気記録層MR1は、強磁性膜FM1からなる。磁気記録層MR1により、データ記憶層が形成される。一方、磁化固定層MP1は、強磁性膜FM2からなる。磁化固定層MP1により、データ参照層が形成される。あるいは、強磁性膜FM2は、複数の強磁性層からなるものでもよい。
【0173】
強磁性膜FM1およびFM2の各々は、垂直磁気異方性を有する。すなわち、強磁性膜FM1およびFM2の各々の磁化の向きは、強磁性膜FM1およびFM2の各々の膜厚方向に平行な方向であり、強磁性膜FM1およびFM2の各々の上面に垂直な方向である。
【0174】
本実施の形態2における強磁性膜FM1およびFM2も、実施の形態1の強磁性膜FM1およびFM2とそれぞれ同様にすることができる。したがって、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、強磁性膜FM1およびFM2の各々は、Co(コバルト)とFe(鉄)とB(ボロン)とを含有する。このようなCoとFeとBとを含有する強磁性膜が体心立方構造を有する場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0175】
なお、磁化固定層MP1が、強磁性膜FM2以外の強磁性膜を含む場合、磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜は、実施の形態1と同様にすることができる。
【0176】
トンネルバリア層TB1は、絶縁膜IF1からなる。本実施の形態2における絶縁膜IF1も、実施の形態1の絶縁膜IF1と同様にすることができ、好適には、絶縁膜IF1は、MgO(酸化マグネシウム)を含有する。
【0177】
本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、半導体基板SBの上方に、導電膜CF1が形成され、導電膜CF1上に、強磁性膜FM1が形成され、強磁性膜FM1上に、絶縁膜IF1が形成され、絶縁膜IF1上に、強磁性膜FM2が形成されている。そして、強磁性膜FM1と、絶縁膜IF1と、強磁性膜FM2と、によりトンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0178】
下部電極層BE1は、層間絶縁膜IL9に埋め込まれたビア部V4上に形成されており、ビア部V4と電気的に接続されている。下部電極層BE1は、導電膜CF3からなる。導電膜CF3として、例えばTa(タンタル)、TaN(窒化タンタル)、Ru(ルテニウム)、Pt(白金)、Ti(チタン)またはTiN(窒化チタン)などの導電膜を用いることができる。あるいは、導電膜CF3として、TaとRuとTaとの積層膜からなる導電膜を用いてもよい。
【0179】
下地層BF1は、磁気記録層MR1と下部電極層BE1との間に形成されている。下地層BF1は、非磁性導電膜としての導電膜CF1からなる。
【0180】
本実施の形態2における導電膜CF1も、実施の形態1の導電膜CF1と同様にすることができる。したがって、例えば、好適には、導電膜CF1は、金属窒化物、または、アモルファス状態の金属からなる。これにより、導電膜CF1が結晶化しにくくなるので、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくなる。
【0181】
なお、本実施の形態2では、磁気メモリ素子MM2は、STT−MRAMに備えられたトンネル磁気抵抗効果素子であるため、実施の形態1とは異なり、導電膜CF1の比抵抗を高くすることによって、磁気記録層MR1にデータを書き込む際に、効率的に電流を流す、という効果は、少ない。したがって、導電膜CF1が、例えばTa(タンタル)などの金属からなるものであるときでも、Xe(キセノン)を含有する金属からなるものでなくてもよい。
【0182】
<磁気メモリ素子の動作>
図16に示すように、例えば、磁化固定層MP1すなわち強磁性膜FM2は、+Z軸方向に固定された磁化MG1を有する。一方、磁気記録層MR1すなわち強磁性膜FM1は、+Z軸方向と−Z軸方向との間で反転可能な磁化MG2を有する。
【0183】
次いで、磁気メモリ素子MM2におけるデータの書き込み動作について説明する。本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、磁化固定層MP1の磁化MG1が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁気記録層MR1の磁化MG2が、−Z軸方向に向いた磁化である状態をデータ「1」とする。また、磁化固定層MP1の磁化MG1が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁気記録層MR1の磁化MG2が、+Z軸方向に向いた磁化である状態をデータ「0」とする。なお、磁化方向とデータの値の対応は逆でもよい。
【0184】
データ「0」が書き込まれている状態の磁気メモリ素子MM2に、データ「1」を書き込む場合は、書き込み電流を、例えば電流経路CP1により示すように、キャップ層CL1から磁気記録層MR1を介して下地層BF1の方向へ流す。このとき、磁気記録層MR1には、正逆両方向のスピントルクを有する電子が注入されるが、そのうち一方向のスピントルクを有する電子が磁気記録層MR1で跳ね返され、磁気記録層MR1の磁化MG2が上下反転する。
【0185】
データ「1」が書き込まれている状態の磁気メモリ素子MM2に、データ「0」を書き込む場合は、書き込み電流を、例えば電流経路CP1により示すように、下地層BF1から磁気記録層MR1を介して磁化固定層MP1の方向へ流す。このとき、磁気記録層MR1には、正逆両方向のスピントルクのうち磁化固定層MP1を通過した一方向のスピントルクを有する電子が注入され、磁気記録層MR1の磁化MG2が上下反転する。
【0186】
すなわち、導電膜CF1と、導電膜CF2との間で、強磁性膜FM1を介して、書き込み電流が流れることにより、強磁性膜FM1の磁化MG2が変化する。
【0187】
なお、磁気メモリ素子MM2のデータの読み込み動作は、実施の形態1の磁気メモリ素子MM1の読み込み動作と同様にすることができる。すなわち、例えば電流経路CP2により示すように、磁化固定層MP1と下地層BF1との間に読み出し電流を流し、これらの間に流れる電流値により、抵抗値を検出する。
【0188】
<磁気メモリ素子の第1変形例>
図14に示す例では、磁気記録層MR1上にトンネルバリア層TB1を介して磁化固定層MP1が形成されているが、磁化固定層MP1上にトンネルバリア層TB1を介して磁気記録層MR1が形成されていてもよい。このような例を、
図17に示す。
図17は、実施の形態2の第1変形例の半導体装置の磁気メモリ素子を示す断面図である。
【0189】
図17に示すように、本第1変形例では、磁気メモリ素子MM2は、下地層BF1と、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、キャップ層CL1と、下部電極層BE1と、を有する。下地層BF1上に、磁化固定層MP1が形成されており、磁化固定層MP1上に、トンネルバリア層TB1が形成されている。トンネルバリア層TB1上に、磁気記録層MR1が形成されており、磁気記録層MR1上に、キャップ層CL1が形成されている。磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、MTJが形成されている。すなわち、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、トンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0190】
一方、本第1変形例では、磁気記録層MR1は、強磁性膜FM2からなり、磁化固定層MP1は、強磁性膜FM1からなる。すなわち、導電膜CF1上に、強磁性膜FM1が形成され、強磁性膜FM1上に、絶縁膜IF1が形成され、絶縁膜IF1上に、強磁性膜FM2が形成されている。したがって、強磁性膜FM1は、+Z軸方向に固定された磁化MG1を有する。一方、強磁性膜FM2は、+Z軸方向と−Z軸方向との間で反転可能な磁化MG2を有する。
【0191】
また、本第1変形例では、磁気メモリ素子MM2は、磁化固定層MP2を有する。また、下地層BF1の下には、磁化固定層MP2が形成されており、磁化固定層MP2の下には、下部電極層BE1が形成されている。磁化固定層MP2は、非磁性導電層としての下地層BF1を介して、磁化固定層MP1と磁気的に結合されている。そして、磁化固定層MP1と、下地層BF1と、磁化固定層MP2とにより、データ参照層が形成される。
【0192】
磁化固定層MP2は、強磁性膜FM3を含む。強磁性膜FM3は、垂直磁気異方性を有する。すなわち、強磁性膜FM3の磁化の向きは、強磁性膜FM3の膜厚方向に平行な方向である。
【0193】
強磁性膜FM3は、例えば、Fe(鉄)、Co(コバルト)およびNi(ニッケル)から選択される金属または二種以上の金属の合金からなる。また、この強磁性膜中に、Pt(白金)またはPd(パラジウム)を含ませてもよい。これにより、垂直磁気異方性を安定化することができる。
【0194】
さらに、強磁性膜FM3に、B、C、N、O、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、AuまたはSmなどの各種元素を添加することにより、磁気特性を調整することができる。
【0195】
強磁性膜FM3として、具体的には、Co、Co−Pt、Co−Pd、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−B、Co−Cr−Pt−BまたはCo−Cr−Ta−Bなどの材料からなる合金膜を用いることができる。あるいは、Co−V、Co−Mo、Co−W、Co−Ti、Co−Ru、Co−Rh、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Pt、Fe−Co−PdまたはSm−Coなどの材料からなる合金膜を用いることができる。
【0196】
また、強磁性膜FM3を上記材料からなる膜の積層膜としてもよい。例えば、Fe、CoおよびNiから選択される二種以上の金属膜の積層膜を用いてもよい。具体的には、強磁性膜として、Co/Ni、Co/Pd、Co/PtまたはFe/Auなどの積層膜を用いることができる。
【0197】
本第1変形例における強磁性膜FM1およびFM2も、実施の形態1の強磁性膜FM1およびFM2とそれぞれ同様にすることができる。したがって、本第1変形例でも、実施の形態1と同様に、強磁性膜FM1およびFM2の各々は、Co(コバルト)とFe(鉄)とB(ボロン)とを含有する。このようなCoとFeとBとを含有する強磁性膜が体心立方構造を有する場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0198】
本第1変形例における導電膜CF1も、実施の形態1の導電膜CF1と同様にすることができる。したがって、例えば、好適には、導電膜CF1は、金属窒化物、または、アモルファス状態の金属からなる。これにより、導電膜CF1が結晶化しにくくなるので、導電膜CF1上に形成される強磁性膜FM1が、導電膜CF1の結晶構造の影響を受けにくくなる。一方、強磁性膜FM1が、強磁性膜FM1上に形成され、MgOを含有する絶縁膜IF1の結晶構造の影響を受けやすくなる。
【0199】
<磁気メモリ素子の第2変形例>
図14に示す例では、磁気記録層MR1は、下地層BF1の上面全面の上に形成されているが、磁気記録層MR1は、下地層BF1の上面のうち一部の上に形成されており、磁気記録層MR1が、平面視において、下地層BF1に内包されるように、形成されていてもよい。このような例を、
図18に示す。
図18は、実施の形態2の第2変形例の半導体装置の磁気メモリ素子を示す断面図である。
【0200】
図18に示すように、下地層BF1すなわち導電膜CF1が、平面視において、互いに隣り合う領域CF1aと、領域CF1bと、を含むものとする。すなわち、導電膜CF1が、領域CF1aと、平面視において、領域CF1aの一方の側に位置する領域CF1bと、を含むものとする。このとき、磁気記録層MR1すなわち強磁性膜FM1は、導電膜CF1の領域CF1a上に、形成されている。また、下部電極層BE1すなわち導電膜CF3は、導電膜CF1の領域CF1bの下に、形成されている。
【0201】
これにより、後述する
図25を用いて説明するように、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をエッチングしてパターニングする際に、導電膜CF1をエッチングストッパとして機能させることができる。そのため、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をオーバーエッチングすることにより、例えば絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物を除去することができる。したがって、絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物により、磁化固定層MP1と磁気記録層MR1との間が短絡することを、防止することができる。
【0202】
また、
図18に示すように、下地層BF1の領域CF1bの下に下部電極層BE1が設けられている場合、下地層BF1を配線として用いることができる。このような場合、下地層BF1に含まれる導電膜CF1の膜厚を厚くすることにより、配線としての下地層BF1の電気抵抗を低減することができ、データの書き込み、および、データの読み込みの際に、電流を流すことにより発生する発熱量を、低減することができる。
【0203】
後述する
図25を用いて説明するように、導電膜CF1として、TaNからなる導電膜を用いることにより、導電膜CF1の膜厚を20nm程度まで増加させても、磁気記録層MR1に含まれる強磁性膜FM1における垂直磁化の保持力を十分確保することができる。そのため、磁気メモリ素子MM2のMR比を高くすることができる。
【0204】
<半導体装置の製造方法>
次いで、
図19〜
図24を参照しながら、本実施の形態2の半導体装置の製造方法を説明する。
図19は、実施の形態2の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図20〜
図24は、実施の形態2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図20〜
図24のうち、
図20は、選択用トランジスタTR1およびTR2ならびに配線M1〜M4の形成工程を示す断面図であり、
図21〜
図24は、磁気メモリ素子MM2の形成工程を示す断面図である。
【0205】
まず、
図5のステップS11と同様の工程を行って、
図20に示すように、半導体基板SBの主面に、2つの選択用トランジスタTR1およびTR2を形成し、さらに、選択用トランジスタTR1およびTR2の上方に、配線M1〜M4を形成する(
図19のステップS21)。
【0206】
次いで、ビア部V4が埋め込まれた層間絶縁膜IL9上に、磁気メモリ素子MM2を形成する。
【0207】
まず、
図21に示すように、導電膜CF3を形成する(
図19のステップS22)。このステップS22では、ビア部V4が埋め込まれた層間絶縁膜IL9上に、下部電極層BE1用の導電膜CF3を形成する。導電膜CF3として、例えばTa(タンタル)、TaN(窒化タンタル)、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Ti(チタン)、またはTiN(窒化チタン)などの導電膜を用いることができる。あるいは、導電膜CF3として、TaとRuとTaとの積層膜を用いてもよい。
【0208】
次いで、
図5のステップS13と同様の工程を行って、
図21に示すように、導電膜CF3上に、導電膜CF1を形成する(
図19のステップS23)。
【0209】
次いで、
図5のステップS14と同様の工程を行って、
図22に示すように、導電膜CF1の表面を改質する(
図19のステップS24)。このうち、第2改質工程では、導電膜CF1の表面を、例えばAr
+(アルゴンイオン)などのイオンビームIB1でエッチングする。このとき、ステップS14の第1変形例と同様の工程を、ステップS24の第1変形例として行ってもよく、またはステップS14の第2変形例と同様の工程を、ステップS24の第2変形例として行ってもよい。
【0210】
次いで、
図5のステップS15と同様の工程を行って、
図23に示すように、導電膜CF1上に、強磁性膜FM1を形成する(
図19のステップS25)。次いで、
図5のステップS16と同様の工程を行って、
図23に示すように、強磁性膜FM1上に、絶縁膜IF1を形成する(
図19のステップS26)。次いで、
図5のステップS17と同様の工程を行って、
図23に示すように、絶縁膜IF1上に、強磁性膜FM2を形成する(
図19のステップS27)。次いで、
図5のステップS18と同様の工程を行って、
図23に示すように、強磁性膜FM2上に、導電膜CF2を形成する(
図19のステップS28)。
【0211】
次いで、
図5のステップS19と同様の工程を行って、
図24に示すように、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1、導電膜CF1および導電膜CF3を、パターニングする(
図19のステップS29)。このとき、パターニングされた導電膜CF3上からなる下部電極層BE1と、下部電極層BE1上に残された部分の導電膜CF1からなる下地層BF1と、下地層BF1上に残された部分の強磁性膜FM1からなる磁気記録層MR1と、が形成される。また、磁気記録層MR1上に残された部分の絶縁膜IF1からなるトンネルバリア層TB1と、トンネルバリア層TB1上に残された部分の強磁性膜FM2からなる磁化固定層MP1と、磁化固定層MP1上に残された部分の導電膜CF2からなるキャップ層CL1と、が形成される。また、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、磁気メモリ素子MM2が形成される。
【0212】
次いで、
図5のステップS20と同様の工程を行って、
図14に示すように、層間絶縁膜IL10およびプラグPG2を形成する(
図19のステップS30)。
【0213】
その後、層間絶縁膜IL10上に、配線(図示せず)を形成する。以上の工程により、
図14に示すように、選択用トランジスタTR1およびTR2と、配線M1〜M4と、磁気メモリ素子MM2と、を形成することができる。なお、本実施の形態2の半導体装置の製造工程も、実施の形態1の半導体装置の製造工程と同様に、絶縁膜IF1が形成された後、強磁性膜FM1および絶縁膜IF1の結晶化のための熱処理をする工程を有する。
【0214】
<導電膜の材料および組成比とMR比との関係について>
本実施の形態2においても、導電膜CF1の材料および組成比とMR比との関係については、実施の形態1において
図12および
図13を用いて説明した導電膜CF1の材料および組成比とMR比との関係と同様にすることができる。
【0215】
<下地層の膜厚と磁気記録層の垂直磁化との関係について>
図25は、下地層の膜厚と磁気記録層の垂直磁化との関係を示すグラフである。
図25に示すグラフの横軸は、下地層BF1に含まれる導電膜CF1の膜厚を示し、
図25に示すグラフの縦軸は、磁気記録層MR1に含まれる強磁性膜FM1の垂直磁化の保持力を示す。また、
図25では、Taからなる導電膜CF1が用いられた場合を、比較例3として示し、TaNからなる導電膜CF1が用いられた場合を、実施例3として示す。
【0216】
図25に示すように、比較例3では、導電膜CF1の膜厚が0.8〜1.5nmの範囲内のときに、強磁性膜FM1が垂直磁化を示した。一方、実施例3では、導電膜CF1の膜厚の範囲が1〜20nmの範囲内のときに、強磁性膜FM1が垂直磁化を示した。すなわち、実施例3では、比較例3に比べ、導電膜CF1がより広い範囲の膜厚を有する場合でも、強磁性膜FM1が垂直磁化を有していた。よって、TaNからなる導電膜CF1上に、CoFeB膜からなる強磁性膜FM1を形成した場合、Taからなる導電膜CF1上に、CoFeB膜からなる強磁性膜FM1を形成した場合に比べ、導電膜CF1がより広い範囲の膜厚を有する場合でも、強磁性膜FM1が垂直磁化を有していた。
【0217】
したがって、
図18を用いて説明した実施の形態2の第2変形例において、導電膜CF1が例えばTaNなどの金属窒化物からなる場合には、導電膜CF1が例えばTaなどの金属からなる場合に比べ、導電膜CF1の膜厚を例えば5〜20nm程度に厚くすることができる。これにより、
図19のステップS29において、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をエッチングしてパターニングする際に、導電膜CF1をエッチングストッパとして機能させることができる。そのため、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をオーバーエッチングすることにより、例えば絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物を除去することができる。したがって、絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物により、磁化固定層MP1と磁気記録層MR1との間が短絡することを、防止することができる。
【0218】
また、
図18に示すように、下地層BF1の領域CF1bの下に下部電極層BE1が設けられている場合、下地層BF1を配線として用いることができる。このような場合、下地層BF1に含まれる導電膜CF1の膜厚を厚くすることにより、配線としての下地層BF1の電気抵抗を低減することができ、データの書き込み、および、データの読み込みの際に、電流を流すことにより発生する発熱量を、低減することができる。
【0219】
また、下地層BF1に含まれる導電膜CF1として、TaNからなる導電膜を用いることにより、導電膜CF1の膜厚を20nm程度まで増加させても、磁気記録層MR1に含まれる強磁性膜FM1における垂直磁化の保持力を十分確保することができる。そのため、磁気メモリ素子MM2のMR比を高くすることができる。
【0220】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と同様に、半導体基板の上方に形成された導電膜CF1と、導電膜CF1上に形成された強磁性膜FM1と、強磁性膜FM1上に形成された絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1上に形成された強磁性膜FM2と、を有する。強磁性膜FM1と絶縁膜IF1と強磁性膜FM2とによりトンネル磁気抵抗効果素子としての磁気メモリ素子MM2が形成される。導電膜CF1は、金属窒化物からなるか、または、Xeを含有する金属からなり、強磁性膜FM1は、CoとFeとBとを含有し、絶縁膜IF1は、MgOを含有する。
【0221】
これにより、本実施の形態2の半導体装置においても、実施の形態1の半導体装置と同様に、強磁性膜FM1が体心立方構造を有することができ、強磁性膜FM1と絶縁膜IF1と強磁性膜FM2とにより形成されるトンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。そのため、磁気メモリ素子MM2を備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0222】
一方、本実施の形態2の半導体装置では、キャップ層CL1と下部電極層BE1との間で書き込み電流を流すときに、磁気記録層MR1および下地層BF1のうち、磁気記録層MR1に、より大きな電流を流す必要がないので、実施の形態1に比べ、下地層BF1の膜厚を厚くすることができる。このような場合、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をエッチングする際に、導電膜CF1をエッチングストッパとして機能させることができる。そのため、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をオーバーエッチングすることにより、例えば絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物を除去することができる。したがって、絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物により、磁化固定層MP1と磁気記録層MR1との間が短絡することを、防止することができる。
【0223】
(実施の形態3)
実施の形態1では、磁壁移動型MRAMへの適用例について説明した。それに対して、実施の形態3では、スピンホール効果(Spin Hall Effect:SHE)を用いたMRAM(SHE−MRAM)への適用例について説明する。
【0224】
なお、本実施の形態3における半導体装置のうち磁気メモリ素子MM3よりも下の部分については、
図2を用いて説明した実施の形態1における半導体装置のうち磁気メモリ素子MM1よりも下の部分と同様にすることができる。また、本実施の形態3における選択用トランジスタについても、
図2を用いて説明した実施の形態1における選択用トランジスタと同様にすることができる。
【0225】
<磁気メモリ素子>
図26は、実施の形態3の半導体装置の磁気メモリ素子を示す断面図である。
図27は、実施の形態3の磁気メモリ素子における強磁性膜の磁化の向きを示す図である。
【0226】
図26に示すように、磁気メモリ素子MM3は、下地層BF1と、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、キャップ層CL1と、を有する。半導体基板SBの上方に下地層BF1が形成されており、下地層BF1上に、磁気記録層MR1が形成されており、磁気記録層MR1上に、トンネルバリア層TB1が形成されている。トンネルバリア層TB1上に、磁化固定層MP1が形成されており、磁化固定層MP1上に、キャップ層CL1が形成されている。
【0227】
下地層BF1のうち、中央部の一方の側に位置する部分の下には、磁化固定層HL1が形成されており、下地層BF1のうち、中央部の他方の側に位置する部分の下には、磁化固定層HL2が形成されている。磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、によりMTJが形成されている。すなわち、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1と、によりトンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0228】
磁気記録層MR1は、強磁性膜FM1からなる。磁気記録層MR1により、データ記憶層が形成される。一方、磁化固定層MP1は、強磁性膜FM2からなる。磁化固定層MP1により、データ参照層が形成される。あるいは、強磁性膜FM2は、複数の強磁性層からなるものでもよい。
【0229】
強磁性膜FM1およびFM2の各々は、垂直磁気異方性を有する。すなわち、強磁性膜FM1およびFM2の各々の磁化の向きは、強磁性膜FM1およびFM2の各々の膜厚方向に平行な方向であり、強磁性膜FM1およびFM2の各々の上面に垂直な方向である。
【0230】
本実施の形態3における強磁性膜FM1およびFM2も、実施の形態1の強磁性膜FM1およびFM2とそれぞれ同様にすることができる。したがって、本実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、強磁性膜FM1およびFM2の各々は、Co(コバルト)とFe(鉄)とB(ボロン)とを含有する。このようなCoとFeとBとを含有する強磁性膜が体心立方構造を有する場合、トンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。
【0231】
なお、磁化固定層MP1が、強磁性膜FM2以外の強磁性膜を含む場合、磁化固定層MP1に含まれる強磁性膜のうち、強磁性膜FM2以外の強磁性膜は、実施の形態1と同様にすることができる。
【0232】
トンネルバリア層TB1は、絶縁膜IF1からなる。本実施の形態3における絶縁膜IF1も、実施の形態1の絶縁膜IF1と同様にすることができ、好適には、絶縁膜IF1は、MgO(酸化マグネシウム)を含有する。
【0233】
本実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、半導体基板SBの上方に、導電膜CF1が形成され、導電膜CF1上に、強磁性膜FM1が形成され、強磁性膜FM1上に、絶縁膜IF1が形成され、絶縁膜IF1上に、強磁性膜FM2が形成されている。そして、強磁性膜FM1と、絶縁膜IF1と、強磁性膜FM2と、によりトンネル磁気抵抗効果素子が形成されている。
【0234】
ここで、
図26に示すように、平面視において、下地層BF1すなわち導電膜CF1の中央部を、領域CF1aとする。また、平面視において、領域CF1aの一方の側に位置する部分の導電膜CF1を、領域CF1bとし、平面視において、領域CF1aを挟んで領域CF1bと反対側に位置する部分の導電膜CF1を、領域CF1cとする。すなわち、導電膜CF1は、領域CF1aと、領域CF1bと、領域CF1cと、を含む。
【0235】
このとき、磁気記録層MR1すなわち強磁性膜FM1は、領域CF1a上に、形成されている。また、磁化固定層HL1は、導電膜CF1の領域CF1bの下に、形成されており、磁化固定層HL2は、導電膜CF1の領域CF1cの下に、形成されている。
【0236】
前述したように、本実施の形態3における磁気記録層MR1は、領域CF1a上には形成されているが、領域CF1b上、および、領域CF1c上には形成されていない点で、実施の形態1における強磁性膜と異なる。すなわち、本実施の形態3の半導体装置は、磁壁移動型MRAMではないため、平面視において、磁化固定層HL1上、および、磁化固定層HL2上に、強磁性膜FM1が形成される必要がない。
【0237】
一方、本実施の形態3における下地層BF1に含まれる導電膜CF1は、平面視において、磁気記録層MR1と重なる部分である領域CF1aに加え、平面視において、磁化固定層HL1と重なる部分である領域CF1bと、平面視において、磁化固定層HL2と重なる部分である領域CF1cと、を含む。すなわち、本実施の形態3では、導電膜CF1は、平面視において、磁化固定層HL1と重なる部分である領域CF1bから、平面視において、磁気記録層MR1と重なる部分である領域CF1aを通って、平面視において、磁化固定層HL2と重なる部分である領域CF1cにかけて、一体的に形成されている。このような下地層BF1に含まれる導電膜CF1に流す電流の向きを変えることにより、下地層BF1に含まれる導電膜CF1中にスピンホール効果により発生するスピン流の向きを反転させることができるので、磁気記録層MR1に含まれる強磁性膜FM1の垂直磁化を上下反転させることができる。
【0238】
また、本実施の形態3では、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をエッチングしてパターニングする際に、例えば5〜20nm程度の膜を有する導電膜CF1を、エッチングストッパとして機能させることができる。そのため、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をオーバーエッチングすることにより、例えば絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物を除去することができる。したがって、絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物により、磁化固定層MP1と磁気記録層MR1との間が短絡することを、防止することができる。
【0239】
<磁気メモリ素子の動作>
図27に示すように、例えば、磁化固定層MP1すなわち強磁性膜FM2は、+Z軸方向に固定された磁化MG1を有する。一方、磁気記録層MR1すなわち強磁性膜FM1は、+Z軸方向と−Z軸方向との間で反転可能な磁化MG2を有する。
【0240】
次いで、磁気メモリ素子MM3におけるデータの書き込み動作について説明する。本実施の形態3でも、実施の形態1と同様に、磁化固定層MP1の磁化MG1が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁気記録層MR1の磁化MG2が、−Z軸方向に向いた磁化である状態をデータ「1」とする。また、磁化固定層MP1の磁化MG1が、+Z軸方向に固定された磁化であり、磁気記録層MR1の磁化MG2が、+Z軸方向に向いた磁化である状態をデータ「0」とする。なお、磁化方向とデータの値の対応は逆でもよい。
【0241】
データ「0」が書き込まれている状態の磁気メモリ素子MM3に、データ「1」を書き込む場合は、書き込み電流を、例えば電流経路CP1により示すように、磁化固定層HL1から下地層BF1を介して磁化固定層HL2の方向へ流す。この書き込み電流に垂直な方向に、スピンホール効果によりスピン流が発生する。そして、発生したスピン流により、磁気記録層MR1の磁化MG2が上下反転する。
【0242】
データ「1」が書き込まれている状態の磁気メモリ素子MM3に、データ「0」を書き込む場合は、書き込み電流を、例えば電流経路CP1により示すように、磁化固定層HL2から下地層BF1を介して磁化固定層HL1の方向へ流す。この書き込み電流に垂直な方向に、スピンホール効果によりスピン流が発生する。そして、発生したスピン流により、磁気記録層MR1の磁化MG2が上下反転する。
【0243】
なお、下地層BF1に磁界が印加されていない場合でもスピンホール効果を発生させることができる。したがって、磁化固定層HL1およびHL2が設けられていなくてもよく、導電膜CF1の領域CF1bがビア部V41と直接接続されていてもよく、導電膜CF1の領域CF1cがビア部V42と直接接続されていてもよい。このとき、導電膜CF1の領域CF1bと、導電膜CF1の領域CF1cとの間で、導電膜CF1の領域CF1aを介して書き込み電流が流れることにより、強磁性膜FM1の磁化MG2の方向が変化することになる。
【0244】
また、磁気メモリ素子MM3のデータの読み込み動作は、実施の形態1の磁気メモリ素子MM1の読み込み動作と同様にすることができる。すなわち、例えば電流経路CP2により示すように、磁化固定層MP1と下地層BF1との間に読み出し電流を流し、これらの間に流れる電流値により、抵抗値を検出する。
【0245】
<半導体装置の製造方法>
次いで、
図28を参照しながら、本実施の形態3の半導体装置の製造方法を説明する。
図28は、実施の形態3の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図28は、磁気メモリ素子MM3の形成工程を示す断面図である。
【0246】
まず、
図5のステップS11と同様の工程を行って、
図6に示したように、半導体基板SBの主面に、2つの選択用トランジスタTR1およびTR2を形成し、さらに、選択用トランジスタTR1およびTR2の上方に、配線M1〜M4を形成する。
【0247】
次いで、ビア部V4としてのビア部V41およびV42が埋め込まれた層間絶縁膜IL9上に、磁気メモリ素子MM3を形成する。
【0248】
まず、
図5のステップS12と同様の工程を行って、
図7に示したように、ビア部V4としてのビア部V41およびV42が埋め込まれた層間絶縁膜IL9上に、磁化固定層HL1およびHL2、ならびに、層間絶縁膜IL10を形成する。
【0249】
なお、前述したように、本実施の形態3では、磁化固定層HL1およびHL2を形成しなくてもよく、その場合、層間絶縁膜IL10も形成しなくてもよい。
【0250】
次いで、
図5のステップS13と同様の工程を行って、
図8に示したように、磁化固定層HL1およびHL2が埋め込まれた層間絶縁膜IL10上に、導電膜CF1を形成する。
【0251】
次いで、
図5のステップS14と同様の工程を行って、
図9に示したように、導電膜CF1の表面を改質する。このとき、ステップS14の工程に代え、ステップS14の第1変形例と同様の工程、または、ステップS14の第2変形例と同様の工程を、行ってもよい。
【0252】
次いで、
図5のステップS15と同様の工程を行って、
図10に示したように、導電膜CF1上に、強磁性膜FM1を形成する。次いで、
図5のステップS16と同様の工程を行って、
図10に示したように、強磁性膜FM1上に、絶縁膜IF1を形成する。次いで、
図5のステップS17と同様の工程を行って、
図10に示したように、絶縁膜IF1上に、強磁性膜FM2を形成する。次いで、
図5のステップS18と同様の工程を行って、
図10に示したように、強磁性膜FM1上に、導電膜CF2を形成する。
【0253】
次いで、
図5のステップS19に相当する工程を行って、
図10に示したように、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1および導電膜CF1を、パターニングする。
【0254】
このステップS19に相当する工程では、まず、導電膜CF2上に、酸化シリコン膜などの絶縁膜(図示せず)をCVD法により形成する。この絶縁膜を、パターニングすることにより、平面視において、導電膜CF1のうち、領域CF1a、CF1bおよびCF1cが残される領域に、その絶縁膜を残す。次いで、残された部分の絶縁膜(図示せず)をマスクとして用いて、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1および導電膜CF1をエッチングする。
【0255】
これにより、導電膜CF1のうち、領域CF1a、CF1bおよびCF1cが残される領域で、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1、強磁性膜FM1および導電膜CF1を残す。このとき、
図28に示すように、導電膜CF1の領域CF1a、導電膜CF1の領域CF1b、および、導電膜CF1の領域CF1cからなる下地層BF1が形成される。言い換えれば、導電膜CF1のうち、領域CF1aと、領域CF1aの一方の側に位置する領域CF1bと、領域CF1aを挟んで領域CF1bと反対側に位置する領域CF1cと、が残される。
【0256】
次いで、導電膜CF2上に形成され、領域CF1a上に残された部分の絶縁膜からなるハードマスク(図示せず)をマスクとして用いてエッチングを行い、導電膜CF1の領域CF1a上に位置する部分の導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1を残す。このとき、
図28に示すように、導電膜CF1の領域CF1a上に残された部分の強磁性膜FM1からなる磁気記録層MR1と、磁気記録層MR1上に残された部分の絶縁膜IF1からなるトンネルバリア層TB1と、トンネルバリア層TB1上に残された部分の強磁性膜FM2からなる磁化固定層MP1と、が形成される。また、磁化固定層MP1上に残された部分の導電膜CF2からなるキャップ層CL1が形成される。
【0257】
また、磁気記録層MR1と、トンネルバリア層TB1と、磁化固定層MP1とにより、磁気メモリ素子MM3が形成される。
【0258】
すなわち、このステップS19に相当する工程では、キャップ層CL1、磁化固定層MP1、トンネルバリア層TB1および磁気記録層MR1が、平面視において、下地層BF1に内包されるように、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をエッチングすることになる。
【0259】
次いで、
図5のステップS20と同様の工程を行って、
図26に示すように、層間絶縁膜IL11およびプラグPG2を形成する。
【0260】
その後、層間絶縁膜IL11上に、配線(図示せず)を形成する。以上の工程により、
図26に示すように、磁気メモリ素子MM3を形成することができる。なお、本実施の形態3の半導体装置の製造工程も、実施の形態1の半導体装置の製造工程と同様に、絶縁膜IF1が形成された後、強磁性膜FM1および絶縁膜IF1の結晶化のための熱処理をする工程を有する。
【0261】
<導電膜の材料および組成比とMR比との関係について>
本実施の形態3においても、導電膜CF1の材料および組成比と、MR比との関係については、実施の形態1において
図12および
図13を用いて説明した導電膜CF1の材料および組成比とMR比との関係と同様にすることができる。
【0262】
<導電膜の膜厚と強磁性膜の垂直磁化との関係について>
本実施の形態3においても、導電膜CF1の膜厚と強磁性膜FM1の垂直磁化との関係については、実施の形態2において
図25を用いて説明した導電膜CF1の膜厚と強磁性膜FM1の垂直磁化との関係と同様にすることができる。
【0263】
<本実施の形態の主要な特徴と効果>
本実施の形態3の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と同様に、半導体基板の上方に形成された導電膜CF1と、導電膜CF1上に形成された強磁性膜FM1と、強磁性膜FM1上に形成された絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1上に形成された強磁性膜FM2と、を有する。強磁性膜FM1と絶縁膜IF1と強磁性膜FM2とによりトンネル磁気抵抗効果素子としての磁気メモリ素子MM3が形成される。導電膜CF1は、金属窒化物からなるか、または、Xeを含有する金属からなり、強磁性膜FM1は、CoとFeとBとを含有し、絶縁膜IF1は、MgOを含有する。
【0264】
これにより、本実施の形態3の半導体装置においても、実施の形態1の半導体装置と同様に、強磁性膜FM1が体心立方構造を有することができ、強磁性膜FM1と絶縁膜IF1と強磁性膜FM2とにより形成されるトンネル磁気抵抗効果素子のMR比を高くすることができる。そのため、磁気メモリ素子MM3を備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0265】
一方、本実施の形態3の半導体装置では、書き込み電流を流すときに、磁気記録層MR1に電流を流す必要がないので、下地層BF1の膜厚を厚くすることができる。このような場合、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をエッチングする際に、導電膜CF1をエッチングストッパとして機能させることができる。そのため、導電膜CF2、強磁性膜FM2、絶縁膜IF1および強磁性膜FM1をオーバーエッチングすることにより、例えば絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物を除去することができる。したがって、絶縁膜IF1の側壁などに堆積された堆積物により、磁化固定層MP1と磁気記録層MR1との間が短絡することを、防止することができる。
【0266】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。