特許第6345574号(P6345574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6345574使用済み制御棒の切断方法及びこの切断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6345574
(24)【登録日】2018年6月1日
(45)【発行日】2018年6月20日
(54)【発明の名称】使用済み制御棒の切断方法及びこの切断システム
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20180611BHJP
【FI】
   G21F9/30 531G
   G21F9/30 531K
   G21F9/30 531J
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-230048(P2014-230048)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-95169(P2016-95169A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】舘村 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】米谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 森男
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−223923(JP,A)
【文献】 特開昭49−133989(JP,A)
【文献】 特開2007−010632(JP,A)
【文献】 特開昭62−189000(JP,A)
【文献】 特開昭61−253497(JP,A)
【文献】 特開平11−352293(JP,A)
【文献】 特開2014−188657(JP,A)
【文献】 米国特許第4434092(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0074302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
B26D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子吸収粉体が内部に充填された使用済み制御棒を、水中で加圧して圧縮部を形成し、該圧縮部を加熱溶融して溶融固化部を形成した後、該溶融固化部を切断する使用済み制御棒の切断方法であって、
前記圧縮部の形成は、ローラ機構を備えたプレスパンチにより前記使用済み制御棒を加圧しながら、該ローラ機構により前記プレスパンチを前記使用済み制御棒の軸心方向に移動させ、該使用済み制御棒を圧延して行うことを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項2】
中性子吸収粉体が内部に充填された使用済み制御棒を、水中で加圧して圧縮部を形成し、該圧縮部を加熱溶融して溶融固化部を形成した後、該溶融固化部を切断する使用済み制御棒の切断方法であって、
ヒータが内蔵されたヒータ内蔵プレスパンチを使用し、該プレスパンチによる加圧部分を前記ヒータにより加熱しながら加圧することを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項3】
中性子吸収粉体が内部に充填された使用済み制御棒を、水中で加圧して圧縮部を形成し、該圧縮部を加熱溶融して溶融固化部を形成した後、該溶融固化部を切断する使用済み制御棒の切断方法であって、
照射口近傍に熱対流板が設けられたプラズマ照射トーチを用いて、前記圧縮部を加熱溶融することを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項4】
請求項に記載の使用済み制御棒の切断方法であって、
前記ヒータが内蔵されたプレスパンチにより形成された圧縮部を、前記ヒータの熱により加熱溶融して溶融固化部を形成することを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の使用済み制御棒の切断方法であって、
前記溶融固化部の切断により形成された切断面が該溶融固化部により封止されていることを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の使用済み制御棒の切断方法であって、
前記圧縮部の形成は、一の加圧部分を中心として、その近傍を複数回加圧して行うことを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項7】
請求項1または3に記載の使用済み制御棒の切断方法であって、
前記圧縮部は、加圧前の前記使用済み制御棒の厚さの半分の厚さの30〜70%の範囲の凹み量で形成し、前記圧縮部の加熱溶融は、プラズマ切断時の照射エネルギー量の16分の1から8分の1の範囲の照射エネルギー量で、該圧縮部にプラズマ照射して行うことを特徴とする使用済み制御棒の切断方法。
【請求項8】
貯蔵プールの隔離水槽内に設けられる使用済み制御棒の切断システムであって、
使用済み制御棒を固定するブレード固定ユニットと、
前記使用済み制御棒をプレス部材により加圧して圧縮部を形成するプレスユニットと、
前記圧縮部に向けてプラズマ照射部材によりプラズマを照射し、照射領域に溶融固化部を形成するプラズマ照射ユニットと、を有し
前記プレスユニットは、ローラ機構を備えたプレスパンチにより前記使用済み制御棒を加圧しながら、該ローラ機構により前記プレスパンチを前記使用済み制御棒の軸心方向に移動させ、該使用済み制御棒を圧延して行うことを特徴とする使用済み制御棒の切断システム。
【請求項9】
貯蔵プールの隔離水槽内に設けられる使用済み制御棒の切断システムであって、
使用済み制御棒を固定するブレード固定ユニットと、
前記使用済み制御棒を加圧して圧縮部を形成するプレスユニットと、
を有し、
前記プレスユニットは、ヒータが内蔵されたヒータ内蔵プレスパンチを使用し、該プレスパンチによる加圧部分を前記ヒータにより加熱しながら加圧することを特徴とする使用済み制御棒の切断システム。
【請求項10】
貯蔵プールの隔離水槽内に設けられる使用済み制御棒の切断システムであって、
使用済み制御棒を固定するブレード固定ユニットと、
前記使用済み制御棒をプレス部材により加圧して圧縮部を形成するプレスユニットと、
前記圧縮部に向けてプラズマ照射部材によりプラズマを照射し、照射領域に溶融固化部を形成するプラズマ照射ユニットと、を有し
前記プラズマ照射ユニットは、照射口近傍に熱対流板が設けられたプラズマ照射トーチを用いて、前記圧縮部を加熱溶融することを特徴とする使用済み制御棒の切断システム。
【請求項11】
請求項9に記載の使用済み制御棒の切断システムであって、
前記ヒータが内蔵されたプレスパンチにより形成された圧縮部を、前記ヒータの熱により加熱溶融して溶融固化部を形成することを特徴とする使用済み制御棒の切断システム。
【請求項12】
請求項8または10に記載の使用済み制御棒の切断システムであって、
前記プレスユニットは、前記使用済み制御棒の切断予定箇所に前記プレス部材を移動させる移動機構を有しており、
前記プラズマ照射ユニットは、前記圧縮部に前記プラズマ照射部材を移動させる移動機構を有するとともに、該プラズマ照射部材によりプラズマ照射されたプラズマ照射領域が溶融固化部を形成するように、該プラズマ照射部材によるプラズマ照射条件を制御する制御機構を有することを特徴とする使用済み制御棒の切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電で使用された使用済み制御棒の切断方法及びその切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力発電の使用済み制御棒は、貯蔵プールに収納する際の保管スペースに関して、さらなる収納効率の向上が要求されている。また、使用済み制御棒が収められている収納容器の中間貯蔵施設への移動、或いはこの収納容器の最終処分場までの移動を想定し、収納容器の大きさを、陸上輸送が容易な大きさに縮小することが求められている。
【0003】
従来より、使用済み制御棒は、その軸心の延在方向(以下、縦方向と示す。)での切断(以下、縦切断と示す。)による減容が行われている。この方法による減容後の使用済制御棒の収納容器は4メートルを超える長さであり、陸上輸送によるコンテナ移動が困難と考えられている。このため、収納容器の長さが2メートル以下に収まる程度に減容可能な方法が求められている。
【0004】
このような減容方法として、縦方向での切断により得られた板状のブレードを、さらに
軸心の延在方向に対して垂直な方向(以下、横方向と示す。)に複数箇所で切断し、1メートル程度まで短尺に分割する方法が考えられる。しかしながら、使用済み制御棒が、例えばボロンカーバイド粉等の中性子吸収粉体が充填されて構成されている場合、板状のブレードをそのまま横方向に切断(以下、横切断と示す。)すると、中性子を吸収したボロンカーバイド粉等の中性子吸収粉体が水中に飛散し、貯蔵プールの水中汚染が発生する。この場合、水中汚染の洗浄を行う必要が生じ、これに関連する二次処理による負担増大が予想されることから、実用化には至っていない。
【0005】
一方、特許文献1には、ブレード圧縮機6の対向する2枚の圧縮刃により、使用済制御棒20のブレード部21を該使用済制御棒20の軸心に対して略垂直に挟んで圧縮したうえで、この圧縮部分を水平切断ノズル5により切断することで、該使用済制御棒20を短尺に分断するようにした使用済み制御棒の減容システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−223923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された方法では、ブレード部21の切断面に、ボロンカーバイド粉32が充填された圧縮後のチューブ31の断面が現れる。このとき、圧縮箇所には、ボロンカーバイド粉32の一部が圧縮箇所に留まっている。また、圧縮によりチューブ31に凹みが形成されても、弾性変形によるスプリングバックで凹みが戻り、圧縮直後より断面の口が開く傾向にある。このため、特許文献1の方法では、チューブ31の断面の口を完全に閉じることは実質上困難である。従って、ブレード部12を短尺に切断した切断面から、ボロンカーバイド粉が放射化した状態で水中に飛散され、水中を汚染する問題があった。
【0008】
本発明の目的は、中性子吸収粉体を水中へ飛散させずに、使用済み制御棒を短尺に分断する方法及びその切断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態としては、中性子吸収粉体が内部に充填された使用済み制御棒を、水中で加圧して圧縮部を形成し、該圧縮部を加熱溶融して溶融固化部を形成した後、該溶融固化部を切断することを特徴とする使用済み制御棒の切断方法とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態としては、貯蔵プールの隔離水槽内に設けられる使用済み制御棒の切断システムであって、使用済み制御棒を固定するブレード固定ユニットと、前記使用済み制御棒をプレス部材により加圧して圧縮部を形成するプレスユニットと、前記圧縮部に向けてプラズマ照射部材によりプラズマを照射し、照射領域に溶融固化部を形成するプラズマ照射ユニットと、を有することを特徴とする使用済み制御棒の切断システムとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中性子吸収粉体の水中への飛散による水中汚染を抑制し、水中汚染に対する二次処理の必要を生じさせることなく、使用済み制御棒の減容を効率的に行うことができる使用済み制御棒の切断方法及び使用済み制御棒の切断システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】使用済み制御棒の構成を示す説明図である。
図2】実施形態に係る使用済み制御棒の切断システムの概略構成図である。
図3】実施形態に係る使用済み制御棒の切断方法により使用済み制御棒を短尺に切断する動作例を示す説明図である。
図4】実施形態に係る使用済み制御棒の切断方法において、使用済み制御棒の切断面が溶融固化部により封止される条件を説明するための図である。
図5】第2の実施形態に係る使用済み制御棒の切断方法により使用済み制御棒を短尺に切断する動作例を示す説明図である。
図6】プレス板23によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略断面図である。
図7】プレス板23によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略斜視図である。
図8】プレスローラ24によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略断面図である。
図9】プレスローラ24によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図1図4を用いて説明する。
図1は、使用済み制御棒の構成を示す説明図である。図1(a)は、使用済み制御棒の構成を示す概略斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す使用済み制御棒の位置Aにおける断面図である。
【0014】
図1の使用済み制御棒10は、全体の高さが4メートル程度であり、断面が十字を形成するように配設された4枚のブレード部12と、使用済み制御棒10の下端に設けられた、円形断面を有する落下速度抑制部14とから構成される。
【0015】
4枚のブレード部12は、それぞれ複数本の中性子吸収棒13が、ステンレス鋼板からなるブレードカバー15で覆われて構成されている。中性子吸収棒13は、概ね十〜二十数本程度が、ブレードカバー15内に一直線上に並べて設けられており、中性子吸収棒13とブレードカバー15とからなるブレード部12の厚みは、凡そ10ミリメートルである。4枚のブレードカバー15の十字形成側の各端部15aには、ステンレス鋼製の十字形ブロックからなる連結棒11が溶接により接続されている。
【0016】
中性子吸収棒13は、長さ3.5メートル程度のステンレス製の鋼管17の内側の筒内に、ボロンカーバイド粉16が充填されて構成されている。鋼管17の内側の筒の内径は、約5ミリメートルであり、この筒内に、数マイクロメートルから数百マイクロメートルの粒径を有するボロンカーバイド粉16が充填されている。
【0017】
ボロンカーバイド粉16は、核分裂反応により炉心から放出された中性子を吸収する中性子吸収粉体であり、中性子吸収棒13が組み込まれた使用済み制御棒10を、炉心の4本の燃料棒の間に嵌合させるように挿入れ、さらにこの使用済み制御棒10を燃料棒の間から抜出すことにより、原子力発電の出力の制御を行っている。
【0018】
使用済み制御棒10は、所定の期間使用した後、炉心から取り出されて新品に交換される。炉心から取り出された使用済み制御棒10は、中性子を吸収して放射化している。このため、使用済み制御棒10は、原子力発電所内に設けられた貯蔵プール60内の収納容器68に保管、貯蔵される(図2参照)。
【0019】
使用済み制御棒10は、図1に示すように、ブレード部12の十字形の断面形状と、落下速度抑制部14の円形断面形状とを有するため、使用時の形状のまま直立整列させて収納容器に収納すると、嵩張りにより、収納効率がよくない。このため、貯蔵プール60(図2参照。)内におけるスペースの効率化等、収納効率を向上させる観点から、使用済み制御棒10は、下記に述べるようにして縦方向での分割を行ったうえで、収納が行われている。なお、使用済みの制御棒10は、被爆或いは汚染の影響を避けるため、炉心から貯蔵プール60内の収納容器68までの移動やその分割作業を含め、保管までの取り扱いは、いずれも水中で遠隔操作により行われる。
【0020】
以下に、使用済み制御棒の従来の減容方法について説明する。
使用済み制御棒10は、まず、下端部に設けられた落下速度抑制部14が横方向に切断され、使用済み制御棒10の本体から分離される。分離された落下速度抑制部14は、まとめて収納保管容器に運ばれ、保管される。落下速度抑制部14が分離された後の使用済み制御棒10の本体部分は、縦切断トーチ45により、連結棒11が縦方向に切断される。連結棒11の切断は、例えば水中プラズマ切断、或いはアブレイシブウォータ切断等の方法により行うことができる。具体的には、例えば、縦切断トーチ45を図1に示す方向に向けた状態で縦方向に移動することで切断される。これにより、使用済み制御棒10の本体部分が、断面L字状のブレード部12、或いは板状のブレード部12に分割される。
【0021】
断面L字状のブレード部12を得る場合、連結棒11に対する縦方向への切断回数は1回でよい。板状のブレード部12を得る場合、連結棒11に対する縦方向への切断回数は、2回又は3回行う必要がある。断面L字状のブレード部12、或いは板状のブレード部12は、収納容器68(図2参照。)へ運ばれ、それぞれ重ねた状態で並べて収納される。
【0022】
縦切断により得られた板状のブレード部を、上記特許文献1に記載された方法により横切断して、さらに短尺に分断する場合、切断面に現れるチューブ31の口が、ブレード圧縮機6の圧縮により完全に閉じていれば、ボロンカーバイド粉32が水中に飛散されることはない。
【0023】
しかしながら、以下の理由から、上記した従来の方法では、ボロンカーバード粉等の中性子吸収粉体が充填された鋼管の口を完全に閉じることは困難であることが明らかとなった。
【0024】
一つ目の理由は、鋼管内に充填される中性子吸収粉体の硬さによるものである。例えばボロンカーバイド粉は、粒径が数マイクトメートルから数百マイクトメートルであり、ダイヤモンド並みの硬さを有している。このため、ボロンカーバイド粉は、少なくとも中性子吸収粉体が充填される鋼管の材質よりは、高い硬度を有している。プレスパンチ等の圧縮部材により使用済み燃料棒の鋼管を加圧して凹みを形成する過程では、鋼管内における粉体の流動により、圧縮箇所から非圧縮箇所に向けて粉体が適度に移動する一方、圧縮箇所には所定量の粉体が留まっている。圧縮箇所に残留する粉体は、粉体自体の硬さのため、鋼管の内壁からの加圧力では完全には潰されず、対向する内壁の壁面同士を密着させることは困難である。
【0025】
鋼管内の粉体が限界まで圧縮された状態から、プレスパンチ等の圧縮部材にさらに加圧力や変位を加えると、対向する内壁同士が密着する前に、鋼管の内壁に亀裂が発生する。このため、最終的には亀裂箇所から鋼管の破断に至る。亀裂を生じさせる前に加圧を停止すると、圧縮箇所における鋼管の内壁間には、残留するボロンカーバイド粉等の中性子吸収粉体により、数百マイクトメートル以上の隙間が残存する。
【0026】
二つ目の理由は、合金鋼からなる鋼管を加圧して圧縮するプロセスにおいて生じるスプリングバックの影響である。プレスパンチ等の圧縮部材からの加圧により凹んだ鋼管は、加圧力が開放されると、弾塑性変形で生じた応力の影響からスプリングバックを起こし、凹みの数十%程度が戻ることが知られている。すなわち、圧縮過程により一旦凹みが形成された鋼管の内壁は、加圧を終了した後、凹み量の数十%程度がスプリングバックにより戻ることとなる。このように、凹みが戻った状態で圧縮箇所を切断すると、その切断面には、鋼管の口がある程度開いた状態で現れる。
【0027】
以上、二つの理由から、従来の横切断の方法では、切断面に現れる鋼管の口が完全には閉じられず、鋼管内に充填されたボロンカーバイド粉を水中へ飛散させることなく、使用済み制御棒を短尺に切断することは困難であった。
【0028】
図2は、実施形態に係る使用済み制御棒の切断システムの概略構成図である。炉心から運び出された使用済み制御棒10は、そのまま、水で満たされた貯蔵プール60まで運ばれる。使用済み制御棒10の減容処理は、貯蔵プール60内の隔離水槽65の中で行われる。隔離水槽65は、減容処理で生じた汚水が貯蔵プール60全体に広がるのを防ぐものであり、隔離水槽65には、ポンプにより水を循環しながら、フィルターで汚水を浄化する機能が備えられている。使用済み制御棒10は、クレーン50などの遠隔での操作が可能な運搬手段により、隔離水槽開閉扉66により隔離された隔離水槽65の内外を水中において運ばれ、所定の位置へ移動される。
【0029】
使用済み制御棒10は、従来の使用済み制御棒の減容処理と同様、まず、下端に設けられた落下速度抑制部14を横方向に切断し、使用済み制御棒10の本体から分離する。そして、落下速度抑制部14を分離した後の使用済み制御棒10の本体部分を、上記した従来方法と同様の方法により、例えば図1に示す縦切断トーチ45を用いて縦方向に切断し、板状のブレード部12まで分割する。なお、縦方向の切断は、断面L字状のブレード部12までとしてもよいが、説明の便宜上、以下の説明では、板状のブレード部12まで分割した場合を例に説明する。
【0030】
落下速度抑制部14の切断、及び使用済み制御棒10の本体部分の縦方向の切断は、水中プラズマ切断、或いはアブレイシブウォータ切断等の方法のほか、バンドソーによる切断、又はレーザー切断など、水中で金属を切断可能な方法であれば何れの方法でもよい。
【0031】
板状のブレード部12を隔離水槽65の中で短尺に切断する切断システムは、図2に示すように、板状のブレード部12を固定するブレード固定ユニット40と、ブレード部12をその板厚方向に加圧して圧縮するプレスユニット20と、ブレード部12にプラズマ照射を行うプラズマ照射ユニット30とを備えている。
【0032】
縦切断で板状に形成されたブレード部12は、クレーン50により、ブレード固定ユニット40の位置まで運ばれて、固定冶具41で把持、固定される。
【0033】
プレスユニット20には、ブレード部12をその板厚方向に加圧して圧縮するプレスパンチ21が備えられている。プレスパンチ21は、ブレード部12の任意の位置を加圧できるように、その上下、左右、奥行き方向への移動を可能とする移動機構を有している。プレスパンチ21は、ブレード部12を挟んで対向した状態で、この移動機構により、後述する切断工程で切断される位置である切断箇所へ配置される。そして、両プレスパンチ21をそれぞれ、変位制御、或いは水圧又は油圧による圧力制御により、ブレード部12側へ向かうように駆動し、ブレード部12の切断箇所を加圧するプレス加工を行う。
【0034】
なお、本実施例では、ブレード部12のプレス加工を、対向する一対のプレスパンチ21を用いて行う例を示しているが、ブレード部12による加圧は、例えば、一方を圧縮機構を備えたプレスパンチ21とし、これと対向する側に、プレスパンチ21からの加圧を受けるダイを設けた構成により行ってもよい。この場合、プレス加工で形成されたブレード部12の凹み形状は、左右非対称で形成されるが、本実施例における圧縮プロセスは、鋼管17の内壁の間隔を狭くできればよく、凹み形状が左右非対称であっても問題はない。
【0035】
プラズマ照射ユニット30は、プラズマ照射を行うトーチ31を備えている。プラズマ照射ユニット30は、ブレード固定ユニット40の固定冶具41で固定されたブレード部12に向けて、トーチ31からプラズマ照射を行い、照射領域を加熱する。
【0036】
トーチ31は、該ブレード部12の任意の位置にプラズマ照射できるように、その上下、左右、奥行き方向への移動を可能とする移動機構を有しており、該移動機構により、トーチ31は、プレスパンチ21によるプレス加工位置に配置され、この位置からブレード部12に向けて、プラズマ照射を行う。プラズマ照射ユニット30は、不図示の制御機構により、照射エネルギー量等のプラズマ照射条件が制御される。
【0037】
プラズマ照射されたブレード部12は、後述する工程により横方向に切断された後、ブレード固定ユニット40の固定冶具41から開放され、クレーン50により貯蔵プール60内を水中において運ばれて、収納容器68へ収納される。
【0038】
次に、本実施例の使用済み制御棒の切断方法について、図3を用いてより詳細に説明する。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係る使用済み制御棒の切断方法により使用済み制御棒を短尺に切断する動作例を示す説明図である。図3(a)には、短尺に切断される前の板状のブレード部12の概略斜視図を示している。
【0040】
図3(a)に示すブレード部12は、使用済み制御棒10を、上記した方法により縦方向に切断して得られたものであり、複数本の中性子吸収棒13が一直線上に並べられてブレードカバー15内に収められた部材と、縦切断により切断された連結棒11とで構成されている。以下、ブレード部12を横方向に複数の切断箇所18で切断し、短尺にする工程について、図3(b)〜(d)を用いて説明する。なお、一般的に用いられているブレード部12を1メートル程度の長さまで分割する場合には、一のブレード部12に対して、三箇所の横切断を施せばよい。
【0041】
図3(b)は、ブレード部12の切断箇所18がプレスパンチ21により加圧されている状態を、図3(a)のB−B’線断面において示す図である。なお、図3(b)では、図3(a)のC−C´位置にプレスパンチ21を配設した状態を示している。
【0042】
図3(b)に示すB−B’線断面において、ブレード部12には、ステンレス鋼板からなるブレードカバー15の内側のステンレス鋼製の鋼管17内に、ボロンカーバイド粉16が充填されている。
【0043】
図3(b)に示すプレスパンチ21は、その加圧方向に対して垂直な方向に、一定の幅をもって延在した形態を有しており、ブレード部12を挟んで対向した状態で、例えばギア機構等の不図示の移動機構により移動されて、切断箇所18の位置に配置される。そして、不図示の制御機構による変位制御、或いは水圧又は油圧による圧力制御により、両プレスパンチ21が、ブレード部12側へ向けて駆動され、該ブレード部12の切断箇所18がプレス加工される。
【0044】
プレス加工による圧縮過程に伴い、ボロンカーバイド粉16は、鋼管17の内側において、圧縮箇所から非圧縮箇所に向けて適度に流動し、鋼管17の内壁が凹む。プレス加工により圧縮された切断箇所18には、凹み(以下、圧縮部12aと示す。)が形成されており、このときの加工量は、ブレード部12の凹み量として、元の板厚に対して凡そ40〜60%である。
【0045】
一方、ボロンカーバイド粉16は、数マイクトメートル〜数百マイクトメートル、場合によっては数ミリメートルの粒径を有する高硬度の粉体で構成されており、上記したように、少なくとも鋼管17のステンレス鋼より高い硬度を有している。このため、鋼管17に亀裂を生じさせることなく圧縮するには限度があり、圧縮部12aには、ボロンカーバイド粉16が所定量残留する。従って、鋼管17の内壁は完全には閉じられず、数百マイクロメートル以上の隙間が開いた状態で、プレス加工による圧縮工程が終了する。
【0046】
鋼管17における亀裂を生じさせることなく、最終的に、溶融固化部により封止された切断面を得るためには、図3(b)におけるプレス加工の加工量を制御することが必要であり、その条件については後に詳述する。
【0047】
なお、図3(b)に示すプレスパンチ21による加圧を開放したときの、スプリングバックによる凹みの戻りを抑制するため、図3(b)に示すプレスパンチ21を、不図示の移動機構により、切断箇所18を中心として縦方向に移動し、切断箇所18の周辺を複数回プレス加工するようにしてもよい。この場合、ブレード部21には、切断箇所18及びその近傍領域に、複数回プレス加工されたプレス痕が残り、このプレス痕形成領域が、圧縮部12aとなる。
【0048】
プレスパンチ21により、切断箇所18及びその近傍領域を複数回プレス加工することで、2回目以降の加圧により、スプリングバックの原因となるひずみが除去されるため、1回のみの加圧によるプレス加工と比較して、プレス加工終了後のスプリングバック量が低減される。
【0049】
また、スプリングバックを抑制するため、先端にローラが組み込まれたプレスパンチ21を用いて、ブレード部12に対する加圧を行うようにしてもよい。この場合、プレスパンチ21により、ブレード部12の切断箇所18周辺を加圧しながら、プレスパンチ21先端のローラを縦方向に複数回往復動させることで、切断箇所18及びその周辺が圧延される。これにより、ブレード部21には、切断箇所18を中心として、ローラの移動方向に圧延されたプレス痕が残り、このプレス痕形成領域が、圧縮部12aとなる。
【0050】
ブレード部12に対する加圧を連続的に行うことで、スプリングバックの原因となるひずみが除去されるため、1回のみの加圧によるプレス加工と比較して、プレス加工終了後のスプリングバック量が低減される。
【0051】
図3(c)は、ブレード部12がプラズマ照射されている状態を、図3(a)のB−B’線断面において示す図である。図3(c)は、切断箇所18を含むその周辺領域を、後述する横切断を行う前に溶融固化する加工プロセスであり、図3(c)において、トーチ31は、不図示の移動機構により移動されて、プレスパンチ21によりプレス加工された箇所(切断箇所18)に配置されている。そして、この位置から、プレス加工により切断箇所18に形成された圧縮部12aに向けて、トーチ31によりプラズマ照射される。このときのプラズマ照射の照射エネルギーを、後述するように制御することで、プラズマ照射領域は、照射熱により高温状態となる。これにより、切断箇所18に形成された圧縮部12aにおいて、ステンレス鋼からなるブレードカバー15及び鋼管17が溶融されるとともに、これらの溶融体に、鋼管17内に存在するボロンカーバイド粉16も混入され、溶融部35が生成される。溶融部35は、ブレード部12の周囲の水の水温により冷却、固化されて、切断箇所18及びその周辺領域に、溶融固化部36が形成される。
【0052】
なお、プラズマ照射ユニット30には、図3(c)に示すように、トーチ31の照射口31a近傍に熱対流板32を設けてもよい。熱対流板32を設けることで、ブレード部12におけるプラズマ照射部位だけでなく、その周辺の箇所も連続的に加熱されるため、溶融部35を安定的に形成することができる。
【0053】
図3(d)は、ブレード部12が分割されるときの状態を、図3(a)のB−B’線断面において示す図である。図3(d)に示すように、ブレード部12は、図3(c)に示すトーチ31からのプラズマ照射により、溶融固化部36を切断することで分割される。
【0054】
圧縮部12aに形成された溶融固化部36を切断することで、切断面37に現れる鋼管17の内壁は溶融固化部36により覆われ、切断面37の全体が、溶融固化部36により封止される。このため、切断面37には鋼管17の内壁面が露出せず、分割後の各ブレード部12の切断面からの、ボロンカーバイド粉16の水中への飛散が抑制される。
【0055】
尚、溶融固化部36の切断方法は、水中で金属塊を切断できる方法であれば、何れの方法でもよく、水中プラズマ切断のほか、アブレイシブウォータ切断、バンドソーによる切断、又はレーザー切断などの公知の方法を用いることができる。
【0056】
プラズマ照射により、圧縮部12aに溶融固化部36を形成するためには、上記したようにプラズマ照射の照射条件を制御して行う必要がある。すなわち、一般に行われているプラズマ照射による切断加工では、被加工物を確実に切断することが必要であるため、高エネルギーのプラズマを被加工物に噴出させ、被加工材のプラズマ照射面を瞬時に溶かしつつ、アシストガスも合わせて供給する。これにより、溶融部が板厚方向に素早く浸透し、瞬時に裏面側に達して水中に吹き飛ばされる。
【0057】
このように、一般のプラズマ切断加工方法では、プラズマ照射により溶融された材料は、溶融状態のまま瞬時に裏面側に吹き飛ばされるため、溶融物が混ざり合い、さらにこれが固化される、所謂溶融固化体の形成には至らない。従って、プレス加工(図3(b))後に形成された圧縮部12aを、通常のプラズマ切断と同様の照射条件でプラズマ照射した場合には、溶融固化部36が形成されることなくそのまま切断され、その切断面には、鋼管17内のボロンカーバイド粉が露出する。
【0058】
使用済み制御棒の切断面が封止されるためには、ブレードカバー15等の溶融物にボロンカーバイド粉16が混合されて溶融固化部36が形成されるとともに、この溶融固化部36により、ブレード部の切断面の全体が覆われることが必要である。この状態を得るためには、プラズマ照射時の照射エネルギー量、及びプラズマ照射前のプレス加工により形成する圧縮部12aの凹み量を制御することが有効である。すなわち、プラズマ照射前に形成する圧縮部12aの凹み量を、適正な範囲内とするとともに、圧縮部12aに対するプラズマ照射の照射エネルギー量を適正な範囲に制御することで、溶融固化部36により適正に封止された切断面を得ることができる。
【0059】
図4は、実施形態に係る使用済み制御棒の切断方法において、使用済み制御棒の切断面が溶融固化部により封止される条件を説明するための図であり、図4(a)は、ブレード部12の圧縮部12a近傍を示す断面図であり、図4(b)は、使用済み制御棒の切断面が溶融固化部により封止される条件を説明するためのグラフである。図4(b)中斜線で示される範囲が、使用済み制御棒の切断面が溶融固化部により適正に封止される条件範囲である。
【0060】
図4においては、横軸に、ブレード部に対するプラズマ照射の照射エネルギー量を示し、縦軸に、プレス加工前のブレード部の厚さに対する圧縮部の凹み量の割合を示す。なお、プラズマ照射による被照射領域の溶融状態は、プラズマ照射の電流密度、及びプラズマ化するガスのガス流速に影響されるため、図4においては、プラズマ照射時のエネルギー量を表す指標として、電流密度とガス流速との積を使用した。
【0061】
図4において、プラズマ照射時のエネルギー量については、一般的なプラズマ切断法により、ブレード部12の主な材質であるステンレス鋼板を切断するときのエネルギー量の適正値を1として評価する。
【0062】
図4に示すように、ブレード部12の切断面が封止されるように溶融固化部36を形成するためには、プラズマ照射の照射エネルギー量を、通常のプラズマ切断の照射エネルギー量の16分の1から8分の1の範囲のエネルギー量とすることが必要である。プラズマ照射の照射エネルギー量が、通常のプラズマ切断の照射エネルギー量の16分の1未満である場合には、被照射領域が十分に溶融されず、切断面を封止するのに十分な量の溶融固化部36が形成されないおそれがある。一方、プラズマ照射の照射エネルギー量が、通常のプラズマ切断の照射エネルギー量の8分の1を超える場合には、被照射領域が、通常のプラズマ切断時の照射状態に近くなり、溶融固化部36が形成される前に、溶融物が裏面側へ吹き飛ばされるおそれがある。
【0063】
なお、電流密度に関しては、高くするほど、被照射領域が高温となり、溶融部35が形成されやすくなるが、電流密度を高くし過ぎると、溶融部35が冷却される前に溶け落ちてしまい、溶融固化部36を形成できなくなる。また、ガス流量に関しては、大きすぎると、溶融部が即座に裏面側に達し易くなるため、溶融固化部36を安定して形成するためには、ガス流量は小さくした方がよい。但し、ガス流量を小さくし過ぎると、プラズマ発生自体に支障が生じてくる。
【0064】
通常のプラズマ切断の照射エネルギー量とは、一般的なプラズマ切断法により、同じ厚さの被切断物(ブレード部12)を、同じノズル径を有する照射トーチを用いて切断するのに要する照射エネルギー量である。
【0065】
一方、ブレード部12の切断面全体が、溶融固化部36により封止されるようにするためには、圧縮部12aの凹み量uは、プレス前のブレード部12の厚さをtとしたとき(図4(a)参照。)、その半分の厚さであるt/2に対して、30〜70%の範囲とする必要がある。
【0066】
圧縮部12aの凹み量uが、厚さt/2の30%未満であると、溶融固化部36によって封止されるべき範囲が広過ぎるため、仮にプラズマ照射を適正なエネルギー量で行っても、溶融固化部36によって封止できない部分が生じ、切断面に鋼管17の内壁面が露出し、ボロンカーバイド粉が水中へ飛散するおそれがある。一方、圧縮部12aの凹み量uが、厚さt/2の70%を超えると、プレス加工時に鋼管17に亀裂が発生し、適切な切断を行うことが困難となる。なお、図4においては、圧縮部の凹み量は、プレス前のブレード部12の厚さtの半分の厚さt/2を1としたときの、凹み量uの割合を示している。
【0067】
以上のように、プラズマ照射による加熱溶融前のプレス加工による凹み量の適正化と、プラズマ照射時のエネルギー量の適正化の双方を行うことによって、切断面に鋼管17の内壁が現れないように、溶融固化部36により切断面を封止することができる。これにより、ボロンカーバイド粉等の中性子吸収粉体が充填された使用済み制御棒10のブレード部12を、この中性子吸収粉体を水中に飛散させることなく、短尺に分割することができる。
【実施例2】
【0068】
図5は、第2の実施形態に係る使用済み制御棒の切断方法により使用済み制御棒を短尺に切断する動作例を示す説明図である。なお、図5において、図1図4と共通する箇所には、同一の符号を付しており、この部分についての再度の説明は省略する。
【0069】
図5において、プレスユニット20のプレスパンチ21には、それぞれヒータ22が内蔵されている。プレスパンチ21の基本的な構成は、図3(b)に示すプレスパンチ21と同様であり、ヒータ22を内蔵している点のみ異なっている。
【0070】
図3に示す実施形態では、切断箇所18に形成された圧縮部12aの加熱溶融を、トーチ31からのプラズマ照射により行ったが、図5に示す第2の実施形態では、圧縮部12aの加熱溶融を、トーチ31に代えて、プレスパンチ21に内蔵されたヒータ22により行う点が、図3に示す実施形態からの変更点である。
【0071】
プレスパンチ21は、図5(a)で示すように、ブレード部12を挟んで対向した状態で、不図示の移動機構により移動されて、切断箇所18の位置に配置されている。そして、ヒータ22を加熱状態としながら、不図示の制御機構による変位制御、或いは水圧又は油圧による圧力制御により、両プレスパンチ21が、ブレード部12側へ向けて駆動され、ブレード部12の切断箇所18が、ヒータ22により加熱されつつ加圧される。
【0072】
プレス加工により圧縮された切断箇所18には、圧縮部12aが形成されるとともに、この圧縮部12aが、ヒータ22により加熱される(図5(b)参照。)。このとき、ヒータ22による加熱温度を適正な範囲に制御することで、圧縮部12aが溶融され、溶融部35が形成される。溶融部35は、プレスパンチ21による加圧から開放された後、周辺の水の水温で冷却され、溶融固化36が形成される。この溶融固化部36を切断することで、その全体が融固化部36により封止された切断面37を得ることができる(図5(c)参照。)。これにより、ブレード部12が短尺に分割される。
【0073】
第2の実施形態においては、切断箇所18に形成された溶融固化部36を、プレスパンチ21により再度加圧し、パンチ先端から溶融固化部36に亀裂を発生させることで、溶融固化部36を切断しているが、本実施形態において、溶融固化部36の切断は、水中で金属塊を切断できる方法であれば、何れの方法を用いてもよい。
【0074】
第2の実施形態においては、圧縮部12aの加熱溶融を、プレス加工ユニット20のプレスパンチ21に内蔵されたヒータ22を用いて行うことができるため、切断システム全体としての部品数を低減することができる。
【0075】
また、通常のプレス加工では、上記したように、スプリングバックにより、圧縮直後の凹み量の数十%程度が戻り、溶融固化部36による封止が必要な領域が拡大する。この場合、溶融固化部36による切断面の安定した封止が妨げられるため、スプリングバックは、極力低減することが求められる。また、ブレード部12は、放射線の影響でひずみが発生しており、プレスパンチ21による加圧時に、亀裂が入り易くなっている。
【0076】
第2の実施形態では、ヒータ22を内蔵したプレスパンチ21を用いることで、プレス加工時に、切断箇所18に形成される凹み部分を、数百度程度の温度で加熱することができる。この加熱により、圧縮部12aにおいて、スプリングバックを引き起こす応力が除去又は低減されるため、スプリングバックが抑制されたプレス加工を行うことができる。また、この加熱により、ブレード部12のひずみが回復されるため、加圧時に亀裂が入るのを防止することができる。
【実施例3】
【0077】
第3の実施形態は、プレスユニット20として、一の側面を円弧状に形成したプレス板23を用いるものである(図6及び図7参照。)。
【0078】
図6は、プレス板23によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略断面図であり、図7は、プレス板23によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略斜視図である。
【0079】
図6及び図7に示すように、一対のプレス板23は、その円弧状の面23aをブレード部12に対向させた状態で、両プレス板23によりブレード部12の切断箇所18を挟持するように配置される。そして、プレス加工時には、両プレス板23の対向する一対の端部23bを支点として、円弧状の面23aをブレード部12の切断箇所18に当接させるように揺動させる。なお、プレス板23は、不図示の制御機構により、例えば水圧により駆動して揺動させることができる。
【0080】
両プレス板23は、揺動させるときの支点となる端部23b間の距離dが、ブレード部12を圧縮可能な最小値(下死点)となるように固定されて配置されている。この状態で、ブレード部12の切断箇所18の両側面を、両プレス板23で挟持するようにして揺動させることで、ブレード部12に亀裂を発生させることなく、切断箇所18に圧縮部12aを形成することができる。
【0081】
第3の実施形態では、ブレード部12の加圧を、図6、7に示す形態のプレス板23を搖動させて行うことで、小さい加工量で圧縮部12aを形成することができる。また、第3の実施形態では、端部23b間の距離dを上記にように設定することで、ブレード部12が下死点を超えて加圧されることが防止されている。このため、プレス加工を行う作業者は、プレス板23の高さの位置決めのみを行えばよく、作業性に優れている。
【実施例4】
【0082】
第4の実施形態は、プレスユニット20として、一対のプレスローラ24を用いるものである(図8及び図9参照。)。
【0083】
図8は、プレスローラ24によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略断面図であり、図9は、プレスローラ24によりブレード部12を加圧するときの動作例を示す概略斜視図である。
【0084】
図8及び図9に示すように、プレスローラ24は、ブレード部12を挟んで対向した状態で、不図示の移動機構により移動されて、切断箇所18の一端に配置される。プレスローラ24は、両プレスローラ24間の距離dが、ブレード部12を圧縮可能な最小値(下死点)となるように固定されて配置されている。そして、プレス加工時には、ブレード部12の切断箇所18を両プレスローラ24により挟持させた状態で、不図示の制御機構により、水圧等によりプレスローラ24を駆動して押し出し、切断箇所18の位置に沿ってプレスローラ24を移動させながら、ブレード部12を加圧し圧縮する。
【0085】
第4の実施形態では、ブレード部12の加圧を、図8、9に示すプレスローラ24を用いて行うことで、ブレード部12が下死点を超えて加圧されることが防止されている。このため、プレス加工を行う作業者は、プレスローラ24の高さの位置決めのみを行えばよく、作業性に優れている。
【0086】
なお、第3の実施形態及び第4の実施形態においても、第2の実施形態と同様、プレス板23やプレスローラ24に、ヒータ22を内蔵した構成を採用することも可能である。
【0087】
また、圧縮部12aを形成する方法としては、上記した第1の実施形態〜第4実施形態に係る方法の他、例えば、プレスユニット20として、ノズルから水流を発生させる装置を設け、ノズルから照射した水流の水圧により切断箇所18を加圧して、圧縮部21aを形成することもできる。
【符号の説明】
【0088】
10…使用済み制御棒、11…連結棒、12…ブレード部、12a…圧縮部、13…中性子吸収棒、14…落下速度抑制部、15…ブレードカバー、15a…ブレードカバー15の端部、16…ボロンカーバイド粉、17…鋼管、18…切断箇所、20…プレスユニット、21…プレスパンチ、22…ヒータ、23…プレス板、23a…円弧状の面、23b…両プレス板23の端部、24…プレスローラ、30…プラズマ照射ユニット、31…トーチ、32…熱対流板、35…溶融部、36…溶融固化部、37…切断面、40…ブレード固定ユニット、41…固定冶具、45…縦切断トーチ、50…クレーン、60…貯蔵プール、65…隔離水槽、66…隔離水槽開閉扉、68…収納容器、u…圧縮部12aの凹み量、t…ブレード部12の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9