【実施例】
【0015】
図1において、Aは合成樹脂製の容器本体、Bは容器本体Aに装着された合成樹脂製のキャップである。
容器本体Aは、口部1を有する手指の力でスクイズして粘稠性の液体を押し出す弾性変形可能な容器であり、口部1の外周には、雄ネジ2が螺設されている。
【0016】
図2および3において、キャップBは、スリットバルブ付きキャップとして、容器本体Aの口部1に装着部により螺合されるキャップ基体Cと、キャップ基体CにヒンジEを介して一体成型された蓋体Dと、キャップ基体Cの開口部に取り付けられたスリットバルブFとから構成されている。
【0017】
キャップ基体Cは、容器本体Aの口部1を閉塞する上壁3と、上壁3の周縁から装着部として、装着筒4が垂設されている。
装着筒4の内周には、口部1の外周に螺設された雄ネジ2と螺合する雌ネジ5が螺設され、また、装着筒4の上部外周には、ヒンジEが取着されるとともに、ヒンジEと反対側に切欠凹部6が形成されている。
【0018】
上壁3の上面には、段部3aが周縁に形成されるとともに、容器本体Aの口部1内に連通し、開口部として、後述するスリットバルブFを取り付けるバルブ取付凹部7が内周に形成された開口筒8が立設されている。
さらに、開口筒8のバルブ取付凹部7に隣接してバルブ押え取付凹部9が形成されている。
【0019】
なお、本実施例では、
図1および2に示すように、開口筒8の中心軸は、キャップ基体Cの中心軸と同軸になっているが、開口筒8の中心軸は、キャップ本体Cの中心軸からずれた位置に立設されていても構わない。
さらに、開口筒8の外周には、後述する蓋体Dとの閉蓋状態を維持するために、係合突条8aが形成されている。
【0020】
スリットバルブFは、
図4に示すように、円筒状のバルブ側壁11と、バルブ側壁11の内周縁から連設され容器本体A内方に向けて曲率半径R1の部分球面をなす薄肉状のバルブ開閉膜12とが弾性を有する軟質合成樹脂材料、好ましくはシリコンゴムにより一体成形されている。
バルブ側壁11は、下方の保持部13が肉厚に形成され、キャップ基体Cの開口筒8内周のバルブ取付凹部7に取り付けられるようになっている。
【0021】
バルブ開閉膜12は、下面の周囲に環状の補強リブ14が形成され、補強リブ14内側近傍の4個所のスリット端部15aから部分球面の頂点であるスリット中心15bに向けて十字状に切り込まれた十字スリット15が形成されている。
バルブ側壁11とバルブ開閉膜12との接続部には、環状の肉溜まり16が形成されている。
バルブ開閉膜12は、容器本体A側の内圧が大気圧と等しいときに、バルブ開閉膜12自体の弾性力により
図4(b)に示すように、十字スリット15は閉じた状態にある。
さらに、スリットバルブFは、前述した開口筒8内周のバルブ取付凹部7に嵌挿された後、下方からバルブ押え28をバルブ押え取付凹部9に嵌着することにより開口筒8との間に挟まれた状態で固定されるようになっている。
【0022】
蓋体Dは、
図2に示すように、天板20と、天板20の周縁から垂設され、キャップ基体Cの上壁3の段部3aと同一端面形状を有する側周壁21とからなっており、側周壁21の下部外周は、ヒンジEによってキャップ基体Cの装着筒4と連結されている。
天板20の内面中央には、逆凸形状の押込み部22が形成され、キャップ基体Cに取り付けられたスリットバルブFのバルブ開閉膜12に当接するようになっている。
押込み部22は、
図1(b)に示すように、中心部分が曲率半径R2の球面23と、周辺部分が曲率半径R3の球面24との二つの球面で構成され、本実施例の場合、曲率半径R2は2mm、曲率半径R3は3.5mmとなっており、R2はR3よりも小さく設定されている。
【0023】
天板20の内面に形成された押込み部22の周囲には、前述した開口筒8外周の係合突条8aと係止する係止リング25が垂設されており、係止リング25内周には、係止突条25aが形成されている。
側周壁21のヒンジEと反対側の下端部には、円弧状の摘み部26が設けられている。
【0024】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のキャップBは、
図2に示すように、キャップ基体Cから蓋体Dを開蓋した状態で一体成形により作製される。
本実施例において、スリットバルブ付きキャップを組み立てるには、キャップ基体Cの開口筒8の内周に形成されたバルブ取付凹部7にスリットバルブFを嵌挿した後、バルブ押え28を同様に、バルブ押え取付凹部9に嵌着することにより、スリットバルブ付きキャップの組み立てが完了する。
【0025】
つぎに、容器本体Aにスリットバルブ付きキャップを装着するには、
図1に示すように、蓋体DをヒンジEの回りを反時計方向に回動して閉蓋し、キャップ基体Cの開口筒8外周の係合突条8aに蓋体D内面の係止リング25内周の係止突条25aが係止した状態を維持する。
容器本体Aに内容物を充填した後、容器本体Aの口部1にアルミニウム蒸着フィルムからなるシール30を貼着して封止した後、キャップ基体Cの装着部としての装着筒4を容器本体Aの口部1に螺合する。
なお、本実施例では、キャップBは、
図1〜3に示すように、キャップ基体Cと蓋体DとをヒンジEで連結してなるヒンジキャップとして具体化しているが、蓋体Dは、ヒンジを無くしてアンダーカット等で嵌合させた蓋体であっても構わない。
【0026】
本実施例のスリットバルブ付きキャップが装着されたスクイズ可能な容器を使用するには、
図1に示す状態から、キャップBを回して容器本体Aの口部1からキャップBを外し、口部1を封止しているシール30を取り除いた後、再度キャップBを口部1に螺合して装着する。
つぎに、キャップ基体Cの装着筒4外周に形成された切欠凹部6に指を当て、蓋体Dの摘み部26を持ち上げると、蓋体DがヒンジEの回りを時計方向に回動する。
蓋体Dがキャップ基体Cから少し持ち上がると、キャップ基体Cの開口筒8外周の係合突条8aに係止していた蓋体D内面の係止リング25内周の係止突条25aが外れ、それと同時に、スリットバルブFのバルブ開閉膜12に当接していた押込み部22も離れることにより、スリットバルブFのバルブ開閉膜12が押込み部22による押し開きから開放され、
図5(a)に示すように、十字スリット15が閉じた状態に戻る。
【0027】
この後、容器本体Aの口部1が下を向くように傾けて容器本体Aを手指の力でスクイズすることにより、容器本体A内の圧力が高まり、収容された内容物がバルブ開閉膜12の十字スリット15を押し開いて吐出することができ、手指の力を緩めると、大気圧によりバルブ開閉膜12が押し戻されて十字スリット15を閉じるようになる。
バルブ開閉膜12が押し戻された状態で、開口筒8を上向きにして手指を容器本体Aから離すと、大気圧により今度はバルブ開閉膜12を内側に押し開き、空気が容器本体A内に流入して、手指によりスクイズされ変形した容器本体の形状が元に戻る。
その際に、バルブ開閉膜12に内容物が付着して残留してしまう。
【0028】
つぎに、容器を使用した後、蓋体Dを閉蓋すると、
図5(b)に示すように、蓋体Dの内面に形成された押込み部22は、スリットバルブFのバルブ開閉膜12のスリット端部15aから中心側のみに当接することにより、スリット中心15b側に行くほど十字スリット15を押し開くようになる。
この時の押込み部22による最大押込み深さHは、スリット長Lが4.8mmで、肉厚が0.3mmである本実施例の場合、0.4〜0.6mmに設定されている。
このように、十字スリット15が押し開かれた状態にあると、バルブ開閉膜12に内容物が残留していても、十字スリット15の間に付着した内容物で癒着して、再度使用する際に十字スリット15が押し開きにくくなることを防止できる。
【0029】
さらに、従来技術のようにバルブ開閉膜12がスリット端部15aが押し開いた状態にあると、容器本体Aが倒れた際に、内容物がスリット端部15aから天板20の内面に流入し、次回の使用時に液だれを生じるおそれがあるが、本実施例の場合は、押込み部22の曲率半径
R3の球面
24がスリット端部15aを適度に押さえるので、内容物の流失を防止することができる。
また、従来技術では、スリット端部15aが大きく押し開かれた状態で長時間放置されると、バルブ開閉膜12に押し開かれたままの癖がついて、吐出後に変形した容器本体の形状が元に戻る際に内容物が付着していない個所から先に外気が容器内に流入するため、いわゆる、サクション・バック効果が弱くなるが、本実施例の場合は、スリット端部15aが大きく押し開かれないので、バルブ開閉膜12に曲がり癖がつくのを避けることができる。
【0030】
本実施例のスリットバルブFは、バルブ側壁11とバルブ開閉膜12との接続部に肉溜まり16が形成されており、スリットバルブFの成型にあたって、肉溜まり16が存在することにより流動性が良くなり、バルブ開閉膜12中央の膜厚が安定し、十字スリット15の押し広げを均等にできる。
また、バルブ側壁11は、下方の保持部13が肉厚に形成されていることで、スリットバルブFを開口筒8内周に取り付け時の寸法安定性が向上し、十字スリット15を押込み部22により押し開く際に、均等に押し開くことができ、不使用時の十字スリット15の不均一な癒着を防ぐことができ、使用時において、内容物が斜めに吐出されるという不都合を解消することができる。