(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、広汎に普及しているスマートフォンやタブレットなどの電子機器にあって、液晶表示部分に傷が付かないようにするハードコート性や、指紋や汚れなどを拭き取りやすくする防汚性、反射光による視認性の低下を抑制する防眩性など、様々な機能を付与することが広く望まれている。そこで、各種の機能を有した機能層を積層した部材をスマートフォンなどのディスプレイ部分に用いることで、目的の機能を発揮させている。このような部材は、従来、ガラス基板の表面に各種機能を有した機能性樹脂を直接塗布することにより製造されていたが、近年の傾向としてディスプレイ等のフレキシブル化が望まれており、重く可撓性のないガラス基板から、軽くて薄く屈曲性に富む樹脂フィルムに上記のような機能性を有する機能性樹脂を塗布したものの検討が進んでいる。
【0003】
しかし、このような樹脂層は硬化の際に膜が収縮するため、基材フィルムに反りが発生してしまう。そこで、基材フィルムの反対面側にも同様の樹脂層を設けることで反りを相殺する方法が考えられたが、樹脂層を反対面側にも形成するために屈曲性が低下し、また全体の厚みも厚くなるため薄型化に対応できない。しかも、工程数が増えるために基材のロスも増大し、歩留まりが悪くコストアップしてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために転写法が用いられるようになった。転写法は、別の基材に予め目的の樹脂層を形成し、接着剤などによって被転写体となる基材と貼り合わせた後、形成時の基材を除去することで、所望の基材に目的の樹脂層を積層する方法である。このような方法を用いると、樹脂層が既に硬化収縮した状態で被転写体に貼り合わされるため、直接形成したときのように硬化収縮によってフィルムが引っ張られることもなく、反りが抑制される。それにより反対面側に樹脂層を設ける必要がないので、薄く屈曲性の高いものとすることができる。さらに、必要な箇所にのみ積層させることができるため歩留まりが向上し、最終工程における被転写体のロスを少なくすることができる。特にディスプレイ用途に用いられる基材は非常に高価であるため、基材フィルムのロスを少なくすることによるコストダウンは効果的であった。
【0005】
しかし、機能性樹脂を転写すると機能が十分に発揮されない、という問題があった。
例えば、防汚性を発揮するフッ素やシリコーンなどの機能性官能基や、防眩性を発揮する微粒子などの機能成分は、塗工した際に表面エネルギーによって空気面側に配向するという傾向があり、それによって機能面を生じる。そのため、転写法による形成を行うと、機能面側は被転写体との接着面側となるため、機能成分が被転写体側に埋もれてしまう。また、例えば防眩性微粒子を含有した樹脂層において、樹脂中の防眩性微粒子が樹脂膜厚よりも大きい場合、微粒子は空気面側に突出するため、その凹凸により光を散乱し防眩性を得る。すなわち機能面を生じるのであるが、転写法による形成を行うと、この突出した微粒子の凹凸も同様に被転写体側に埋もれてしまう。このように、基材に機能性樹脂を塗布すると、機能面が空気面側となるため、転写法によって被転写体に積層すると、その表層において求める機能を得ることができなかった。
このような問題に対処するために、機能成分を修飾する、あるいは樹脂に添加物を加えて表面エネルギーを調整するなどして、機能成分が離型基材側へ配向するように人為的に操作することが検討されたが、直接塗布したものと比べ機能が十分に発揮できない、という問題が生じた。これは、理由は定かではないが、人為的に配向を操作することによって、成分や微粒子間の配向が不自然となり、自然配向したものに比べて十分な機能を発揮することができないためと思われる。
【0006】
そこで、例えば特許文献1のように、プラスチックフィルムの片面に離型層、防汚性を有する機能性層、反射防止層及び接着層が順次積層された反射防止用転写フィルムが提案されている。このような構成とすることで、防汚機能を最表層とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明はそのような問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、直接機能性樹脂を塗布した場合と同等の性能を発揮し、かつ反りの抑制された機能性物品の製造方法、およびそれに用いる機能性転写基材と、それによって得られる機能性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の機能性物品の製造方法は、少なくとも、離型基材の離型面に、機能成分を含有した樹脂よりなる機能層を積層
し、硬化処理を行う、機能層積層工程と、前記機能層の離型基材とは反対側表面と再剥離性基材の再剥離面とを貼り合わせることで、機能性転写基材を形成する、再剥離性基材積層工程と、前記機能性転写基材から前記離型基材を
剥離力(A)で剥離することで、前記機能層を前記再剥離性基材に転写し中間転写体を形成する、第1転写工程と、前記中間転写体の機能層側表面と被転写体とを貼り合わせて中間転写体と被転写体の積層体を形成する、中間転写体積層工程と、前記中間転写体と被転写体の積層体から前記再剥離性基材を
剥離力(B)で剥離することで、前記機能層を前記被転写体に転写し機能性物品とする、第2転写工程と、をこの順に行ってなり、
前記機能層における樹脂がハードコート性樹脂であり、前記機能層において、機能層の離型基材とは反対側の表面側
のみが機能面となること、を特徴とする。
【0011】
本願発明の請求項2に記載の機能性物品の製造方法は、請求項1に記載の機能性物品の製造方法であって、前記離型基材と前記機能層との界面における剥離力(A)が、前記再剥離性基材と前記機能層との界面における剥離力(B)よりも小さいこと、を特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項3に記載の機能性物品の製造方法は、請求項1または請求項2に記載の機能性物品の製造方法であって、前記剥離力(B)が0.01N/25mm以上1N/25mm以下であること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項
4に記載の機能性物品の製造方法は、請求項1ないし請求項
3の何れか1項に記載の機能性物品の製造方法であって、前記機能成分が、フッ素またはシリコーンを主としてなる防汚成分であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項
5に記載の機能性物品の製造方法は、請求項1ないし請求項
3の何れか1項に記載の機能性物品の製造方法であって、前記機能成分が、防眩性微粒子であること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項
6に記載の機能性物品は、
被転写体の片面に、機能成分を含有した樹脂よりなる機能層を有する機能性物品であって、前記機能層における樹脂がハードコート性樹脂であり、前記機能層が硬化した状態であり、前記機能層において、被転写体とは反対側の表面側のみに機能面を有し、10cm角にカットして平行な台上に置いた際の4角の高さによって測定される反りの最大値が10mm以下であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項
7に記載の機能性物品は、請求項
6に記載の機能性物品であって、前記被転写体が500μm以下の樹脂フィルムであること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項
8に記載の機能性転写基材は、離型基材の離型面に
、機能成分を含有した樹脂よりなる機能層と、
前記機能層との界面において剥離力(B)で剥離する再剥離性基材と、をこの順に、前記機能層と再剥離性基材の再剥離面とが対面するよう積層した、機能性転写基材であって、
前記機能層における樹脂がハードコート性樹脂であり、前記機能層が硬化した状態であり、前記機能層の再剥離性基材側
のみが機能面となること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項
9に記載の機能性転写基材は、請求項
8に記載の機能性転写基材であって、前記離型基材の前記機能層との界面における剥離力(A)が、前記再剥離性基材の前記機能層との界面における剥離力(B)よりも小さいこと、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項
10に記載の機能性転写基材は、請求項
8または請求項
9に記載の機能性転写基材であって、前記剥離力(B)が0.01N/25mm以上1N/25mm以下であること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項
11に記載の機能性転写基材は、請求項
8ないし請求項
10の何れか1項に記載の機能性転写基材であって、前記機能成分がフッ素またはシリコーンを主としてなる防汚成分であること、を特徴とする。
【0023】
本願発明の請求項
12に記載の機能性転写基材は、請求項
8ないし請求項
10の何れか1項に記載の機能性転写基材であって、前記機能成分が防眩性微粒子であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本願発明に係る機能性物品の製造方法は、硬化反応の完了した塗膜を転写するため反りが小さく、且つ、転写を複数回、より具体的に言えば、被転写体へ最終的に転写するのが偶数回目となるように行うことで、形成時に空気面側、すなわち基材と反対側に自然と得られる機能面が最終的に機能性物品の最表層となるので、直接塗布したものと同等の効果を発揮する機能性物品とすることができる。ここで機能面とは、機能層中に含まれる機能成分が機能を発揮する面を指す。また、機能面の逆転を防ぐために、新たな層を形成したり、官能基を修飾したり、機能層に添加物を加えたりする必要もなく、材料を選ばず非常に簡易に目的の機能性物品を得ることができる。そして転写法による製造方法により、最終工程の歩留まりを向上させて被転写体のロスを少なくでき、コストを下げることができる。
このような製造方法において、本願発明に係る機能性転写基材は、再剥離性基材と機能層との剥離力(B)より離型基材と機能層との剥離力(A)を軽くしているため、目的の面で剥離することができ、また、再剥離性基材の剥離力を規定の値とすることにより、機能層が浮いたり剥離しなかったりということがなく、良好な転写を行うことができる。
上記のようにして得られた機能性物品は、非常に反りが小さく、被転写体がフィルムのような薄いものであっても反りが発生することがなく、様々な機能を発揮する良好な機能性物品とすることができる。また、機能成分をフッ素やシリコーンとすれば、接触角が100°以上となるような優れた防汚性を、防眩性微粒子であれば、蛍光灯の映り込みや、スパークリング現象を抑えるなど、優れた防眩性を有する機能性物品とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
まず本願発明にかかる機能性転写基材と機能性物品に関して、第1の実施の形態として機能成分が機能性官能基であるとして説明する。
なお、本願発明は、離型基材と反対側表面に機能面を有する機能層を、転写法によって被転写体に積層しても機能を発揮できることを特徴としており、そのような膜形成時に基材とは反対側、すなわち空気面側に機能面が生じる機能層であれば種類は問わないものであり、実施の形態はその一例であることをあらかじめ述べておく。
【0027】
本実施の形態に係る機能性転写基材は、離型基材の離型面に、機能成分を含有した機能層を積層したものを、再剥離性基材と貼り合わせてなり、本実施の形態に係る機能性物品は、前記機能性転写基材から離型基材を剥離することで、機能層を再剥離性基材に転写した中間転写体をまず形成し、次いで中間転写体の機能層側表面を被転写体と接着層を介して貼り合わせた後、再剥離性基材を剥離することによって得られる。
【0028】
以下、順に説明する。
まず、離型基材について説明する。
本実施の形態に係る機能性転写基材を構成する離型基材は、基材の表面に離型性を有した支持体であり、後述する機能層を転写できるものであればその形状や材質を問わず、従来公知の転写基材の支持体として用いられるものを適宜選択すればよい。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの合成樹脂フィルムや、セロハン紙等の洋紙や和紙、樹脂成形体や金属、ガラスなどでも良い。特にPETフィルムは、シワや亀裂が発生しにくく、熱にも強いことから好ましい。
【0029】
本実施の形態に係る離型基材は、離型基材と機能層との界面における剥離力(A)と、後述する再剥離性基材と機能層との剥離力(B)とを比較したとき、(A)が(B)よりも小さいことが好ましい。このような剥離力の範囲であれば、後述する第1転写工程において離型基材と機能層との界面で剥離することができ、良好な転写を行うことができる。
本実施の形態においては0.03N/25mmとする。
【0030】
基材と機能層との剥離力によっては、基材と機能層との間に離型層を設けたものを用いることが好ましい。このような離型層としては、従来公知の樹脂および界面活性剤の単独、もしくはこれらの混合物を主成分とした塗剤を適宜選択すれば良く、例えばメラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。このような離型層の厚みとしては、上述した剥離力を示す厚みを適宜選択すれば良いが、0.01μm以上5μm以下であることが好ましい。0.01μmより薄いと離型層が安定して加工出来ず、5μmより厚くなると剥離力の増加によって機能層が再剥離性基材に上手く転写できなくなる、膜厚が厚くなるだけで効果がそれ以上得られず塗剤のコストだけがかかる、基材に反りが発生する、などが懸念される。
本実施の形態においては100μmのPETフィルムの表面に、離型層としてアクリル系樹脂を1μm積層した離型基材を用いることとする。
【0031】
次に機能層について説明する。
本実施の形態に係る機能性転写基材を構成する機能層は、目的とする機能を発揮する機能成分を含有した樹脂である機能性樹脂よりなり、該機能性樹脂を塗布したときに、機能層の離型基材とは反対側の表面である空気面、すなわち後述する再剥離性基材を貼り合わせる面側に機能面を生じるものを用いる。このような機能成分としては、樹脂を離型基材に塗布した際に表面エネルギーにより自然と空気面側に配向されるものや、粒子が膜表面に一部突出するものなど、機能層を形成した際に空気面側に機能面を生じ、何らかの機能を発揮するものであれば種類は問わず、特定の機能を示す官能基や、微粒子やフィラーなどが考えられる。すなわち機能性樹脂とは、後述する樹脂に対して、特定の機能性官能基を付与したものや、微粒子やフィラーなどを添加したものである。
本実施の形態においては、機能成分が機能性官能基である場合について述べる。
【0032】
機能性官能基によって得られる効果としては、その官能基の有する特性によって様々な機能が考えられるので、求める機能によって従来公知のものを適宜選択すれば良い。本実施の形態においては防汚性について述べる。防汚性を発揮する機能性官能基としては、様々なものが考えられるが、フッ素またはシリコーンを主とする機能性官能基であることが好ましい。このような機能成分であれば、水の接触角が100°以上となるような、非常に優れた防汚性を得ることができる。
【0033】
機能層を形成する機能性樹脂の樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系など、従来公知の樹脂および界面活性剤の単独もしくはこれらの混合物を主成分としたものであればよい。このような樹脂に上記の機能性官能基などを含有し付与させることによって、機能層とすることができる。中でもハードコート性を有した硬化型樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂を用いることによって、耐擦傷性を向上させることができる。
本実施の形態においては、ウレタンアクリレートにフッ素を主とした官能基を付与させた紫外線硬化型樹脂を用いることとする。
【0034】
形成する機能層の厚みとしては、求める性能が得られる厚みを適宜選択して積層すれば良く、0.0001μm以上50μm以下が好ましい。特に屈曲性と耐擦傷性を求められる用途においては、0.1μm以上50μm以下がより好ましい。0.1μmより薄い厚みでは屈曲性には優れるが、耐擦傷性に弱く、50μmより厚くなると耐擦傷性には優れるが、屈曲性に弱くなり、屈曲性と耐擦傷性とを両立することが不十分となる。
本実施の形態においては5μm積層するものとする。
【0035】
次に再剥離性基材について説明する。
本実施の形態に係る機能性転写基材を構成する再剥離性基材は、基材に、対象物に接着した後も再剥離の可能な再剥離性層が積層されているものである。再剥離性基材を用いることにより、硬化完了した機能層にも接着させることができ、且つ貼り合わせた機能層を再びその他の基材へ転写することができる。このような再剥離性基材としては、従来公知のものを適宜用いればよい。
再剥離性基材を構成する基材としてはPET、PE、PC、PS、PI、COP等の高分子樹脂フィルムや、セロハン紙等の用紙や和紙でもよく、フィルム成形体、金属、ガラスなどが挙げられるが、特にPETフィルムはシワや亀裂が発生しづらい上に熱にも強く、安価で支持体としても一般的であるので好ましい。基材の厚さには特に制限はなく、適宜選択すれば良い。
【0036】
再剥離性基材を構成する再剥離性層としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系など、従来公知の樹脂および界面活性剤の単独もしくはこれらの混合物を主成分とした塗剤を適宜選択して用いれば良い。
再剥離性層の厚みとしては、目的に応じて適宜選択すれば良いが、1μm以上50μm以下であることが好ましい。1μm以下であれば、剥離力が安定せず、機能層の浮き等が発生し、50μm以上であれば、剥離力の増加によって機能層が再剥離性基材に上手く転写できなくなる、膜厚が厚くなるだけで効果がそれ以上得られず塗剤のコストだけがかかる、基材に反りが発生する、などが懸念される。
本実施の形態においては、50μmのPETフィルムにアクリル系再剥離性樹脂を10μm積層したものを用いることとする。
【0037】
本実施の形態に係る離型基材および再剥離性基材は、上述したように、離型基材と機能層との界面における剥離力(A)と、再剥離性基材と機能層との剥離力(B)とを比較したとき、(A)が(B)よりも小さいことが好ましい。そして、本実施の形態に係る再剥離性基材は、機能層との界面における剥離力が0.01N/25mm以上1N/25mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05N/25mm以上0.5N/25mm以下である。0.01N/25mmより小さいと、機能面に接着することができず機能性転写基材を得ることができない。また、剥離力が1N/25mmより大きくなると、後述する第2転写工程において、再剥離性基材が機能層から剥離できなかったり、機能層が被転写層から浮いてしまったりするため好ましくない。そのため、上記のような範囲の剥離力を有する基材を用いることが好ましいのである。
本実施の形態においては0.25N/25mmであるとする。
【0038】
以上のような材料を用いて本実施の形態に係る機能性転写基材を形成する。
次にこの機能性転写基材を用いて機能性物品を得るのであるが、その材料について説明する。
【0039】
まず、接着層について説明する。
本実施の形態に係る機能性物品を構成する接着層は、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系など従来公知の樹脂および界面活性剤の単独もしくはこれらの混合物を主成分としたものであり、機能層と被転写体とが接着するものを適宜選択して用いればよい。接着層の厚みとしては、目的に応じて適宜選択すれば良いが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。0.1μmより薄い膜厚では接着力が不安定となり、機能層が安定して転写できず、10μmより厚くなると接着力は十分だが、屈曲性の低下が懸念される。
本実施の形態においては紫外線硬化型アクリル樹脂を1μm積層したものとする。
【0040】
次に、被転写体について説明する。
本実施の形態に係る機能性物品を構成する被転写体は特に限定せず、用途に合わせて厚みや材質を適宜選択すれば良い。例えば、PET、PE、PC、PS、PI、COPなどの樹脂フィルム等のシート状物、プラスチック板、樹脂成形物、金属およびガラス等が考えられる。特に厚みが500μm以下、より好ましくは200μm以下となるような樹脂フィルムは、得られる機能性物品としての軽量化や薄膜化が可能であるだけでなく、可撓性にも優れるため、軽小短薄な用途や屈曲性が求められる用途などにも用いることができ好ましい。特にフレシキブルディスプレイなどに用いるのであれば、透過率と弾性率に優れた透明樹脂フィルム、例えば透明ポリイミドフィルムなどを用いることが好ましい。従来の製造方法であれば、このような薄い樹脂フィルムにおいては反りが生じてしまい、良好な機能性物品が得られなかったが、本実施の形態に係る機能性物品の製造方法であれば、このような反りの生じやすい被転写体であっても、反りを抑制しつつ且つ機能も発揮できる。これについては後述する。
屈曲性が必要なければもちろん500μm厚み以上のプラスチック板などを被転写体としてもよい。
本実施の形態においては、50μmの透明ポリイミドフィルムを用いることとする。
【0041】
本実施の形態における機能性転写基材および機能性物品は、必要に応じて、上記以外の層を形成しても良い。例えば、離型基材と機能層との間にハードコート層や下地層を設けても良い。このような層が存在することにより、耐擦傷性を向上させたり、被転写体と機能層との密着力を向上させたりなど、さらに様々な機能を付与することができ、良好な機能性物品とすることができる。また、必要に応じて表面処理等を行っても良い。
【0042】
以上のような材料を用いた機能性転写基材および機能性物品の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る機能性物品の製造方法は、少なくとも、離型基材の離形面に機能層を形成する機能層積層工程、機能層と再剥離性基材を貼り合わせて機能性転写基材を形成する機能性転写基材形成工程、前記機能性転写基材から離型基材を剥離して中間転写体を形成する第1転写工程、前記中間転写体の機能層側表面と被転写体とを貼り合わせる中間転写体積層工程、得られた基材から再剥離性基材を剥離し機能性物品を得る第2転写工程、からなる。
【0043】
まず、必要に応じて、基材の表面に離型層を積層し離型基材とする離型層積層工程を行う。
基材表面に離型層を積層する方法としては、従来ウェットコーティング法として知られる手法を適宜用いればよい。例えば、バーコーティング法、流延法、ローラーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、ダイレクトグラビア法、キスグラビアリバース法、スリットリバース法、等が考えられる。このように塗布した離型層を乾燥、硬化させることによって離型性を有した面、即ち離型面を有した基材を得ることができる。
本実施の形態においてはバーコーティング法によって積層するものとする。
【0044】
以上のようにして離型基材を得るのであるが、基材と機能層との密着力が弱く離型層が不要であるものや、機能層に離型機能があるもの、既に離型面を有した基材である場合、離型層積層工程は省略しても良い。
【0045】
次に、離型基材の離型面に機能層を積層する機能層積層工程を行う。
本実施の形態に係る機能層積層工程は、離型基材の離型面に、機能成分を含有した樹脂である機能性樹脂を積層してなる。このとき、機能層は、離型基材とは反対側表面、即ち空気面側に機能面を生じる。機能性樹脂を積層する方法としては、従来ウェットコーティング法として知られる手法を適宜用いればよい。例えばバーコーティング法、流延法、ローラーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、ダイレクトグラビア法、キスグラビアリバース法、スリットリバース法、等である。また、積層する樹脂の特性に合わせて、例えば、紫外線照射法、熱硬化法、電子線照射法などによって硬化処理を行ってもよい。ここで、硬化処理を行う際に雰囲気を窒素置換しても良い。雰囲気を窒素置換することで、耐久性の高い防汚層とすることができる。
本実施の形態においてはバーコーティング法を用いて塗布し、紫外線照射することで硬化させたものとする。
【0046】
ここで、得られた積層体に加熱処理を行っても良い。このような加熱処理を行う事により、硬化収縮した機能層を伸ばし、基材の反りを抑制することができる。加熱処理方法としては従来公知の手法を用いればよく、例えば温風乾燥機やIR装置などによる処理が考えられる。このような処理の条件は、用いる基材の耐熱性等を考慮し、変形やシワなどが発生せず、且つ反りの制御ができる条件を適宜検討すれば良い。
【0047】
次に再剥離性基材積層工程を行う。
本実施の形態に係る再剥離性基材積層工程は、機能層の離型基材とは反対側表面の機能面と、再剥離性基材の再剥離性層側表面とを貼り合わせて積層してなる。再剥離性層は接着性を有しているため、接着層等を用いなくとも機能層と接着することができ、且つ再剥離性を有しているので後述する第2転写工程において剥離除去することが可能となる。貼り合わせる方法としては、従来公知の方法、例えばドライラミネート方式やウェットラミネート方式などを適宜用いれば良い。
本実施の形態においてはドライラミネート方式によって積層するものとする。
【0048】
以上の製造方法によって、離型基材、機能層、再剥離性基材がこの順に積層された機能性転写基材を得ることができる。
これを用いて機能性物品の形成を行う。
【0049】
まず、上述の機能性転写基材から離型基材を剥離除去する、第1転写工程を行う。
本実施の形態に係る機能性転写基材は、両面に離型性の基材が貼り合わされているため、上述したように離型基材と機能層との剥離力(A)と、再剥離性基材と機能層との剥離力(B)とを比較して、剥離力(A)が剥離力(B)より軽いことが好ましい。このような剥離力の相関があれば、機能層が再剥離性基材に保持されたまま、離型基材の離型層と機能層との界面で剥離することができる。このとき、再剥離性基材側を固定し、離型基材を剥離すると、機能層表面にクラックが発生しにくいため好ましい。このように第一転写工程を行うことで、機能層の機能面側が再剥離性基材側として転写された中間転写体を得ることができる。
【0050】
次に中間転写体と被転写体とを接着層を介して積層する中間転写体積層工程を行う。
本実施の形態に係る中間転写体積層工程は、目的の被転写体と、中間転写体の機能層側表面とを接着層を介して貼り合わせ、接着層を硬化させることにより、被転写体に中間転写体が積層された積層体を得る。
接着層の積層方法としては、従来ウェットコーティング法として知られる手法を適宜用いればよい。例えばバーコーティング法、流延法、ローラーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法、ダイレクトグラビア法、キスグラビアリバース法、スリットリバース法、等である。このとき、被転写体に接着層を積層し、中間転写体を貼り合わせることが好ましい。また、貼り合わせる方法としては、従来公知の方法、例えばドライラミネート方式やウェットラミネート方式などを適宜用いれば良い。また、接着層の硬化方法も、用いる接着剤に応じた硬化方法を適宜選択すればよく、例えば熱硬化法、紫外線照射法などが考えられる。
本実施の形態においてはバーコーティング法を用いて接着層を積層し、ドライラミネート方式によって貼り合わせた後、紫外線照射によって硬化するものとする。
【0051】
次に、第2転写工程を行う。
本実施の形態に係る第2転写工程は、上記で得られた被転写体に中間転写体が積層された積層体から再剥離性基材を剥離することによってなる。これにより、機能層が被転写体に転写され、目的の機能性物品を得ることができる。このとき、被転写体を湾曲させると被転写体に転写された機能層にクラックが入りやすいため、被転写体を固定し、再剥離性基材を剥離することが好ましい。
本実施の形態に係る機能性物品の製造方法によれば、得られた機能性物品の機能層は、再剥離性基材側の面、即ち機能面側が最表層となるので、従来の転写法によって形成された機能性物品よりも良好な機能を発揮することができる。また、機能層が硬化収縮した状態で形成されるため、フィルムのような薄い被転写材であっても反りの小さいものとすることができるのである。
【0052】
上述した中間転写体を被転写体に積層した積層体は、言い換えれば機能性物品に再剥離性基材が貼り合わされている状態であり、再剥離性基材は保護フィルムの役割も果たすといえる。即ち、工程間において機能層が傷付いたり汚れたりすることを防ぐことができるので、第2転写工程は使用する直前に行うことが好ましい。
【0053】
上記製造工程の他、目的とする機能を阻害しない範囲で、必要に応じて任意の層を積層する工程を設けても良い。
【0054】
(実施の形態2)
以上説明した第1の実施の形態にかかる機能性転写基材および機能性物品およびその製造方法は、機能成分を機能性官能基としたが、実施の形態2においては、機能成分が微粒子である場合につき説明する。尚、基本的に先に説明した実施の形態1の場合と同様のものは、その説明を省略する。
【0055】
本実施の形態に係る機能性転写基材は、離型基材の離型層側表面に、機能成分として微粒子を含有した機能層を積層したものを、再剥離性基材と貼り合わせてなり、本実施の形態に係る機能性物品は、前記機能性転写基材から離型基材を剥離することで、機能層を再剥離性基材に転写した中間転写体をまず形成し、次いで中間転写体の機能層側表面を被転写体と接着層を介して貼り合わせた後、再剥離性基材を剥離することによって得られる。
【0056】
以下、順に説明する。
まず離型基材についてであるが、これは実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
本実施の形態においては100μmのPETフィルムの表面に、離型層としてアクリル系樹脂を1μm積層した離型基材を用いることとする。
【0057】
次に機能層について説明する。
本実施の形態に係る機能性転写基材を構成する機能層は、実施の形態1と同様に、目的とする機能を発揮する機能成分を含有した樹脂よりなり、機能成分を含有した樹脂を塗布したときに、機能層の離型基材とは反対側の表面である空気面、すなわち再剥離性基材を貼り合わせる面側に機能面を生じるものを用いる。
本実施の形態においてはそのような機能成分の中でも微粒子について説明する。
【0058】
微粒子の発揮する機能としては、滑り性、ブロッキング性など様々なものが考えられるが、特に有用であるのが防眩性である。防眩性を発揮する機能成分としては、有機または無機などからなる防眩性微粒子であることが好ましい。このような防眩性微粒子もまた、機能性官能基と同様に樹脂を離型基材に塗布した際に表面エネルギーにより空気面側へと配向する傾向があり、機能面を有するものとなる。また、機能層の膜厚よりも大きな粒径を有する微粒子であれば、機能層の空気面側に微粒子の一部が突出することで部分的に凸形状となり、機能層表面で光を散乱して防眩性を示す機能面となる。
本実施の形態においては無機防眩性微粒子を用いることとする。
【0059】
防眩性を付与する場合、本実施の形態に係るような防眩性微粒子を樹脂中に含有させるのであるが、従来の製造方法では、上記の配向性や微粒子の突出のために機能面が空気面側となる。そのため、被転写体に転写されるときに、機能面が被転写体側へと埋没されてしまい、機能層表面における光散乱効果が得られず、十分な防眩性を得ることができなかった。そこで、防眩性微粒子を様々な方法で樹脂中に分散させる方法がとられたが、微粒子が樹脂中に分散するとヘイズが上昇し、良好な透明性を得ることができず、特に視認性を求められるディスプレイ等の用途に用いることができなかった。またあるいは離型層側に微粒子を埋め込むことによって、転写後に機能層表面に凹凸を形成し、防眩性を得ようと試みたが、表面の凹凸に汚れがたまることによって防眩性が劣化し、外観も悪くなるという問題があった。
【0060】
しかし本実施の形態に係る機能性物品の製造方法であれば、機能層形成時に防眩性微粒子が空気面側に機能面を生じても機能面を表層側へとすることができる。これにより、透明性と防眩性に優れ、経年劣化しない防眩性機能物品を得ることができるのである。このことは防眩性に限らず、微粒子が空気面側に配向したり、微粒子の一部が空気面側に突出したりすることによって特定の機能が得られるものであれば同様の効果を得ることができる。
【0061】
機能層を形成する機能性樹脂の樹脂としては、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
本実施の形態においてはシリコーン系樹脂に防眩性微粒子を含有した紫外線硬化型樹脂を15μm形成するものとする。
【0062】
次に再剥離性基材について説明する。
本実施の形態に係る機能性転写基材を構成する再剥離性基材については、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0063】
ここで、再剥離性層の厚さについても特に制限はなく、実施の形態1と同様に適宜選択すれば良いが、本実施の形態においては再剥離性層が10μm以上50μm以下であるものがより好ましい。機能成分が微粒子である場合、表面に微粒子が突出することで凹凸が生じるため、再剥離性層が薄すぎると機能層との密着性を得ることができない。よって、このような機能層に貼り合わせる場合には再剥離性層が10μm以上、より好ましくは20μm以上であることが好ましい。
本実施の形態においては38μmのPETフィルムの表面にアクリル系樹脂を20μm積層したものを用いることとする。
【0064】
以上のような材料を用いて本実施の形態に係る機能性転写基材を形成する。
次にこの機能性転写基材を用いて機能性物品を得るのであるが、その材料については実施の形態1と同様であるので省略する。
また、これらの材料を用いた機能性転写基材およびそれを用いた機能性物品の製造方法についても、実施の形態1と同様であるので省略する。
【0065】
以上述べた実施の形態1および実施の形態2のような製造方法によって得られた機能性物品は、転写を複数回、より具体的に言えば、被転写体へ最終的に転写するのが偶数回目となるように行うことにより、機能面が被転写体とは反対側、すなわち表層側に現れるため、目的とする機能を良好に得ることができる。
従来機能層として用いられている機能成分を含有した樹脂は、離型基材上に形成すると、表面エネルギーにより機能成分が空気面側すなわち表層側に配向したり、機能層の空気面側に機能成分が突出したりする。これにより、空気面側に機能を発揮する機能面が生じるのであるが、従来の転写法では、機能面側が転写する際に被転写基材と貼り合わされるため、このまま被転写体に転写すると、機能面が埋没し、目的の機能を付与することができない。また、防汚機能を有した機能面と接着層との接触面では、接着層がはじかれることによって密着性が得られず、被転写体から剥離しやすいという問題も生じた。
このような問題に対して、離型基材側に機能成分が配向するよう修飾する方法や表面エネルギーの調整を行う方法などが行われてきたが、どれも自然に配向する機能面と比較するとその性能に劣る傾向があった。また、機能成分を樹脂に含有させるのではなく、離型層と樹脂層との間に層として設けることで、転写後も機能を発揮させようと試みたが、そのような層の中でも機能成分の配向が起こり、十分に機能が得られなかった。
【0066】
そこで本願発明においては、まず再剥離性基材に機能層を一度転写して中間転写体を形成し、それを用いて目的とする被転写体に再度転写を行うことによって、機能面を機能性物品の空気面側とする面の選択を行うことができ、機能を発揮できることを見出した。これにより、従来の離型基材や機能性樹脂を用いて転写形成しても、直接塗工した場合と同等の性能を発揮できるのである。
ここで、機能成分としてフッ素またはシリコーンを主としてなる防汚成分を用いれば、その表層における水の接触角が100°以下となるような優れた防汚性が、機能成分として防眩性微粒子を用いれば、蛍光灯の映り込みや、スパークリング現象を抑えるなど優れた防眩性を得ることができる。
【0067】
また、転写法によって機能層を形成するため、硬化収縮による反りが抑制されて、良好な機能性物品とすることができる。直接塗布した機能性物品の場合、被転写体によっては機能層の硬化収縮により反りが発生するため、裏面へ機能層と同様の樹脂を塗布し、反りを相殺する必要があった。しかし、一方で裏面に樹脂を塗工すると、工程数が増えることにより歩留まりが低下し、基材ロスも多くコストが上がってしまう。また、厚みも厚くなるため薄型の用途に用いることができず、屈曲性も低下する。特に硬度に関しては、裏面の樹脂層にクラックが入りやすく、評価が下がるという問題があった。
本願発明に係る機能性物品の製造方法であれば、転写法によって機能層を形成するため、硬化収縮による反りが小さい。そのため、裏面にも樹脂を塗布する必要がなく、全体の厚みが薄い屈曲性に富んだものとすることができ、且つ必要量だけ転写すれば良いため、被転写体のロスを低減させることができる。そして、裏面の樹脂層がないため、クラックによる硬度評価低下の問題も解消することができる。
【0068】
また、反りの生じやすい転写基材にも反りを発生させずに機能付与することができるため、基材を選ばずあらゆるものに機能付与することができる。中でも樹脂フィルム等のシート状物などは、厚みが500μm以下となると機能層の硬化収縮の影響で反りが発生し、特に200μm以下となるような薄いものほど影響が大きく反りが大きくなるが、本願発明に係る製造方法を用いることによって、硬化収縮の影響がなくなるため反りを抑制することができる。そのため、屈曲させる用途や軽小短薄な用途の被転写体にも反りを抑制しつつ機能性付与することが可能となる。よって、様々な被転写体において反りが10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下であるような反りの抑制された機能性物品とすることができる。
【実施例】
【0069】
以上述べたような本願発明に係る機能性転写基材および機能性物品の製造方法について、さらに実施例により説明する。尚、ここで示す実施例は、機能層が防汚性ハードコート樹脂である場合において説明を行うが、あくまでも一例であって、必ずしもこの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
厚みが100μmのPETフィルムにアクリル系樹脂を1μmバーコーターで塗布、乾燥し熱硬化させることで離型層を形成し、離型基材を得た。次いで離型基材の離型層側表面に、ウレタンアクリレートにフッ素を主とした官能基を付与した紫外線硬化型樹脂をバーコーターで5μmの厚みとなるように塗布、乾燥し、窒素環境下において紫外線照射することによって硬化させ、機能層を積層した。次に、機能層の離型基材とは反対側表面に、再剥離性基材として、PETフィルムの表面にアクリル系樹脂層を有した再剥離性基材をアクリル系樹脂層側が機能層と対向するよう貼り合わせ、ローラーで押し当てることで、目的の機能性転写基材を得た。離型基材と機能層との界面における剥離力(A)は0.03N/25mm、再剥離性基材と機能層との界面における剥離力(B)は0.25N/25mmであった。次に、被転写体としての50μmの透明ポリイミドフィルムに、接着層をバーコーターによって1μm塗布、乾燥させたものと、機能性転写基材から離型基材を剥離除去したものを、接着層と離型基材を剥離した側の機能層表面とが向かい合うように貼り合わせ、再剥離性基材側からローラーを押し当てて積層した後、紫外線を照射することによって、接着層を硬化させた。得られた積層体から再剥離性基材を剥離除去することにより、目的の機能性物品を得た。
【0071】
(比較例1)
50μmの透明ポリイミドフィルムの表面に、ウレタンアクリレートにフッ素を主とした官能基を付与した紫外線硬化型樹脂をバーコーターで5μmの厚みとなるように塗布、乾燥し、窒素環境下において紫外線照射することによって硬化させ、機能層を積層し、目的の機能性物品を得た。
【0072】
(比較例2)
50μmの透明ポリイミドフィルムの裏面に、紫外線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂を7μmバーコーターで塗布、乾燥し、紫外線照射することによって硬化させ、ハードコート層を積層した。次にポリイミドフィルムの表面に、ウレタンアクリレートにフッ素を主とした官能基を付与した紫外線硬化型樹脂をバーコーターで5μmの厚みとなるように塗布、乾燥し、窒素環境下において紫外線照射することによって硬化させ、機能層を積層し、目的の機能性物品を得た。
【0073】
(比較例3)
厚みが100μmのPETフィルムに、アクリル系樹脂を1μmバーコーターで塗布、乾燥し熱硬化させることで離型層を形成し、離型基材を得た。次いで離型基材の離型層側表面に、ウレタンアクリレートにフッ素を主とした官能基を付与した紫外線硬化型樹脂をバーコーターで5μmの厚みとなるように塗布、乾燥し、窒素環境下において紫外線照射することによって硬化させ、機能層を積層した。離型基材と機能層との界面における剥離力(A)は0.03N/25mm、再剥離性基材と機能層との界面における剥離力(B)は0.25N/25mmであった。次に、被転写体としての50μmの透明ポリイミドフィルムに、接着層をバーコーターによって1μm塗布、乾燥させたものと、前記機能層積層体とを、接着層側表面と機能層側表面とが対向するように貼り合わせ、再剥離性基材側からローラーを押し当てて積層した後、紫外線を照射することによって、接着層を硬化させた。得られた積層体から離型基材を剥離除去することにより、目的の機能性物品を得た。
【0074】
各水準の機能性物品につき、防汚性、耐久性、カール性、屈曲性、密着性、表面硬度性について評価を行った。また、上記実施例1および比較例3における剥離力は、JIS Z 0237に準じて180°剥離における剥離力を測定した結果である。
【0075】
(防汚性)
各水準の機能性物品につき、機能層表面の防汚性を評価した。評価方法は、接触角計を用いた液滴法にで水の接触角を測定することによって行い、接触角が100°以上のものを○、100°未満のものを×として、表1の「防汚性/初期」の欄に示した。
【0076】
(耐久性)
各水準の機能性物品につき、機能層表面をスチールウール#0000で、負荷1kg荷重×1000往復の条件で耐擦傷性試験を行い、その後の機能層表面における水の接触角を測定することによって耐久性評価を行った。接触角の測定は、上記防汚性評価と同様にして行った。防汚性評価と同様に、接触角が100°以上のものを○、100°未満のものを×として、表1の「防汚性/耐擦傷試験後」の欄に示した。
【0077】
(カール測定)
各水準の機能性物品につき、サンプルを10cm角にカットしたものを平坦な面上に機能層側が上になるようにして置き、平坦面からの4角の頂点の高さを定規で測定し、その最大値が3mm以下のものを◎、3mmを超えて10mm以下のものを○、10mmを超えるものを×とした。その結果を表1の「カール」欄に示す。
【0078】
(屈曲性)
各水準の機能性物品につき、U字伸縮試験によって評価した。
各水準の機能性物品において、被転写体側の曲げる大きさを6mmΦ、曲げ回数を10万回に設定し、試験後に目視で確認し、クラックが発生していないものを〇、クラックが発生しているものを×とした。
その結果を表1の「屈曲性」欄に示す。
【0079】
(密着性)
各水準の機能性物品につき、透明ポリイミドフィルムと機能層との密着性について評価を行った。測定方法はJIS K 5600−5−6のクロスカット法に準じて行い、剥がれなかったものを○、剥がれが生じたものを×とした。その結果を表1の「密着性」欄に示す。
【0080】
(表面硬度)
各水準の機能性物品の機能層側表面につき、表面硬度試験を行った。
測定方法はJIS K 5600−5−4に準じて行い、表面硬度がH以上となるものを〇、表面硬度がH未満となるものを×とした。その結果を表1の「表面硬度」欄に示す。
【0081】
(表1)
【0082】
以上の結果より、本願発明に係る機能性物品の製造方法で作成された機能性物品は、従来と比較してより良好な防汚性を有し、且つ反りが抑制され屈曲性と密着性に優れていることが分かる。
【0083】
以下、詳細に説明する。
比較例1は目的の基材に直接塗工によって機能層を設けたものであるが、機能層の硬化収縮によって反りが生じ、カール性の劣った結果となっている。比較例1の反りを抑制するために裏面にハードコート層を設けたものが比較例2であるが、カール性は良好となったものの、反面、屈曲性試験においてクラックが確認された。また比較例2は、表面硬度試験を行った後、裏面のハードコート層にクラックが入り、表面硬度評価としてもその他の水準よりも劣った結果となっている。比較例3は離型基材に形成した機能層を転写して機能性物品としたものであり、比較例1および比較例2の問題点であったカール性と屈曲性および表面硬度については良好な結果を得られた。しかし、一方で防汚性が得られず、また被転写体との密着性についても好ましくない結果が得られた。これは、機能層を形成した際に防汚成分が表層側へと配向したため、転写をすると防汚成分が被転写体側へと偏在し、表層に防汚成分が十分に存在せず、求める機能が得られなかったためと考えられる。また、防汚成分と接着層の接触面では、接着層がはじかれることによって密着性が得られなくなったものと考えられる。
一方、実施例1は転写法を用いて機能層を積層するため、比較例1および比較例2に比べ、硬化収縮による反りが小さく、比較例2のように裏面に反りを相殺する層がなくとも良好なカール性が得られる。また、そのような裏面の層がないため、屈曲性や表面硬度についても良好である。且つ転写工程を2回行うことによって防汚成分が配向した機能面が表層側へと現れるため、防汚性についても良好な結果となっており、且つ耐擦傷性試験を行ってもその性能が劣化することがない。さらには、被転写体との接着面が機能面ではないため密着性も得られ、良好な機能性物品を得ることができる。
【課題】 直接機能性樹脂を塗布した場合と同等の性能を発揮し、かつ反りの抑制された機能性物品の製造方法、およびそれに用いる機能性転写基材と、それによって得られる機能性物品を提供すること。
【解決手段】 離型基材の離型面に、空気面側が機能面となる機能層を形成し、機能面と再剥離性基材の再剥離面とを貼り合わせた後、離型基材を剥離することで、一度再剥離性基材に機能層を転写し、転写された機能層を被転写体と貼り合わせた後、再剥離性基材を剥離し、機能面が表層側となった状態で機能層が被転写体に転写されることで、良好な機能を有し、反りの抑制された機能性物品を得る。