(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いの板面が離隔して対向するように配置された第1板部及び第2板部と、前記第1板部及び前記第2板部の対向方向に前記第1板部及び前記第2板部を連結する連結部とを有する一対の中空形材を備え、前記一対の中空形材において、前記第1板部の接合端部同士と前記第2板部の接合端部同士とをそれぞれ突き合わせてボビンツール型摩擦撹拌接合法で接合してなる継手構造であって、
前記一対の中空形材の各々は、接合相手側の前記中空形材に向かって前記連結部から突出して互いに嵌め合わされる嵌合部をさらに有し、
前記第1板部の前記接合端部同士及び前記第2板部の前記接合端部同士を接合するボビンツールが通過可能な空間を形成するために、前記一対の中空形材の前記連結部同士が互いに離隔し、かつ、前記嵌合部が前記第1板部及び前記第2板部から離隔することで、前記第1板部の前記接合端部同士の突き合わせ部分と前記嵌合部同士の嵌め合い部分との間、及び、前記第2板部の前記接合端部同士の突き合わせ部分と前記嵌合部同士の嵌め合い部分との間に、前記空間がそれぞれ形成され、
前記一対の中空形材の前記嵌合部同士が嵌め合わされることで、前記第1板部の前記接合端部同士と、前記第2板部の前記接合端部同士とが、前記対向方向に相対的に位置決めされている、摩擦撹拌接合の継手構造。
前記一対の中空形材のうち、少なくとも一方の前記中空形材の前記嵌合部は、接合相手側の前記中空形材に向かって突出したオス型先端部を含み、少なくとも他方の前記中空形材の前記嵌合部は、接合相手側の前記中空形材の前記嵌合部の前記オス型先端部と嵌め合わされるメス型先端部を含む、請求項1に記載の摩擦撹拌接合の継手構造。
前記オス型先端部及び前記メス型先端部は、前記一対の中空形材の突き合わせ方向に対して傾斜した傾斜面を有し、前記一対の中空形材のそれぞれの前記嵌合部は、互いの前記傾斜面が接触することにより嵌め合わされている、請求項2に記載の摩擦撹拌接合の継手構造。
前記一対の中空形材のそれぞれの前記嵌合部は、互いに前記対向方向で逆順に並設された前記オス型先端部及び前記メス型先端部をともに含み、かつ、前記対向方向の中心から、前記対向方向における互いに逆方向に同じ距離だけずれて配置されており、
前記一対の中空形材のそれぞれの前記中空形材は、前記一対の中空形材の突き合わせ方向及び前記対向方向の両方に直交する方向から見て、互いに前記対向方向の中心を対称点として点対称となる形状を有する、請求項2または3に記載の摩擦撹拌接合の継手構造。
前記一対の中空形材の前記嵌合部同士の嵌め合いが完了する前の状態において、前記第1板部の前記接合端部同士と、前記第2板部の前記接合端部同士とがそれぞれ接触する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合の継手構造。
前記一対の中空形材のそれぞれの前記嵌合部の先端は、前記第1板部及び前記第2板部の各接合端部の位置よりも接合相手側に近接する位置に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合の継手構造。
互いに突き合わされる前記接合端部同士のそれぞれの組み合わせにおいて、一方の前記接合端部は、他方の前記接合端部に向けて膨出した円弧状断面の凸状端面を有し、他方の前記接合端部は、前記凸状端面と面接触可能な円弧状断面の凹状端面を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合の継手構造。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、各図を参照して説明する。以下の説明において、「突き合わせ方向」とは、一対の中空形材を摩擦撹拌接合する際に、接合される接合端部同士を互いに接近させる方向を指す。また、「対向方向」とは、各中空形材の内部の間隙Gにおいて、第1板部及び第2板部の対向する各板面に垂直な方向を指す。
【0013】
(第1実施形態)
[鉄道車両構体]
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両構体1の部分的な断面斜視図である。
図2は、
図1の側構体3を構成する中空形材5〜8の継手構造100、101を示す部分的な断面図である。
図1に示す鉄道車両構体1は、摩擦撹拌接合の継手構造を備える構造物の一例であって、水平に配置された台枠(床構体)2と、車両の幅方向の両側で上下方向に延びるように配置された側構体3と、各側構体3の上方で各側構体3と連結するように配置された屋根構体4とを備える。
【0014】
台枠2は、車外に面する下板部2aと、車内に面する上板部2bと、下板部2aと上板部2bとを各板面で連結する連結部2cとを有する。各側構体3は、車外に面する外側板部3aと、車内に面する内側板部3bと、外側板部3aと内側板部3bとを各板面で連結する連結部3cとを有する。屋根構体4は、車外に面する外板部4aと、車内に面する内板部4bと、外板部4aと内板部4bとを各板面で連結する連結部4cとを有する。台枠2、側構体3及び屋根構体4は、2枚の板部2a、2b、3a、3b、4a、4bが間隙Gをおいてそれぞれ対向配置されてなるダブルスキン構造を有する。台枠2、側構体3及び屋根構体4の各々は、車両の長手方向に延びる複数の中空形材が摩擦撹拌接合されて構成される。
【0015】
側構体3は、中空形材5〜9を有する。中空形材5〜8の各々は、車両の長手方向に延び、かつ板面の輪郭が略長方形状の長尺部材である。中空形材5は、車両の窓に相当する位置に開口3dを有する。中空形材6〜8は、中空形材5から下方に順に配置される。中空形材6、7は、同一の構成を有する。中空形材8は、側構体3の下端部に配置される。中空形材9は、中空形材5を挟んで中空形材6の位置とは反対側の位置に配置される。中空形材6〜9は、平坦な表面を有する。
【0016】
[中空形材]
中空形材5〜9の基本構造は、ほぼ同一であるので、中空形材6の構成を主に説明する。
図2に示すように、中空形材6は、第1板部6a、第2板部6b、連結部6c、6d及び嵌合部6e、6fを有する。第1板部6a及び第2板部6bの各々は、車両の長手方向に延びる長方形状でかつ同一の板厚の板面を有する。第1板部6a及び第2板部6bは、一例として、互いの板面が略平行に対向された状態で、間隙Gをおいて配置される。第1板部6aは、中空形材7に向かう方向に接合端部6a1を有し、中空形材5に向かう方向に接合端部6a2を有する。第2板部6bは、中空形材7に向かう方向に接合端部6b1を有し、中空形材5に向かう方向に接合端部6b2を有する。接合端部6a2、6b2の端面は、対向方向に延びる直線Y1上に位置する。接合端部6a1、6b1の端面は、対向方向に延びる直線Y2上に位置する。各接合端部6a1、6b1、6a2、6b2は、突き合わせ方向に垂直な端面を有する。中空形材6は、一例として、押出成形により製造される。
【0017】
連結部6c、6dは、車両の長手方向に延びる板状部である。連結部6c、6dは、第1板部6a及び第2板部6bに直交するように配置されて第1板部6a及び第2板部6bを連結する。連結部6c、6dは、間隙Gにおいて、接合端部6a1、6b1及び接合端部6a2、6b2よりも中空形材6の内部側の位置に配置される。
【0018】
嵌合部6e、6fは、連結部6c、6dに設けられ、突き合わせ方向に向けて突出する。嵌合部6e、6fは、連結部6c、6dの対向方向の各中央部R1、R2を通る中央線Xに沿って、互いに逆方向に突出する。嵌合部6eは、中空形材7に向けて突出し、嵌合部6fは、中空形材5に向けて突出する。嵌合部6fの突出方向の先端には、突き合わせ方向に延びるクサビ状のオス型先端部6hが形成される。嵌合部6eの突出方向の先端には、2つに分岐して突き合わせ方向に延びるメス型先端部6gが形成される。メス型先端部6gの内部には、突き合わせ方向に開放された内部空間S1が形成される。
【0019】
オス型先端部6h及びメス型先端部6gは、中央線Xの延びる方向に対して傾斜する傾斜面6h1、6g1を有する。オス型先端部6h及びメス型先端部6gは、傾斜面6h1、6g1において、接合相手側の中空形材5、7の各嵌合部の先端部とそれぞれ接触する。オス型先端部6hの先端は、直線Y1と重なる接合端部6a2、6b2の位置よりも、中空形材5に近接する位置に配置される。また、メス型先端部6gの先端は、直線Y2と重なる接合端部6a1、6b1の位置よりも、中空形材7に近接する位置に配置される。
【0020】
中空形材5は、第1板部5a、第2板部5b、不図示の連結部及び嵌合部5eを有する。嵌合部5eの先端には、メス型先端部5gが形成される。中空形材7は、中空形材6と同一の構造、形状及びサイズを有し、第1板部7a、第2板部7b、連結部7c、7d及び嵌合部7e、7fを有する。嵌合部7fの先端には、オス型先端部7hが形成される。嵌合部7eの先端には、メス型先端部7gが形成される。中空形材8は、第1板部8a、第2板部8b、連結部8d及び嵌合部8fを有する。嵌合部8fの先端には、オス型先端部8hが形成される。
【0021】
中空形材6では、内部空間S1に中空形材7のオス型先端部7hが挿入されることにより、メス型先端部6gがオス型先端部7hと嵌め合わされる。また、オス型先端部6hが中空形材5のメス型先端部5gの内部空間S1に挿入されることにより、オス型先端部6hがメス型先端部5gと嵌め合わされる。オス型先端部6hが傾斜面6h1においてメス型先端部5gと接触する接触領域は、直線Y1と部分的に重なる。また、メス型先端部6gが傾斜面6g1においてオス型先端部7hと接触する接触領域は、直線Y2と部分的に重なる。
【0022】
側構体3では、中空形材5〜8の内で隣接する一対の中空形材において、互いの嵌合部同士(5e及び6f、6e及び7f、7e及び8f)がそれぞれの先端部同士(5g及び6h、6g及び7h、7g及び8h)を接触させて嵌め合わされる。このように、前記嵌合部同士が嵌め合わされた状態で、一対の中空形材における一方の中空形材の各接合端部が他方の中空形材の各接合端部に突き合わされ、各接合端部同士(5a1及び6a2、5b1及び6b2、6a1及び7a2、6b1及び7b2、7a1及び8a2、7b1及び8b2)がボビンツール型摩擦撹拌接合で接合される。これにより、側構体3では、中空形材5〜9を備える複数の継手構造100、101が形成される。
【0023】
[摩擦撹拌接合工程]
以下、一例として一対の中空形材6、7の摩擦撹拌接合工程を説明する。
図3(a)〜(c)は、
図2の継手構造100,101の製造手順を説明する断面図である。
図3(a)は、第1工程、
図3(b)は、第2工程、
図3(c)は、第3工程をそれぞれ示す図である。
図4は、
図3(a)の一対の中空形材6、7がずれて接近する様子を示す断面図である。
【0024】
まず、第1工程として、嵌合部6e、7fを中央線Xに沿って移動させながら一対の中空形材6、7を接近させ、かつ接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とを接近させる。また、オス型先端部7hがメス型先端部6gの内部空間S1に挿入されるように、嵌合部6eと嵌合部7fとを接近させる(
図3(a))。中空形材6、7では、嵌合部6e、7fの両方が突出しており、嵌合部6e、7fの各先端が、接合端部6a1、6b1、7a2、7b2の位置よりも接合相手側の中空形材に近接する位置に配置される。従って、突き合わせようとする中空形材6、7の間隙を通じて、外部から嵌合部6e、7fの各位置を確認し易く、オス型先端部7h及びメス型先端部6gを容易に位置合わせできる。
【0025】
次に、第2工程として、メス型先端部6gの内部空間S1にオス型先端部7hを挿入する(
図3(b))。内部空間S1にオス型先端部7hが挿入され始めると、メス型先端部6g及びオス型先端部7hの互いの傾斜面6g1、7e1が接触する。これにより、オス型先端部7hは、メス型先端部6gにガイドされながら、メス型先端部6gに対して相対的に内部空間S1内を進み、メス型先端部6gに嵌合され始める。
図4に示すように、中空形材6の中央線X1と中空形材7の中央線X2とが若干ずれて、中空形材6の接合端部6a1,6b1と中空形材7の接合端部7a2,7b2とが板部6a,6b,7a,7nの板厚方向に若干ずれていても、オス型先端部7hの一部をメス型先端部6gの内部空間S1に挿入するだけで、メス型先端部6gに対するオス型先端部7hの相対的な進行方向をメス型先端部6gの傾斜面6g1でガイドして適切な進行方向に修正し、メス型先端部6g内の正しい位置にオス型先端部7hを嵌め合わせることができる。よって、大掛かりな治具等を用いなくても中空形材6、7を横方向から突き合わせて押圧するだけで正確に位置合わせでき、中空形材6、7を位置合わせする作業負担を軽減できる。また、オス型先端部7hをメス型先端部6gに挿入することで、嵌合部6e、7fを迅速に嵌め合わせることができる。なお、第2工程の実施直後は、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とがそれぞれ接触しているが、嵌合部6e、7fは、まだ完全には嵌め合わされていない。このように、嵌合部6e、7f同士の嵌め合いが完了する前の状態において、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とがそれぞれ接触する。
【0026】
次に、第3工程として、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とを接触させた状態で、中空形材6、7を突き合わせ方向にさらに押圧する。この作業は、例えば中空形材6、7を万力等のツールを用いて突き合わせ方向に押圧することで実施できる。これにより、オス型先端部7hの先端をメス型先端部6gの内部空間S1に相対的にさらに挿入し、嵌合部6e、7fを完全に嵌め合わせる(
図3(c))。嵌合部6e、7fの嵌め合いが完了する際には、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とが強く押圧され、高い密着度で密着する。これにより、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とが対向方向で相対的に強く位置決めされて、位置ずれの発生が抑制される。なお、第3工程では、上記のように中空形材6、7を突き合わせ方向に押圧する以外に、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とを接触させた状態で、中空形材6、7を固定することもできる。このように中空形材6、7を固定することで、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2との位置ずれの発生を抑制できる。
【0027】
次に、二つの大径のショルダー部10、11と、その間に設けられた小径の撹拌軸12とを有するボビンツールを用意する。上記のように嵌合部6e、7fを完全に嵌め合わせ、かつ中空形材6、7を突き合わせ方向に押圧した状態、または、上記のように嵌合部6e、7fを完全に嵌め合わせて中空形材6、7を固定した状態で、回転させた2つのショルダー部10、11で、第1板部6a、7aの両面を挟み込む。これとともに、中空形材6、7の突き合わせ部分に撹拌軸12を挿入する。その後、接合端部6a1、7a2の突き合わせ部分に沿って、ボビンツールを中空形材6、7と相対的に移動させ、摩擦撹拌接合を行う。同様の手法で、接触させた接合端部6b1、7b2についても摩擦撹拌接合を行う。ここで、突き合わせた中空形材6、7の内部では、連結部6cと連結部7dとが互いに離隔し、連結部6cと連結部7dとの間に空間S2、S3が形成される。空間S2は、接合端部6a1、7a2の突き合わせ部分と、嵌合部6e、7fの嵌め合い部分との間に形成される。空間S3は、接合端部6b1、7b2の突き合わせ部分と、嵌合部6e、7fの嵌め合い部分との間に形成される。空間S2、S3は、中空形材6、7の内部に配置されるボビンツールのショルダー部11の突き合わせ方向の寸法(幅)及び対向方向の寸法(高さ)よりも十分に広く形成されているので、ショルダー部11が突き合わせ方向及び対向方向で中空形材6、7と干渉するのが防止される。従って、ボビンツールの第2ショルダー部11を空間S2、S3にそれぞれ挿通させることで、摩擦撹拌接合を良好に実施できる。
【0028】
摩擦撹拌接合を行う際には、嵌合部6e、7f同士が嵌め合わされる。さらに、上記のように中空形材6、7の接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とが突き合わせ方向に強く押圧され、または、中空形材6、7が固定されることにより、振動や衝撃がボビンツールから中空形材6、7に伝わっても、中空形材6、7はずれにくい。従って、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2との対向方向における相対的な位置関係を保持しながら、中空形材6、7を適切に接合できる。また、嵌合部6e、7fが対向方向の中央を通る中央線Xに沿って嵌め合わされることで、中空形材6、7が第1板部6a、7a及び第2板部6b、7bの対向方向の各中央を基準位置として位置合わせされるので、中空形材6、7の対向方向の各幅が公差等のずれを生じていても、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2との各々における位置ずれの発生が最小限に抑制される。
【0029】
上記のように摩擦撹拌接合を行うことで継手構造100、101が形成され、中空形材6、7が接合される。嵌合部6e、7f同士の嵌め合いが完了した状態で、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2とを密着させながら接合することにより、接合端部6a1、7a2と接合端部6b1、7b2との間に巣またはボイドが発生するのを防止した継手構造100、101が形成される。なお、中空形材6、7の摩擦撹拌接合工程について説明したが、中空形材5、6と、中空形材7、8との各摩擦撹拌接合工程も、上記した第1〜第3工程と同様の各工程を経ることで実施できる。
【0030】
[変形例1]
図5は、第1実施形態の変形例1に係る各中空形材16〜18の継手構造を示す部分的な断面図である。第1実施形態との違いとして、中空形材16〜18では、第1板部16a〜18a及び第2板部16b〜18bの対向方向の各中央を通る中央線Xに対してずれた位置に嵌合部16e、17e、17f、18fが配置される。中空形材17では、連結部17dに対し、中央部R3から一定距離D1をおいて第1板部17aに近接する位置に嵌合部17fが設けられ、連結部17cに対し、中央部R4から一定距離D1をおいて第2板部17bに近接する位置に嵌合部17eが設けられる。中空形材16の嵌合部16eと、中空形材18の嵌合部18fとは、連結部16c、18dに対し、嵌合部17f、17eと嵌合可能な位置にそれぞれ設けられる。以下、本発明の別の実施形態及び変形例について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0031】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る中空形材26を示す断面図である。
図7は、第2実施形態に係る各中空形材25〜28の継手構造102、103を示す部分的な断面図である。中空形材25〜28は、同一の構造、形状及びサイズを有するので、主に中空形材26について説明する。中空形材26は、第1板部26a及び第2板部26bと、第1板部26a及び第2板部26bを対向方向に連結する連結部26c、26dと、連結部26c、26dに設けられた嵌合部26e、26fとを有する。
【0032】
図6に示すように、嵌合部26e、26fは、連結部26c、26dから突き合わせ方向に突出し、かつ、対向方向に並設された2本のクサビ状の突出部26i、26j、26k、26lを有する。嵌合部26fでは、第2板部26bに近接する突出部26jが、オス型先端部26mとして機能し、2本の突出部26i、26jの向かい合った各斜面部26i1、26j1が、メス型先端部26nとして機能する。嵌合部26eでは、第1板部26aに近接する突出部26kが、オス型先端部26oとして機能するとともに、2本の突出部26k、26lの向かい合った各斜面部26k1、26l1が、メス型先端部26pとして機能する。このように嵌合部26e、26fは、対向方向で逆順に並設されたオス型先端部26m、26o及びメス型先端部26n、26pをともに含んでいる。嵌合部26e、26fは、同一の構造、形状及びサイズを有し、嵌合部26e、26fの各先端は、接合端部26a1、26a2、26b1、26b2よりも接合相手側の中空形材に近接する位置に配置される。
【0033】
嵌合部26e、26fの各々は、第1板部26a及び第2板部26bの対向方向の中心(中央部R5、R6)から、対向方向に沿って互いに逆方向に同じ距離D2だけずれて配置される。対向方向における嵌合部26fの中央部Q1は、連結部26dの中央部R5から一定距離D2をおいて、第1板部26aに近接する位置に設けられる。対向方向における嵌合部26eの中央部Q2は、連結部26cの中央部R6から一定距離D2をおいて、第2板部26bに近接する位置に設けられる。
【0034】
接合端部26a2、26b1は、接合相手側の接合端部に向けて円弧状断面の凸状端面を有する。接合端部26a1、26b2は、接合相手側の接合端部の凸状端面と面接触可能な円弧状断面の凹状端面を有する。
図6に示すように、中空形材26は、その断面方向において、中心Pを対称点とする点対称の形状を有する。なお、ここでいう「円弧」とは、半円周分の円弧(180°円弧)のみに限定されず、半円周分よりも短い長さの円弧も含む。
【0035】
図7に示すように、中空形材25は、第1板部25a、第2板部25b、連結部25c及び嵌合部25eを有する。中空形材27は、第1板部27a、第2板部27b、連結部27c、27d及び嵌合部27e、27fを有する。中空形材28は、第1板部28a、第2板部28b、連結部28d及び嵌合部28fを有する。嵌合部25e、27e、27f、28fは、嵌合部26e、26fと同一の構造、形状及びサイズを有する。連結部25c、27cに対する嵌合部25e、27eの各位置は、連結部26cに対する嵌合部26eの位置と同じ位置に設定され、連結部27d、28dに対する嵌合部27f、28fの各位置は、連結部26dに対する嵌合部26fの位置と同じ位置に設定される。中空形材25、27、28の接合端部25a1、27a1、27b2、28b2の各端面は、接合端部26a1、26b2の凹状端面と同じ円弧状断面の凹状端面である。中空形材25、27の接合端部25b1、27a2、27b1、28a2の各端面は、接合端部26a2、26b1の凸状端面と同じ円弧状断面の凸状端面である。これにより、接合端部25b1、26a2、26b1、27a2、27b1、28a2の凸状端面と、接合端部25a1、26a1、26b2、27a1、27b2、28b2の凹状端面とを面接触させた状態で、中空形材25〜28が摩擦撹拌接合される。
【0036】
嵌合部26fのオス型先端部26mが嵌合部25eのメス型先端部に挿入され、嵌合部25eのオス型先端部が嵌合部26fのメス型先端部26nに挿入されることにより、嵌合部25e、26fが嵌め合わされる。また、嵌合部26eのオス型先端部26oが嵌合部27fのメス型先端部に挿入され、嵌合部27fのオス型先端部が嵌合部26eのメス型先端部26pに挿入されることにより、嵌合部26e、27fが嵌め合わされる。嵌合部27e、28fは、嵌合部25e、26f及び嵌合部26e、27fと同様に嵌め合わされる。
【0037】
第2実施形態では、中空形材25〜28の嵌合部25e、26e、26f、27e、27f、28fが、オス型先端部及びメス型先端部をともに有し、接合相手側の嵌合部と広い接触面積で接触しながら嵌め合わされる。このため、中空形材25〜28の摩擦撹拌接合時には、上記各接合端部の位置ずれがより一層防止され、目違いの発生が高度に抑制された継手構造102、103を形成できる。また、オス型先端部とメス型先端部をともに有する構造で嵌合部25e、26e、26f、27e、27f、28fを形成することで、互いに嵌合可能な嵌合部を簡素な構造で実現できるので、中空形材25〜28の製造効率の向上と、中空形材25〜28の接合効率の向上とを図れる。また、中空形材25〜28では、互いに突き合わされる前記各接合端部同士のそれぞれの組み合わせにおいて、一方の接合端部25b1、26a2、26b1、27a2、27b1、28a2の凸状端面を、他方の接合端部25a1、26a1、26b2、27a1、27b2、28b2の凹状端面に嵌まり込むように面接触させることで、突き合わされた上記各接合端部同士がずれにくくなる。このため、中空形材25〜28を良好に摩擦撹拌接合できる。
【0038】
なお、第2実施形態では、各嵌合部25e、26e、26f、27e、27f、28fは、その根元部分において、対向方向にある程度の厚みを有する。このため、嵌合部25e、26e、26f、27e、27f、28fにおいて、例えば、各嵌合部同士の嵌め合い時に接合相手側の嵌合部と接触しない部分の厚みを、これ以外の部分に比べて薄くしてもよい。これにより、中空形材25〜28の軽量化を図ることができる。
【0039】
[変形例1]
図8は、第2実施形態の変形例に係る各中空形材35〜38の継手構造104、105を示す部分的な断面図である。第2実施形態との違いとして、中空形材35〜38の第1板部35a、36a、37a、38aの各接合端部35a1、36a1、36a2、37a1、37a2、38a2の端面と、第2板部35b、36b、37b、38bの各接合端部35b1、36b1、36b2、37b1、37b2、38b2の端面とが、突き合わせ方向に対して傾斜した傾斜面として形成される。これにより、中空形材35〜38で突き合わされる上記各接合端部は、互いの傾斜面において面接触する。従って、摩擦撹拌接合を行う際には、上記各接合端部が対向方向に位置ずれを生じるのが防止され、継手構造104、105における目違いの発生を抑制できる。
【0040】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る各中空形材46、47の継手構造106、107を示す断面図である。第1実施形態との違いとして、中空形材46は、嵌合部として、オス型先端部を有する嵌合部46eのみを有する。中空形材47は、嵌合部として、メス型先端部を有する嵌合部47fのみを有する。嵌合部46eは嵌合部6eと同一構造であり、嵌合部47fは嵌合部7fと同一の構造である。中空形材46の連結部46dは、それぞれ第1板部46a及び第2板部46bの端部46a2、46b2を連結する。中空形材47の連結部47cは、第1板部47a及び第2板部47bの端部47a2、47b2を連結する。中空形材46、47では、嵌合部46e、47fが嵌め合わされた状態で、接合端部46a1、47a1及び接合端部46b1、47b1がそれぞれ摩擦撹拌接合される。これにより、中空形材46、47を備える継手構造106、107が形成される。
【0041】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る各中空形材56、57の継手構造108、109を示す断面図である。第3実施形態との違いとして、中空形材56、57は、実施形態2の嵌合部26e、27fと同一構成の嵌合部56e、57fを有する。連結部56c、57dに対する嵌合部56e、57fの各位置は、第2実施形態の連結部26c、27dに対する嵌合部26e、27fの位置と同様である。
【0042】
中空形材56、57では、中空形材56の第1板部56a及び第2板部56bの対向方向において、嵌め合い状態にある嵌合部56e、57fの中央部R7の位置が、間隙Gの中心G1の位置と一致している。これにより、中空形材56、57は、その突き合わせ方向及び対向方向の両方に直交する方向(
図10の紙面に垂直な方向)から見て、中心G1を対称点とする互いに点対称の形状を有する。このように、中空形材56、57は、同一の構造、形状及びサイズを有するように構成される。
【0043】
これにより第4実施形態では、同一の2つの中空形材を一対の中空形材56、57として用いることができるので、中空形材56、57の製造コストの低減を図れる。具体的に、中空形材56、57を押出成形により製造する際には、1つの同じ型を用いて中空形材56、57を製造できる。
【0044】
(その他)
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は、互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成を他の実施形態に適用してもよい。
【0045】
また、上記各実施形態及び上記各変形例において、摩擦撹拌接合される中空形材の第1板部及び第2板部の形状は、平板状に限定されず、曲板状であってもよい。また、対向方向における複数の連結部の長さは、同一でなくてもよい。この場合、例えば、中空形材の突き合わせ方向の両端に位置する2つの連結部の対向方向における長さを互いに異ならせることにより、中空形材の突き合わせ方向及び対向方向の両方に直交する方向から見た断面を略台形形状にしてもよい。
【0046】
上記各実施形態及び上記各変形例では、複数の中空形材を摩擦撹拌接合して鉄道車両構体の側構体を構成する例を示したが(
図1参照)、複数の中空形材を第1実施形態で示した第1〜第3工程と同様の各工程で摩擦撹拌接合することで、屋根構体及び床構体の少なくともいずれか、または不図示の枕梁を構成することもできる。また、上記各実施形態及び変形例では、摩擦撹拌接合の継手構造を備える構造物として鉄道車両構体を例示したが、当該構造物は鉄道車両構体以外でもよい。
【符号の説明】
【0047】
S1〜S3 空間
1 鉄道車両構体(構造物)
5〜9、16〜18、25〜28、35〜38、46、47、56、57 中空形材
5a〜8a、16a〜18a、25a〜28a、35a〜38a、46a、47a、56a、57a 第1板部
5a1、5b1、6a1、6a2、6b1、6b2、7a1、7a2、7b1、7b2、8a2、8b2、25a1、25b1、26a1、26a2、26b1、26b2、27a1、27a2、27b1、27b2、28a2、28b2 接合端部
5b〜8b、16b〜18b、25b〜28b、35b〜38b、46b、47b、56b、57b 第2板部
6c、6d、7c、7d、8d、16c、17c、17d、18d、25c、26c、26d、27c、27d、28d、46c、46d、47c、47d、56c、56d、57c、57d 連結部
5e、6e、6f、7e、7f、8f、16e、17f、17e、18f、25e、26e、26f、27e、27f、28f、46e、47f、56e、57f 嵌合部
5g、6g、7g、16e、17e、26n、26p メス型先端部
6f、7f、8f、17f、18f、26m、26o オス型先端部
5g1、6g1、6h1 傾斜面
10 第1ショルダー部(ボビンツール)
11 第2ショルダー部(ボビンツール)
101〜109 継手構造