(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(構成)
図1に示す本実施形態の非常用発電装置10は、商用電源11の停電時にエンジン(図示せず)で駆動する発電機15を始動して負荷(図示せず)に電力を供給する発電装置である。非常用発電装置10は、充電器12と、バッテリ13と、切替器19と、充電器制御回路Cとを備える。また、非常用発電装置10は、充電器12の出力側で検出された過電圧からバッテリ13を保護するための周知の過電圧保護回路(図示せず)を備える。
【0012】
充電器12は、例えば、浮動式充電器であり、スイッチング電源が使用されている。スイッチング電源には、スイッチングレギュレータが使用されている。充電器12は、商用電源11または発電機15から供給される交流電力(AC入力)を入力電力として供給されると、直流に変換して、直流電力(DC出力)を出力電力としてバッテリ13に供給してバッテリ13を充電する。
【0013】
バッテリ13は、発電機15を駆動するエンジンを始動するための電源となる。バッテリ13の充電は、通常は商用電源11からの電力供給によって実現され、停電中は発電機15からの電力供給によって実現される。
【0014】
発電機15は、本実施形態ではオルタネータを備えないエンジンで駆動するものとし、停電時に交流電力を負荷に供給するとともに、バッテリ13を充電することができる。ただし、エンジンはオルタネータを備えていてもよく、この場合、オルタネータがバッテリ13を充電することができる。
【0015】
切替器19は、負荷に交流電力を供給する供給源を、停電時は商用電源11から発電機15に切り替え、通常時は発電機15から商用電源11に切り替える。切替器19は、例えば、ダブルスローとすることができる。なお、停電の検出は、例えば、非常用発電装置10が備える自動始動発電機盤(図示せず。)のGAC(全自動コントローラ)が行う。
【0016】
充電器制御回路Cは、充電器12に入力される入力電力、および、充電器12から出力される出力電力を監視および制御する。充電器制御回路Cは、マイコン14と、入力電力制御部16と、出力電力監視部17と、警報出力部18とを備える。マイコン14と、入力電力制御部16と、出力電力監視部17と、警報出力部18は、充電器制御回路Cの外部にある素子とは絶縁している。
【0017】
マイコン14は、充電器制御回路Cに実装されているさまざまな素子の動作を制御する。
【0018】
入力電力制御部16は、商用電源11または発電機15から充電器12へ供給される入力電力(交流)を監視して制御する。入力電力制御部16は、リレー接点16aと、リレーコイル16bとを備えている。
リレー接点16aは、商用電源11および発電機15と、充電器12との接続をオンオフするB接点(ブレーク接点)である。リレーコイル16bが非導通にあるとき、リレー接点16aは閉じており、商用電源11または発電機15からの入力電力を、充電器制御回路CのVLコネクタを経由して充電器12に供給することができる。
リレーコイル16bは、マイコン14に接続しており、入力電力制御部16がマイコン14からの制御信号に基づいてリレー接点16aを開閉できるようにする。
【0019】
出力電力監視部17は、充電器12からバッテリ13へ供給される出力電力(直流)を監視する。出力電力監視部17は、発光ダイオード17aと、フォトトランジスタ17bとを備えている。
発光ダイオード17aは、充電器12から所定値以上の出力電力が入力されると発光する。なお、充電器12からの出力電力は、充電器制御回路CのXAコネクタを経由して発光ダイオード17aに入力される。
フォトトランジスタ17bは、発光ダイオード17aからの光によってマイコン14に電流を出力する。
【0020】
警報出力部18は、過電圧保護からの復帰のため、入力電力制御部16が入力電力の供給を再開しても出力電力監視部17が出力電力を検出しなかった場合、警報を出力する。警報出力部18は、リレー接点18aと、リレーコイル18bとを備えている。
リレー接点18aは、充電器制御回路Cと、非常用発電装置10が備える自動始動発電機盤のGACに備えた警報手段との接続をオンオフするA接点(メーク接点)である。リレーコイル18bが導通にあるとき、リレー接点18aは閉じており、マイコン14からの制御信号(例:機器の異常信号)を、充電器制御回路CのXAコネクタを経由してGACに出力することができる。GACの警報手段は、例えば、モニタ表示、ベルやブザーなどによる音響出力、回転灯や表示灯などによる照明出力、通信回線などを経由したセンタへの発報など、さまざまな態様があげられるがこれらに限定されない。なお、自動始動発電機盤は、バッテリ13を電源として始動する。
リレーコイル18bは、マイコン14に接続しており、出力電力監視部17がマイコン14からの制御信号に基づいてリレー接点18aを開閉できるようにする。
【0021】
非常用発電装置10は、常時制御電源を流しており、非停電時であっても、充電器12が機能して、商用電源11からバッテリ13を充電している。充電器12のスイッチング電源に使用されているスイッチングレギュレータは、雷などのサージを受けたときや、電源内部部品の故障などにより、出力側にて過電圧を検出すると、過電圧保護回路による過電圧保護が自動的に働いて、出力電力を停止してバッテリ13を保護する。
【0022】
過電圧保護から復帰させるためには、入力電力の供給を所定期間停止し、コンデンサの放電を達成した後、入力電力の供給を再開する必要がある。この所定期間とは、コンデンサ放電時間に相当し、非常用発電装置10の仕様にもよるが、例えば、2〜3分間である。また、充電器制御回路Cは、出力電力監視部17にて出力電力を検出しなくなった場合、その要因が、過電圧保護であるのか、過電圧保護以外であるのかを判定してから、バッテリ13への出力電力の供給に向けた措置をとる。
【0023】
(動作)
図2に示すように、出力電力監視部17が、充電器12からバッテリ13へ供給される出力電力を検出しなくなった場合、充電器制御回路Cのマイコン14は、以下の処理をステップS1から開始する。
ステップS1にて、マイコン14は、入力電力制御部16を機能させて、商用電源11または発電機15から充電器12へ入力される入力電力の供給があるか否かを判定する。入力電力制御部16のリレー接点16aが閉じており、商用電源11または発電機15からの入力電力が充電器12に供給されていれば、マイコン14は、リレーコイル16bで検出した制御信号を取得することができ、入力電力の供給があると決定することができる。入力電力の供給があれば(ステップS1でYes)、ステップS2に進み、入力電力の供給が無ければ(ステップS1でNo)、
図2の処理を終了する。入力電力の供給が無い場合、例えば、非常用発電装置10の電源がオフになっていることを意味し、出力電力監視部17が出力電力を検出しないのは当然であり、特に問題でないと判断することができる。
【0024】
ステップS2にて、マイコン14は、出力電力監視部17を機能させて、出力電力の検出無しの状態が一定時間以上継続したか否かを判定する。マイコン14は、出力電力監視部17用のタイマとして出力監視タイマを備えており、出力電力を検出しなくなった時点で出力監視タイマが作動する。前記一定時間は、例えば、数秒とすることができるが、これに限定されない。一定時間以上継続した場合(ステップS2でYes)、出力電力の検出無しが確定し、ステップS3に進み、一定時間以上継続しなかった場合(ステップS2でNo)、
図2の処理を終了する。一定時間以上継続しなかった場合には、程なくして出力電力を検出することができたことを意味し、偶発的に出力電力を検出できなかっただけであり、非常用発電装置10に特に問題はないとみなす。ステップS2が完了すると出力監視タイマは停止する。
なお、ステップS2は、省略してもよい。この場合、入力電力の供給があれば(ステップS1でYes)、出力電力の検出無しが確定し、ステップS3に進む。
【0025】
ステップS3にて、マイコン14は、入力電力制御部16を機能させて、入力電力供給のフリッカオフスタート(Bモード)を実行する。マイコン14は、入力電力制御部16用のタイマとして入力制御タイマを備えており、出力電力の検出無しが確定した時点で入力制御タイマが作動する。入力制御タイマはフリッカ機能を有しており、入力電力制御部16は、入力制御タイマに合わせてリレー接点16aの開閉を所定回数繰り返す。
【0026】
図3に示すように、マイコン14は、入力電力制御部16を機能させて、入力電力の出力をオフにする期間(オフ期間)とオンにする期間(オン期間)を交互に出現させるようにリレー接点16aの開閉を制御する。各オフ期間(
図3中、時刻t0〜時刻t1、時刻t2〜時刻t3、時刻t4〜時刻t5)、および、各オン期間(
図3中、時刻t1〜時刻t2、時刻t3〜時刻t4、時刻t5〜時刻t6)は、例えば、2分間とすることができるがこれに限定されない。また、オフ期間およびオン期間を繰り返す回数は、例えば、3回とすることができるが、これに限定されず、2回以下でもよいし、4回以上でもよい。ステップS3を実行することにより、過電圧保護からの復帰に必要となる入力電力の供給停止およびコンデンサの放電の機会を確保することができる。なお、入力制御タイマが作動する期間を「フリッカ機能実行期間」と称する場合がある。
図3を参照すると、フリッカ機能実行期間は、時刻t0〜時刻t6の期間に相当する。
また、マイコン14は、警報出力部18用のタイマとして警報出力タイマを備えており、出力電力の検出無しが確定した時点で入力制御タイマが作動する。警報出力タイマがフリッカ機能実行期間だけ作動した場合、マイコン14は、警報出力部18に警報を発報させる。
ステップS3の後、ステップS4に進む。
【0027】
ステップS4にて、マイコン14は、出力電力監視部17を機能させて、出力電力監視部17による出力電力の検出があったか否かを判定する。この判定は、フリッカ機能実行期間中に行われる。フリッカ機能実行期間中に出力電力の検出があった場合(ステップS4でYes)、
図2の処理を終了する。この場合、出力電力の検出無しの状態が発生したのは、過電圧保護が働いたからであり、入力電力の供給を停止したことによって、コンデンサの放電が達成され、その後の入力電力の供給を再開したことに応じて出力電力が検出され、過電圧保護から復帰したとみなすことができる。このとき、マイコン14は、警報出力タイマを停止する。一方、フリッカ機能実行期間中に出力電力の検出がなかった場合(ステップS4でNo)、ステップS5に進む。
【0028】
図3を参照すると、オフ期間(時刻t0〜時刻t1)経過後の、オン期間(時刻t1〜時刻t2)の間に出力電力の検出があった場合、その検出の時点でステップS4を終了し、
図2の処理を終了する。オン期間(時刻t1〜時刻t2)の間に出力電力の検出が無かった場合、過電圧保護からの復帰が十分に達成されていない可能性があり、その後のオフ期間(時刻t2〜時刻t3)経過後の、オン期間(時刻t3〜時刻t4)の間に出力電力の検出があった場合、その検出の時点でステップS4を終了し、
図2の処理を終了する。オン期間(時刻t3〜時刻t4)の間に出力電力の検出が無かった場合、過電圧保護からの復帰が十分に達成されていない可能性があり、その後のオフ期間(時刻t4〜時刻t5)経過後の、オン期間(時刻t5〜時刻t6)の間に出力電力の検出があった場合、その検出の時点でステップS4を終了し、
図2の処理を終了する。
【0029】
ステップS5にて、マイコン14は、入力電力の供給再開が3回目であるか否かを判定する。具体的には、
図3において、3回目のオン期間(時刻t5〜時刻t6)を迎えているか否かを判定する。入力電力の供給再開が3回目であった場合(ステップS5でYes)、オン期間(時刻t5〜時刻t6)を経過しても出力電力が検出されなかったことを意味し、ステップS6に進む。この場合、マイコン14は、出力電力の検出無しの状態が発生したのは、過電圧保護が働いたからではなく、別の要因による故障が発生したからであり、過電圧がもともと入力されていなかったと判断する。
【0030】
一方、入力電力の供給再開が3回目でなかった場合(ステップS5でNo)、1回目のオン期間(時刻t1〜時刻t2)中、または、2回目のオン期間(時刻t3〜時刻t4)中であることを意味し、ステップS4に戻り、2回目のオフ期間(時刻t2〜時刻t3)、または、3回目のオフ期間(時刻t4〜時刻t5)に突入し、過電圧保護からの復帰動作を試みる。
【0031】
ステップS6にて、マイコン14は、警報出力部18による警報出力を実行する。具体的には、3回目のオフ期間(時刻t4〜時刻t5)の経過後、マイコン14は、警報出力部18のリレー接点18aを閉じるように制御する。これにより、マイコン14は、GACの警報手段に制御信号を出力し、所定の態様の警報を発報することができる。ステップS6の後、
図2の処理を終了する。
【0032】
以上の説明から、本実施形態によれば、充電器制御回路Cは、入力電力が充電器12へ供給されている状態において、出力電力監視部17が出力電力を検出しなくなった場合には、入力電力の供給を所定期間停止した後、再開する。このため、過電圧保護が働いて出力電力が検出されなくなった場合には、入力電力の供給の停止によって、過電圧保護からの復帰に必要となるコンデンサの放電の機会を確実に確保することができる。
したがって、バッテリの充電動作を適正に管理して、非常用発電装置に用いる充電器が充電するバッテリに働いた過電圧保護から円滑に復帰させることができる。
その結果、バッテリの過放電状態による劣化を速やかに回避することができる。また、劣化したバッテリを新品のものに交換する必要性が低減し、交換費用を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、充電器制御回路Cが警報出力部18を備えることによって、過電圧保護以外の要因で出力電圧を検出できなかったことを使用者に確実に報知し、事後対応を迅速にとらせることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、充電器制御回路Cが、入力電力の供給の停止および再開を所定回数繰り返すことで、入力電力の供給の停止および再開を1度しか行わない場合と比較して、出力電力が検出されなくなった理由は過電圧保護が働いたためであるという判断を確実に行うことができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、入力電力制御部16は、フリッカオフスタートで動作することで、過電圧保護からの復帰に必要となる入力電力の供給の停止を、過電圧保護からの復帰動作の開始時点で行うための回路構成を簡易に設計することができる。
【0036】
(変形例)
本実施形態では、入力電力供給のフリッカオフスタートを実行するための入力制御タイマを用いて、入力電力の出力をオフにする期間(オフ期間)とオンにする期間(オン期間)を交互に出現させるようにした(
図3参照)。しかし、入力制御タイマを複数用意して、オン期間をオフ期間よりも短くするように設定することができる(ダブルタイマ)。これにより、出力電力の検出なしの状態が発生した理由が、過電圧保護であるのか過電圧保護以外であるのかの判定に要する時間をより短縮することができる。なお、オフ期間をオン期間よりも短くするように設定することもできる。
【0037】
なお、本実施形態で説明した技術を組み合わせた技術を実現できる。
その他、本発明の装置を構成する部材の形状、配置などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。