特許第6345512号(P6345512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345512
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/26 20060101AFI20180611BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 7/24 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 1/44 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20180611BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20180611BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20180611BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20180611BHJP
【FI】
   C11D7/26
   C11D7/32
   C11D7/50
   C11D7/24
   C11D1/44
   C11D1/72
   C11D3/20
   C11D3/30
   C11D3/43
   C11D3/18
   C11D3/37
   B08B3/12 Z
   B08B3/08 Z
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-135358(P2014-135358)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-14081(P2016-14081A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀巳
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/020199(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/081071(WO,A1)
【文献】 特開平08−157887(JP,A)
【文献】 特開平07−195044(JP,A)
【文献】 特開2009−298940(JP,A)
【文献】 特開平09−087668(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024141(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0152286(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/027673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
B08B 3/00−3/14
C23G 1/00−5/06
H01L 21/447−21/449
H01L 21/60−21/607
H05K 3/32−3/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A)、下記式(I)で表される化合物(成分B)、水(成分C)、及び、選択的に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分(成分D)を含有し、
成分A及び成分Dの合計の含有量が、90.0質量%以上91.5質量%以下であり、
成分Bの含有量が、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、
成分Cの含有量が、5.0質量%以上9.0質量%以下であり、
成分Dの含有量が、0質量%以上8.0質量%以下である、
半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物。
【化1】
[上記式(I)において、R1は水素原子、メチル基、エチル基又はアミノエチル基、R2は水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基又はエチル基、R3はヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【請求項2】
成分Dを含有しない、請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、炭化水素(成分E)を含有する、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分F)を含む、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに、炭素数8以上18以下の炭化水素基を有するポリアルキレングリコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤(成分G)を含む、請求項1から4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
さらに、シリコーン系消泡剤(成分H)を含む、請求項1から5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
リフローされた半田を有する被洗浄物を請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する、半田フラックス残渣の洗浄方法。
【請求項8】
被洗浄物が、部品が半田で半田付けされた電子部品の製造中間物である、請求項7記載の洗浄方法。
【請求項9】
半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付けにより回路基板上に搭載する工程、及び、前記搭載物を請求項7又は8に記載のフラックス残渣の洗浄方法により洗浄する工程を含む、電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物の電子部品の洗浄への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物、半田フラックス残渣の洗浄方法及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板やセラミック基板への電子部品の実装に関しては、低消費電力、高速処理といった観点から、部品が小型化し、半田フラックスの洗浄においては洗浄すべき隙間が狭くなってきている。また、環境安全面から鉛フリー半田が用いられるようになってきており、これに伴いロジン系フラックスが用いられている。
【0003】
特許文献1には、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを90.0質量%、及び、メチルジエタノールアミンを5.0質量%含有する洗浄剤(実施例10)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを94.0質量%、及び、ジエタノールアミンを1.0質量%含有する洗浄剤(実施例8)等が開示される。
【0004】
特許文献2には、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを92.5質量%、ジエタノールアミンを1質量%、及び、p−トルエンスルホン酸を1質量%含有する洗浄剤等が開示されている(実施例6)。
【0005】
特許文献3には、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを91質量%、及び、トリエタノールアミンを1.5質量%含有する洗浄剤等が開示されている(実施例B)。
【0006】
特許文献4には、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを92.0質量%、N−ブチルジエタノールアミンを1.5質量%、及び、クエン酸を0.5質量%含有する洗浄剤等が開示されている(実施例6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2011/081071
【特許文献2】特開2009−298940号公報
【特許文献3】特開平8−157887号公報
【特許文献4】特表2009−20199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の鉛フリー化に伴い、1)リフロー温度の高温化、2)半田金属中のスズ含有量増加が原因で除去困難なロジン酸等のスズ塩がフラックス残渣中に増えたため、既存の洗浄剤では残存してしまうという問題がある。一方で、洗浄性の良いものは電極に用いる銅を腐食してしまうという問題が生じる。さらに、低消費電力、高速処理といった観点から、部品が小型化し洗浄すべき隙間が狭くなってきているため、浸透力が高く、狭い隙間のフラックス残渣を溶解できるものが望まれている。上述の特許文献の洗浄剤でも更なる洗浄性と浸透性の向上が望まれる。
【0009】
そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対する洗浄性が優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物を提供する。また、本開示は、一又は複数の実施形態において、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対して、銅腐食抑制及び発泡抑制が良好でありながら、洗浄性、及び、狭い隙間への浸透性に優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一又は複数の実施形態において、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A)、下記式(I)で表される化合物(成分B)、水(成分C)、及び、選択的に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分(成分D)を含有し、成分A及び成分Dの合計の含有量が、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、成分Bの含有量が、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、成分Cの含有量が、5.0質量%以上9.0質量%以下であり、成分Dの含有量が、0質量%以上8.0質量%以下である、半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物に関する。
【化1】
[上記式(I)において、R1は水素原子、メチル基、エチル基又はアミノエチル基、R2は水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基又はエチル基、R3はヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【0011】
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、リフローされた半田を有する被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する、半田フラックス残渣の洗浄方法に関する。
【0012】
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付けにより回路基板上に搭載する工程、及び、前記搭載物を本開示に係るフラックス残渣の洗浄方法により洗浄する工程を含む電子部品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対する洗浄性が優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物、それを用いた洗浄方法、及び、それを用いた電子部品の製造方法を提供できる。また、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対して、銅腐食抑制及び発泡抑制が良好でありながら、洗浄性、及び、狭い隙間への浸透性に優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物、それを用いた洗浄方法、及び、それを用いた電子部品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、所定量のジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A)と所定量の式(I)で表される化合物(成分B)と所定量の水(成分C)とを含有する洗浄剤組成物が半田フラックス残渣に対して優れた洗浄性を示すという知見に基づく。また、本開示は、該洗浄剤組成物は、銅腐食抑制及び発泡抑制が良好でありながら、洗浄性に加え、狭い隙間への浸透性が向上しうるという知見に基づく。
【0015】
すなわち、本開示は一態様において、エチレングリコールモノブチルエーテル(成分A)、前記式(I)で表される化合物(成分B)、水(成分C)、及び、選択的に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分(成分D)を含有し、
成分A及び成分Dの合計の含有量が、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、
成分Bの含有量が、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、
成分Cの含有量が、5.0質量%以上9.0質量%以下であり、
成分Dの含有量が、0質量%以上8.0質量%以下である、
半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物(以下、「本開示に係る洗浄剤組成物」ともいう。)に関する。
【0016】
本開示に係る洗浄剤組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。すなわち、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A)は半田フラックスとの親和性が高く、成分Aを多量に含有することで、洗浄剤組成物の表面張力が低くなり狭い隙間の半田フラックス残渣を溶解し洗浄するところ、特定のアルカノールアミン(成分B)と水(成分C)をそれぞれ所定量含むことによる半田フラックス残渣中への浸透による膨潤作用により、洗浄性が向上すると考えられる。成分Aと構造が類似する成分Dは、成分Aよりも半田フラックスとの親和性が劣り、狭い隙間の洗浄性が低下するため、特定量以下にする必要があると考えられる。また、アルカノールアミン(成分B)は銅腐食性を有するが、含有量を限定することで銅の腐食が抑制されると考えられる。さらに、各成分を特定量とすることで、発泡性が良好に維持されていると考えられる。但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0017】
本開示において「フラックス」とは半田付けに使用されるロジン又はロジン誘導体を含有するロジン系フラックスをいい、本開示において「半田付け」はリフロー方式及びフロー方式の半田付けを含む。本開示において「半田フラックス」とは、半田とフラックスとの混合物をいう。回路基板上に他の部品(例えば、半導体チップ、チップ型コンデンサ、他の回路基板など)が積層して搭載されると前記回路基板と前記他の部品との間に空間(隙間)が形成される。前記搭載のために使用されるフラックスは、リフローなどにより半田付けされた後に、フラックス残渣としてこの隙間にも残存しうる。本開示において「半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物」とは、フラックス又は半田フラックスを用いて半田付けした後のフラックス残渣を洗浄するための洗浄剤組成物をいう。本開示に係る洗浄剤組成物による洗浄性及び狭い隙間への浸透性の顕著な効果発現の点から、半田は鉛(Pb)フリー半田であることが好ましい。
【0018】
[成分A]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Aは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。なお、本開示において、ブチル基は、特に言及がない場合、n−ブチル基をいう。
【0019】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは82.0質量%以上、より好ましくは84.0質量%以上、さらに好ましくは86.0質量%以上が、よりさらに好ましくは90.0質量%以上である。また、成分Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは92.0質量%以下、より好ましくは91.5質量%以下、さらに好ましくは91.0質量%以下である。また、成分Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは84.0質量%以上92.0質量%以下、より好ましくは86.0質量%以上91.5質量%以下、さらに好ましくは90.0質量%以上91.0質量%以下である。
【0020】
また、洗浄剤組成物に後述する成分Dを含まない場合の成分Aの含有量は、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは90.5質量%以上、より好ましくは90.7質量%以上である。また、成分Aと成分Dとの合計の含有量は、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは91.5質量%以下、より好ましくは91.0質量%以下である。
【0021】
[成分D]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Aは、一又は複数の実施形態において、その一部がその他のグリコールエーテル(成分D)と置換していてもよい。成分Dとしては、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分が挙げられる。これらの中でも、成分Dは、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくはトリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分、より好ましくはトリエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0022】
本開示に係る洗浄剤組成物が成分Dを含有する場合、成分Aと成分Dとの合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、成分Dを含まない場合の成分Aの含有量(上述)と同様である。すなわち、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、好ましくは90.5質量%以上、より好ましくは90.7質量%以上である。また、成分Aと成分Dとの合計の含有量は、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは91.5質量%以下、より好ましくは91.0質量%以下である。また、成分Aと成分Dとの合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは90.5質量%以上91.5質量%以下、より好ましくは90.7質量%以上91.0質量%以下である。
【0023】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Aの成分Dとの置換量、すなわち、本開示に係る洗浄剤組成物における成分Dの含有量は、一又は複数の実施形態において、0質量%を超え、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上である。また、成分Dの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下である。
【0024】
本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、成分Dを含まない。また、本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、成分Dを含む。
【0025】
[成分B]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Bは、下記式(I)で表される1又は複数種類のアルカノールアミンである。
【化2】
[上記式(I)において、R1は水素原子、メチル基、エチル基又はアミノエチル基、R2は水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基又はエチル基、R3はヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【0026】
成分Bのアルカノールアミンとしては、一又は複数の実施形態において、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、並びに、これらのアルキル化物及びアミノアルキル化物が挙げられ、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノエチルモノエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミン及びモノアミノエチルイソプロパノールアミンが好ましく、ジエタノールアミン、モノエチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン及びモノアミノエチルイソプロパノールアミンがより好ましく、モノエチルモノエタノールアミン及びモノメチルジエタノールアミンがより好ましい。
【0027】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Bの含有量は、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、成分Bの含有量は、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。また、成分Bの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、0.3質量%以上3.0質量%以下であって、好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上2.0質量%以下である。成分Bは、上記式(I)で表される単独の化合物であってもよく、上記式(I)で表される複数種類の化合物からなるものであってもよい
【0028】
[成分C]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Cは、水である。水は、蒸留水、イオン交換水、又は超純水等が使用され得る。本開示に係る洗浄剤組成物における成分Cの含有量は、一又は複数の実施形態において、5.0質量%以上9.0質量%以下であり、引火性を低減する観点から、好ましくは5.5質量%以上、より好ましくは6.5質量%以上である。また、成分Cの含有量は、5.0質量%以上9.0質量%以下であり、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる観点から、好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは7.5質量%以下である。成分Cの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる点及び引火性を低減する観点から、好ましくは5.5質量%以上8.0質量%以下、より好ましくは6.5質量%以上7.5質量%以下である。
【0029】
[洗浄剤組成物のその他の成分]
本開示に係る洗浄剤組成物において成分A、B、C及びDの総含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる点から、98.0質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは99.0質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは99.7質量%以上100質量%以下である。したがって、本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、好ましくは0質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上1.3質量%以下、さらにより好ましくは0質量%以上1.0質量%以下の範囲で、その他の成分を含んでもよい。
【0030】
[成分E]
本開示に係る洗浄剤組成物におけるその他の成分としては、一又は複数の実施形態において、発泡性の抑制の観点から、炭化水素(成分E)が挙げられる。成分Eとしては、一又は複数の実施形態において、好ましくは炭素数10以上、より好ましくは炭素数12以上であり、そして好ましくは炭素数18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下の不飽和結合を有する又は有さない炭化水素が挙げられる。成分Eは、さらなる一又は複数の実施形態において、同様の観点から、ドデセン、テトラデセンが挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物における成分Eの含有量は、発泡性の抑制の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、そして好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、さらにより好ましくは1.0質量%以下である。
【0031】
[成分F]
本開示に係る洗浄剤組成物におけるその他の成分としては、その他の一又は複数の実施形態において、すすぎ性向上の観点から、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分F)が挙げられる。成分Fのアルキル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下である。成分Fのアルキレングリコールは、好ましくはエチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上、より好ましくはエチレングリコールである。成分Fのアルキレングリコールの平均付加モル数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。成分Fとしては、一又は複数の実施形態において、下記式(II)で表されるものが挙げられる。
【化3】
[式(II)において、R4は炭素数8〜18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、n及びmは、それぞれ、EOの平均付加モル数を示す。]
【0032】
上記式(II)において、R4は、すすぎ性向上の観点から、好ましくは炭素数10〜14の炭化水素基であり、n+mは、同様の観点から、好ましくは3以上6以下である。
【0033】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Fの含有量は、すすぎ性向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、そして好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である。
【0034】
[成分G]
本開示に係る洗浄剤組成物におけるその他の成分としては、その他の一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、炭素数8以上18以下の炭化水素基を有するポリアルキレングリコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤(成分G)が挙げられる。成分Gの炭化水素基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。成分Gの炭化水素基としては、好ましくは1級又は2級であり、より好ましくは1級である。成分Gのアルキレングリコールは、好ましくはエチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上、より好ましくはエチレングリコール及びプロピレングリコールを有する化合物である。成分Gのアルキレングリコールの平均付加モル数は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下である。成分Gとしては、一又は複数の実施形態において、下記式(III)で表される非イオン界面活性剤が挙げられる。
【化4】
[式(III)において、R5は炭素数8〜18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。p、q、及びrは、それぞれ、EO、POの平均付加モル数を示し、それぞれ、0〜15の数であって、p及びrは同時に0とならず、かつ、q>0の場合はq≦p+r≦30、q=0の場合はr=0である。]
【0035】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Gの含有量は、、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、そして好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である。
【0036】
[成分H]
本開示に係る洗浄剤組成物におけるその他の成分としては、その他の一又は複数の実施形態において、発泡性の抑制の観点から、シリコーン系消泡剤(成分H)が挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物における成分Hの含有量は、、発泡性の抑制の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、そして好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.3質量%以下である。
【0037】
さらなるその他の成分として、本開示に係る洗浄剤組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常洗浄剤に用いられる、ヒドロキシエチルアミノ酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等のアミノカルボン酸塩等のキレート力を持つ化合物、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、ヤシ脂肪酸メチルや酢酸ベンジル等のエステルあるいはアルコール類等を適宜併用することができる。
【0038】
[洗浄剤組成物の調製方法]
本開示における洗浄剤組成物の調製方法は、何ら制限されず、成分A、成分B、成分C及び必要に応じて成分D等を混合することによって調製できる。
【0039】
[フラックス残渣の洗浄方法]
本開示は、その他の態様において、リフローされた半田を有する被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物に接触させることを含む、半田フラックス残渣の洗浄方法に関する(以下、本開示に係る洗浄方法ともいう)。本開示に係る洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、リフローされた半田を有する被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する。被洗浄物に本開示に係る洗浄剤組成物を接触させる方法、又は、被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する方法としては、一又は複数の実施形態において、超音波洗浄装置の浴槽内で接触させる方法や、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)などが挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物は、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。本開示の洗浄方法は、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。本開示の洗浄方法であれば、半田付けした部品の隙間に残存するフラックス残渣を効率よく洗浄できる。本開示の洗浄方法による洗浄性及び狭い隙間への浸透性の顕著な効果発現の点から、半田は鉛(Pb)フリー半田であることが好ましい。本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示に係る洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的強いものであることがより好ましい。前記超音波としては、一又は複数の実施形態において、26〜72Hz、80〜1500Wが好ましく、36〜72Hz、80〜1500Wがより好ましい。
【0040】
[被洗浄物]
本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、電子部品の洗浄に使用される。被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、リフローされた半田を有する被洗浄物が挙げられ、その他の一又は複数の実施形態において、部品が半田付けされた電子部品の製造中間物が挙げられ、或いは、半田付けされた部品の隙間にフラックス残渣を含む製造中間物が挙げられる。前記製造中間物は、半導体パッケージや半導体装置を含む電子部品の製造工程における中間製造物であって、例えば、回路基板上にフラックスを使用した半田付けにより半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板などが搭載された物を含む。被洗浄物における隙間とは、例えば、回路基板とその回路基板に半田付けされて搭載された部品(半導体チップ、チップ型コンデンサ、回路基板など)との間に形成される空間であって、その高さ(部品間の距離)が、例えば、5〜500μm、10〜250μm、或いは20〜100μmの空間をいう。隙間の幅及び奥行きは、搭載される部品や回路基板上の電極(ランド)の大きさや間隔に依存する。
【0041】
[電子部品の製造方法]
本開示の電子部品の製造方法は、半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付により回路基板上に搭載する工程、及び、本開示の洗浄方法により前記搭載物を洗浄する工程を含む。フラックスを使用した半田付けは、一又は複数の実施形態において、鉛フリー半田で行われるものであり、リフロー方式でもよく、フロー方式でもよい。電子部品は、半導体チップが未搭載の半導体パッケージ、半導体チップが搭載された半導体パッケージ、及び、半導体装置を含む。本開示の電子部品の製造方法は、本開示の洗浄方法を行うことにより、半田付けされた部品の隙間に残存するフラックス残渣が低減され、フラックス残渣が残留することに起因する電極間でのショートや接着不良が抑制されるから、信頼性の高い電子部品の製造が可能になる。また、本開示の洗浄方法を行うことにより、半田付けされた部品の隙間に残存するフラックス残渣の洗浄が容易になることから、洗浄時間が短縮化でき、電子部品の製造効率を向上できる。
【0042】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0043】
<1> ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A)、下記式(I)で表される化合物(成分B)、水(成分C)、及び、選択的に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分(成分D)を含有し、
成分A及び成分Dの合計の含有量が、90.0質量%以上92.0質量%以下であり、
成分Bの含有量が、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、
成分Cの含有量が、5.0質量%以上9.0質量%以下であり、
成分Dの含有量が、0質量%以上8.0質量%以下である、
半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物。
【化5】
[上記式(I)において、R1は水素原子、メチル基、エチル基又はアミノエチル基、R2は水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メチル基又はエチル基、R3はヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【0044】
<2> 前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは82.0質量%以上、より好ましくは84.0質量%以上、さらに好ましくは86.0質量%以上が、よりさらに好ましくは90.0質量%以上である、<1>記載の洗浄剤組成物。
<3> 前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは92.0質量%以下、より好ましくは91.5質量%以下、さらに好ましくは91.0質量%以下である、<1>又は<2>に記載の洗浄剤組成物。
<4> 前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは84.0質量%以上92.0質量%以下、より好ましくは86.0質量%以上91.5質量%以下、さらに好ましくは90.0質量%以上91.0質量%以下である、<1>から<3>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<5> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含まない場合、前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、90.0質量%以上であり、好ましくは90.5質量%以上、より好ましくは90.7質量%以上である、<1>から<4>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<6> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含まない場合、前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、92.0質量%以下であり、好ましくは91.5質量%以下、より好ましくは91.0質量%以下である、<1>から<5>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<7> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含まない場合、前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは90.5質量%以上91.5質量%以下、より好ましくは90.7質量%以上91.0質量%以下である、<1>から<6>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<8> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含む場合、前記洗浄剤組成物における成分Aと成分Dとの合計の含有量が、90.0質量%以上であり、好ましくは90.5質量%以上、より好ましくは90.7質量%以上である、<1>から<7>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<9> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含む場合、前記洗浄剤組成物における成分Aと成分Dとの合計の含有量が、92.0質量%以下であり、好ましくは91.5質量%以下、より好ましくは91.0質量%以下である、<1>から<8>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<10> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含む場合、前記洗浄剤組成物における成分Aと成分Dとの合計の含有量が、好ましくは90.5質量%以上91.5質量%以下、より好ましくは90.7質量%以上91.0質量%以下である、<1>から<9>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<11> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含む場合、前記洗浄剤組成物における成分Dの含有量が0質量%を超え、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上である、<1>から<10>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<12> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含む場合、前記洗浄剤組成物における成分Dの含有量が、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下である、<1>から<11>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<13> 前記洗浄剤組成物が成分Dを含有しない、<1>から<12>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<14> 前記洗浄剤組成物における成分Bの含有量が、0.3質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である、<1>から<13>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<15> 前記洗浄剤組成物における成分Bの含有量が、3.0質量%以下であり、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である、<1>から<14>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<16> 前記洗浄剤組成物における成分Bの含有量が、好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上2.0質量%以下である、<1>から<15>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<17> 前記洗浄剤組成物における成分Cの含有量が、5.0質量%以上であり、好ましくは5.5質量%以上、より好ましくは6.5質量%以上である、<1>から<16>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<18> 前記洗浄剤組成物における成分Cの含有量が、9.0質量%以下であり、好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは7.5質量%以下である、<1>から<17>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<19> 前記洗浄剤組成物における成分Cの含有量が、好ましくは5.5質量%以上8.0質量%以下、より好ましくは6.5質量%以上7.5質量%以下である、<1>から<18>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<20> 前記洗浄剤組成物における成分A、B、C及びDの総含有量は、好ましくは98.0質量%以上100質量%以下、より好ましくは99.0質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは99.7質量%以上100質量%以下である、<1>から<19>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<21> さらに、炭化水素(成分E)を含有する、<1>から<20>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<22> 前記成分Eが、好ましくは炭素数10以上、より好ましくは炭素数12以上であり、そして好ましくは炭素数18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下の不飽和結合を有する又は有さない炭化水素である、<21>に記載の洗浄剤組成物。
<23> 前記洗浄剤組成物における成分Eの含有量が、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、そして好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、さらにより好ましくは1.0質量%以下である、<21>又は<22>に記載の洗浄剤組成物。
<24> さらに、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分F)を含有する、<1>から<23>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<25> 前記洗浄剤組成物における成分Fの含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、そして好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である、<24>に記載の洗浄剤組成物。
<26> さらに、炭素数8以上18以下の炭化水素基を有するポリアルキレングリコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤(成分G)を含む、<1>から<25>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<27> 前記洗浄剤組成物における成分Gの含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、そして好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下である、<26>に記載の洗浄剤組成物。
<28> さらに、シリコーン系消泡剤(成分H)を含む、<1>から<27>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<29> 前記洗浄剤組成物における成分Hの含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、そして好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.3質量%以下である、<28>に記載の洗浄剤組成物。
<30> リフローされた半田を有する被洗浄物を<1>から<29>のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する、半田フラックス残渣の洗浄方法。
<31> 被洗浄物が、部品が半田で半田付けされた電子部品の製造中間物である、<30>の洗浄方法。
<32> 半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付けにより回路基板上に搭載する工程、及び、前記搭載物を<30>又は<31>に記載のフラックス残渣の洗浄方法により洗浄する工程を含む、電子部品の製造方法。
<33> <1>から<29>のいずれかに記載の洗浄剤組成物の電子部品の洗浄への使用。
【実施例】
【0045】
1.洗浄剤組成物の調製(実施例1〜11、比較例1〜18)
下記表1に示す成分A〜C、及び必要に応じてその他の成分(表1)を混合し、実施例1〜11、比較例1〜18の洗浄剤組成物を調製した。下記表1の成分A〜H及びその他の成分の数値は、調製した洗浄剤組成物における含有量(質量%)を示す。
【0046】
表1における成分F「*1」及び「*2」は、下記の化合物である。
成分*1:下記式(II)で表されるポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤であって、R4が炭素数12の炭化水素基であり、n+mが4のもの。
成分*2:下記式(II)で表されるポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤であって、R4が炭素数12の炭化水素基であり、n+mが10のもの。
【化6】
[式(II)において、R4は炭素数8〜18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、n及びmは、それぞれ、EOの平均付加モル数を示す。]
【0047】
表1における成分G「*3」及び「*4」は、下記の化合物である。
成分*3:下記式(III)で表されるポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤であって、R5が炭素数12及び14の1級炭化水素基の混合物であり、p=5、q=2、r=5のもの。
成分*4:下記式(III)で表されるポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル型非イオン界面活性剤であって、R5が炭素数12の2級炭化水素基であり、p=5、q=r=0のもの。
【化7】
[式(III)において、R5は炭素数8〜18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。p、q、及びrは、それぞれ、EO、POの平均付加モル数を示し、それぞれ、0〜15の数であって、p及びrは同時に0とならず、かつ、q>0の場合はq≦p+r≦30、q=0の場合はr=0である。]
【0048】
2.洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1〜11及び比較例1〜18の洗浄剤組成物を用いてテスト基板の洗浄性(洗浄性1及2)、ガラス毛細管試験、腐食性、並びに発泡性について試験を行い、評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
[洗浄性試験(洗浄性1)]
以下の条件でテスト基板を洗浄する洗浄性試験を行った。
〔テスト基板〕
チップコンデンサ(2012)を10個搭載したテスト基板(50mm×50mm、チップコンデンサと基板の隙間は約50μm)を用いた。ソルダーペーストには鉛フリーのエコソルダーM705−BPS(千住金属工業(株)製)、リフロー炉にはエコリフローSNR825(千住金属工業(株)製)を用い、リフローピーク温度240℃、半田溶融時間45秒、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で半田接続した。
〔洗浄方法〕
洗浄は洗浄液への浸漬で行った。まず、[1]各洗浄剤組成物を満たした1Lビーカー、[2]プレリンス用のイオン交換水を満たした1Lビーカー、[3]仕上げリンス用のイオン交換水を満たした1Lビーカーを用意し、それぞれのビーカーを60℃水浴内で加温する。まず、テスト基板を[1]のビーカー内に浸漬し、超音波(40kHz、600W)を5分間照射して洗浄する。次に、該テスト基板を[2]のビーカーに浸漬し、超音波(40kHz、600W)を5分間照射してプレリンスを行う。そして、該テスト基板を[3]のビーカー内に浸漬し、超音波(40kHz、600W)を5分間照射して仕上げリンスを行う。最後に、送風乾燥機(85℃、15分)で乾燥する。
〔洗浄性の評価〕
乾燥後のテスト基板からチップコンデンサを剥離し、光学顕微鏡にてフラックス残渣の残存有無を確認した。評価基準は以下の通り。その結果を表1の「洗浄性1」の欄に示す。
○:10個中残渣あるものゼロ
△:10個中残渣あるもの1個
×:10個中残渣あるもの2個以上
【0050】
[洗浄性試験(洗浄性2)]
上記洗浄性試験(洗浄性1)と同様の方法で、洗浄時間、プレリンス時間、及び、仕上げリンス時間を、それぞれ1分間に短くして評価した。その結果を表1の「洗浄性2」の欄に示す。
【0051】
[ガラス毛細管試験]
窒素雰囲気下にて銅板上でエコソルダーM705−BPS(千住金属工業(株)製)を250℃、30分間加熱して、液状のフラックス残渣を分離採取する。DRUMMOND製ガラスキャップ(ガラス毛細管)(長さ32mm、内径140μm)に上記方法にて作成したフラックス残渣を充填し一方の開口部を封止して試験片を作成した。100mLビーカーに各洗浄剤組成物及びすすぎ用イオン交換水を各100g加え60℃に加温する。試験片を各洗浄剤組成物に浸漬し超音波(40kHz、200W)を5分間照射後、すすぎ用イオン交換水に移し超音波(40kHz、200W)を5分間照射後取り出した。取り出した試験片を光学顕微鏡にて観察し、開口部から溶解したフラックス残渣の距離を測定し、5点の平均値を算出した。フラックス残渣が溶解した距離が長いほど溶解速度が速く洗浄性が良いと評価できる。その結果を表1に示す。
【0052】
[腐食性]
各洗浄剤組成物を1Lビーカーに満たして60℃に加温し、その中へ厚さ1mmの銅板(30mm×50mm)を入れ10分間浸漬。その後イオン交換水にて十分にすすぎ、送風乾燥機(85℃、15分)で乾燥し、銅板の表面状態を観察した。評価基準は以下の通り。その結果を表1に示す。
○:変色無し
×:変色あり
【0053】
[発泡性]
窒素雰囲気下にて銅板上でエコソルダーM705−BPS(千住金属工業(株)製)を250℃、30分間加熱して、液状のフラックス残渣を分離採取した。上記条件にて作成したフラックス残渣を1質量%含有する各洗浄剤組成物をイオン交換水にて10倍に希釈し、その50mLを200mL共栓付きメスフラスコに加え、60℃に加温し、上下に激しく30回振とうした。1分後の泡高さを測定し、下記の基準にて評価した。その結果を表1に示す。
◎:泡無し
○:5mL未満
×:5mL以上
【0054】
【表1】
【0055】
上記表1に示すとおり、実施例1〜11の洗浄剤組成物は、比較例1〜18の洗浄剤組成物と比べて優れた洗浄性を示し、かつ、ガラス毛細管試験の結果、すなわち、浸透性も概ね優れた結果を示した。また、実施例1〜11の洗浄剤組成物は、比較例4の洗浄剤組成物よりも腐食性が低い点で優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示を用いることにより、半田付けされた部品の隙間に残存するフラックス残渣の洗浄が良好に行えることから、例えば、電子部品の製造プロセスにおけるフラックス残渣の洗浄工程の短縮化及び製造される電子部品の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。