(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料集合体において、前記最外層燃料棒の少なくとも四隅の燃料棒の燃料装荷部の上端が他の燃料棒よりも低くしてあることを特徴とする燃料集合体。
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料集合体において、前記第2層燃料棒の少なくとも四隅の燃料棒の燃料装荷部の上端が他の燃料棒よりも低くしてあることを特徴とする燃料集合体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
1.原子炉
図1は本実施形態に係る燃料集合体を適用する原子炉の一構成例の概略構成を表す縦断面図である。本実施形態では、燃料集合体を沸騰水型原子炉(BWR)に適用した場合を例示する。
図1に示すように、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器(原子炉容器)103(以下、RPVという。)は、炉心シュラウド102、気水分離器106及び蒸気乾燥器107を収納している。炉心シュラウド102は複数の燃料集合体(後述する)が装荷された炉心105を格納している。炉心シュラウド102の下方には、下部プレナム122が形成されている。気水分離器106は炉心シュラウド102の上方に設けられ、蒸気と水を含む気液二相流から蒸気を分離する機能を有している。蒸気乾燥器107は気水分離器106の上方に設けられ、気水分離器106から供給された蒸気から湿分を除去する機能を有している。RPV103には主蒸気配管108及び給水配管109が設けられている。主蒸気配管108は蒸気タービン(不図示)に接続し、蒸気乾燥器107から供給された蒸気を蒸気タービンに送り出す機能を有する。給水配管109は蒸気タービンに接続する復水器(不図示)に接続し、復水器から供給された水をRPV103内に導く機能を有する。RPV103と炉心シュラウド102の間には環状のダウンカマ104が形成され、下部プレナム122と接続している。ダウンカマ104には冷却材(冷却水)を吐出するインターナルポンプ115が取り付けられている。次に、炉心105に装荷された燃料集合体について説明する。
【0012】
2.燃料集合体
図2は本実施形態に係る燃料集合体の縦断面図、
図3は本実施形態に係る燃料集合体を炉心に装荷したときの水平断面図である。
図2に示すように、燃料集合体1は上部タイプレート5、下部タイプレート6、チャンネルボックス7、燃料スペーサ8、燃料棒10及び水ロッド(WR)11を備えている。
【0013】
図3に示すように、チャンネルボックス7は水平断面が正方形状の四角筒状の部材である。チャンネルボックス7の内側には燃料棒10及び水ロッド11が上下方向に延在して収容されている(
図2を参照)。燃料棒10及び水ロッド11については後述する。チャンネルボックス7の外側には制御棒(CR)9が配置されている。制御棒9は支持部12、及び支持部12に接続した延在部14を備えている。延在部14はチャンネルボックス7の外壁面に対向するように支持部12から四方(
図3の紙面において上下左右の各方向)に延在している。制御棒9は支持部12を中心に上下左右に対称な十字形の水平断面を有している。なお、
図3では支持部12から上方向及び左方向に延在する延在部14を省略している。チャンネルボックス7のコーナー部(本実施形態ではコーナー部7A)にはチャンネルファスナ(不図示)が設けられている。
【0014】
チャンネルファスナは、燃料集合体1を炉心105に装荷したときに、隣接する燃料集合体1同士の間に制御棒9を配置するための隙間を確保する機能を有する。チャンネルファスナを上部タイプレート5に接続すると、チャンネルボックス7のコーナー部7Aと制御棒9の支持部12とが対向するように、上部タイプレート5に対してチャンネルボックス7が固定される。
【0015】
上部タイプレート5はチャンネルボックス7内の上方に配置され、燃料棒10及び水ロッド11の上端部を保持している。下部タイプレート6はチャンネルボックス7内の下方に配置され、燃料棒10及び水ロッド11の下端部を支持している。燃料スペーサ8は、上部タイプレート5と下部タイプレート6との間に所定の間隔で配置されている。燃料スペーサ8は、互いに隣接する燃料棒10の間、及び燃料棒10と水ロッド11の間に隙間が形成されるように燃料棒10及び水ロッド11を保持している。互いに隣接する燃料棒10の間、及び燃料棒10と水ロッド11の間に形成された隙間には冷却水が流通する。
【0016】
チャンネルボックス7内には複数の燃料棒10が格子状に配置されている。燃料棒10は被覆管(不図示)を備えた棒状部材である。燃料棒10の被覆管には複数の燃料ペレット(不図示)が充填され、密封されている。燃料棒10は10行10列で配置されている。燃料棒10は最外層燃料棒2と内層燃料棒13とに分けられる。最外層燃料棒2はチャンネルボックス7の内壁面に対向するように配置された最も外側の層を構成する燃料棒である。内層燃料棒13は最外層燃料棒2よりも内側に配置された8×8の燃料棒である。なお、本実施形態では、内層燃料棒13のうち最外層燃料棒2に隣接する燃料棒、つまり内層燃料棒13のうち最も外側の層を構成する燃料棒を第2層燃料棒3という。チャンネルボックス7の中央付近には2本の水ロッド11が配置されている。水ロッド11は内層燃料棒13よりも太径に形成された管路で、内層燃料棒13の4本分の領域を占有している。水ロッド11内には冷却水が流通している。なお、本実施形態は、第2層燃料棒3の内側に配置された第3層燃料棒、第4層燃料棒及び第5層燃料棒の径を第2層燃料棒3の径と同一にした場合を例示している。そのため、第2層燃料棒3よりも内側に配置された燃料棒の断面積についても第2層燃料棒3の断面積を用いて便宜的に説明する。
【0017】
3.基本動作
次に、原子炉の動作について説明する。インターナルポンプ115から吐出された冷却水は、下部プレナム122を経て炉心シュラウド102に下側から供給される。炉心シュラウド102に供給された冷却水は炉心シュラウド102内の炉心105で加熱され、水及び蒸気を含む気液二相流として炉心シュラウド102から送り出される。炉心シュラウド102から送り出された気液二相流は気水分離器106に流入し、蒸気と水に分離される。分離された蒸気は蒸気乾燥器107に供給され、更に湿分を除去された後、主蒸気配管108を介して蒸気タービンに供給される。蒸気タービンは供給された蒸気により回転する。蒸気タービンの回転に伴い蒸気タービンに接続した発電機(不図示)が回転し、電力が発生する。蒸気タービンを駆動させた蒸気は復水器内で凝縮されて水になり、給水配管109を介してRPV103に供給される。一方、気水分離器106及び蒸気乾燥器107で分離された水はダウンカマ104を流下し、冷却水として下部プレナム122に供給される。
【0018】
4.熱的余裕
次に、燃料集合体1における燃料棒10の要素と熱的余裕との関係について説明する。なお、本発明において、燃料棒の要素とは、燃料棒に封入される核燃料物質、燃料棒の径、燃料の濃縮度(燃料棒に充填される燃料ペレットの濃縮度)及び燃料棒の配置ピッチ等のことを言う。
【0019】
・燃料棒に封入される核燃料物質
核燃料物質の核分裂に伴い発生した中性子は、減速材である水との衝突により減速してエネルギーを失い熱中性子になる。熱中性子は再び核燃料物質に吸収されて核分裂を起こすため、多くの熱中性子が存在する領域では効率よく核分裂を起こすことができる。上述のように、中性子は水との衝突により熱中性子になるため、沸騰していない冷却水が多く存在する領域ほど多くの熱中性子が存在し、熱中性子束が大きくなる。本実施形態に係る沸騰水型原子炉では、チャンネルボックス7の内側に燃料集合体1の発熱によって沸騰した冷却水が存在し、チャンネルボックス7の外側や水ロッド11内には沸騰していない冷却水が存在している。特に、燃料集合体1と隣接する他の燃料集合体との間の隙間(ギャップ領域)には沸騰していない冷却水が多く存在している。
【0020】
上述のように、ギャップ領域には沸騰していない冷却水が多く存在しているため、ギャップ領域に近い領域では熱中性子束が大きく、核燃料物質の核分裂が起こりやすい。したがって、ギャップ領域に近い領域に配置された最外層燃料棒2には核分裂を起こしにくい核燃料物質を封入することもできる。例えば、ウラン238は核分裂を起こしにくい核燃料物質であって、中性子を吸収することで核分裂を起こしやすい物質(核分裂性物質)に変化する親物質である。核燃料物質の核分裂と同様、親物質に対する中性子の吸収性は、中性子が熱中性子になるエネルギー領域で高まるため、熱中性子束が大きな領域では親物質の核分裂性物質への変化が起こりやすい。したがって、ウラン238のような親物質でも最外層燃料棒2に封入することができる。
【0021】
・燃料棒の径
最外層燃料棒2に封入する核燃料物質量を増やすためには、最外層燃料棒2の径を大きくすれば良い。一般的に、燃料棒は円柱形状であり、燃料棒を製造する上で対応し易いためである。
【0022】
・燃料の濃縮度
最外層燃料棒2は熱中性子束が大きいため出力も大きくなる。したがって、特に、チャンネルボックス7の各コーナー部に配置された最外層燃料棒2に対しては、封入する核燃料物質の濃縮度を低減する等の燃料設計を行い、熱的余裕を確保している。
【0023】
・燃料棒の配置ピッチ
しかし、出力ピーキング=燃料棒出力/(燃料集合体出力/燃料棒本数)は最外層燃料棒2の出力の増加に伴って増加する。したがって、単に最外層燃料棒2に封入する核燃料物質量を増やすと、最外層燃料棒2の熱的余裕がより厳しくなる。そのため、最外層燃料棒2に封入する核燃料物質量を増やした場合には最外層燃料棒2の熱的余裕の確保を考慮する必要がある。
【0024】
熱的余裕が減少する要因として冷却水不足がある。燃料棒の径を大きくした場合には燃料棒間の冷却水流路が狭くなるため、燃料棒間の冷却水量も減少する。最外層燃料棒2はチャンネルボックス7の内壁面に隣接しているため、最外層燃料棒2の外側(チャンネルボックス7の内壁面との間)の流路は非加熱壁に接触しているが、内側(第2層燃料棒3に対向する側)の流路は第2層燃料棒3等の加熱壁のみに接触している。したがって、最外層燃料棒2の径を大きくした場合、最外層燃料棒2の外側の流路よりも内側の流路のほうが熱的余裕が厳しくなる。そのため、最外層燃料棒2の内側の流路を広く確保する必要がある。最外層燃料棒2の内側の流路を広く確保する方法として、例えば、最外層燃料棒2の配置ピッチを大きくする方法がある。
【0025】
本願の発明者らは鋭意研究の結果、次の知見を得た。以下、説明する。
【0026】
5.知見1
燃料棒を格子状に配列した燃料集合体では、ある層(便宜的にA層とする)を構成する燃料棒の配置ピッチを大きくするとA層により形成される正方形は大きくなり、配置ピッチを小さくするとA層により形成される正方形は小さくなる。したがって、燃料棒の配置ピッチの差が大きい2層の間(配置ピッチが大きい燃料棒で構成される層と配置ピッチが小さい燃料棒で構成される層との間)では、冷却水流路を広く確保することができる。しかし、チャンネルボックス7の内幅を考慮して燃料棒を配置する必要があるため燃料棒の配置ピッチには上限があり、冷却水流路を広く確保することにより得られる効果も限定的なものとなる。
【0027】
本実施形態では、チャンネルボックス7内に径が異なる燃料棒を配置した。具体的には、最外層燃料棒2の径R1を基準径(燃料集合体1の全ての燃料棒の径を同一とした場合の各燃料棒の径)より大きくし、内層燃料棒13の径R2を基準径より小さくして、最外層燃料棒2の平均径を燃料集合体1の全ての燃料棒の平均径より大きくした。この構成では、最外層燃料棒2の出力が増加しつつ、内層燃料棒13の出力が減少するため、基本構成(燃料集合体1の全ての燃料棒の径を同一とした構成)における熱的余裕を維持することができる。また、内層燃料棒13の配置ピッチP2を小さくし、最外層燃料棒2の平均の配置ピッチを第2層燃料棒3の平均の配置ピッチより大きくした。この構成により、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3との間の冷却水流路を広く確保し、最外層燃料棒2の熱的余裕を増加させることができる。なお、本実施形態では、内層燃料棒13の配置ピッチP2を一様とし、最外層燃料棒2の配置ピッチP1を一様としている。
【0028】
さらに、本実施形態では、燃料棒の熱的等価直径Xを式(1)の様に定義する。
X=4S/πR・・・(1)
但し、R:燃料棒の径 S:燃料棒格子に含まれる冷却水の流路断面積である。
【0029】
本発明において、燃料棒の熱的等価直径とは、同径の
隣合う4本の燃料棒で形成した
「仮想的な」燃料棒格子の中での燃料棒の加熱壁の長さと冷却水の流路断面積との割合を示す値のことを言う。
なお、本発明における仮想的な燃料棒格子は、最外層燃料棒2により定義されるものと内層燃料棒13により定義されるものの2つがある。
【0030】
燃料棒格子に含まれる冷却水の流路断面積Sは式(2)で求まる。
S=P
2−πR
2/4・・・(2)
但し、P:燃料棒の配置ピッチである。
【0031】
なお、内層燃料棒13の平均の配置ピッチが最外層燃料棒2の平均の配置ピッチより小さい場合、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3との間にいずれの燃料棒格子にも含まれない冷却水流路が存在する。本実施形態では、この冷却水流路を最外層燃料棒2の燃料棒格子に含まれる冷却水流路とし、各最外層燃料棒2に均等に割り振ることとしている。
【0032】
式(1)に示すように、燃料棒の熱的等価直径Xが大きいほど燃料棒の周長に対する冷却水の流路断面積の割合が増加するため、燃料棒の熱的余裕が増加する。したがって、出力が同一の燃料棒においては、熱的等価直径Xが大きいほど燃料棒の熱的余裕が増加する。
【0033】
最外層燃料棒2及び内層燃料棒13の熱的等価直径と熱的余裕との関係を説明する。最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径をX1、内層燃料棒13の平均の熱的等価直径をX2とすると、燃料集合体1の各燃料棒の径及び配置ピッチが同一の場合、X1とX2の比は1.0となる。チャンネルボックス7の大きさが同じであれば、X1とX2の比が1.0より大きい場合には、最外層燃料棒2の熱的余裕は増加し、内層燃料棒13の熱的余裕は減少する。
図4は、燃料集合体1における燃料棒10の要素と熱的余裕との関係を示す図であって、X1とX2の比X1/X2と燃料集合体1の熱的余裕の相対値との関係を表している。
図4は、最外層部(最外層燃料棒2で構成される層)の出力ピーキングを1.1(従来の出力ピーキング)とした場合におけるX1とX2の比が1.0となる位置を基準とし、最外層部の出力ピーキングを従来の出力ピーキングよりも高くした場合におけるX1とX2の比と燃料集合体1の熱的余裕との関係を表している。なお、最外層部の出力ピーキングを従来の出力ピーキングよりも高くした場合とは、例えば、最外層部の出力ピーキングを従来の出力ピーキングより約10%高い1.2とした場合を言う。
図4に示すように、X1とX2の比が1.0より大きく1.4より小さい範囲内にある場合には、燃料集合体1の熱的余裕が基準より増加する。一方、X1とX2の比が1.4より大きい場合には、内層燃料棒13の熱的余裕が最外層燃料棒2の熱的余裕の増加分より減少し、燃料集合体1の熱的余裕が基準より減少する。
【0034】
6.知見2
最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径X1、最外層燃料棒2の平均の濃縮度e1、内層燃料棒13の平均の熱的等価直径X2及び内層燃料棒13の平均の濃縮度e2と、燃料集合体1の熱的余裕との関係を説明する。燃料棒の熱的余裕は熱的等価直径/熱流束の値が大きいほど改善される。最外層燃料棒の平均の熱流束をQ1、内層燃料棒の平均の熱流速をQ2とした場合、X1をe1で除した値とX2をe2で除した値の比(X1/e1)/(X2/e2)は、X1をQ1で除した値とX2をQ2で除した値の比と同等である。
図5は、燃料集合体1における燃料棒10の要素と熱的余裕との関係を示す図であって、X1をe1で除した値とX2をe2で除した値の比と、燃料集合体1の熱的余裕との関係を表している。
図5に示すように、X1をe1で除した値とX2をe2で除した値の比が1.0より大きく1.3より小さい範囲内にある場合には、燃料集合体1の熱的余裕が基準より増加する。これは、e1/e2の値が、従来の基準である0.9から1.0〜1.1の範囲まで増加したことに対応する。
【0035】
本実施形態の燃料集合体は、最外層燃料棒2の径を燃料集合体1の全ての燃料棒の径を同一とした場合の各燃料棒の径より大きくし、内層燃料棒13の径を燃料集合体1の全ての燃料棒の径を同一とした場合の各燃料棒の径よりも小さくした。また、内層燃料棒13の配置ピッチを小さくし、最外層燃料棒2の平均の配置ピッチを第2層燃料棒3の平均の配置ピッチより大きくすることで、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3との間の冷却水流路を広く確保することができ、最外層燃料棒2の熱的余裕を増加させることできる。特に、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径X1と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径X2の比が1.0より大きく1.4より小さい範囲内にある場合には、燃料集合体1の熱的余裕をより増加させることができる。さらに、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径X1を最外層燃料棒2の平均の濃縮度e1で除した値と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径X2を内層燃料棒13の平均の濃縮度e2で除した値の比が1.0より大きく1.3より小さい範囲内にある場合には、燃料集合体1の熱的余裕をより増加させることができる。上記構成を備え、且つ、上記いずれかの条件を満たす燃料集合体は、最外層燃料棒2に対する核燃料物質量を増加しつつ熱的余裕を高めることができ、核燃料物質の交換頻度を抑制し経済性が向上する。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、
図3において、チャンネルボックス7の内幅(L)を約13.4cm、最外層燃料棒2の径R1を約1.11cm、内層燃料棒13の径R2を約0.97cm、水ロッド11の径を約2.5cmとする。また、最外層燃料棒2及び内層燃料棒13を形成する標準燃料棒に充填される燃料ペレットの領域長さ、すなわち燃料有効長を3.7mとする。
【0037】
最外層燃料棒2は等しい配置ピッチP1で配置され、本実施例では配置ピッチP1を約1.30cmとする。また、内層燃料棒13も等しい配置ピッチで配置され、本実施例では配置ピッチP2を約1.24cmとする。
【0038】
各燃料棒に充填される燃料ペレットは、核燃料物質である二酸化ウランを用いて製造され、核分裂性物質であるウラン−235を含んでいる。本実施例では、最外層燃料棒2の平均の濃縮度を約4.8wt%、内層燃料棒13の平均の濃縮度を約4.7wt%とする。
【0039】
本実施例では、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比は約
1.26となり、1.0から1.4の範囲内に収まる。また、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比は約
1.29となり、1.0から1.3の範囲内に収まる。したがって、本実施例の燃料集合体によれば、上述の効果が得ることができる。
【実施例2】
【0040】
本実施例では、
図3において、最外層燃料棒2の径R1を約1.08cm、内層燃料棒13の径R2を約0.99cmとする。また、最外層燃料棒2の配置ピッチP1を約1.30cm、内層燃料棒13の配置ピッチP2を約1.24cmとする。また、最外層燃料棒2の平均の濃縮度を約4.8wt%、内層燃料棒13の平均濃縮度を4.7wt%とする。その他の条件は、実施例1と同様である。
【0041】
本実施例では、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比は約
1.08となり、1.0から1.4の範囲内に収まる。また、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と、内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比は約
1.11となり、1.0から1.3の範囲内に収まる。したがって、本実施例の燃料集合体によれば、上述の効果が得ることができる。
【実施例3】
【0042】
本実施例では、
図3において、最外層燃料棒2の径R1を約1.11cm、内層燃料棒13の径R2を約0.97cmとする。また、最外層燃料棒2の配置ピッチP1を約1.31cm、内層燃料棒13の配置ピッチP2を約1.24cmとする。また、最外層燃料棒2の平均の濃縮度を約4.8wt%、内層燃料棒13の平均の濃縮度を4.7wt%とする。その他の条件は、実施例1と同様である。
【0043】
本実施例では、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比は約
1.22となり、1.0から1.4の範囲内に収まる。また、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と、内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比は約
1.25となり、1.0から1.3の範囲内に収まる。したがって、本実施例の燃料集合体によれば、上述の効果が得ることができる。
【0044】
<第2実施形態>
図6は本実施形態に係る燃料集合体を炉心に装荷したときの水平断面図である。
図6において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0045】
図6に示すように、本実施形態に係る燃料集合体21では、チャ
ンネルボックス7の水平断面における一列当たりの最外層燃料棒2の配置数を9本とし、チャンネルボックス7に配置される最外層燃料棒2の本数を32本としている。内層燃料棒13は8×8で配置されている。本実施形態では、最外層燃料棒2の配置ピッチと第2層燃料棒3の配置ピッチの比が、最外層燃料棒2の一列当たりの本数を第2層燃料棒3の一列当たりの本数で除した値よりも大きくなっている。すなわち、前記最外層燃料棒の一列当たりの本数をNとしたとき、前記第2層燃料棒の一列当たりの本数がN−1であり、前記最外層燃料棒の配置ピッチと前記第2層燃料棒の配置ピッチの比がN/(N−1)よりも大きくなっている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0046】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0047】
本実施形態は、チャ
ンネルボックス7の水平断面における一列当たりの最外層燃料棒2の配置数を9本としている。そのため、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3の間隔を第1実施形態よりも広く確保することができる。したがって、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3との間を流れる冷却水の流量を増加させ、最外層燃料棒2の熱的余裕をより増加させることができる。また、チャンネルボックス7の最外層燃料棒2の総本数は減少するものの、最外層燃料棒2の径を第1実施形態よりも大きくすることができるため最外層燃料棒2に封入する核燃料物質量をより増やし、その出力を確保することができる。
【実施例4】
【0048】
本実施例では、
図6において、最外層燃料棒2の径R1を約1.25cm、内層燃料棒13の径R2を約0.97cmとする。また、最外層燃料棒2の配置ピッチP1を約1.46cm、内層燃料棒13の配置ピッチP2を約1.24cmとする。また、最外層燃料棒2の平均の濃縮度を約4.8wt%、内層燃料棒13の平均の濃縮度を約4.7wt%とする。また、燃料集合体1の全ての燃料棒の径の平均は約1.0cmであり、最外層燃料棒2の径よりも小さくなっている。
【0049】
本実施例では、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比は約
1.14となり、1.0から1.4の範囲内に収まる。また、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と、内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比は約
1.16となり、1.0から1.3の範囲内に収まる。したがって、本実施例の燃料集合体によれば、上述の効果が得ることができる。
【0050】
<第3実施形態>
図7は本実施形態に係る燃料集合体を炉心に装荷したときの水平断面図である。
図7において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、本実施形態は、第1実施形態の燃料集合体1のチャンネルボックス7に配置された最外層燃料棒2のうちチャンネルボックス7の四隅に配置された燃料棒を部分長燃料棒32(点線で図示)とした。本発明において、部分長燃料棒とは、標準燃料棒内に充填される燃料ペレットの領域の長さである燃料有効長よりも、その燃料有効長が短い燃料棒をいう。下部タイプレート6を基準とした部分長燃料棒32の上端部は標準燃料棒の上端部より低くなっている。すなわち、部分長燃料棒32の燃料装荷部の上端は標準燃料棒の燃料装荷部の上端よりも低くなっている。部分長燃料棒32の構成は他の最外層燃料棒2と同様である。なお、
図7は、部分長燃料棒32の上端部よりも上側であって、標準燃料棒の燃料有効長の範囲内の位置における燃料集合体31の水平断面である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態は、第1実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0053】
チャンネルボックス7の四隅に配置される最外層燃料棒2は、非加熱壁に隣接する面積が他の最外層燃料棒2よりも大きくなる。本実施形態では、チャンネルボックス7の四隅に部分長燃料棒32を配置しているため、燃料集合体31の上方、すなわち冷却水の流れ方向の下流側における最外層燃料棒2の本数を減らすことができる。したがって、燃料集合体31の水平断面における出力ピーキングを減少させ、燃料集合体31の熱的余裕をより増加させることができる。
【0054】
また、出力が高い最外層燃料棒2付近ではボイド率が高くなる。本発明において、ボイド率とは、冷却水の単位体積あたりに含まれるボイド(気泡)の容積の割合のことを言う。そのため、冷却水の流れ方向の上流側で発生したボイドが下流側に向かって流れる過程で周囲のボイドと結合し、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3の間の冷却水の流れが妨げられる可能性がある。これに対し、本実施形態は、チャンネルボックス7の四隅に部分長燃料棒32を配置しているため、冷却水の流れ方向の下流側であって最外層燃料棒2の四隅の上方に空間を確保することができる。したがって、冷却水の流れ方向の上流側で発生したボイドを下流側の空間に円滑に導くことができ、ボイド同士の結合を抑制することができる。そのため、最外層燃料棒2と第2層燃料棒3の間の冷却水の流れが妨げられることを抑制し、燃料集合体1の圧力損失を減少させることができる。
【0055】
なお、本実施形態は、第1実施形態の燃料集合体1のチャンネルボックス7の四隅に配置された最外層燃料棒2を部分長燃料棒32とした場合を例示した。しかし、第2実施形態の燃料集合体21のチャンネルボックス7の四隅に配置された最外層燃料棒2を部分長燃料棒32としても良い。
【実施例5】
【0056】
本実施例では、
図7において、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比、及び、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比を実施例1と同値とする。最外層燃料棒2と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比は約
1.26となり、1.0から1.4の範囲内に収まる。また、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比は約
1.29となり、1.0から1.3の範囲内に収まる。したがって、本実施例の燃料集合体によれば、上述の効果が得ることができる。
【0057】
<第4実施形態>
図8は本実施形態に係る燃料集合体を炉心に装荷したときの水平断面図である。
図8において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、本実施形態は、第1実施形態の燃料集合体1のチャンネルボックス7に配置された第2層燃料棒3のうち四隅(チャンネルボックス7の四隅に対応する角部)に配置された燃料棒を部分長燃料棒42(点線で図示)とした。部分長燃料棒42の構成は第1実施形態の最外層燃料棒2と同様である。なお、
図8は、部分長燃料棒42の上端部よりも上側であって、標準燃料棒の燃料有効長の範囲内の位置における燃料集合体41の水平断面である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0059】
本実施形態は、第1実施形態と同様の効果に加えて、次の効果が得られる。
【0060】
本実施形態は、第2層燃料棒3のうち四隅に配置された燃料棒を部分長燃料棒42としている。そのため、冷却水の流れ方向の下流側であって第2層燃料棒3の四隅の上方に空間を確保することができる。したがって、この空間付近の最外層燃料棒2の熱的余裕を増加させることができる。
【0061】
また、本実施形態は、全ての最外層燃料棒2を標準燃料棒としているため、最外層燃料棒2に封入する核燃料物質量を第3実施形態よりも増やすことができる。したがって、最外層燃料棒2のうち、特に四隅に配置された最外層燃料棒2の出力を第3実施形態よりも増加させることができる。加えて、第2層燃料棒3の四隅の上方に空間が形成される分、冷却水流路を拡大することができるため、冷却水の流量を増やし、熱的余裕を増加させることができる。
【0062】
なお、本実施形態は、第1実施形態の燃料集合体1の第2層燃料棒3の四隅に配置された燃料棒を部分長燃料棒42とした場合を例示した。しかし、第2実施形態の燃料集合体21の第2層燃料棒3の四隅に配置された燃料棒を部分長燃料棒42としても良い。
【実施例6】
【0063】
本実施例では、
図8において、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比、及び、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と、内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比を実施例1と同値とする。最外層燃料棒2と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径の比は約
1.26となり、1.0から1.4の範囲内に収まる。また、最外層燃料棒2の平均の熱的等価直径を最外層燃料棒2の平均の濃縮度で除した値と内層燃料棒13の平均の熱的等価直径を内層燃料棒13の平均の濃縮度で除した値の比は約
1.29となり、1.0から1.3の範囲内に収まる。したがって、本実施例の燃料集合体によれば、上述の効果が得ることができる。
【0064】
<その他>
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0065】
各実施形態において、チャンネルボックス7内に2本の水ロッド11を配置した場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の本質的効果は、熱的余裕を確保しつつ核燃料物質量を増加させることができる燃料集合体を提供することであり、この本質的効果を得る限りにおいては、水ロッドの本数は限定されない。例えば、3本以上の水ロッド11を配置してもよい。