特許第6345144号(P6345144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6345144かご上作業用のロックを有するエレベータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345144
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】かご上作業用のロックを有するエレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20180611BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
   B66B5/00 G
   B66B11/02 Q
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-68723(P2015-68723)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188132(P2016-188132A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸和
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−001066(JP,A)
【文献】 特表2007−516138(JP,A)
【文献】 特開2003−095554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 11/00 − 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご上に設けられ、前記かご上での保守作業時に組み立てられる手すりと、
前記かご上に配置されたかご上機器と、を備え、
前記かご上機器は、
前記かご上で保守作業を行う保守作業員に取り付け可能であり、前記かご上機器に巻き取り収納されるベルトと、
前記手すりを組み立て前の状態で保持するロックと、を有し、
前記ロックは、前記ベルトが引き出された場合に解除される
エレベータ装置。
【請求項2】
前記かご上機器は、
前記ベルトが引き出されたことを検出する検出部と、
前記かごの運転モードを切り替える制御部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記検出部により前記ベルトが引き出されたことが検出された場合に、前記かごの運転モードを、あらかじめ定められた制御プログラムで運転するモードである自動運転モードから、前記保守作業員の手動操作によって運転するモードである手動運転モードへと切り替える
請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記かごの運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、単位時間あたりの前記ベルトの引き出し量が第1設定値を超えた場合に、前記かごの運転モードを、前記かごの走行が可能な走行可能モードから、前記かごを停止させる運転停止モードへと切り替える
請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記かごの運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、前記ベルトの引き出し量が第2設定値を超えた場合に、前記かごの運転モードを、走行可能モードから運転停止モードへと切り替える
請求項2または請求項3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記かご上機器は、前記保守作業員に対する報知を行う報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記かごの運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、前記ベルトの引き出し量が前記第2設定値よりも短い第3設定値を超えた場合に、前記報知部に動作指令を出力する
請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記ベルトが巻き取られたことをさらに検出し、
前記制御部は、前記かごの運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、前記検出部により前記ベルトが巻き取られたことが検出された場合に、前記かごの運転モードを、前記自動運転モードに切り替える
請求項2から請求項5までの何れか1項に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検出部により前記ベルトが引き出されたことが検出された場合に、前記ロックを解除する
請求項2から請求項6までの何れか1項に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータ装置に関し、特に、かご上で保守作業を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの様々な保守作業の中で、保守作業員がかご上で保守作業を行うことがある。このとき、保守作業員は、かごの運転モードを、あらかじめ定められた制御プログラムで運転するモードである自動運転モードから、保守作業員の手動操作によって運転するモードである手動運転モードへと切り替える必要がある。
【0003】
しかしながら、保守作業員が、運転モードを手動運転モードに切り替えることを失念し、自動運転モードのままになっていると、乗客等の操作によってかごが昇降し、保守作業員が転倒等する恐れがある。そのため、かご上での保守作業時に、確実に運転モードを手動運転モードに切り替えることが求められる。
【0004】
そこで、かごと、かご上で保守作業を行う保守作業員に取り付け可能なベルトと、ベルトを引き出しまたは巻き取り可能な巻動部と、ベルトが引き出されたことまたは巻き取られたことを検出する検出部と、ベルトが引き出されたと判断したときに、かごの運転モードを、自動運転モードから手動運転モードへと切り替える制御部と、を備えたエレベータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−1066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1のエレベータでは、かご上での保守作業時に、保守作業員がベルトを取り付け忘れた場合には、かごの運転モードが自動運転モードから手動運転モードへと自動的に切り替えられないという問題がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、かご上での保守作業時に、保守作業員によるベルトの取り付け忘れを防止することができるエレベータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータ装置は、エレベータのかご上に設けられ、かご上での保守作業時に組み立てられる手すりと、かご上に配置されたかご上機器と、を備え、かご上機器は、かご上で保守作業を行う保守作業員に取り付け可能であり、かご上機器に巻き取り収納されるベルトと、手すりを組み立て前の状態で保持するロックと、を有し、ロックは、ベルトが引き出された場合に解除されるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベータ装置によれば、ロックは、かご上での保守作業時に組み立てられる手すりを組み立て前の状態で保持するとともに、かご上機器に巻き取り収納されるベルトが引き出された場合に解除される。
これにより、保守作業員がベルトを引き出さないと、手すりを組み立てることができず、保守作業を開始することができない。
そのため、かご上での保守作業時に、保守作業員によるベルトの取り付け忘れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置の手すり組み立て前の状態を示す斜視図である。
図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置の手すり組み立て後の状態を示す斜視図である。
図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置のかご上機器を示すブロック構成図である。
図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置におけるかご上機器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明に係るエレベータ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置の手すり組み立て前の状態を示す斜視図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置の手すり組み立て後の状態を示す斜視図である。
【0013】
図1、2において、このエレベータ装置は、エレベータのかご1上に設けられ、かご1上での保守作業時に組み立てられる手すり2と、かご1上に配置されたかご上機器3とを備えている。なお、かご上機器3は、かご1上の、乗り場から近い位置に配置されている。また、手すり2は、図示したものに限定されず、組み立て式のものであれば、どのような形状であってもよい。
【0014】
また、かご上機器3は、かご1上で保守作業を行う保守作業員に取り付け可能であり、かご上機器3に巻き取り収納されるベルト31と、手すり2を組み立て前の状態で保持するロック32とを有している。ここで、ロック32は、ベルト31が引き出された場合に解除される。
【0015】
具体的には、ロック32は、例えばバー状の部材であり、ベルト31が引き出されていない場合には、組み立て前の手すり2の一部を覆う位置に保持されている。そのため、この状態では、手すり2を組み立てることができない。また、ロック32は、ベルト31と機械的に連動し、ベルト31が引き出された場合には、保持状態が解除され、手すり2を組み立てることができるようになる。
【0016】
なお、ロック32は、機械的に解除されるものに限定されず、電気的に解除されるものであってもよい。以下、図3を参照しながら、ロック32が電気的に解除される場合を例に挙げて、かご上機器3のより具体的な構成について説明する。
【0017】
図3は、この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置のかご上機器を示すブロック構成図である。図3において、かご上機器3は、ベルト31、ロック32、検出部33、制御部34および報知部35を有している。なお、制御部34は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを格納した記憶部とを有するマイクロプロセッサで構成されている。
【0018】
ベルト31は、特許文献1に開示されたものと同様の構造、機構を有し、かご上機器3に巻き取り収納されている。また、検出部33も、特許文献1に開示されたものと同様の構造、機構を有し、ベルト31が引き出されたことまたは巻き取られたことを検出するとともに、ベルト31の引き出し量を算出する。
【0019】
制御部34は、通常時、かご1の運転モードを、あらかじめ定められた制御プログラムで運転するモードである自動運転モードに設定している。なお、あらかじめ定められた制御プログラムは、乗客等の呼び設定や行先階設定に基づいて、かご1を昇降させる通常運転時のプログラムである。
【0020】
ここで、制御部34は、検出部33によりベルト31が引き出されたことが検出された場合に、かご1の運転モードを、自動運転モードから、保守作業員の手動操作によって運転するモードである手動運転モードへと切り替える。これにより、かご1上での保守作業時に、確実に運転モードを手動運転モードに切り替えることができる。
【0021】
また、制御部34は、かご1の運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、検出部33によりベルト31が巻き取られたことが検出された場合に、かご1の運転モードを、自動運転モードに切り替える。これにより、保守作業終了時に、運転モードを自動運転モードに戻し忘れることを防止することができる。
【0022】
また、制御部34は、かご1の運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、単位時間あたりのベルト31の引き出し量が第1設定値を超えた場合に、かご1の運転モードを、かご1の走行が可能な走行可能モードから、かご1を停止させる運転停止モードへと切り替える。
【0023】
このとき、単位時間および第1設定値は、ベルト31に対して急激に負荷がかかった場合等を想定して、あらかじめ設定することができ、例えば0.1秒間にベルト31の引き出し量が30cm増加した場合に、制御部34がかご1の運転モードを運転停止モードに切り替える。これにより、保守作業員がかご1上で転倒したり、かご1の低速運転中にベルト31が引っかかったりした場合に、かご1を停止させることができる。
【0024】
また、制御部34は、かご1の運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、ベルト31の引き出し量が第2設定値を超えた場合に、かご1の運転モードを、走行可能モードから運転停止モードへと切り替える。このとき、第2設定値は、ベルト31の最大長さ(例えば、2m)等に応じて、あらかじめ設定することができる。これにより、保守作業員がかご1上から身を乗り出して作業する場合等に、かご1を停止させることができる。
【0025】
また、制御部34は、かご1の運転モードが手動運転モードに切り替えられた後、ベルト31の引き出し量が第2設定値よりも短い第3設定値を超えた場合に、報知部35に動作指令を出力する。このとき、第3設定値は、ベルト31の最大長さよりも短い値(例えば、30cm短い値)としてあらかじめ設定することができる。
【0026】
なお、保守作業員に対する報知を行う報知部35として、例えばかご1上に回転灯等を設けることが考えられる。これにより、保守作業員が、ベルト31の最大長さの付近で作業をしていることを認識することができる。
【0027】
また、制御部34は、検出部33によりベルト31が引き出されたことが検出された場合に、ロック32を解除する。ここで、ロック32の解除は、ベルト31が引き出されていない場合に、組み立て前の手すり2の一部を覆う位置に保持されているバー状の部材を電気的に回動させることにより、手すり2を組み立て可能にすること等が考えられる。
【0028】
以下、図4のフローチャートを参照しながら、かご上機器3の動作について詳細に説明する。図4は、この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置におけるかご上機器の動作を示すフローチャートである。なお、図4の処理は、あらかじめ定められた任意の周期で繰り返し実行される。
【0029】
まず、制御部34は、ベルト31が引き出されたか否かを判定する(ステップS1)。
ステップS1において、ベルト31が引き出された(すなわち、Yes)と判定された場合には、制御部34は、ロック32を解除し(ステップS2)、かご1の運転モードを手動運転モードに切り替える(ステップS3)。
【0030】
続いて、制御部34は、ベルト31が収納されたか否かを判定する(ステップS4)。
ステップS4において、ベルト31が収納されていない(すなわち、No)と判定された場合には、制御部34は、ベルト31の引き出し量が第1設定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。
【0031】
ステップS5において、ベルト31の引き出し量が第1設定値以下である(すなわち、No)と判定された場合には、制御部34は、ベルト31の引き出し量が第3設定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0032】
ステップS6において、ベルト31の引き出し量が第3設定値よりも大きい(すなわち、Yes)と判定された場合には、制御部34は、保守作業員に対して報知を行い(ステップS7)、ベルト31の引き出し量が第2設定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS8)。
【0033】
ステップS8において、ベルト31の引き出し量が第2設定値以下である(すなわち、No)と判定された場合には、制御部34は、図4の処理を終了する。
【0034】
一方、ステップS1において、ベルト31が引き出されていない(すなわち、No)と判定された場合には、制御部34は、かご1の運転モードを自動運転モードに切り替えて(ステップS9)、図4の処理を終了する。
【0035】
また、ステップS4において、ベルト31が収納された(すなわち、Yes)と判定された場合には、制御部34は、かご1の運転モードを自動運転モードに切り替えて(ステップS10)、図4の処理を終了する。
【0036】
また、ステップS5において、ベルト31の引き出し量が第1設定値よりも大きいと判定された場合、およびステップS8において、ベルト31の引き出し量が第2設定値よりも大きいと判定された場合には、制御部34は、かご1の運転モードを運転停止モードに切り替えて(ステップS11)、図4の処理を終了する。
【0037】
以上のように、実施の形態1によれば、ロックは、かご上での保守作業時に組み立てられる手すりを組み立て前の状態で保持するとともに、かご上機器に巻き取り収納されるベルトが引き出された場合に解除される。
これにより、保守作業員がベルトを引き出して取り付けないと、手すりを組み立てることができず、保守作業を開始することができない。
そのため、かご上での保守作業時に、保守作業員によるベルトの取り付け忘れを防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 かご、2 手すり、3 かご上機器、31 ベルト、32 ロック、33 検出部、34 制御部、35 報知部。
図1
図2
図3
図4