(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリビニルアルコール樹脂フィルムに二色性染料が吸着されてなる染料系偏光板に関し、簡易的に波長調整を可能とするだけでなく、優れた偏光性能および優れた耐久性、例えば、耐光性を有する高性能な偏光素子、または、偏光板を提供し、かつ、それらの製造方法を提供することにある。さらなる目的はカラー液晶プロジェクターの3原色に対応した、明るさと偏光性能、耐久性及び耐光性のいずれもが良好である高性能な偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、「(1)二色性染料が吸着されて延伸されてなるポリビニルアルコール樹脂フィルムよりなる偏光素子であって、0.65重量部の該偏光素子を熱水(90乃至100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時、該水溶液のpHが5.9乃至9.0を示すことを特徴とする偏光素子。
(2)二色性染料がアゾ系化合物であることを特徴とする(1)に記載の偏光素子。
(3)ホウ酸含有量が、5乃至28重量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の偏光素子。
(4)アゾ系化合物が、遊離酸として、式(1)で表される二色性染料、もしくはその塩であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の偏光素子。
【化1】
(式中、Aは置換基を有するフェニル基またはナフチル基を示し、R
1乃至R
6は各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示し、Xは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基を示し、m、nはそれぞれ独立に0または1を示す。)
(5)Xが式(2)で表されることを特徴とする(4)に記載の偏光素子。
【化2】
(式中、R
7及びR
8は各々独立に水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基又は置換アミノ基を示す。)
(6)Aがカルボニル基を有するフェニル基であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の偏光素子。
(7)Aがヒドロキシル基を有するフェニル基であることを特徴とする(4)又は(5)に記載の偏光素子。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の偏光素子の少なくとも片面に支持体フィルムを設けてなる偏光板。
(9)無機基板に(1)に記載の偏光素子または(8)に記載の偏光板が積層されたことを特徴とする無機基板付偏光板。
(10)液晶プロジェクターに用いられる(1)乃至(7)のいずれか1項に記載の偏光素子または(8)〜(9)のいずれかに記載の偏光板。
(11)(1)乃至(7)、(10)のいずれか1項に記載の偏光素子が搭載されたプロジェクター。
(12)(8)乃至(10)のいずれか1項に記載の偏光板が搭載されたプロジェクター。
(13)アゾ系化合物である二色性染料が吸着されて延伸されてなるポリビニルアルコール樹脂フィルムよりなる偏光素子の製造方法であって、pHが7.5乃至12である水溶液で処理されてなる該製造方法。
(14)アゾ系化合物である二色性染料が吸着されて延伸されてなるポリビニルアルコール樹脂フィルムよりなる偏光素子の製造方法であって、延伸処理を行なった後、pHが7.5乃至12である水溶液へ浸漬させ、直ちに乾燥処理を行うことを特徴とする該製造方法。」に、関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偏光素子およびこれを用いた偏光板は、簡易的に波長調整が可能であり、高い偏光度を有しながら、耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明を達成しうるポリビニルアルコール樹脂フィルムについて説明する。偏光素子を構成するポリビニルアルコール樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造することができる。ポリビニルアルコール樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類又は不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%が好ましく、95モル%以上がより好ましい。このポリビニルアルコール樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。またポリビニルアルコール樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましい。
【0010】
かかるポリビニルアルコール樹脂を製膜したものが、原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール樹脂フィルムを製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。この場合、ポリビニルアルコール樹脂は可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールなどを含有することができる。可塑剤量は5〜20重量%が好ましく、8〜15重量%がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0011】
前記ポリビニルアルコール樹脂フィルムには、まず膨潤工程が施される。膨潤工程とは20〜50℃の溶液にポリビニルアルコール樹脂フィルムを30秒〜10分間浸漬させることによって行われる。溶液は水が好ましい。偏光素子を製造する時間を短縮する場合には、染料の染色処理時にも膨潤するので膨潤工程を省略することもできる。
【0012】
膨潤工程の後に、染色工程が施される。本発明では、式(1)で表される二色性染料を染色工程でポリビニルアルコール樹脂フィルムに吸着させることができる。染色工程は、染料をポリビニルアルコール樹脂フィルムに吸着させる方法であれば、特に限定されないが、例えば、染色工程はポリビニルアルコール樹脂フィルムを二色性染料を含有した溶液に浸漬させることによって行われる。この工程での溶液温度は、5〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましく、35〜50℃が特に好ましい。溶液に浸漬する時間は適度に調節できるが、30秒〜20分で調節するのが好ましく、1〜10分がより好ましい。染色方法としては、該溶液に浸漬することが好ましいが、ポリビニルアルコール樹脂フィルムに該溶液を塗布することによって行うことも出来る。
【0013】
二色性染料を含有した溶液は、染色助剤として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含有することが出来る。それらの含有量は、染料の染色性による時間、温度によって任意の濃度で調整できるが、それぞれの含有量としては、0〜5重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。
【0014】
本発明では、例えば非特許文献1に示されるような化合物、特に、アゾ系化合物を好適に使用することができる。特に、二色性の高いものが好ましい。このような二色性が高い染料としては、例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.モルダント.イエロー26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、特開昭60−156759号、特開昭63−189803号、特開2001−033627、特開2001−056412、特開2001−027708、特開2002−296417、特開2003−215338、国際公開番号WO2004/092282、国際公開番号WO2007/138980、国際公開番号WO2007/145210、国際公開番号WO2007/148757、国際公開番号WO2009/154055、国際公開番号WO2009/142193、特願2011−023747、特願2011−023748、特開平11−218611、特開平11−218610、特許公報4662853号、特許公報4825135号に記載された染料等が挙げられる。ただし、アゾ系染料はこれらに限定されず公知の二色性染料を用いることが出来る。より好ましい染料としては、アゾ系二色性染料が、遊離酸として、式(1)で表される二色性染料、もしくはその塩であることが良く、そういった染料として特開昭63−189803号、特許公報4825135号、国際公開番号WO2007/148757、国際公開番号WO2009/154055、特願2011−023747、特願2011−023748に記載される染料がより好ましい染料である。これらに示された二色性染料以外にも、必要に応じて、他の有機染料を併用させることが出来る。その配合割合は特に限定されず、光源、色相などの要望に応じて、配合量を任意に設定できる。以上の染料を用いることにより、本発明の偏光素子は作製される。
【0015】
【化3】
(式中、Aは置換基を有するフェニル基またはナフチル基を示し、R
1乃至R
6は各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示し、Xは置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェニルアゾ基を示し、m, nはそれぞれ独立に0または1を示す。)
【0016】
特に好ましい染料としては、特許公報4825135号の式(2)、式(3)、特願2011−023747の実施例1、国際公開番号WO2007/148757の式(2)乃至式(18)などに例示されるような染料であり、本願の式(1)におけるXが式(3)で示されるものが好ましく、特に、式(3)のR
9が水素原子、メチル基、メトキシ基であるときが好ましい。他の好ましい染料としては、特許公報4825135号の式(6)、国際公開番号WO2009/154055の式(24)、式(25)などに例示されるような染料であり、本願式(1)におけるXが式(4)で示されるものが特に好ましい。他の好ましい染料としては、WO2007/138980の化合物例(1)乃至化合物(6)、特開昭63−189803号の実施例(1)乃至実施例(19)に例示される染料であり、Aがカルボニル基を有するフェニル基、Aがヒドロキシル基を有するフェニル基、もしくは、Aがカルボニル基およびヒドロキシル基の両方を有する染料が特に好ましい。
【0017】
【化4】
(式中、R
9は水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基又は置換アミノ基を示す。)
【0018】
【化5】
(式中、R
10及びR
11は各々独立にスルホ基、アミノ基を示す。)
【0019】
これらに示された染料以外にも、必要に応じて、他の有機染料を併用させることが出来る。目的とする偏光素子が、中性色の偏光素子、液晶プロジェクター用カラー偏光素子、あるいはその他のカラー偏光素子であるかによって、それぞれ配合する有機染料の種類は異なる。その配合割合は特に限定されず、光源、色相などの要望に応じて、配合量を任意に設定できる。
【0020】
二色性染料は、遊離酸の形で、あるいはその塩の形で存在しうる。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩が挙げられる。偏光膜用の基材に染色する場合にはナトリウム、カリウム又はアンモニウムの塩であることが好ましい。塩化した化合物の塩は、カップリング反応後、鉱酸の添加により遊離酸の形で単離する事ができ、これから水又は酸性化した水による洗浄により無機塩を除去する事が出来る。次に、この様にして得られる低い塩含有率を有する酸型染料は、水性媒体中で所望の無機又は有機の塩基により中和することで対応する塩の溶液とすることが出来る。あるいは、カップリング反応後の塩析時に例えば塩化ナトリウムなどを用いてナトリウム塩とすることもでき、例えば塩化カリウムを用いてカリウム塩とすることもでき、このようにして所望の塩とすることができる。また、硫酸銅等で処理して銅錯塩化合物とすることもできる。
【0021】
染色工程後、次の工程に入る前に洗浄工程(以降洗浄工程1という)を行うことが出来る。洗浄工程1とは、染色工程でポリビニルアルコール樹脂フィルムの表面に付着した染料溶媒を洗浄する工程である。洗浄工程1を行うことによって、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。洗浄工程1では、一般的には水が用いられる。洗浄方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、該溶液をポリビニルアルコール樹脂フィルムに塗布することによって洗浄することも出来る。洗浄の時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒である。洗浄工程1での溶媒の温度は、親水性高分子が溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5〜40℃で洗浄処理される。
【0022】
染色工程又は洗浄工程1の後、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行うことが出来る。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられるが、好ましくはホウ酸が用いられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行う。その際の溶媒としては、水が好ましいが限定されるものではない。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程での溶媒中の架橋剤及び/又は耐水化剤の含有濃度は、ホウ酸を例にして示すと溶媒に対して濃度0.1〜6.0重量%が好ましく、1.0〜4.0重量%がより好ましい。この工程での溶媒温度は、5〜70℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂フィルムに架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、該溶液をポリビニルアルコール樹脂フィルムに塗布又は塗工してもよい。この工程での処理時間は30秒〜6分が好ましく、1〜5分がより好ましい。ただし、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させることが必須でなく、時間を短縮したい場合や、架橋処理又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理工程を省略してもよい。
【0023】
染色工程、洗浄工程1、または架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行った後に、延伸工程を行う。延伸工程とは、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを1軸に延伸する工程である。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のどちらでもよい。
【0024】
乾式延伸法の場合、または延伸加熱媒体が空気媒体の場合には、空気媒体の温度は常温〜180℃で延伸するのが好ましい。また、湿度は20〜95%RHの雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。延伸工程は1段で延伸することもできるが、2段以上の多段延伸により行うことも出来る。
【0025】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で延伸する。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中に浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中で延伸を行う。架橋剤はホウ酸が好ましい。延伸工程での架橋剤及び/又は耐水化剤の濃度は、例えば、0.5〜15重量%が好ましく、2.0〜8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は2〜8倍が好ましく、5〜7倍がより好ましい。延伸温度は40〜60℃で処理することが好ましく、45〜58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒〜20分であるが、2〜5分がより好ましい。湿式延伸工程は1段で延伸することができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0026】
延伸工程を行った後には、フィルム表面に架橋剤及び/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以降洗浄工程2という)を行う。洗浄時間は1秒〜5分、より好ましくは5秒乃至60秒、より好ましくは10秒乃至30秒が好ましい。洗浄方法は洗浄溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール樹脂フィルムに塗布又は塗工によって洗浄することができる。1段で洗浄処理することもできるし、2段以上の多段処理をすることもできる。洗浄工程の溶液温度は、特に限定されないが通常5〜50℃、好ましくは10〜40℃である。
【0027】
本発明では、染色工程、または、延伸処理後の洗浄工程(洗浄工程2)の段階で二色性染料を含有したポリビニルアルコール樹脂フィルムを、塩基性水溶液によって処理することを必要とする。延伸された偏光素子を処理するだけでなく、偏光素子中の染料が処理されていることが重要であって、その指標として偏光素子を溶解させた時の水溶液のpHが5.9以上であることが必要とされる。好ましくは5.9以上9.0、より好ましくは5.9乃至8.5、さらに好ましくは6.0乃至7.0であることが良い。偏光素子を溶解させた時の水溶液のpHとは、0.65重量部の偏光素子を90℃乃至100℃の純水に30分乃至60分の間、攪拌しながら浸漬し、偏光素子が溶解、または偏光素子が溶解しない場合には大いに過膨潤させた状態である水溶液を、25℃にした時の水溶液のpHを示す。pHは一般的に市販されているpHメーターを用いて測定することが出来る。
【0028】
そういった偏光素子は、染色工程、または、延伸処理後の洗浄工程(洗浄工程2)の段階で二色性染料を含有したポリビニルアルコール樹脂フィルムを、塩基性水溶液によって処理することによって得られる。処理する際の塩基性水溶液のpHは7.5乃至12であることが良く、より好ましくは7.5乃至11.5、さらに好ましくは8.0乃至10.5の範囲であることが良い。処理するpHが7.5よりも低い場合には、耐久性が向上しない、もしくは、耐久性試験によっては劣化が促進される場合があるため好ましくない。また、処理するpHが12より高い場合には、得られる偏光素子の偏光特性が低下するばかりか、乾燥後の偏光素子の柔軟性がなくなり硬化してヒビ割れなどの現象が発生してしまう現象が発生するため好ましくない。
【0029】
pHを7.5乃至12に調整する塩基性物質としては、特に限定されず、水溶液、もしくは、溶液の状態で塩基性を示すことが出来るものであれば任意に用いることが出来る。塩基性を示す物質は1種ずつ用いても良いが、2種以上を混合して用いても良い。そういった塩基性物質として、例えば酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどが上げられるがこれに限定されるものではなく、水溶液を塩基性に調整できるものであれば用いることが出来る。
【0030】
ここまでの処理工程で用いる溶媒として、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、1種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は水である。
【0031】
洗浄工程2の後には、フィルムの乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮やエアーナイフ、又は吸水ロール等によって表面の水分除去を行うことができ、及び/又は送風乾燥を行うこともできる。乾燥処理温度としては、20〜100℃で乾燥処理することが好ましく、50〜90℃で乾燥処理することがより好ましい。乾燥処理時間は30秒〜20分を適用できるが、5〜10分であることが好ましい。
【0032】
本発明の偏光素子のホウ酸含有量は、偏光素子の重量に対して5乃至28重量%の範囲であることが良い。好ましくは12乃至24重量%の範囲であり、さらに好ましくは15乃至22重量%であることが良い。ホウ酸含有量が5%より少ない場合は、偏光特性が低下し、耐久性も低下する。ホウ酸濃度が28重量%より多い場合には、塩基性水溶液に浸漬した際に、処理が十分でなかったり、ホウ酸が析出したり、もしくは、処理ムラが発生する可能性があるため好ましくない。
【0033】
ホウ酸含有量の算出方法としては、まず、水100gに偏光素子0.038gを溶解し、30分間煮沸させ、30分煮沸させた後、常温に冷却させ、D(−)−マンニトールを7g加え、pH=8.4になるまで0.05mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、その滴下した量よりホウ酸濃度を求めることでホウ酸含有量を求めることが出来る。ホウ酸含有量を求める計算式は、式(i)によって求める。
【0034】
ホウ酸含有量(%)=(滴定量[ml]―B)×F×0.0030915×100 /0.038 (i)
この時のBは水だけで水酸化ナトリウムを滴下した時、pH=8.4になる滴下量(ml)を示す。
Fは水酸化ナトリウム水溶液のファクターを示す。
【0035】
以上の方法で、二色性染料が吸着されて延伸されてなるポリビニルアルコール樹脂フィルムよりなる偏光素子において、0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時、該水溶液のpHが5.9乃至9.0を示すことを特徴とする偏光素子を作製できる。
【0036】
得られた偏光素子には、その片面、又は両面に透明保護層を設けることによって偏光板とする。透明保護層はポリマーによる塗布層として、又はフィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又はフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又はフィルムが好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂又はそのフィルム、アクリル樹脂又はそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂又はそのフィルム、ポリエステル樹脂又はそのフィルム、ポリアリレート樹脂又はそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂又はそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミド及び/又はアミドの樹脂又はポリマー又はそのフィルムなどが挙げられる。また、透明保護層として、液晶性を有する樹脂又はそのフィルムを設けることもできる。保護フィルムの厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。その中の同種又は異種の樹脂又はフィルムを片面、もしくは両面に1層以上設けることによって偏光板を作製する。
【0037】
上記、透明保護層を偏光素子と貼り合わせるためには接着剤が必要となる。接着剤としては特に限定されないが、ポリビニルアルコール系接着剤が好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH−26(日本合成社製)、エクセバールRS−2117(クラレ社製)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。接着剤には、架橋剤及び/又は耐水化剤を添加することができる。ポリビニルアルコール系接着剤には、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体を用いるが、必要により架橋剤を混合させた接着剤を用いることができる。無水マレイン酸−イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#104(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#110(クラレ社製)、イミド化イソバン#304(クラレ社製)、イミド化イソバン#310(クラレ社製)などが挙げられる。その際の架橋剤には水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX−521(ナガセケムテック社製)、テトラット−C(三井ガス化学社製)などが挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の接着剤として、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系といった公知の接着剤を用いることも出来る。また、接着剤の接着力の向上、または耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等の添加物を同時に0.1〜10重量%程度の濃度で含有させることもできる。添加物についても限定されるものではない。透明保護層を接着剤で貼り合せた後、適した温度で乾燥もしくは熱処理することによって偏光板を得る。
【0038】
得られた偏光板を液晶、有機エレクトロルミネッセンス等の表示装置に貼り合わせる場合、後に非露出面となる保護層またはフィルムの表面に視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層またはフィルムを設けることもできる。偏光板を、これらのフィルムや表示装置と貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
【0039】
この偏光板は、もう一方の表面、すなわち、保護層又はフィルムの露出面に、反射防止層や防眩層、ハードコート層など、公知の各種機能性層を有していてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せることもできる。また、各種機能性層とは、位相差を制御する層又はフィルムとすることができる。
【0040】
本発明の偏光板の利用の1形態である液晶プロジェクター用偏光板は、通常、支持体付偏光板として使用される。支持体は偏光板を貼付するため、平面部を有しているものが好ましく、また光学用途であるため、ガラス成形品が好ましい。ガラス成形品としては、例えばガラス板、レンズ、プリズム(例えば三角プリズム、キュービックプリズム)等があげられる。レンズに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付のコンデンサレンズとして利用し得る。また、プリズムに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクターにおいて偏光板付きの偏光ビームスプリッタや偏光板付ダイクロイックプリズムとして利用し得る。また、液晶セルに貼付してもよい。ガラスの材質としては、例えばソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、水晶よりなる無機基板、サファイヤよりなる無機基板等の無機系のガラスやアクリル、ポリカーボネート等の有機系のプラスチック板があげられるが無機系のガラスが好ましい。ガラス板の厚さや大きさは所望のサイズでよい。また、ガラス付き偏光板には、単板光透過率をより向上させるために、そのガラス面又は偏光板面の一方もしくは双方の面にAR層を設けることが好ましい。
【0041】
液晶プロジェクター用支持体付偏光板を製造するには、それ自体公知の方法で実施され、例えば支持体平面部に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に本発明の偏光板を貼付する。また、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持体を貼付してもよい。ここで使用する接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。尚、この偏光板を楕円偏光板として使用する場合、位相差板側を支持体側に貼付するのが通常であるが、偏光板側をガラス成形品に貼付してもよい。
【0042】
以上の方法で、二色性染料が吸着されて延伸されてなるポリビニルアルコール樹脂フィルムよりなる偏光素子において、0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時、該水溶液のpHが5.9乃至9.0を示すことを特徴とする偏光板を作製することが出来る。
【0043】
こうして得られた偏光板、および、その製造方法は、高い偏光度を有しながら、高い耐久性ならびに簡易的に波長調整可能な製造方法として有効である。本発明によれば、液晶セルを用いた映像表示装置に対して、コントラストが高く、光及び/又は熱、高温高湿条件に対する耐久性、特に偏光特性の低下が少なく、色変化の少ない偏光板を提供できる。本発明の偏光素子または偏光板を用いたディスプレイは信頼性が高く、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有するディスプレイになる。こうして得られた本発明の偏光板を、例えば、液晶プロジェクターに対して用いた場合、輝度が向上し、かつ、コントラストが高く、耐久性も高い液晶プロジェクターとなる。高い偏光特性、耐久性、および、色再現性を良好にするためには、本発明は非常に有効である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に示す透過率の評価は以下のようにして行った。
【0045】
分光光度計〔日立製作所社製“U−4100”〕を用いて、透過率を測定するにあたり、光の出射側に、JIS−Z8701(C光源2°視野)に基づき視感度補正後の透過率43%で偏光度99.99%のヨウ素系偏光板(ポラテクノ社製 SKN−18043P)を設置し、絶対偏光光を測定試料に入射出来るようにした。その際のヨウ素系偏光板の保護層は紫外線吸収能のないトリアセチルセルロースである。
【0046】
本発明の偏光板に、絶対偏光光を入射し、その絶対偏光光の振動方向と本発明の偏光板の吸収軸方向が直交(該絶対偏光子の吸収軸と本発明の偏光板の吸収軸が平行)となるようにして測定して得られた絶対平行透過率をKy、その絶対偏光光の振動方向と本発明の偏光板の吸収軸方向が平行(該絶対偏光子の吸収軸と本発明の偏光板の吸収軸が直交)となるようにして測定して得られた絶対直交透過率をKzとした。
【0047】
pHは、HORIBA社製のpH Meter(D−51)にて測定した。
【0048】
実施例1
ケン化度が99%以上の膜厚75μmのポリビニルアルコール樹脂フィルム(クラレ社製 VFシリーズ)を40℃の温水に3分浸漬し膨潤処理をした。膨潤処理したフィルムを、特許第4825135号の実施例1で示される式(2)のトリスアゾ染料を0.02重量%、トリポリ燐酸ナトリウム0.1重量%、芒硝0.1重量%を含有した45℃の水溶液に浸漬し、染料の吸着を行った。染料が吸着されたフィルムを水にて洗浄し、洗浄の後、2重量%のホウ酸を含有した40℃の水溶液で1分間ホウ酸処理を行った。ホウ酸処理して得られたフィルムを、5.0倍に延伸しながらホウ酸3.0重量%を含有した55℃の水溶液中で5分間処理を行った。そのホウ酸処理して得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、酢酸ナトリウム 0.8重量%を含有したpHが8.01である水溶液で15秒間処理を行った。処理して得られたフィルムを直ちに60℃で5分間乾燥処理を行い膜厚28μmの偏光素子を得た。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.30、ホウ酸濃度は16.4重量%であった。得られた偏光素子を、アルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 TD−80U、以下TACと省略)と、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光素子/接着層/TACという構成で積層し、ラミネートして偏光板を得て測定試料とした。
【0049】
実施例2
実施例1で用いられた酢酸ナトリウムの濃度を2.4重量%に変えて、水溶液のpHを8.26に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.59、ホウ酸濃度は17.2重量%であった。
【0050】
実施例3
実施例2で用いられた染料を国際公開特許番号 WO2007/148757の実施例7に示される染料に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.66、ホウ酸濃度は16.8重量%であった。
【0051】
実施例4
実施例2で用いられた染料を特許出願番号 2011−023747の実施例1に示される染料に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.56、ホウ酸濃度は16.5重量%であった。
【0052】
実施例5
実施例3において、酢酸ナトリウムを炭酸ナトリウムに変えて、処理する水溶液のpHを8.2に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.74、ホウ酸濃度は15.7重量%であった。
【0053】
実施例6
実施例3において、酢酸ナトリウムをアンモニアに変えて、処理する水溶液のpHを8.2に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.38、ホウ酸濃度は16.1重量%であった。
【0054】
実施例7
実施例3において、酢酸ナトリウムを水酸化ナトリウムに変えて、処理する水溶液のpHを8.2に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは6.77、ホウ酸濃度は16.7重量%であった。
【0055】
実施例8
実施例1で用いられた染料を公開特許公報 昭63−189803号の実施例16に記載されている染料に変えて、延伸後に処理する水溶液に含まれていた酢酸ナトリウムを炭酸ナトリウムにし、該水溶液のpHを10.5に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは7.24、ホウ酸濃度は17.7重量%であった。
【0056】
実施例9
実施例1で用いられた染料を国際公開特許番号WO2009/154055の実施例1で示される染料に変えて、延伸後に処理する水溶液に含まれていた酢酸ナトリウムを炭酸ナトリウムにし、該水溶液のpHを10.5に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは7.43、ホウ酸濃度は17.1重量%であった。
【0057】
実施例10
実施例7において、処理する水溶液のpHを11.2に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは8.08、ホウ酸濃度は16.3重量%であった。
【0058】
比較例1
実施例1において、酢酸ナトリウムを用いずにpH=6.84の水で15秒間処理を行った以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは5.68、ホウ酸濃度は15.9重量%であった。
【0059】
比較例2
実施例3において、酢酸ナトリウムを用いずにpH=6.84の水で15秒間処理を行った以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは5.65、ホウ酸濃度は16.9重量%であった。
【0060】
比較例3
実施例4において、酢酸ナトリウムを用いずにpH=6.84の水で15秒間処理を行った以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは5.59、ホウ酸濃度は16.7重量%であった。
【0061】
比較例4
実施例8において、酢酸ナトリウムを用いずにpH=6.84の水で15秒間処理を行った以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは5.55、ホウ酸濃度は16.0重量%であった。
【0062】
比較例5
実施例9において、酢酸ナトリウムを用いずにpH=6.84の水で15秒間処理を行った以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは5.62、ホウ酸濃度は16.9重量%であった。
【0063】
比較例6
実施例8において、延伸後に処理する水溶液に含まれていた炭酸ナトリウムをシュウ酸にして、該水溶液のpHを3.0に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは4.77、ホウ酸濃度は16.7重量%であった。
【0064】
比較例7
実施例9において、延伸後に処理する水溶液に含まれていた炭酸ナトリウムをシュウ酸にして、該水溶液のpHを3.0に変えた以外は同様にして偏光素子、ならびに、偏光板を得て、測定試料とした。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは4.91、ホウ酸濃度は18.1重量%であった。
【0065】
比較例8
ヨウ素系偏光板(ポラクテノ社製 SKN−18243P)を、ジクロロメタンに浸漬してTACを溶解し、ヨウ素系の二色性染料を含有する偏光素子を得た。得られた偏光素子を実施例1で用いた酢酸ナトリウム 0.8重量%を含有したpHが8.01である水溶液で15秒間処理を行った。処理して得られたフィルムを直ちに60℃で5分間乾燥処理を行い膜厚29μmの偏光素子を得た。0.65重量部の偏光素子を熱水(90〜100℃)100重量部に対して溶解した後、25℃に冷却した時の水溶液のpHは5.52、ホウ酸濃度は16.5重量%であった。その偏光素子を用いてアルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 TD−80U、以下TACと省略)と、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光素子/接着層/TACという構成で積層し、ラミネートして偏光板を得て測定試料とした。
【0066】
表1に実施例1乃至10、および、比較例1乃至8において作製した評価試料を用いて、初期の最大偏光度を有する波長(λmax)と、その波長のKy(Ky−S)、Kz(Kz−S)、を確認した結果を示す。作製したサンプルを用いて、高圧水銀ランプ耐光性試験機(ウシオ電機社製 超高圧水銀ランプ 2000W)にて80℃の環境で、735時間の光照射試験を行い、光照射試験後のKy(Ky―E)、ならびに、Kz(以下、Kz−E)の透過率変化を確認した。さらに、表中には式(ii)より算出される偏光度を記載した。また、光照射試験前後での色変化の有無を、目視により確認した。
【0067】
偏光度=(Ky−Kz)/(Ky+Kz) (ii)
【0068】
【0069】
実施例1乃至10と比較例1乃至8との比較試験結果のように、pH7.5乃至12で処理され、偏光素子を熱水(90〜100℃)に溶解した後、25℃に冷却した際の水溶液のpHが5.9〜9.0である本発明の偏光素子を用いた実施例1乃至10の偏光板は、光照射後の偏光度の低下が少なく、さらには、色変化がないことから、耐光性が向上していることが分かる。一方、比較例1乃至比較例7の偏光板は、光照射後の偏光度の低下が大きく、色変化についても黄変しており耐光性が顕著に劣ることが分かる。また、比較例8のヨウ素系偏光板のように、本願と処理工程が異なり、かつ、pH8.01処理されただけの偏光板では、Kyおよび偏光度の低下も大きく、色変化についても大いに赤変しており、耐光性の点で顕著に劣ることが分かる。これらのことから、本発明の偏光素子を用いた偏光板を用いることによって、耐久性が高く、かつ、変色の少ない偏光板が得られることが分かる。