特許第6345068号(P6345068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345068
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】スライディングノズル装置用上ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/50 20060101AFI20180611BHJP
   B22D 41/34 20060101ALI20180611BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B22D41/50 520
   B22D41/34 520
   B22D11/10 340D
   B22D11/10 320D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-203787(P2014-203787)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-68150(P2016-68150A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】八反田 浩勝
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−197237(JP,A)
【文献】 特開平11−207457(JP,A)
【文献】 特開昭54−024227(JP,A)
【文献】 実開昭55−098470(JP,U)
【文献】 特開2002−035926(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/136034(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10,41/34,41/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を収容する溶融金属容器の底部に設置されると共に、上プレートの空孔に該溶融金属を導入するための内孔を有するノズル本体と、
前記ノズル本体の下端外周に巻き付けられる鋼製のバンドと、
前記バンドに設けられ該バンドの半径方向外側に向かって突出すると共に、前記溶融金属容器に下方から当接することにより該溶融金属容器に対する該バンドの上方への移動を規制する外側突出部と、
前記バンドに設けられ該バンドの半径方向内側に向かって突出すると共に、前記ノズル本体に形成された凹部に係入されることにより該ノズル本体に対する該バンドの移動を規制する内側突出部と、
を備えるスライディングノズル装置用上ノズル。
【請求項2】
前記外側突出部は、前記バンドの周方向に並べられた少なくとも1個の突起よりなり、前記内側突出部は、該バンドの周方向に並べられた少なくとも1個の突起よりなる請求項1に記載のスライディングノズル装置用上ノズル。
【請求項3】
前記内側突出部は、前記バンドの周方向に円環状に連続して形成された円環状突出部よりなり、前記凹部は、前記ノズル本体の周方向に円環状に連続して形成された円環状凹部よりなる請求項1に記載のスライディングノズル装置用上ノズル。
【請求項4】
前記外側突出部及び/又は前記内側突出部は、前記バンドとの一体成形により形成されている請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のスライディングノズル装置用上ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼用の取鍋やダンディッシュ等の溶融金属容器の底部に設置され、スライディングノズル装置の上プレートの空孔に溶融金属を導入するスライディングノズル装置用上ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
スライディングノズル装置は、転炉から出鋼された溶鋼を受けて運搬したり、鋳型に注入したりする取鍋や、取鍋から溶鋼を受けて鋳型に注入するタンデイッシュ等の湯量調節装置として広く用いられている。例えば、図7は、特許文献1に開示されているスライディングノズル装置Bの断面図を示している。図7に示すように、スライディングノズル装置Bは、上ノズル51と、上ノズル51を下方から支える上プレート52と、上プレート52の下面に圧着すると共に摺動可能に取り付けられた下プレート53と、下プレート53の下方に取り付けられた図略の下ノズルと、下プレート53を水平方向に移動させる図略の駆動手段とを備えている。
【0003】
上ノズル51のノズル本体51a、上プレート52、下プレート53及び図略の下ノズルは、いずれも耐火物材料よりなる。上ノズル51は、溶融金属を収容する溶融金属容器の底部に設けられたノズル受けれんが61(マスれんが)の開口内に下方から挿入されている。上プレート52と下プレート53とは、溶融金属容器の外部の図略の機構により面圧が相互に加わる構成とされており、これにより上プレート52と下プレート53との圧着面からの溶鋼の漏れを防ぐことが可能となっている。
【0004】
上ノズル51のノズル本体51aの下端外周には、リング状を呈する鋼製のバンド51rが焼き嵌めされている。バンド51rの外周面には複数個の位置決め用の突起51pが溶接により取り付けられている。溶融金属容器の外壁である鉄皮62及び鉄皮62の内側の耐火物63には凹陥部64が形成されている。そして、上ノズル51がノズル受けれんが61の開口内に下方から挿入されて、突起51pが凹陥部64の上端に下方から当接している。これにより、溶融金属容器に対するバンド51rの上方への移動が規制されて、上ノズル51がノズル受けれんが61の中の一定の位置に保持されている。このような上ノズル51の保持状態において、上ノズル51のノズル本体51aとノズル受けれんが61とは、隙間S1に充填された耐火性モルタルにより接合されており、ノズル本体51aと上プレート52とは、隙間S2に充填された耐火性モルタルにより接合されている。
【0005】
高温の溶融金属が上ノズル51内を通過する際の急激な熱衝撃によって、ノズル本体51aには亀裂が発生しやすい。ノズル本体51aに焼き嵌めされたバンド51rは、ノズル本体51aの下端外周を補強して、ノズル本体51aに熱衝撃による亀裂が発生することを防止する効果を奏する。したがって、従来の他の上ノズルにおいても、ノズル本体の下端外周に鋼製のバンドが焼き嵌めされることがある。スライディングノズル装置Bの上ノズル51は、ノズル本体51aに焼き嵌めされるバンド51rに突起51pが設けられていることに技術的特徴を有している。仮に、バンド51rに突起51pが設けられていない場合には、次のような不具合が懸念される。
【0006】
バンド51rに突起51pが設けられていない場合には、上ノズル51をノズル受けれんが61の開口内に過剰に挿入してしまう状況が発生する。このとき、上ノズル51のノズル本体51aと上プレート52との間の隙間S2が増加することとなる。間隙S2の増加とともに間隙S2に充填される耐火性モルタルの厚みが増加し、しかも耐火性モルタルはれんがよりも耐食性が小さいために、厚さが増大した耐火性モルタルが早期に溶損して、ノズル本体51aと上プレート52との接合部における漏鋼などのトラブルが発生やすくなる。スライディングノズル装置Bは、上記の技術的特徴を有していることによって、このトラブルを防止する効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−207457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されているスライディングノズル装置Bにおいては、スライディングノズル装置Bの使用回数の増加に伴って、溶融金属容器内に露出したノズル受けれんが61や、上ノズル51のノズル本体51aとノズル受けれんが61との間の隙間S1に充填された耐火性モルタルが徐々に溶損する。そして、ノズル受けれんが61や耐火性モルタルの溶損が進行するにつれてノズル受けれんが61による上ノズル51の拘束力が低下する。このとき、上プレート52を介して下プレート53から上ノズル51に対してノズル本体51aを上方に押し上げる力が働いていたとしても、ノズル本体51aとバンド51rとにずれが発生しなければ、ノズル本体51aがノズル受けれんが61の中の一定の位置に保持される。
【0009】
しかし、高温の溶融金属が上ノズル51内を通過する際の熱によって、バンド51rが膨張して、バンド51rがノズル本体51aから緩む場合がある。バンド51rが緩んだ状態で、ノズル本体51aに上述した上方に押し上げられる力が働くと、ノズル本体51aとバンド51rとにずれが発生して、ノズル本体51aがノズル受けれんが61の開口内に過剰に挿入されてしまう虞がある。そして、ノズル本体51aの位置が上方にずれると、ノズル本体51aと上プレート52との間の隙間S2が増加して、耐火性モルタルが充填されていない新たな隙間が形成されることとなる。この新たに形成されたノズル本体51aと上プレート52との間の隙間により漏鋼の危険性が高まるため、たとえ上ノズル51の耐用期間内であったとしても早急に上ノズル51を交換する必要が生じ不経済であった。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、スライディングノズル装置の使用回数が増加する場合であっても、上ノズルが溶融金属容器に対して一定の位置に保持されるスライディングノズル装置用上ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、請求項1に係るスライディングノズル装置用上ノズルの発明の構成上の特徴は、溶融金属を収容する溶融金属容器の底部に設置されると共に、上プレートの空孔に該溶融金属を導入するための内孔を有するノズル本体と、前記ノズル本体の下端外周に巻き付けられる鋼製のバンドと、前記バンドに設けられ該バンドの半径方向外側に向かって突出すると共に、前記溶融金属容器に下方から当接することにより該溶融金属容器に対する該バンドの上方への移動を規制する外側突出部と、前記バンドに設けられ該バンドの半径方向内側に向かって突出すると共に、前記ノズル本体に形成された凹部に係入されることにより該ノズル本体に対する該バンドの移動を規制する内側突出部と、を備えることである。
【0012】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載のスライディングノズル装置用上ノズルにおいて、前記外側突出部は、前記バンドの周方向に並べられた少なくとも1個の突起よりなり、前記内側突出部は、該バンドの周方向に並べられた少なくとも1個の突起よりなることである。
【0013】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載のスライディングノズル装置用上ノズルにおいて、前記内側突出部は、前記バンドの周方向に円環状に連続して形成された円環状突出部よりなり、前記凹部は、前記ノズル本体の周方向に円環状に連続して形成された円環状凹部よりなることである。
【0014】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のスライディングノズル装置用上ノズルにおいて、前記外側突出部及び/又は前記内側突出部は、前記バンドとの一体成形により形成されていることである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係るスライディングノズル装置用上ノズルによれば、上ノズルのノズル本体の下端外周に鋼製のバンドが巻き付けられている。そして、バンドに設けられた外側突出部が溶融金属容器に下方から当接することにより溶融金属容器に対するバンドの上方への移動が規制される。また、バンドに設けられた内側突出部がノズル本体に形成された凹部に係入されることによりノズル本体に対するバンドの移動が規制される。
【0016】
このように、バンドに外側突出部と内側突出部とが設けられていることにより、バンドが熱膨張してバンドがノズル本体から緩む場合であっても、内側突出部が凹部から抜け出さない限りノズル本体に対してバンドがずれることがない。したがって、本発明によれば、スライディングノズル装置の使用回数の増加によりノズル本体の周囲の耐火物が溶損して、ノズル本体に作用する拘束力が低下した場合であっても、上ノズルを溶融金属容器に対して一定の位置に保持することができる。
【0017】
請求項2に係るスライディングノズル装置用上ノズルによれば、バンドに設けられた外側突出部及び内側突出部は、いずれもバンドの周方向に並べられた少なくとも1個の突起よりなる。ノズル本体を補強するためにノズル本体にリング状を呈する鋼製のバンドを焼き嵌めする場合、外側突出部及び内側突出部のうち、特に内側突出部については、バンドの焼き嵌めの障害となるため、焼き嵌めに先立ってバンドに設けておくことができない。また、外側突出部についても、焼き嵌め時の熱により変形する虞があるため、焼き嵌めに先立ってバンドに設けておかないことが望ましい。本発明のように、外側突出部及び内側突出部が突起よりなる場合には、バンドがノズル本体に焼き嵌めされた後で、溶接等により容易に外側突出部及び内側突出部をバンドに取り付けることができる。
【0018】
請求項3に係るスライディングノズル装置用上ノズルによれば、バンドに設けられた内側突出部は、円環状突出部よりなり、ノズル本体に形成された凹部は、円環状凹部よりなる。本発明によれば、ノズル本体の周方向にバンドの位置合わせを行う必要がないため、ノズル本体に対するバンドの取り付けが容易である。ノズル本体にバンドを巻き付ける前に円環状突出部をバンドに設けておく必要があるため、バンドの焼き嵌めは不可能である。このため、ノズル本体に対するバンドの取り付けは、例えば、リング状の周の一部が切断されたバンドをバンドの径を広げてノズル本体の外周に巻き付けた後に、バンドの端部同士を溶接することにより行うことができる。
【0019】
請求項4に係るスライディングノズル装置用上ノズルによれば、外側突出部及び/又は内側突出部は、バンドとの一体成形により形成されている。一体成形の方法としては、プレス加工や曲げ加工を用いることができる、本発明によれば、溶接によりバンドに外側突出部及び/又は内側突出部を取り付ける場合よりも、容易にバンドに外側突出部及び/又は内側突出部を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る上ノズルを備えるスライディングノズル装置の構造を模式的に説明する断面図である。
図2】第一実施形態に係る上ノズルの断面図である。
図3】第一実施形態に係る上ノズルの平面図である。
図4】第一実施形態に係る上ノズルの要部を拡大して説明する断面図である。
図5】第二実施形態に係る上ノズルの要部を拡大して説明する断面図である。
図6】第三実施形態に係る上ノズルの要部を拡大して説明する断面図である。
図7】従来のスライディングノズル装置の構造を模式的に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一実施形態>
図1〜4に基づき、本発明の第一実施形態に係る上ノズルを備えるスライディングノズル装置について説明する。図1に示すスライディングノズル装置Aは、溶融金属を収容する溶融金属容器の底部10の溶湯流出孔(後述する上ノズル1の内孔1h)から溶融金属を流出させる装置である。図1は、スライディングノズル装置Aにより溶融金属容器の底部10の溶湯流出孔が塞がれている状況を示している。スライディングノズル装置Aは、上ノズル1と、上ノズル1を下方から支える上プレート2と、上プレート2の下面に圧着すると共に摺動可能に取り付けられた下プレート3と、下プレート3の下方に取り付けられた下ノズル4と、下プレート3を水平方向に移動させる駆動手段5とを備えている。
【0022】
上ノズル1は、筒状を呈すると共に耐火物材料よりなるノズル本体1aを有している。ノズル本体1aの中心には、上下方向に貫通する内孔1hが形成されている。ノズル本体1aの外観形状は、上端から上下方向の中間部にかけて円錐台形状を呈しており、中間部から下端にかけて円柱状を呈している。ノズル本体1aの下端には、内孔1hを中心として下方に向けて突出する円錐台形状を呈する係合凸部が形成されている。上ノズル1は、溶融金属容器の底部10に設けられたノズル受けれんが11(マスれんが)の開口11h内に下方から挿入されている。開口11hの内空形状は、ノズル本体1aの外観形状に合わせて、上端から上下方向の中間部にかけて円錐台形状を呈しており、中間部から下端にかけて円柱状を呈している。上ノズル1の詳細構造については、図2〜4に基づいて、後ほど詳しく述べる。
【0023】
上プレート2は耐火物材料よりなり、水平方向に広がる面を持つ板状を呈している。上プレート2の中央部付近には、上下方向に貫通する空孔2hが形成されている。上プレート2の上面には、空孔2hを中心として下方に向けて凹設された円錐台形状を呈する係合凹部が形成されている。上プレート2の下面は、平坦面とされている。図1に示すように、上プレート2が上ノズル1を下方から支えている状態において、上ノズル1の内孔1hと上プレート2の空孔2hとが連通している。また、上ノズル1に形成されている係合凸部と上プレート2に形成されている係合凹部とが係合していることにより、上ノズル1と上プレート2とが水平方向にずれないようになっている。
【0024】
下プレート3は耐火物材料よりなり、水平方向に広がる面を持つ板状を呈している。下プレート3の中央部付近には、上下方向に貫通する空孔3hが形成されている。下プレート3の上面は、上プレート2の下面に圧着すると共に摺動可能な平坦面とされている。下プレート3の下面には、空孔2hを中心として下方に向けて突出する円錐台形状を呈する係合凸部が形成されている。上プレート2と下プレート3とは、溶融金属容器の外部の図略の機構により面圧が相互に加わる構成とされており、これにより上プレート2と下プレート3との圧着面からの溶鋼の漏れを防ぐことが可能となっている。
【0025】
下ノズル4は耐火物材料よりなり、筒状を呈している。下ノズル4の中心には、上下方向に貫通する内孔4hが形成されている。下ノズル4の上端には、内孔4hを中心として下方に向けて凹設された円錐台形状を呈する係合凹部が形成されている。図1に示すように、下ノズル4が下プレート3を下方から支えている状態において、下プレート3の空孔3hと下ノズル4の内孔4hとが連通している。また、下プレート3に形成されている係合凸部と下ノズル4に形成されている係合凹部とが係合していることにより、下プレート3と下ノズル4とが水平方向にずれないようになっている。
【0026】
駆動手段5は、空圧や油圧等により作動するシリンダ装置であり、下プレート3の摺動方向(図1における左右方向)に進退するロッド5aを備えている。ロッド5aの先端は、下プレート3の摺動方向の一端側(左端側)に連結されている。図1に示す状態から、駆動手段5を作動させて下プレート3を図1中の右方に水平移動させると、上ノズル1の内孔1hと、上プレート2の空孔2hと、下プレート3の空孔3hと、下ノズル4の内孔4hとが上下に一直線に並んで連通して、溶融金属容器内の溶融金属が下ノズル4から流出する。
【0027】
図2〜4に基づいて、上ノズル1の詳細構造について述べる。上ノズル1のノズル本体1aの下端外周には、ノズル本体1aの周方向に等間隔で並んだ4個の円形の凹部1bが形成されている。凹部1bの内径は、後述する内側突起1q(内側突出部)の外径よりもやや大きい径とされている。ノズル本体1aの下端外周には、4個の凹部1bを覆うようにリング状を呈する鋼製のバンド1rが焼き嵌めされている。バンド1rの各凹部1bに対応した位置には、後述する内側突起1qの外径よりも僅かに大きい径の丸穴が形成されている。
【0028】
バンド1rの外周面の各凹部1bに対応した位置には、バンド1rの周方向に等間隔で並んだ4個の位置決め用の外側突起1p(外側突出部)が溶接により取り付けられている。外側突起1pは鋼製の円柱状部材であり、バンド1rの外周面と外側突起1pの外周面とが突き合わされた状態でバンド1rの外周面に溶接されている。バンド1rの内周面の各凹部1bに対応した位置には、バンド1rの周方向に等間隔で並んだ4個のずれ防止用の内側突起1q(内側突出部)が溶接により取り付けられている。内側突起1qは鋼製の円柱状部材であり、バンド1rに形成された丸穴からノズル本体1aの凹部1bに挿入された状態で丸穴の口縁部に溶接されている。内側突起1qと凹部1bとの間の隙間には、耐火性モルタルが充填されている。
【0029】
溶融金属容器の外壁である鉄皮12には凹陥部12aが形成されている。そして、図2及び4に示すように、上ノズル1がノズル受けれんが11の開口11h内に下方から挿入されて、外側突起1pが凹陥部12aの上端に下方から当接している。これにより、溶融金属容器に対するバンド1rの上方への移動が規制されて、上ノズル1がノズル受けれんが11の中の一定の位置に保持されている。このような上ノズル1の保持状態において、図2に示すように、上ノズル1のノズル本体1aとノズル受けれんが11とは、隙間S1に充填された耐火性モルタルにより接合されており、ノズル本体1aと上プレート2とは、隙間S2に充填された耐火性モルタルにより接合されている。
【0030】
このような本実施形態の構成によれば、上ノズル1のノズル本体1aの下端外周に鋼製のバンド1rが巻き付けられている。そして、バンド1rに設けられた外側突起1pが溶融金属容器の外壁である鉄皮12に下方から当接することにより溶融金属容器に対するバンド1rの上方への移動が規制される。また、バンド1rに設けられた内側突起1qがノズル本体1aに形成された凹部1bに係入されることによりノズル本体1aに対するバンド1rの移動が規制される。
【0031】
このように、バンド1rに外側突起1pと内側突起1qとが設けられていることにより、バンド1rが熱膨張してバンド1rがノズル本体1aから緩む場合であっても、内側突起1qが凹部1bから抜け出さない限りノズル本体1aに対してバンド1rがずれることがない。したがって、本実施形態によれば、スライディングノズル装置Aの使用回数の増加によりノズル本体1aの周囲の耐火物(ノズル受けれんが11や、ノズル本体1aとノズル受けれんが11との間の隙間S1に充填された耐火性モルタル)が溶損して、ノズル本体1aに作用する拘束力が低下した場合であっても、上ノズル1を溶融金属容器に対して一定の位置に保持することができる。
【0032】
また、本実施形態の構成によれば、バンド1rに外側突起1p及び内側突起1qを取り付ける前に、ノズル本体1aに鋼製のバンド1rを焼き嵌めするため、バンド1rの焼き嵌め作業が容易である。また、バンド1rがノズル本体1aに焼き嵌めされた後で、溶接により容易に外側突起1p及び内側突起1qをバンド1rに取り付けることができる。
【0033】
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態における上ノズル1を上ノズル1Bに変更した実施形態である。図5は、第一実施形態の説明に用いた図4に対応する図であり、上ノズル1Bの要部を拡大して説明する断面図を示している。図4図5とを対比すると明らかなように、本実施形態における内側突起1Bq(内側突出部)は、第一実施形態における内側突起1qよりも上方に配置されている。この相違点を除けば、本実施形態における上ノズル1Bの基本構造は、第一実施形態における上ノズル1と同様であるため、基本構造の説明を省略する。
【0034】
図5に基づいて、上ノズル1Bの詳細構造について述べる。上ノズル1Bのノズル本体1Baの下端外周には、ノズル本体1Baの周方向に等間隔で並んだ4個の円形の凹部1Bbが形成されている。ノズル本体1Baの下端外周には、4個の凹部1Bbを覆うようにリング状を呈する鋼製のバンド1Brが焼き嵌めされている。バンド1Brの各凹部1Bbに対応した位置には丸穴が形成されている。ここで、凹部1Bbは、第一実施形態における凹部1bよりも上方に形成されている。凹部1Bbの凹設深さdは、第一実施形態における凹部1bの凹設深さdと同一である。ノズル本体1Baの凹部1Bbよりも下方の厚さt2は、第一実施形態における凹部1bよりも下方の厚さt1よりも厚い。
【0035】
バンド1Brの外周面の各凹部1Bbに対応した位置には、第一実施形態と同様の4個の位置決め用の外側突起1Bp(外側突出部)が溶接により取り付けられている。バンド1Brの内周面の各凹部1Bbに対応した位置には、第一実施形態と同様の4個のずれ防止用の内側突起1Bqが溶接により取り付けられている。ここで、内側突起1Bqは、第一実施形態における内側突起1qよりも上方に配置されている。内側突起1Bqと凹部1Bbとの間の隙間には、耐火性モルタルが充填されている。上ノズル1Bの保持状態については、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0036】
<第三実施形態>
本実施形態は、第一実施形態における上ノズル1を上ノズル1Cに変更した実施形態である。図6は、第一実施形態の説明に用いた図4に対応する図であり、上ノズル1Cの要部を拡大して説明する断面図を示している。第一実施形態における内側突起1qがバンド1rに後付けで溶接されているのに対して、本実施形態における円環状突出部1Cq(内側突出部)は、バンド1Crと一体に形成されている。この相違点を除けば、本実施形態における上ノズル1Cの基本構造は、第一実施形態における上ノズル1と同様であるため、基本構造の説明を省略する。
【0037】
図6に基づいて、上ノズル1Cの詳細構造について述べる。上ノズル1Cのノズル本体1Caの下端外周には、ノズル本体1Caの周方向に円環状に連続して形成された円環状凹部1Cbが形成されている。ノズル本体1Caの下端外周には、円環状凹部1Cbを覆うようにリング状を呈する鋼製のバンド1Crが巻き付けられている。ノズル本体1Caに巻き付ける前のバンド1Crはリング状の周の一部が切断されている。そして、バンド1Crは、バンド1Crの径を広げてノズル本体1Caの外周に巻き付けられた後に、バンド1Crの端部同士が溶接されることによりノズル本体1Caに固定される。
【0038】
バンド1Crの外周面には、第一実施形態と略同様の4個の位置決め用の外側突起1Cp(外側突出部)が溶接により取り付けられている。ノズル本体1Caに巻き付ける前のバンド1Crには、バンド1Crの半径方向内側に向かって突出すると共にバンド1Crの周方向に円環状に連続して形成された円環状突出部1Cqが形成されている。円環状突出部1Cqは、バンド1Crの端部同士が溶接されたときに、円環状凹部1Cbに係入可能な形状にプレス加工により形成されている。円環状突出部1Cqと円環状凹部1Cbとの間の隙間には、耐火性モルタルが充填されている。上ノズル1Cの保持状態については、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
このような本実施形態の構成によれば、バンド1Crに円環状突出部1Cqが形成されており、ノズル本体1Caに円環状凹部1Cbが形成されている。よって、ノズル本体1Caの周方向にバンド1Crの位置合わせを行う必要がないため、ノズル本体1Caに対するバンド1Crの取り付けが容易である。また、本実施形態の構成によれば、円環状突出部1Cqは、プレス加工によりバンド1Crと一体成形されている。よって、溶接によりバンド1Crに円環状突出部を取り付ける場合よりも、容易にバンド1Crに円環状突出部1Cqを形成することが可能である。その他の作用効果については、第一実施形態を参照できるため、説明を省略する。
【0040】
<その他の実施形態>
本発明のスライディングノズル装置用上ノズルは、上述した第一〜第三実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0041】
例えば、第一実施形態において、上ノズル1は、バンド1rの周方向に等間隔で並んだ4個の外側突起1pと、バンド1rの周方向の外側突起1pと同一位置に並んだ4個の内側突起1qとを有している。しかし、外側突起1p及び内側突起1qの個数は4個に限定されず、少なくとも1個あればよい。ただし、ノズル本体1aを安定して保持するためには、外側突起1p及び内側突起1qの個数は3個以上が望ましい。また、外側突起1p及び内側突起1qの個数が異なる個数であってもよい。また、外側突起1p及び内側突起1qがバンド1rの周方向の異なる位置に取り付けられていてもよい。また、各外側突起1pの取付間隔及び各内側突起1qの取付間隔は、等間隔に限定されない。また、外側突起1p及び内側突起1qの形状は、円柱状に限定されない。第二及び第三実施形態においてもこれと同様である。
【0042】
また、第一実施形態においては、バンド1rの高さ方向の中間部に外側突起1p及び内側突起1qが取り付けられているが、外側突起1p及び内側突起1qをバンド1rの上端又は下端に取り付けてもよい。第二及び第三実施形態においてもこれと同様である。
【0043】
また、第一実施形態においては、ノズル本体1aにリング状を呈する鋼製のバンド1rが焼き嵌めされているが、第三実施形態のように、周の一部が切断されたバンド1rをノズル本体1aの外周に巻き付けた後に、バンド1rの端部同士を溶接することもできる。この場合、ノズル本体1aにバンド1rを巻き付ける前に、バンド1rに外側突起1p及び内側突起1qを取り付けておくと作業性がよい。また、この場合、予めバンドに設けられる外側突起及び内側突起をバンドとの一体成形により形成することもできる。
【0044】
また、第三実施形態においては、バンド1Crの外周面に4個の外側突起1Cpが溶接により取り付けられているが、外側突起1Cpの代わりに、バンドの半径方向外側に向かって突出すると共にバンドの周方向に円環状に連続して形成された円環状突出部をバンドと一体に形成することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1、1B、1C ……… 上ノズル
1a、1Ba、1Ca ……… ノズル本体
1b、1Bb ……… 凹部
1Cb ……… 円環状凹部
1h、1Bh、1Ch ……… 内孔
1p、1Bp、1Cp ……… 外側突起(外側突出部)
1q、1Bq ……… 内側突起(内側突出部)
1Cq ……… 円環状突出部(内側突出部)
1r、1Br、1Cr ……… バンド
2 ……… 上プレート
2h ……… 空孔
10 ……… 底部
A ……… スライディングノズル装置
d ……… 凹部深さ
t1、t2 ……… 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7