(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、微弱電流測定器として、トランスインピーダンスアンプを利用することを検討した。
図1は、トランスインピーダンスアンプ800を備える電流測定装置900の回路図である。トランスインピーダンスアンプ800は、オペアンプ802と、オペアンプ802の反転入力(−)と出力の間に設けられた抵抗R
Fと、を備える。オペアンプ802の非反転入力端子(+)には所定電位V
REF(たとえば接地電圧)が入力される。キャパシタC
Fは、回路の安定性のために、抵抗R
Fと並列に接続される。
【0008】
DUT(被試験デバイス)810は、DNAやRNA(以下、DNAと総称する)などのサンプルと、サンプルを収容するチップを含む。チップには、サンプルから分離されたDNA分子が通過するナノ流路およびナノピラー、電極対などが形成される。ケーブル820は、DUT810とトランスインピーダンスアンプ800の間を接続する。
【0009】
このようなトランスインピーダンスアンプ800を用いて、トンネル電流を高精度に測定するためには、抵抗やオペアンプの入力オフセット等のばらつきをキャンセルするために、キャリブレーションが必要となる。
【0010】
また、被測定デバイスが正常にコンタクトしているかのチェック(コンタクトチェック)も重要であるが、被試験デバイス自体が初期状態においてハイインピーダンスである場合には、容易ではない。あるいは、MCBJ方式では、金属線が正確に破断されているか否かをチェックする機構も必要である。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、少ない付加回路で、コンタクトの良否や破断の良否、被試験デバイスの状態等を判定可能な測定装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、測定装置に関する。測定装置は、被試験デバイスが接続される第1端子および第2端子と、その入力端子が第1端子と接続され、電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、基準抵抗および電圧源を含む電圧発生器と、を備える。測定装置は、(i)被試験デバイスが発生する電流を測定するモードと、(ii)基準抵抗を介して、トランスインピーダンスアンプの入力端子に既知の電圧信号を印加し、トランスインピーダンスアンプを校正するモードと、(iii)基準抵抗を介さずに、第2端子に既知の電圧信号を印加する第1モードと、(iv)基準抵抗を介して、第2端子に既知の電圧信号を印加し、コンタクトをチェックする第2モードと、(v)基準抵抗を介してまたは介さずに、第2端子に既知の交流成分を含む電圧信号を印加する第3モードと、が切りかえ可能に構成される。
【0013】
この態様によると、被試験デバイスの種類に応じて、第1モード〜第3モードを選択することにより、異なる被試験デバイスに関して、適切にコンタクトの良否および/または被試験デバイスの状態を判定できる。
【0014】
本発明の別の態様もまた、測定装置である。この装置は、被試験デバイスが接続される第1端子および第2端子と、その入力端子が第1端子と接続され、電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、コンタクトチェック工程において、第1端子と第2端子の間に被試験デバイスが接続された状態で、第2端子に既知の電圧信号を印加する電圧発生器と、コンタクトチェック工程において、トランスインピーダンスアンプの出力電圧を測定し、トランスインピーダンスアンプから、トランスインピーダンスアンプの仮想接地電位が出力されるか否かにもとづき、コンタクトの良否を判定するコンタクト判定部と、を備える。
【0015】
被試験デバイスが抵抗性あるいは半導体である場合に、コンタクト不良であれば、トランスインピーダンスアンプからは、仮想接地電位(非反転入力に基準電圧が印加される場合、その電圧)が出力され、コンタクトが良好であれば、電圧信号に応じて電流が流れ、トランスインピーダンスアンプの出力が変化する。したがって、コンタクトの良否を判定できる。
【0016】
本発明のさらに別の態様もまた、測定装置である。この測定装置は、被試験デバイスが接続される第1端子および第2端子と、その入力端子が第1端子と接続され、電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、基準抵抗を含み、チェック工程において、第1端子と第2端子の間に被試験デバイスが接続された状態で、基準抵抗を介して、第2端子に既知の電圧信号を印加する電圧発生器と、チェック工程において、トランスインピーダンスアンプの出力電圧にもとづいて、コンタクトの良否および/または被試験デバイスの状態を判定する判定部と、を備える。
【0017】
第1端子と第2端子から被試験デバイス側を望んだインピーダンスが高い場合、トランスインピーダンスアンプからは、仮想接地電位(非反転入力に基準電圧が印加される場合、その電圧)が出力される。反対に、第1端子と第2端子から被試験デバイス側を望んだインピーダンスが低くなると、基準抵抗とトランスインピーダンスアンプにより反転増幅器が形成され、トランスインピーダンスアンプからは、既知の電圧信号に応じた電圧が出力される。この態様によれば、コンタクトの良否および/または被試験デバイスの状態を判定できる。
【0018】
被試験デバイスは、第1端子と第2端子を接続する導体および導体を破断する破断機構を含んでもよい。判定部は、導体の破断前の第1のチェック工程において、トランスインピーダンスアンプの出力電圧にもとづいて、コンタクトの良否を判定してもよい。
【0019】
被試験デバイスは、第1端子と第2端子を接続する導体および導体を破断する破断機構を含んでもよい。判定部は、破断機構による導体の破断処理の後の第2のチェック工程において、トランスインピーダンスアンプの出力電圧にもとづいて、導体の破断の良否を判定してもよい。
【0020】
ある態様の測定装置は、基準抵抗と並列に設けられたバイパススイッチをさらに備えてもよい。
バイパススイッチをオンすることにより、基準抵抗を介さずに、既知の電圧信号を第2端子に供給可能となる。したがって、被試験デバイスが抵抗性あるいは半導体である場合に、トランスインピーダンスアンプの仮想接地電位が出力されるか否かにもとづき、コンタクトの良否を判定できる。
【0021】
本発明のさらに別の態様もまた、測定装置である。この測定装置は、微小ギャップを有し、DC経路を有しない被試験デバイスが接続される第1端子および第2端子と、その入力端子が第1端子と接続され、電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、チェック工程において、第1端子と第2端子の間に被試験デバイスが接続された状態で、第2端子に既知の交流成分を含む電圧信号を印加する電圧発生器と、チェック工程において、トランスインピーダンスアンプの出力電圧にもとづいて、コンタクトの良否、および/または、微小ギャップの良否を判定する判定部と、を備える。
【0022】
微小ギャップは容量を形成し、この容量とトランスインピーダンスアンプによって、微分回路(ハイパスフィルタ)が形成される。コンタクトエラーが存在する場合、微小ギャップと直列な寄生容量として観測されるため、微分係数あるいはカットオフ周波数が変化する。あるいは微小ギャップに異常があれば、微小ギャップの容量が変化し、微分係数あるいはカットオフ周波数が変化する。この態様によれば、コンタクトの良否、および/または、微小ギャップの良否を判定できる。
【0023】
微小ギャップは、導体を破断機構により破断して形成されたものであってもよいし、予め形成された電極対であってもよい。
【0024】
微小ギャップの容量と、トランスインピーダンスアンプの帰還抵抗および演算増幅器が微分回路を形成してもよい。判定部は、微分回路のカットオフ周波数にもとづいてコンタクトの良否、および/または、微小ギャップの良否を判定してもよい。判定部は、微分回路の微分係数にもとづいてコンタクトの良否、および/または、微小ギャップの良否を判定してもよい。
【0025】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のある態様によれば、少ない付加回路で、コンタクトの良否や破断の良否、被試験デバイスの状態等を判定できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る測定装置100のブロック図である。測定装置100は、第1端子P1、第2端子P2、トランスインピーダンスアンプ110、電圧測定器114、データ処理部116、電圧発生器120を備える。
【0031】
第1端子P1と第2端子P2の間には、被試験デバイス102が接続される。通常のテスト工程において、測定装置100は、被試験デバイス102が発生する電流I
DUTを測定する。
【0032】
トランスインピーダンスアンプ110の入力端子は、第1端子P1と接続される。トランスインピーダンスアンプ110は、通常のテスト工程において、測定対象の電流I
DUTを電圧信号V
OUTに変換する。トランスインピーダンスアンプ110は、反転型の増幅回路112および帰還抵抗R
Fを含む。帰還抵抗R
Fと並列に、帰還キャパシタC
Fが設けられてもよいが、以下での理解の容易化、説明の簡潔化のため省略する。増幅回路112は、単一のオペアンプであってもよい。あるいは増幅回路112を、反転アンプと後段のバッファ(非反転アンプ)の2段構成としてもよい。
【0033】
電圧測定器114は、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTをデジタルデータD
OUTに変換する。たとえば電圧測定器114は、デジタイザあるいはA/Dコンバータであり得る。データ処理部116は、デジタルデータD
OUTに対して様々な信号処理を行なう。データ処理部116は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)、マイクロコントローラであってもよし、PCやワークステーションであってもよい。
【0034】
データ処理部116は、測定処理部118を含む。測定処理部118は、被試験デバイス102を検査・試験する通常のテスト工程において、デジタルデータD
OUTを処理する。本実施の形態において測定装置100は、塩基配列解析装置であり、被試験デバイス102は、ナノポアチップ(マイクロポアチップ等を含む)あるいはMCBJチップである。被試験デバイス102には、電極対が形成され、電極対の間を通過する塩基の種類に応じたトンネル電流I
DUTが観測される。測定処理部118は、トンネル電流I
DUTにもとづいたデジタルデータD
OUTを統計的に処理することにより、塩基の種類を特定する。
【0035】
測定装置100は、塩基配列を決定する通常のテスト工程に先立って、被試験デバイス102と第1端子P1、第2端子P2の間のコンタクトの良否を判定するコンタクトチェック工程を実行する。このコンタクトチェック工程(コンタクトチェック機能)のために、データ処理部116は、測定処理部118に加えて、判定処理部132を備える。判定処理部132は、電圧測定器114とともにコンタクト判定部130を構成する。
【0036】
コンタクトチェック工程において、第1端子P1と第2端子P2の間には被試験デバイス102が接続される。このコンタクトチェック工程において、電圧発生器120は、第2端子P2に既知の電圧信号V
TESTを印加する。
【0037】
電圧発生器120は、D/Aコンバータ122とコントローラ124を含む。コントローラ124はコンタクトチェック工程において、電圧信号V
TESTを指示するデジタル値D
TESTをD/Aコンバータ122に出力する。コントローラ124は、データ処理部116の内部に構成されてもよい。
【0038】
コンタクト判定部130は、コンタクトチェック工程において、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTを測定し、トランスインピーダンスアンプ110から、(i)トランスインピーダンスアンプ110の仮想接地電位V
REFが出力されるか、(ii)既知の電圧信号V
TESTに応答して、何らかの異なる電圧が出力されるか、にもとづき、コンタクトの良否を判定する。前者(i)の場合、コンタクト不良であり、後者(ii)の場合、コンタクトが正常と判定される。判定処理部132は、出力電圧V
OUTに応じたデジタル値D
OUTが、仮想接地電圧V
REFに応じた値D
REFと実質的に一致するか否かを判定してもよい。
【0039】
測定処理部118や判定処理部132をはじめとする機能ブロックは、ソフトウェアプログラムとハードウェアの組み合わせにより構成してもよいし、ハードウェアのみで構成してもよい。
【0040】
以上が測定装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
被試験デバイス102が抵抗性あるいは半導体である場合を考える。コンタクト不良であれば、トランスインピーダンスアンプ110からは、仮想接地電位(非反転入力に基準電圧が印加される場合、その電圧)V
REFが出力される。反対に、コンタクトが良好であれば、電圧信号V
OUTが被試験デバイス102の電極対に印加され、それに応じて電流I
OUTが流れ、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTが、仮想接地電圧V
REFから変化する。
したがって、コンタクト判定部130によって、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTが、仮想接地電圧V
REFの近傍を維持するか、それから乖離するかを判定することで、コンタクトの良否を判定することができる。
【0041】
ここで、電圧測定器114およびデータ処理部116は、通常のテスト工程で必要なハードウェア資源であり、電圧発生器120についても同様である。したがって、この態様によれば、データ処理部116に、判定処理部132の機能を追加することにより、コンタクトの良否を判定することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、被試験デバイス102のコンタクトの良否や、被試験デバイス102の状態を判定可能な測定装置100aを説明する。
図3は、第2の実施の形態に係る測定装置100aのブロック図である。
【0043】
第2の実施の形態において電圧発生器120aは、D/Aコンバータ122、コントローラ124に加えてさらに基準抵抗126を備え、電圧発生器120aは、チェック工程において基準抵抗126を介して既知の電圧信号V
TESTを第2端子P2に印加可能となっている。
【0044】
判定部140は、チェック工程において、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTにもとづいて、コンタクトの良否および/または被試験デバイス102の状態を判定する。具体的には判定処理部142は、チェック工程において取得されたデジタルデータD
OUTにもとづいて、コンタクトの良否および/または被試験デバイス102の状態を判定する。
【0045】
以上が測定装置100aの構成である。続いてその動作を説明する。
【0046】
第1端子P1と第2端子P2から被試験デバイス102側を望んだインピーダンスZが高い場合、トランスインピーダンスアンプ110からは、仮想接地電位(非反転入力に基準電圧が印加される場合、その電圧)V
REFが出力される。
【0047】
反対に、第1端子P1と第2端子P2から被試験デバイス102側を望んだインピーダンスZが低くなると、基準抵抗126とトランスインピーダンスアンプ110により反転増幅器が形成され、トランスインピーダンスアンプ110からは、既知の電圧信号V
TESTに応じた電圧V
OUTが出力される。
基準抵抗126の抵抗値をR
REF、第1端子P1と第2端子P2間の被試験デバイス102を含むインピーダンスをR
DUTとするとき、式(1)を得る。
V
OUT=−R
F/(R
REF+R
DUT)×V
TEST …(1)
【0048】
この測定装置100aによれば、出力電圧V
OUTにもとづいて、第1端子P1と第2端子P2の間のインピーダンスZが高い状態と、低い状態を判定することができる。
【0049】
たとえば、被試験デバイス102の内部のインピーダンスが低い場合に、V
OUT≒V
REFであったとすれば、コンタクト不良と判定することができる。反対に、式(1)に示すように、電圧信号V
TESTに依存した電圧V
OUTが観測された場合、判定処理部142は、コンタクトが正常であると判定することができる。
【0050】
さらには、判定処理部142は、式(1)からR
DUTを計算してもよい。
【0051】
正常な被試験デバイス102のインピーダンスR
DUTの取るべき範囲がR
MIN〜R
MAXであるとする。この場合、出力電圧V
OUTが取るべき範囲は、V
MIN〜V
MAXであり、式(1)から導かれる。
V
MAX=−R
F/(R
REF+R
MIN)×V
TEST
V
MIN=−R
F/(R
REF+R
MAX)×V
TEST
【0052】
したがって判定部140は、出力電圧V
OUTが、V
MIN〜V
MAXに含まれるか否かによって、被試験デバイス102の良否を判定してもよい。
【0053】
第2の実施の形態について、塩基配列解析装置を例に詳しく説明する。
被試験デバイス102は、MCBJデバイスであってもよい。被試験デバイス102は、第1端子P1と第2端子P2を接続する導体104および導体104を破断する破断機構106を含む。
【0054】
導体104の破断前において、導体104のインピーダンスR
DUTは実質的にゼロである。判定部140は、導体104の破断前の第1のチェック工程において、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTを測定する。コンタクトが正常であれば、式(2)の出力電圧V
OUTが観測され、異常であれば、仮想接地電位V
REFが観測される。
V
OUT=−R
F/R
REF×V
TEST …(2)
したがって破断前の第1のチェック工程によって、コンタクトの良否が判定できる。
【0055】
測定装置100aは、第1のチェック工程によりコンタクトの正常が確認されると、破断機構106に導体104を指示する。そして破断機構106による導体104の破断処理の後に判定部140は、第2のチェック工程を行なう。具体的には、判定部140はトランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTにもとづいて、導体104の破断の良否を判定する。
【0056】
破断が失敗していれば、R
DUT≒0であるから、式(2)の出力電圧V
OUTが観測される。反対に破断が成功すれば、被試験デバイス102は第1端子P1と第2端子P2の間に、導体104のギャップに応じた非ゼロのインピーダンス(抵抗値)R
DUTを有することとなり、したがって出力電圧V
OUTは破断前に比べて低下する。
【0057】
このように測定装置100aによれば、第2のチェック工程において、導体104の破断の良否を判定することができる。
【0058】
電圧発生器120aは、基準抵抗126と並列に設けられたバイパススイッチ128をさらに備える。コントローラ124は、バイパススイッチ128のオン、オフを制御する。
バイパススイッチ128をオンすることにより、基準抵抗126を介さずに、既知の電圧信号V
TESTを第2端子P2に供給可能となる。つまり、
図2に示す第1の実施の形態に係る測定装置100として動作させることが可能となり、したがって、被試験デバイス102が抵抗性あるいは半導体である場合のコンタクトの良否を判定できる。
【0059】
(第3の実施の形態)
図4は、第3の実施の形態に係る測定装置100bのブロック図である。この測定装置100bは、微小ギャップ108を有する被試験デバイス102を対象として、コンタクトの良否および/または、微小ギャップの良否を判定する機能を備える。微小ギャップ108は、
図3に示したMCBJチップのように導体104を破断機構106により破断して形成されたものであってもよい。あるいは微小ギャップ108は、ナノポアチップのように、予め形成された電極対であってもよい。
【0060】
被試験デバイス102は、第1端子P1と第2端子P2の間に、微小ギャップ108を有し、DC経路を有しない。DC経路を有しないとは、第1端子P1と第2端子P2間の直流インピーダンスが十分に大きいことを意味する。
【0061】
電圧発生器120bの構成は、
図3の電圧発生器120aと同様である。電圧発生器120bは、チェック工程において、第1端子P1と第2端子P2の間に被試験デバイス102が接続された状態で、第2端子P2に既知の交流成分を含む電圧信号V
ACを印加する。具体的には、コントローラ124は、電圧信号V
ACを指示するデジタル値D
ACを生成する。後述のようにバイパススイッチ128は、オンであってもオフであってもよい。
【0062】
判定部150は、電圧測定器114および判定処理部152を含み、チェック工程において、トランスインピーダンスアンプ110の出力電圧V
OUTにもとづいて、コンタクトの良否、および/または、微小ギャップ108の良否を判定する。
【0063】
以上が測定装置100bの構成である。続いてその動作を説明する。
はじめにバイパススイッチ128がオンの状態を考える。微小ギャップ108は容量C
Sを形成し、この容量C
Sとトランスインピーダンスアンプ110によって、微分回路(ハイパスフィルタ)が形成され、出力電圧V
OUTは式(3)で与えられる。
V
OUT=−C
S・R
F×dV
AC/dt …(3)
【0064】
この微分回路のカットオフ周波数f
Cは、式(4)で与えられる。
f
C=1/(2πR
FC
S) …(4)
【0065】
コンタクトエラーが存在する場合、微小ギャップ108と直列な寄生容量C
ERRとして観測されるため、微分係数(−C
S・R
F)あるいはカットオフ周波数f
Cが変化する。また微小ギャップ108に異常があれば、微小ギャップ108の容量C
Sが変化し、微分係数あるいはカットオフ周波数f
Cが変化する。
【0066】
このように判定部150によれば、出力電圧V
OUTにもとづいて微分回路のカットオフ周波数f
Cの変動を監視することにより、コンタクトの良否、および/または、微小ギャップの良否を判定できる。
【0067】
カットオフ周波数f
Cの変動は、以下の方法により検出可能である。
1. 電圧発生器120bは、電圧信号V
ACの周波数を連続的、あるいは離散的にスイープし、判定部150は各周波数ごとの出力電圧V
OUTを測定し、周波数特性からカットオフ周波数f
Cを取得してもよい。
【0068】
2. 電圧発生器120bは、所定の単一(もしくは複数の)周波数を含む電圧信号V
ACを生成してもよい。判定部150は、その出力電圧V
OUTに含まれるその所定周波数成分の振幅の変動にもとづいて、カットオフ周波数fcの変動を検出してもよい。
【0069】
3. 電圧発生器120bは、複数の周波数を含むマルチトーン信号V
ACを生成してもよい。判定部150は、その結果得られる出力電圧V
OUTの波形を測定してもよい。そして判定部150は、出力電圧V
OUTの波形をFFT(高速フーリエ変換)することで周波数スペクトルデータに変換し、カットオフ周波数f
Cを取得してもよい。
【0070】
4. 電圧発生器120bは、ステップ波形あるいはインパルス波形の電圧信号V
ACを出力してもよい。判定部150は、その結果観測される出力電圧V
OUTの波形、もしくはそのスペクトルから、カットオフ周波数f
Cを取得してもよい。
【0071】
続いてバイパススイッチ128がオフの状態を考える。この場合、容量C
Sと直列に基準抵抗126が接続される。電圧発生器120bは、f
2=1/(2πR
REFC
S)より高い所定の周波数を有する電圧信号V
ACを生成する。f
2より高い周波数において、電圧信号V
ACと出力電圧V
OUTの関係は式(5)で与えられる。
V
OUT=−R
F/R
REF×V
AC …(5)
【0072】
コンタクトエラーが存在する場合、基準抵抗126と直列な寄生抵抗R
ERRが挿入されることとなり、出力電圧V
OUTは、式(6)で与えられる。
V
OUT=−R
F/(R
REF+R
ERR)×V
AC …(5)
つまりコンタクトエラーが存在すると、測定される出力電圧V
OUTの振幅が小さくなる。
【0073】
このように、バイパススイッチ128をオフした状態では、f
2=1/(2πR
REFC
S)より高い所定の周波数を有する電圧信号V
ACを用いることで、コンタクトの良否を判定できる。
【0074】
(第4の実施の形態)
図5は、第4の実施の形態に係る測定装置100cのブロック図である。この測定装置100cは、
図2、
図3、
図4の測定装置100の組み合わせである。測定装置100cは、
図4の測定装置100bに加えて、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3をさらに備える。またバイパススイッチ128を、第1スイッチSW1とも称する。
【0075】
第2スイッチSW2は、第1端子P1と第2端子P2の間に設けられる。第3スイッチSW3は、D/Aコンバータ122の出力とトランスインピーダンスアンプ110の出力の間に設けられる。
【0076】
さらに測定装置100cは、第4スイッチSW4、校正器160を備える。校正器160は、校正された高精度な電圧・電流計である。第4スイッチSW4は、D/Aコンバータ122の出力と校正器160の間に設けられる。なお校正器160は、必要に応じて測定装置100cに着脱可能であってもよく、この場合、第4スイッチSW4は省略してもよい。
【0077】
以上が測定装置100cの構成である。続いてその動作を説明する。
【0078】
測定装置100cは、スイッチSW1〜SW4の状態に応じて、複数のモードが選択可能である。
【0079】
(通常測定モード)
SW1=ON、SW2〜SW4=OFF
被試験デバイス102が生成する電流I
DUTを測定することができる。
【0080】
また上記通常測定モードに加えて、第1〜第3の実施の形態に係る測定装置100に対応する第1〜第3モードで動作させることができる。
【0081】
(第1モード)
SW1=ON,SW2〜SW4=OFF
このモードによれば、
図2の第1の実施の形態で説明したコンタクトチェックを行なうことができる。
【0082】
(第2モード)
SW1〜SW4=OFF
このモードによれば、
図3の第2の実施の形態で説明したコンタクトチェックおよび/または、被試験デバイス102の状態の判定を行なうことができる。
【0083】
(第3モード)
SW1=ON or OFF、SW2〜SW4=OFF
このモードによれば、
図4の第3の実施の形態で説明したコンタクトチェックおよび/または、被試験デバイス102の状態の判定を行なうことができる。
【0084】
さらに測定装置100cは、以下のモードで動作可能である。
【0085】
(第4モード) D/Aコンバータ校正
SW4=ON、SW1〜SW3=OFF
このモードでは、D/Aコンバータ122の出力電圧V
TEST(V
AC)が校正器160により測定される。コントローラ124は、校正器160を利用してD/Aコンバータ122の入出力特性を測定し、その結果を保持する。通常測定モード、あるいはその他のモードでは、測定した入出力特性を用いて、デジタル値D
TESTあるいはD
ACを補正する。
【0086】
(第5モード) 電圧測定器校正
SW3=ON、SW1,SW2,SW4=OFF
第4モードによりD/Aコンバータ122を校正した後に、第5モードが実行される。第5モードにおいて、コントローラ124は、校正された電圧測定器114にデジタル値D
TESTを与え、電圧信号V
TESTを発生し、電圧測定器114によりD/Aコンバータ122の出力を測定する。コントローラ124は、デジタル値D
TESTと電圧測定器114の出力D
OUTの関係にもとづいて、電圧測定器114を校正する。校正から得られたパラメータはデータ処理部116に与えられる。データ処理部116は、このパラメータを用いて電圧測定器114の出力D
OUTを補正する。
【0087】
(第6モード) トランスインピーダンスアンプ校正
SW2=ON,SW1,SW3,SW4=OFF
このモードでは、電圧発生器120cは、基準抵抗126を介して既知の電圧信号V
TESTをトランスインピーダンスアンプ110に入力する。トランスインピーダンスアンプ110と基準抵抗126により、反転増幅器が形成される。電圧信号V
TESTと出力電圧V
OUTの関係により、トランスインピーダンスアンプ110のゲイン、オフセットが測定される。具体的にはコントローラ124は、電圧信号V
TESTの元となったデジタル値D
TESTと、電圧測定器114により測定されたデジタル値D
OUTにもとづき、ゲイン、オフセットを取得し、補正のためのパラメータを保持する。データ処理部116は、このパラメータを用いて、電圧測定器114の出力D
OUTから、正しい電流量I
DUTを演算する。
【0088】
このように、
図5の測定装置100cによれば、さまざまな種類の被試験デバイス102のチェックが可能であるとともに、測定装置100c自身を校正することが可能となる。
【0089】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0090】
(用途)
最後に、測定装置100の用途について説明する。実施の形態に係る測定装置100は、塩基配列解析装置(DNAシーケンサあるいはRNAシーケンサ)300に用いることができる。
図6は、測定装置100cを備える塩基配列解析装置300のブロック図である。ナノポアチップ302は、上述の被試験デバイス102に対応する。なお
図6のチップは模式図であり、各部材のサイズは実際のそれとは異なることに留意されたい。
【0091】
ナノポアチップ302は、電極対310、ナノポア312、電気泳動用電極対314および図示しないナノ流路およびナノピラーなどを備えたチップである。ナノ流路をDNAサンプルが通過することにより、1分子のDNAが分離、抽出される。このDNA分子がナノピラーを通過すると、DNA分子が直線化される。
【0092】
測定装置100cは、トランスインピーダンスアンプ110、電圧測定器114、データ処理部116、電圧発生器120に加えて、駆動アンプ316をさらに備える。電気泳動用電極対314および駆動アンプ316は、DNA分子204の位置を制御する位置制御装置320を形成する。位置制御装置320は、DNA分子に電界を印加することにより、DNA分子を移動させ、ナノポア312に形成された電極対310の間を通過させる。
【0093】
電極対310の間には、そのとき通過するDNA分子の塩基の種類に応じたトンネル電流I
DUTが流れる。測定装置100は、このトンネル電流(電流信号)I
DUTにもとづいて塩基の種類を特定する。
【0094】
この塩基配列解析装置300によれば、トンネル電流I
DUTの測定に先立ち、(i)ナノポアチップ302のコンタクトの良否、(ii)微小ギャップ108である電極対310の良否などを判定することができる。
【0095】
図6では、ゲーティングナノポア方式のシーケンサを説明したが、測定装置100はMCBJ方式のシーケンサにも利用可能である。この場合、ナノポアチップ302に代えて、MCBJチップが使用される。MCBJチップには、ナノポア312に代えて、金線などの導体104と、導体104を破断するための破断機構106などが集積化される。
【0096】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。