特許第6345386号(P6345386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345386
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】回転角検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20180611BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   G01D5/20 110Q
   G01D5/244 K
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-272662(P2012-272662)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-119284(P2014-119284A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝彦
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−345419(JP,A)
【文献】 特開2004−325386(JP,A)
【文献】 特開2009−98028(JP,A)
【文献】 特開平3−100411(JP,A)
【文献】 特開2005−121626(JP,A)
【文献】 特開2005−274484(JP,A)
【文献】 特開2005−91204(JP,A)
【文献】 特開2005−147733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01L 3/00−3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の機械的回転角を検出するための複数のレゾルバと、これらレゾルバの出力信号を処理する信号処理回路とを備える回転角検出装置において、
前記信号処理回路は、前記複数のレゾルバの、それぞれの出力信号から、それぞれのレゾルバの電気角に対応する電気角信号を得るための検出信号処理部と、前記複数のレゾルバのうちの少なくとも1つのレゾルバからの入力信号の異常を検出することができる異常検出部とを備え、
前記複数のレゾルバは、第1の整数の軸倍角を有する第1のレゾルバおよび第2の整数の軸倍角を有する第2のレゾルバであり、
前記異常検出部は、前記第1のレゾルバの電気角信号および前記第2のレゾルバの電気角信号を、前記第1の整数および前記第2の整数の公倍数となるそれぞれの変換電気角信号に変換する電気角信号変換部と前記電気角信号変換部から出力された前記それぞれの変換電気角信号を比較する信号比較判定部とを備えて、
実質的な同時刻における比較判定、および前記それぞれの電気角信号ごとに、電気角信号の規則的な変化を時系列で比較する比較判定の、一方または双方の比較判定を行うことによって、
前記少なくとも1つのレゾルバからの入力信号の異常を検出することを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記異常検出部が前後角度比較判定部を備え、
前記前後角度比較判定部が、前記それぞれの電気角信号ごとに、連続した時系列の複数の時刻における複数の電気角信号の関係を比較判定して、
前記複数のレゾルバからの入力信号ごとに、異常の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角を検出するレゾルバにおける異常を検出することができる回転角検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転角検出装置は、たとえばモータ駆動されるロータの回転角の検出、自動車のパワーステアリング装置におけるトーションバーのトルク検出などにおいて使用される。こうした回転角検出装置では、たとえばロータに複数のレゾルバを装着し、これらレゾルバの電気角から、ロータの回転角やロータの駆動トルクを検出する。
【0003】
たとえば自動車のパワーステアリング装置では、ステアリングホイールで回転操作されるトーションバーの両端の回転角の相違を検出することで、ステアリングホイールの操舵角を知ることができる。しかし複数のレゾルバを使用した回転角検出装置では、1つのレゾルバに異常(レゾルバの故障、レゾルバと回転角検出装置との間の配線の断線または短絡など)が発生すると、正しい回転角検出を行うことができないため、各レゾルバについて、それぞれ個別に異常検出を行なう必要があった。
【0004】
これに対し、異なるレゾルバの、2相の各出力ライン(sin相成分出力ラインおよびcos相成分出力ライン)に、それぞれ異なる直流バイアス電圧をプルアップ抵抗などを介して印加することで、同一のレゾルバにおける2相の出力ラインの何れかの断線、同一のレゾルバにおける2相の出力ライン間の短絡、および異なるレゾルバの異なる相の出力ライン間の短絡を検出することができる。しかし、異なるレゾルバの同相の出力ライン間(直流バイアス電圧が同電圧)で短絡が生じたときには、出力ラインにおけるバイアス電に変化が生じないため、上記短絡を検出することができない。
【0005】
そこで、異なるレゾルバの同相の出力ライン間において、それらの電気角とロータの機械的回転とが一致するときの組み合わせが予め判っていることに着目し、これら電気角の組み合わせをテーブルなどに記憶しておき、異なるレゾルバの各同相の出力ライン間の信号が一致する場合には、これら信号から求められる電気角が記憶されているか否かを判定し、記憶されていないときには、異なるレゾルバの同相の出力ライン間が短絡したと判定する異常検出装置が開示されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、複数のレゾルバの異常を判定するために、信号ラインを直流バイアスして断線および短絡の複数のケースを識別し、さらに直流バイアスでは識別できない短絡を判定するために、正常時における複雑な電気角の組み合わせをテーブルで記憶する必要がある。そのため、異常判定処理が煩雑で処理時間がかかり、記憶データとレゾルバの回転角合わせにおける精度低下要因の存在という問題がある。付随的には、回路構成が複雑となり、部品点数や組立工数の増加などで製造コストがアップするという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−147733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題を解消するために、簡単な回路構成で、複数のレゾルバにおける、いずれかの異常を迅速かつ高精度で検出することができる回転角検出装置を実現することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる回転角検出装置は、回転体(ロータなど)の機械的回転角(以下、「機械角」と表記することがある)を検出するために、複数のレゾルバと、これら複数のレゾルバの出力信号を処理する信号処理回路とを備えている。信号処理回路は、複数のレゾルバの、それぞれの出力信号から、それぞれのレゾルバの電気角に対応する電気角信号を得るための検出信号処理部と、複数のレゾルバのうちの少なくとも1つのレゾルバからの入力信号の異常を検出することができる異常検出部とを備えている。
【0010】
回転体の回転に応じて回転駆動される複数のレゾルバの、それぞれの電気角に対応する電気角信号の間には、相関関係が存在する。したがって異常検出部は、それぞれの電気角信号を、実質的な同時刻において比較することで、複数のレゾルバの、少なくとも1つのレゾルバからの出力信号に異常があるか否かを判定することができる。
【0011】
なお、実質的な同時刻とは、レゾルバの機械角の時間的変化(機械角の角速度)を考慮して、機械角および電気角の検出に有意な誤差を生じない範囲の時間的誤差を許容するものである(本明細書では、「同時刻」と表記することがある。)。
【0012】
また機械的回転は必ず連続的だから、レゾルバごとに、連続した時系列(複数の時刻)における電気角信号を比較して、電気角信号の時系列の変化を検出すれば、レゾルバごとに異常の有無を判定することができる(電気角信号の不規則的な変化が検出されたとき、異常と判定される。)。
【0013】
このように異常検出部は、複数のレゾルバで得たそれぞれの電気角信号を、同時刻において比較する比較判定によって、少なくとも1つのレゾルバからの入力信号の異常を検出することができ、それぞれの電気角信号ごとに、電気角信号の時系列の変化を比較判定することで、複数のレゾルバの何れのレゾルバからの入力信号の異常を検出することができる。
【0014】
また異常検出部が、電気角信号変換部および信号比較判定部を備えてもよい。電気角信号変換部は、軸倍角が異なる複数のレゾルバの、それぞれの電気角信号を、それら電気角信号の公倍数または公約数となる、それぞれの変換電気角信号に変換する。こうして、それぞれの変換電気角信号の電気角を一致させると、複数のレゾルバからの出力信号が正常であれば、いずれの変換電気角信号も実質的に一致する。したがって信号比較判定部によって、上記変換電気角信号が実質的に一致するか否かを比較判定すれば、少なくとも1つのレゾルバからの出力信号に異常があるか否かを判定することができる。なお、変換電気角信号の実質的な一致とは、当該回転角検出装置の構成要素に許容されるバラツキなどを考慮した変換電気角信号の許容誤差範囲内での一致である。
【0015】
軸倍角が第1の整数(nX)である第1のレゾルバおよび軸倍角が第2の整数(mX)である第2のレゾルバを使用し、電気角信号変換部が、第1のレゾルバおよび第2のレゾルバの電気角信号を、第1の整数および第2の整数の公倍数(典型的には最小公倍数)となるそれぞれの変換電気角信号に変換してもよい。たとえば、第1のレゾルバの軸倍角が2であり、第2のレゾルバの軸倍角が3である場合には、第1のレゾルバの電気角を3倍の電気角に変換し、第2のレゾルバの電気角を2倍の電気角に変換することで、両者の電気角信号の最小公倍数となる変換電気角信号を得ることができる。
【0016】
また異常検出部が、前後角度比較判定部を備えてもよい。前後角度比較判定部は、それぞれのレゾルバの電気角信号ごとに、連続した時系列の複数の時刻における複数の電気角信号の関係をそれぞれ比較し、レゾルバごとに、電気角信号が時間の経過に伴って規則的な変化を示しているか否かを判定する。
【0017】
電気角は機械角と同じく必ず連続的に変化するから、上記判定において、不規則な変化(連続性なき変化)が検出されたならば、当該電気角信号を発生させたレゾルバからの出力信号には、異常があると判定できる。もちろん前後角度比較判定部は、当該回転角検出装置が備える複数のレゾルバの電気角信号を(たとえばタイムシェアリングによって)実質的に同時に比較判定する。
【0018】
上記時系列において隣接する時刻は、レゾルバの機械角の角速度を考慮した充分に短い時間間隔で配列されればよく、等時間間隔であってもよく、または回転角検出装置が機械角の時間的変化を検出したときを、時系列における次の時刻としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シンプルな異常判定処理で、したがって簡単な回路構成で、異常判定処理に時間がかかることもなく、複数のレゾルバを備えた回転角検出装置における各レゾルバの異常を迅速かつ高精度で検出することができ、正常時における複雑な電気角の組み合わせをテーブルで記憶する必要はなく、また、記憶データとレゾルバの回転角合わせにおける精度低下要因が存在するといった問題もない。また本発明によれば、回路構成が簡単なため、回転角検出装置の部品点数の削減、組立工数の削減、および製造コストの低減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明にかかる回転角検出装置の一実施形態(実施例1)における概略構成を説明するための図である。
図2図1に示す回転角検出装置が有する異常検出部の電気角信号変換部の概略構成図である。
図3図1に示す回転角検出装置における異常検出手順を示すフローチャートである。
図4】本発明にかかる回転角検出装置の他の実施形態(実施例2)における概略構成図である。
図5図4に示す回転角検出装置における異常検出手順を示すフローチャートである。
図6】本発明にかかる回転角検出装置の他の実施形態(実施例3)における概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明にかかる回転角検出装置について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明にかかる回転角検出装置の一実施形態(実施例1)における概略構成図である。
【0023】
<回転角検出装置の概略構成>
回転角検出装置1は、軸倍角(nX)が2倍の第1のレゾルバ2a、軸倍角(mX)が3倍の第2のレゾルバ2b、および信号処理回路10を有している。たとえば、第1のレゾルバ2aは回転体(図示せず)の一端側に取り付けられる一方、第2のレゾルバ2bは同回転体の他端側に取り付けられる。両レゾルバは、それらの機械角のゼロ度が回転体の回転角ゼロ度の一致するように回転体に取り付けられる。
【0024】
したがって、回転体がねじれることなく回転する場合には、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bの機械角が一致する(両レゾルバの機械角に位相差は生じない)。一方、回転時に回転体のねじれが生じる場合には、両レゾルバの機械角は、上記ねじれに対応して相違する(両レゾルバの機械角に位相差が生じる。)。
【0025】
信号処理回路10は、励磁信号制御部20、検出信号処理部30、電気角選択部40および異常検出部50を有して、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bの少なくとも一方からの出力信号に異常があるときには、この異常を検出する。
【0026】
励磁信号制御部20は、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bに励磁信号Se(たとえば、正弦波信号)を出力する。励磁信号Seで励磁された第1のレゾルバ2aは、その機械角に対応した振幅を有する正弦波信号Ss1および余弦波信号Sc1(これら信号を以下、「第1のレゾルバ2aの出力信号」と表記することがある)を出力し、同じく励磁信号Seで励磁された第2のレゾルバ2bは、その機械角に対応した振幅を有する正弦波信号Ss2および余弦波信号Sc2(これら信号を以下、「第2のレゾルバ2bの出力信号」と表記することがある)を出力する。
【0027】
検出信号処理部30は、両レゾルバの出力信号をアナログ・ディジタル変換して、第1のレゾルバ2aの電気角信号A1および第2のレゾルバ2bの電気角信号A2として出力する。第1のレゾルバ2aの電気角信号A1は、第1のレゾルバ2aからの正弦波信号Ss1の振幅および余弦波信号Sc1の振幅から求められる電気角に対応した信号であり、第2のレゾルバ2bの電気角信号A2も同様である。電気角選択部40は、電気角信号A1、A2の、少なくとも一方の電気角信号情報Axを選択して外部に出力する。
【0028】
<レゾルバからの出力信号における異常検出>
信号処理回路10は、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bからの出力信号の異常検出を、電気角信号変換部51および信号比較判定部52を有する異常検出部50によって行う。
【0029】
図2に示すように、検出信号処理部30が出力した第1のレゾルバ2aの電気角信号A1は、電気角信号変換部51が有する第1の公倍数変換部53に入力され、同様に第2のレゾルバ2bの電気角信号A2は、第2の公倍数変換部54に入力される。第1の公倍数変換部53は、第1のレゾルバ2aの電気角信号A1の電気角を3倍に変換して、変換電気角信号B1とする。第2の公倍数変換部54は、第2のレゾルバ2bの電気角信号A2の電気角を2倍に変換して、変換電気角信号B2とする(変換電気角信号B1およびB2は、いずれも機械角360度に対応する電気角が2160度となる。)。
【0030】
こうして、変換電気角信号B1およびB2の電気角を一致させることで、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bからの出力信号が正常であれば、変換電気角信号B1およびB2の変換電気角が一致する。
【0031】
したがって信号比較判定部52は、同時刻に変換電気角信号B1およびB2が一致するか否かを比較判定し、両変換電気角信号が一致すれば、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bからの出力信号が正常であると判定することができる(両レゾルバ、両レゾルバと信号処理回路10との間の配線、およびコネクタ等の電気的接続部品等が正常であると判定することができる。)。信号比較判定部52は、正常と判定した場合、判定信号Sj1を出力しない(この場合には、信号比較判定部52の出力レベルがLowレベルとなる。)。
【0032】
一方、上記判定において、両変換電気角信号が一致しないときには、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bの少なくとも一方からの出力信号が異常であると判定することができる(少なくとも一方のレゾルバ、同レゾルバと信号処理回路10との間の配線、およびコネクタ等の電気的接続部品等の何れかに、異常が発生したと判定することができる。)。この場合には、信号比較判定部52は判定信号Sj1(Highレベル)を出力する。
【0033】
なお、回転角検出装置1には、誤差が許容され、両レゾルバの変換電気角信号の一致は、許容誤差の範囲内での一致であればよい。また回転体のねじれによって両レゾルバの各機械角に相違が生じるが、こうした相違は、制御の目的から(たとえば自動車の操舵装置など)、想定内の範囲にとどまっていれば異常と判定されない。
【0034】
<異常検出手順>
図3は、回転角検出装置1における異常検出手順を示すフローチャートである。
【0035】
回転角検出装置1は、先ず、検出信号処理(ステップS1)を実行する。ステップS1では、信号処理回路10の検出信号処理部30が、第1のレゾルバ2aからの出力信号(正弦波信号Ss1および余弦波信号Sc1)、および第2のレゾルバ2bからの出力信号(正弦波信号Ss2および余弦波信号Sc2)に基づいて、電気角信号A1および電気角信号A2を生成する。
【0036】
次に回転角検出装置1は、信号変換処理(ステップS2)を実行する。ステップS2では、異常検出部50の電気角信号変換部51が、電気角信号A1および電気角信号A2を、これら電気角の公倍数の電気角信号である変換電気角信号B1およびB2に変換する。
【0037】
次に回転角検出装置1は、信号比較判定部52によって、変換電気角信号(変換信号)B1およびB2が一致している(YES)か否か(NO)を判定する(ステップS3)。変換信号が一致している場合には、回転角検出装置1は、第1のレゾルバ2aからの出力信号および第2のレゾルバ2bからの出力信号に異常はないとして、ステップS1の処理に戻る。
【0038】
変換信号が一致していない(NO)場合には、回転角検出装置1は、信号比較判定部52から判定信号Sj1を出力する(ステップS4)。
【実施例2】
【0039】
次に本発明にかかる回転角検出装置の他の実施形態(実施例2)について、図4および図5を用いて説明する。
【0040】
<回転角検出装置の概略構成>
図4に示す回転角検出装置1aにおいて、回転角検出装置1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してそれらの説明は省略する。
【0041】
回転角検出装置1aは、異常検出部50(電気角信号変換部51および信号比較判定部52を有する)に替えて、異常検出部50a(第1の前後角度比較判定部55および第2の前後角度比較判定部56を有する)を有する点で、回転角検出装置1と相違する。回転角検出装置1aでは、信号処理回路10aの検出信号処理部30が出力した第1のレゾルバ2aの電気角信号A1は第1の前後角度比較判定部55に入力され、同様に第2のレゾルバ2bの電気角信号A2は第2の前後角度比較判定部56に入力される。
【0042】
<レゾルバからの出力信号における異常検出>
第1の前後角度比較判定部55は、電気角信号A1が、時間の経過に伴う規則的な変化を示しているか否かを判定する。具体的には、第1の前後角度比較判定部55は、時系列で連続して入力された電気角信号A1の値を比較して、電気角信号A1の連続性に異常が在るか否かを判定し、異常であると判定したときには、判定信号Sj2を外部に出力する。
【0043】
たとえば、時系列上で第n番目の電気角(たとえば20度)に対応した電気角信号が得られた時刻を時系列の中心時刻とし、中心時刻の一つ前の時刻に対応した第(n―1)番目の電気角(たとえば15度)に対応した電気角信号、および中心時刻の一つ後の時刻に対応した第(n+1)番目の電気角(たとえば25度)に対応した電気角信号の、3つの電気角信号を比較して、これら第(n―1)、第(n)および第(n+1)番目の電気角に対応したそれぞれの電気角信号が時刻の経過に伴って規則的な変化(15度、20度、25度と連続性をもった変化)を示しているか否かを判定する。
【0044】
電気角は機械角と同じく必ず連続的に変化するから、上記判定において、電気角信号A1の不規則な変化(連続性なき変化)が生じたならば、第1のレゾルバ2aで得られた電気角信号A1は異常であると判定することができる(第1のレゾルバ2a、同レゾルバと信号処理回路10との間の配線、およびコネクタ等の電気的接続部品等の何れかに、異常が発生したと判定することができる。)。同様にして、第2のレゾルバ2bで得られた電気角信号A2の異常も判定することができる。
【0045】
<異常検出手順>
図5は、回転角検出装置1aにおける異常検出手順を示すフローチャートである。
【0046】
回転角検出装置1aは、先ず、検出信号処理(ステップS11)を実行する。ステップS11では、信号処理回路10の検出信号処理部30が、第1のレゾルバ2aからの出力信号および第2のレゾルバ2bからの出力信号に基づいて、電気角信号A1および電気角信号A2を生成する。
【0047】
次に回転角検出装置1aは、前後角度比較処理(ステップS12)を実行する。ステップS12では、異常検出部50aが有する第1の前後角度比較判定部55が、複数の電気角に対応した複数の電気角信号A1を比較する。電気角信号A2についても、第2の前後角度比較判定部56が同様な比較を行う。
【0048】
次に回転角検出装置1aは、ステップ12における比較の結果、電気角信号A1およびA2が規則的な変化(連続的な変化)をしているか否かを判定する(ステップS13)。両者が規則的に変化していた場合には(YESのときには)、回転角検出装置1aは、第1のレゾルバ2aからの出力信号および第2のレゾルバ2bからの出力信号に異常はないと判定して、ステップS11の処理に戻る。
【0049】
ステップS13における比較の結果、電気角信号A1が規則的に変化していなかったときには(NOのときには)、第1の前後角度比較判定部55が判定信号Sj2を外部に出力し、また電気角信号A2が規則的に変化していなかったときには(NOのときには)、第2の前後角度比較判定部56が判定信号Sj3を外部に出力する(ステップS14)。もちろん、電気角信号A1およびA2の両方が規則的に変化していなかったときには、判定信号Sj2およびSj3の両方が出力される。
【実施例3】
【0050】
次に本発明にかかる回転角検出装置の他の実施形態(実施例3)について、図6を用いて説明する。
【0051】
図6に示す回転角検出装置1bは、信号処理回路10bの構成が、回転角検出装置1の信号処理回路10および回転角検出装置1aの信号処理回路10aと相違する。具体的には、回転角検出装置1bは、信号処理回路10bの異常検出部50bが、各レゾルバの電気角信号を変換して異常を検出するレゾルバ電気角信号変換部51および信号比較判定部52を有するとともに、各レゾルバの電気角信号が規則的な変化をしているか否かを判定する第1の前後角度比較判定部55および第2の前後角度比較判定部56を有する点において、回転角検出装置1および回転角検出装置1aと相違する。
【0052】
したがって、回転角検出装置1bは、回転角検出装置1と同様に、第1のレゾルバ2aおよび第2のレゾルバ2bの少なくとも一方からの出力信号が異常であると判定することができるとともに、回転角検出装置1aと同様に、第1のレゾルバ2aで得られた電気角信号A1の異常、および第2のレゾルバ2bで得られた電気角信号A2の異常を判定することができる。
【0053】
なお本発明にかかる回転角検出装置およびその異常検出処理手順は、上記各実施例に記載されたものに限定されず、その趣旨を変更することなく適宜変形して実施することができる。
【0054】
例えば、レゾルバは、その数は2つに限定されず、また2相出力型に限定されない。
【0055】
電気角信号変換部を有する回転角検出装置(実施例1)では、レゾルバの軸倍角は実施例のものに限定されず、各レゾルバが同じ軸倍角であってもよい。この場合には、各レゾルバの電気角は等倍(典型的には1倍)される。また電気角信号変換部は公倍数変換部に替えて、公約数変換部を有するものであってもよい。電気角信号変換部によって複数のレゾルバの各電気角が同一の電気角に変換されればよいのである。電気角信号の変換は、乗算処理等で行うことができるが、あらかじめ用意した変換テーブルによって行ってもよい。
【0056】
前後角度比較判定部を有する回転角検出装置(実施例2)において、比較する電気角信号の数は、第(n―1)番目、第(n)番目および第(n+1)番目の3つに限定されず、少なくとも第(n―1)番目および第(n)番目の2つあればよい(第(n)番目および第(n+1)番目の2つでもよい。)。そうすれば、電気角信号の変化における異常の有無および機械角の増減方向を判定することができる。また電気角信号の規則的な変化の判定における、電気角信号の変移量は、都度乗算処理等で求めることができるが、あらかじめ用意した変換テーブルで求めてもよい。
【0057】
信号処理装置は、その一部または全部を集積回路としてもよく、検出信号処理部は、一般的なR/D(レゾルバ−デジタル変換)LSIであってもよい。回転角検出装置の各構成要素は、ハードウェアで構成することもでき、あるはソフトウェア処理によるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかる回転角検出装置は、工業的に製造および使用などすることができるから、また商取引の対象となるから、本発明は経済的価値を有して産業上利用することができる発明である。
【符号の説明】
【0059】
1a、1b、1c 回転角検出装置
2a、2b レゾルバ
10、10a、10b 信号処理回路
20 励磁信号制御部
30 検出信号処理部
40 電気角選択部
50、50a、50b 異常検出部
51 電気角信号変換部
52 信号比較判定部
53、54 公倍数変換部
55、56 前後角度比較判定部
A1、A2 電気角信号
Ax 電気角信号情報
B1、B2 変換電気角信号
Sc1、Sc2 レゾルバの余弦波信号
Ss1、Ss2 レゾルバの正弦波信号
Sj1、Sj2、Sj3 判定信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6